(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017580
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】誘電加熱装置、および、液体吐出システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 401
B41J2/01 305
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120309
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 直
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC13
2C056EC14
2C056EC35
2C056EC38
2C056FA10
2C056HA37
2C056HA41
(57)【要約】
【課題】キャリッジを備える誘電加熱装置において、キャリッジの往復移動の方向における加熱量のバラつきを抑制する。
【解決手段】誘電加熱装置において、第1電極ユニットの第1電極と第2電極とに交流電圧を印加する電圧印加部と、第1電極ユニットを搭載するキャリッジを往復移動させる移動部とを制御する加熱制御部は、第1電極ユニットを走査方向に移動させながらメディアを加熱する加熱制御を、第1電極ユニットが走査方向の一方向に向かう往路と逆方向に向かう復路との少なくとも一方において実行する。加熱制御部は、加熱制御において、第1電極ユニットの電界強度を、第1電極ユニットがメディアの一端部と重なる第1地点に位置する場合に第1電界強度とし、メディアの中央部と重なる第2地点に位置する場合に第1電界強度より強い第2電界強度とし、第1地点における第1電極ユニットの移動速度を第2地点における移動速度より遅くする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアと対向する第1電極および第2電極を有し、前記メディアを誘電加熱方式によって加熱する第1電極ユニットと、
前記第1電極および前記第2電極に交流電圧を印加する電圧印加部と、
前記第1電極ユニットを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを走査方向に沿って往復移動させることによって、前記第1電極ユニットを少なくとも前記メディア上で前記走査方向に沿って往復移動させる移動部と、
前記電圧印加部および前記移動部を制御する加熱制御部と、を備え、
前記加熱制御部は、前記第1電極ユニットを前記走査方向に沿って移動させながら前記メディアを加熱する加熱制御を、前記第1電極ユニットが前記走査方向の一方向に向かう往路と、前記第1電極ユニットが前記一方向と逆方向に向かう復路と、の少なくともいずれかにおいて実行し、
前記加熱制御部は、前記加熱制御において、
前記第1電極ユニットが、前記メディアの前記走査方向における一端部と重なる第1地点に位置する場合に、前記第1電極ユニットが形成する電界強度を第1電界強度とし、
前記第1電極ユニットが、前記メディアの前記走査方向における中央部と重なる第2地点に位置する場合に、前記第1電極ユニットが形成する電界強度を前記第1電界強度に比べて強い第2電界強度とし、
前記第1地点における前記第1電極ユニットの移動速度を、前記第2地点における前記第1電極ユニットの移動速度に比べて遅くする、誘電加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の誘電加熱装置であって、
前記第2電極は、前記メディアと前記第1電極および前記第2電極とが対向する対向方向に沿って見たときに、前記第1電極を囲うように配置され、
前記第1電極ユニットは、前記第1電極または前記第2電極に電気的に直列に接続されたコイルを有する、誘電加熱装置。
【請求項3】
請求項1に記載の誘電加熱装置であって、
前記メディアと対向する第3電極および第4電極を有し、前記メディアを誘電加熱方式によって加熱する第2電極ユニットを備え、
前記電圧印加部は、前記第3電極および前記第4電極に交流電圧を印加し、
前記キャリッジは、前記第2電極ユニットを搭載し、
前記移動部は、前記キャリッジを往復移動させることによって、前記第2電極ユニットを前記第1電極ユニットとともに少なくとも前記メディア上で往復移動させ、
前記第1電極ユニットと、前記第2電極ユニットとは、前記走査方向に並んで配置され
る、誘電加熱装置。
【請求項4】
請求項3に記載の誘電加熱装置であって、
前記第1地点は、前記第2電極ユニットの前記走査方向における移動範囲の外側に位置し、
前記第2電極ユニットは、前記第1電極ユニットが前記第1地点に位置する場合に、前記メディア上に位置し、
前記加熱制御部は、前記加熱制御において、前記第1電極ユニットが前記第1地点に位置する場合に、前記第2電極ユニットが形成する電界強度を第3電界強度とし、
前記第1電界強度は、前記第3電界強度に比べて強い、誘電加熱装置。
【請求項5】
請求項1に記載の誘電加熱装置であって、
前記メディアを、前記走査方向と交差する搬送方向に搬送する搬送部を備え、
前記加熱制御部は、
前記搬送部を制御し、
前記搬送部によって前記メディアを予め定められた搬送距離、搬送する搬送操作と、前記メディアを搬送せずに静止させる静止操作と、を交互に実行し、
前記静止操作を実行している間に、前記加熱制御を実行し、
1回の前記静止操作が実行されている間に前記第1電極ユニットによって加熱される前記メディア上の領域の前記搬送方向における長さは、前記搬送距離の整数倍である、誘電加熱装置。
【請求項6】
請求項5に記載の誘電加熱装置であって、
前記加熱制御部は、1回の前記静止操作を実行している間に、前記第1電極ユニットを前記走査方向に沿って往復移動させ、前記往路と前記復路とにおいて前記加熱制御を実行する、誘電加熱装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の誘電加熱装置と、
ノズル開口が形成された吐出面を有し、前記ノズル開口から前記メディアに液体を吐出して塗布する液体吐出部と、
前記液体吐出部を制御する吐出制御部と、を備える、液体吐出システム。
【請求項8】
請求項7に記載の液体吐出システムであって、
前記キャリッジは、前記液体吐出部を搭載し、
前記移動部は、前記キャリッジを往復移動させることによって、前記液体吐出部を前記第1電極ユニットとともに少なくとも前記メディア上で往復移動させ、
前記走査方向において前記メディアよりも外側に配置され、前記吐出面の少なくとも一部を覆うことによって、前記吐出面との間に前記ノズル開口が開口する閉空間を形成可能に構成されたキャップを更に備え、
前記第1電極ユニットと、前記液体吐出部とは、前記走査方向に並んで配置され、
前記キャップは、前記メディアと前記第1電極および前記第2電極とが対向する対向方向に沿って見たときに、前記キャップの少なくとも一部が前記第1電極と前記第2電極との間に位置することが可能に配置され、
前記加熱制御部は、前記加熱制御において、前記対向方向に沿って見たときに前記キャップの少なくとも一部が前記第1電極と前記第2電極との間に位置する場合に、前記第1電極ユニットが形成する電界強度を、前記第2電界強度に比べて弱くする、液体吐出システム。
【請求項9】
請求項7に記載の液体吐出システムであって、
前記キャリッジは、前記液体吐出部を搭載し、
前記移動部は、前記キャリッジを往復移動させることによって、前記液体吐出部を前記第1電極ユニットとともに少なくとも前記メディア上で往復移動させ、
前記走査方向において前記メディアよりも外側に配置され、前記液体吐出部のメンテナンス動作において前記液体吐出部から排出される前記液体を受ける排液受部を更に備え、
前記第1電極ユニットと、前記液体吐出部とは、前記走査方向に並んで配置され、
前記排液受部は、前記メディアと前記第1電極および前記第2電極とが対向する対向方向に沿って見たときに、前記排液受部の少なくとも一部が前記第1電極と前記第2電極との間に位置することが可能に配置され、
前記加熱制御部は、前記加熱制御において、前記対向方向に沿って見たときに前記排液受部が前記第1電極と前記第2電極との間に位置する場合に、前記第1電極ユニットが形成する電界強度を、前記第2電界強度に比べて弱くする、液体吐出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、誘電加熱装置、および、液体吐出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
誘電加熱装置に関して、特許文献1には、複数のマイクロ波照射装置を有する乾燥手段が記載されている。この乾燥手段は、インクジェットプリンター本体に固定されており、被プリント材の印字エリアの主走査方向における全幅を加熱乾燥可能な長さを有している。乾燥手段において、複数のマイクロ波照射装置は、主走査方向に並んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、加熱対象である被プリント材の幅が大きいほど、その幅に応じてマイクロ波照射装置を大型化させることや、マイクロ波照射装置の数を増やすこと等を要する。そのため、幅方向に沿って往復移動可能に構成されたキャリッジに誘電加熱装置を搭載することで、こうした大型化等を抑制することが検討されている。しかしながら、この場合、例えば、キャリッジの移動速度の変化や方向転換によって、キャリッジの移動方向において加熱量のバラつきが生じることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、誘電加熱装置が提供される。この誘電加熱装置は、メディアと対向する第1電極および第2電極を有し、前記メディアを誘電加熱方式によって加熱する第1電極ユニットと、前記第1電極および前記第2電極に交流電圧を印加する電圧印加部と、前記第1電極ユニットを搭載するキャリッジと、前記キャリッジを走査方向に沿って往復移動させることによって、前記第1電極ユニットを少なくとも前記メディア上で前記走査方向に沿って往復移動させる移動部と、前記電圧印加部および前記移動部を制御する加熱制御部と、を備える。前記加熱制御部は、前記第1電極ユニットを前記走査方向に沿って移動させながら前記メディアを加熱する加熱制御を、前記第1電極ユニットが前記走査方向の一方向に向かう往路と、前記第1電極ユニットが前記一方向と逆方向に向かう復路と、の少なくともいずれかにおいて実行する。前記加熱制御部は、前記加熱制御において、前記第1電極ユニットが、前記メディアの前記走査方向における一端部と重なる第1地点に位置する場合に、前記第1電極ユニットが形成する電界強度を第1電界強度とし、前記第1電極ユニットが、前記メディアの前記走査方向における中央部と重なる第2地点に位置する場合に、前記第1電極ユニットが形成する電界強度を前記第1電界強度に比べて強い第2電界強度とし、前記第1地点における前記第1電極ユニットの移動速度を、前記第2地点における前記第1電極ユニットの移動速度に比べて遅くする。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、液体吐出システムが提供される。この液体吐出システムは、上記形態の誘電加熱装置と、ノズル開口が形成された吐出面を有し、前記ノズル開口から前記メディアに液体を吐出して塗布する液体吐出部と、前記液体吐出部を制御する吐出制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態としての液体吐出システムの概略構成を示す模式図。
