(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175778
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】水栓装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20241212BHJP
E03C 1/044 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
E03C1/042 B
E03C1/044
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093774
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 昌憲
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA05
2D060BB01
2D060BE20
(57)【要約】
【課題】カートリッジを押さえ付ける押さえ部材の緩み止めを適切に行うことが可能な水栓装置を提供すること。
【解決手段】水栓装置は、水栓本体内のベースに軸方向に回転止めされた状態に組み付けられる湯水混合用のカートリッジ4と、カートリッジ4をベースに軸方向に押さえ付けるようにベースに螺合される筒状の押さえ部材5と、押さえ部材5の筒内部に組み込まれて押さえ部材5とカートリッジ4とに対する係合により押さえ部材5の螺合の緩みを規制するストッパ6と、ストッパ6のカートリッジ4に対する筒周方向の組み付け位置を選択可能にする組付位置選択構造Sと、を有する。組付位置選択構造Sは、上記組み付け位置の選択により、ストッパ6の筒周方向の複数箇所に形成される外歯F2の中から押さえ部材5の締め付け位置に応じた係合位置にある外歯F2を押さえ部材5の内歯E4に係合させることが可能とされる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体の内部に設けられるベースに軸方向に回転止めされた状態に組み付けられる湯水混合用のカートリッジと、該カートリッジを前記ベースに軸方向に押さえ付けるように前記ベースに螺合される筒状の押さえ部材と、を有する水栓装置であって、
前記押さえ部材の筒内部に組み込まれ、該押さえ部材の筒内周部と前記カートリッジとに対する係合により前記押さえ部材の螺合の緩みを規制するストッパと、
該ストッパの前記カートリッジに対する筒周方向の組み付け位置を選択可能にし、該選択により前記ストッパの筒周方向の複数箇所に形成される外周係合部の中から前記押さえ部材の締め付け位置に応じた係合位置にある前記外周係合部を前記筒内周部に係合させることが可能な組付位置選択構造と、を有する水栓装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水栓装置であって、
前記組付位置選択構造が、前記ストッパの前記カートリッジに対する筒周方向の組み付け位置を第1の組付位置と第2の組付位置とに変更可能とされ、
複数の前記外周係合部のうち、前記ストッパが前記カートリッジに対して前記第1の組付位置にあるときに前記押さえ部材の前記筒内周部と係合される第1の外周係合部と、前記第2の組付位置にあるときに前記筒内周部と係合される第2の外周係合部と、の筒周方向の角度間隔が、前記ストッパの前記第1の組付位置と前記第2の組付位置との筒周方向の角度間隔と異なる水栓装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の水栓装置であって、
複数の前記外周係合部のそれぞれが、筒周方向に等間隔に並ぶ複数の歯を備える外歯とされ、前記押さえ部材の前記筒内周部が、前記押さえ部材の筒周方向の一部に形成される、筒周方向に等間隔に並ぶ複数の歯を備える内歯とされ、前記外歯と前記内歯との噛合により前記ストッパが前記筒内周部に係合される水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓装置に関する。詳しくは、水栓本体の内部に設けられるベースに軸方向に回転止めされた状態に組み付けられる湯水混合用のカートリッジと、カートリッジをベースに軸方向に押さえ付けるようにベースに螺合される筒状の押さえ部材と、を有する水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シングルレバー水栓の湯水混合用のカートリッジを水栓本体に固定するための構造が開示されている。具体的には、カートリッジは、水栓本体の円筒状のベースに上方から回転止めされた状態にセットされる。そして、上記カートリッジに対し、上方から内側フランジを上縁に備える円筒状の押さえ部材が被せられる。
【0003】
押さえ部材は、ベースの外周部に螺合されることで、カートリッジを上方から押さえ付けた状態に保持する。この押さえ付けにより、カートリッジが、ベースに下方から流路接続される湯水の各供給管の接続口に押し付けられて密着される。
【0004】
