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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175786
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】試料支持体
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/04 20060101AFI20241212BHJP
   H01J 49/16 20060101ALI20241212BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20241212BHJP
【FI】
H01J49/04 090
H01J49/04 310
H01J49/16 100
H01J49/16 500
G01N27/62 F
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093791
(22)【出願日】2023-06-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】全 哲洙
(72)【発明者】
【氏名】池田 貴将
(72)【発明者】
【氏名】小谷 政弘
(72)【発明者】
【氏名】井上 圭祐
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041JA06
(57)【要約】
【課題】分析の高精度化を可能にする試料支持体を提供する。
【解決手段】試料支持体の基板は、第1表面2aと、第1表面2aとは反対側の第2表面2bと、不規則に分布し且つ第1表面2aに開口する空隙2dと、を含んでいる。基板は、第1表面2aの一部を含む測定領域21と、Z軸方向から見た場合に測定領域21の外側に位置する閉塞領域22と、を含んでいる。閉塞領域22の空孔率は、測定領域21の空孔率よりも小さい。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料のイオン化用の試料支持体であって、
第1表面と、前記第1表面とは反対側の第2表面と、不規則に分布し且つ少なくとも前記第1表面に開口する空隙と、を含む多孔質基板を備え、
前記多孔質基板は、前記第1表面の一部を含む測定領域と、前記第1表面に垂直な方向から見た場合に前記測定領域の外側に位置する閉塞領域と、を含み、
前記閉塞領域の空孔率は、前記測定領域の空孔率よりも小さい、試料支持体。
【請求項2】
前記閉塞領域は、前記第1表面に垂直な方向から見た場合に前記測定領域を囲んでいる、請求項1に記載の試料支持体。
【請求項3】
前記閉塞領域における前記空隙は、前記多孔質基板と同一の材料によって塞がれている、請求項1に記載の試料支持体。
【請求項4】
前記閉塞領域は、前記第2表面から前記第1表面に向かうに従って厚さが漸増する本体部を含んでいる、請求項1に記載の試料支持体。
【請求項5】
前記多孔質基板の側面は、前記第2表面から前記第1表面に向かうに従って前記第2表面の外側に向かって傾斜する傾斜領域を含んでいる、請求項1に記載の試料支持体。
【請求項6】
前記閉塞領域は、前記第1表面において前記測定領域よりも突出する突出部を含んでいる、請求項1に記載の試料支持体。
【請求項7】
前記多孔質基板の側面と前記第2表面との境界部は、曲面状を呈している、請求項1に記載の試料支持体。
【請求項8】
前記多孔質基板の表面に設けられた導電層を更に備え、
前記導電層は、前記第1表面における前記空隙の開口が塞がれないように前記測定領域に設けられた第1導電領域と、前記第1導電領域と繋がるように前記閉塞領域に設けられた第2導電領域と、を含んでいる、請求項1に記載の試料支持体。
【請求項9】
前記多孔質基板は、導電性を有している、請求項1に記載の試料支持体。
【請求項10】
前記多孔質基板は、絶縁性を有している、請求項1に記載の試料支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
生体試料等の分析に用いられる試料支持体として、主面及び側面を含む多孔質基板を備えた試料支持体が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような試料支持体の多孔質基板は、不規則に分布し且つ主面に開口する空隙を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-43571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような試料支持体によれば、多孔質基板の主面上に留まる試料の量が適切に調整されるため、試料の成分が好適にイオン化され、その結果、試料の分析の高精度化が実現される。このような試料支持体には、試料の分析の精度の更なる改善が求められる場合がある。
