(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175758
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】静止誘導電器の接続構造
(51)【国際特許分類】
H01F 27/02 20060101AFI20241212BHJP
H01F 27/04 20060101ALI20241212BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20241212BHJP
H01F 27/36 20060101ALI20241212BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20241212BHJP
H01F 30/12 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01F27/02 150
H01F27/04 B
H01F27/32 140
H01F27/36 152
H01F30/10 S
H01F30/12 P
H01F30/12 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093731
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横川 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】寺倉 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】井坂 進
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】片山 洋子
(72)【発明者】
【氏名】高野 啓
【テーマコード(参考)】
5E044
5E058
5E059
【Fターム(参考)】
5E044CA10
5E058CC25
5E059BB03
5E059BB06
5E059JM01
(57)【要約】
【課題】機器の大型化を招くことなく発熱を抑制することのできる静止誘導電器の接続構造を提供する。
【解決手段】3相の静止誘導電器が収納された本体タンクと、一端側が前記本体タンクに取り付けられ、前記静止誘導電器から引き出された3相のリードを夫々個別に格納する、3本の各相ダクトと、3本の前記各相ダクトの他端側に、3本の前記各相ダクトを繋ぐように接続された1本の共通ダクトと、前記共通ダクトに取り付けられ、前記リードと他の機器を接続するための取り合い装置と、前記静止誘導電器の冷却装置と前記共通ダクトとを接続する冷却配管を有し、冷却媒体が、3本の前記各相ダクト及び1本の前記共通ダクトを介して、前記本体タンクと前記冷却装置の間で循環する冷却機構と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相の静止誘導電器が収納された本体タンクと、
一端側が前記本体タンクに取り付けられ、前記静止誘導電器から引き出された3相のリードを夫々個別に格納する、3本の各相ダクトと、
3本の前記各相ダクトの他端側に、3本の前記各相ダクトを繋ぐように接続された1本の共通ダクトと、
前記共通ダクトに取り付けられ、前記リードと他の機器を接続するための取り合い装置と、
前記静止誘導電器の冷却装置と前記共通ダクトとを接続する冷却配管を有し、冷却媒体が、3本の前記各相ダクト及び1本の前記共通ダクトを介して、前記本体タンクと前記冷却装置の間で循環する冷却機構と、
を有することを特徴とする静止誘導電器の接続構造。
【請求項2】
前記静止誘導電器は、相あたり1つ合計3つの巻線を有し、3つの前記巻線の両端から引き出された前記巻線1つあたり2本、計6本の前記リードを備え、
各相の1つの前記巻線から引き出された逆方向の電流の流れる2本のリードが、同一の前記各相ダクトに収容され、
3本の前記各相ダクトで引き出された6本の前記リードが、前記共通ダクト内で位置調整され、6つの前記取り合い装置から引き出されている
ことを特徴とする請求項1に記載の静止誘導電器の接続構造。
【請求項3】
前記静止誘導電器は、相あたり1つ合計3つの巻線を有し、3つの前記巻線の両端から引き出された前記巻線1つあたり2本、計6本の前記リードを備え、
各相の1つの前記巻線から引き出された逆方向の電流の流れる2本のリードが、同一の前記各相ダクトに収容され、
3本の前記各相ダクトで引き出された6本の前記リードが、前記共通ダクト内でデルタ結線を構成し、3つの前記取り合い装置から引き出されている