そして、上記螺合された押さえ部材の円筒内に、上方からストッパが押さえ部材とカートリッジとにそれぞれ係合するようにセットされる。それにより、押さえ部材のベースに対する螺合の緩みが規制され、カートリッジが押さえ部材により押さえ付けられた状態に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の構成では、押さえ部材の締め付け位置がストッパと係合する位置からずれる場合、押さえ部材の締め付け具合を調整しなければならず、締め付けに過不足が生じる懸念がある。そこで、本発明は、カートリッジを押さえ付ける押さえ部材の緩み止めを適切に行うことが可能な水栓装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の水栓装置は、次の手段をとる。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明は、水栓本体の内部に設けられるベースに軸方向に回転止めされた状態に組み付けられる湯水混合用のカートリッジと、該カートリッジを前記ベースに軸方向に押さえ付けるように前記ベースに螺合される筒状の押さえ部材と、を有する水栓装置であって、前記押さえ部材の筒内部に組み込まれ、該押さえ部材の筒内周部と前記カートリッジとに対する係合により前記押さえ部材の螺合の緩みを規制するストッパと、該ストッパの前記カートリッジに対する筒周方向の組み付け位置を選択可能にし、該選択により前記ストッパの筒周方向の複数箇所に形成される外周係合部の中から前記押さえ部材の締め付け位置に応じた係合位置にある前記外周係合部を前記筒内周部に係合させることが可能な組付位置選択構造と、を有する水栓装置である。
【0009】
第1の発明によれば、ストッパのカートリッジに対する筒周方向の組み付け位置の選択により、ストッパに形成された複数の外周係合部の中から、押さえ部材の締め付け位置に応じた係合位置にある外周係合部を押さえ部材の筒内周部に係合させることが可能となる。したがって、押さえ部材の締め付け具合に応じて、ストッパを適切に押さえ部材の筒内周部に係合させることができる。その結果、押さえ部材の緩み止めを適切に行うことができる。
【0010】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記組付位置選択構造が、前記ストッパの前記カートリッジに対する筒周方向の組み付け位置を第1の組付位置と第2の組付位置とに変更可能とされ、複数の前記外周係合部のうち、前記ストッパが前記カートリッジに対して前記第1の組付位置にあるときに前記押さえ部材の前記筒内周部と係合される第1の外周係合部と、前記第2の組付位置にあるときに前記筒内周部と係合される第2の外周係合部と、の筒周方向の角度間隔が、前記ストッパの前記第1の組付位置と前記第2の組付位置との筒周方向の角度間隔と異なる水栓装置である。
【0011】
第2の発明によれば、所定位置に締め付けられた押さえ部材の筒内周部に対し、ストッパの複数の外周係合部の中から、より筒周方向に隙間なく適切に係合できるものを選択して係合させることが可能となる。それにより、押さえ部材の緩み止めをより適切に行うことができる。
【0012】
本発明の第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、複数の前記外周係合部のそれぞれが、筒周方向に等間隔に並ぶ複数の歯を備える外歯とされ、前記押さえ部材の前記筒内周部が、前記押さえ部材の筒周方向の一部に形成される、筒周方向に等間隔に並ぶ複数の歯を備える内歯とされ、前記外歯と前記内歯との噛合により前記ストッパが前記筒内周部に係合される水栓装置である。
【0013】
第3の発明によれば、ストッパを押さえ部材の筒内周部に対して複数の歯同士の噛合を伴って係合させることができる。それにより、押さえ部材の緩み止めをより適切に行うことができる。また、外歯を1ピッチ又は複数ピッチずらした位置でも内歯に噛合させることが可能となるため、押さえ部材をより様々な締め付け位置に対応して緩み止めすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る水栓装置の概略構成を表す斜視図である。
【
図2】水栓本体からハンドルを上に外した分解斜視図である。
【
図3】カートリッジを水栓本体から上に外した分解斜視図である。
【
図4】カートリッジを水栓本体のベースに組み込んだ状態を表す斜視図である。
【
図5】押さえ部材をベースに締め付けた状態を表す斜視図である。
【
図6】
図5をカートリッジの中心軸線を通る垂直面で切断した縦断面図である。
【
図7】ストッパを押さえ部材の筒内部に組み込んだ状態を表す斜視図である。
【
図8】ストッパがカートリッジと嵌合した状態を表す斜視図である。
【
図10】
図9のX-X線断面にストッパとカートリッジとの嵌合状態を模式的に組み合わせて表す断面図である。
【
図11】
図10から押さえ部材の締め付け位置が左回りに2度ずれた時のストッパの取付状態を表す断面図である。
【
図12】
図10から押さえ部材の締め付け位置が左回りに4度ずれた時のストッパの取付状態を表す断面図である。
【
図13】
図10から押さえ部材の締め付け位置が左回りに6度ずれた時のストッパの取付状態を表す断面図である。
【
図14】
図10から押さえ部材の締め付け位置が左回りに8度ずれた時のストッパの取付状態を表す断面図である。
【
図15】
図10から押さえ部材の締め付け位置が左回りに10度ずれた時のストッパの取付状態を表す断面図である。
【
図16】
図10から押さえ部材の締め付け位置が左回りに12度ずれた時のストッパの取付状態を表す断面図である。
【
図17】
図10から押さえ部材の締め付け位置が左回りに14度ずれた時のストッパの取付状態を表す断面図である。
【
図18】
図10から押さえ部材の締め付け位置が左回りに16度ずれた時のストッパの取付状態を表す断面図である。
【
図19】
図10から押さえ部材の締め付け位置が左回りに18度ずれた時のストッパの取付状態を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0016】