【0005】
本発明は、分析の高精度化を可能にする試料支持体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の試料支持体は、[1]「試料のイオン化用の試料支持体であって、第1表面と、前記第1表面とは反対側の第2表面と、不規則に分布し且つ少なくとも前記第1表面に開口する空隙と、を含む多孔質基板を備え、前記多孔質基板は、前記第1表面の一部を含む測定領域と、前記第1表面に垂直な方向から見た場合に前記測定領域の外側に位置する閉塞領域と、を含み、前記閉塞領域の空孔率は、前記測定領域の空孔率よりも小さい、試料支持体。」である。
【0007】
この試料支持体の多孔質基板は、不規則に分布し且つ少なくとも第1表面に開口する空隙を含んでいる。多孔質基板の第1表面に対して試料が導入されると、試料が多孔質基板の空隙内に適度に拡散するため、第1表面上に留まる試料の量が適切に調整される。そのため、第1表面上に留まっている試料を好適にイオン化させることができる。しかも、閉塞領域の空孔率は、測定領域の空孔率よりも小さい。これにより、たとえ多孔質基板の側面を把持した作業者の手に異物が付着していたとしても、当該異物が閉塞領域を通過し難くなるため、測定領域への当該異物の侵入が抑制される。したがって、異物のイオン化に起因するノイズの発生が抑制される。よって、この試料支持体によれば、分析の高精度化が実現される。
【0008】
本発明の試料支持体は、[2]「前記閉塞領域は、前記第1表面に垂直な方向から見た場合に前記測定領域を囲んでいる、上記[1]に記載の試料支持体。」であってもよい。これにより、測定領域への異物の侵入がより確実に抑制される。
【0009】
本発明の試料支持体は、[3]「前記閉塞領域における前記空隙は、前記多孔質基板と同一の材料によって塞がれている、上記[1]又は[2]に記載の試料支持体。」であってもよい。これにより、多孔質基板の剛性を高めつつ閉塞領域の空孔率を小さくすることができる。
【0010】
本発明の試料支持体は、[4]「前記閉塞領域は、前記第2表面から前記第1表面に向かうに従って厚さが漸増する本体部を含んでいる、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の試料支持体。」であってもよい。これにより、多孔質基板のうち空隙が開口する第1表面に近い領域の剛性を高めることができる。そのため、試料が留まる表面として用いられる第1表面の平坦性が維持される結果、分析の高精度化が実現される。
【0011】
本発明の試料支持体は、[5]「前記多孔質基板の側面は、前記第2表面から前記第1表面に向かうに従って前記第2表面の外側に向かって傾斜する傾斜領域を含んでいる、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の試料支持体。」であってもよい。これにより、第1表面が鉛直方向における上側を向いている状態で多孔質基板の側面が把持される場合に、多孔質基板への荷重を低減しつつ多孔質基板を適切に把持することができる。
【0012】
本発明の試料支持体は、[6]「前記閉塞領域は、前記第1表面において前記測定領域よりも突出する突出部を含んでいる、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の試料支持体。」であってもよい。これにより、第1表面上に留まっている試料が第1表面から多孔質基板の側面へ垂れることが抑制される。
【0013】
本発明の試料支持体は、[7]「前記多孔質基板の側面と前記第2表面との境界部は、曲面状を呈している、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の試料支持体。」であってもよい。これにより、作業者の手が多孔質基板の側面と第2表面との境界部に接触したとしても、作業者の怪我が抑制される。
【0014】
本発明の試料支持体は、[8]「前記多孔質基板の表面に設けられた導電層を更に備え、前記導電層は、前記第1表面における前記空隙の開口が塞がれないように前記測定領域に設けられた第1導電領域と、前記第1導電領域と繋がるように前記閉塞領域に設けられた第2導電領域と、を含んでいる、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の試料支持体。」であってもよい。閉塞領域の空孔率が測定領域の空孔率よりも小さいため、測定領域に設けられた第1導電領域に比べて閉塞領域に設けられた第2導電領域が連続性に優れている。そのため、第2導電領域に電圧を印加することで、第2導電領域を介して第1導電領域に安定的に電圧を印加することができる。
