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特開2024-175767絶縁スペーサの成形用型及び成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175767
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】絶縁スペーサの成形用型及び成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/26 20060101AFI20241212BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B29C39/26
B29C39/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093750
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健次
(72)【発明者】
【氏名】赤上 典之
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202AA36
4F202AB13
4F202AD03
4F202AG19
4F202AH81
4F202AJ08
4F202AJ09
4F202CA01
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK01
4F202CQ01
4F202CQ05
4F204AA36
4F204AB13A
4F204AD03
4F204AG19
4F204AH81
4F204AJ08
4F204EA03
4F204EB01
4F204EB12
4F204EK17
4F204EK24
(57)【要約】
【課題】工程の簡略化、成形における制約の緩和を図ること。
【解決手段】中心導体(11)を支持しつつ中心導体の周囲に設けられてコーン形状に形成されるスペーサコーン部(12)を備えた絶縁スペーサ(10)の成形用型(31)の発明である。成形用型は、絶縁スペーサに応じた形状のキャビティ(33)を形成する下型(32)及び上型(34)を備えている。キャビティは、複数のスペーサコーン部に対応する複数のスペーサコーン部形成部(35)と、2つのスペーサコーン部形成部に連通するスリット状に形成され、キャビティの内部に注入される樹脂材が流れる流路(39)とを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体を支持しつつ該中心導体の周囲に設けられてコーン形状に形成される複数のスペーサコーン部を備えた絶縁スペーサの成形用型であって、
前記絶縁スペーサに応じた形状のキャビティを形成する下型及び上型を備え、
前記キャビティは、前記複数のスペーサコーン部に対応する複数のスペーサコーン部形成部と、
少なくとも2つの前記スペーサコーン部形成部に連通するスリット状に形成され、前記キャビティの内部に注入される樹脂材が流れる流路とを備えていることを特徴とする絶縁スペーサの成形用型。
【請求項2】
前記スペーサコーン部形成部は、前記コーン形状の頂部形成部分を底側にして配置され、
前記流路は、前記下型における前記スペーサコーン部形成部の上下幅全体に亘って形成されることを特徴とする請求項1に記載の絶縁スペーサの成形用型。
【請求項3】
前記流路は、連結する前記スペーサコーン部形成部の間に複数並んで形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の絶縁スペーサの成形用型。
【請求項4】
前記絶縁スペーサにて3つの前記スペーサコーン部は直線方向に並んで設けられ、
前記スペーサコーン部形成部は、3つの前記スペーサコーン部に対応して直線方向に並んで3つ形成され、
前記流路は、3つの前記スペーサコーン部形成部のうち、並び方向にて中央の前記スペーサコーン部形成部と、並び方向両側の前記スペーサコーン部形成部とを連結する位置に設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の絶縁スペーサの成形用型。
【請求項5】
前記絶縁スペーサにて、3つの前記スペーサコーン部が周方向に並んで設けられ、
前記スペーサコーン部形成部は、3つの前記スペーサコーン部に対応して周方向に並んで3つ形成され、
前記流路は、3つの前記スペーサコーン部形成部全てに連通する3方向に分岐した形状に設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の絶縁スペーサの成形用型。
【請求項6】
前記絶縁スペーサにて、3つの前記スペーサコーン部が周方向に並んで設けられ、
前記スペーサコーン部形成部は、3つの前記スペーサコーン部に対応して周方向に並んで3つ形成され、
3つの前記スペーサコーン部形成部それぞれが2本の前記流路を介して他の2つの前記スペーサコーン部形成部に連通されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の絶縁スペーサの成形用型。
【請求項7】
前記請求項1または請求項2に記載の成形用型と、前記成形用型の前記キャビティの内部に樹脂材を注入するノズルとを用い、中心導体を支持しつつ該中心導体の周囲に設けられてコーン形状に形成される複数のスペーサコーン部を備えた絶縁スペーサの成形方法であって、
