(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175745
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ターンシグナルランプの支持構造
(51)【国際特許分類】
B62J 6/055 20200101AFI20241212BHJP
B62J 23/00 20060101ALI20241212BHJP
B62J 17/06 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B62J6/055
B62J23/00 C
B62J23/00 A
B62J17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093710
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 稔明
(57)【要約】
【課題】ターンシグナルランプの揺れを抑えつつ、ターンシグナルランプの破損のリスクを低減する。
【解決手段】ターンシグナルランプ(24)の支持構造には、一部に切欠き(33)が形成された第1のサイドカウリング(31)と、切欠きを内側から覆う第2のサイドカウリング(41)と、が設けられている。第2のサイドカウリングには、切欠きを通じて外方に延びるターンシグナルランプが支持されている。第1のサイドカウリングの内側面に第2のサイドカウリングの外側面が車幅方向に挿抜可能に装着されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両に設けられたターンシグナルランプの支持構造であって、
一部に切欠きが形成された第1のサイドカウリングと、
前記切欠きを内側から覆う第2のサイドカウリングと、を備え、
前記第2のサイドカウリングには、前記切欠きを通じて外方に延びる前記ターンシグナルランプが支持されており、
前記第1のサイドカウリングの内側面に前記第2のサイドカウリングの外側面が車幅方向に挿抜可能に装着されていることを特徴とするターンシグナルランプの支持構造。
【請求項2】
前記第1のサイドカウリング及び前記第2のサイドカウリングのいずれか一方には開口が形成され、いずれか他方には車幅方向外側からの外力を受けて前記開口から抜け出す突起が形成され、
前記開口及び前記突起によって前記第1のサイドカウリングの内側面に前記第2のサイドカウリングの外側面が車幅方向に挿抜可能に装着されていることを特徴とする請求項1に記載のターンシグナルランプの支持構造。
【請求項3】
前記第2のサイドカウリングには前記切欠きから露出する支持面が形成され、当該支持面に前記切欠きを通じて外方に延びる前記ターンシグナルランプが支持されており、
側面視にて前記第1のサイドカウリングの内側面に対する前記第2のサイドカウリングの外側面の少なくとも1つの装着箇所が、前記支持面の前端位置よりも後方かつ前記支持面の後端位置よりも前方に位置していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のターンシグナルランプの支持構造。
【請求項4】
側面視にて前記第1のサイドカウリングの内側面に対する前記第2のサイドカウリングの外側面の少なくとも1つの装着箇所が、前記支持面の上端位置よりも上方に位置していることを特徴とする請求項3に記載のターンシグナルランプの支持構造。
【請求項5】
側面視にて前記第1のサイドカウリングの内側面に対する前記第2のサイドカウリングの外側面の少なくとも1つの他の装着箇所が、前記支持面の下端位置よりも下方に位置していることを特徴とする請求項4に記載のターンシグナルランプの支持構造。
【請求項6】
前記第2のサイドカウリングには車体に固定される前側固定部及び後側固定部が形成され、
側面視にて前記前側固定部及び前記後側固定部の間では前記第1のサイドカウリングに前記第2のサイドカウリングが挿抜可能に装着されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のターンシグナルランプの支持構造。
【請求項7】
前記第2のサイドカウリングには前記切欠きから露出する支持面が形成され、当該支持面に前記切欠きを通じて外方に延びる前記ターンシグナルランプが支持されており、
前記支持面から前記前側固定部までの距離よりも、前記支持面から前記後側固定部までの距離が長く形成されていることを特徴とする請求項6に記載のターンシグナルランプの支持構造。
【請求項8】
