(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175801
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】膨張弁
(51)【国際特許分類】
F25B 41/33 20210101AFI20241212BHJP
F25B 41/335 20210101ALI20241212BHJP
F25B 41/345 20210101ALI20241212BHJP
F16K 31/68 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F25B41/33
F25B41/335 B
F25B41/335 C
F25B41/345
F16K31/68 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093820
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳屋 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】茂木 隆
【テーマコード(参考)】
3H057
【Fターム(参考)】
3H057AA04
3H057BB04
3H057BB22
3H057CC06
3H057DD05
3H057HH05
3H057HH16
3H057HH18
(57)【要約】
【課題】冷凍サイクルの流体圧を利用して、任意に閉弁状態を確保できる膨張弁を提供する。
【解決手段】膨張弁は、弁室及び弁座を有する弁本体と、前記弁本体に設けられ、変位可能な変位部を有するパワーエレメントと、前記弁室内に配置される弁体と、前記弁体を前記弁座に向かって付勢する第1の付勢装置と、前記弁本体に設けられ前記変位部及び前記弁体との間に配置され、前記変位部の変位を受けて前記弁体を駆動する作動棒と、前記弁本体に設けられ、前記作動棒の一部を移動可能に内部に収容し、かつ前記変位部との間に、前記弁体の移動方向に伸縮可能なシリンダ室を構成するシリンジ部材と、前記シリンジ部材の前記弁室側への移動を規制する移動規制部と、前記シリンダ室に、前記弁室内の流体または前記弁室より上流側の流体を供給する供給部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室及び弁座を有する弁本体と、
前記弁本体に設けられ、変位可能な変位部を有するパワーエレメントと、
前記弁室内に配置される弁体と、
前記弁体を前記弁座に向かって付勢する第1の付勢装置と、
前記弁本体に設けられ前記変位部及び前記弁体との間に配置され、前記変位部の変位を受けて前記弁体を駆動する作動棒と、
前記弁本体に設けられ、前記作動棒の一部を移動可能に内部に収容し、かつ前記変位部との間に、前記弁体の移動方向に伸縮可能なシリンダ室を構成するシリンジ部材と、
前記シリンジ部材の前記弁室側への移動を規制する移動規制部と、
前記シリンダ室に、前記弁室内の流体または前記弁室より上流側の流体を供給する供給部と、
を備える、
ことを特徴とする膨張弁。
【請求項2】
前記シリンダ室内の圧力を、前記弁室より下流側に排圧する排出部を備えることを特徴とする請求項1に記載の膨張弁。
【請求項3】
前記供給部は、
前記弁本体に形成され、前記弁室内の前記流体または前記弁室より上流側の流体を前記シリンダ室に流入する流入路と、
前記流入路に設けられ、前記シリンダ室への前記流体の流入を制御する第1の弁装置と、
を備え、
前記排出部は、前記シリンダ室内の前記流体を前記弁室より下流側に流出する流出路を備え、
前記流出路は、前記流入路の一部、並びに、当該一部から分岐して当該一部及び前記弁室より下流側を連通する分岐流路を備え、
前記第1の弁装置は、第2の弁装置を兼ね、前記流入路を開きかつ前記流出路を閉じる状態、及び、前記流出路を開きかつ前記流入路を閉じる状態を切り換え可能に構成される、
ことを特徴とする請求項2に記載の膨張弁。
【請求項4】
前記流入路は、
前記弁本体に形成され、前記シリンジ部材の前記弁室側の部位が配置される第1の孔と、
前記シリンジ部材に形成され、前記第1の孔及び前記シリンダ室を連通する第2の孔と、
前記弁本体に形成され、前記弁室または前記弁室より上流側に連通する第1の流路部と、
前記弁本体に形成され、前記第1の孔に連通する第2の流路部と、
前記弁本体に形成され、前記第1の流路部及び前記第2の流路部に接続される接続室と、
を備え、
前記流出路は、
前記第2の流路部、前記接続室、並びに、前記弁室より下流側及び前記接続室を連通する第3の流路部を備え、
前記接続室は、
前記第1の流路部及び前記第2の流路部を連通する第1連通流路と、
前記第2の流路部及び前記第3の流路部を連通する第2連通流路と、
を備え、
前記第1の弁装置は、前記接続室に配置される弁軸部材、及び前記弁軸部材を駆動する駆動装置を備え、
前記弁軸部材は、前記接続室の前記第1連通流路を介して前記第1の流路部および前記第2の流路部を連通させて、前記第1の流路部及び前記第2の流路部の双方と前記第3の流路部とを非連通とする第2の位置、並びに、前記接続室の前記第2連通流路を介して前記第2の流路部及び前記第3の流路部を連通させて、前記第2の流路部及び前記第3の流路部の双方と前記第1の流路部とを非連通とする第1の位置の間で移動可能に形成される、
ことを特徴とする請求項3に記載の膨張弁。
【請求項5】
前記駆動装置は、
プランジャを有し、前記プランジャによって前記弁軸部材を前記第1の位置及び前記第2の位置の一方から他方へ移動する、前記弁本体に設けられる駆動部と、