前記キャビティにおける前記コーン形状の頂部形成部分を下側にして前記成形用型を配置する型配置工程と、
前記ノズルを介して前記キャビティの内部に前記樹脂材を複数回注入し、前記流路を通じて前記複数のスペーサコーン部形成部全てに前記樹脂材を流入させ、複数の樹脂層を上下方向に積層する積層工程と、
前記積層工程にて積層した前記樹脂層が硬化し、前記成形用型から前記絶縁スペーサを離型する硬化工程と、
前記絶縁スペーサにて、前記流路内で硬化した前記樹脂材で形成される残留部を前記スペーサコーン部から除去する除去工程とを備えていることを特徴とする絶縁スペーサの成形方法。
【請求項8】
前記除去工程の実施後、前記スペーサコーン部における前記残留部の除去部分を研磨する仕上工程を更に備えていることを特徴とする請求項7に記載の絶縁スペーサの成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、ガス絶縁開閉装置に用いられる絶縁スペーサの成形用型及び成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ガス絶縁機器の金属容器内に導体を支持するために用いられる絶縁スペ-サを開示している。かかる絶縁スペーサは、高電圧側と接地側間の材料の誘電率を変化させ、高電圧側が接地側に比べ高い誘電率を保持するように構成される。このような構成によって、絶縁性能を満足させつつ、よりコンパクトな絶縁スペーサを提供しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-126527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、熱硬化性樹脂や充填材が混練された材料で紐状押出品を得る工程と、紐状押出品を絶縁スペ-サ成形用金型の下型に投入して順次渦巻き状に周回充填供給する工程とが必要となり、工程が複雑化する、という問題がある。また、特許文献1は、紐状押出品を得るための材料にて、充填剤の供給を直線的に増大、減少させて紐状押出品を連続して押し出しており、該押し出しを中断できない、という成形上の制約がある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、工程の簡略化、成形における制約の緩和を図ることができる絶縁スペーサの成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における一態様の絶縁スペーサの成形用型は、中心導体を支持しつつ該中心導体の周囲に設けられてコーン形状に形成される複数のスペーサコーン部を備えた絶縁スペーサの成形用型であって、前記絶縁スペーサに応じた形状のキャビティを形成する下型及び上型を備え、前記キャビティは、前記複数のスペーサコーン部に対応する複数のスペーサコーン部形成部と、少なくとも2つの前記スペーサコーン部形成部に連通するスリット状に形成され、前記キャビティの内部に注入される樹脂材が流れる流路とを備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明における一態様の絶縁スペーサの成形方法は、前記成形用型と、前記成形用型の前記キャビティの内部に樹脂材を注入するノズルとを用い、中心導体を支持しつつ該中心導体の周囲に設けられてコーン形状に形成される複数のスペーサコーン部を備えた絶縁スペーサの成形方法であって、前記キャビティにおける前記コーン形状の頂部形成部分を下側にして前記成形用型を配置する型配置工程と、前記ノズルを介して前記キャビティの内部に前記樹脂材を複数回注入し、前記流路を通じて前記複数のスペーサコーン部形成部全てに前記樹脂材を流入させ、複数の樹脂層を上下方向に積層する積層工程と、前記積層工程にて積層した前記樹脂層が硬化し、前記成形用型から前記絶縁スペーサを離型する硬化工程と、前記絶縁スペーサにて、前記流路内で硬化した前記樹脂材で形成される残留部を前記スペーサコーン部から除去する除去工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キャビティにて流路を通じて2つのスペーサコーン部形成部に樹脂材を流入させることができ、複数のスペーサコーン部形成部に対し複数の樹脂層を積層した成形にて、樹脂材を注入する工程の簡略化を図ることができる。また、キャビティに樹脂材を注入して成形を行えるので、成形中に従来のような紐状押出品を得る制約を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1Aは、第1の実施の形態に係る絶縁スペーサを下方から見た図であり、図1Bは、図1Aの絶縁スペーサの断面を模式化して表した図である。
図2図2Aは、第1の実施の形態に係る絶縁スペーサの成形装置の概略構成図であり、図2Bは、前記成形装置の成形用型を上方から見た図である。
図3】前記成形用型に形成されるキャビティの説明用斜視図である。
図4図4A及び図4Bは、第1の実施の形態における準備工程の説明図である。
図5】第1の実施の形態における積層工程の初期段階の状態を示す説明図である。
図6】第1の実施の形態における積層工程の完了後の状態を示す説明図である。
図7】第1の実施の形態における硬化後の離型状態の説明図である。
図8】第1の実施の形態における除去工程及び仕上工程の説明図である。
図9】第1の実施の形態における変形例の成形用型を上方から見た図である。
図10】第2の実施の形態に係る絶縁スペーサを下方から見た図である。
図11】第2の実施の形態の成形用型を上方から見た図である。