《第1の実施形態》
(水栓装置1の概略構成)
始めに、本発明の第1の実施形態に係る水栓装置1の構成について、
図1~
図19を用いて説明する。なお、以下の説明において、手前、奥、上、下、左、右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。
【0017】
各図中に示す方向は、それぞれ、水栓装置1の正面に立つ使用者から見た方向となっている。以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、
図1~
図19のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る水栓装置1は、キッチン用の水栓金具として構成されている。具体的には、水栓装置1は、水栓本体2の上部に取り付くレバーハンドル3の操作によって湯水の混合割合の調節や吐水/止水の切り替えを行えるシングルレバー式の混合水栓として構成されている。
【0019】
このレバーハンドル3の操作による湯水の混合割合の調節や吐水/止水の切り替えは、水栓本体2の内部に組み込まれたカートリッジ4において行われる。
図2に示すように、カートリッジ4は、その上部にレバーハンドル3と一体的に取り付けられる操作軸4D(栓棒)を備える。
【0020】
カートリッジ4は、レバーハンドル3の操作により操作軸4Dが左右前後に回されることにより、そのハウジング4Cの内部に供給される湯水の混合割合の調節や外部への吐水/止水の切り替えを行う。なお、カートリッジ4による湯水の混合割合の調節や吐水/止水の切り替えに関する構成は、特開2020-46067号公報等の文献に開示された公知の構成と同一となっている。したがって、カートリッジ4の基本構成に関する詳細な説明は省略する。
【0021】
図3~
図4に示すように、カートリッジ4は、水栓本体2を構成する上向き開口の円筒部2A内に上方からセットされている。詳しくは、カートリッジ4は、上記水栓本体2の円筒部2A内に組み込まれるベース2Bの天板上に上下軸まわりの回転が規制された状態に嵌合されている。
【0022】
ベース2Bは、水栓本体2の内部に固定されている。ベース2Bには、水栓本体2の内部に下側から通される図示しない湯水の各供給管と吐水管とがそれぞれ下側から流路接続されている。カートリッジ4は、上記ベース2Bの天板上にセットされることで、ベース2Bを介して図示しない湯水の各供給管と吐水管とにそれぞれ流路接続される。
【0023】
水栓装置1は、上記カートリッジ4をベース2Bの天板上に押さえ付けて流路接続した状態に固定するための押さえ部材5を更に有する。押さえ部材5は、図示上下方向に延びる略円筒状の部材から成る。
【0024】
図4~
図6に示すように、押さえ部材5は、ベース2Bの天板上にセットされたカートリッジ4に上方から被せられるように水栓本体2の円筒部2A内に上方から差し込まれる。そして、押さえ部材5は、その差し込まれた先の筒端が、ベース2Bの外周部に螺合されることにより、ベース2Bに対して一体的に固定される。
【0025】
それにより、
図5~
図6に示すように、押さえ部材5は、カートリッジ4をベース2Bの天板上に上から押さえ付けた状態にセットされる。また、押さえ部材5は、その上向きに開口する中央の筒口からカートリッジ4の操作軸4Dを上方に通した状態にセットされる。押さえ部材5は、そのベース2Bに対する締め付けの具合によって、カートリッジ4をベース2Bに押さえ付ける具合が調整される。
【0026】
水栓装置1は、上記押さえ部材5のベース2Bに対する締め付け後の緩みを規制することが可能なストッパ6を更に有する。ストッパ6は、図示上下方向に短く延びる略円筒状の部材から成る。
図7に示すように、ストッパ6は、ベース2Bに螺合された押さえ部材5の上向きに開口する中央の筒口から筒内部に差し込まれる。
【0027】
そして、ストッパ6は、カートリッジ4のハウジング4Cと押さえ部材5との双方に対して係合するようにセットされる。それにより、押さえ部材5が、ストッパ6を介してカートリッジ4に対する回転が規制された状態に保持される。その結果、押さえ部材5が、カートリッジ4と回転方向に一体を成すベース2Bに対して回り止めされ、螺合の緩みが規制される。
【0028】
ストッパ6は、押さえ部材5のベース2Bに対する締め付け位置が製造ばらつきや締め付け具合のばらつきによってその時々で変わっても、それぞれの締め付け位置において、押さえ部材5の緩みを適切に規制できるようになっている。以下、上記ストッパ6による押さえ部材5の緩み止め構造について詳しく説明する。
【0029】
(各部構成)
先ず、カートリッジ4のハウジング4Cの構成について説明する。
図3に示すように、ハウジング4Cは、大径部C1と小径部C2とを有する段付き円筒状の部材から成る。大径部C1と小径部C2とは、互いに軸方向に同心円筒状に並ぶ形状とされる。ハウジング4Cは、小径部C2が図示上側に向けられる向きで、ベース2Bの天板上にセットされる。
【0030】
ハウジング4Cの大径部C1と小径部C2との間の段差部C3の上面には、筒周方向に並ぶ複数(18個)の上向き突起C4が形成されている。各上向き突起C4は、小径部C2の周囲に沿って、小径部C2と同心円を成す同一円周上の位置に並ぶように配置されている。
【0031】
各上向き突起C4は、それぞれ、段差部C3の上面から、互いに同一円の円弧を描く形に張り出す円弧板形状に形成されている。各上向き突起C4は、それらの筒周方向の中心間の間隔が20度ずつあけられるように、筒周方向に等間隔に並んで配置されている。
