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特開2024-175782設備状態表示装置、設備状態表示方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175782
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】設備状態表示装置、設備状態表示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G05B23/02 302S
G05B23/02 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093781
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 良昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 貴範
(72)【発明者】
【氏名】徳増 匠
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223BA03
3C223BB02
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB05
3C223FF35
3C223GG03
3C223HH02
(57)【要約】
【課題】異常が発生したときの影響も考慮して設備の状態を監視できる技術を提供すること。
【解決手段】本開示の一態様による設備状態表示装置は、複数の監視対象設備の各々から収集した複数の運転データを用いて、異常診断技術により前記複数の監視対象設備の各々に対する複数の異常指標値を算出する算出部と、前記監視対象設備に異常が発生したときの影響の大きさ度合いを表す影響度に基づいて、前記複数の異常指標値の各々を設備状態として表示する表示制御部と、を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の監視対象設備の各々から収集した複数の運転データを用いて、異常診断技術により前記複数の監視対象設備の各々に対する複数の異常指標値を算出する算出部と、
前記監視対象設備に異常が発生したときの影響の大きさ度合いを表す影響度に基づいて、前記複数の異常指標値の各々を設備状態として表示する表示制御部と、
を有する設備状態表示装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、
前記影響度が高い順に前記複数の異常指標値の各々を前記設備状態として表示する、請求項1に記載の設備状態表示装置。
【請求項3】
前記影響度は、前記監視対象設備に異常が発生したときに生じる運用上の影響又はコスト的な影響を定量化した値である、請求項1又は2に記載の設備状態表示装置。
【請求項4】
前記影響度は、前記監視対象設備の動作モード又は前記監視対象設備が実行するプロセスの種類に応じて動的に変化する、請求項3に記載の設備状態表示装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、
前記影響度と前記異常指標値との積が高い順に前記複数の異常指標値の各々を前記設備状態として表示する、請求項1に記載の設備状態表示装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、
前記監視対象設備毎に予め決められた重み係数と前記影響度と前記異常指標値との積が高い順に前記複数の異常指標値の各々を前記設備状態として表示する、請求項5に記載の設備状態表示装置。
【請求項7】
複数の監視対象設備の各々から収集した複数の運転データを用いて、異常診断技術により前記複数の監視対象設備の各々に対する複数の異常指標値を算出する算出手順と、
前記監視対象設備に異常が発生したときの影響の大きさ度合いを表す影響度に基づいて、前記複数の異常指標値の各々を設備状態として表示する表示制御手順と、
をコンピュータが実行する設備状態表示方法。
【請求項8】
複数の監視対象設備の各々から収集した複数の運転データを用いて、異常診断技術により前記複数の監視対象設備の各々に対する複数の異常指標値を算出する算出手順と、
前記監視対象設備に異常が発生したときの影響の大きさ度合いを表す影響度に基づいて、前記複数の異常指標値の各々を設備状態として表示する表示制御手順と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設備状態表示装置、設備状態表示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