図12】第2の実施の形態における変形例の成形用型を上方から見た図である。
図13】第3の実施の形態の成形用型を上方から見た図である。
図14】第3の実施の形態における変形例の成形用型を上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を説明する前に、本発明の実施の形態に至った経緯について説明する。
従来のガス絶縁開閉装置として、金属製の密封容器の中に高圧導体が配置された構造が知られている。このようなガス絶縁開閉装置において、高圧導体を密封容器の所定の位置に固定するための絶縁スペーサと呼ばれる固体絶縁物が用いられている。
【0011】
従来、一般的に用いられる円盤型の絶縁スペーサにおいては、中央部に高圧導体が設けられ、高圧導体を支持するように絶縁スペーサが設けられる。絶縁スペーサの周囲には金属フランジが取り付けられ、金属フランジにより、密封容器の連結フランジに挟まれて、密封容器に固定される。
【0012】
近年、より経済性が要求されるようになり、ガス絶縁開閉装置のコンパクト化が望まれている。従来の絶縁スペーサにおいては、SF6を主成分とする絶縁ガスと固体絶縁物の誘電率の違いを要因とするガス空間における電界集中等がコンパクト化の妨げとなっている。そこで、コンパクト化を図るため、コーン型絶縁スペーサの比誘電率を径方向に変化させることにより、その周辺の導体表面および近傍の電界やスペーサ表面および近傍の電界を低減する検討がされている。
【0013】
このようなコーン型絶縁スペーサにおいては、高圧導体に接触する部位またはその周辺から接地側に向かって電界が低減するように比誘電率を傾斜させた絶縁体が採用される。かかる絶縁スペーサにおいては、比誘電率の傾斜した絶縁体による電界強度の低減、コンパクト化に加え、上述した成形の制約緩和及び工程の簡略化を図りつつ、設備負担の軽減、品質評価の観点から外観を良好に保つことが求められている。
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る絶縁スペーサの成形方法について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。以下の図においては、説明の便宜上、一部の構成を省略することがある。以下、第1の実施の形態に係る絶縁スペーサ、絶縁スペーサの成形装置、絶縁スペーサの成形方法、第2の実施の形態の順に説明する。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1Aは、第1の実施の形態に係る絶縁スペーサを下方から見た図であり、図1Bは、図1Aの絶縁スペーサの断面を模式化して表した図である。図1Aに示すように、本実施の形態の絶縁スペーサ10は、三相一括型の絶縁スペーサとされ、軸形状をなす3本の中心導体11を備えている。絶縁スペーサ10は、固定されるガス絶縁開閉装置の密封容器(不図示)の形状に応じて円形の外周形状に形成され、該外周には金属フランジ(不図示)が取り付けられる。
【0016】
なお、3本の中心導体11にあっては、三相を構成するR相、S相、T相の各相に応じて設けられ、各図面にて理解を容易にするため、中心導体11に対し「R」、「S」、「T」の文字を付して表す。
【0017】
絶縁スペーサ10は、直線方向(図1中左右方向)に所定間隔で並んで設けられる3つのスペーサコーン部12と、3つのスペーサコーン部12の周囲に連なって設けられる板状のベース部13とを備えている。本実施の形態の絶縁スペーサ10は、左から右方向に、R相のスペーサコーン部12、S相のスペーサコーン部12、T相のスペーサコーン部12の順に並んで設けられる。
【0018】
図1Bにも示すように、スペーサコーン部12は、中心導体11を支持して中心導体11の周囲に設けられる。スペーサコーン部12は、中心導体11と軸方向が同一とされるコーン形状に形成され、軸方向に沿った一方の面(図1B中下面)が凸面、他方の面(図1B中上面)が凹面とされる。よって、スペーサコーン部12は、図1Bにおいて、下端面がコーン形状の頂部とされ、上端面がコーン形状の底部とされる。
【0019】
スペーサコーン部12においては、軸方向に沿って、凸面から凹面に向かい、比誘電率が段階的に異なり、例えば段階的に比誘電率が減少する複数の絶縁樹脂層として第1~第5樹脂層21~25が積層される。よって、径方向の内側から外側へ、中心導体11、第1~第5樹脂層21~25が順に、略同心円状に配置される。第1~第5樹脂層21~25は、後述する成形方法によって、互いに混ざり合うことがないように構成され、比誘電率が異なる複数の絶縁樹脂層が、これらの複数の界面が実質的に平行に積層された状態となる。なお、本実施の形態では、第5樹脂層25とベース部13とが同一の樹脂材によって同じ比誘電率となるよう形成される。
【0020】
続いて、第1の実施の形態に係る絶縁スペーサ10の成形装置30について、図2及び図3を参照して説明する。図2Aは、第1の実施の形態に係る絶縁スペーサの成形装置の概略構成図である。図2Bは、前記成形装置の成形用型を上方から見た図である。
【0021】
上述した絶縁スペーサ10を成形する成形装置30は、図2Aに示すように、成形用型31と、ディスペンサ40とを備えて構成される。成形装置30にあっては、温度と真空度を制御できる不図示の槽の中に配置される。なお、図2Aでは、図1Bと同様に、成形用型31の断面を模式化して表している。
【0022】