図8に示すように、各上向き突起C4は、ストッパ6の筒部6Fの下端から張り出す対応する各下向き突起F1を、それらの間の各凹部に嵌合させることが可能な嵌合部を成すものである。
【0032】
図3に示すように、押さえ部材5は、図示上下方向に延びる略円筒状の筒部5Eを有する。筒部5Eは、図示上下方向に筒口が開口する筒形状とされる。筒部5Eの図示下側の筒端の内周面には、雌ねじE1が形成されている。雌ねじE1は、ベース2Bの外周面に形成された雄ねじB1に螺合させることが可能なねじ面形状とされている。
【0033】
筒部5Eの上側の筒端を残す上部箇所には、同箇所の外周面に沿って環状に張り出す外周フランジE2が形成されている。
図5~
図6に示すように、外周フランジE2は、押さえ部材5がベース2Bの外周部に螺合された際に、水栓本体2の円筒部2Aの図示上側の筒端を上方から覆うようにセットされる(
図9参照)。
【0034】
図3に示すように、筒部5Eの内周面には、その筒軸方向の途中箇所を内周面に沿って環状に縮径させる形に張り出す内周フランジE3が形成されている。
図6に示すように、内周フランジE3は、押さえ部材5をベース2Bの外周部に螺合させることで、カートリッジ4の段差部C3の上面に当てられて、ハウジング4Cをベース2Bの天板上に押さえ付ける押圧部を成すものである。
【0035】
図3に示すように、筒部5Eの内周面には、その内周フランジE3よりも上側の領域に、内周面に沿って筒周方向に4つの歯が並ぶ歯列を備えた内歯E4が形成されている。内歯E4のそれぞれの歯は、筒部5Eの内周面から横断面三角形状に突出する形状とされる。内歯E4のそれぞれの歯は、筒軸方向に筋状に延びるように突出する形状とされる。ここで、内歯E4が、本発明の「筒内周部」に相当する。
【0036】
内歯E4のそれぞれの歯は、各々の筒周方向の中心間の間隔が10度ずつあけられるように、筒周方向に等間隔に並んで形成されている。内歯E4は、ストッパ6の筒部6Fの外周面に形成された複数の外歯F2のうちの一部を噛合させることが可能な噛合部を成すものである。ここで、外歯F2が、本発明の「外周係合部」に相当する。
【0037】
筒部5Eの内周面には、その内歯E4よりも上側の領域に、筒周方向に環状に凹む環状溝E5が形成されている。環状溝E5は、ストッパ6の筒部6Fの外周面に形成された一対の装着爪F3をスナップフィット嵌合させることが可能な嵌合部を成すものである。
【0038】
図3に示すように、ストッパ6は、図示上下方向に短く延びる略円筒形状の筒部6Fを有する。筒部6Fは、図示上下方向に筒口が開口する筒形状とされる。筒部6Fの図示下端面には、筒周方向に並ぶ複数(18個)の下向き突起F1が形成されている。各下向き突起F1は、それぞれ、筒部6Fの図示下端面から、互いに同一円の円弧を描く形に張り出す円弧板形状に形成されている。
【0039】
各下向き突起F1は、それらの筒周方向の中心間の間隔が20度ずつあけられるように、筒周方向に等間隔に並んで配置されている。
図8に示すように、各下向き突起F1は、上述したカートリッジ4のハウジング4Cの段差部C3上に形成された、対応する各上向き突起C4の間の各凹部に上から嵌合させることが可能な嵌合部を成すものである。
【0040】
ストッパ6は、各下向き突起F1をカートリッジ4の対応する各上向き突起C4の間の各凹部に上から嵌合させることで、カートリッジ4に対して筒周方向の回転が規制された状態にセットされる。ストッパ6の各下向き突起F1と、カートリッジ4の各上向き突起C4とは、互いに筒周方向の間隔が同一に設定されている。それにより、ストッパ6は、カートリッジ4に対する筒周方向の組み付け位置を20度間隔で自由に変えられるようになっている。
【0041】
このように、ストッパ6とカートリッジ4との間には、ストッパ6のカートリッジ4に対する筒周方向の組み付け位置を選択可能とする組付位置選択構造Sが形成されている。この組付位置選択構造Sにより、ストッパ6は、任意の位置に締め付けられた押さえ部材5の内歯E4に対して、その筒部6Fの外周面に形成された外歯F2の中から噛合に適した位置にあるものを適宜選択して噛合させられるようになっている。
【0042】
図4に示すように、筒部6Fの外周面には、その筒周方向の5箇所の位置に、筒周方向に4つの歯が並ぶ歯列を備えた外歯F2が形成されている。各外歯F2のそれぞれの歯は、筒部6Fの外周面から横断面台形状に突出する形状とされる。各外歯F2のそれぞれの歯は、筒軸方向に筋状に延びるように突出する形状とされる。各外歯F2のそれぞれの歯は、各々の筒周方向の中心間の間隔が10度ずつあけられるように、筒周方向に等間隔に並んで形成されている。
【0043】
各外歯F2は、それらのうちのいずれかが押さえ部材5の内歯E4に噛合されることで、ストッパ6を押さえ部材5に対して筒周方向に一体的に係合させる噛合部を成すものである。筒部6Fの外周面には、その筒周方向の2箇所の位置に、筒径方向の内外に片持ち状に撓むことができるように両サイドに切込みが入れられた装着爪F3が形成されている。
【0044】
各装着爪F3は、ストッパ6を押さえ部材5の筒内に差し込むことで、それらの先端の爪部分が、押さえ部材5の内周面に形成された環状溝E5にスナップフィット嵌合する(
図7参照)。それにより、ストッパ6が、押さえ部材5に対して図示上方に抜けないように係合される。
【0045】
上記ストッパ6は、次のようにカートリッジ4のハウジング4Cと押さえ部材5との双方に対して係合するようにセットされる。先ず、