【
図2】第1実施形態における誘電加熱装置の概略構成を示す上面図。
【
図4】第1実施形態におけるキャリッジの移動を示す説明図。
【
図6】第1実施形態におけるキャリッジ位置と電界強度との関係を示す説明図。
【
図7】第1実施形態におけるキャリッジ位置と移動速度との関係を示す説明図。
【
図8】第2実施形態におけるキャリッジの移動を示す説明図。
【
図9】第3実施形態における液体吐出システムの概略構成を示す上面図。
【
図11】第1電極ユニットとキャップとの位置関係を示す説明図。
【
図12】第3実施形態におけるキャリッジ位置と電界強度との関係を示す説明図。
【
図13】参考例におけるキャリッジ位置と移動速度との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態としての液体吐出システム200の概略構成を示す模式図である。
図1には、互いに直交するX,Y,Z方向を示す矢印が示されている。X方向およびY方向は、水平面に平行な方向であり、Z方向は、鉛直上向きに沿った方向である。X,Y,Z方向を示す矢印は、他の図においても、図示の方向が
図1と対応するように適宜、図示してある。以下の説明において、方向の向きを特定する場合には、各図において矢印が指し示す方向を「+」、その反対の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。以下では、+Z方向のことを「上」、-Z方向のことを「下」ともいう。また、本明細書中で、直交とは、90°±10°の範囲を含む。
【0009】
液体吐出システム200は、電極ユニット20を有する誘電加熱装置100と、液体吐出装置205とを備えている。また、本実施形態における液体吐出システム200は、搬送部320を更に備えている。液体吐出システム200は、搬送部320によってメディアMdを搬送しつつ、液体吐出装置205によってメディアMdに液体を吐出して塗布し、誘電加熱装置100の電極ユニット20によって、メディアMdに塗布された液体を加熱して乾燥させる。液体吐出装置205は、電極ユニット20によって加熱される液体をメディアMd上に塗布するとも言える。電極ユニット20のことをヒーターとも呼ぶ。
【0010】
メディアMdとしては、例えば、紙や布、フィルム等が用いられる。メディアMdとして用いられる布は、例えば、綿や、麻、ポリエステル、絹、レーヨン等の繊維、または、これらが混紡された繊維を織って形成される。本実施形態では、メディアMdとして、シート状の綿布が用いられる。メディアMdに塗布される液体としては、例えば、各種インクが用いられる。本実施形態では、液体として、水を主成分とする水性インクが用いられる。本明細書において、液体の主成分とは、液体に含まれる物質のうち、その質量分率が50%以上である物質のことを指す。他の実施形態では、液体として、インクの他に、例えば、種々の色材、電極材、生体有機物や無機物等の試料、潤滑油、樹脂液、エッチング液など、任意の液体が用いられてもよい。
【0011】
搬送部320は、メディアMdを搬送する。本実施形態では、搬送部320は、ローラー323を駆動させることによってメディアMdを搬送するローラー機構として構成されている。搬送部320は、液体吐出装置205に設けられ、液体吐出装置205においてメディアMdを搬送する第1搬送部321と、誘電加熱装置100に設けられ、誘電加熱装置100においてメディアMdを搬送する第2搬送部322とを有している。第1搬送部321および第2搬送部322は、それぞれ、ローラー323と、ローラー323を駆動させるためのモーター等によって構成された図示しない駆動部とを有している。他の実施形態では、搬送部320は、例えば、ベルトを駆動させることによってメディアMdを搬送するベルト機構として構成されていてもよい。
【0012】
第1搬送部321は、第2搬送部322の+Y方向の位置に配置されている。本実施形態では、第1搬送部321および第2搬送部322は、シート状のメディアMdを-Y方向に間欠的に搬送する間欠搬送を実行する。より詳細には、第1搬送部321および第2搬送部322は、ローラー323を動作させてメディアMdを-Y方向に予め定められた搬送距離、搬送する搬送操作と、ローラー323を動作させずに、つまり、メディアMdを搬送せずに静止させる静止操作とを交互に繰り返す。メディアMdが搬送部320によって搬送される方向のことを搬送方向とも呼ぶ。搬送方向は、後述する走査方向と交差する方向であり、本実施形態では、-Y方向である。
【0013】
本実施形態では、液体吐出装置205は、メディアMdに液体としてのインクを吐出して塗布することにより印刷を行うインクジェットプリンターとして構成されている。そのため、液体吐出システム200は、インクジェットプリンターを備える印刷システムとして構成されているとも言える。液体吐出装置205は、メディアMdに液体を吐出して塗布する液体吐出部210と、吐出制御部250と、上述した第1搬送部321とを有している。
【0014】
液体吐出部210は、例えば、ピエゾ方式やサーマル方式の液体吐出ヘッドとして構成され、1又は複数の図示しないヘッドチップを有する。各ヘッドチップは、液体を吐出するノズルの開口部であるノズル開口211が形成されたノズル面212を有している。各ノズル面212は、液体吐出部210の吐出面213を構成する。つまり、液体吐出部210は、ノズル開口211が形成された吐出面213を有しているとも言える。液体吐出部210は、ノズル開口211からメディアMdに液体としてのインクを吐出して塗布する。液体吐出部210の各ヘッドチップから吐出されるインクの色は、それぞれ同じであってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。また、液体吐出部210は、例えば、メディアMdに対して、Z方向と直交し、かつ、Y方向と交差する方向に往復移動可能に構成されていてもよいし、メディアMdに対して往復移動することなく位置が固定された、いわゆるラインヘッドとして構成されていてもよい。
【0015】
本実施形態において液体として用いられるインクは、樹脂を含有する顔料インクである。インクに含まれる樹脂は、自身を介して、メディアMd上に顔料を強固に定着させる作用を有する。このような樹脂は、例えば、水等の溶媒に難溶あるいは不溶である樹脂を、微粒子状にして溶媒に分散させた状態で、すなわち、エマルジョン状態あるいはサスペンジョン状態で用いられる。このような樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、フルオレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル- 酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル樹脂等を用いることができる。これらの樹脂を2種以上併用してもよい。このような樹脂のことをレジンとも呼ぶ。
【0016】
吐出制御部250は、1つまたは複数のプロセッサーと、記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成されている。本実施形態における吐出制御部250は、液体吐出部210および第1搬送部321を制御することによって、メディアMdを-Y方向に搬送しつつ、メディアMdに液体を吐出して付着させる。より詳細には、吐出制御部250は、上述した第1搬送部321による静止操作中にメディアMdに液体を吐出することと、第1搬送部321による搬送操作によってメディアMdを-Y方向に移動させることとを繰り返しながら、メディアMdに対する印刷を行う。他の実施形態では、吐出制御部250は、例えば、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0017】
図2は、第1実施形態における誘電加熱装置100の概略構成を示す上面図である。
図1および
図2に示すように、誘電加熱装置100は、メディアMdを誘電加熱方式によって加熱する電極ユニット20と、電極ユニット20に交流電圧を印加する電圧印加部80と、電極ユニット20を搭載するキャリッジ120と、キャリッジ120を往復移動させる移動部130と、加熱制御部180と、上述した第2搬送部322とを備える。また、本実施形態における誘電加熱装置100には、気流を発生させるための気流発生部140が設けられている。本実施形態における気流発生部140は、メディアMdに向かって送風する送風機として構成されている。気流発生部140によって、例えば、メディアMdの乾燥を促進させることや、適宜、メディアMdの冷却を促進させることができる。なお、
図1では、キャリッジ120と移動部130と気流発生部140とは、省略されている。
【0018】
本実施形態における誘電加熱装置100は、第2搬送部322によってメディアMdを搬送し、かつ、移動部130によってキャリッジ120を往復移動させることによって電極ユニット20をメディアMd上で往復移動させつつ、電極ユニット20から生じる交流電界によってメディアMdを加熱することで、メディアMdを加熱して乾燥させる。「メディアMdを交流電界によって加熱する」と言う場合、メディアMd自体を交流電界によって加熱することのみならず、メディアMd上に付着した液体や固体等の付着物を交流電界によって加熱することをも含む。
【0019】