ことを特徴とする請求項1に記載の静止誘導電器の接続構造
【請求項4】
前記各相ダクト、前記共通ダクトのいずれか一方、または両方が、前記本体タンクより透磁率の低い金属で製作されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の静止誘導電器の接続構造。
【請求項5】
前記各相ダクト、前記共通ダクトのいずれか一方、または両方の内面に、前記本体タンクより透磁率が低い金属で製作された電磁シールドが取り付けられている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の静止誘導電器の接続構造。
【請求項6】
前記本体タンクと前記各相ダクトとの間に、絶縁材料で構成されたスペーサが設けられ、前記本体タンクと前記各相ダクトとの間が電気的に導通していない
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の静止誘導電器の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、静止誘導電器の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、経年した静止誘導電器を更新するケースが増加している。その際、既設器を製作、輸送、現地組立した際から環境条件が変化し、現在の状況では既設器と同等の工程、作業が困難となり、発生費用が増大する場合も多い。製作においては、特に既設器が発電所向け昇圧変圧器として外鉄形静止誘導電器を適用しており、その更新で内鉄形静止誘導電器を適用する場合には、変圧器内部構造の違いから、発電機の低圧側接続部の位置が大きく異なる場合がある。
【0003】
また、新設発電所においても、その低圧端子配置の構成により、昇圧変圧器の低圧端子との接続部分に距離が生じ、静止誘導電器本体タンクと低圧端子接続点との間に距離が生じる場合があった。更に、事故に対する高い安全性が求められる場所として代表的な据付場所には、環境規制が厳しい水力発電所や大都市の地下変電所があり、静止誘導電器を更新する際、漏油事故や火災事故のリスクが無いガス絶縁静止誘導電器を適用、もしくは新設するケースが近年増えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
静止誘導電器の低圧端子と、発電所や変電所の低圧接続部分との間に距離が生じている場合、低圧端子から低圧接続部分までを、一体ダクトまたは相毎にわかれたダクト(各相ダクト)で接続する。大容量の昇圧用変圧器では、低圧側は発電機に接続されており、数千アンペアという非常に大きな定格電流が流れ、この大電流により生じる磁束が一体ダクト、各相ダクト、本体タンク、外部機器への接続点との間の種々の構造物の金属壁に入り込み、渦電流が発生することで過熱に寄与してしまうという問題があり、過熱防止のためダクト直径を大きくし、断面を広くする必要がある。
【0006】
また、ダクト長が大きい場合、その端子部の位置を固定しダクトの重量を支持するための付属部品、架台が必要となる。更に、静止誘導電器として、ガス絶縁の静止誘導電器を適用し、大気圧よりも高い圧力でガスを挿入している場合、その圧力に応じた圧力容器規格に準拠して製作した静止誘導電器本体筐体の外装周りには構造上の制約が多く、更に冷却媒体であるSF6ガスは油に対して熱容量が約1/3と小さく、絶縁油等の液体冷却媒体と比較して冷却能力が低いという問題点を有している。
【0007】
構造物に入り込む磁束を減らす対策として、ダクトの断面を大きくする場合、ダクトが本体タンクに接続される開口部を大きく製作する必要があるが、三相分の端子を同一ダクトで引き出しを行う場合には、この開口部に必要な強度を確保するために、本体タンクを大型化することや、開口部に補強部品を設けることが必要となる。これにより静止誘導電器の機器全体で高コスト化及び重量増加、現地据付スペース圧迫等が発生し、接合部からのガスリークが発生する懸念がある。
【0008】
