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  • 特開-異種金属部材の接合方法 図1
  • 特開-異種金属部材の接合方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175775
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】異種金属部材の接合方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 29/04 20060101AFI20241212BHJP
   B22D 31/00 20060101ALI20241212BHJP
   B22D 19/04 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B22D29/04 Z
B22D31/00 B
B22D19/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093770
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】鳥本 雅
(57)【要約】
【課題】異種金属部材同士を高い接合強度で接合することができる異種金属部材の接合方法を提供すること。
【解決手段】異種金属部材の接合方法は、金型を用いて鋳造部材を成形する鋳造工程と、金型内の鋳造部材又は金型内から取り出した鋳造部材の外形寸法を計測する寸法計測工程と、金型又は鋳造部材の表面温度を計測する温度計測工程と、鋳造部材を成形した後、金型の型開きを行ってから又は金型内から鋳造部材を取り出してから所定時間内にそれぞれ計測された外形寸法と表面温度とに基づいて決定された硬度を有する接合用部材を特定する接合用部材特定工程と、特定した接合用部材の少なくとも一部を鋳造部材に接合する接合工程と、を有し、接合用部材は、鋳造部材を構成する金属材料よりも熱膨張係数の低い異種の金属材料により構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を用いて鋳造部材を成形する鋳造工程と、
前記金型内の前記鋳造部材又は前記金型内から取り出した前記鋳造部材の外形寸法を計測する寸法計測工程と、
前記金型又は前記鋳造部材の表面温度を計測する温度計測工程と、
前記鋳造部材を成形した後、前記金型の型開きを行ってから又は前記金型内から前記鋳造部材を取り出してから所定時間内にそれぞれ計測された前記外形寸法と前記表面温度とに基づいて決定された硬度を有する接合用部材を特定する接合用部材特定工程と、
特定した前記接合用部材の少なくとも一部を前記鋳造部材に接合する接合工程と、
を有し、
前記接合用部材は、前記鋳造部材を構成する金属材料よりも熱膨張係数の低い異種の金属材料により構成されている異種金属部材の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、異種金属部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、非鉄金属性の部材と鉄系金属(鉄鋼)製の部材との異種金属部材同士を接続する場合、溶接などにより両部材同士を直接接合すると、接合界面に脆い金属間化合物が生成される。その結果、接合強度のばらつきが大きくなり接合の信頼性が低下する。そこで、鉄系金属製の部材を非鉄金属製の部材で鋳包むことにより両部材を一体化した鋳造製品を製造し、当該鋳造製品を他の部材と接合する方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、相手側部材と接合される鋳造製品において、相手側部材の複数箇所と接合チップのそれぞれの接合面で接合される複数の接合チップと、相手側部材とは異種の金属材料から構成されると共に、複数の接合チップを分散させつつ、それぞれの接合面を少なくとも一面露出させて鋳包む鋳造金属材とを備えていることを特徴とする鋳造製品が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、鋳造金属材に分散されて鋳包まれる複数の接合チップは、相手側部材の複数箇所とそれぞれ接合されるので、接合チップの大きさを小さくできる。