前記接続室に設けられて前記弁軸部材を前記他方側から前記一方に向かって付勢する第2の付勢装置と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の膨張弁。
【請求項6】
前記接続室内において前記第1の流路部の開口及び前記第3の流路部の開口の間に配置されて前記第1の流路部から前記第3の流路部への流体の流れを防止し、前記第2の流路部の開口を覆い、前記第3の流路部の前記開口との間に隙間を有する弁座部材を備え、
前記弁座部材は、前記プランジャの移動方向に貫通する貫通孔と、前記貫通孔及び前記第2の流路部の前記開口を中継する中継路とを有し、
前記弁軸部材は、前記貫通孔内に配置されて前記貫通孔の軸方向に移動可能に形成されかつ前記貫通孔の内面との間に流路を構成する軸部と、前記軸部に設けられて前記隙間に配置され、前記弁座部材に当接することで前記貫通孔の開口と前記接続室とを非連通とする鍔部と、
を備え、
前記プランジャの先端面は、前記弁軸部材に当接することで、前記貫通孔の開口及び前記接続室を非連通にする面に形成される、
ことを特徴とする請求項5に記載の膨張弁。
【請求項7】
前記弁座部材の前記第3の流路部側の端面において前記貫通孔の前記開口の周囲は、第1シール部材により形成され、
前記弁座部材の前記駆動部側の端面において前記貫通孔の前記開口の周囲は、第2シール部材により形成される、
ことを特徴とする請求項6に記載の膨張弁。
【請求項8】
前記供給部は、
前記弁本体に設けられて前記弁本体外の前記弁室より上流側の外部流路部に接続され、前記弁室より上流側の前記流体を前記シリンダ室に流入する流入路と、
前記流入路、または前記外部流路部に設けられ、前記流入路を介する前記シリンダ室への前記流体の流入を制御する弁装置と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の膨張弁。
【請求項9】
前記排出部は、
前記弁本体に設けられて前記弁本体外の前記弁室より下流側の外部流路部に接続され、前記外部流路部を介して前記シリンダ室の前記流体を前記弁室より下流側に流出する流出路と、
前記流出路、または前記外部流路部に設けられ、前記流出路を介する前記シリンダ室内の前記流体の前記弁室より下流側への流出を制御する弁装置と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の膨張弁。
【請求項10】
前記弁本体は、前記弁室内の圧力より低圧の流体が流れる低圧流路を有し、
前記パワーエレメントは、
前記弁本体に固定されるハウジングと、
前記ハウジング内に設けられ、前記ハウジング内を、圧力作動室、及び前記低圧流路に連通する弁室側室に仕切るダイアフラムと、
前記弁室側室に配置され、前記変位部としてのストッパ部材と、
前記ストッパ部材及び前記シリンジ部材の一方に設けられる係止部と、
を備え、
前記ストッパ部材の内部に前記シリンジ部材が配置され、または、前記シリンジ部材の内部に前記ストッパ部材が配置され、
前記係止部は、前記ストッパ部材及び前記シリンジ部材の他方に当接することで、前記シリンジ部材が前記ストッパ部材から抜け出ること、または前記ストッパ部材が前記シリンジ部材から抜け出ることを防止する、
ことを特徴とする請求項1に記載の膨張弁。
【請求項11】
前記ハウジングの下端が内方に延出するフランジ部を有し、
前記シリンジ部材は、前記フランジ部の内側に挿通される軸部と、前記軸部の前記パワーエレメント側の端部に取り付けられ前記軸部より寸法が大きい基部とを有し、
前記基部は、前記軸部の移動方向に前記フランジ部と対向する寸法を有し、
前記係止部によって前記ストッパ部材に対する前記シリンジ部材の移動が規制された状態では、前記基部の前記弁室側の端面は前記ストッパ部材の前記弁室側の端面より前記弁室側に位置し、
前記フランジ部と前記基部とは、前記移動規制部を構成する、
ことを特徴とする請求項10に記載の膨張弁。
【請求項12】
前記シリンジ部材は、軸部、及び前記軸部の前記パワーエレメント側となる一端に設けられ、前記軸部の軸線に直交する方向に前記軸部より大きな寸法を有する基部を有し、
前記弁本体は、前記シリンジ部材を移動可能に配置する孔を有し、
前記軸部の他端及び前記孔の内部空間の底面、または、前記基部及び前記弁本体における前記基部と対向する面は、前記移動規制部を構成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の膨張弁。
【請求項13】
前記シリンジ部材は、管状の基部と、前記基部に接続された軸部とを有し、
前記基部の内周に対して、前記変位部が摺動可能に嵌合しており、
前記軸部は、前記基部よりも寸法が小さい前記弁本体の開口部に挿通されており、
前記開口部の周囲により前記移動規制部が構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の膨張弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張弁に関する。
【背景技術】
【0002】
膨張弁の一タイプとして、電磁弁を備えた膨張弁が知られている。かかる膨張弁は、例えば、並列に接続された複数の蒸発器を有する冷凍サイクルに適用され、蒸発器の出口側冷媒の過熱度制御機能に加え、冷凍サイクルにおける回路の遮断機能を有している。
【0003】
特許文献1には、高圧の冷媒が流入する一次側通路と弁室とを接続する連絡路に弁口を設けてなり、該弁口を開放又は遮蔽する電磁弁を取付けた膨張弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成によれば、電磁弁により該弁口を開放することで膨張弁の動作を行わせるとともに、該弁口を遮蔽することで膨張弁を強制的に閉弁状態とすることが可能となる。
【0006】