注型成形用の金型となる成形用型31は、下方に位置する下型32と、下型32の上方に位置し、下型32との間にキャビティ33を形成する上型34とを有している。成形用型31は、下型32及び上型34を組み合わせて構成される。成形用型31は、一般的には注型金型であるが金属製の型に限定されるものでなく、他の材料によって構成してもよい。
【0023】
成形用型31は、上述の絶縁スペーサ10を製造できるようキャビティ33の形状が設計される。言い換えると、成形用型31では、下型32及び上型34によって、スペーサコーン部12を3つ備えた三相一括型の絶縁スペーサ10に応じた形状のキャビティ33を形成している。
【0024】
キャビティ33は、図1Bにて断面視したコーン形状の3つのスペーサコーン部12に対応する3つのスペーサコーン部形成部35と、3つのスペーサコーン部形成部35それぞれの上端に連なるベース部形成部36とを備えている。3つのスペーサコーン部形成部35は、3つのスペーサコーン部12に対応してベース部形成部36の直径方向となる直線方向(図2B中左右方向)に並んで設けられる。本実施の形態のキャビティ33は、左から右方向に、R相のスペーサコーン部形成部35、S相のスペーサコーン部形成部35、T相のスペーサコーン部形成部35の順に並んで設けられる。
【0025】
スペーサコーン部形成部35は、下方に向かって凸状のコーン形状をなす。スペーサコーン部形成部35における凸状の底面中央部は、スペーサコーン部12におけるコーン形状の頂部を形成する部分となっている。言い換えると、かかるコーン形状の頂部形成部分を底側にしてスペーサコーン部形成部35が配置される。スペーサコーン部形成部35には、中心導体11が上下に貫通して設置可能とされ、かかる貫通部分にOリング37が設けられる。
【0026】
上型34にて、左右に3つ並ぶスペーサコーン部形成部35のうち、中央のスペーサコーン部形成部35の上方に対応する位置には、ディスペンサ40の後述するノズル41を挿入可能な注入口38が形成されている。本実施の形態において、注入口38は、中央のスペーサコーン部形成部35の上方における左右の2箇所に形成されているが、いずれか一方の形成を省略してもよい。注入口38は、上型34を貫通して形成され、キャビティ33の内部と成形用型31の外部とを連通している。注入口38は、上下方向に対し傾斜する方向に延出しており、スペーサコーン部形成部35の上方にて該スペーサコーン部形成部35のコーン形状を延出した位置に沿って形成される。よって、注入口38は、その形成位置にて、スペーサコーン部形成部35におけるコーン形状の傾斜角に応じて該傾斜角に平行に延出している。
【0027】
図3は、前記成形用型に形成されるキャビティの説明用斜視図である。なお、図3は、キャビティ33における下型32の形成部分を図示している。図3にも示すように、キャビティ33は、下型32においてスリット状に形成される2本の流路39を更に備えている。2本の流路39は、3つのスペーサコーン部形成部35の並び方向となる図3中左右方向にそれぞれ延出している。2本の流路39のうち、一方の流路39は、R相のスペーサコーン部形成部35とS相のスペーサコーン部形成部35とに連通し、他方の流路39は、S相のスペーサコーン部形成部35とT相のスペーサコーン部形成部35とに連通している。よって、流路39は、3つのスペーサコーン部形成部35のうち、並び方向にて中央に位置するS相のスペーサコーン部形成部35と、並び方向両側に位置するR相、T相のスペーサコーン部形成部35とを連結する位置に設けられる。
【0028】
流路39は、下型32におけるスペーサコーン部形成部35の上下幅全体に亘って形成される。言い換えると、上下方向にて、下型32におけるスペーサコーン部形成部35の形成範囲と、流路39の形成範囲とが一致している。各流路39には、後述するノズル41を介してキャビティ33の内部に注入される後述の樹脂材が流れるようになる。よって、3つのスペーサコーン部形成部35及び2本の流路39の何れかに樹脂材を注入すると、それらの全てに樹脂材が流入するようになる。
【0029】
ディスペンサ40は、絶縁スペーサ10におけるスペーサコーン部12及びベース部13の材料となる樹脂材(樹脂という場合もある)を溶融した状態で成形用型31に注入可能な装置とされる。ディスペンサ40は、ノズル41、ミキサ42、第1樹脂用配管43、第2樹脂用配管44及び硬化剤用配管45を備えている。ディスペンサ40は、移動装置(不図示)を介して成形用型31の上方に配置される。移動装置は、シリンダや直動モータ、リニアモータ、コンベア、移動ステージ、スライダ、送りねじ構造等を用いた移動機構を採用できる。なお、本実施の形態では、ディスペンサ40を移動可能に設けた構成としているが、ディスペンサ40と成形用型31とが相対移動可能な構成であれば、それら両方を移動可能としたり、成形用型31だけを移動可能としたりしてもよい。
【0030】
ノズル41は、ミキサ42から供給される樹脂材を先端(下端)から吐出し、成形用型31の注入口38を通じてキャビティ33の内部に溶融した樹脂材を注入する。ノズル41は、所定の直線方向に延出する管状に形成され、アルミニウム、鉄等からなる金属製とする他、シリコーン、フッ素ゴム等プラスチックとしてもよく、基端側でミキサ42に接続された状態で定型性を維持できる剛性を備えていればよい。本実施の形態では、ノズル41の延出方向が上述のコーン形状の傾斜角に平行となる傾斜した状態を維持するようディスペンサ40が配置される。
【0031】