図5~
図7に示すように、ストッパ6を、ベース2Bに螺合された押さえ部材5の上向きに開口する中央の開口から筒内部に差し込む。
【0046】
そして、
図8に示すように、ストッパ6を、その各下向き突起F1をカートリッジ4の各上向き突起C4の間の各凹部に上から嵌合させるようにセットする。それにより、ストッパ6が、カートリッジ4のハウジング4Cと筒周方向に一体的となる状態に係合される。
【0047】
そのとき、
図10に示すように、ストッパ6を、その各外歯F2の中から押さえ部材5の内歯E4に適切に噛合させられる位置にあるものを内歯E4に向けた状態にして、上記嵌合させるようにセットする。それにより、ストッパ6の外歯F2が押さえ部材5の内歯E4に噛合される。また、上記差し込みにより、各装着爪F3が押さえ部材5の環状溝E5にスナップフィット嵌合される。
【0048】
それにより、押さえ部材5が、ストッパ6を介して、カートリッジ4のハウジング4Cと筒周方向に一体的となる状態に係合される。その結果、押さえ部材5が、ベース2Bに対して緩み止めされた状態に保持される。
【0049】
続いて、上述した任意の締め付け位置にある押さえ部材5の内歯E4に対して選択的に噛合されるストッパ6の各外歯F2の構成について説明する。
図10に示すように、各外歯F2は、ストッパ6の外周面における筒周方向の5箇所の位置に分かれて設けられている。
【0050】
具体的には、各外歯F2は、互いに筒周方向に隣り合う外歯F2同士の間隔、すなわち、各々の図示時計回りの先端にある歯と歯との間の間隔が、72度あけられるように設けられている。それにより、各外歯F2は、それぞれの歯は筒周方向に10度間隔で等間隔に並ぶものの、ストッパ6の各下向き突起F1との並びの関係が筒周方向に個々に異なる構成とされている。
【0051】
例えば、各外歯F2のうち、図示右端に配置されている第1の外歯T1は、その4つの歯のうちの図示時計回りの先端にある歯が、各上向き突起C4のうちの1つと筒周方向の配置が一致する位置に形成されている。また、第1の外歯T1の上記先端から2番目の歯は、上記上向き突起C4の上隣に並ぶ下向き突起F1と筒周方向の配置が一致する位置に形成されている。
【0052】
また、第1の外歯T1の上記先端から3番目の歯は、上記下向き突起F1の上隣に並ぶ上向き突起C4と筒周方向の配置が一致する位置に形成されている。また、第1の外歯T1の上記先端から4番目(末尾)の歯は、上記上向き突起C4の上隣に並ぶ下向き突起F1と筒周方向の配置が一致する位置に形成されている。
【0053】
このように、第1の外歯T1は、その4つの歯が、筒周方向に上向き突起C4と下向き突起F1とが交互に繰り返すように並ぶ4つの突起に対して、筒周方向の配置が一致する位置に形成された構成とされる。ここで、第1の外歯T1が、本発明の「第1の外周係合部」に相当する。
【0054】
また、第1の外歯T1の図示反時計回り側に並ぶ第2の外歯T2は、その上向き突起C4と下向き突起F1とが筒周方向に交互に並ぶ4つの突起を基準とした各歯の筒周方向の配置が、第1の外歯T1の各歯の配置に対して、それぞれ図示反時計回りに12度ずつずれた位置に形成されている。具体的には、第2の外歯T2は、その図示時計回りの先端にある歯の位置が、この歯から図示時計回りに離れて並ぶ上向き突起C4に対して、図示反時計回りに12度(角度α)ずれた位置に形成されている。ここで、第2の外歯T2が、本発明の「第2の外周係合部」に相当する。
【0055】
また、第2の外歯T2の図示反時計回り側に並ぶ第3の外歯T3は、その上向き突起C4と下向き突起F1とが筒周方向に交互に並ぶ4つの突起を基準とした各歯の筒周方向の配置が、第1の外歯T1の各歯の配置に対して、それぞれ図示反時計回りに24度ずれた位置に形成されている。具体的には、第3の外歯T3は、その図示時計回りの先端にある歯の位置が、この歯から図示時計回りに離れて並ぶ上向き突起C4に対して、図示反時計回りに24度(角度β)ずれた位置に形成されている。
【0056】
また、第3の外歯T3の図示反時計回り側に並ぶ第4の外歯T4は、その上向き突起C4と下向き突起F1とが筒周方向に交互に並ぶ4つの突起を基準とした各歯の筒周方向の配置が、第1の外歯T1の各歯の配置に対して、それぞれ図示反時計回りに36度ずれた位置に形成されている。具体的には、第4の外歯T4は、その図示時計回りの先端にある歯の位置が、この歯から図示時計回りに離れて並ぶ上向き突起C4に対して、図示反時計回りに36度(角度γ)ずれた位置に形成されている。
【0057】
また、第4の外歯T4の図示反時計回り側に並ぶ第5の外歯T5は、その上向き突起C4と下向き突起F1とが筒周方向に交互に並ぶ4つの突起を基準とした各歯の筒周方向の配置が、第1の外歯T1の各歯の配置に対して、それぞれ図示反時計回りに48度ずれた位置に形成されている。具体的には、第5の外歯T5は、その図示時計回りの先端にある歯の位置が、この歯から図示時計回りに離れて並ぶ上向き突起C4に対して、図示反時計回りに48度(角度δ)ずれた位置に形成されている。
【0058】
上記構成により、ストッパ6は、押さえ部材5の締め付け具合によって内歯E4の筒周方向の位置が変わっても、その内歯E4の位置に応じて、第1の外歯T1~第5の外歯T5の中から噛合に適したものを適宜選択して内歯E4に噛合させられるようになっている。具体的には、ストッパ6は、第1の外歯T1~第5の外歯T5のいずれかの選択により、外歯F2を内歯E4に対して筒周方向に2度間隔でずらして噛合させられるようになっている。
【0059】