多変量解析を利用した異常診断技術が知られている(例えば、特許文献1等)。異常診断技術では、一般に、設備の異常度を表す異常指標値を算出した上で、この異常指標値が予め決められた閾値を超えているか否かによって異常診断が行われる。このため、異常指標値とそれに対する閾値とを可視化することにより、設備の状態を監視することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-209847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、工場等には複数の設備が存在し、異常が発生したときの影響が設備によって異なり得ることが一般的である。このため、単に各設備の異常指標値とそれに対する閾値とを可視化するだけでは、設備に異常が発生したときの影響を考慮した監視を行うことはできない。
【0005】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたもので、異常が発生したときの影響も考慮して設備の状態を監視できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による設備状態表示装置は、複数の監視対象設備の各々から収集した複数の運転データを用いて、異常診断技術により前記複数の監視対象設備の各々に対する複数の異常指標値を算出する算出部と、前記監視対象設備に異常が発生したときの影響の大きさ度合いを表す影響度に基づいて、前記複数の異常指標値の各々を設備状態として表示する表示制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
異常が発生したときの影響も考慮して設備の状態を監視できる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る監視システムの全体構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る監視装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る監視装置の機能構成の一例を示す図である。
図4】設備情報の一例を示す図である。
図5】本実施形態に係る監視処理の一例を示すフローチャートである。
図6】設備状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について説明する。以下では、工場やプラント等といった施設に含まれる複数の設備を対象として、各設備に異常が発生したときの影響も考慮してその状態を監視できる監視システム1について説明する。
【0010】
<監視システム1の全体構成例>
本実施形態に係る監視システム1の全体構成例を図1に示す。図1に示すように、本実施形態に係る監視システム1には、監視装置10と、施設20と、オペレータ端末30とが含まれる。ここで、監視装置10と後述する制御装置23は、例えば、LAN(Local Area Network)等を含む通信ネットワークを介して相互に通信可能に接続される。同様に、監視装置10とオペレータ端末30は、例えば、LAN等を含む通信ネットワークを介して相互に通信可能に接続される。
【0011】
監視装置10は、施設20(より正確には、当該施設20に含まれる制御装置23)から収集した運転データを用いて、多変量統計的プロセス管理(MSPC:Multivariate Statistical Process Control)の手法により、後述する各監視対象設備21の異常診断を行う。多変量統計的プロセス管理(MSPC)は多変量解析を利用した異常診断技術の1つであり、その詳細については、例えば、参考文献1等を参照されたい。なお、運転データは一般に複数の変数(これらの変数はプロセス変数とも呼ばれる。)で構成され、各変数の値は後述する各計測器22によって計測されるため計測値等と呼ばれる。運転データを構成する変数としては、例えば、温度、圧力、流量、電圧等といったものが挙げられる。
【0012】
また、監視装置10は、各監視対象設備21に対する異常診断の際に算出された異常指標値(例えば、Q値、T値)をその監視対象設備21の設備状態として、オペレータ端末30が備えるディスプレイ等に表示される監視画面上に描画する。このとき、監視装置10は、各監視対象設備21に異常が発生したときの影響の大きさ度合いを表す影響度を考慮して、例えば、影響度が高い順に異常指標値を左から順に描画する。監視画面とは、各監視対象設備21の異常指標値をオペレータ等がリアルタイムに確認(モニタリング)することができる画面のことである。以下、各監視対象設備21に異常が発生したときの影響が大きいほど影響度は高く、その影響が小さいほど影響度は低くなるものとする。
【0013】
ここで、監視対象設備21に異常が発生したときの影響とは、当該監視対象設備21に何等かの異常(例えば、不具合や故障等)が発生したときに生じる運用上の影響やコスト的な影響のことである。運用上の影響としては、例えば、監視対象設備21に異常が発生した後にその監視対象設備21が復旧するまでの期間の長さ、監視対象設備21に異常が発生したときにそれによって何等かの影響を与えることなる他の監視対象設備21の数、監視対象設備21に異常が発生したときにその監視対象設備21を復旧させる際の難易度等が挙げられる。コスト的な影響としては、例えば、監視対象設備21に異常が発生したときにその監視対象設備21の復旧に要する費用等が挙げられる。