【0015】
本発明の試料支持体は、[9]「前記多孔質基板は、導電性を有している、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の試料支持体。」であってもよい。これにより、試料支持体の少なくとも一部に導電性が求められるような場合においても、導電層を省略することができる。
【0016】
本発明の試料支持体は、[10]「前記多孔質基板は、絶縁性を有している、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の試料支持体。」であってもよい。これにより、試料支持体に導電性が求められないような場合に、この試料支持体を用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、分析の高精度化を可能にする試料支持体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態の試料支持体の平面図である。
図2図1に示されるII-II線に沿っての断面図である。
図3図1に示される多孔質基板の多孔質構造の模式図である。
図4図1に示される多孔質基板の第1表面のSEM画像である。
図5図1に示される多孔質基板の側面のSEM画像である。
図6図1に示される多孔質基板の断面のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
[試料支持体]
図1及び図2に示される試料支持体1は、試料のイオン化に用いられる。試料は、生体試料である。試料は、例えば果物(レモン)の切片である。試料支持体1は、基板(多孔質基板)2と、導電層3と、を備えている。基板2は、例えば矩形板状を呈している。基板2は、第1表面2aと、第1表面2aとは反対側の第2表面2bと、側面2cと、を含んでいる。基板2の厚さ(第1表面2aから第2表面2bまでの距離)は、例えば100μm~1500μm程度である。なお、図1においては導電層3の図示が省略されている。
【0021】
基板2は、測定領域21と、閉塞領域22と、を含んでいる。測定領域21は、Z軸方向(第1表面2aに垂直な方向)から見た場合に、基板2の側面2cよりも内側に位置している。測定領域21は、側面2cから離れている。測定領域21は、Z軸方向から見た場合に、例えば矩形状を呈している。測定領域21は、第1表面2aの一部及び第2表面2bの一部を含んでいる。試料は、測定領域21でイオン化される。
【0022】
閉塞領域22は、Z軸方向から見た場合に、測定領域21の外側に位置している。閉塞領域22は、Z軸方向から見た場合に、測定領域21を囲んでいる。閉塞領域22は、Z軸方向から見た場合に、例えば矩形枠状を呈している。本実施形態では、閉塞領域22は、基板2のうち測定領域21以外の領域である。本実施形態では、閉塞領域22は、基板2の側面2cを含んでいる。つまり、基板2の側面2cは、閉塞領域22の外側面22cによって構成されている。
【0023】
閉塞領域22は、本体部221と、突出部222と、を含んでいる。本体部221は、閉塞領域22のうち、Z軸方向に垂直な方向(例えばX軸方向又はY軸方向)から見た場合に測定領域21と重なる部分(測定領域21と同じ領域で延在している部分)である。本体部221は、Z軸方向から見た場合に、測定領域21を囲んでいる。本体部221は、Z軸方向から見た場合に、矩形枠状を呈している。
【0024】
本体部221の厚さは、第2表面2bから第1表面2aに向かうに従って漸増する。本体部221の厚さは、Z軸方向から見た場合における本体部221の外縁と本体部221の内縁との間の距離(X軸方向又はY軸方向における距離)である。XY面に平行な第1断面における本体部221の厚さは、XY面に平行な第2断面における本体部221の厚さよりも大きい。第1断面は、第2断面に対して第1表面2a側に位置している。本体部221の平均厚さは、後述する粒子23の直径と略同じである。
【0025】
本体部221の外側面22dは、第2表面2bから第1表面2aに向かうに従って第2表面2bの外側に向かって傾斜している。つまり、外側面22dは、第2表面2bから第1表面2aに向かうに従って、XY面において第2表面2bから離間する方向に向かって傾斜している。外側面22dは、第2表面2bから第1表面2aに向かうに従って測定領域21から離れるように傾斜している。外側面22dは、基板2の側面2cのうちの傾斜領域である。上記第1断面における本体部221の外周長は、上記第2断面における本体部221の外周長よりも大きい。
【0026】