その結果、鋳造金属材の冷却に伴う収縮によって鋳造金属材に生じる応力を抑制できることが記載さている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-186824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、金型を用いて鋳造部材(鋳造金属材)を成形すると、金型を型開きした直後に得られる鋳造部材は、時間経過とともに温度が変化する。非鉄金属性の鋳造部材と鉄系金属製の接合用部材との異種金属部材同士を接合する場合、温度変化に伴う鋳造部材の寸法変形によって、異種金属部材同士の接合強度が低下するという問題があった。
【0007】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、異種金属部材同士を高い接合強度で接合することができる異種金属部材の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施の形態にかかる異種金属部材の接合方法は、金型を用いて鋳造部材を成形する鋳造工程と、金型内の鋳造部材又は金型内から取り出した鋳造部材の外形寸法を計測する寸法計測工程と、金型又は鋳造部材の表面温度を計測する温度計測工程と、鋳造部材を成形した後、金型の型開きを行ってから又は金型内から鋳造部材を取り出してから所定時間内にそれぞれ計測された外形寸法と表面温度とに基づいて決定された硬度を有する接合用部材を特定する接合用部材特定工程と、特定した接合用部材の少なくとも一部を鋳造部材に接合する接合工程と、を有し、接合用部材は、鋳造部材を構成する金属材料よりも熱膨張係数の低い異種の金属材料により構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、異種金属部材同士を高い接合強度で接合することができる異種金属部材の接合方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1にかかる異種金属部材の接合方法を説明する図である。
図2】実施の形態1にかかる異種金属部材の接合方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。ただし、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0012】
まず、図1は、実施の形態1にかかる異種金属部材の接合方法を説明する図である。図1に示すように、本実施形態にかかる異種金属部材の接合方法では、鋳造部材1と鋳造部材1とは異種の金属材料により構成される接合用部材2との熱膨張差によって、鋳造部材1に接合用部材2を接合する。
【0013】
鋳造部材1は、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛等の非鉄金属製である。本実施形態において、鋳造部材1は、アルミニウムにより構成されている。鋳造部材1は、例えばダイカスト鋳造法、重力鋳造法、低圧鋳造法等の鋳造法により所定の製品形状に鋳造されている。本実施形態において、鋳造部材1は、直方体状を有している。さらに、鋳造部材1には、接合用部材2の少なくとも一部が挿入される孔部10が設けられている。
【0014】
接合用部材2は、鋳造部材1を構成する金属材料よりも熱膨張係数の低い異種の金属材料により構成されている。接合用部材2は、例えば、各種合金鋼、鋳鉄等の鉄を含む鉄系金属製である。本実施形態において、接合用部材2は、鋳鉄により構成されている。接合用部材2は、孔部10の形状に対応する棒状を有している。本実施形態において、接合用部材2は、孔部10の形状に対応する円柱状を有している。
【0015】
鋳造部材1は、例えば、図1に示すダイカスト装置100を用いて製造される。ダイカスト装置100は、金型20により形成されるキャビティ30内に、アルミニウム等を溶融させた高温の溶湯を充填した後、溶湯を冷却凝固させるダイカスト鋳造により、キャビティ30の形状に対応する鋳造部材1を製造する装置である。
【0016】