しかしながら、特許文献1の膨張弁においては、電磁弁と膨張弁とが直列に接続された状態となっている。すなわち、一次側通路に進入した冷媒は、膨張弁の外部へと流出するまでに、電磁弁のオリフィスと膨張弁のオリフィスの2か所を通過しなければならず、これにより圧損の増大を招いている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、冷凍サイクルの流体圧を利用して、任意に閉弁状態を確保できる膨張弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電磁弁は、
弁室及び弁座を有する弁本体と、
前記弁本体に設けられ、変位可能な変位部 を有するパワーエレメントと、
前記弁室内に配置される弁体と、
前記弁体を前記弁座に向かって付勢する第1の付勢装置と、
前記弁本体に設けられ前記変位部及び前記弁体との間に配置され、前記変位部の変位を受けて前記弁体を駆動する作動棒と、
前記弁本体に設けられ、前記作動棒の一部を移動可能に内部に収容し、かつ前記変位部との間に、前記弁体の移動方向に伸縮可能なシリンダ室を構成するシリンジ部材と、
前記シリンジ部材の前記弁室側への移動を規制する移動規制部と、
前記シリンダ室に、前記弁室内の流体または前記弁室より上流側の流体を供給する供給部と、を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、冷凍サイクルの流体圧を利用して、任意に閉弁状態を確保できる膨張弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施形態における膨張弁の開弁状態を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に対し軸線L回りに90度だけ位相を変えた断面における膨張弁の縦断面図である。
【
図3】
図2に示す電磁弁の周辺を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図2と同様な断面における膨張弁の閉弁状態を示す縦断面図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態における膨張弁の開弁状態を示す縦断面図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態における膨張弁の閉弁状態を示す縦断面図である。
【
図7】
図7は、第1の変形例にかかる膨張弁の
図6と同様な縦断面図である。
【
図8】
図8は、第2の変形例にかかる膨張弁の
図6と同様な縦断面図である。
【
図9】
図9は、第3の変形例にかかる膨張弁の
図6と同様な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、
図1を参照して、第1の実施形態にかかる膨張弁1の構造を説明する。
図1は、本実施形態における膨張弁1の開弁状態の概略断面図であり、これが接続された冷凍サイクル100を模式的に示す。
図2は、
図1に対し軸線L回りに90度だけ位相を変えた断面における膨張弁1の縦断面図であり、開弁状態を示す。
図3は、
図2に示す電磁弁EVの周辺を拡大して示す断面図である。
図4は、
図2と同様な断面における膨張弁1の縦断面図であり、閉弁状態を示す。また、弁室より上流とは、弁室よりコンデンサに近い側をいい、弁室より下流とは、弁室よりエバポレータに近い側をいう。
【0012】
膨張弁1は、弁室VSを備える弁本体2と、弁体3と、付勢装置(第1の付勢装置ともいう)4と、作動棒5と、シリンジ部材6と、パワーエレメント8とを具備する。膨張弁1の軸線をLとする。ここで、軸線Lに沿って、パワーエレメント8側を上方とし、それに対し付勢装置4側を下方とする。
【0013】
弁本体2は、弁室VSに加え、第1流路21、第2流路22及び戻り流路(低圧流路)23を備える。第1流路21は供給側流路であり、弁室VSには、供給側流路を介して冷媒(流体ともいう)が供給される。第2流路22は排出側流路であり、弁室VS内の流体は、作動棒挿通孔27、中間通路22a及び排出側流路を介して膨張弁外に排出される。第1流路21と弁室VSとは、小径通路21aを介して連通している。
【0014】
球状の弁体3は、弁室VS内に配置される。弁体3が弁本体2の環状の弁座20に着座しているとき、弁室VSと第2流路22とは非連通状態となる。一方、弁体3が弁座20から離間しているとき、弁室VSと第2流路22とは連通状態となる。
【0015】
作動棒5は、弁本体2の作動棒挿通孔27に対して隙間を持って挿通されており、また中央孔28に案内されて、軸線L方向に変位可能に保持されている。作動棒5の下端が弁体3の上面に接触し、作動棒5の上端がパワーエレメント8のストッパ部材84の下面に当接している。
【0016】
作動棒5は、付勢装置4による付勢力に抗して弁体3を開弁方向に押圧することができる。作動棒5が弁体側に移動するとき、弁体3は弁座20から離間し、膨張弁1が開状態となる。
【0017】
作動棒5の周囲に配置されるシリンジ部材6は、弁本体2に設けられ、作動棒5の一部を移動可能に内部に収容し、かつストッパ部材84との間に、弁体3の移動方向に伸縮可能なシリンダ室を構成する。シリンジ部材6は、上端側の円盤基部(単に基部ともいう)61と、下端側の軸部(シリンジ部材用軸部ともいう)62とを同軸に連設してなり、上端側から下端まで貫通する貫通穴63を有する。貫通穴63は、上端側の第1穴63aと、下端側の第2穴63bとを有する。第2穴63bは、第1穴63aよりも内径が小さくなっており、作動棒5の外周に摺動可能に嵌合する。
【0018】