【0014】
例えば、監視対象設備21に異常が発生した後にその監視対象設備21が復旧するまでの期間の長さを考えた場合、当該期間が長いほど影響度は高く、当該期間が短いほど影響度は低くなる。また、例えば、監視対象設備21に異常が発生したときにそれによって何等かの影響を与えることなる他の監視対象設備21の数を考えた場合、当該数が多いほど影響度は高く、当該数が少ないほど影響度は低くなる。また、例えば、監視対象設備21に異常が発生したときにその監視対象設備21を復旧させる際の難易度を考えた場合、当該難易度が高いほど影響度は高く、当該難易度が低いほど影響度は低くなる。また、例えば、監視対象設備21に異常が発生したときにその監視対象設備21の復旧に要する費用を考えた場合、当該費用が高いほど影響度は高く、当該費用が安いほど影響度は低くなる。
【0015】
なお、監視装置10は、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)や汎用サーバ等により実現される。監視装置10は、例えば、複数台のPCや複数台の汎用サーバ等で構成されるシステムであってもよい。
【0016】
以下、一例として、異常指標値はQ値であるものとして説明する。ただし、異常指標値はQ値に限られるものではなく、T値であってもよい。
【0017】
施設20は、例えば、工場やプラント等といった各種施設である。施設20には、複数の監視対象設備21と、複数の計測器22と、制御装置23とが含まれる。監視対象設備21は、監視装置10によって監視対象(つまり、異常診断対象)となる各種設備(例えば、生産設備、熱源設備、ポンプ設備等)、産業用機器、各種装置等である。計測器22は、センサ等であり、監視対象設備21の各種状態を表す物理量を計測し、その計測値が含まれる計測データを制御装置23に送信する。各監視対象設備21には1以上の計測器22がそれぞれ設置等されている。制御装置23は、監視対象設備21毎に、その監視対象設備21に設置等されている各計測器22から収集した計測データに含まれる計測値で構成される運転データを監視装置10に送信すると共に、これらの運転データに基づいて既知のプロセス制御方式により当該監視対象設備21を制御する。
【0018】
以下、施設20に含まれる監視対象設備21の数をmとして、各監視対象設備21を監視対象設備21(i=1,・・・,m)と表す。
【0019】
オペレータ端末30は、施設20を運用するオペレータが利用するPCやスマートフォン、タブレット端末等の各種端末である。オペレータは、オペレータ端末30を利用して、監視装置10から提供される監視画面上で各監視対象設備21のQ値とそれに対する閾値とをリアルタイムに確認することができる。しかも、このとき、オペレータは、各監視対象設備21の影響度が高い順にQ値とそれに対する閾値とを確認することができる。このため、各監視対象設備21のQ値とそれに対する閾値及び影響度に応じて、例えば、監視対象設備21の代替機を準備したり、メンテナンス作業を準備したりする等といった異常が発生した場合の準備作業やその計画作業等を速やかに開始することが可能となる。なお、例えば、オペレータ端末30はWebブラウザ等を備えており、Webブラウザ等により監視画面をディスプレイ上に表示することができる。
【0020】
なお、図1に示す監視システム1の全体構成は一例であって、これに限られるものではない。例えば、監視装置10とオペレータ端末30とが一体で構成されていてもよいし、監視装置10と制御装置23とが一体で構成されていてもよい。又は、例えば、監視装置10が仮想マシン(VM:Virtual Machine)で実現されるものであってもよいし、監視装置10が複数台の装置で構成されるシステムである場合にその一部が仮想マシンで実現されるものであってもよい。
【0021】
<監視装置10のハードウェア構成例>
本実施形態に係る監視装置10のハードウェア構成例を図2に示す。図2に示すように、本実施形態に係る監視装置10は、入力装置101と、表示装置102と、外部I/F103と、通信I/F104と、RAM(Random Access Memory)105と、ROM(Read Only Memory)106と、補助記憶装置107と、プロセッサ108とを有する。これらの各ハードウェアは、それぞれがバス109を介して通信可能に接続される。
【0022】
入力装置101は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、物理ボタン等である。表示装置102は、例えば、ディスプレイ、表示パネル等である。なお、監視装置10は、例えば、入力装置101及び表示装置102のうちの少なくとも一方を有していなくてもよい。
【0023】