電圧印加部80は、後述する第1電極ユニット30の第1電極31および第2電極32に電気的に接続されている。また、本実施形態では、電圧印加部80は、更に、後述する第2電極ユニット40の第3電極41および第4電極42にも電気的に接続されている。以下では、第1電極ユニット30と第2電極ユニット40とのことを、それぞれ区別せず単に電極ユニット20とも呼ぶ。本実施形態では、各電極ユニット20同士は、それぞれ、電気的に並列に接続されている。
【0020】
電圧印加部80は、各電極ユニット20の各電極に予め定められた駆動周波数f0の交流電圧を印加する。本実施形態では、電圧印加部80は、高周波電圧発生回路を含む高周波電源として構成され、それぞれ図示しない水晶発振器、PLL(Phase Locked Loop)回路およびパワーアンプを有する。他の実施形態では、電圧印加部80は、例えば、トランジスター等のスイッチング素子を有するスイッチング回路を備えるインバーターとして構成されていてもよい。第1電極31と第2電極32とに印加される電位の一方は、基準電位であってもよい。同様に、第2電極ユニット40の第3電極41および第4電極42に印加される電位の一方は、基準電位であってもよい。
【0021】
本実施形態では、各電極ユニット20の各電極には、高周波電圧が印加される。本明細書において、「高周波」とは、1MHz以上の周波数のことを指す。より詳細には、本実施形態では、駆動周波数f0として、産業科学医療用(ISM:Industrial Scientific and Medical Band)バンドの1つである13.56MHzが用いられる。なお、水の誘電正接は20GHz付近で最大となるので、ISMバンドのうち2.45GHzや5.8GHzの高周波電圧を電極ユニット20の各電極に印加することで、より効率良くメディアMdに付着した液体を加熱できる。一方で、インクを加熱するという観点では、駆動周波数f0が、例えば、13.56MHzや40.68MHzのように比較的低い場合であっても、良好な加熱効率を得ることができる。この理由は、駆動周波数f0が13.56MHzや40.68MHzである場合、インク中の水の誘電正接は低い一方で、インク中の色素成分等を電気抵抗として生じるジュール熱が生じやすくなるためである。
【0022】
加熱制御部180は、上述した吐出制御部250と同様に、コンピューターによって構成されている。加熱制御部180は、電圧印加部80と移動部130と第2搬送部322とを制御する。
【0023】
本実施形態では、加熱制御部180は、電圧印加部80を制御することによって、第1電極ユニット30に印加される電圧と、第2電極ユニット40に印加される電圧とを、それぞれ個別に調整する。加熱制御部180は、例えば、第1電極ユニット30および第2電極ユニット40にそれぞれ電気的に直列に接続された図示しない可変抵抗の抵抗値をそれぞれ個別に調整することによって、各電極ユニット20に印加される電圧をそれぞれ個別に調整できる。これにより、加熱制御部180は、各電極ユニット20が形成する電界強度を、それぞれ個別に調整できる。例えば、加熱制御部180は、第1電極ユニット30が形成する電界強度をより強くする場合には、第1電極ユニット30に印加される電圧をより大きくし、第2電極ユニット40が形成する電界強度をより強くする場合には、第2電極ユニット40に印加される電圧をより大きくする。
【0024】
上述したように、本実施形態における誘電加熱装置100は、電極ユニット20として、第1電極ユニット30と第2電極ユニット40とを有している。第1電極ユニット30と第2電極ユニット40とは、ともにキャリッジ120に搭載されている。より詳細には、本実施形態では、第1電極ユニット30および第2電極ユニット40が固定された基板110がキャリッジ120に支持されることによって、第1電極ユニット30および第2電極ユニット40がキャリッジ120に搭載されている。第2電極ユニット40は、第1電極ユニット30の+X方向側に配置されている。
【0025】
移動部130は、キャリッジ120を走査方向に沿って往復移動させることによって、第1電極ユニット30および第2電極ユニット40を少なくともメディアMd上で往復移動させる。走査方向は、同じ軸に沿う一方側の方向とその反対方向とを両方含み、本実施形態では、X方向である。走査方向の一方側の方向を正方向とも呼び、その反対方向を負方向とも呼ぶ。本実施形態では、走査方向の正方向は、+X方向であり、走査方向の負方向は、-X方向である。本実施形態における移動部130は、キャリッジ120が固定された無端ベルト131とプーリー132とモーター等によって構成される駆動部133とを有するベルト機構として構成されている。他の実施形態では、移動部130は、例えば、ボールネジ機構によって構成されてもよい。以下では、キャリッジ120や電極ユニット20が走査方向に沿って移動することを、キャリッジ120や電極ユニット20の走査とも呼ぶ。
【0026】
図3は、本実施形態における電極ユニット20の概略構成を示す斜視図である。より詳細には、
図3には、第1電極ユニット30が示されている。第1電極ユニット30は、第1電極31と第2電極32と第1コイル34とを有している。第2電極ユニット40は、第3電極41と第4電極42と第2コイル44とを有している。本実施形態では、第1電極ユニット30と第2電極ユニット40とは、それぞれ同様に構成されている。より詳細には、第1電極31と第3電極41とは、それぞれ同様の構成である。また、第2電極32と第4電極42とは、それぞれ同様の構成である。また、第1コイル34と第2コイル44とは、それぞれ同様の構成である。以下では、第1コイル34と第2コイル44とを、それぞれ区別せずに単にコイルとも呼ぶ。
【0027】
第1電極31および第2電極32は、導電体であり、例えば、金属、合金、導電性酸化物等によって形成される。第1電極31及び第2電極32は、互いに同じ材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。第1電極31および第2電極32は、例えば、その姿勢や強度の保持を目的として、誘電正接や導電性の低い材料によって形成された基板等の上に配置されてもよいし、他の部材によって支持されてもよい。
【0028】
第1電極31および第2電極32は、Z方向においてメディアMdと対向している。より詳細には、
図1に示すように、本実施形態では、第1電極31および第2電極32は、メディアMdの上方に配置されている。そのため、本実施形態では、第1電極31および第2電極32の下面が、メディアMdの上面に対向する。メディアMdと第1電極31および第2電極32との間には、基板110が配置されている。メディアMdと第1電極31および第2電極32とが対向する方向のことを、対向方向とも呼ぶ。
【0029】
第1電極31および第2電極32は、第1電極31と第2電極32との間の最短距離が、第1電極ユニット30から出力される電磁界の波長の10分の1以下となるように配置されている。本実施形態における第1電極31は、Y方向に沿った長手方向およびX方向に沿った短手方向を有する舟形形状を有している。第1電極31の下面は、-Z方向側に凸の曲面形状を有している。第1電極31は、Z方向に沿って見たときに、Y方向を長手方向とする長円形状を有する。
【0030】
第2電極32は、X方向およびY方向に扁平な、Y方向を長手方向とする長円形状の環状を有している。第2電極32は、Z方向に沿って見たときに、第1電極31の周囲を囲うように配置されている。「第2電極32がZ方向に沿って見たときに第1電極31を囲うように配置されている」と言う場合、Z方向に沿って見たときに、第2電極32が全体として第1電極31の周囲の半分以上を囲うように配置されていればよく、第2電極32が第1電極31の周囲全部を隙間無く囲うことを要しない。従って、他の実施形態において、第2電極32が、例えば、Z方向に沿って見たときに、いわゆるC字型やU字型の形状を有していてもよい。また、第2電極32が、例えば、Z方向に沿って見たときに、断続的に途切れながら全体として第1電極31を囲うような形状を有していてもよい。この場合、第2電極32は、第1電極31および第2電極32に交流電圧が印加された際に第2電極32の各部分に同じ電位が付与されるように構成される。
【0031】
図1および
図2に示すように、第1電極31および第2電極32は、ともに、X方向およびY方向に平行に配置された基板110上に固定されている。より詳細には、第1電極31は、第1電極31の下面のX方向およびY方向における中央部が基板110の上面に接触するように配置されている。第2電極32は、第2電極32の下面が基板110の上面に接触するように配置されている。そのため、本実施形態では、第1電極31の下面の中央部と、第2電極32の下面とは、同一平面上に配置されている。なお、本実施形態では、基板110は、第1電極ユニット30と第2電極ユニット40とに共通に設けられている。
【0032】
本実施形態では、基板110は、ガラスによって形成されている。基板110によって、メディアMdに塗布されたインク等の液体が第1電極31および第2電極32に付着することや、メディアMdが布である場合にメディアMdの毛羽が第1電極31および第2電極32に付着することが抑制される。本実施形態では、基板110は、上記と同様に、第2電極ユニット40の第3電極41および第4電極42への液体や毛羽の付着をも抑制する。他の実施形態では、基板110は、例えば、アルミナによって形成されてもよい。
【0033】
図3に説明を戻す。本実施形態では、第1電極31は、電線35と、第1コイル34と、同軸ケーブルの内部導体IC1とを介して電圧印加部80に電気的に接続されている。第2電極32は、第2電極32の上部に配置された接続部材33や、図示していない同軸ケーブルの外部導体等を介して電圧印加部80に電気的に接続されている。
【0034】
第1電極31および第2電極32に駆動周波数f0の交流電圧が印加されることによって、第1電極31および第2電極32から、駆動周波数f0に応じた波長を有する電磁界が生じる。この電磁界の強度は、第1電極31および第2電極32の近傍で非常に強く、遠方では非常に弱くなる。本明細書では、交流電圧の印加によって第1電極31および第2電極32の近傍に生じる電磁界を「近傍電磁界」とも呼ぶ。第1電極31および第2電極32の「近傍」とは、第1電極31および第2電極32からの距離が、発生する電磁界の波長の1/2π以下となる範囲のことを指す。「近傍」より遠い範囲のことを、「遠方」とも呼ぶ。また、本明細書では、交流電圧の印加によって、第1電極31および第2電極32の遠方に生じる電磁界のことを「遠方電磁界」とも呼ぶ。遠方電磁界は、一般的な通信用アンテナ等による通信に用いられる電磁界に相当する。