ダイカスト装置100は、キャビティ30を形成する金型20と、キャビティ30に溶湯(溶融金属)を射出する射出装置と、金型20の開閉及び型締めを行う型締装置と、キャビティ30内に負圧を供給する減圧装置と、金型20内から鋳造部材1を取り出す搬送装置と、を有している。
【0017】
金型20は、固定型21と、固定型21に対して相対移動することにより型締め及び型開きが可能な可動型22と、可動型22に取り付けられた鋳抜きピン23と、を有している。金型20は、固定型21と可動型22とを合わせて型締めすることにより、固定型21と可動型22の間に鋳造部材1の形状に対応するキャビティ30を形成する。型締めされた金型20には、さらにゲート31とランナー32が形成される。鋳抜きピン23は、鋳造部材1に孔部10としての鋳抜き穴を形成する鋳抜き型である。鋳抜きピン23は、例えば円柱状を有している。鋳抜きピン23は、先端部分がキャビティ30内へ突出している。なお、鋳抜きピン23は、固定型21に取り付けられていてもよい。
【0018】
射出装置は、射出スリーブ41と、プランジャーチップ42と、ロッド43と、プランジャー駆動手段と、を有している。射出スリーブ41は、ランナー32に連通し、固定型21に結合されている。射出スリーブ41の後端には、溶湯を射出スリーブ41内に注湯するための給湯口44が形成されている。プランジャーチップ42は、射出スリーブ41の長手方向に沿って射出スリーブ41内を進退自在となるように射出スリーブ41内に配置されている。プランジャー駆動手段は、プランジャーチップ42に連結されたロッド43を介してプランジャーチップ42を進退駆動する。
【0019】
可動型22には、一端がキャビティ30内に開口する減圧通路51を介して減圧バルブ52が設けられている。減圧バルブ52には、真空ポンプを含む減圧装置が接続されている。ダイカスト装置100は、減圧バルブ52を開放すると、減圧装置からキャビティ30内へ負圧が供給されるようになっている。
【0020】
型締装置は、型締駆動手段の駆動力によって可動型22が固定された可動ダイプレートを固定型21が固定された固定ダイプレートに対して相対移動させる。これにより、型締装置は、金型20を開閉するための型閉じ及び型開きと、金型20の型締めとを行う。
【0021】
搬送装置は、金型20内から金型20の外部へ鋳造部材1を取り出した後、取り出した鋳造部材1を金型20の外部の搬送経路に沿って搬送する。搬送装置としては、例えば、鋳造部材1を把持するアームを有するロボットアームを用いることができる。
【0022】
さらに、ダイカスト装置100は、金型20内から取り出された鋳造部材1を撮影する撮影カメラ60と、金型20内から取り出された鋳造部材1の表面温度を計測するサーモビュア70と、ダイカスト装置100の動作を制御する制御装置80と、を有している。
【0023】
撮影カメラ60は、例えば、2次元画像を撮影する2次元カメラであってもよく、3次元画像を撮影する3次元カメラであってもよい。撮影カメラ60は、搬送経路の上方に設けられている。撮影カメラ60は、金型20内から鋳造部材1を取り出してから所定時間以内(例えば10秒以内)の鋳造部材1を撮影可能な位置に設けられている。撮影カメラ60は、鋳造部材1を撮影した撮影画像の画像データを制御装置80に送信する。
【0024】
サーモビュア70は、無線又は有線で接続されたサーモカメラ71による撮影データから2次元の温度分布画像データを生成する。サーモカメラ71は、搬送経路の上方に撮影カメラ60と並ぶように設けられている。サーモカメラ71は、金型20内から鋳造部材1を取り出してから所定時間以内(例えば10秒以内)の鋳造部材1から放射される赤外光を検出可能な位置に設けられている。サーモビュア70は、サーモカメラ71による撮影データに基づき、鋳造部材1の表面温度の分布を示す温度分布画像の画像データを生成する。サーモビュア70は、生成した画像データを制御装置80に送信する。
【0025】
ダイカスト装置100は、サーモビュア70の代わりにサーモグラフィーを有していてもよい。ダイカスト装置100は、サーモビュア70やサーモグラフィー等の画像計測装置を有することにより、鋳造部材1の温度を精密に計測することができる。
【0026】