突出部222は、閉塞領域22のうち、Z軸方向に垂直な方向(例えばX軸方向又はY軸方向)から見た場合に測定領域21と重ならない部分である。突出部222は、本体部221に対してZ軸方向における一方側(第1表面2a側)に位置している。突出部222は、第1表面2aにおいて測定領域21よりも突出している。突出部222は、Z軸方向から見た場合に、測定領域21を囲んでいる。突出部222は、Z軸方向から見た場合に、矩形枠状を呈している。突出部222は、測定領域21の外周を包囲するように形成された壁状部材とも言える。本実施形態では、基板2のうち、突出部222の内側面に対して測定領域21とは反対側の領域が閉塞領域22である。
【0027】
基板2の側面2cと第2表面2bとの境界部223は、曲面状を呈している。境界部223は、側面2c及び第2表面2bの内側から外側へ向かって凸となるように湾曲している。つまり、側面2cと第2表面2bとは、滑らかに連結されている。
【0028】
図3に示されるように、基板2は、不規則に分布し且つ第1表面2aに開口する空隙(細孔)2dを含んでいる。つまり、基板2は、不規則な多孔質構造を有している。「不規則な多孔質構造」とは、例えば、空隙2dが不規則な方向に延びると共に3次元上において不規則に分布している構造である。例えば、第1表面2a側の1つの入口(開口)から基板2内に入って複数の経路に枝分かれするような構造、或いは、第1表面2a側の複数の入口(開口)から基板2内に入って1つの経路に合流するような構造等も、上記不規則な多孔質構造に含まれる。一方、例えばZ軸方向に沿って延びる複数の細孔が主要な細孔として設けられた構造(すなわち、主に一方向に延びる細孔によって構成された規則的な構造)は、不規則な多孔質構造には含まれない。
【0029】
図3に示されるように、基板2は、複数の粒子の集合体によって形成されている。複数の粒子の集合体とは、複数の粒子が互いに接触するように集められた構造である。複数の粒子の集合体の例として、複数の粒子同士が接合又は接着された構造が挙げられる。つまり、複数の粒子が互いに接触した状態で固定された構造を構成するために、複数の粒子は、融着等によって直接的に繋がっていてもよいし、他の部材を介して間接的に繋がっていてもよい。本実施形態では、複数の粒子同士が融着によって接合されている。本実施形態では、基板2は、互いに連結された複数の粒子23によって形成されている。粒子23は、例えば球状を呈している。各粒子23の形状又は直径には、若干のばらつきがあってもよい。各粒子23の直径は、互いに同じであってもよいし互いに異なっていてもよい。
【0030】
基板2の空隙2dは、各粒子23の間の隙間である。本実施形態では、空隙2dは、第1表面2aだけではなく、第2表面2bにも開口している。第1表面2aに対して導入された試料の成分は、空隙2dを通って第2表面2bから基板2の外側に抜けることが可能である。すなわち、本実施形態では、測定領域21においては、第1表面2aと第2表面2bとが粒子23間の空隙2dを介して互いに連通している。
【0031】
本実施形態では、粒子23の材料は、光吸収性を有している。粒子23は、例えば基板2の表面に対して照射されるレーザ光のエネルギーを吸収する。粒子23は、所定量のエネルギーを吸収すると溶融する。粒子23は、例えば絶縁性材料によって形成されている。粒子23の材料は、例えば、ガラス又はセラミック等である。本実施形態では、集合体構造を製造し易くする観点から、粒子23の材料として、ガラスの中でも比較的融点が低いソーダガラスが使用されている。粒子23は、例えばガラスビーズである。本実施形態では、基板2は、電気絶縁性を有している。
【0032】
図2及び図3に示されるように、導電層3は、基板2の表面に設けられている。導電層3は、基板2の第1表面2a及び側面2cのそれぞれの全領域を覆っている。具体的には、導電層3は、第1導電領域31と、第2導電領域32と、を含んでいる。第1導電領域31は、測定領域21に設けられている。第1導電領域31は、第1表面2aにおける空隙2dの開口が塞がれないように第1表面2aに設けられている。
【0033】
第1導電領域31は、複数の粒子23によって構成された第1表面2aの凹凸形状に沿って第1表面2aを覆っている。すなわち、第1導電領域31の厚さは、粒子23の大きさ(直径)に対して非常に薄くされている。これにより、粒子23の表面に成膜された導電層3の外面の形状は、元々の粒子23の表面形状に追従した形状となる。従って、図3に示されるように、第1導電領域31が成膜された後の状態においても、第1表面2aの凹凸形状が維持されている。
【0034】
第2導電領域32は、閉塞領域22に設けられている。第2導電領域32は、閉塞領域22の外側面22c(基板2の側面2c)に設けられている。第2導電領域32は、突出部222の内側面まで延在している。第2導電領域32は、第1導電領域31と繋がっている。第2導電領域32の厚さは、第1導電領域31の厚さよりも大きくてもよい。