本発明は、上述した従来の事情に対処してなされたものであり、その目的は、機器の大型化を招くことなく発熱を抑制することのできる静止誘導電器の接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の静止誘導電器の接続構造は、3相の静止誘導電器が収納された本体タンクと、一端側が前記本体タンクに取り付けられ、前記静止誘導電器から引き出された3相のリードを夫々個別に格納する、3本の各相ダクトと、3本の前記各相ダクトの他端側に、3本の前記各相ダクトを繋ぐように接続された1本の共通ダクトと、前記共通ダクトに取り付けられ、前記リードと他の機器を接続するための取り合い装置と、前記静止誘導電器の冷却装置と前記共通ダクトとを接続する冷却配管を有し、冷却媒体が、3本の前記各相ダクト及び1本の前記共通ダクトを介して、前記本体タンクと前記冷却装置の間で循環する冷却機構と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、機器の大型化を招くことなく発熱を抑制することのできる静止誘導電器の接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る静止誘導電器の接続構造の構成を示す模式図。
【
図2】第2実施形態に係る静止誘導電器の接続構造の低圧側主回路の結線の例を示す模式図。
【
図3】第2実施形態に係る静止誘導電器の接続構造の低圧側主回路の結線の他の例を示す模式図。
【
図4】第3実施形態に係る静止誘導電器の接続構造の要部構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係わる静止誘導電器の接続構造を示した図であり、三相一括の中身を収容した本体タンクからリード線を引き出した以降に必要な一連の構造物配置の一例を示した模式図である。
【0013】
図示していない三相分の静止誘導電器の中身構造(鉄心、巻線等)を収容した静止誘導電器の本体タンク1から、低圧巻線のリード線10(
図1中点線で示している。)を相ごとに内包した、3本の各相ダクト2が引き出されている。すなわち、本体タンク1に、3本の各相ダクト2の一端(
図1中下側の端部)が接続されている。リード線10は、必要に応じて、より線のほか、棒状、板状、パイプ状等の導体になることもあり、その形状は問わない。
【0014】
3本の各相ダクト2の他端(
図1中上側の端部)は、1本の共通ダクト3に接続され、リード線10は、共通ダクト3内で位置調整や必要な接続をされた後、発電機や送電線といった外部機器に繋がる取り合い装置5に繋げられている。必要に応じて各相ダクト2、共通ダクト3を総称して接続ダクト4と称する。接続ダクト4は本体タンク1と空間的には連続した状態であり、本体タンク1と同じ冷却媒体(油、ガス等)を共有している。
【0015】
共通ダクト3からは、冷却器7へと繋がる上部冷却器配管6が引き出され、冷却器7に接続されている。冷却器7の下部からは、下部冷却器配管8が、本体タンク1の下部に接続され、冷却媒体の循環経路に各相ダクト2、共通ダクト3を含ませる構造としている。なお、本例は接続ダクト4をタンク上面から引き出しているが、上面以外の方向(側面等)から接続ダクト4を引き出す静止誘導電器においても、同様に適用が可能である。また、
図1では、左右に2つの冷却器7、上部冷却器配管6、下部冷却器配管8を設けた場合について示しているが、これらは1つずつ設けても良く、3つ以上設けても良く、その数は限定されない。
【0016】
上記構成の第1実施形態では、各相ダクト2が取り合い点と共通ダクト3の支持鋼材を兼ねることで共通ダクト3を支持する架台を削減又は簡素化することができるので、接続構造を小型軽量化できる。また、接続のために本体タンク1に大きな開口部を設ける必要が無いため、本体タンク1の強度維持が容易で、かつ静止誘導電器の冷却媒体の漏出リスクを低減することができる。また、本体タンク1上部の冷却媒体の流路を、接続ダクト4と共用することにより、冷却配管を削減することができる。さらに、接続ダクト4を冷却媒体の流路とすることで、大電流を通電する必要のある低圧巻線のリード線10及びこれを内包する接続ダクト4を効率よく冷却することができ、発熱による温度の上昇を抑制することができる。
【0017】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係わる静止誘導電器の接続構造の要部構成を示した図であり、第1実施形態の静止誘導電器における、低圧側の結線の例を示した模式図である。低圧巻線9の両端子(u1、u2、v1、v2、w1、w2)に、それぞれリード線10が接続されている。リード線10は本体タンク1の内部で結線せず、同じ低圧巻線9から引き出されたリード線10、すなわちu1とu2、v1とv2、w1とw2端子に接続された2本のリード線10が、それぞれ1つの各相ダクト2の中を通り共通ダクト3に繋がっている。
【0018】
低圧巻線の結線はデルタ結線とし、共通ダクト3内で結線のための接続を行い、3つの取り合い装置5にて三相交流の各相端子(u、v、w)として外に引き出した構成となっている。また、例えば、