円盤基部61は、パワーエレメント8の後述するストッパ部材84の円筒凹部84a内に収容されている。円盤基部61の外周には第1周溝61aが形成され、その内部に第1のO-リングOR1が配置されており、円筒凹部84aと円盤基部61との間をシールする。
【0019】
軸部62の下端近傍における外周には、第2周溝62aが形成され、その内部に第2のO-リングOR2が配置されており、弁本体2の拡径孔(第1の孔)26と軸部62との間をシールする。軸部62は、拡径孔26に対して摺動可能に嵌合する。
【0020】
第2周溝62aより下方における軸部62の下端外周に、細径部62bが形成されており、細径部62bの外径は、細径部62b以外の軸部62の外径より小さくなっている。細径部62bにおいて、その内周と外周との間を貫通する接続孔62dが形成されている。拡径孔26は略一様な内径を有するため、縮径部64の外周と拡径孔26の内周との間に隙間がある。
【0021】
弁本体2の拡径孔26と中央孔28との間には、拡径孔26より小径で中央孔28より大径の中径孔29が形成されている。中径孔29内には、作動棒5が貫通する第3のO-リングOR3が配置されており、作動棒5と中径孔29との間をシールする。
【0022】
ここで、第2のO-リングOR2と第3のO-リングOR3によりシールされた拡径孔26と中径孔29との間の空間を、均圧室(均圧空間ともいう)ECとする。均圧室ECに面する拡径孔26から下方に向かって軸線Lに対して傾いて延在する連通孔2dが、弁本体2に形成されている(
図2参照)。
【0023】
シリンジ部材6は軸線Lに沿って、連通路2b、戻り流路23、および弁本体2に形成された拡径孔26を介して、パワーエレメント8から、拡径孔26と中径孔29との段部26aまで延在している。
【0024】
次にパワーエレメント8について説明する。パワーエレメント8は、弁本体2の頂部に設けられた開口部2aに取り付けられている。開口部2aは連通路2bを介して、エバポレータからの冷媒が通過する戻り流路23と連通している。
【0025】
パワーエレメント8は、栓81と、上蓋部材82と、ダイアフラム83と、変位部を構成するストッパ部材84と、受け部材86とを有する。
【0026】
上蓋部材82の頂部には穴82aが形成され、栓81により封止可能となっている。
【0027】
ダイアフラム83は、例えば、同心円の凹凸形状を複数個形成した薄い板材からなる。
【0028】
略有頂筒状のストッパ部材84は、円盤部84bと、円盤部84bの下面に同軸に連設された円管部84cとを有しており、円管部84cの内側が円筒凹部84aとなっている。円管部84cの下端内周段部には、環状の係止部材(係止部ともいう)85が取り付けられている。シリンジ部材6の円盤基部61を円筒凹部84aに挿入した後に、係止部材85の外周に配設された円管部84cの下端のカシメ部84dを径方向内側にカシメることで、係止部材85が円管部84cに取り付けられ、それによりストッパ部材84からの円盤基部61の抜け止めがなされる。
【0029】
すなわち、係止部材85は、シリンジ部材6に当接することでシリンジ部材6がストッパ部材84に対して所定位置を超えて弁室側へ移動することを防止する。さらに換言すると、係止部材85は、ストッパ部材84からシリンジ部材6が抜け出ることを防止する。なお、ストッパ部材84においてシリンジ部材6に当接する部位は、係止部材85として別体で形成される例が説明されたが、ストッパ部材84においてシリンジ部材6に当接する部位は、ストッパ部材84と一体に形成されてもよい。
【0030】
円盤基部61は、その上端が円盤部84bの下面に当接する上方位置(ストッパ部材84に当接する当接位置:
図2)と、その下端が係止部材85の上面に当接する下方位置との間で、軸線方向に変位可能である。ただし、膨張弁1の組付け状態では、円盤基部61が係止部材85に当接する前に、軸部62が拡径孔26と中径孔29との段部(孔の底面ともいう)26aに当接する。すなわち、中径孔29の段部は、シリンジ部材6の弁室VS側への移動を規制する移動規制部として機能する。したがって閉弁状態においては、軸部62の下端が、拡径孔26と中径孔29との段部26aに当接した状態(弁本体2に突き当たる突き当て位置:
図4)で、円盤基部61がストッパ部材84の円盤部84bの下面から離間した状態となるように、シリンジ部材6の軸線方向寸法が設定されている。
【0031】
ここで、円盤部84bと円盤基部61との間の空間をシリンダ室CSとする。シリンダ室CSは、貫通穴63にのみ連通する。なお、円盤部84bの下面には、円盤基部61の上端外周に対向して環状にくぼんだ環状凹部84eが形成されており、環状凹部84e内がシリンダ室CSの一部を構成する。
【0032】
受け部材86は、上蓋部材82の外径とほぼ同じ外径を持つフランジ部と、該フランジ部の下端に連設された中空円筒部とを有し、中空円筒部の外周には雄ねじ86cが形成されている。
【0033】
パワーエレメント8の組立時において、ストッパ部材84を内在させながら、上蓋部材82と、ダイアフラム83と、受け部材86のフランジ部のそれぞれ外周部を重ね合わせた状態で、当該外周部を例えばTIG溶接やレーザ溶接、プラズマ溶接等により周溶接して一体化してハウジングを形成する。このとき、ストッパ部材84内に予めシリンジ部材6を組付けていてもよいし、溶接後にシリンジ部材6を組み付けてもよい。
【0034】
続いて、上蓋部材82に形成された穴82aから、上蓋部材82とダイアフラム83とで囲われる空間(圧力作動室PAという)内に作動ガスを封入した後、穴82aを栓81で封止し、更にプロジェクション溶接等を用いて、栓81を上蓋部材82に固定する。
【0035】