【0035】
導電層3は、導電性材料によって形成されている。導電層3の材料としては、試料との親和性(反応性)が低く且つ導電性が高い金属が用いられることが好ましい。このような観点から、導電層3の材料としては、例えば、Au(金)、Pt(白金)等が用いられることが好ましい。導電層3は、例えば、メッキ法、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)、蒸着法、スパッタ法等によって、厚さ1nm~350nm程度に形成される。なお、導電層3の材料としては、例えば、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)等が用いられてもよい。
【0036】
閉塞領域22の空孔率は、測定領域21の空孔率よりも小さい。基板2の側面2cにおける空隙2dの開口率は、第1表面2aにおける空隙2dの開口率よりも小さい。単位体積当たりの閉塞領域22に含まれる空隙2dの体積は、単位体積当たりの測定領域21に含まれる空隙2dの体積よりも小さい。本実施形態では、閉塞領域22は、空隙2dをほとんど含んでいない。空気又は液体等の流体は、測定領域21に比べて閉塞領域22を通過しにくい。本実施形態では、測定領域21の空孔率は、例えば25%~40%程度であり、閉塞領域22の空孔率は、例えば10%以下程度である。
【0037】
基板2は、例えば複数の粒子23の集合体によって形成されたベース基板がレーザカットによって切断されることで製造される。閉塞領域22は、レーザ光の照射によって融着した粒子23によって形成されている。ベース基板のうち閉塞領域22になる予定の閉塞予定領域に含まれていた空隙2dには、レーザ光の照射によって溶融して変形した粒子23の一部が埋め込まれる。つまり、閉塞領域22における空隙2dは、基板2と同一の材料(融着した粒子23)によって塞がれている。このように、測定領域21は、レーザカット時におけるレーザ光の照射の影響を受けておらず、上記レーザ光の照射によって溶融された後に固化された粒子23を含まない領域である。これに対して、閉塞領域22は、上記レーザ光の照射によって溶融された後に固化された粒子23を含む領域である。
【0038】
測定領域21及び閉塞領域22のそれぞれの空孔率は、例えば以下のように取得される。まず、基板2の表面又は断面の画像を取得する。続いて、当該画像に対して例えば二値化処理を施すことで、対象領域(画像における所定の範囲)に含まれる空隙2dに対応する複数の画素群を抽出し、1画素当たりの大きさに基づいて、空隙2dの面積を取得する。続いて、空隙2dの面積を対象領域の面積で除算することで空孔率を取得する。
【0039】
図4は、基板2の第1表面2aのSEM画像の一例である。図4に示されるSEM画像において、黒色の部分は空隙2dであり、円形状の白色の部分は粒子23であり、Y軸方向に沿って連続的に延在する白色の部分は閉塞領域22である。図4に示される第1表面2aのSEM画像を観察すると、閉塞領域22の空孔率が測定領域21の空孔率よりも小さいことを認識できる。
【0040】
図5は、基板2の側面2cのSEM画像の一例である。図5に示されるSEM画像において、平面状の白色の部分は閉塞領域22である。図5に示されるSEM画像を観察すると、空隙2dが側面2cに開口していないことを認識できる。なお、図5に示されるSEM画像において、円形状の白色の部分及び当該円形状の白色の部分の間の黒色の部分を認識できるものの、当該白色の部分及び当該黒色の部分は、閉塞領域22よりも内側に存在する粒子23及び空隙2dである。
【0041】
図6は、基板2の断面のSEM画像の一例である。図6に示されるSEM画像において、白色の部分は測定領域21であり、灰色の部分は閉塞領域22である。図6に示されるSEM画像を観察すると、閉塞領域22の本体部221の厚さが第2表面2bから第1表面2aに向かうに従って漸増すること、閉塞領域22の突出部222が第1表面2aにおいて突出していること、及び、基板2の側面2cと第2表面2bとの境界部223が曲面状であることを認識できる。
【0042】
[試料支持体の製造方法]
試料支持体1は、例えば、以下のようにして製造される。まず、複数の粒子23の集合体によって形成されたベース基板が用意される。ベース基板は、一方の表面、及び一方の表面とは反対側の他方の表面を有している。続いて、ベース基板の他方の表面に対してレーザ光が照射される。他方の表面のうちレーザ光が照射される領域の粒子23は溶融する。これにより、ベース基板の他方の表面には、溶着した粒子23によって構成された溝が形成される。溝の幅は、他方の表面から一方の表面に向かうに従って漸減する。
【0043】