例えば、押さえ部材5が、
図10に示す締め付け位置にあるものとする。
図10に示す締め付け位置では、内歯E4の4つの歯のうちの図示時計回りの先端にある歯が、下向き突起F1と上向き突起C4との境界に位置している。詳しくは、上記内歯E4の先端の歯が、上向き突起C4と下向き突起F1とが図示時計回りにこの順に並ぶ箇所の境界に位置している。
【0060】
この場合には、ストッパ6を、第1の外歯T1を内歯E4と噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせて、各下向き突起F1を各上向き突起C4と嵌合させる。詳しくは、ストッパ6を、第1の外歯T1の図示時計回りの先端にある歯を内歯E4の図示時計回りの先端にある歯と2番目の歯との間に噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせる(第1の組付位置)。
【0061】
それにより、第1の外歯T1の4つの歯を、内歯E4の4つの歯にそれぞれ噛合させることができる。この噛合により、押さえ部材5が、ストッパ6を介して、カートリッジ4に対する筒周方向の移動が規制される。その結果、押さえ部材5が、カートリッジ4に対して、上記締め付けられた位置にて緩み止めされた状態に保持される。
【0062】
また、
図11に示すように、押さえ部材5の締め付け位置が、
図10に示す締め付け位置から図示反時計回りに2度ずれることがあったとする。その場合には、ストッパ6を、第2の外歯T2を内歯E4と噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせて、各下向き突起F1を各上向き突起C4と嵌合させる。
【0063】
詳しくは、ストッパ6を、第2の外歯T2の図示時計回りの先端にある歯と2番目の歯との間に、内歯E4の図示時計回りの先端にある歯を噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせる。具体的には、ストッパ6を、
図10に示す向きから、図示時計回りに80度回転させた向きにする(第2の組付位置)。
【0064】
それにより、第2の外歯T2の4つの歯を、内歯E4の4つの歯にそれぞれ噛合させることができる。この噛合により、押さえ部材5が、ストッパ6を介して、カートリッジ4に対する筒周方向の移動が規制される。その結果、押さえ部材5が、カートリッジ4に対して、上記締め付けられた位置にて緩み止めされた状態に保持される。
【0065】
また、
図12に示すように、押さえ部材5の締め付け位置が、
図10に示す締め付け位置から図示反時計回りに4度ずれることがあったとする。その場合には、ストッパ6を、第3の外歯T3を内歯E4と噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせて、各下向き突起F1を各上向き突起C4と嵌合させる。詳しくは、ストッパ6を、第3の外歯T3の図示時計回りの先端にある歯を内歯E4の図示時計回りの先端にある歯と2番目の歯との間に噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせる。
【0066】
それにより、第3の外歯T3の4つの歯を、内歯E4の4つの歯にそれぞれ噛合させることができる。この噛合により、押さえ部材5が、ストッパ6を介して、カートリッジ4に対する筒周方向の移動が規制される。その結果、押さえ部材5が、カートリッジ4に対して、上記締め付けられた位置にて緩み止めされた状態に保持される。
【0067】
また、
図13に示すように、押さえ部材5の締め付け位置が、
図10に示す締め付け位置から図示反時計回りに6度ずれることがあったとする。その場合には、ストッパ6を、第4の外歯T4を内歯E4と噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせて、各下向き突起F1を各上向き突起C4と嵌合させる。詳しくは、ストッパ6を、第4の外歯T4の図示時計回りの先端にある歯と2番目の歯との間に、内歯E4の図示時計回りの先端にある歯を噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせる。
【0068】
それにより、第4の外歯T4の4つの歯を、内歯E4の4つの歯にそれぞれ噛合させることができる。この噛合により、押さえ部材5が、ストッパ6を介して、カートリッジ4に対する筒周方向の移動が規制される。その結果、押さえ部材5が、カートリッジ4に対して、上記締め付けられた位置にて緩み止めされた状態に保持される。
【0069】
また、
図14に示すように、押さえ部材5の締め付け位置が、
図10に示す締め付け位置から図示反時計回りに8度ずれることがあったとする。その場合には、ストッパ6を、第5の外歯T5を内歯E4と噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせて、各下向き突起F1を各上向き突起C4と嵌合させる。詳しくは、ストッパ6を、第5の外歯T5の図示時計回りの先端にある歯を内歯E4の図示時計回りの先端にある歯と2番目の歯との間に噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせる。
【0070】
それにより、第5の外歯T5の4つの歯を、内歯E4の4つの歯にそれぞれ噛合させることができる。この噛合により、押さえ部材5が、ストッパ6を介して、カートリッジ4に対する筒周方向の移動が規制される。その結果、押さえ部材5が、カートリッジ4に対して、上記締め付けられた位置にて緩み止めされた状態に保持される。