ここで、金型20内から鋳造部材1を取り出してからの撮影までの所定時間は、鋳造部材1のサイズ等に応じて設定される。金型20内から鋳造部材1を取り出してからの撮影までの所定時間は、例えば、取り出し直後の鋳造部材1の温度が200~300℃である場合に、30秒とすることができる。
【0027】
制御装置80は、各種演算を実行するプロセッサと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリと、入出力インターフェース等を備えるコンピュータにより構成されている。制御装置80は、プロセッサがメモリに予め格納される鋳造プログラムを実行することで、射出装置、型締装置、減圧装置、及び搬送装置等の動作を制御するダイカスト制御部として機能し、鋳造部材1の状態を検知する検知部として機能する。メモリは、上記したプログラムの他に、複数種類の硬度情報、表面温度閾値、及び外形寸法閾値等を記憶している。
【0028】
制御装置80は、射出装置、型締装置、減圧装置、及び搬送装置等のそれぞれと制御線で接続されている。制御装置80は、射出装置、型締装置、減圧装置、及び搬送装置等のそれぞれに制御線を介して制御信号を供給することにより、それぞれの動作を制御する。また、制御装置80は、撮影カメラ60及びサーモビュア70のそれぞれと検知信号線で接続されている。制御装置80は、撮影カメラ60及びサーモビュア70のそれぞれから検知信号線を介して供給される検知信号から、鋳造部材1の状態を検知する。
【0029】
制御装置80には、操作者が操作する入力装置、各種値などを表示する表示装置等が接続されていてもよい。なお、ダイカスト装置100の各部の機能の一部又は全部は、ハードウェア回路で実現されてもよい。
【0030】
ダイカスト装置100は、制御装置80の制御に従って、金型20を型締めした状態で鋳造部材1の成形を行なった後、金型20を型開きした状態で搬送装置による鋳造部材1の取り出し及び搬送を行なう。その後、ダイカスト装置100は、撮影カメラ60及びサーモカメラ71により、成形した鋳造部材1の状態の検知を行なう。
【0031】
制御装置80は、撮影カメラ60及びサーモビュア70のそれぞれから受信した各画像データを解析する。制御装置80は、撮影カメラ60から受信した画像データに基づいて鋳造部材1の外形寸法を計測する。また、制御装置80は、サーモビュア70から受信した画像データに基づいて鋳造部材1の表面温度を計測する。
【0032】
制御装置80は、それぞれ計測された表面温度と外形寸法とに基づいて、接合用部材2と接合する鋳造部材1として適格であるか否かを判定するとよい。制御装置80は、鋳造部材1が適格であると判定した場合、後述する接合用部材2の特定を行うようにするとよい。一方、制御装置80は、鋳造部材1が不適格であると判定した場合、搬送中の鋳造部材1を搬送経路から排除するように搬送装置を制御するとよい。
【0033】
制御装置80は、それぞれ計測された表面温度と外形寸法とに基づいて決定された硬度を有する接合用部材2を特定する。制御装置80は、メモリに記憶された硬度情報を参照して、接合用材料の硬度を決定する。制御装置80は、メモリに記憶された複数種類の硬度情報の中から、表面温度と外形寸法との組み合わせに応じた硬度情報を選択する。
【0034】
そして、制御装置80は、接合用部材2との接合が行われる適格品置き場に鋳造部材1をセットするように搬送装置を制御する。鋳造部材1がセットされると、制御装置80は、特定された接合用部材2の少なくとも一部を鋳造部材1の孔部10に挿入するように、接合用部材2を挿入するための挿入装置を制御する。このようにして、制御装置80は、特定した接合用部材2の少なくとも一部を鋳造部材1に接合する制御を行なう。
【0035】
図1に加え、図2を参照して、本実施形態にかかる異種金属部材の接合方法の一例を説明する。図2は、実施の形態1にかかる異種金属部材の接合方法を示すフローチャートである。図2に示すように、本実施形態にかかる異種金属部材の接合方法はステップS1~S5の工程を有する。
【0036】
鋳造工程では、金型20を用いて鋳造部材1を成形する(ステップS1)。鋳造工程は、例えば、型締工程、注湯工程、射出充填工程、凝固工程、型開工程、及び取出工程を含む。