外部I/F103は、記録媒体103a等の外部装置とのインタフェースである。記録媒体103aとしては、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、SDメモリカード(Secure Digital memory card)、USB(Universal Serial Bus)メモリカード等が挙げられる。
【0024】
通信I/F104は、監視装置10を通信ネットワークに接続するためのインタフェースである。RAM105は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。ROM106は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。補助記憶装置107は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等のストレージ装置(記憶装置)である。プロセッサ108は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の各種演算装置である。
【0025】
なお、図2に示すハードウェア構成は一例であって、監視装置10のハードウェア構成はこれに限られるものではない。例えば、監視装置10は、複数の補助記憶装置107や複数のプロセッサ108を有していてもよいし、図示したハードウェアの一部を有していなくてもよいし、図示したハードウェア以外の種々のハードウェアを有していてもよい。
【0026】
<監視装置10の機能構成例>
本実施形態に係る監視装置10の機能構成例を図3に示す。図3に示すように、本実施形態に係る監視装置10は、運転データ収集部201と、診断部202と、表示制御部203とを有する。これら各部は、例えば、監視装置10にインストールされた1以上のプログラムが、プロセッサ108等に実行させる処理により実現される。また、本実施形態に係る監視装置10は、運転データ記憶部204と、診断モデル記憶部205と、診断結果記憶部206と、設備情報記憶部207とを有する。これら各記憶部は、例えば、補助記憶装置107等により実現される。なお、これら各記憶部のうちの一部の記憶部が、例えば、監視装置10と通信ネットワークを介して接続される記憶装置等により実現されていてもよい。
【0027】
運転データ収集部201は、施設20(より正確には、制御装置23)から送信された運転データを収集し、これらの運転データを運転データ記憶部204に保存する。以下、i=1,・・・,mに対して、監視対象設備21の運転データをx(i)と表す。また、時刻を表すインデックスをtとして、時刻インデックスtにおける監視対象設備21の運転データをx(i)(t)と表す。なお、運転データx(i)は、例えば、サンプリング周期毎に運転データ収集部201によって収集される。すなわち、運転データ収集部201は、例えば、サンプリング周期毎に、(x(1),・・・,x(m))を収集する。ここで、i≠i'である場合、運転データx(i)を構成する変数と、運転データx(i')を構成する変数とは異なり得る。
【0028】
診断部202は、監視対象設備21(i=1,・・・,m)毎に、その監視対象設備21の正常状態を表す運転データx(i)の集合を用いてMSPCの手法により異常診断モデルを作成し、診断モデル記憶部205に保存する。以下、監視対象設備21(i=1,・・・,m)の異常診断モデルをM(i)と表す。
【0029】
また、診断部202は、監視対象設備21(i=1,・・・,m)毎に、診断モデル記憶部205に保存されている異常診断モデルM(i)と、運転データ記憶部204に記憶されている最新の時刻インデックスの運転データx(i)とを用いて異常指標値としてQ値を算出し、診断結果記憶部206に保存する。ここで、一般に、異常診断モデルM(i)(i=1,・・・,m)は監視対象設備21がオフラインであるときに作成される。一方で、Q値は監視対象設備21のオンライン中に逐次的に算出(例えば、運転データx(i)のサンプリング周期毎に逐次的に算出)される。なお、異常指標値と予め決められた閾値との比較によって監視対象設備21の異常有無が診断される。例えば、予め決められた第1の閾値及び第2の閾値をそれぞれth (i)及びth (i)(ただし、0<th (i)<th (i))として、監視対象設備21のQ値が第1の閾値th (i)以下の場合は「正常」、第1の閾値th (i)を超えており、かつ、第2の閾値th (i)以下である場合は「警告」、第2の閾値th (i)を超えている場合は「異常」と診断される。
【0030】
以下、i=1,・・・,mに対して、時刻インデックスtの運転データx(i)(t)から算出されたQ値をQ(i)(t)と表す。また、時刻インデックスtを明示しない場合は、Q(i)と表す。
【0031】
表示制御部203は、各監視対象設備21(i=1,・・・,m)のオンライン中に、そのQ値Q(i)(t)を設備状態として監視画面上に逐次的に描画(例えば、運転データx(i)のサンプリング周期毎に逐次的に描画)する。また、このとき、表示制御部203は、設備情報記憶部207に記憶されている設備情報を用いて、各監視対象設備21の影響度が高い順にそのQ値Q(i)(t)を左から順に描画する。これにより、オペレータは、異常が発生したときの影響度が高い監視対象設備21のQ値を左から順に容易に確認することが可能となる。