【0071】
また、
図15に示すように、押さえ部材5の締め付け位置が、
図10に示す締め付け位置から図示反時計回りに10度ずれることがあったとする。その場合には、ストッパ6を、第1の外歯T1を内歯E4と噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせて、各下向き突起F1を各上向き突起C4と嵌合させる。
【0072】
詳しくは、ストッパ6を、第1の外歯T1の図示時計回りの先端にある歯と2番目の歯との間に、内歯E4の図示時計回りの先端にある歯を噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせる。それにより、第1の外歯T1の4つの歯を、内歯E4の4つの歯にそれぞれ噛合させることができる。
【0073】
また、
図16に示すように、押さえ部材5の締め付け位置が、
図10に示す締め付け位置から図示反時計回りに12度ずれることがあったとする。その場合には、ストッパ6を、第2の外歯T2を内歯E4と噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせて、各下向き突起F1を各上向き突起C4と嵌合させる。
【0074】
詳しくは、ストッパ6を、第2の外歯T2の図示時計回りの先端にある歯を内歯E4の図示時計回りの先端にある歯と2番目の歯との間に噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせる。それにより、第2の外歯T2の4つの歯を、内歯E4の4つの歯にそれぞれ噛合させることができる。
【0075】
また、
図17に示すように、押さえ部材5の締め付け位置が、
図10に示す締め付け位置から図示反時計回りに14度ずれることがあったとする。その場合には、ストッパ6を、第3の外歯T3を内歯E4と噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせて、各下向き突起F1を各上向き突起C4と嵌合させる。
【0076】
詳しくは、ストッパ6を、第3の外歯T3の図示時計回りの先端にある歯と2番目の歯との間に、内歯E4の図示時計回りの先端にある歯を噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせる。それにより、第3の外歯T3の4つの歯を、内歯E4の4つの歯にそれぞれ噛合させることができる。
【0077】
また、
図18に示すように、押さえ部材5の締め付け位置が、
図10に示す締め付け位置から図示反時計回りに16度ずれることがあったとする。その場合には、ストッパ6を、第4の外歯T4を内歯E4と噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせて、各下向き突起F1を各上向き突起C4と嵌合させる。
【0078】
詳しくは、ストッパ6を、第4の外歯T4の図示時計回りの先端にある歯を内歯E4の図示時計回りの先端にある歯と2番目の歯との間に噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせる。それにより、第4の外歯T4の4つの歯を、内歯E4の4つの歯にそれぞれ噛合させることができる。
【0079】
また、
図19に示すように、押さえ部材5の締め付け位置が、
図10に示す締め付け位置から図示反時計回りに18度ずれることがあったとする。その場合には、ストッパ6を、第5の外歯T5を内歯E4と噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせて、各下向き突起F1を各上向き突起C4と嵌合させる。
【0080】
詳しくは、ストッパ6を、第5の外歯T5の図示時計回りの先端にある歯と2番目の歯との間に、内歯E4の図示時計回りの先端にある歯を噛合させるように、カートリッジ4に対する筒周方向の向きを合わせる。それにより、第5の外歯T5の4つの歯を、内歯E4の4つの歯にそれぞれ噛合させることができる。
【0081】
以降同様に、押さえ部材5の締め付け位置が、
図10に示す締め付け位置から図示反時計回りに20度以上、2度間隔でずれることがあったとしても、上記のいずれかの噛合パターンによって外歯F2を内歯E4に噛合させることができる。また、押さえ部材5の締め付け位置が、
図10に示す締め付け位置から図示時計回りに2度間隔でずれることがあったとしても、上記のいずれかの噛合パターンによって外歯F2を内歯E4に噛合させることができる。
【0082】
以上をまとめると、第1の実施形態に係る水栓装置1は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0083】
すなわち、水栓装置(1)は、水栓本体(2)の内部に設けられるベース(2B)に軸方向に回転止めされた状態に組み付けられる湯水混合用のカートリッジ(4)と、カートリッジ(4)をベース(2B)に軸方向に押さえ付けるようにベース(2B)に螺合される筒状の押さえ部材(5)と、を有する装置である。水栓装置(1)は、押さえ部材(5)の筒内部に組み込まれるストッパ(6)を有する。ストッパ(6)は、押さえ部材(5)の筒内周部(E4)とカートリッジ(4)とに対する係合により押さえ部材(5)の螺合の緩みを規制する。
【0084】