【0037】
まず、型締工程では、型締装置により金型20を型締めする(ステップS1―1)。金型20を型締めすることにより、キャビティ30が形成される。次に、注湯工程では、給湯口44から射出スリーブ41内に所定量の溶湯を注湯する(ステップS1-2)。溶湯がアルミニウム溶湯の場合、溶湯の温度は、例えば700℃程度である。
【0038】
次に、射出充填工程では、プランジャーチップ42を前進駆動させることにより、射出スリーブ41内の溶湯を金型20のキャビティ30に射出充填する(ステップS1―3)。射出充填工程は、射出スリーブ41内の溶湯を低速で押圧しつつ減圧バルブ52を開放してキャビティ30内を減圧する低速射出工程と、射出スリーブ41内の溶湯を高速で押圧して金型20のキャビティ30に溶湯を高速で射出充填する高速射出工程と、を含むとよい。低速射出工程を行うことにより、空気の巻き込みが抑制され、溶湯の充填率が高くなる。高速射出工程を行うことにより、溶湯が凝固する前に、速やかに溶湯をキャビティ30に充填することができる。
【0039】
次に、凝固工程では、キャビティ30に充填された溶湯を冷却凝固させる(ステップS1―4)。これにより、キャビティ30形状に対応する鋳造部材1を成形することができる。このようにして成形された鋳造部材1には、鋳抜きピン23により孔部10が形成される。凝固工程では、鋳造部材1の取り出しが可能な温度(例えば200℃程度)まで溶湯が冷却される。
【0040】
次に、型開工程では、上記のようにして鋳造部材1を成形した後、型締装置により金型20を型開きする(ステップS1-5)。そして、取出工程では、搬送装置により鋳造部材1を金型20から取り出す(ステップS1-6)。その後、鋳造部材1は、搬送装置により後工程に搬送される。金型20内から取り出された鋳造部材1は、搬送装置により速やかに撮影カメラ60の撮像領域及びサーモカメラ71の検出領域に搬送される。
【0041】
寸法計測工程では、撮影カメラ60により、金型20内から取り出されてから所定時間以内の鋳造部材1を撮影した画像の画像データを取得する。そして、寸法計測工程では、制御装置80により、撮影カメラ60により撮影された画像の画像データに基づいて、鋳造部材1の外形寸法を計測する(ステップS2)。
【0042】
温度計測工程では、サーモカメラ71により、金型20内から取り出されてから所定時間以内の鋳造部材1から放射される赤外光を検出する。そして、温度計測工程では、サーモカメラ71による撮影データからサーモビュア70が生成した温度分布画像の画像データに基づいて、制御装置80により鋳造部材1の表面温度を計測する(ステップS3)。
【0043】
接合用部材特定工程では、所定時間内にそれぞれ計測された表面温度と外形寸法とに基づいて、接合用部材2と接合する鋳造部材1として適格であるか否かを判定する。制御装置80は、計測された表面温度が予め設定された表面温度閾値以下であり、且つ計測された外形寸法が予め設定された外形寸法閾値以下である場合、鋳造部材1が適格であると判定する。制御装置80は、鋳造部材1が適格であると判定した場合に、接合用部材2の特定に移行する。
【0044】
接合用部材特定工程では、所定時間内にそれぞれ計測された外形寸法と表面温度とに基づいて決定された硬度を有する接合用部材2を特定する。本実施形態において、制御装置80のメモリは、「最も高い硬度」、「少し高い硬度」、「通常の硬度」のうちいずれかを示す3種類の硬度情報を記憶している。そのため、制御装置80は、3種類の硬度情報の中から、表面温度と外形寸法との組み合わせに応じた1種類の硬度情報を選択する。硬度情報は、例えば、鋳造部材1の外形寸法及び表面温度がそれぞれ大きくなるにつれて、硬度が高くなるような相関関係を示す。
【0045】
一方、制御装置80は、計測された表面温度が予め設定された表面温度閾値を超え、且つ計測された外形寸法が予め設定された外形寸法閾値を超えている場合、鋳造部材1が不適格であると判定する。制御装置80により不適格であると判定されると、搬送中の鋳造部材1が搬送装置により搬送経路から排除され、不適格品置き場に移送される。
【0046】
