(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175747
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】成形部品付きフレキシブルプリント配線板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B29C45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093714
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】メクテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 英一
(72)【発明者】
【氏名】関 庄太
(72)【発明者】
【氏名】林 達郎
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AA45
4F206AB03
4F206AD03
4F206AD05
4F206AD19
4F206AD35
4F206AG03
4F206AH33
4F206JA07
4F206JB12
4F206JF01
4F206JF05
4F206JL02
(57)【要約】
【課題】成形部品を成形後の後工程の負荷を抑制可能な成形部品付きフレキシブルプリント配線板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】FPC110と、FPC110に実装される実装部品130と、FPC110に設けられる成形部品120と、を備える成形部品付きFPC100であって、成形部品120は、FPC110に一体成形され、かつ実装部品130の側壁面を囲む開口部121aを有する成形部品本体部121と、実装部品130の側壁面の全周に亘って接し、かつ、開口部121aの内周面の全周に亘って接した状態となるように、実装部品130に取り付けられるガスケット部122と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルプリント配線板と、
前記フレキシブルプリント配線板に実装される実装部品と、
前記フレキシブルプリント配線板に設けられる成形部品と、
を備える成形部品付きフレキシブルプリント配線板であって、
前記成形部品は、
前記フレキシブルプリント配線板に一体成形され、かつ前記実装部品の側壁面を囲む開口部を有する成形部品本体部と、
前記実装部品の側壁面の全周に亘って接し、かつ、前記開口部の内周面の全周に亘って接した状態となるように、前記実装部品に取り付けられるガスケット部と、
を備えることを特徴とする成形部品付きフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記ガスケット部は、前記一体成形の際に前記成形部品本体部の材料が前記実装部品に向かって流れることを抑制するために、予め前記実装部品に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の成形部品付きフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記成形部品本体部と前記ガスケット部は同一の材料により構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の成形部品付きフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
フレキシブルプリント配線板に実装される実装部品にガスケット部を取り付ける第1工程と、
前記ガスケット部と金型の内壁面との間で前記実装部品を密閉する密閉空間を形成する前記金型に対して、前記フレキシブルプリント配線板を配置する第2工程と、
前記金型のキャビティに材料を充填することで、前記フレキシブルプリント配線板に対して成形部品本体部を一体成形する第3工程と、
を有することを特徴とする成形部品付きフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記ガスケット部は、架橋反応が完了する前の状態で前記実装部品に取り付けられ、かつ第3工程の開始の際も架橋反応が完了していないことを特徴とする請求項4に記載の成形部品付きフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
前記成形部品本体部と前記ガスケット部は同一の材料により構成されることを特徴とする請求項4または5に記載の成形部品付きフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形部品付きフレキシブルプリント配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブルプリント配線板(以下、「FPC」と称する)に対して、ガスケットなどの成形部品が一体成形される技術が知られている。そして、製品の仕様によっては、FPCに実装される実装部品が成形部品の設けられる位置に配される場合がある。このような従来技術に係る成形部品付きフレキシブルプリント配線板の製造方法について、
図10を参照して説明する。