また、水栓装置(1)は、ストッパ(6)のカートリッジ(4)に対する筒周方向の組み付け位置を選択可能にする組付位置選択構造(S)を有する。組付位置選択構造(S)は、上記組み付け位置の選択により、ストッパ(6)の筒周方向の複数箇所に形成される外周係合部(F2)の中から押さえ部材(5)の締め付け位置に応じた係合位置にある外周係合部(F2)を筒内周部(E4)に係合させることが可能とされる。
【0085】
上記構成によれば、ストッパ(6)のカートリッジ(4)に対する筒周方向の組み付け位置の選択により、ストッパ(6)に形成された複数の外周係合部(F2)の中から、押さえ部材(5)の締め付け位置に応じた係合位置にある外周係合部(F2)を押さえ部材(5)の筒内周部(E4)に係合させることが可能となる。したがって、押さえ部材(5)の締め付け具合に応じて、ストッパ(6)を適切に押さえ部材(5)の筒内周部(E4)に係合させることができる。その結果、押さえ部材(5)の緩み止めを適切に行うことができる。
【0086】
また、組付位置選択構造(S)が、ストッパ(6)のカートリッジ(4)に対する筒周方向の組み付け位置を第1の組付位置(
図10参照)と第2の組付位置(
図11参照)とに変更可能とされる。複数の外周係合部(F2)のうち、ストッパ(6)がカートリッジ(4)に対して第1の組付位置(
図10参照)にあるときに押さえ部材(5)の筒内周部(E4)と係合される第1の外周係合部(T1)と、第2の組付位置(
図11参照)にあるときに筒内周部(E4)と係合される第2の外周係合部(T2)と、の筒周方向の角度間隔(72度)が、ストッパ(6)の第1の組付位置(
図10参照)と第2の組付位置(
図11参照)との筒周方向の角度間隔(80度)と異なる。
【0087】
上記構成によれば、所定位置に締め付けられた押さえ部材(5)の筒内周部(E4)に対し、ストッパ(6)の複数の外周係合部(F2)の中から、より筒周方向に隙間なく適切に係合できるものを選択して係合させることが可能となる。それにより、押さえ部材(5)の緩み止めをより適切に行うことができる。
【0088】
また、複数の外周係合部(F2)のそれぞれが、筒周方向に等間隔に並ぶ複数の歯を備える外歯(F2)とされる。押さえ部材(5)の筒内周部(E4)が、押さえ部材(5)の筒周方向の一部に形成される、筒周方向に等間隔に並ぶ複数の歯を備える内歯(E4)とされる。外歯(F2)と内歯(E4)との噛合により、ストッパ(6)が筒内周部(E4)に係合される。
【0089】
上記構成によれば、ストッパ(6)を押さえ部材(5)の筒内周部(E4)に対して複数の歯同士の噛合を伴って係合させることができる。それにより、押さえ部材(5)の緩み止めをより適切に行うことができる。また、外歯(F2)を1ピッチ又は複数ピッチずらした位置でも内歯(E4)に噛合させることが可能となるため、押さえ部材(5)をより様々な締め付け位置に対応して緩み止めすることが可能となる。
【0090】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0091】
1.押さえ部材は、その内周部がベースの外周部に螺合される構成の他、外周部がベースの内周部に螺合される構成であっても良い。
【0092】
2.組付位置選択構造は、ストッパに筒周方向の全域に亘って外周係合部(外歯)が等間隔に形成され、押さえ部材の締め付け位置の変化に対し、ストッパのカートリッジに対する筒周方向の組み付け位置を変えることで、ストッパの外周係合部を押さえ部材の筒内周部(内歯)に係合させられる向き状態に切り替える構成であっても良い。なお、外周係合部(外歯)は、ストッパに筒周方向の全域に亘って等間隔に形成したものの一部を除いた断続的な構成から成るものであっても良い。
【0093】
また、組付位置選択構造は、押さえ部材の筒内周部に筒周方向の全域に亘って内歯が等間隔に形成され、押さえ部材の締め付け位置の変化に対し、ストッパのカートリッジに対する筒周方向の組み付け位置を変えることで、ストッパの筒周方向の一部に形成された外周係合部を押さえ部材の筒内周部(内歯)に係合させられる向き状態に切り替える構成であっても良い。なお、筒内周部(内歯)は、押さえ部材に筒周方向の全域に亘って等間隔に形成したものの一部を除いた断続的な構成から成るものであっても良い。
【0094】
3.組付位置選択構造は、ストッパをカートリッジに対して第1の組付位置と第2の組付位置との2つの組付位置の間でのみ組み付け位置の切り替えを行える構成であっても良い。また、組付位置選択構造は、ストッパをカートリッジに対して3つ以上の組み付け位置の間で組み付け位置の切り替えを行える構成であっても良い。組み付け位置が3つ以上ある場合において、各組み付け位置の間の間隔は、等間隔でなくばらばらであっても良い。
【0095】
4.ストッパに形成される外歯や押さえ部材に形成される内歯の歯数や大きさ、形状、及び歯と歯の間隔は、適宜設定可能なものであり、特定の形態に限定されるものではない。
【0096】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0097】
1…水栓装置、2…水栓本体、2A…円筒部、2B…ベース、B1…雄ねじ、3…レバーハンドル、4…カートリッジ、4C…ハウジング、C1…大径部、C2…小径部、C3…段差部、C4…上向き突起、4D…操作軸、5…押さえ部材、5E…筒部、E1…雌ねじ、E2…外周フランジ、E3…内周フランジ、E4…内歯(筒内周部)、E5…環状溝、6…ストッパ、6F…筒部、F1…下向き突起、F2…外歯(外周係合部)、F3…装着爪、T1…第1の外歯(第1の外周係合部)、T2…第2の外歯(第2の外周係合部)、T3…第3の外歯、T4…第4の外歯、T5…第5の外歯、S…組付位置選択構造、α…角度、β…角度、γ…角度、δ…角度