前記第2のサイドカウリングの前記前側固定部と前記後側固定部の間が車幅方向外側に膨らむように湾曲していることを特徴とする請求項6に記載のターンシグナルランプの支持構造。
【請求項9】
前記第2のサイドカウリングには前記切欠きから露出する支持面が形成され、当該支持面に前記切欠きを通じて外方に延びる前記ターンシグナルランプが支持されており、
前記前側固定部の一部が前記支持面の上端位置よりも下方かつ前記支持面の下端位置よりも上方に位置していることを特徴とする請求項6に記載のターンシグナルランプの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターンシグナルランプの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両として、カウリングの側面にゴム製のランプステーを介してターンシグナルランプが固定されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このランプステーは断面視カップ状に形成されており、ランプステーの底壁を車幅方向外側に向けて、ランプステーの開口縁がカウリングに取り付けられている。ランプステーの底壁にはターンシグナルランプがネジ止めされている。転倒等によってランプステーに側方から外力が作用したときには、ランプステーを屈曲させるような座屈が生じて、ターンシグナルランプに加わる外力が有効に逃がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のターンシグナルランプはランプステーの変形によって破損のリスクが低減される。しかしながら、近年では、ターンシグナルランプの支持剛性を上げることでターンシグナルランプの揺れを抑えて商品性を高めることが望まれている。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ターンシグナルランプの揺れを抑えつつ、ターンシグナルランプの破損のリスクを低減することができるターンシグナルランプの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のターンシグナルランプの支持構造は、鞍乗型車両に設けられたターンシグナルランプの支持構造であって、一部に切欠きが形成された第1のサイドカウリングと、前記切欠きを内側から覆う第2のサイドカウリングと、を備え、前記第2のサイドカウリングには、前記切欠きを通じて外方に延びる前記ターンシグナルランプが支持されており、前記第1のサイドカウリングの内側面に前記第2のサイドカウリングの外側面が車幅方向に挿抜可能に装着されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のターンシグナルランプの支持構造によれば、第2のサイドカウリングにターンシグナルランプが固定されることで、ターンシグナルランプの支持剛性が高められて揺れが抑えられる。また、転倒等でターンシグナルランプが地面に接触すると、ターンシグナルランプに対して車幅方向内側に外力が作用する。ターンシグナルランプから第2のサイドカウリングに外力が伝わり、第1のサイドカウリングから第2のサイドカウリングが外れてターンシグナルランプに作用する衝撃が緩和される。よって、ターンシグナルランプの揺れを抑えて商品性を高めつつ、ターンシグナルランプの破損のリスクを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例の鞍乗型車両の前半部の側面図である。
【
図2】本実施例のサイドカウリングの周辺の側面図である。
【
図3】本実施例のサイドカウリングを内側から見た側面図である。
【
図4】
図2のサイドカウリングをA-A線に沿って切断した断面図である。
【
図5】本実施例のターンシグナルランプの周辺の側面図である。
【
図6】本実施例の停車転倒時の鞍乗型車両を前方から見た図である。
【
図7】本実施例の走行転倒時の鞍乗型車両を側方から見た図である。
【