【0032】
運転データ記憶部204は、運転データ収集部201によって収集された運転データx(i)(i=1,・・・,m)を記憶する。すなわち、運転データ記憶部204には、時刻インデックスt毎に、(x(1)(t),・・・,x(m)(t))が時系列データとして記憶される。なお、運転データ記憶部204に記憶されている運転データx(i)は、必要に応じて何等かの前処理が行われていてもよい。前処理としては、例えば、欠損値補間や正規化等が挙げられる。
【0033】
診断モデル記憶部205は、診断部202によって作成された異常診断モデルM(i)(i=1,・・・,m)を記憶する。
【0034】
診断結果記憶部206は、診断部202によって算出されたQ値Q(i)(i=1,・・・,m)を記憶する。すなわち、診断結果記憶部206には、時刻インデックスt毎に、(Q(1)(t),・・・,Q(m)(t))が時系列データとして記憶される。
【0035】
設備情報記憶部207は、各監視対象設備21(i=1,・・・,m)の設備情報を記憶する。ここで、一例として、m=8であるものとする。このとき、設備情報記憶部207に記憶されている設備情報の例を図4に示す。図4に示すように、設備情報記憶部207には各監視対象設備21(i=1,・・・,8)の設備情報が記憶されており、各設備情報には、例えば、設備IDと、設備名と、第1の閾値と、第2の閾値と、影響度とが含まれる。設備IDは、監視対象設備21を識別する識別情報である。設備名は、監視対象設備21の名称である。第1の閾値及び第2の閾値は、監視対象設備21の異常診断に用いられる閾値である。影響度は、監視対象設備21に異常が発生したときの影響の大きさ度合いを表す数値である。影響度は、例えば、監視対象設備21に異常が発生したときに生じる運用上の影響やコスト的な影響に応じて人手で決定及び設定される。ただし、例えば、監視対象設備21の運用上の影響やコスト的な影響が既知である場合にはその影響の大きさ順に自動的に決定及び設定されてもよい。
【0036】
例えば、図4に示す例の1行目は、監視対象設備21の設備情報であり、当該設備情報には、設備ID「1」、設備名「設備1」、第1の閾値「th (1)」、第2の閾値「th (1)」、影響度「4」が含まれている。同様に、例えば、図4に示す例の2行目は、監視対象設備21の設備情報であり、当該設備情報には、設備ID「2」、設備名「設備2」、第1の閾値「th (2)」、第2の閾値「th (2)」、影響度「1」が含まれている。図4に示す例の3行目~8行目も同様である。なお、図4に示す例では、影響度は1以上の整数で定量化した値で表現されているが、これは一例であって、例えば、実数等で定量化した値で表現されてもよい。
【0037】
なお、本実施形態に係る監視装置10は、図3に示した各部以外にも様々な機能を実現する機能部や記憶部を有していてもよい。例えば、本実施形態に係る監視装置10は、診断部202によって「異常」と診断された場合に、その旨をメール等で通知するといった後処理を実現する「後処理部」を有していてもよい。
【0038】
<監視処理>
以下、本実施形態に係る監視処理について、図5を参照しながら説明する。ここで、以下のステップS101~ステップS104は各監視対象設備21のオンライン中に逐次的に実行(例えば、運転データx(i)のサンプリング周期毎に逐次的に実行)される。なお、以下では、診断部202によって各異常診断モデルM(i)(i=1,・・・,m)が各監視対象設備21のオフライン時に作成され、これらの異常診断モデルM(i)が診断モデル記憶部205に保存されているものとする。
【0039】
まず、診断部202は、運転データ記憶部204に記憶されている最新の時刻インデックスtの運転データ(x(1)(t),・・・,x(m)(t))を取得する(ステップS101)。
【0040】
次に、診断部202は、診断モデル記憶部205に保存されている異常診断モデルM(i)(i=1,・・・,m)と、上記のステップS101で取得された運転データ(x(1)(t),・・・,x(m)(t))とを用いて、Q値(Q(1)(t),・・・,Q(m)(t))を算出する(ステップS102)。すなわち、診断部202は、i=1,・・・,mに対して、異常診断モデルM(i)と、運転データx(i)(t)とを用いて、MSPCの手法によりQ値Q(i)(t)を算出する。
【0041】
次に、診断部202は、上記のステップS102で算出されたQ値(Q(1)(t),・・・,Q(m)(t))を診断結果記憶部206に保存する(ステップS103)。
【0042】