図10は従来技術に係る成形部品付きフレキシブルプリント配線板の製造方法の説明図である。この図においては一体成形(インサート成形)時の様子を模式的断面図にて示している。
【0003】
図10(a)に示すように、実装部品530が実装されたFPC510が上型50Xと下型60Xを備える金型内に配される。成形時に実装部品530に大きな負荷が作用しないように、上型50Xと実装部品530との間には隙間を設ける必要がある。そのため、この図示の例では、上型50Xの内壁面に凹部51が設けられている。金型の型締めが完了した後に、金型のキャビティc1に、成形材料(ゴムなどのエラストマー材料)が充填されて、FPC510に対して成形部品520が一体成形される(
図10(b)参照)。
【0004】
上記の通り、上型50Xと実装部品530との間には隙間が設けられているため、成形材料の一部はキャビティc1から漏れ出してしまう。図中、520Xは漏れ出た部分を示している。従って、従来、型開き後に一体成形品を取り出した後に、漏れ出した部分520Xを除去する作業が行われている。そのため、作業工程数が多く、コストが増大する原因にもなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5354281号公報
【特許文献2】特許第4797713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、成形部品を成形後の後工程の負荷を抑制可能な成形部品付きフレキシブルプリント配線板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0008】
本発明の成形部品付きフレキシブルプリント配線板は、
フレキシブルプリント配線板と、
前記フレキシブルプリント配線板に実装される実装部品と、
前記フレキシブルプリント配線板に設けられる成形部品と、
を備える成形部品付きフレキシブルプリント配線板であって、
前記成形部品は、
前記フレキシブルプリント配線板に一体成形され、かつ前記実装部品の側壁面を囲む開口部を有する成形部品本体部と、
前記実装部品の側壁面の全周に亘って接し、かつ、前記開口部の内周面の全周に亘って
接した状態となるように、前記実装部品に取り付けられるガスケット部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ガスケット部が設けられることで、成形部品本体部の材料が実装部品に付着することを抑制することができる。
【0010】
前記ガスケット部は、前記一体成形の際に前記成形部品本体部の材料が前記実装部品に向かって流れることを抑制するために、予め前記実装部品に取り付けられているとよい。
【0011】
前記成形部品本体部と前記ガスケット部は同一の材料により構成されるとよい。
【0012】
本発明の成形部品付きフレキシブルプリント配線板の製造方法は、
フレキシブルプリント配線板に実装される実装部品にガスケット部を取り付ける第1工程と、
前記ガスケット部と金型の内壁面との間で前記実装部品を密閉する密閉空間を形成する前記金型に対して、前記フレキシブルプリント配線板を配置する第2工程と、
前記金型のキャビティに材料を充填することで、前記フレキシブルプリント配線板に対して成形部品本体部を一体成形する第3工程と、
を有することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、ガスケット部と金型の内壁面との間で実装部品が密閉される密閉空間が形成されるので、キャビティに材料を充填する際に、材料が密閉空間に漏れ出ることが抑制される。これにより、実装部品に材料が付着してしまうことを抑制することができる。
【0014】
前記ガスケット部は、架橋反応が完了する前の状態で前記実装部品に取り付けられ、かつ第3工程の開始の際も架橋反応が完了していないとよい。
【0015】
これにより、成形部品本体部とガスケット部とを相溶させ易くなり、これらを一体化し易くすることができる。
【0016】
前記成形部品本体部と前記ガスケット部は同一の材料により構成されるとよい。
【0017】
これにより、成形部品本体部とガスケット部とを相溶させ易くなり、これらを一体化し易くすることができる。
【0018】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、成形部品を成形後の後工程の負荷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は本発明の実施例1に係る成形部品付きフレキシブルプリント配線板を備える装置の概略図である。
【
図2】
図2は本発明の実施例1に係る成形部品付きフレキシブルプリント配線板の平面図の一部である。
【
図3】
図3は本発明の実施例1に係る成形部品付きフレキシブルプリント配線板の模式的断面図である。
【
図4】
図4は本発明の実施例1に係る成形部品付きフレキシブルプリント配線板の製造工程図である。
【
図5】
図5は本発明の実施例1に係る成形部品付きフレキシブルプリント配線板の製造工程図である。
【
図6】
図6は本発明の実施例1に係る成形部品付きフレキシブルプリント配線板の製造工程図である。
【
図7】
図7は本発明の実施例1に係る成形部品付きフレキシブルプリント配線板の製造工程図である。
【
図8】
図8は本発明の実施例2に係る成形部品付きフレキシブルプリント配線板の説明図である。
【
図9】