このとき、圧力作動室PAに封入された作動ガスにより、ダイアフラム83は受け部材86側に張り出す形で圧力を受けるため、ダイアフラム83と受け部材86とで囲われる下部空間(弁室側室)LSに配置されたストッパ部材84の上面と当接して支持される。なお、ストッパ部材84の円盤部84bが受け部材86により保持されるので、ストッパ部材84はパワーエレメント8から抜け出ることはない。
【0036】
パワーエレメント8を弁本体2に組み付けるときは、作動棒5を弁本体2内に挿入した後、ストッパ部材84とともにシリンジ部材6を、その下端側から弁本体2内に挿入し、第2穴63bを作動棒5に嵌合させる。さらに、受け部材86の雄ねじ86cを弁本体2の開口部2aの雌ねじに螺合させ、ねじ込むことによりパワーエレメント8を弁本体2に固定する。弁本体2とパワーエレメント8との間は、パッキンPKによりシールされる。かかる状態で、パワーエレメント8の下部空間LSは戻り流路23と連通し、すなわち同じ内圧となる。
【0037】
次に、付勢装置4について説明する。
図1において、付勢装置4は、円形の線材を螺旋状に巻いたコイルばね41と、コイルばね41の上端に取り付けられて弁体3を支持する弁体サポート42と、コイルばね41の下端を支持しつつ弁本体2に取り付けるばね受け部材43と、弁体サポート42とコイルばね41との間に挟持された防振部材44とを有する。ばね受け部材43は弁本体2の弁室VSを密閉するとともに、弁体3を弁座20に向かって付勢するコイルばね41の端部を支持する機能を有する。
【0038】
弁体サポート42の上面には球状の弁体3が溶接され、両者は一体となっている。防振部材44は、例えば径方向に突き出した爪部が弁室VSの内周に弾性的に係合しており、弁体3の振動を抑制する機能を有する。なお、防振部材44については、例えば特開2018-025331号公報に詳細に記載されているため、詳細な説明を省略する。
【0039】
(電磁弁の構造)
次に、
図2、3を参照して、本実施形態の電磁弁EVの構造を説明する。電磁弁EVは、流入路を開きかつ流出路を閉じる状態、及び、流出路を開きかつ流入路を閉じる状態を切り換え可能な第1の弁装置及び第2の弁装置、または駆動部である。流入路と電磁弁EVとで、供給部及び排出部を構成する。電磁弁EVの軸線をOとする。軸線Oは軸線Lに直交する。
【0040】
図2において、弁本体2には、軸線Oに沿って、外部に向かって開口する円形の大開口2eと、大開口2eより小径の中開口2fと、中開口2fより小径の小開口2gとが形成されている。大開口2eの底部と弁室VSとは、入口孔2hにより連通している。また中開口2fの中間位置の内周に、連通孔2dが開口している。さらに、小開口2gの底部と中間通路22aとは、出口孔(接続路ともいう)2jにより連通している。
【0041】
なお、入口孔2h、高圧室HS、中開口2f、連通孔2d、拡径孔26、接続孔62d、及び貫通穴63により、流入路を構成し、接続孔62d及び貫通穴63により第2の孔を構成し、入口孔2hにより第1の流路部を構成し、連通孔2dにより第2の流路部を構成する。
【0042】
また、貫通穴63、接続孔62d、拡径孔26、連通孔2d、中開口2f、小開口2g、及び出口孔2jにより流出路を構成する。また、小開口2g、及び出口孔2jにより、分岐流路を構成し、出口孔2jにより第3の流路部を構成し、高圧室HS、中開口2f、及び小開口2gにより接続室を構成する。中間通路22aが、弁座20よりも下流側の下流路を構成する。
【0043】
図3において、中開口2f内には円筒状の弁座部材112が配置されており、大開口(凹部ともいう)2eの底部に形成された円筒状のカシメ部2iを径方向内側にカシメることによって、中開口2fに固定されている。後述するように、弁座部材112は、接続室内において第1の流路部の開口及び第3の流路部の開口の間に配置されて第1の流路部から第3の流路部への冷媒の流れを防止し、第2の流路部の開口を覆い、第3の流路部の開口との間に隙間を形成するものである。
【0044】
弁座部材112は、軸線Oに沿って延在する貫通円孔(貫通孔ともいう)112aと、軸線O方向における中間位置の外周に全周にわたって形成された周溝112bと、貫通円孔112aと周溝112bとを径方向に連通する径方向孔112cと、小開口2g側の端部に形成された凹部112dとを有する。周溝112bは、連通孔2dに連通している。周溝112bと径方向孔112cが、中継路を構成する。ここで、高圧室HSの一部、弁座部材112の貫通円孔112a、径方向孔112c、及び周溝112bにより、第1連通流路を構成し、弁座部材112の貫通円孔112a、径方向孔112c、周溝112b、及び小開口2gにより、第2連通流路を構成する。
【0045】
弁座部材112の凹部112d内には、環状の第1シール部材SL1が接着等により取り付けられ、また凹部112dと反対側の端部には、環状の第2シール部材SL2が接着等により取り付けられている。第1シール部材SL1と第2シール部材SL2の内径は、貫通円孔112aの内径とほぼ等しい。第1シール部材SL1は、中開口2fと小開口2gとの境界の段部に当接し、第2シール部材SL2は、中開口2fの内周に当接し、これらにより弁座部材112と弁本体2との間をシールする。
【0046】
円柱状の弁軸部材113は、弁座部材112の貫通円孔112a及び第1シール部材SL1と第2シール部材SL2を貫通するように挿入された長軸部(単に軸部ともいう)113aと、貫通円孔112aより大径のフランジ部(鍔部ともいう)113bと、短軸部113cとを有する。長軸部113aの外周と、貫通円孔112a、第1シール部材SL1及び第2シール部材SL2の内周との間には冷媒が通過可能な隙間があり、また弁軸部材113は、弁座部材112に対して軸線O方向に相対移動可能である。具体的には、弁軸部材113は、接続室の前記第1連通流路を介して前記第1の流路部および前記第2の流路部を連通させて、第1の流路部及び第2の流路部の双方と第3の流路部とを非連通とする第2の位置、並びに、接続室の第2連通流路を介して第2の流路部及び第3の流路部を連通させて、第2の流路部及び第3の流路部の双方と第1の流路部とを非連通とする第1の位置の間で移動可能となっている。