ミキサ42には、第1樹脂用配管43、第2樹脂用配管44から比誘電率が異なる主剤が供給され、硬化剤用配管45から主剤と反応し硬化させるための硬化剤が供給される。ミキサ42は、供給された主剤及び硬化剤を混合した樹脂材としてノズル41に供給する。ミキサ42には、スタティックミキサが用いられるが、ダイナミックスミキサとしてもよい。
【0032】
各配管43~45には、ノズル41からの樹脂材の吐出量、吐出時間を制御できるよう主剤及び硬化剤を供給する不図示の材料供給装置が接続される。材料供給装置は、2種以上の樹脂を貯留または必要に応じて所定の組成に調製し、制御装置による制御によってディスペンサ40に供給する。材料供給装置は、例えば、充填材及び熱硬化性樹脂を異なる割合で含む貯留槽と、これらを混合する混合装置と、組成を制御する制御装置とを含む構成としてもよいが、該構成に限定されるものでない。
【0033】
続いて、実施の形態に係る絶縁スペーサ10の成形方法について、図2に加え、図4図8を参照して説明する。
【0034】
本実施の形態における絶縁スペーサ10の成形方法にあっては、準備工程、型配置工程、積層工程、硬化工程、除去工程、仕上工程の順に実施される。
【0035】
先ず、図4A及び図4Bに示すように、準備工程が実施される。図4A及び図4Bは、準備工程の説明図であり、図4Aは準備工程の中途段階、図4Bは準備工程が完了した状態を示す。
【0036】
準備工程では、成形用型31の下型32から上型34を取り外して成形用型31が開放される。この状態で、下型32のキャビティ33において、3つのスペーサコーン部形成部35それぞれの底面中央部に中心導体11が貫通して配置される。中心導体11はねじ止め等によって成形用型31に固定される。
【0037】
中心導体11を配置した後、下型32の上に上型34を配置して成形用型31が閉塞される。この状態で、Oリング37が中心導体11の外周面に密着して樹脂材の注入後に樹脂材がキャビティ33の外部に漏れ出ないようになっている。
【0038】
準備工程の後、図2Aに示すように、型配置工程が実施される。図2Aは、型配置工程が完了した状態を示している。型配置工程では、準備工程でキャビティ33の内部に中心導体11を配置した成形用型31が、不図示のステージ上に配置される。このとき、各スペーサコーン部形成部35の凸状部分(コーン形状をなすスペーサコーン部12の頂部形成部分)が底側(下側)になるよう成形用型31が配置される。
【0039】
配置工程の後、図5及び図6に示すように、積層工程が実施される。積層工程では、樹脂層が複数(本実施の形態では5層)積層される。図5は、積層工程の初期段階の状態を示す説明図である。図6は、積層工程の完了後の状態を示す説明図である。
【0040】
図2Aは、積層工程の実施直前状態を示している。図2Aに示すように、積層工程は、先ず、不図示の移動装置を介してディスペンサ40を移動することで、ディスペンサ40のノズル41の下方に注入口38が配置される。このとき、ノズル41の下方に配置される注入口38の傾斜角(スペーサコーン部形成部35のコーン形状の傾斜角と同一)と同じ角度となるよう、ノズル41を上下方向に対して傾斜した姿勢とする。これにより、ノズル41と同一直線上に、注入口38と、該注入口38に連通するスペーサコーン部形成部35の傾斜角と平行に延出する部分とが配置される。
【0041】
図2Aに示すように成形用型31を配置した後、図5に示すように、ディスペンサ40を移動することで、注入口38及びS相のスペーサコーン部形成部35の内部にノズル41が挿入される。ノズル41の挿入量は、最初に積層される第1樹脂層21の形成位置に応じて制御される。
【0042】
その後、ディスペンサ40にて、各配管43~45から供給された主剤及び硬化剤がミキサ42で混合された樹脂材とされてノズル41に供給される。そして、混合された樹脂材がノズル41から吐出され、該樹脂材がキャビティ33におけるS相のスペーサコーン部形成部35の内部に注入される。
【0043】
注入された樹脂材は、S相のスペーサコーン部形成部35に連通する2本の流路39を通じてR相、T相のスペーサコーン部形成部35に流れ込み、3つのスペーサコーン部形成部35に樹脂材が流入する。そして、積層する第1樹脂層21の必要な厚み分となる樹脂材が注入されると、3つのスペーサコーン部形成部35と2本の流路39に流入した樹脂材の高さ位置(液面位置)が同じ上下位置に揃うように形成される。これにより、キャビティ33の内部に第1樹脂層21が積層される。
【0044】
第1樹脂層21の積層後、ディスペンサ40を移動し、ノズル41先端の上下位置が次に積層する第2樹脂層22(図5参照)の形成位置に応じた位置に調整される。その後、第1~第5樹脂層21~25に応じ、上述した第1樹脂層21の積層と同様の工程が更に4回繰り返される。言い換えると、5層となる第1~第5樹脂層21~25の積層数に応じて樹脂材がノズル41を介して5回注入される。これにより、第1樹脂層21~第5樹脂層25が上下方向に積層されて図6に示す状態となり、積層工程が完了される。最後の樹脂層となる第5樹脂層25はベース部13を含んで一体に連なって形成される。
【0045】
積層工程の後、図7に示すように、硬化工程が実施される。図7は、硬化後の離型状態の説明図である。硬化工程では、図6に示す積層工程が完了した成形用型31が所定温度の恒温槽に収納され、所定時間加熱されることで、積層した各樹脂層21~25の一次硬化が行われる。所定時間の硬化後、図7に示すように、成形用型31にて離型が行われ、絶縁スペーサ10が成形される。