【0035】
上述したように、第1電極31と第2電極32とは、両者の間の最短距離が電磁界の波長の10分の1以下となるように配置されている。これによって、第1電極31および第2電極32から生じる電磁界の密度を、第1電極31および第2電極32の近傍において減衰させることができる。そのため、メディアMdと、第1電極31および第2電極32との間の距離を適切に保つことで、メディアMdに付着した液体を、第1電極31および第2電極32の近傍で生じる電界によって効率的に加熱しつつ、第1電極31および第2電極32からの遠方電磁界の輻射を抑制できる。特に、本実施形態では、第2電極32が、Z方向に沿って見たときに第1電極31を取り囲むように配置されているため、第1電極31および第2電極32からの遠方電磁界の輻射をより抑制できる。
【0036】
本実施形態では、第1コイル34の一端は、電線35を介して第1電極31と電気的に直列に接続され、他端は、
図1および
図2に示した電圧印加部80と電気的に直列に接続されている。本実施形態では、第1コイル34は、ソレノイドコイルによって構成され、その長さ方向がZ方向に沿うように配置されている。第1コイル34の形状、長さ、断面積、巻き数、材質等は、例えば、駆動周波数f
0に応じて、また、第1電極ユニット30と電圧印加部80とのインピーダンス整合を実現するように選択される。他の実施形態では、第1コイル34の一端は、第1電極31ではなく第2電極32と直列に接続されていてもよい。
【0037】
電圧印加部80が第1電極ユニット30に交流電圧を印加することによって、第1コイル34の一端には高電圧が発生する。これによって、第1電極31および第2電極32から生じる電界の強度を高めることができる。なお、第1コイル34は、第1コイル34の一端と第1電極31との間の距離ができるだけ小さくなるように配置されると好ましい。第1コイル34の一端と第1電極31との間の距離が遠い場合、第1コイル34の一端に生じる高電圧が、第1コイル34と第1電極31との間、もしくは、電線35と第2電極32との間に、メディアMdの加熱に寄与しない電界を発生させ、第1電極31および第2電極32から生じる電界の強度を高める効果が低下する可能性がある。これに対して、第1コイル34の一端と第1電極31との間の距離を近くすることで、このようなメディアMdの加熱に寄与しない電界の発生を抑制できるため、第1電極31および第2電極32から生じる電界の強度を効果的に高めることができる。なお、他の実施形態では、第1電極ユニット30が第1コイル34を有していなくてもよく、例えば、第1電極31をメアンダ形状に形成することによって、第1電極31にコイルと同様の機能を発揮させてもよい。
【0038】
上述した加熱制御部180は、加熱制御を、第1電極ユニット30の往路と復路との少なくともいずれか一方において実行する。加熱制御とは、第1電極ユニット30を走査方向であるX方向に沿って移動させながらメディアMdを加熱する制御のことを指す。往路とは、第1電極ユニット30が走査方向の一方向に向かう経路のことを指す。第2経路とは、第1電極ユニット30が走査方向の一方向と逆方向に向かう経路のことを指す。本実施形態では、加熱制御部180は、第1経路と第2経路との両方において、加熱制御を実行する。以下では、往路において実行される加熱制御のことを第1制御とも呼び、復路において実行される加熱制御のことを第2制御とも呼ぶ。
【0039】
図4は、本実施形態におけるキャリッジ120の移動を示す説明図である。
図4には、第1移動経路Pt1と第2移動経路Pt2とが模式的に示されている。第1移動経路Pt1は、キャリッジ120のX方向に沿った往復移動における経路を表す。第2移動経路Pt2は、キャリッジ120のメディアMdに対する、Y方向に沿った相対的な移動の経路を表す。
図4では、第2移動経路Pt2は、キャリッジ120の+Y方向側への移動の経路として表されているが、実際には、上述したように、第2搬送部322によって、メディアMdがキャリッジ120に対して-Y方向側に移動する。また、
図4では、第1移動経路Pt1と第2移動経路Pt2は、キャリッジ120に搭載された第1電極ユニット30のX方向およびY方向における中央位置Pcの移動の経路として表されている。より詳細には、中央位置Pcは、第1電極31のX方向およびY方向における中央位置に相当する。本明細書では、中央位置Pcのことを、「キャリッジ120の位置」や「キャリッジ位置」とも呼ぶ。
【0040】
図4に示すように、本実施形態における加熱制御部180は、第2搬送部322を制御することによって、上述した搬送操作と静止操作とを交互に実行する。そして、加熱制御部180は、1回の静止操作を実行している間、第1制御と第2制御とのうち少なくともいずれか一方を実行する。より詳細には、本実施形態では、加熱制御部180は、1回の静止操作において第1制御と第2制御とのいずれか一方のみを実行し、かつ、第1制御と第2制御とを交互に実行する。そのため、本実施形態では、第2移動経路Pt2は、第1移動経路Pt1の往路Pt1oの終端と第1移動経路Pt1の復路Pt1rの始端とを接続する経路、および、復路Pt1rの終端と往路Pt1oの始端とを接続する経路を有している。本実施形態では、往路Pt1oは、第1移動経路Pt1の-X方向側の端Ed1から+X方向側の端Ed2へと向かう経路である。復路Pt1rは、端Ed2から端Ed1へと向かう経路である。各第2移動経路Pt2の長さは、搬送距離dcに等しい。
【0041】
図4には、第1電極ユニット30のX方向に沿った移動経路上、つまり、第1移動経路Pt1上の第1地点P1と、第2地点P2と、第3地点P3とが示されている。また、
図4には、図示しない第2電極ユニット40のX方向に沿った移動経路上の第4地点P4が示されている。第1地点P1は、Z方向に沿って見たときに、メディアMdのX方向における一端部ME1と重なる地点である。つまり、第1電極ユニット30が第1地点P1に位置している場合、第1電極ユニット30の中央位置Pcは、一端部ME1と重なるとも言える。第2地点P2は、Z方向に沿って見たときに、メディアMdのX方向における中央部MCと重なる地点である。第3地点P3および第4地点P4は、Z方向に沿って見たときに、メディアMdのX方向における他端部ME2と重なる地点である。本実施形態では、第1電極ユニット30が第3地点P3に位置する場合、第2電極ユニット40は、第4地点P4に位置する。また、第1電極ユニット30が第1地点P1に位置する場合、第2電極ユニット40は、他端部ME2と重なる地点Piに位置する。なお、「ある地点に第2電極ユニット40が位置している」という場合、第2電極ユニット40のX方向およびY方向における中央位置がその地点に位置していることを指す。
【0042】
図4に示すように、メディアMdの一端部ME1は、X方向において中央部MCよりも外側に位置し、メディアMdのX方向における一端ME1pを含む。一端部ME1は、Z方向に沿って見たときに、第2移動経路Pt2と重なる。より詳細には、一端部ME1は、Z方向に沿って見たときに、第2移動経路Pt2のうち、復路Pt1rの終点と往路Pt1oの始点とを接続する経路と重なる。中央部MCは、メディアMdのX方向における中央点MCpを含む。本実施形態における第2地点P2は、中央点MCpに相当する。メディアMdの他端部ME2は、X方向において中央部MCよりも外側に位置し、メディアMdのX方向における他端ME2pを含む。本実施形態では、他端部ME2は、Z方向に沿って見たときに、第2移動経路Pt2のうち、往路Pt1oの終点と復路Pt1rの始点とを接続する経路と重なる。本実施形態では、一端ME1pは、他端ME2pよりも-X方向側に位置する。また、本実施形態では、一端部ME1、他端部ME2、および、中央部MCのそれぞれのX方向における幅は、第1電極ユニット30の第2電極32の-X方向側の端と、第2電極ユニット40の第4電極42の+X方向側の端との間の距離と一致する幅として定義されている。なお、他の実施形態では、X方向において、一端部ME1および他端部ME2が中央部MCの外側に位置していれば、一端部ME1や他端部ME2、中央部MCのそれぞれのX方向における幅は、特に限定されない。
【0043】
図4に示すように、本実施形態では、第1地点P1は、第2電極ユニット40のX方向における移動範囲Rg2の外側に位置する。また、第4地点P4は、第1電極ユニット30のX方向における移動範囲Rg1の外側に位置する。
【0044】
図5は、本実施形態における第1電極ユニット30の加熱領域Rhを示す説明図である。
図5では、加熱領域Rhに網点模様のハッチングが付されている。加熱領域Rhとは、1回の静止操作が実行されている間に第1電極ユニット30によって加熱されるメディアMd上の領域のことを指す。加熱領域Rhは、Z方向に沿って見たときに、静止している第1電極ユニット30によって加熱されるメディアMd上の領域Rsがキャリッジ120の走査に伴って移動することによって描かれる、X方向に沿った帯状の領域である。本実施形態における領域Rsは、Z方向に沿って見たときに、第1電極31と第2電極32との間に位置する部分に相当する。この「第1電極31と第2電極32との間の部分」には、第1電極31や第2電極32が設けられている部分が含まれる。本実施形態では、加熱領域RhのX方向における長さLhが搬送距離dcの整数倍となるように、第1電極ユニット30の形状や配置、および、搬送距離dcが設定されている。より詳細には、本実施形態では、長さLhは、搬送距離dcの2倍である。本実施形態における長さLhは、第2電極32のX方向における外形寸法と略一致する。
【0045】
図6は、本実施形態において実行される加熱制御におけるキャリッジ位置と電極ユニット20の電界強度との関係を示す説明図である。
図7は、本実施形態において実行される加熱制御におけるキャリッジ位置とキャリッジ120の移動速度との関係を示す説明図である。
図6は、横軸を第1電極ユニット30の第1移動経路Pt1における位置とし、縦軸を電界強度とするグラフである。
図6の横軸は、第1移動経路Pt1の端Ed1の位置座標をゼロとした場合の第1電極ユニット30の位置座標として表されている。
図6の横軸の値がより大きいことは、第1電極ユニット30が、端Ed1から見て、より+X方向側に位置していることを意味する。
図6には、第1電極ユニット30によって形成される電界強度が実線によって示され、第2電極ユニット40によって形成される電界強度が破線によって示されている。