ベース基板の他方の表面に対してレーザ光が照射され続けると、溝が深くなる結果ベース基板が切断される。これにより、上述したような基板2が形成される。基板2の閉塞領域22は、レーザ光の照射によって形成される。基板2の側面2cと第2表面2bとの境界部223は、ベース基板の他方の表面に対してレーザ光が照射される初期に形成される。閉塞領域22の突出部222は、ベース基板が切断される際に、溶融した粒子23が空気圧の作用によってベース基板の一方の表面側に移動することで形成される。
【0044】
[質量分析方法]
試料支持体1を用いた質量分析方法について説明する。まず、試料支持体1を用意する(第1工程)。試料支持体1は、イオン化法及び質量分析方法の実施者によって製造されることにより用意されてもよいし、試料支持体1の製造者又は販売者等から譲渡されることにより用意されてもよい。続いて、基板2の測定領域21に試料を転写する(第2工程)。試料は、例えば果物(レモン)の切片である。例えば、試料を基板2の第1表面2aに押し付けることにより、試料の一部を、第1表面2a上に付着させる。続いて、質量分析装置のイオン化室内に、試料支持体1を載置する。続いて、基板2の第1表面2aのうち試料が存在する領域に対して、レーザ光を照射すると共に導電層3の第2導電領域32に電圧を印加する。これにより、第1表面2a上の試料の成分がイオン化する。続いて、イオン化した試料の成分(試料イオン)を検出する。
【0045】
[作用及び効果]
試料支持体1の基板2は、不規則に分布し且つ第1表面2aに開口する空隙2dを含んでいる。基板2の第1表面2aに対して試料が導入されると、試料が基板2の空隙2d内に適度に拡散するため、第1表面2a上に留まる試料の量が適切に調整される。そのため、エネルギー線(例えばレーザ光)が第1表面2aに対して照射されると、第1表面2a上に留まっている試料が好適にイオン化される。しかも、閉塞領域22の空孔率は、測定領域21の空孔率よりも小さい。これにより、たとえ基板2の側面2cを把持した作業者の手に異物が付着していたとしても、当該異物が閉塞領域22を通過し難くなるため、測定領域21への当該異物の侵入が抑制される。同様に、基板2の側面2cが測定装置(分析装置)の固定部材等に接触する場合においても、たとえ当該固定部材に異物が付着していたとしても、当該異物が閉塞領域22を通過し難くなるため、測定領域21への当該異物の侵入が抑制される。したがって、異物のイオン化に起因するノイズの発生が抑制される。よって、試料支持体1によれば、分析の高精度化が実現される。また、測定領域21の空隙2dに存在する試料が閉塞領域22を通過し難くなるため、基板2の側面2cに接触した作業者の手又は測定装置の固定部材等への試料の付着が抑制される。
【0046】
閉塞領域22は、Z軸方向から見た場合に測定領域21を囲んでいる。これにより、測定領域21への異物の侵入がより確実に抑制される。
【0047】
閉塞領域22における空隙2dは、基板2と同一の材料によって塞がれている。これにより、基板2の剛性を高めつつ閉塞領域22の空孔率を小さくすることができる。
【0048】
閉塞領域22は、第2表面2bから第1表面2aに向かうに従って厚さが漸増する本体部221を含んでいる。これにより、基板2のうち空隙2dが開口する第1表面2aに近い領域の剛性を高めることができる。そのため、試料が留まり且つエネルギー線が照射される表面として用いられる第1表面2aの平坦性が維持される結果、分析の高精度化が実現される。また、本体部221の厚さが第1表面2aに近づくほど大きくなるため、試料が留まり且つエネルギー線が照射される表面として用いられる第1表面2aへの異物の侵入がより効果的に抑制される。
【0049】
基板2の側面2cは、第2表面2bから第1表面2aに向かうに従って第2表面2bの外側に向かって傾斜する傾斜領域(本体部221の外側面22d)を含んでいる。これにより、第1表面2aが鉛直方向における上側を向いている状態で基板2の側面2cが把持される場合に、基板2への荷重を低減しつつ基板2を適切に把持することができる。また、Z軸方向から見た場合における測定領域21の面積を維持しつつ、上述したように、本体部221の厚さを第2表面2bから第1表面2aに向かうに従って漸増させることができる。
【0050】
閉塞領域22は、第1表面2aにおいて測定領域21よりも突出する突出部222を含んでいる。これにより、第1表面2a上に留まっている試料が第1表面2aから基板2の側面2cへ垂れることが抑制される。また、基板2の側面2cが作業者の手によって把持された場合、特に基板2の第1表面2aが作業者の手に対向する状態で基板2の側面2cが把持された場合、測定領域21が作業者の手に接触されることが抑制される。また、突出部222の厚さが本体部221の厚さ(特に本体部221のうち第2表面2bに近い領域の厚さ)よりも大きい場合、上述した効果がより一層顕著となる。