【0046】
離型後の絶縁スペーサ10にあっては、各流路39に流入して硬化した樹脂材により残留部14が形成される。各流路39がスリット状に形成されるので、残留部14は2つのスペーサコーン部12を連結しつつベース部13の下面に連なる薄片状に形成される。
【0047】
硬化工程の後、図8に示すように、除去工程が実施される。図8は、除去工程及び仕上工程の説明図である。除去工程では、絶縁スペーサ10に形成された残留部14に外力を加え、スペーサコーン部12及びベース部13の境界位置14aで折って絶縁スペーサ10から残留部14が除去される。
【0048】
除去工程の後、仕上工程が実施される。仕上工程では、スペーサコーン部12及びベース部13における残留部14の除去部分(図1A中二点鎖線で図示)にバリ等の突出物が残存した場合、該突出物を取り除く。次いで、残留部14の除去部分がポリッシャー、研磨紙、研磨剤などを用いて研磨される。その後、絶縁スペーサ10が再度所定温度の恒温槽に収納されて二次硬化が行われ、所定温度に加熱後に取り出されて徐冷されることで絶縁スペーサ10が完成される。なお、仕上工程は、残留部14の除去部分に突出部等が存在せずに平滑な仕上がり面が形成されるのであれば省略してもよい。
【0049】
ここで、本実施の形態の成形方法で用いる樹脂は、加熱硬化されて絶縁スペーサ10として機能しうる、比誘電率が2~40であり、注入条件において流体状の絶縁性樹脂であってよい。具体的には、充填材を含有する熱硬化性樹脂であってよく、熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂、あるいはそれらの混合物であってよい。
【0050】
熱硬化性樹脂は、好ましくは、エポキシ樹脂である。エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂主剤と、硬化剤と、任意選択的に硬化促進剤とを含むことが好ましい。エポキシ樹脂主剤としては、脂肪族エポキシ、または脂環式エポキシ、あるいはこれらの混合物を用いることができる。脂肪族エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、ビスフェノールAD型エポキシ、ビフェニル型エポキシ、クレゾールノボラック型エポキシ、3官能以上の多官能型エポキシ等が挙げられるが、これらには限定されない。これらを単独で、または二種類以上混合して使用することができる。脂環式エポキシ樹脂としては、単官能型エポキシ、2官能型エポキシ、3官能以上の多官能型エポキシ等が挙げられるが、これらには限定されない。脂環式エポキシ樹脂も、単独で、または異なる二種以上の脂環式エポキシ樹脂を混合して用いることができる。
【0051】
熱硬化性樹脂の硬化剤としては、エポキシ樹脂主剤と反応し、硬化しうるものであれば特に限定されないが、酸無水物系硬化剤を用いることが好ましい。酸無水物系硬化剤としては、例えば芳香族酸無水物、具体的には無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸等が挙げられる。あるいは、環状脂肪族酸無水物、具体的にはテトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸等、もしくは脂肪族酸無水物、具体的には無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物等を挙げることができるが、特には限定されない。また、硬化促進剤としては、イミダゾールもしくはその誘導体、三級アミン、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、有機酸金属塩等を適宜用いることができるが、特には限定されない。
【0052】
充填材は、使用する樹脂の比誘電率を所望の比誘電率とする組成並びに量で樹脂に含まれる。充填材としては、絶縁性の無機充填材を用いることができる。比較的低誘電率の樹脂を調製するための充填材としては、比誘電率が10未満のアルミナ、シリカ、ドロマイト等を用いることができ、比較的高誘電率の樹脂を調製するための充填材としては、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等を用いることができるが、充填材はこれらには限定されない。
【0053】
本実施の形態において、注入する樹脂の組成は、これらの熱硬化性樹脂主剤、硬化剤、任意選択的に硬化促進剤並びに無機充填材を、目的とする比誘電率及び耐熱性などの物性値を達成するように、当業者が適宜決定することができる。目的とする比誘電率の値は、最も比誘電率が低い樹脂と、最も比誘電率が高い樹脂との比誘電率の比率が、3~4となるように設計することが好ましい。また、型内で積層され、接触して隣り合う樹脂間の比誘電率の差は、例えば1未満となるように設計することが好ましい。隣り合う樹脂間の比誘電率の差が大きすぎると、界面のあるスペーサの表面上で電界が集中するといった不都合が生じる場合がある。
【0054】