【0047】
短軸部113cの周囲において、小開口2gの底部とフランジ部113bの対向面との間に、押しばね(第2の付勢装置ともいう)114が配置され、小開口2gの底部に対して弁軸部材113を大開口2e側に付勢している。電磁弁EV、及び押しばね114により駆動装置を構成する。
【0048】
電磁弁EVは、環状の基部120と、通電励磁用のコイル132と、ヨーク133と、ヨーク133の内周側に配置され軸線O方向に延在するパイプ141と、パイプ141の内周側に軸線O方向に摺動自在に配置されたプランジャ(変位部材)135と、パイプ141の端部内周に固定配置された吸引子140と、これらを覆うように配設されたハウジング138を備えている。
【0049】
基部120の内周にパイプ141の端部が圧入又はロウ付け等により固定されており、基部120の外周に形成された雄ねじ121を、弁本体2の大開口2eの内周に形成された雌ねじ2kに螺合させることで、基部120は、弁本体2に対して固定される。大開口2eの底部と基部120との間には、O-リングOR4が配置され、基部120と弁本体2との間をシールする。これにより基部120と大開口2eとの間には高圧室HSが形成される。高圧室HSは、入口孔2hに連通し、また弁座部材112の貫通円孔112aに連通可能である。
【0050】
吸引子140のパイプ141とは反対側の端面には雌ねじ部142が形成されている。ハウジング138を介在させつつ、取付ボルト137を雌ねじ部142に螺合させることにより、吸引子140とハウジング138とが接合される。ハウジング138は、間座139を介して基部120に固定される。
【0051】
円柱状のプランジャ135は、磁性材料で形成されており、拡径筒部135aと、貫通円孔112aの内径より大径の縮径筒部135bとを連設してなる。縮径筒部135bの端部には円形凹部135cが形成され、弁座部材112から露出した弁軸部材113の長軸部113aの端部をルーズフィットで(すなわち軸線O方向に相対変位可能に)嵌合させている。プランジャ135は、プランジャ135と吸引子140との間に縮装された圧縮コイルばね136により、弁座部材112側に付勢されている。プランジャ135の先端面は、弁軸部材113に当接することで、貫通円孔112aの開口及び接続室を非連通にする面に形成される。
【0052】
(膨張弁の動作)
図1を参照して、膨張弁1が冷凍サイクル100に組み込まれた際の動作例について説明する。冷凍サイクル100におけるコンプレッサ101で加圧された冷媒は、コンデンサ102で液化され、膨張弁1に送られる。また、膨張弁1で断熱膨張された冷媒は冷凍サイクル100のエバポレータ103に送り出され、エバポレータ103の周囲を流れる空気と熱交換される。エバポレータ103から戻る冷媒は、膨張弁1(より具体的には、戻り流路23)を通ってコンプレッサ101側へ戻される。
【0053】
ここで、
図2に示すように電磁弁EVのプランジャ135が第1の位置(後述)にあるものとする。第1の位置では、後述するようにシリンダ室CSの冷媒の圧力が、中間通路22a(及び戻り流路23)の圧力に略等しくなる。それにより、シリンジ部材6に対してストッパ部材84が接近可能となり、したがって作動棒5はダイアフラム83の変形に従って駆動され、膨張弁1は本来の開弁動作を行える。
【0054】
膨張弁1には、コンデンサ102から高圧冷媒が供給される。より具体的には、コンデンサ102からの高圧冷媒は、第1流路21に供給される。
【0055】
弁体3が、弁座20に着座しているときには、弁室VSより上流側の第1流路21と弁室VSより下流側の第2流路22とは、非連通状態である。他方、弁体3が、弁座20から離間しているときには、弁室VSに供給された冷媒は、作動棒挿通孔27及び第2流路22を通って、エバポレータへ送り出される。なお、膨張弁1の閉状態(
図4参照)と開状態(
図2)との間の切り換えは、パワーエレメント8に接続された作動棒5によって行われる。
【0056】
パワーエレメント8の内部には、ダイアフラム83により仕切られた圧力作動室PAと下部空間LSとが設けられている。このため、圧力作動室PA内の作動ガスが液化されると、付勢装置4の付勢力により作動棒5はダイアフラム側に移動し、液化された作動ガスが気化されると、ストッパ部材84を介してパワーエレメント8の駆動力(開弁力)が伝達されて作動棒5は弁体側に移動する。こうして、膨張弁1の開状態と閉状態との間の切り換えが行われる。
【0057】
更に、パワーエレメント8の下部空間LSは、戻り流路23と連通している。このため、戻り流路23を流れる冷媒の温度、圧力に応じて、圧力作動室PA内の作動ガスの相(気相、液相等)が変化し、作動棒5が駆動される。換言すれば、
図1に記載の膨張弁1では、エバポレータから膨張弁1に戻る冷媒の温度、圧力に応じて、膨張弁1からエバポレータに向けて供給される冷媒の量が自動的に調整される。
【0058】
(膨張弁の強制閉弁動作)
次に、電磁弁EVを用いた膨張弁1の強制閉弁動作について説明する。なお、電磁弁EVにおいて、プランジャ135が弁座部材112に対して当接する位置を第1の位置とし、プランジャ135が弁座部材112から離間した位置を第2の位置とする。基部120と弁本体2との間の高圧室HSには、入口孔2hを介して弁室VSから高圧の冷媒が供給されている。
【0059】
外部の給電装置からコイル132に給電が行われると、