図8】本実施例の走行転倒時の第2のサイドカウリングを側方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の鞍乗型車両にはターンシグナルランプの支持構造が設けられている。鞍乗型車両には第1、第2のサイドカウリングが設けられており、第1のサイドカウリングの一部には切欠きが形成され、第2のサイドカウリングによって切欠きが内側から覆われている。第2のサイドカウリングには切欠きを通じて外方に延びるターンシグナルランプが支持されている。第1のサイドカウリングの内側面には第2のサイドカウリングの外側面が車幅方向に挿抜可能に装着されている。第2のサイドカウリングにターンシグナルランプが固定されているため、ターンシグナルランプの支持剛性が高められて揺れが抑えられる。また、転倒等でターンシグナルランプが地面に接触すると、ターンシグナルランプに対して車幅方向内側に外力が作用する。ターンシグナルランプから第2のサイドカウリングに外力が伝わり、第1のサイドカウリングから第2のサイドカウリングが外れてターンシグナルランプに作用する衝撃が緩和される。よって、ターンシグナルランプの揺れを抑えて商品性を高めつつ、ターンシグナルランプの破損のリスクを低減できる。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例の鞍乗型車両について説明する。
図1は本実施例の鞍乗型車両の前半部の側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1の車両前部にはフロントカウリング11及び一対のサイドカウリング12が設けられている。フロントカウリング11によって車両前部が前方から覆われ、一対のサイドカウリング12によって車両前部が側方から覆われている。フロントカウリング11の前面上側には防風用のウインドスクリーン13が取り付けられ、フロントカウリング11の後側にはメーターカバー14が取り付けられている。フロントカウリング11の内側には上下二段のヘッドライト15が設けられ、フロントカウリング11の前面からヘッドライト15のレンズが露出している。
【0012】
サイドカウリング12の上半部は第1、第2のサイドカウリング31、41によって形成され、サイドカウリング12の下半部は第3のサイドカウリング51によって形成されている。第1のサイドカウリング31の一部には切欠き33が形成されており、第1のサイドカウリング31の内側に第2のサイドカウリング41が取り付けられて、第2のサイドカウリング41によって切欠き33が内側から覆われている。第1、第2のサイドカウリング31、41の下側には第3のサイドカウリング51が連なっており、第1-第3のサイドカウリング31、41、51によってエンジン(不図示)が前方から覆われている。
【0013】
第1のサイドカウリング31の上側にはハンドル16が設けられ、第1のサイドカウリング31の下側にはフロントフォーク17を介して前輪18が支持されている。第1、第2のサイドカウリング31、41の上方にはタンクカバー22付きの燃料タンク21が設置されており、燃料タンク21から後方にメインフレーム23が延出している。第1のサイドカウリング31の切欠き33から第2のサイドカウリング41が露出し、この第2のサイドカウリング41の露出箇所には第1のサイドカウリング31の切欠き33を通じて外方に延びるターンシグナルランプ24が支持されている。
【0014】
ところで、一般的な鞍乗型車両では、ターンシグナルランプが車体から側方に突き出しているため、転倒時にターンシグナルランプに対する衝撃を逃がすような構造が検討されている。この場合、ターンシグナルランプの支持構造がゴム等の軟質弾性材料で形成されることで、軟質弾性材料によって転倒時の衝撃を吸収してターンシグナルランプの破損が抑えられるが、ターンシグナルランプの支持剛性が低下して走行時の揺れが大きくなる。逆に、ターンシグナルランプの支持剛性を高めることで、ターンシグナルランプの走行時の揺れが抑えられるが、転倒時の衝撃を逃がすことができない。
【0015】
このように、一般的なターンシグナルランプの支持構造では、ターンシグナルランプの走行時の揺れ具合とターンシグナルランプに対する衝撃吸収性がトレードオフの関係にある。そこで、本実施例では、ターンシグナルランプ24が第2のサイドカウリング41に固定されて、ターンシグナルランプ24の走行時の揺れが抑えられる程度に支持剛性が確保されている。また、転倒時に第1のサイドカウリング31から第2のサイドカウリング41が外れるように第1、第2のサイドカウリング31、41が装着されてターンシグナルランプ24に対する衝撃が緩和されている。
【0016】
図2から
図5を参照して、本実施例のターンシグナルランプの支持構造について説明する。
図2は本実施例のサイドカウリングの周辺の側面図である。
図3は本実施例のサイドカウリングを内側から見た側面図である。
図4は
図2のサイドカウリングをA-A線に沿って切断した断面図である。
図5は本実施例のターンシグナルランプの周辺の側面図である。
【0017】
図2及び