【0051】
基板2の側面2cと第2表面2bとの境界部223は、曲面状を呈している。これにより、作業者の手が基板2の側面2cと第2表面2bとの境界部223に接触したとしても、作業者の怪我が抑制される。
【0052】
試料支持体1は、基板2の表面に設けられた導電層3を備えている。導電層3は、第1表面2aにおける空隙2dの開口が塞がれないように測定領域21に設けられた第1導電領域31と、第1導電領域31と繋がるように閉塞領域22に設けられた第2導電領域32と、を含んでいる。閉塞領域22の空孔率が測定領域21の空孔率よりも小さいため、測定領域21に設けられた第1導電領域31に比べて閉塞領域22に設けられた第2導電領域32が連続性に優れている。そのため、第2導電領域32に電圧を印加することで、第2導電領域32を介して第1導電領域31に安定的に電圧を印加することができる。
【0053】
[変形例]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。また、上記実施形態に係る試料支持体1に含まれる一部の構成は、適宜省略又は変更されてもよい。例えば、上記実施形態では、試料支持体1に含まれるいくつかの特徴的な構成、及び各構成によって発揮されるいくつかの効果について説明したが、本発明に係る試料支持体は、必ずしも、上記実施形態で説明された全ての効果を発揮するように構成される必要はなく、上記実施形態で説明された一部の効果のみを発揮するように構成されてもよい。後者の場合には、試料支持体は、少なくとも当該一部の効果を発揮するために必須の構成を備えていればよく、当該一部の効果を発揮するために必須ではない構成は適宜省略又は変更されてもよい。なお、一の効果に着目した場合において、当該一の効果を発揮するために必須の構成は、当業者を基準として、技術常識及び本明細書の記載に基づいて、合理的に把握されるべきである。以下、本発明の試料支持体について、いくつかの具体的な変形例を例示する。
【0054】
実施形態において、閉塞領域22が測定領域21を囲んでいる例が示されたが、閉塞領域22は、測定領域21を囲んでいなくてもよい。閉塞領域22は、例えば、基板2のうち、測定領域21を挟んで互いに対向する一対の領域であってもよい。
【0055】
実施形態において、基板2がレーザカットによって製造される例が示されたが、基板2は、レーザカットによって製造されなくてもよい。基板2は、例えば刃物等によるベース基板の切断によって製造されてもよい。この場合、基板2の閉塞領域22は、例えば熱処理又は化学処理による上記切断面の溶融によって形成されてもよい。閉塞領域22における空隙2dは、融着した粒子23によって塞がれていなくてもよい。閉塞領域22の空孔率が測定領域21の空孔率よりも小さければ、つまり、基板2の側面2cにおける空隙2dの開口率が第1表面2aにおける空隙2dの開口率よりも小さければ、閉塞領域22における空隙2dは、例えば粒子23と同じ材料の微粒子又は粉末によって塞がれていてもよいし、粒子23と異なる材料(例えば樹脂等)によって塞がれていてもよい。また、閉塞領域22は、基板2の側面2cに固定され且つ測定領域21の空孔率よりも小さい空孔率を有する板材等であってもよい。
【0056】
実施形態において、閉塞領域22が空隙2dをほとんど含んでいない例が示されたが、閉塞領域22の空孔率が測定領域21の空孔率よりも小さければ、閉塞領域22は、空隙2dを含んでいてもよい。閉塞領域22の空隙2dは、測定領域21の空隙2dよりも狭くてもよい。
【0057】
実施形態において、基板2の側面2cが閉塞領域22の外側面22cによって構成されている例が示されたが、閉塞領域22は、例えば基板2の側面2cよりも内側において基板2の側面2cから離れていてもよい。閉塞領域22は、測定領域21と基板2の側面2cとの間に位置していてもよい。
【0058】
実施形態において、空隙2dが基板2の第2表面2bにも開口している例が示されたが、空隙2dは、例えば基板2の第2表面2bには開口していなくてもよい。空隙2dは、少なくても基板2の第1表面2aに開口していればよい。例えば、基板2は、第2表面2bを含む平板状のプレートと、当該プレートにおける第2表面2bとは反対側の面上に設けられた多孔質構造と、によって構成されてもよい。一例として、基板2は、ガラスプレートと、ガラスプレート上に設けられた多孔質構造と、によって構成されてもよい。
【0059】
実施形態において、導電層3が基板2の第1表面2a及び側面2cのそれぞれの全領域を覆っている例が示されたが、導電層3の第2導電領域32は、例えば閉塞領域22の外側面22cのうち一部の領域には設けられていなくてもよい。
【0060】