図7は、同様に横軸を第1電極ユニット30の移動経路Ptにおける位置とし、縦軸をキャリッジ120の移動速度の大きさとするグラフである。ある時点におけるキャリッジ120の移動速度は、その時点における第1電極ユニット30の移動速度、および、第2電極ユニット40の移動速度と等しい。
図6および
図7には、第1地点P1の座標p1と、第2地点P2の座標p2と、第3地点P3の座標p3と、端Ed2の座標pE2とが、それぞれ示されている。本実施形態では、
図6および
図7に示される各関係は、第1制御と第2制御との両方に同様に適用される。
【0046】
加熱制御部180は、加熱制御において、第1電極ユニット30が第1地点P1に位置する場合に、第1電極ユニット30が形成する電界強度を第1電界強度E1とし、第1電極ユニット30が第2地点P2に位置する場合に、第1電極ユニット30が形成する電界強度を第1電界強度E1に比べて強い第2電界強度E2とする。また、
図7に示すように、加熱制御部180は、加熱制御において、第1地点P1におけるキャリッジ120の移動速度v1を、第2地点P2における移動速度v2に比べて遅くする。他の実施形態では、第1移動速度は、ゼロであってもよい。
【0047】
また、本実施形態では、加熱制御部180は、加熱制御において、第1電極ユニット30が第1地点P1に位置する場合に、第2電極ユニット40が形成する電界強度を第3電界強度E3とし、第1電極ユニット30が第2地点P2に位置する場合に、第2電極ユニット40が形成する電界強度を第3電界強度E3に比べて強い第4電界強度E4とする。
図5に示すように、本実施形態では、第1電界強度E1は、第3電界強度E3に比べて強い。なお、本実施形態では、第2電界強度E2と第4電界強度E4とは同じである。また、第3電界強度E3は、ゼロであってもよい。また、他の実施形態では、第1電界強度E1が第3電界強度E3に比べて強くなくてもよく、この場合、第1電界強度E1がゼロであってもよい。
【0048】
また、
図6に示すように、本実施形態では、加熱制御部180は、加熱制御において、第1電極ユニット30が他端部ME2と重なる第3地点P3に位置する場合に、第1電極ユニット30が形成する電界強度を、第2電界強度E2に比べて弱い第5電界強度E5とする。また、加熱制御部180は、加熱制御において、第1電極ユニット30が第3地点P3に位置する場合に、つまり、第2電極ユニット40が第4地点P4に位置する場合に、第2電極ユニット40が形成する電界強度を、第4電界強度E4に比べて弱い第6電界強度E6とする。第6電界強度E6は、第5電界強度E5に比べて強い。また、
図7に示すように、加熱制御部180は、加熱制御において、第3地点P3におけるキャリッジ120の移動速度v3を、移動速度v2に比べて遅くする。第5電界強度E5や移動速度v3は、それぞれ、ゼロであってもよい。また、他の実施形態では、第6電界強度E6が第5電界強度E5に比べて強くなくてもよく、この場合、第6電界強度E6がゼロであってもよい。
【0049】
以上で説明した第1実施形態における誘電加熱装置100によれば、加熱制御部180は、加熱制御において、第1電極ユニット30がメディアMdの一端部ME1と重なる第1地点P1に位置する場合に、第1電極ユニット30が形成する電界強度を第1電界強度E1とし、キャリッジ120がメディアMdの中央部MCと重なる第2地点P2に位置する場合に、第1電極ユニット30が形成する電界強度を第1電界強度E1に比べて強い第2電界強度E2とし、第1地点P1における第1電極ユニット30の移動速度v1を、第2地点P2における第1電極ユニット30の移動速度v2に比べて遅くする。これによって、第1電極ユニット30の移動速度がより遅く、その滞在時間がより長い第1地点P1付近におけるメディアMdの加熱量と、第1電極ユニット30の移動速度がより速く、その滞在時間がより短い第2地点P2におけるメディアMdの加熱量との差異をより小さくできる。そのため、走査方向においてメディアMdの加熱量がバラつくことを抑制できる。
【0050】
なお、本実施形態では、加熱制御部180は、更に、加熱制御において、第1電極ユニット30が他端部ME2と重なる第3地点P3に位置する場合に、第1電極ユニット30が形成する電界強度を、第2電界強度E2に比べて弱い第5電界強度E5とし、第3地点P3における第1電極ユニット30の移動速度v3を、第2地点P2における第1電極ユニット30の移動速度v2に比べて遅くする。そのため、走査方向においてメディアMdの加熱量がバラつくことをより抑制できる。
【0051】
また、本実施形態では、第2電極32は、Z方向に沿って見たときに、第1電極31を囲うように配置され、第1電極ユニット30は、第1電極31または第2電極32に電気的に直列に接続された第1コイル34を有する。このような形態であれば、第1電極31と第2電極32との間に生じる、メディアMdの加熱に寄与する電界の強度を効果的に高めることができる。そのため、第1電極ユニット30によって、メディアMdをより効率良く加熱できる。
【0052】
また、本実施形態では、キャリッジ120は、更に、第3電極41と第4電極42とを有する第2電極ユニット40を搭載し、第1電極ユニット30と第2電極ユニット40とは、X方向に並んで配置される。そのため、第1電極ユニット30と第2電極ユニット40とによってメディアMdを効率良く乾燥できる。
【0053】
なお、本実施形態では、更に、加熱制御部180は、加熱制御において、第1電極ユニット30が第1地点P1に位置する場合に、第2電極ユニット40が形成する電界強度を第3電界強度E3とし、第1電極ユニット30が第2地点P2に位置する場合に、第2電極ユニット40が形成する電界強度を第3電界強度E3に比べて強い第4電界強度E4とする。そのため、第2電極ユニット40を備える形態において、走査方向におけるメディアMdの加熱量のバラつきを更に抑制できる。
【0054】
また、本実施形態では、第1地点P1は、第2電極ユニット40のX方向における移動範囲Rg2の外側に位置し、第2電極ユニット40は、第1電極ユニット30が第1地点P1に位置する場合に、メディアMd上の地点Piに位置し、加熱制御部180は、加熱制御において、第1電極ユニット30が第1地点P1に位置する場合に、第2電極ユニット40が形成する電界強度を第3電界強度E3とする。第1電界強度E1は、第3電界強度E3に比べて強い。このような形態であれば、第2電極ユニット40によって加熱されにくい第1地点P1付近において、メディアMdの加熱量が不足することを抑制できる。そのため、走査方向においてメディアMdの加熱量がバラつくことをより抑制できる。
【0055】
なお、本実施形態では、第2電極ユニット40は、第1電極ユニット30が第3地点P3に位置する場合に、メディアMd上において第1電極ユニット30の移動範囲Rg1より外側の第4地点P4に位置する。そして、加熱制御部180は、加熱制御において、第1電極ユニット30が第3地点P3に位置する場合に、第2電極ユニット40が形成する電界強度を、第5電界強度E5に比べて強い第6電界強度E6とする。これによって、第1電極ユニット30によって加熱されにくい第4地点P4付近において、メディアMdの加熱量が不足することを抑制できる。そのため、走査方向においてメディアMdの加熱量がバラつくことを更に抑制できる。
【0056】
また、本実施形態では、メディアMdを-Y方向に搬送する搬送部320を備え、搬送部320を制御する加熱制御部180は、メディアMdを予め定められた搬送距離dc、搬送する搬送操作と、メディアMdを搬送せずに静止させる静止操作とを交互に実行し、静止操作を実行している間に加熱制御を実行する。メディアMd上の、1回の静止操作が実行されている間に第1電極ユニット30によって加熱される加熱領域RhのY方向における長さLhは、搬送距離dcの整数倍である。そのため、搬送方向においてメディアMdの加熱量がバラつくことを抑制できる。なお、長さLhを搬送距離dcの2倍以上とすることによって、メディアMdの搬送方向における同一の部分を1つの電極ユニット20によって2回以上加熱でき、加熱制御の1回あたりのメディアMdの加熱量を小さくできる。そのため、例えば、電極ユニット20に印加する最大電圧を低くできる。また、メディアMdが高温になりすぎることを抑制できる。特に、本実施形態のように気流発生部140が設けられている場合、加熱制御が繰り返されている間に気流発生部140によってメディアMdを適宜冷却することで、メディアMdが高温になりすぎることをより効果的に抑制できる。
【0057】
B.第2実施形態:
図8は、第2実施形態におけるキャリッジ120の移動を示す説明図である。本実施形態では、加熱制御部180は、第1実施形態とは異なり、1回の静止操作を実行している間に、第1電極ユニット30を走査方向に沿って往復移動させ、第1制御および第2制御を実行する。第2実施形態における誘電加熱装置100や液体吐出システム200の構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0058】
図8には、第1実施形態で説明した
図4と同様に、第1移動経路Pt1と第2移動経路Pt2bとが示されている。
図8に示すように、本実施形態では、加熱制御部180は、1回の静止操作を実行している間に、第1制御および第2制御をそれぞれ1回ずつ実行する。つまり、1回の静止操作が実行されている間、第1電極ユニット30および第2電極ユニット40は、キャリッジ120とともに1回の往復移動を行う。そして、その往路と復路との両方において加熱制御が実行される。そのため、本実施形態では、第2移動経路Pt2bは、第1移動経路Pt1の往路Pt1oの終端と第1移動経路Pt1の復路Pt1rとを接続する経路のみによって構成されている。なお、
図8では、技術の理解を容易にするために、往路Pt1oと復路Pt1rとがY方向にずれて図示されているが、実際には、往路Pt1oと復路Pt1rとは重なっている。
【0059】
以上で説明した第2実施形態によれば、加熱制御部180は、1回の静止操作を実行している間に、第1電極ユニット30をX方向に沿って往復移動させ、第1制御および第2制御を実行する。これによって、例えば、第1実施形態で説明したように長さLhを搬送距離dcの2倍以上としなくても、簡易に、メディアMdの同一部分を1つの電極ユニット20によって2回以上加熱でき、加熱制御の1回あたりのメディアMdの加熱量を小さくできる。そのため、例えば、電極ユニット20に印加する最大電圧を低くできる。また、メディアMdが高温になりすぎることを抑制できる。特に、本実施形態のように気流発生部140が設けられている場合、加熱制御が繰り返されている間に気流発生部140によってメディアMdを適宜冷却することで、メディアMdが高温になりすぎることをより効果的に抑制できる。なお、長さLhを搬送距離dcの2倍以上とすることによって、上記の効果を更に高めることができる。