図3に示すように、第1のサイドカウリング31の上端から前斜め下方に延びる斜縁32aと第1のサイドカウリング31の下端から前斜め上方に延びる斜縁32bによって第1のサイドカウリング31の前縁が屈曲している。第1のサイドカウリング31の上端から後斜め下方に延びる斜縁32cと第1のサイドカウリング31の下端から後斜め上方に延びる斜縁32dを分断するように第1のサイドカウリング31の後縁が切り欠かれている。第1のサイドカウリング31の後縁から切欠き33が前方に延びており、切欠き33によって第2のサイドカウリング41が露出されている。
【0018】
第2のサイドカウリング41は、可撓性樹脂によって形成されており、切欠き33に重なるように前後に延びるカバー部42と、第1のサイドカウリング31の分断された後縁を連結するように上下に延びる接続部43と、を有している。カバー部42の前端側には切欠き33から露出する支持面44が形成され、この支持面44には切欠き33を通じて外方に延びるターンシグナルランプ24が支持されている。切欠き33の上縁に沿うように、カバー部42の先端から接続部43の前縁上側に向けて上側フランジ45が形成され、切欠き33の下縁に沿うように、カバー部42の先端から接続部43の前縁下側に向けて下側フランジ46が形成されている。
【0019】
下側フランジ46の前端部に第1の固定部(前側固定部)47aが形成され、下側フランジ46の後端部に第2の固定部(後側固定部)47bが形成され、上側フランジ45の後端部に第3の固定部(後側固定部)47cが形成されている。第1-第3の固定部47a-47cは第1のサイドカウリング31に内側からネジ止めされている。接続部43の上側に第4の固定部47dが形成され、第4の固定部47dは燃料タンク21に外側からネジ止めされている。接続部43の下端部に第5、第6の固定部47e、47fが形成され、第5、第6の固定部47e、47fは第3のサイドカウリング51に内側からネジ止めされている。
【0020】
側面視にて第1、第3の固定部47a、47cの間の上側フランジ45に開口48a-48cが形成されており、第1、第2の固定部47a、47bの間の下側フランジ46に開口48d、48eが形成されている。第1のサイドカウリング31の内側面には、第2のサイドカウリング41の開口48a-48eに対応した突起34a-34eが形成されている。突起34a-34eは車幅方向外側からの外力を受けて開口48a-48eから抜け出すように形成されている。開口48a-48e及び突起34a-34eによって第1のサイドカウリング31の内側面に第2のサイドカウリング41の外側面が車幅方向に挿抜可能に装着されている。
【0021】
図3及び
図4に示すように、第1のサイドカウリング31の内側面から突き出した突起34a-34e(
図4では突起34a-34cのみ図示)が、第2のサイドカウリング41の開口48a-48e(
図4では開口48cのみ図示)に挿し込まれている。突起34a-34eの先端部には逆U字状の掛止面が設けられており、開口48a-48eを通じて第2のサイドカウリング41の内側に掛止面が入り込んでいる。突起34a-34eの掛止面の幅寸法が開口48a-48eの開口幅よりも大きいため、第1のサイドカウリング31に第2のサイドカウリング41が掛け止めされている。
【0022】
突起34a-34eの掛止面は、幅方向への弾性変形によって拡縮可能に形成されている。第2のサイドカウリング41に対して車幅方向内側の外力が作用すると、開口48a-48eの開口縁が突起34a-34eの掛止面を幅方向に収縮させながら移動して、開口48a-48eに対して突起34a-34eが相対的に抜け出される。よって、第2のサイドカウリング41(ターンシグナルランプ24)が外力を受けたときに、第1のサイドカウリング31から第2のサイドカウリング41が部分的に外れて、第2のサイドカウリング41を撓ませることが可能になっている。
【0023】
このように、第1のサイドカウリング31に第2のサイドカウリング41が前後の第1-第3の固定部47a-47cで固定され、第1の固定部47aと第2、第3の固定部47b、47cの間で第1のサイドカウリング31に第2のサイドカウリング41が挿抜可能に装着されている。走行時には第1のサイドカウリング31に第2のサイドカウリング41が一体化しているため、第2のサイドカウリング41のガタツキが小さくなってターンシグナルランプ24の揺れが抑えられる。転倒時には第1の固定部47aと第2、第3の固定部47b、47cの間で、第1のサイドカウリング31から第2のサイドカウリング41が外れて撓むことでターンシグナルランプ24への衝撃が緩和される。
【0024】