図9は本発明の変形例に係る成形部品付きフレキシブルプリント配線板の概略図である。
【
図10】
図10は従来技術に係る成形部品付きフレキシブルプリント配線板の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
(実施例1)
図1~
図7を参照して、本発明の実施例1に係る成形部品付きフレキシブルプリント配線板(以下、「成形部品付きFPC100」と称する)及びその製造方法について説明する。
図1は本発明の実施例1に係る成形部品付きFPC100を備える装置の概略図である。
図2は本発明の実施例1に係る成形部品付きFPC100の平面図の一部である。
図3は本発明の実施例1に係る成形部品付きFPC100の模式的断面図であり、
図2中のAA断面図である。
図4~
図7は本発明の実施例1に係る成形部品付きFPC100の製造工程図である。
【0023】
<成形部品付きFPC100を備える装置>
図1を参照して、成形部品付きFPC100を備える装置の一例を説明する。
図1に示す装置10においては、フレキシブルプリント配線板(以下、「FPC110」と称する)の一端がケース11の内部に配され、他端がケース11の外部に引き出されるように構成される。このような装置10においては、FPC110を配置可能とするために、ケース11には貫通孔11aが設けられており、この貫通孔11aを通すように、FPC110が配される。そして、装置10において、防水機能や防塵機能を発揮させるために、FPC110と貫通孔11aとの間の環状隙間を封止する成形部品120が設けられている。すなわち、図示の例では、成形部品120がガスケットの場合を示している。
【0024】
本実施例においては、FPC110に対して、成形部品120が一体的に設けられている。このように構成される成形部品付きFPC100は1部品として取り扱いが可能なため、FPCとガスケットが別々に構成される場合に比べて、装置に組み付ける際などの作業性等を向上させることができる。なお、本実施例においては、成形部品120がガスケットの場合を示すが、本発明における成形部品はガスケットに限定されることはない。例えば、防塵や防水などの保護部材として成形部品がFPCに設けられる場合なども本発明に含まれる。
【0025】
<成形部品付きFPC100>
特に、
図2及び
図3を参照して、本実施例に係る成形部品付きFPC100の構成について説明する。成形部品付きFPC100は、FPC110と、FPC110に実装され
る実装部品130と、FPC110に一体的に設けられる成形部品120とを備えている。実装部品130の具体例としては、電子部品や金属製の部品を挙げることができる。本実施例に係るFPC110は、ベースフィルム111と、複数の配線112と、複数の配線112をベースフィルム111との間に挟み込むカバーフィルム113と、ベースフィルム111とカバーフィルム113との間に設けられる接着剤層114とを備えている。カバーフィルム113の一部は開口して配線112の一部が露出されている。そして、この露出した部分に実装部品130が半田等により接続される。なお、本実施例においては、いわゆる片面FPCが採用される場合の構成を示すが、本発明において適用可能なFPCは、片面FPCに限られることはなく、両面FPCの他、多層構造のFPCも適用可能である。また、
図3においては、FPC110の内部構成を明確にするために、他の図に比べて、厚み方向を拡張した図にしている。
【0026】
成形部品120は、弾性体により構成されており、ゴムなどのエラストマー材料により構成される。例えば、熱可塑性エラストマー材料(より具体的には、熱可塑性ポリウレタンエラストマーなど)を好適に適用することができる。そして、成形部品120は、成形部品本体部121と、ガスケット部122とを備えている。成形部品本体部121は、FPC110に一体成形され、かつ実装部品130の側壁面を囲む開口部121aを有している。ガスケット部122は、実装部品130の側壁面の全周に亘って接し、かつ、開口部121aの内周面の全周に亘って接した状態となるように、実装部品130に取り付けられている。なお、ガスケット部122は、実装部品130の側壁面と開口部121aの内周面との間の環状隙間を埋めるように設けられている。このガスケット部122は、成形部品本体部121を一体成形する際に、成形部品本体部121の材料が実装部品130に向かって流れることを抑制する役割を担っている。そのため、このガスケット部122は、一体成形の前に予め実装部品130に取り付けられている。上記の成形部品本体部121とガスケット部122は同一の材料により構成されるのが望ましい。
【0027】
<本実施例に係る成形部品付きFPC100の製造方法>
本実施例に係る成形部品付きFPC100の製造方法について、
図4~
図7の製造工程図を参照して説明する。まず、FPC110が作成され、このFPC110に実装部品130が実装される。FPC110の製造方法、及びFPC110への実装部品130の実装方法は、適宜、公知技術を採用することができるので、その説明は省略する。また、ガスケット部122が金型により成形される。このガスケット部122の成形方法についても、一般的なゴム製品などの成形技術を採用することができるので、その説明は省略する。ただし、このガスケット部122については、架橋反応が完了する前に金型から取り出すのが望ましい。その理由は後述する。