そして、表示制御部203は、設備情報記憶部207に記憶されている設備情報を用いて、上記のステップS102で算出されたQ値(Q(1)(t),・・・,Q(m)(t))を設備状態として監視画面上に描画する(ステップS104)。このとき、表示制御部203は、当該設備情報に含まれる影響度が高い順にQ(i)(t)を左から順に描画する。これにより、オペレータは、各監視対象設備21のQ値を影響度が高い順にリアルタイムに確認することができる。
【0043】
<設備状態の描画例>
以下、監視画面上に描画される設備状態の一例について説明する。m=8であり、かつ、図4に示す設備情報が設備情報記憶部207に記憶されている場合の設備状態を図6に示す。図6に示す設備状態1100は、設備名「設備1」~「設備8」の各監視対象設備21(i=1,・・・,8)のQ値Q(i)(t)を表すグラフとそれに対する第1の閾値th (i)及び第2の閾値th (i)とを、影響度の高い順に左から順に描画したものである。なお、図6に示す例では、更に、Q(i)(t)が「第1の閾値th (i)以下」、「第1の閾値th (i)を超えており、かつ、第2の閾値th (i)以下」、「第2の閾値th (i)を超えている」のいずれであるかに応じて(つまり、「異常」、「警告」、「正常」のいずれであるかに応じて)、Q値が異なる表示態様(例えば、異なる色等)で描画されている。
【0044】
このように、設備状態では、監視対象設備21のQ値が、その監視対象設備21の影響度が高い順に左から表示される。一般に、オペレータは左から右に向かってQ値を確認するため、図6に示すような設備状態1100により、影響度が高い監視対象設備21のQ値を優先的に確認することが可能となる。ただし、監視対象設備21の影響度の高い順にQ値を左から順に描画することは一例であって、例えば、オペレータによる設定変更等によって右から順に描画するようにしてもよい。
【0045】
<変形例>
以下、本実施形態の変形例についていくつか説明する。
【0046】
・変形例1
上記の実施形態では、MSPCの手法により異常診断モデルを作成し、異常指標値としてQ値を想定しているが、異常診断モデル及び異常指標値はこれに限られるものではない。例えば、異常診断モデルとして、LOF(Local Outlier Factor)、One Class SVM、分離フォレスト(isolation Forest)、INNE(isolation using Nearest Neighbour Ensemble)等が作成されてもよい。また、異常指標値としては、異常診断モデルに応じて異常度を測る適切な指標値が用いられてもよい。
【0047】
・変形例2
上記の実施形態では、各監視対象設備21の影響度に応じて各監視対象設備21のQ値を左から順に描画したが、例えば、影響度とQ値との積が高い順に左から順に描画してもよい。より一般には、監視対象設備21毎に予め決めれられた重み係数を用いて、重み係数と影響度とQ値との積が高い順に左から順にQ値を描画してもよい。
【0048】
・変形例3
上記の実施形態では影響度を固定としたが、影響度が動的に変わってもよい。例えば、監視対象設備21に複数の動作モードが存在する場合は、動作モードに応じてその監視対象設備21の影響度が変化してもよい。また、例えば、監視対象設備21が複数のプロセスを実行する場合には、プロセスの種類に応じて監視対象設備21の影響度が変化してもよい。なお、複数のプロセスを実行する場合としては、例えば、監視対象設備21が「製品Aの製造プロセス」と「製品Bの製造プロセス」の両方を実行する場合等が挙げられる。
【0049】
<まとめ>
以上のように、本実施形態に係る監視システム1は、監視対象設備21に異常が発生したときの影響も考慮して、その監視対象設備21を異常診断したときの異常指標値を設備状態として描画することができる。このため、監視対象設備21のオペレータは、影響度が高い監視対象設備21を優先的に監視することが可能となり、例えば、異常が発生した場合の準備作業やその計画作業等を速やかに開始することが可能となる。
【0050】
本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から逸脱することなく、種々の変形や変更、既知の技術との組み合わせ等が可能である。
【0051】
[参考文献]
参考文献1:加納 学,「多変量統計的プロセス管理」,インタネット<URL:http://manabukano.brilliant-future.net/research/report/Report2005_MSPC.pdf>
【符号の説明】
【0052】
1 監視システム
10 監視装置
20 施設
21 監視対象設備
22 計測器
23 制御装置
30 オペレータ端末
101 入力装置
102 表示装置
103 外部I/F
103a 記録媒体
104 通信I/F
105 RAM
106 ROM
107 補助記憶装置
108 プロセッサ
109 バス
201 運転データ収集部
202 診断部
203 表示制御部
204 運転データ記憶部
205 診断モデル記憶部
206 診断結果記憶部
207 設備情報記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6