また、第2のサイドカウリング41では、支持面44から第1の固定部47aまでの距離L1よりも、支持面44から第2、第3の固定部47b、47cまでの距離L2、L3が長く形成されている。このため、支持面44と第1の固定部47aの間よりも、支持面44と第2、第3の固定部47b、47cの間で第2のサイドカウリング41が撓み易くなっている。走行時の転倒では車幅方向内側の外力に加えて車両後方の外力がターンシグナルランプ24に作用するが、ターンシグナルランプ24よりも後方で第2のサイドカウリング41が大きく撓むことで、ターンシグナルランプ24に作用する衝撃が効果的に緩和される。
【0025】
図5に示すように、第2のサイドカウリング41の支持面44にターンシグナルランプ24が支持されている。第1のサイドカウリング31の内側面に対する第2のサイドカウリング41の外側面の装着箇所に開口48a-48e(
図5では開口48a、48b、48dのみ図示)が形成されている。側面視にて、第2のサイドカウリング41の開口48a、48dは支持面44の前端位置P1よりも後方かつ支持面44の後端位置P2よりも前方に位置している。ターンシグナルランプ24の前後に近い個所で第1のサイドカウリング31に第2のサイドカウリング41が装着されるため、ターンシグナルランプ24の近辺の揺れ等が効果的に抑えられる。
【0026】
第2のサイドカウリング41の開口48aは支持面44の上端位置P3よりも上方に位置している。ターンシグナルランプ24の上方で第1のサイドカウリング31に第2のサイドカウリング41が装着されているため、走行時にはターンシグナルランプ24の揺れが抑えられ、転倒時には開口48aから突起34aが抜けて第2のサイドカウリング41の上側が外れやすくなる。立ちゴケ等によって停車時に転倒したときには、ターンシグナルランプ24に上向きに作用する外力が大きいが、第2のサイドカウリング41の上側が撓むことでターンシグナルランプ24に対する衝撃が緩和される。
【0027】
第2のサイドカウリング41の開口48dは支持面44の下端位置P4よりも下方に位置している。ターンシグナルランプ24の上下に開口48a、48dが位置し、ターンシグナルランプ24を上下に挟んだ箇所で第1のサイドカウリング31に第2のサイドカウリング41が装着されるため、ターンシグナルランプ24の近辺の揺れ等が効果的に抑えられる。第2のサイドカウリング41の第1の固定部47aの一部が支持面44の上端位置P3よりも下方かつ下端位置P4よりも上方に位置している。ターンシグナルランプ24と略同じ高さに第1の固定部47aが位置することでターンシグナルランプ24の上下の揺れや摩耗が抑えられる。
【0028】
続いて、
図6から
図8を参照して、ターンシグナルランプの衝撃吸収について説明する。
図6は本実施例の停車転倒時の鞍乗型車両を前方から見た図である。
図7は本実施例の走行転倒時の鞍乗型車両を側方から見た図である。
図8は本実施例の走行転倒時の第2のサイドカウリングを側方から見た図である。
【0029】
図6に示すように、停車時に立ちゴケ等によって鞍乗型車両1が転倒すると、車体から側方に突き出したターンシグナルランプ24が地面Gに接触する。ターンシグナルランプ24に上向き回転の外力が加わり、ターンシグナルランプ24に対して車幅方向内側だけでなく車体上向きにも外力が作用している。ターンシグナルランプ24を介して第2のサイドカウリング41(
図3参照)の上側が押し込まれ、第1のサイドカウリング31の突起34a-34cから第2のサイドカウリング41の開口48a-48c(
図3参照)が抜ける。第2のサイドカウリング41の上側が車幅方向内側に撓んでターンシグナルランプ24に対する衝撃が緩和されている。
【0030】
図7に示すように、走行時に鞍乗型車両1が転倒すると、鞍乗型車両1が前方に滑りながらターンシグナルランプ24が地面Gに接触する。ターンシグナルランプ24に後向き回転の外力が加わり、ターンシグナルランプ24に対して車幅方向内側だけでなく車体後向きにも外力が作用している。ターンシグナルランプ24を介して第2のサイドカウリング41の後側が押し込まれ、第1のサイドカウリング31の突起34a-34eから第2のサイドカウリング41の開口48a-48e(
図3参照)が抜ける。第2のサイドカウリング41の後側が車幅方向内側に撓んでターンシグナルランプ24に対する衝撃が緩和されている。
【0031】
より詳細には、
図8に示すように、第2のサイドカウリング41のカバー部42は第1の固定部47aと第2、第3の固定部47b、47c(