【0060】
なお、他の実施形態では、加熱制御部180は、1回の静止操作を実行している間に、第1制御や第2制御を2回以上実行してもよい。
【0061】
C.第3実施形態:
図9は、第3実施形態における液体吐出システム200bの概略構成を示す上面図である。本実施形態では、液体吐出装置205bに電極ユニット20等が組み込まれており、液体吐出装置205bは、誘電加熱装置100bとしても機能する。本実施形態では、キャリッジ120bは、第1実施形態と異なり、電極ユニット20に加え、液体吐出部210を搭載している。従って、移動部130は、キャリッジ120bを往復移動させることによって、液体吐出部210を電極ユニット20とともに少なくともメディアMd上で往復移動させる。また、本実施形態における液体吐出システム200bは、第1実施形態と異なり、後述するキャップ220を備えている。第3実施形態における誘電加熱装置100bや液体吐出システム200bの構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0062】
本実施形態では、吐出制御部250bが加熱制御部180としても機能する。また、搬送部320bは、第1搬送部321と第2搬送部322とを有しておらず、液体吐出装置205bおよび誘電加熱装置100bに共通の搬送部として構成されている。本実施形態では、吐出制御部250bは、第1実施形態や第2実施形態と同様に、搬送部320bによって、メディアMdを-Y方向に間欠的に搬送する。
【0063】
図9に示すように、第1電極ユニット30と、液体吐出部210とは、X方向に並んで配置されている。より詳細には、本実施形態では、-X方向側から+X方向側に向かって、第1電極ユニット30と、液体吐出部210と、第2電極ユニット40とがこの順で並んで配置されている。つまり、液体吐出部210は、X方向において、第1電極ユニット30と第2電極ユニット40とによって挟まれている。これによって、
図4等で説明したキャリッジ120の往路Pt1oと復路Pt1rとの両方において、第1電極ユニット30と第2電極ユニット40とのいずれか一方が液体吐出部210の後方に位置する。そのため、往路Pt1oと復路Pt1rとの両方において、液体吐出部210によってメディアMd上に液体を吐出するとともに、メディアMd上に吐出された液体を液体吐出部210の後方に位置する電極ユニット20によって加熱できる。従って、メディアMd上に液体を効率的に吐出でき、かつ、メディアMd上に吐出された液体をより迅速に加熱して乾燥させることができる。
【0064】
図9に示すように、キャップ220は、液体吐出部210のホーム位置HPに配置されている。本実施形態におけるキャップ220は、矩形板状の底部221と、底部221の4つの辺部分から垂直に立設するように形成された縁部222とを有し、+Z方向に向かって開口する凹状を有している。底部221には、キャップ220は、図示しないキャップ移動機構によって上下動可能に構成されている。キャップ移動機構は、例えば、キャリッジ120bのホーム位置HPへの移動に連動して動作するバネ機構や、モーターの駆動により動作する昇降装置等によって構成される。キャップ220内には、例えば、親水性の発泡樹脂等で構成された液体吸収材が配置されてもよい。
【0065】
ホーム位置HPは、メディアMdの-X方向側に配置されている。これにより、キャップ220は、メディアMdの-X方向側に配置されている。つまり、キャップ220は、X方向においてメディアMdよりも外側に配置されている。本実施形態では、ホーム位置HPは、液体吐出部210をメンテナンスするための位置であるメンテナンス位置を兼ねる。
【0066】
図10は、キャップ220によるキャッピングの説明図である。キャップ220は、液体吐出部210をキャッピング可能に構成されている。キャッピングとは、
図10に示すように、キャップ220が液体吐出部210の吐出面213の少なくとも一部を覆うことによって、吐出面213との間に、ノズル開口211が開口する閉空間CLを形成することを指す。より詳細には、キャップ220は、上述したキャップ移動機構によって、ホーム位置HPに位置する液体吐出部210の吐出面213に向かって+Z方向に移動し、縁部222の上端部と吐出面213とを密着させることで閉空間CLを形成する。以下では、液体吐出部210がキャッピングされた状態のことを、キャッピング状態と呼ぶこともある。
【0067】
キャッピングは、例えば、液体吐出部210が印刷を実行せず待機している状態で行われる。キャッピングによって、吐出面213への異物の付着や、液体吐出部210のノズル内の液体の乾燥等を抑制できる。キャッピングによって液体吐出部210のノズル内の液体の乾燥を抑制することを、「保湿」と呼ぶこともある。キャッピング状態では、例えば、キャップ220内に水分を適切に保持させておくことで、保湿効果を高めることができる。
【0068】
また、本実施形態におけるキャップ220は、液体吐出部210のメンテナンス動作において液体吐出部210から排出される液体を受ける排液受部として機能する。より詳細には、排液受部としてのキャップ220は、フラッシング動作を実行している液体吐出部210をキャッピングすることで、フラッシング動作において液体吐出部210から排出される液体を貯留する。フラッシング動作とは、メディアMd上に液体を吐出して印字を行う印刷動作ではなく、液体吐出部210のメンテナンスのために行われる動作であり、メンテナンス位置において液体吐出部210から液体を連続的に吐出させることによって、液体吐出部210内のノズルや流路等における液体の増粘による吐出不良の発生を抑制する動作である。
【0069】
なお、他の実施形態では、メンテナンス動作として、例えば、吸引クリーニングが実行されてもよい。吸引クリーニングとは、キャッピング状態において、閉空間CLに負圧を発生させて、液体吐出部210のノズルを介して、液体吐出部210から、液体とともに液体に含まれる気泡や異物を吸引する動作を指す。この場合、液体吐出部210は、閉空間CL内の液体を吸引するための吸引ポンプやチューブ等を備えていてもよい。
【0070】
図11は、第1電極ユニット30とキャップ220との位置関係を示す説明図である。
図11では、キャップ220のうち、Z方向に沿って見たときに、基板110や電極ユニット20と重なる部分が、破線によって示されている。
図11に示すように、本実施形態では、第1電極ユニット30の移動範囲Rg1の-X方向側の端は、メディアMdの一端ME1pよりも-X方向側に位置している。本実施形態では、キャップ220は、Z方向に沿って見たときに、その少なくとも一部が第1電極31と第2電極32との間に位置することが可能に配置されている。この「第1電極31と第2電極32との間の部分」には、
図5で説明したのと同様に、第1電極31や第2電極32が設けられている部分が含まれる。本実施形態では、例えば、
図11に示すように、液体吐出部210が一端部ME1と重なる第5地点P5に位置する場合に、第1電極ユニット30が一端ME1pよりも-X方向側の第6地点P6に位置し、Z方向に沿って見たときに、キャップ220の少なくとも一部が、第6地点P6に位置する第1電極ユニット30の第1電極31と第2電極32との間に位置している。
【0071】
図12は、本実施形態において実行される加熱制御におけるキャリッジ120の位置と電極ユニット20の電界強度との関係を示す説明図である。
図12は、第1実施形態で説明した
図6と同様に、横軸をキャリッジ120の第1移動経路Pt1における位置とし、縦軸を電界強度とするグラフである。本実施形態において、
図12に示される関係は、第1制御と第2制御との両方に同様に適用される。
図12には、座標p1と座標p2と座標pE2とに加え、第6地点P6の座標p6が示されている。本実施形態では、加熱制御部180は、加熱制御において、Z方向に沿って見たときにキャップ220が第1電極31と第2電極32との間に位置する場合に、第1電極ユニット30が形成する電界強度を、第2電界強度E2に比べて弱くする。例えば、
図12に示すように、加熱制御部180は、加熱制御において、第1電極ユニット30が第6地点P6に位置する場合に、第1電極ユニット30が形成する電界強度を、第2電界強度E2に比べて弱い第7電界強度E7とする。なお、本実施形態では、第7電界強度E7は、第1電界強度E1よりも弱い。第7電界強度E7は、ゼロであってもよい。
【0072】
他の実施形態では、本実施形態と同様に第1電極ユニット30が液体吐出部210の-X方向側に配置されている場合であっても、例えば、ホーム位置HPをより-X方向側に配置することによって、加熱制御において、Z方向に沿って見たときにキャップ220が第1電極31と第2電極32との間に位置しないようにすることが可能である。しかしながら、この場合、一端ME1pとホーム位置HPとの間の距離がより大きくなるので、液体吐出部210がホーム位置HPとメディアMd上の領域との間を移動するのに要する時間がより増加する。本実施形態では、上述したように、キャップ220が、加熱制御が実行されている間の一部の期間において、その少なくとも一部がZ方向に沿って見たときに第1電極31と第2電極32との間に位置するように配置されているので、ホーム位置HPをよりメディアMdに近い位置に配置できる。
【0073】
以上で説明した第3実施形態によれば、吐出面213の少なくとも一部を覆うことによって吐出面213との間に閉空間CLを形成可能に構成されたキャップ220を備え、キャリッジ120bは、液体吐出部210を搭載し、第1電極ユニット30と液体吐出部210とはX方向に並んで配置され、キャップ220は、Z方向に沿って見たときに、キャップ220の少なくとも一部が第1電極31と第2電極32との間に位置するように配置され、加熱制御部180は、加熱制御において、Z方向に沿って見たときにキャップ220が第1電極31と第2電極32との間に位置する場合に、第1電極ユニット30が形成する電界強度を、第2電界強度E2に比べて弱くする。そのため、キャップ220が、Z方向に沿って見たときに、その少なくとも一部が第1電極31と第2電極32との間に位置することが可能に配置されている形態において、キャップ220に付着した液体が第1電極ユニット30によって加熱されることを抑制でき、キャップ220に付着した液体やキャップ220が高温になりすぎることを抑制できる。