図4に示すように、圧縮コイルばね136の付勢力に抗して、プランジャ135が弁座部材112から離間する方向に付勢されて移動する。これにより、プランジャ135の端部が第2シール部材SL2から離間し、また押しばね114の付勢力により弁軸部材113のフランジ部113bが第1シール部材SL1に当接して、電磁弁EVのプランジャ135は第2の位置となる。
【0060】
かかる第2の位置では、高圧室HSの冷媒の圧力は、弁座部材112の貫通円孔112aから、径方向孔112c、周溝112b、連通孔2d、均圧室EC、接続孔62d、作動棒5と第2穴63bとの隙間、および貫通穴63を介してシリンダ室CSに伝達される。
【0061】
シリンジ部材6の円盤基部61を挟んでシリンダ室CSと反対側は、低圧の冷媒が通過する戻り流路(低圧空間)23に面している。シリンダ室CSが高圧になると、戻り流路23内の冷媒の圧力との差圧により、シリンダ室CSが拡張しようとする。これに対し、シリンジ部材6の軸部62の下端は、拡径孔26と中径孔29との段部26aに当接した状態に維持されるため、シリンダ室CSが高圧になることにより、ストッパ部材84が相対的に上方に押し上げられる。これにより作動棒5を下方に押し下げるストッパ部材84の駆動力の伝達が中断されるため、弁体3が付勢装置4の付勢力で上方に付勢されて弁座20に着座し、圧力作動室PAと下部空間LSとの圧力差にかかわらず、強制的な閉弁状態が維持される。
【0062】
なお、シリンダ室CS内が高圧になることで、ストッパ部材84を介してダイアフラム83が押圧される上向きの力が付与されるが、同時に円盤基部61を下方に向かって押圧する下向きの力も付与される。かかる下向きの力は係止部材85により支持され、それによりストッパ部材84を上方に付勢する上向きの力がキャンセルされるため、ダイアフラム83が変形するなどの影響を回避できる。
【0063】
一方、外部の給電装置からコイル132に給電しないとき、
図2に示すように、圧縮コイルばね136の付勢力により、プランジャ135が弁座部材112に近接する方向に付勢されて移動する。これにより、プランジャ135の端部が第2シール部材SL2に当接し、また弁軸部材113のフランジ部113bが第1シール部材SL1から離間して、電磁弁EVのプランジャ135は第1の位置となる。
【0064】
このとき、プランジャ135の端部が第2シール部材SL2に当接するため、高圧室HS内の冷媒が貫通円孔112aを通過して中間通路22aに漏れ出ることが抑制され、冷凍サイクル100の動作に影響を与えることがない。
【0065】
弁軸部材113のフランジ部113bが第1シール部材SL1から離間した直後においては、シリンダ室CSの内部圧力は、中間通路22a内の冷媒の圧力より高くなっている。このため第1の位置では、中間通路22a内の圧力が、出口孔2j、小開口2g、貫通円孔112a、径方向孔112c、周溝112b、連通孔2d、均圧室EC、接続孔62d、作動棒5と第2穴63bとの隙間、及び貫通穴63を介して、シリンダ室CSに伝達され、シリンダ室CSの冷媒の圧力は、迅速に中間通路22a(及び戻り流路23)の圧力に略等しくなるよう低下する。それにより、ストッパ部材84を押し上げる力が消失し、作動棒5の上端に対してダイアフラム83からの押圧力を伝達可能となり、強制的な閉弁状態が解除される。
【0066】
このとき、プランジャ135が第2のシールSL2に当接しているため、高圧室HSから貫通円孔112aを通って小開口2g側に冷媒が漏れ出ることが抑制され、均圧室EC及びシリンダ室CSの内部圧力は低圧に維持されたままとなる。このため膨張弁1の通常の開弁動作を実行できる。
【0067】
本実施形態によれば、電磁弁EVへの給電により、コンデンサ102から供給される高圧の冷媒をシリンダ室CSに導入してストッパ部材84を押し上げることができ、それにより圧力作動室PA内の圧力にかかわらず膨張弁1の強制閉弁機能を実現できる。このとき、コンデンサ102からの冷媒が、電磁弁EVを通過することなく、直接、弁室VSに導入されるため圧損等を抑制することができる。
【0068】
さらに、電磁弁EVへの給電中断により、シリンダ室CSと中間通路22aとを連通させることで、シリンダ室CSの内圧を迅速に低下させることができるため、シリンダ室CSからストッパ部材84に対する押し上げ力を迅速に消失させ、ダイアフラム83からストッパ部材84を介して作動棒5への押圧力の伝達を再開することで、膨張弁1の本来の開弁動作を行える。
【0069】
コンデンサ102から供給される高圧冷媒の圧力は、条件に応じて変化するため、通常の開閉弁動作を実行するために高圧冷媒を用いると、通常の開閉弁動作が不安定になる恐れがある。これに対し本実施形態によれば、強制閉弁動作を実行するために高圧冷媒を用いることで、通常の開閉弁動作を安定して実行できるというメリットがある。
【0070】
さらに、弁本体2に対して、天然樹脂又は合成樹脂製である第2のO-リングOR2を介してシリンジ部材6が支持され、また天然樹脂又は合成樹脂製である第3のO-リングOR3を介して作動棒5が支持されている。したがって、仮にシリンジ部材6や作動棒5に振動が生じた場合でも、第2のO-リングOR2と第3のO-リングOR3のダンピング機能により、その振動を抑制することができる。
【0071】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態における膨張弁1Aの開弁状態を示す概略断面図であり、
図6は、第2の実施形態における膨張弁1Aの閉弁状態を示す縦断面図であり、それぞれ膨張弁1Aが接続された冷凍サイクル100Aを模式的に示す。
【0072】