図8では第3の固定部47cのみ図示)の間で車幅方向外側に膨らむように湾曲している。ターンシグナルランプ24に後向き回転の外力が加わると、第2のサイドカウリング41の湾曲した内側面に応力が集中する。ターンシグナルランプ24から第2のサイドカウリング41に外力が伝わると、第2のサイドカウリング41の内側面に応力が集中して車幅方向内側に撓み易くなっている。このため、開口48a-48eから突起34a-34eが抜けることで、第2のサイドカウリング41を車幅方向内側に大きく撓ませることができる。
【0032】
以上、本実施例のターンシグナルランプ24の支持構造によれば、第2のサイドカウリング41にターンシグナルランプ24が固定されることで、ターンシグナルランプ24の支持剛性が高められて揺れが抑えられる。また、転倒等でターンシグナルランプ24が地面Gに接触すると、ターンシグナルランプ24に対して車幅方向内側に外力が作用する。ターンシグナルランプ24から第2のサイドカウリング41に外力が伝わり、第1のサイドカウリング31から第2のサイドカウリング41が外れてターンシグナルランプ24に作用する衝撃が緩和される。よって、ターンシグナルランプ24の揺れを抑えて商品性を高めつつ、ターンシグナルランプ24の破損のリスクを低減できる。
【0033】
なお、本実施例においては、第1のサイドカウリングに突起が形成され、第2のサイドカウリングに開口が形成されているが、第1のサイドカウリングに開口が形成され、第2のサイドカウリングに突起が形成されてもよい。また、第1のサイドカウリングの内側面と第2のサイドカウリングの外側面が車幅方向に挿抜可能に装着されていればよく、第1、第2のサイドカウリングの装着構造は特に限定されない。
【0034】
また、本実施例においては、第1のサイドカウリングの後縁が切り欠かれているが、第1のサイドカウリングの切欠きの位置は特に限定されない。第1のサイドカウリングの一部が切り欠かれていればよく、例えば、第1のサイドカウリングの中央部分が切り欠かれて開口されてもよい。すなわち、切欠きとは、第1のサイドカウリングの縁を除去した形状だけでなく、第1のサイドカウリングの中央を除去した開口形状も含んでいる。
【0035】
また、本実施例においては、第1のサイドカウリングの内側面に対する第2のサイドカウリングの外側面の装着箇所が、ターンシグナルランプを支持する支持面の上下に位置しているが、支持面と装着箇所の位置関係は特に限定されない。
【0036】
また、本実施例においては、第2のサイドカウリングが前側固定部及び後側固定部としての各固定部で第1のサイドカウリング、第3のサイドカウリング、燃料タンクに固定されているが、第2のサイドカウリングの固定箇所は特に限定されない。第2のサイドカウリングは、前側固定部及び後側固定部で車体に固定されていればよい。
【0037】
また、本実施例の鞍乗型車両のターンシグナルランプの支持構造は上記の鞍乗型車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。なお、鞍乗型車両とは、運転者がシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、運転者がシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0038】
以上の通り、第1態様は、鞍乗型車両(1)に設けられたターンシグナルランプ(24)の支持構造であって、一部に切欠き(33)が形成された第1のサイドカウリング(31)と、切欠きを内側から覆う第2のサイドカウリング(41)と、を備え、第2のサイドカウリングには、切欠きを通じて外方に延びるターンシグナルランプが支持されており、第1のサイドカウリングの内側面に第2のサイドカウリングの外側面が車幅方向に挿抜可能に装着されている。この構成によれば、第2のサイドカウリングにターンシグナルランプが固定されることで、ターンシグナルランプの支持剛性が高められて揺れが抑えられる。また、転倒等でターンシグナルランプが地面に接触すると、ターンシグナルランプに対して車幅方向内側に外力が作用する。ターンシグナルランプから第2のサイドカウリングに外力が伝わり、第1のサイドカウリングから第2のサイドカウリングが外れてターンシグナルランプに作用する衝撃が緩和される。よって、ターンシグナルランプの揺れを抑えて商品性を高めつつ、ターンシグナルランプの破損のリスクを低減できる。
【0039】
第2態様は、第1態様において、第1のサイドカウリング及び第2のサイドカウリングのいずれか一方には開口(48a-48e)が形成され、いずれか他方には車幅方向外側からの外力を受けて開口から抜け出す突起(34a-34e)が形成され、開口及び突起によって第1のサイドカウリングの内側面に第2のサイドカウリングの外側面が車幅方向に挿抜可能に装着されている。この構成によれば、車幅方向外側からの外力を受けて第1のサイドカウリングから第2のサイドカウリングを外すことができる。