【0074】
また、本実施形態では、液体吐出部210のメンテナンス動作において液体吐出部210から排出される液体を受ける排液受部を備え、排液受部の少なくとも一部は、加熱制御が実行されている間の一部の期間において、Z方向に沿って見たときに、第1電極31と第2電極32との間に位置し、加熱制御部180は、加熱制御において、Z方向に沿って見たときに排液受部の少なくとも一部が第1電極31と第2電極32との間に位置する場合に、第1電極ユニット30が形成する電界強度を、第2電界強度E2に比べて弱くする。そのため、排液受部が、Z方向に沿って見たときに、その少なくとも一部が第1電極31と第2電極32との間に位置することが可能に配置されている形態において、排液受部に付着した液体が第1電極ユニット30によって加熱されることを抑制できるので、排液受部に付着した液体や排液受部が高温になりすぎることを抑制できる。
【0075】
他の実施形態では、ホーム位置HPとメンテナンス位置とがそれぞれ異なる位置であってもよく、この場合、キャップ220と排液受部とがそれぞれ別体であってもよい。この場合、例えば、キャップ220と排液受部とがX方向に並んで配置されてもよいし、X方向においてメディアMdがキャップ220と排液受部とによって挟まれるように配置されてもよい。また、キャップ220と排液受部とのうち、いずれか一方のみが設けられていてもよい。キャップ220と別体に設けられる排液受部は、例えば、液体吐出部210から排出された液体を貯留する貯留部として構成されてもよいし、液体吐出部210から排出された液体を受け、かつ、受けた液体を他の貯留部へと導くための流路として構成されてもよい。また、例えば、互いに離間したホーム位置HPとメンテナンス位置とのそれぞれに、キャップ220が配置されてもよい。
【0076】
D.他の実施形態:
(D-1)上記実施形態では、加熱制御部180は、加熱制御を往路と復路との両方において実行している。これに対して、加熱制御部180は、往路と復路とのうち、いずれかにおいてのみ加熱制御を実行してもよい。つまり、第1制御と第2制御とのうち、少なくともいずれか一方のみを実行してもよい。この場合、加熱制御部180は、例えば、静止操作中に、第1電極ユニット30を往路に沿って+X方向に移動させつつメディアMdを加熱し、搬送操作中に、メディアMdを加熱せずに第1電極ユニット30を復路に沿って-X方向に移動させてもよい。また、加熱制御部180は、例えば、静止操作中だけでなく、搬送動作中にも電極ユニット20によってメディアMdを加熱してもよい。
【0077】
(D-2)上記実施形態では、第2電極32は、Z方向に沿って見たときに、第1電極31を囲うように配置されているが、第1電極31を囲うように配置されなくてもよい。例えば、第1電極31および第2電極32は、Z方向に沿って見たときに互いに隣り合うように配置されてもよい。この場合、第1電極31および第2電極32の形状は任意であってよく、円形状や長円形状、矩形状、多角形状等であってもよい。また、Z方向に沿って見たときに、第1電極31および第2電極32の面積は、互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。Z方向に沿って見たときに、第1電極31および第2電極32は、互いに重ならないように配置されると好ましい。同様に、第4電極42は、第3電極41を囲うように配置されなくてもよい。
【0078】
(D-3)上記実施形態では、電極ユニット20として第1電極ユニット30と第2電極ユニット40とが設けられているが、例えば、第1電極ユニット30のみが設けられていてもよい。また、第1電極ユニット30や第2電極ユニット40を含む3以上の電極ユニット20が設けられていてもよい。また、各電極ユニット20の配置の態様は、任意であってよい。
【0079】
(D-4)上記実施形態では、第1電界強度E1は、第3電界強度E3に比べて強い。これに対して、第1電界強度E1は、第3電界強度E3に比べて弱くてもよいし、第3電界強度E3と同じであってもよい。
【0080】
(D-5)上記実施形態では、第1地点P1は、第2電極ユニット40の移動範囲Rg2の外側に位置しているが、移動範囲Rg2の内側に位置していてもよい。
【0081】
(D-6)上記実施形態では、誘電加熱装置100において、加熱制御部180は、搬送操作と静止操作とを交互に実行することによってメディアMdを間欠的に搬送しているが、メディアMdを間欠的に搬送しなくてもよい。例えば、加熱制御部180は、誘電加熱装置100において、メディアMdを途中で静止させることなく、-X方向に連続的に搬送してもよい。
【0082】
(D-7)上記実施形態では、誘電加熱装置100において、搬送部320によってメディアMdが搬送されているが、メディアMdが搬送されなくてもよい。例えば、移動部130を、キャリッジ120をX方向に往復移動させるのみならず、X方向と交差する交差方向に沿って移動させることを可能に構成してもよい。このような移動部130は、例えば、キャリッジ120をX方向とY方向とに移動させる2軸のアクチュエーター等によって構成される。この場合、加熱制御部180は、例えば、キャリッジ120をメディアMdに対してX方向と交差する+Y方向に予め定められた距離、移動させる操作と、キャリッジ120をメディアMdに対して+X方向や-X方向に移動させる操作とを繰り返すことによって、上述した間欠搬送におけるキャリッジ120の移動経路と同様の移動経路を実現してもよい。
【0083】
(D-8)上記実施形態では、第1電極31は、舟形形状を有しているが、舟形形状を有していなくてもよく、例えば、平板形状や棒状を有していてもよい。また、第1電極31は、Z方向に沿って見たときに長円形状を有していなくてもよく、例えば、円形状や矩形状、他の多角形状等を有していてもよい。同様に、第3電極41は、舟形形状を有していなくてもよく、Z方向に沿って見たときに長円形状を有していなくてもよい。
【0084】
(D-9)上記実施形態では、加熱制御部180は、加熱制御において、第1電極ユニット30が第1地点P1に位置する場合に、第2電極ユニット40が形成する電界強度を第3電界強度E3とし、第1電極ユニット30が第2地点P2に位置する場合に、第2電極ユニット40が形成する電界強度を第3電界強度E3に比べて強い第4電界強度E4としている。また、加熱制御部180は、加熱制御において、第2電極ユニット40が第4地点P4に位置する場合に、第2電極ユニット40が形成する電界強度を、第4電界強度E4に比べて弱い第6電界強度E6としている。これに対して、加熱制御部180は、第2電極ユニット40の電界強度をこのように制御しなくてもよい。例えば、加熱制御部180は、加熱制御において、上記のうち、第1電極ユニット30が第2地点P2に位置する場合に第2電極ユニット40が形成する電界強度を第4電界強度E4とすること、および、第2電極ユニット40が第4地点P4に位置する場合に、第2電極ユニット40が形成する電界強度を第6電界強度E6とすることのみを実行してもよい。また、例えば、加熱制御部180は、加熱制御において、第2電極ユニット40の電界強度を、第1電極ユニット30や第2電極ユニット40のX方向における位置によらず一定としてもよい。
【0085】
(D-10)上記実施形態では、加熱制御部180は、加熱制御において、第1電極ユニット30が他端部ME2と重なる第3地点P3に位置する場合に、第1電極ユニット30が形成する電界強度を、第2電界強度E2に比べて弱い第5電界強度E5としている。これに対して、加熱制御部180は、加熱制御において、第1電極ユニット30が形成する電界強度を第1電界強度E1とすること、および、第1電極ユニット30が第2地点P2に位置する場合に第2電界強度E2とすることを実行すれば、第1電極ユニット30の電界強度をこのように制御しなくてもよい。
【0086】
(D-11)上記第1実施形態および第2実施形態では、メディアMdは、液体吐出装置205から誘電加熱装置100へと連続して搬送される。このようにメディアMdが液体吐出装置205から誘電加熱装置100へと連続して搬送される場合、搬送部320は、例えば、誘電加熱装置100と液体吐出装置205とに共通の搬送部のみを有していてもよい。また、メディアMdは、液体吐出装置205から誘電加熱装置100へと連続して搬送されなくてもよい。例えば、液体吐出装置205によって液体が塗布されたメディアMdを一旦ロール状に巻き取った後、メディアMdをロボット等によって誘電加熱装置100へと移動させてもよい。この場合、誘電加熱装置100において、例えば、ロール状に巻き取られたメディアMdを巻き出しながら、第2搬送部322等によってメディアMdを搬送しつつメディアMdを加熱できる。
【0087】
(D-12)上記実施形態では、駆動周波数f0として13.56MHzの周波数が用いられている。これに対して、駆動周波数f0として13.56MHzの周波数が用いられなくてもよく、例えば、他のISMバンドである、40.68MHzや2.45GHz、5.8GHz等の周波数が用いられてもよい。また、駆動周波数f0は、電極ユニット20によってメディアMdに付着した液体を加熱できる周波数であれば高周波でなくてもよい。この場合、駆動周波数f0は、例えば、100kHz以上1MHz未満であると好ましい。
【0088】
(D-13)上記実施形態では、誘電加熱装置100は、液体吐出システム200に組み込まれている。これに対して、誘電加熱装置100が液体吐出システム200に組み込まれていなくてもよく、例えば、誘電加熱装置100のみが単独で用いられてもよい。
【0089】
E.参考例:
(E-1)
図13は、参考例における、電極ユニット20によってメディアMdが加熱されている間のキャリッジ120の位置とキャリッジ120の移動速度との関係を示す説明図である。
図13は、
図7と同様に、横軸を第1電極ユニット30の移動経路Ptにおける位置とし、縦軸をキャリッジ120の移動速度の大きさとするグラフである。
図13には、中央点MCpの座標pCと、他端ME2pの座標pE2とが示されている。
図13の例では、加熱制御部180は、加熱制御において、メディアMdの一端部ME1において第1電極ユニット30によってメディアMdに印加される単位面積あたりの電力量と、メディアMdの中央部MCにおいて第1電極ユニット30によってメディアMdに印加される単位面積あたりの電力量とが一致するように、キャリッジ120の移動速度を制御する。