本実施の形態の成形方法では、比誘電率が異なる二種以上の樹脂を用いるが、その樹脂の種類は、好ましくは三種以上である。したがって、四種から十種、あるいはそれ以上であってよい。すなわち、注入される樹脂の比誘電率は、最低でも二段階に異なり、三段階から十段階、あるいはそれ以上の段階に異なっていてもよい。これらの異なる二種以上の樹脂は、ディスペンサ40に接続される図示しない樹脂調製部にて、所望の組成に調製することができる。そして、図示しない制御装置により、所定の組成の樹脂が、所定の量で、ディスペンサ40に送られて、成形用型31に注入可能に構成される。比誘電率が異なる二種以上の樹脂の注入の順序は、一態様によれば、比誘電率が大きい順であってよい。あるいは、注入の順序は、比誘電率が小さい順や、比誘電率が大、小、中と変化する順であってもよく、特には限定されない。本発明は、比誘電率が異なる二種以上の樹脂の注入の順序について、特定の態様には限定されない。
【0055】
本実施の形態の成形方法の各工程においては、温度と真空度がコントロールできる槽の中で行われるが、その圧力は、10Torr(1.3KPa)以下程度とすることが好ましい。また、注型時の圧力は、10Torr(1.3KPa)から30Torr(3.9KPa)以下程度とし、この圧力で、1~3分程度保持することが好ましい。このような圧力範囲とすることにより、気泡を消失させることができる。
【0056】
以上のように、第1の実施の形態によれば、キャビティ33にて流路39を通じて3つのスペーサコーン部形成部35に樹脂材を略同じタイミング流入させることができる。これにより、3つのスペーサコーン部形成部35それぞれに、5層の樹脂層21~25を積層する成形にて、ノズル41をキャビティ33に出し入れする回数を減らして樹脂材の注入の簡略化を図ることができる。また、キャビティ33に樹脂材を注入して成形を行えるので、成形中に従来のような紐状押出品を得る制約を緩和することができる。更に、コーン状で比誘電率が傾斜変化する絶縁スペーサ10を成形できるので、絶縁スペーサ10の小型化、スペーサコーン部12での沿面方向成分の電界低減を図ることができる。
【0057】
また、流路39がスリット状に形成されるので、硬化工程後に残存する残留部14を薄片状に形成でき、除去工程での残留部14の除去を容易且つ短時間で行うことができる。更に、下型32におけるスペーサコーン部形成部35の上下幅全体に亘って流路39が形成されるので、第1~第5樹脂層21~25の全ての積層において、注入された樹脂材を流路39に流し込むことができる。よって、第1~第5樹脂層21~25の全てにおいて、同じ要領で樹脂材を注入して積層を行うことができ、工程の簡略化を図ることができる。
【0058】
また、直線方向に3つのスペーサコーン部12が並ぶ絶縁スペーサ10では、キャビティ33に上述した2本の流路39を形成することで、2本の流路39を介して3つのスペーサコーン部形成部35を連通した状態にできる。
【0059】
ここで、第1の実施の形態にて、S相のスペーサコーン部形成部35の左右両側に流路39を1本ずつ形成したが、図9に示すように、かかる流路39の形成数を複数本としてもよい。図9は、第1の実施の形態における変形例の成形用型を上方から見た図である。
【0060】
図9にて、R相のスペーサコーン部形成部35とS相のスペーサコーン部形成部35とに連通する流路39が2本形成され、S相のスペーサコーン部形成部35とT相のスペーサコーン部形成部35とに連通する流路39が2本形成される。このように、流路39は、連結するスペーサコーン部形成部35の間に複数並んで形成してもよい。図9のように流路39を複数とすることで、流路39を通じて他のスペーサコーン部形成部35に流れる樹脂材の単位時間当たりの流量を増やすことができ、樹脂材の注入の短時間化を図ることができる。
【0061】
続いて、本発明の前記以外の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、説明する実施の形態より前に記載された実施の形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いる場合があり、説明を省略若しくは簡略にする場合がある。
【0062】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態について図10及び図11を参照して説明する。図10は、第2の実施の形態に係る絶縁スペーサを下方から見た図である。図11は、第2の実施の形態の成形用型を上方から見た図である。第2の実施の形態は、第1の実施の形態に対し、3つのスペーサコーン部12の形成位置を変更している。図10に示すように、第2の実施の形態の絶縁スペーサ10は、3つのスペーサコーン部12がベース部13の周方向に並んで設けられる。図11では、3つのスペーサコーン部12は、中心導体11の軸方向(図11中紙面直交方向)と平行な中心位置周りに等角度(120°)毎に並んで設けられる。
【0063】
図11に示すように、第2の実施の形態の成形用型31にて、3つのスペーサコーン部形成部35は、3つのスペーサコーン部12に対応して周方向に並んで3つ形成される。よって、図11では、3つのスペーサコーン部形成部35は、図11中紙面直交方向と平行な中心位置回りに等角度(120°)毎に並んで設けられる。
【0064】
第2の実施の形態のキャビティ33は、下型32において、3方向に分岐した形状に設けられ、3つのスペーサコーン部形成部35全てに連通する流路52を備えている。よって、3つのスペーサコーン部形成部35それぞれが、流路52を介して他の2つのスペーサコーン部形成部35に連通するようになる。なお、注入口38は、3つのスペーサコーン部形成部35のそれぞれの流路52との連通位置近傍に形成される場合を図示したが、流路52における3方向に分岐する位置に変更したり追加したりしてもよい。
【0065】