【0040】
第3態様は、第1態様及び第2態様において、第2のサイドカウリングには切欠きから露出する支持面(44)が形成され、当該支持面に切欠きを通じて外方に延びるターンシグナルランプが支持されており、側面視にて第1のサイドカウリングの内側面に対する第2のサイドカウリングの外側面の少なくとも1つの装着箇所が、支持面の前端位置(P1)よりも後方かつ支持面の後端位置(P2)よりも前方に位置している。この構成によれば、ターンシグナルランプの前後に近い個所で第1のサイドカウリングに第2のサイドカウリングが装着されるため、ターンシグナルランプの近辺の揺れ等が効果的に抑えられる。
【0041】
第4態様は、第3態様において、側面視にて第1のサイドカウリングの内側面に対する第2のサイドカウリングの外側面の少なくとも1つの装着箇所が、支持面の上端位置(P3)よりも上方に位置している。この構成によれば、ターンシグナルランプの上方で第1のサイドカウリングに第2のサイドカウリングが装着され、転倒時には第1のサイドカウリングから第2のサイドカウリングの上側が外れやすくなる。立ちゴケ等によって停車時に転倒したときには、ターンシグナルランプに上向きに作用する外力が大きいが、第2のサイドカウリングの上側が撓むことでターンシグナルランプに対する衝撃が緩和される。
【0042】
第5態様は、第4態様において、側面視にて第1のサイドカウリングの内側面に対する第2のサイドカウリングの外側面の少なくとも1つの他の装着箇所が、支持面の下端位置(P4)よりも下方に位置している。この構成によれば、ターンシグナルランプを上下に挟んだ箇所で第1のサイドカウリングに第2のサイドカウリングが装着されるため、ターンシグナルランプの近辺の揺れ等をより効果的に抑えることができる。
【0043】
第6態様は、第1態様から第5態様のいずれか1態様において、第2のサイドカウリングには車体に固定される前側固定部(第1の固定部47a)及び後側固定部(第2、第3の固定部47b、47c)が形成され、側面視にて前側固定部及び後側固定部の間では第1のサイドカウリングに第2のサイドカウリングが挿抜可能に装着されている。この構成によれば、走行時には第1のサイドカウリングに第2のサイドカウリングが一体化しているため、第2のサイドカウリングのガタツキが小さくなってターンシグナルランプの揺れが抑えられている。転倒時には前側固定部と後側固定部の間で、第1のサイドカウリングから第2のサイドカウリングが外れて撓むことでターンシグナルランプへの衝撃が緩和されている。
【0044】
第7態様は、第6態様において、第2のサイドカウリングには切欠きから露出する支持面が形成され、当該支持面に切欠きを通じて外方に延びるターンシグナルランプが支持されており、支持面から前側固定部までの距離(L1)よりも、支持面から後側固定部までの距離(L2、L3)が長く形成されている。この構成によれば、支持面と前側固定部の間よりも、支持面と後側固定部の間で第2のサイドカウリングが撓み易くなっている。走行時の転倒では、車幅方向内側の外力に加えて車両後方の外力がターンシグナルランプに作用するが、ターンシグナルランプよりも後方で第2のサイドカウリングが大きく撓むことでターンシグナルランプに作用する衝撃が効果的に緩和される。
【0045】
第8態様は、第6態様又は第7態様において、第2のサイドカウリングの前側固定部と後側固定部の間が車幅方向外側に膨らむように湾曲している。この構成によれば、ターンシグナルランプに車幅方向内側の外力が作用した場合に、第2のサイドカウリングが車幅方向内向きに撓み易くなってターンシグナルランプに作用する衝撃が効果的に緩和される。
【0046】
第9態様は、第6態様及び第8態様のいずれか1態様において、第2のサイドカウリングには切欠きから露出する支持面が形成され、当該支持面に切欠きを通じて外方に延びるターンシグナルランプが支持されており、前側固定部の一部が支持面の上端位置よりも下方かつ支持面の下端位置よりも上方に位置している。この構成によれば、ターンシグナルランプと略同じ高さに前側固定部が位置することで、ターンシグナルランプが上下に揺れ難くなると共に摩耗等が抑えられる。
【0047】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0048】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。