図13の例では、加熱制御部180は、加熱制御において、例えば、第1電極ユニット30が形成する電界強度を移動経路Pt上において一定としてもよいし、第1電極ユニット30が形成する電界強度を移動経路Pt上において一定とはせず、第1電極ユニット30が形成する電界強度とキャリッジ120の移動速度との両方を制御することによって、上記のように一端部ME1における電力量と中央部MCにおける電力量とを一致させてもよい。
【0090】
F.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0091】
(1)本開示の第1の形態によれば、誘電加熱装置が提供される。この誘電加熱装置は、メディアと対向する第1電極および第2電極を有し、前記メディアを誘電加熱方式によって加熱する第1電極ユニットと、前記第1電極および前記第2電極に交流電圧を印加する電圧印加部と、前記第1電極ユニットを搭載するキャリッジと、前記キャリッジを走査方向に沿って往復移動させることによって、前記第1電極ユニットを少なくとも前記メディア上で前記走査方向に沿って往復移動させる移動部と、前記電圧印加部および前記移動部を制御する加熱制御部と、を備える。前記加熱制御部は、前記第1電極ユニットを前記走査方向に沿って移動させながら前記メディアを加熱する加熱制御を、前記第1電極ユニットが前記走査方向の一方向に向かう往路と、前記第1電極ユニットが前記一方向と逆方向に向かう復路と、の少なくともいずれかにおいて実行する。前記加熱制御部は、前記加熱制御において、前記第1電極ユニットが、前記メディアの前記走査方向における一端部と重なる第1地点に位置する場合に、前記第1電極ユニットが形成する電界強度を第1電界強度とし、前記第1電極ユニットが、前記メディアの前記走査方向における中央部と重なる第2地点に位置する場合に、前記第1電極ユニットが形成する電界強度を前記第1電界強度に比べて強い第2電界強度とし、前記第1地点における前記第1電極ユニットの移動速度を、前記第2地点における前記第1電極ユニットの移動速度に比べて遅くする。
このような形態によれば、第1電極ユニットの移動速度がより遅く、その滞在時間がより長い第1地点付近におけるメディアの加熱量と、第1電極ユニットの移動速度がより速く、その滞在時間がより短い第2地点におけるメディアの加熱量との差異をより小さくできる。そのため、走査方向においてメディアの加熱量がバラつくことを抑制できる。
【0092】
(2)上記形態では、前記第2電極は、前記メディアと前記第1電極および前記第2電極とが対向する対向方向に沿って見たときに、前記第1電極を囲うように配置され、前記第1電極ユニットは、前記第1電極または前記第2電極に電気的に直列に接続されたコイルを有していてもよい。このような形態によれば、第1電極と第2電極との間に生じる、メディアの加熱に寄与する電界の強度を効果的に高めることができる。そのため、第1電極ユニットによって、メディアをより効率良く加熱できる。
【0093】
(3)上記形態では、前記メディアと対向する第3電極および第4電極を有し、前記メディアを誘電加熱方式によって加熱する第2電極ユニットを備え、前記電圧印加部は、前記第3電極および前記第4電極に交流電圧を印加し、前記キャリッジは、前記第2電極ユニットを搭載し、前記移動部は、前記キャリッジを往復移動させることによって、前記第2電極ユニットを前記第1電極ユニットとともに少なくとも前記メディア上で往復移動させ、前記第1電極ユニットと、前記第2電極ユニットとは、前記走査方向に並んで配置されてもよい。このような形態によれば、第1電極ユニットと第2電極ユニットとによってメディアを効率良く乾燥できる。
【0094】
(4)上記形態では、前記第1地点は、前記第2電極ユニットの前記走査方向における移動範囲の外側に位置し、前記第2電極ユニットは、前記第1電極ユニットが前記第1地点に位置する場合に、前記メディア上に位置し、前記加熱制御部は、前記加熱制御において、前記第1電極ユニットが前記第1地点に位置する場合に、前記第2電極ユニットが形成する電界強度を第3電界強度とし、前記第1電界強度は、前記第3電界強度に比べて強くてもよい。このような形態によれば、第2電極ユニットによって加熱されにくい第1地点付近において、メディアの加熱量が不足することを抑制できる。そのため、走査方向においてメディアの加熱量がバラつくことをより抑制できる。
【0095】
(5)上記形態では、前記メディアを、前記走査方向と交差する搬送方向に搬送する搬送部を備え、前記加熱制御部は、前記搬送部を制御し、前記搬送部によって前記メディアを予め定められた搬送距離、搬送する搬送操作と、前記メディアを搬送せずに静止させる静止操作と、を交互に実行し、前記静止操作を実行している間に前記加熱制御を実行し、1回の前記静止操作が実行されている間に前記第1電極ユニットによって加熱される前記メディア上の領域の前記搬送方向における長さは、前記搬送距離の整数倍であってもよい。このような形態によれば、搬送方向においてメディアの加熱量がバラつくことを抑制できる。
【0096】
(6)上記形態では、前記加熱制御部は、1回の前記静止操作を実行している間に、前記第1電極ユニットを前記走査方向に沿って往復移動させ、前記往路と前記復路とにおいて前記加熱制御を実行してもよい。このような形態によれば、簡易に、メディアの同一部分を1つの電極ユニットによって2回以上加熱でき、加熱制御の1回当たりのメディアの加熱量を小さくできる。そのため、例えば、第1電極ユニットに印加する最大電圧を低くできる。また、例えば、メディアが高温になりすぎることを抑制できる。
【0097】
(7)本開示の第2の形態によれば、液体吐出システムが提供される。この液体吐出システムは、上記形態の誘電加熱装置と、ノズル開口が形成された吐出面を有し、前記ノズル開口から前記メディアに液体を吐出して塗布する液体吐出部と、前記液体吐出部を制御する吐出制御部と、を備える。
【0098】
(8)上記第2の形態では、前記キャリッジは、前記液体吐出部を搭載し、前記移動部は、前記キャリッジを往復移動させることによって、前記液体吐出部を前記第1電極ユニットとともに少なくとも前記メディア上で往復移動させ、前記走査方向において前記メディアよりも外側に配置され、前記吐出面の少なくとも一部を覆うことによって、前記吐出面との間に前記ノズル開口が開口する閉空間を形成可能に構成されたキャップを更に備え、前記第1電極ユニットと、前記液体吐出部とは、前記走査方向に並んで配置され、前記キャップは、前記メディアと前記第1電極および前記第2電極とが対向する対向方向に沿って見たときに、前記キャップの少なくとも一部が前記第1電極と前記第2電極との間に位置することが可能に配置され、前記加熱制御部は、前記加熱制御において、前記対向方向に沿って見たときに前記キャップの少なくとも一部が前記第1電極と前記第2電極との間に位置する場合に、前記第1電極ユニットが形成する電界強度を、前記第2電界強度に比べて弱くしてもよい。このような形態によれば、キャップが、対向方向に沿って見たときに、その少なくとも一部が第1電極と第2電極との間に位置することが可能に配置されている形態において、キャップに付着した液体が第1電極ユニットによって加熱されることを抑制できるので、キャップに付着した液体やキャップが高温になりすぎることを抑制できる。
【0099】
(9)上記第2の形態では、前記キャリッジは、前記液体吐出部を搭載し、前記移動部は、前記キャリッジを往復移動させることによって、前記液体吐出部を前記第1電極ユニットとともに少なくとも前記メディア上で往復移動させ、前記走査方向において前記メディアよりも外側に配置され、前記液体吐出部のメンテナンス動作において前記液体吐出部から排出される前記液体を受ける排液受部を更に備え、前記第1電極ユニットと、前記液体吐出部とは、前記走査方向に並んで配置され、前記排液受部は、前記メディアと前記第1電極および前記第2電極とが対向する対向方向に沿って見たときに、前記排液受部の少なくとも一部が前記第1電極と前記第2電極との間に位置することが可能に配置され、前記加熱制御部は、前記加熱制御において、前記対向方向に沿って見たときに前記排液受部が前記第1電極と前記第2電極との間に位置する場合に、前記第1電極ユニットが形成する電界強度を、前記第2電界強度に比べて弱くしてもよい。このような形態によれば、排液受部が、対向方向に沿って見たときに、その少なくとも一部が第1電極と第2電極との間に位置することが可能に配置されている形態において、排液受部に付着した液体が第1電極ユニットによって加熱されることを抑制できるので、排液受部に付着した液体や排液受部が高温になりすぎることを抑制できる。
【0100】
(10)本開示の第3の形態によれば、メディアと対向し交流電圧が印加される第1電極および第2電極を有し、走査方向に沿って往復移動可能に構成されたキャリッジに搭載された電極ユニットであって、前記電極ユニットが前記走査方向の一方向に向かう往路と、前記電極ユニットが前記一方向と逆方向に向かう復路と、の少なくともいずれかにおいて実行される、前記電極ユニットを前記キャリッジとともに前記走査方向に沿って移動させながら前記メディアを加熱する加熱制御において、前記電極ユニットが前記メディアの前記走査方向における一端部と重なる第1地点に位置する場合に前記電極ユニットによって形成される第1電界強度が、前記電極ユニットが前記メディアの前記走査方向における中央部と重なる第2地点に位置する場合に前記電極ユニットによって形成される第2電界強度に比べて強く、前記第1地点における前記電極ユニットの移動速度が、前記第2地点における前記電極ユニットの移動速度に比べて遅い、電極ユニットによって加熱される液体を前記メディアに塗布する液体吐出装置が提供される。この液体吐出装置は、前記メディアを、前記走査方向と交差する方向に搬送する搬送部と、前記メディアに前記液体を吐出して塗布する液体吐出部と、前記搬送部および前記液体吐出部を制御する制御部と、を備える。
【符号の説明】
【0101】
20…電極ユニット、30…第1電極ユニット、31…第1電極、32…第2電極、33…接続部材、34…第1コイル、35…電線、40…第2電極ユニット、41…第3電極、42…第4電極、44…第2コイル、80…電圧印加部、100,100b…誘電加熱装置、110…基板、120,120b…キャリッジ、130…移動部、131…無端ベルト、132…プーリー、133…駆動部、140…気流発生部、180…加熱制御部、200,200b…液体吐出システム、205,205b…液体吐出装置、210…液体吐出部、211…ノズル開口、212…ノズル面、213…吐出面、220…キャップ、221…底部、222…縁部、250,250b…吐出制御部、320,320b…搬送部、321…第1搬送部、322…第2搬送部、323…ローラー