図4(a)は、実装部品130が実装されたFPC110とガスケット部122の平面図を示している。
【0028】
そして、
図4(b)に示すように、FPC110に実装される実装部品130にガスケット部122が取り付けられる(第1工程)。この時点においても、ガスケット部122は架橋反応が完了していないのが望ましい。なお、ガスケット部122は、その後の工程において金型により押さえつけられるため、必ずしも、実装部品130に対して締め付けるように構成する必要はない。
【0029】
次に、実装部品130が実装され、かつガスケット部122が取り付けられたFPC110をインサート部品として、成形部品本体部121を成形するためのインサート成形(一体成形)が行われる。成形部品本体部121は、FPC110を介して、一方の部分を成形する前工程と、他方の部分を成形する後工程の2回に分けて成形される。なお、どちらを先に成形しても構わない。以下、実装部品130及びガスケット部122が設けられている側を先に成形する場合と、反対側を先に成形する場合に分けて説明する。説明の便宜上、成形部品本体部121のうち、FPC110を介して、実装部品130及びガスケ
ット部122が設けられる側の部分を第1の成形部品本体部121Xと称し、反対側の部分を第2の成形部品本体部121Yと称する。
【0030】
まず、第1の成形部品本体部121Xを先に成形する場合を説明する。この成形に用いられる金型は、上型50Xと下型60Xとを備えている。この金型内に上記のインサート部品が配される工程(第2工程)が完了した後に型締めが行われる(
図4(c)参照)。ここで、成形時に実装部品130に大きな負荷が作用しないように、上型50Xと実装部品130との間には隙間を設ける必要がある。そのため、本実施例では、上型50Xの内壁面に凹部51が設けられている。
【0031】
型締めが行われた状態においては、ガスケット部122の一端(下端)はFPC110に接し、他端(上端)は上型50Xの天井面に接した状態となる。これにより、ガスケット部122と金型(より具体的には上型50X)の内壁面(天井面)との間で実装部品130を密閉する密閉空間が形成される。実装部品130は、FPC110に実装されているので、FPC110とガスケット部122と金型とによって、実装部品130を密閉する密閉空間を形成するということもできる。なお、型締めによりガスケット部122が上型50Xと下型60X(下型60Xに配されたFPC110)とにより圧縮されて、上型50Xに対するガスケット部122の密着力が高まるように構成するのが望ましい。
【0032】
型締め後に、金型のキャビティc1に材料を充填することで、FPC110に対して第1の成形部品本体部121Xを一体成形する第3工程が行われる(
図4(d)参照)。この第3工程の開始の際もガスケット部122の架橋反応が完了していないのが望ましい。
【0033】
第1の成形部品本体部121Xが一体成形された後に、
図5に示すように、第2の成形部品本体部121Yが成形される。この成形に用いられる金型も、上型50Yと下型60Yを備えている。この金型内に第1の成形部品本体部121Xが成形済みのインサート部品が配された後に型締めが行われる(
図5(a)参照)。その後、金型のキャビティc2に材料が充填されることで、
図5(b)に示すように、FPC110に対して第2の成形部品本体部121Yも一体成形される。この成形開始の際には、第1の成形部品本体部121X及びガスケット部122の架橋反応が完了していないのが望ましい。以上の工程により、FPC110に成形部品本体部121が一体的に設けられる。
【0034】
次に、
図6及び
図7を参照して、第2の成形部品本体部121Yを先に成形する場合を説明する。この成形に用いられる金型も、上型50Yと下型60Z1とを備えている。この金型内に上記のインサート部品が配された後に型締めが行われる(
図6(a)参照)。型締め後に、金型のキャビティc2に材料を充填することで、FPC110に対して第2の成形部品本体部121Yが一体成形される(
図6(b)参照)。この工程の開始の際もガスケット部122の架橋反応が完了していないのが望ましい。なお、この成形時において、FPC110が成形圧力によって変形しないように、FPC110は、成形部品本体部121が設けられない位置において、金型に固定するのが望ましい。具体的には、位置決めピンによってFPCを金型に固定したり、FPCをエアによって下型に向かって吸引したりすればよい。
【0035】
第2の成形部品本体部121Yが一体成形された後に、
図7に示すように、第1の成形部品本体部121Xが成形される。この成形に用いられる金型も、上型50Xと下型60Z2を備えている。なお、上型50Xは第1の成形部品本体部121Xを先に成形する場合に説明した上型50Xと同様の構成であり、凹部51が設けられている。
【0036】
この金型内に第2の成形部品本体部121Yが成形済みのインサート部品が配された(第2工程)後に型締めが行われる(
図7(a)参照)。その後、金型のキャビティc1に
材料が充填されることで、
図7(b)に示すように、FPC110に対して第1の成形部品本体部121Xも一体成形される(第3工程)。この成形開始の際には、第2の成形部品本体部121Y及びガスケット部122の架橋反応が完了していないのが望ましい。以上の工程により、FPC110に成形部品本体部121が一体的に設けられる。