実施形態において、粒子23の材料がガラス又はセラミック等である例が示されたが、粒子23の材料は、例えばアルミニウム等の金属であってもよい。つまり、基板2は、導電性を有していてもよい。この場合、試料支持体1の少なくとも一部に導電性が求められるような場合においても、導電層3を省略することができる。
【0061】
基板2が電気絶縁性を有している場合、試料支持体1は、導電層3を備えていなくてもよい。この場合、試料支持体1に導電性が求められないような場合(電気絶縁性が求められるような場合)に、試料支持体1を用いることができる。例えば、基板2の第1表面2aに対して帯電した微小液滴を照射する脱離エレクトロスプレーイオン化法(DESI:Desorption Electrospray Ionization)等に試料支持体1を用いることができる。
【0062】
試料は、実施形態で例示した果物(レモン)の切片に限られない。試料は、平坦な表面を有するものであってもよいし、凹凸のある表面を有するものであってもよい。また、試料は、果物以外であってもよく、例えば植物の葉等であってもよい。この場合、試料である葉の表面の成分を第1表面2aに転写することにより、当該葉の表面(葉脈)のイメージング分析を行うことが可能となる。
【0063】
粒子23は、球状に限られず、球状以外の形状を有してもよい。
【0064】
実施形態において、試料支持体1が質量分析方法に用いられる例が示されたが、試料支持体1は、試料を対象とする様々な分析に用いられてもよい。試料支持体1は、試料のイオン化に用いられればよい。
【符号の説明】
【0065】
1…試料支持体、2…基板、2a…第1表面、2b…第2表面、2c…側面、2d…空隙、21…測定領域、22…閉塞領域、3…導電層、31…第1導電領域、32…第2導電領域、22d…外側面(傾斜領域)、221…本体部、222…突出部、223…境界部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-05-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料のイオン化用の試料支持体であって、
第1表面と、前記第1表面とは反対側の第2表面と、不規則に分布し且つ少なくとも前記第1表面に開口する空隙と、を含む多孔質基板を備え、
前記多孔質基板は、前記第1表面の一部を含む測定領域と、前記第1表面に垂直な方向から見た場合に前記測定領域の外側に位置する閉塞領域と、を含み、
前記閉塞領域の空孔率は、前記測定領域の空孔率よりも小さく、
前記閉塞領域における前記空隙は、前記多孔質基板と同一の材料によって塞がれている、試料支持体。
【請求項2】
試料のイオン化用の試料支持体であって、
第1表面と、前記第1表面とは反対側の第2表面と、不規則に分布し且つ少なくとも前記第1表面に開口する空隙と、を含む多孔質基板を備え、
前記多孔質基板は、前記第1表面の一部を含む測定領域と、前記第1表面に垂直な方向から見た場合に前記測定領域の外側に位置する閉塞領域と、を含み、
前記閉塞領域の空孔率は、前記測定領域の空孔率よりも小さく、
前記閉塞領域は、前記第1表面において前記測定領域よりも突出する突出部を含んでいる、試料支持体。
【請求項3】
試料のイオン化用の試料支持体であって、
第1表面と、前記第1表面とは反対側の第2表面と、不規則に分布し且つ少なくとも前記第1表面に開口する空隙と、を含む多孔質基板と、
前記多孔質基板の表面に設けられた導電層と、を備え、
前記多孔質基板は、前記第1表面の一部を含む測定領域と、前記第1表面に垂直な方向から見た場合に前記測定領域の外側に位置する閉塞領域と、を含み、
前記閉塞領域の空孔率は、前記測定領域の空孔率よりも小さく、
前記導電層は、前記第1表面における前記空隙の開口が塞がれないように前記測定領域に設けられた第1導電領域と、前記第1導電領域と繋がるように前記閉塞領域に設けられた第2導電領域と、を含んでいる、試料支持体。
【請求項4】
前記閉塞領域は、前記第1表面に垂直な方向から見た場合に前記測定領域を囲んでいる、請求項1~3のいずれか一項に記載の試料支持体。
【請求項5】
前記閉塞領域は、前記第2表面から前記第1表面に向かうに従って厚さが漸増する本体部を含んでいる、請求項1~3のいずれか一項に記載の試料支持体。
【請求項6】
前記多孔質基板の側面は、前記第2表面から前記第1表面に向かうに従って前記第2表面の外側に向かって傾斜する傾斜領域を含んでいる、請求項1~3のいずれか一項に記載の試料支持体。
【請求項7】
前記多孔質基板の側面と前記第2表面との境界部は、曲面状を呈している、請求項1~3のいずれか一項に記載の試料支持体。
【請求項8】
前記多孔質基板は、導電性を有している、請求項1~3のいずれか一項に記載の試料支持体。
【請求項9】
前記多孔質基板は、絶縁性を有している、請求項1~3のいずれか一項に記載の試料支持体。