以上のように、周方向に3つのスペーサコーン部12が並ぶ絶縁スペーサ10であっても、キャビティ33に上述した流路52を形成することで、3つのスペーサコーン部形成部35を連通した状態にすることができる。
【0066】
ここで、図11に示す第2の実施の形態にて、流路52が分岐位置から3つのスペーサコーン部形成部35それぞれに1本ずつ形成する構成としたが、これに限られるものでなく、例えば、図12に示す構成としてもよい。図12は、第2の実施の形態における変形例の成形用型を上方から見た図である。図12の変形例における流路52は、分岐位置から3つのスペーサコーン部形成部35それぞれに複数本(2本)ずつ形成されている。
【0067】
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態について図13を参照して説明する。図13は、第2の実施の形態の成形用型を上方から見た図である。第3の実施の形態は、第2の実施の形態に対し、キャビティ33における3つのスペーサコーン部形成部35の形成位置は同一となるが、流路53の形状、形成位置を変更している。第3の実施の形態の流路53は、3つのスペーサコーン部形成部35それぞれが、2本の流路53を介して他の2つのスペーサコーン部形成部35に連通するようになる。よって、第3の実施の形態のキャビティ33は、3本の流路53を備えている。
【0068】
3本の流路53のうち、1本の流路53は、S相のスペーサコーン部形成部35とR相のスペーサコーン部形成部35とに連通している。また、3本の流路53のうち、他の1本の流路53は、R相のスペーサコーン部形成部35とT相のスペーサコーン部形成部35とに連通し、更に他の1本の流路53は、T相のスペーサコーン部形成部35とS相のスペーサコーン部形成部35とに連通している。
【0069】
第3の実施の形態にあっても、周方向に3つのスペーサコーン部12が並ぶ絶縁スペーサ10に対し、キャビティ33に上述した流路53を形成することで、3つのスペーサコーン部形成部35を連通した状態にすることができる。
【0070】
ここで、図13に示す第3の実施の形態にて、2つのスペーサコーン部形成部35同士を連結する流路53を1本ずつ形成したが、図14に示すように、かかる流路53の形成数を複数本としてもよい。図14は、第3の実施の形態における変形例の成形用型を上方から見た図である。
【0071】
図14にて、S相のスペーサコーン部形成部35とR相のスペーサコーン部形成部35とに連通する流路53が2本形成される。また、R相のスペーサコーン部形成部35とT相のスペーサコーン部形成部35とに連通する流路53が2本形成され、T相のスペーサコーン部形成部35とS相のスペーサコーン部形成部35とに連通する流路53が2本形成される。このように、流路53は、連結するスペーサコーン部形成部35の間に複数並んで形成してもよい。
【0072】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、向きなどについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0073】
上記各実施の形態における三相一括型の絶縁スペーサ10にて、3本の中心導体11及びその周囲の3つのスペーサコーン部12のレイアウトは変更してもよい。例えば、第1の実施の形態のように3つのスペーサコーン部12が直線方向に並ぶ構成では、中央のスペーサコーン部12と、ベース部13とのそれぞれの中心位置が異なっていてもよい。また、第2及び第3の実施の形態のように中心位置周りに所定角度(120°)毎に3つのスペーサコーン部12を並んで設ける場合、該中心位置はベース部13の中心位置と異なっていてもよい。更に、3つのスペーサコーン部12が周方向に並ぶ構成では、中心位置周りに等角度毎でなく、任意の角度間隔を隔ててスペーサコーン部12を配置する等、ガス絶縁開閉装置における導体の配置角度に応じて各スペーサコーン部12を配置してもよい。この場合、スペーサコーン部12のレイアウトに応じ、成形用型31におけるスペーサコーン部形成部35のレイアウトも変更される。
【0074】
また、上記各実施の形態では、絶縁スペーサ10が3つのスペーサコーン部12を有する構成としたが、スペーサコーン部12は複数であればよく、2つ、または、4つ以上に変更してもよい。この場合、スペーサコーン部12の形成数に応じ、成形用型31におけるスペーサコーン部形成部35の形成数も変更される。
【0075】
また、絶縁スペーサ10にて積層する樹脂層の数は、上記各実施の形態の5層に限定されず適宜増減してもよく、樹脂層の数に応じて、積層工程での樹脂材の注入回数が変更される。
【0076】
また、第2及び第3の実施の形態における注入口38は、スペーサコーン部形成部35それぞれに形成した構成としたが、成形用型31に少なくとも1つ注入口38が形成されていればよい。
【符号の説明】
【0077】
10 :絶縁スペーサ
11 :中心導体
12 :スペーサコーン部
14 :残留部
21 :第1樹脂層(樹脂層)
22 :第2樹脂層(樹脂層)
23 :第3樹脂層(樹脂層)
24 :第4樹脂層(樹脂層)
25 :第5樹脂層(樹脂層)
30 :成形装置
31 :成形用型
32 :下型
33 :キャビティ
34 :上型
35 :スペーサコーン部形成部
39 :流路
41 :ノズル
52 :流路
53 :流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14