図3に示すように、共通ダクト3内では結線のための接続を行わず、6つの取り合い装置5によってそれぞれ引き出し、外で結線のための接続が行えるように三相交流の各端子として外に引き出す構成としても良い。なお、
図3に示した共通ダクト3内のリード線10の這い回しは、取り合い装置5を出てからの結線を組ませやすい状態とするための一例であり、リード線10の這い回しは
図3に示したもの以外でも可能である。
【0019】
また、磁束による発熱を抑制するためには、共通ダクト3および各相ダクト2のいずれか一方またはその両方を、本体タンク1を構成する金属(例えば、鉄系金属等)より低透磁率の金属(例えば、アルミニウム等)で構成すること、或いは、共通ダクト3および各相ダクト2のいずれか一方またはその両方の内面に、低透磁率の金属(例えば、アルミニウム等)で作られたシールドを設置することもできる。
【0020】
各相ダクト2の内部に内包された2本のリード線10は、絶縁素材で作られた支持物により、絶縁および構造上必要な最小距離をもって対向している。なお、この構造は1台の静止誘導電器に三相の低圧回路が複数同時に組み込まれている静止誘導電器においても、同様に適用が可能である。
【0021】
上記構成の第2実施形態によれば、各相ダクト2内に隣接し設置された2本のリード線10には常に逆方向の電流が流れる。よって、2本のリード線10の一方からは右回りに発生する磁束、もう一方からは左回りに発生する磁束が同じ大きさで常に存在する。これにより、リード線10に挟まれた領域以外では、2本のリード線10によって発生した磁束が相殺される。
【0022】
さらに、1本当たりのリード線10に流れる電流も、デルタ結線に接続される前のものであるから、それぞれのリード線10から発生する磁束も1/√3倍になる。これらの作用によって、リード線10から発生した磁束が入射することで発生する渦電流による、各相ダクト2の発熱を抑制することができ、各相ダクト2を小形化することができる。また、上記したように、各相ダクト2および共通ダクト3については、必要に応じて低透磁率の金属(例えば、アルミニウム等)で構成し、また、低透磁率の金属(例えば、アルミニウム等)で作られた電磁シールドを設置することで、磁束の入射を防ぐことができ、さらなる過熱抑制措置が可能となる。
【0023】
(第3実施形態)
図4は、第3実施形態に係わる静止誘導電器の接続構造を示した図であり、静止誘導電器全体の循環電流発生防止のために必要な絶縁物の挿入箇所について示した模式図である。なお、
図4において、
図1に示した静止誘導電器の接続構造と対応する部分には、同一の符号が付してある。
【0024】
本第3実施形態では、
図4に示すように、本体タンク1と共通ダクト3との間に共通ダクト架台11を設け、この共通ダクト架台11によって、本体タンク1上に共通ダクト3を支持する構成となっている。なお、
図4において図示は省略しているが、第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、冷却器7、上部冷却器配管6、下部冷却器配管8等から構成され、本体タンク1、各相ダクト2、共通ダクト3内に冷媒を循環させる冷却機構が設けられている。
【0025】
本第3実施形態において、本体タンク1に対して共通ダクト3を支持する構造物である共通ダクト架台11と本体タンク1が接する面の部分に絶縁板12が挿入されており、本体タンク1と各相ダクト2との間の境界部分となるフランジ面に絶縁スペーサ13が挿入されている。
【0026】
図4に示すような静止誘導電器の接続構造では、リード線10で発生した漏れ磁束が、共通ダクト3および各相ダクト2に入射すると電流が発生する。発生した電流は、例えば、本体タンク1-各相ダクト2-共通ダクト3-共通ダクト架台11-本体タンク1のように金属構造物の閉回路にそって循環電流を形成し、ダクトおよび本体タンクの過熱の原因となる。本第3実施形態では、この循環流路中に、絶縁板12、絶縁スペーサ13等の絶縁物を挿入することにより、閉回路の形成を阻止し、循環電流による構造物の過熱が生じる危険性を抑制することができる。
【0027】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1……本体タンク、2……各相ダクト、3……共通ダクト、4……接続ダクト、5……取り合い装置、6……上部冷却器配管、7……冷却器、8……下部冷却器配管、9……巻線、10……リード線、11……共通ダクト架台、12……絶縁板、13……絶縁スペーサ。