なお、各閾値は、例えば、予め実験等の結果に基づいて、それぞれ任意の外形寸法閾値及び表面温度閾値を設定し、メモリに記憶させておくことができる。外形寸法閾値及び表面温度閾値は、成形された鋳造部材1が接合用部材2と接合する鋳造部材1として適格であるか否かを判定するための基準値である。
【0047】
接合工程では、特定した接合用部材2の少なくとも一部を鋳造部材1に接合する。接合工程では、接合用部材特定工程において選択された硬度情報が示す硬度を有する接合用部材2の一部を、挿入装置を用いて鋳造部材1の孔部10に挿入する。これにより、鋳造部材1に接合用部材2を接合することができる。
【0048】
本実施形態では、図1に示すように、接合用部材2の挿入後に鋳造部材1から突出した接合用部材2の残部は、相手側鋳造部材3の孔部10に挿入される。これにより、相手側鋳造部材3に接合用部材2を接合することができる。なお、相手側鋳造部材3は、鋳造部材1に用いたダイカスト装置100とは別のダイカスト装置を用いて成形された、鋳造部材1と同様の構成を有するものである。ただし、相手側鋳造部材3は、鋳造部材1と同種ないし同系統の金属材料により構成されている非鉄金属製であってもよい。
【0049】
ここで、鋳造部材1及び相手側鋳造部材3は、冷却に伴う収縮によって、それぞれ孔部10の径が縮小する寸法変形が生じる。そのため、接合用部材2が挿入された鋳造部材1と相手側鋳造部材3とを冷却することにより、鋳造部材1、相手側鋳造部材3、及び接合用部材2を完全に結合することができる。このときの冷却は、例えば自然冷却であってよい。以上の各工程により、接合用部材2を介して鋳造部材1と相手側鋳造部材3とを接合した異種金属部材の接合品4を得ることができる。
【0050】
本実施形態にかかる異種金属部材の接合方法では、鋳造部材1に接合用部材2を接合する前に、鋳造部材1の外形寸法及び表面温度をそれぞれ計測した結果に基づいて、成形された鋳造部材1の状態に対して適切な硬度を有する接合用部材2を特定することができる。これにより、鋳造部材1に接合用部材2を接合した際に、冷却に伴う寸法変形により鋳造部材1から接合用部材2が脱落することが抑制される。したがって、本実施形態にかかる異種金属部材の接合方法によれば、異種金属部材同士を高い接合強度で接合することができる。
【0051】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態では、制御装置80は、金型20内から鋳造部材1を取り出してから所定時間内にそれぞれ計測された鋳造製品の外形寸法と表面温度とに基づいて接合用部材特定工程を実施したが、このような構成に限らない。制御装置80は、金型20の型開きを行ってから所定時間内にそれぞれ計測された金型20内の鋳造部材1の外形寸法と金型20の表面温度とに基づいて、接合用部材特定工程を実施してもよい。すなわち、寸法計測工程、温度計測工程、及び接合用部材特定工程は、型開工程の後であって取出工程の前に設けてもよい。この場合、撮影カメラ60は、金型20内の鋳造部材1を撮影可能な位置に設けられる。また、サーモカメラ71は、金型20から放射される赤外光を検出可能な位置に設けられる。
【0052】
また、撮影カメラ60及びサーモビュア70の少なくとも一方が制御装置80における画像処理の機能を有していてもよい。
【0053】
また、鋳造部材1の外形寸法の計測には、撮影カメラ60の代わりに、例えば非接触型センサであるレーザ変位センサ等を用いてもよい。鋳造部材1の表面温度の計測には、サーモカメラ71及びサーモビュア70の代わりに、例えば非接触型センサである放射温度センサを用いてもよい。また、金型20の表面温度を計測する場合、非接触型センサの代わりに、金型20に接触型の温度センサを配置してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 鋳造部材 2 接合用部材 3 相手側鋳造部材 4 接合品 10 孔部
20 金型 21 固定型 22 可動型 23 鋳抜きピン 30 キャビティ
31 ゲート 32 ランナー
41 射出スリーブ 42 プランジャーチップ 43 ロッド 44 給湯口
51 減圧通路 52 減圧バルブ
60 撮影カメラ 70 サーモビュア 71 サーモカメラ 80 制御装置
100 ダイカスト装置
図1
図2