【0037】
<本実施例に係る成形部品付きFPC100及びその製造方法の優れた点>
本実施例によれば、一体成形(インサート成形)の際に、ガスケット部122と金型の内壁面との間で実装部品130が密閉される密閉空間が形成される。これにより、キャビティc1に材料を充填する際に、材料が密閉空間に漏れ出ることが抑制され、実装部品130に材料が付着してしまうことを抑制することができる。従って、漏れ出した材料を除去する作業が不要となり、成形部品を成形後の後工程の負荷を抑制することができる。
【0038】
また、インサート成形時において、成形部品本体部121の成形材料をキャビティc1に充填する際に、実装部品130に対しては、ガスケット部122を介して成形圧力が作用する。これにより、実装部品130に作用する成形圧力を低減することができる。従って、インサート成形の際に成形材料の注入圧力を低くする必要がないことから、充填不足の発生を抑制できるといった利点もある。
【0039】
また、上記の通り、ガスケット部122は、架橋反応が完了する前の状態で実装部品130に取り付けられ、かつ第3工程の開始の際も架橋反応が完了していないようにするのが望ましい。このようにすれば、成形部品本体部121とガスケット部122とを相溶させ易くなり、これらを一体化し易くすることができる。また、成形部品本体部121とガスケット部122を同一の材料にすれば、より一層、成形部品本体部121とガスケット部122とを相溶させ易くすることができる。
【0040】
ただし、相溶性が要求されないような場合には、ガスケット部122の架橋反応が完了した後に、第1工程において、このガスケット部122を実装部品130に取り付けることもできる。また、成形部品本体部121とガスケット部122を異なる材料で構成することもできる。
【0041】
(実施例2)
図8には、本発明の実施例2が示されている。本実施例においては、実装部品に係る構成が上記実施例1と異なる場合の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0042】
図8は本発明の実施例2に係る成形部品付きフレキシブルプリント配線板(以下、「成形部品付きFPC100A」と称する)の説明図である。なお、同図(a)は成形部品付きFPC100Aの模式的断面図であり、同図(b)は金型内にインサート部品を配置して型締めした際の様子を示す模式的断面図である。
【0043】
上記実施例1においては、実装部品130が成形部品120の表面から飛び出すように構成されるのに対して、本実施例に係る成形部品付きFPC100Aにおいては、実装部品130Aは成形部品120の表面よりも内側に設けられる。その他の構成は、実施例1と同一である。
【0044】
図8(b)には、実施例1で説明した第1の成形部品本体部を成形するための金型が示されている。本実施例においては、上型50XAの内壁面に凹部を設けなくても、型締めした際に、上型50XAと実装部品130Aとの間に隙間を設けることができる。本実施例においても、型締めが行われた状態においては、ガスケット部122の一端(下端)は
FPC110に接し、他端(上端)は上型50XAの天井面に接した状態となる。これにより、ガスケット部122と金型(より具体的には上型50XA)の内壁面(天井面)との間で実装部品130Aを密閉する密閉空間が形成される。
【0045】
従って、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。なお、ガスケット部122は、架橋反応が完了する前の状態で実装部品130Aに取り付けられ、かつ第3工程の開始の際も架橋反応が完了していないようにするのが望ましい点については、実施例1と同様である。また、成形部品本体部121とガスケット部122が同一の材料により構成されるのが望ましい点についても、実施例1と同様である。
【0046】
(その他)
上記実施例1,2で示したガスケット部122は、一般的なゴム製品などの成形技術により成形することができるため、様々な形状の実装部品に適用可能である。例えば、
図9(a)に示す変形例に係る成形部品付きFPC100Bのように、実装部品130Bが円柱状の部材の場合には、ガスケット部122Bは円筒形状にすればよい。また、
図9(b)に示す変形例に係る成形部品付きFPC100Cのように、実装部品130Cの形状が複雑な形状であっても、ガスケット部122Cは、その内周面の平面形状が実装部品130Cの平面形状と相似形状となるようにすればよい。外周面の平面形状については、実装部品130Cの平面形状と相似形状にしなくても構わない。
図9(b)においては、外周面を相似形状にした場合を実線で示し、相似形状にしない場合の一例を太い点線で示している。
【符号の説明】
【0047】
10:装置
11:ケース
11a:貫通孔
50X,50XA,50Y:上型
51:凹部
60X,60Y,60Z1,60Z2:下型
100,100A,100B,100C:成形部品付きFPC
110:FPC
111:ベースフィルム
112:配線
113:カバーフィルム
114:接着剤層
120:成形部品
121:成形部品本体部
121X:第1の成形部品本体部
121Y:第2の成形部品本体部
121a:開口部
122,122B,122C:ガスケット部
130,130A,130B,130C:実装部品
c1,c2:キャビティ