本実施形態においては、第1の実施形態に対して、電磁弁の代わりに冷凍サイクル100Aに分岐配管を追加して開閉弁を配設している。このため、分岐配管に加えて弁本体2Aの構成が上述した実施の形態に対して異なっており、またシリンジ部材6Aは、排出部としての孔6eを備える。それ以外の構成は第1の実施形態と同様であるため、共通する構成には同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0073】
本実施形態の冷凍サイクル100Aにおいて、コンデンサ102から膨張弁1Aの弁室VSに向かう配管から分岐して、膨張弁1Aの配管基部105Aに向かう分岐配管(弁室より上流側の外部流路部に接続され、前記弁室より上流側の冷媒をシリンダ室に流入する流入路)DPが配設され、分岐配管DPには開閉弁(弁装置)VLが取り付けられている。開閉弁VLは、分岐配管DPを開放する開放位置と、閉止する閉止位置とに選択的に動作可能である。前記流入路と開閉弁VLとで供給部及び排出部を構成する。それ以外の構成は、第1の実施形態の冷凍サイクルと同様である。
【0074】
連通孔2dが、弁本体2Aの均圧室ECと大開口2Aeの端部外周とを連通する。大開口2Aeには、配管基部105Aが取り付けられている。配管基部105Aの外周に形成された雄ねじを、弁本体2Aの大開口2Aeの内周に形成された雌ねじに螺合させることで、配管基部105Aは、弁本体2Aに対して固定される。大開口2Aeと配管基部105Aとの間には、パッキンPKが配置され、配管基部105Aと弁本体2Aとの間をシールする。これにより配管基部105Aと大開口2Aeとの間には、高圧室HSが形成される。
【0075】
配管基部105Aは、開閉弁VLを介して分岐配管DPに接続される配管部105Aaを有している。高圧室HSは、配管基部105Aの内部流路及び配管部105Aaを介して分岐配管DPに連通し、また連通孔2dを介して均圧室ECに連通しているが、弁室VSに連通していない。それ以外の構成は、第1の実施形態の膨張弁と同様である。
【0076】
シリンジ部材6Aは、シリンダ室CSの圧力を、弁室VSより下流側に逃がす孔6eを有している。孔6eは、例えば、シリンジ部材6Aの軸部62に形成されている。孔6eは、貫通穴63と戻り流路23とを連通する。孔6eは、強制閉弁を行うとき以外の膨張弁1Aの通常使用時には、シリンダ室CSの排圧を行うことで作動棒5により弁体3を駆動することを可能とし、かつ、強制閉弁する際にはシリンダ室CS内の圧力を十分保つことですみやかに強制閉弁ができる大きさに設定されている。
【0077】
なお、本実施形態では、孔6eは、一例として1つ形成されているが、孔6eの数は1つに限定されるものではなく、複数であってもよい。また、孔6eの形状は、例えば平面形状が円となる孔であるが、孔6eの形状は限定されない。孔6eは、スリット、平面形状が一方向に長い長孔等であってもよい。
【0078】
次に、開閉弁VLを用いた膨張弁1Aの強制閉弁動作について説明する。なお、開閉弁VLにおいて、分岐配管DPを開放する位置を第2の位置とし、分岐配管DPを遮蔽する位置を第1の位置とする。
【0079】
開閉弁VLを第2の位置(開放位置)とすると、分岐配管DP内の高圧冷媒が配管部105Aaを介して高圧室HSに供給され、高圧室HSの冷媒の圧力は連通孔2d、均圧室EC、接続孔62d、及び貫通穴63を介してシリンダ室CSに伝達され、シリンダ室CSの内部圧力を高圧とする。
【0080】
シリンダ室CSが高圧になると、上述したように、シリンジ部材6Aの軸部62の下端が、拡径孔26と中径孔29との段部26aに当接した状態(円盤基部61がストッパ部材84の円盤部84bから離間して弁本体2Aに突き当たる突き当て位置)で、シリンダ室CSが高圧になることにより、ストッパ部材84が相対的に上方に押し上げられる(
図6)。これにより作動棒5を下方に押し下げるストッパ部材84の駆動力の伝達が中断されるため、弁体3が付勢装置4の付勢力で上方に付勢されて弁座20に着座し、圧力作動室PAと下部空間LSとの圧力差にかかわらず、強制的な閉弁状態が維持される。
【0081】
一方、開閉弁VLを第1の位置(閉止位置)とすると、分岐配管DP内の冷媒の高圧が高圧室HSに伝達されなくなり、シリンダ室CS内の冷媒の一部が、軸部62に形成された孔6eから徐々に戻り流路23内へと流れ出る。これによりシリンダCSの内部圧力が低下するため、ストッパ部材84を押し上げる力が消失し、円盤基部61がストッパ部材84の円盤部84bに当接した当接位置となって(
図5)、作動棒5の上端に対してダイアフラム83からの押圧力を伝達可能となり、強制的な閉弁状態が解除される。
【0082】
本実施形態によれば、開閉弁VLを第2の位置に動作させることにより、コンプレッサ101から供給される高圧の冷媒をシリンダ室CSに導入し、それによりダイアフラム83から作動棒5への駆動力伝達を中断して、膨張弁1の強制閉弁動作を確保することができる。
【0083】
これに対し、開閉弁VLを第1の位置に動作させることより、シリンダ室CSの圧力を低下させることができ、それによりダイアフラム83から作動棒5への駆動力伝達を再開して、パワーエレメント8の動作に応じた本来の膨張弁1の開閉弁動作を実現できる。本実施形態によれば、コンデンサ102からの冷媒が、開閉弁VLを通過することなく、直接、弁室VSに導入されるため圧損等を抑制することができる。
【0084】
なお、分岐配管DPに開閉弁VLを設ける代わりに、コンデンサ102からの配管途中に三方切換弁を設け、その三方切換弁により、コンデンサ102からの高圧冷媒を、分岐配管DPを介して高圧室HSに向かう流路と、弁室VSに向かう流路とに選択的に切り替えて送出することもできる。
【0085】
かかる場合、三方切換弁により分岐配管DPを介して高圧室HSに高圧冷媒を送出することにより、シリンダ室CSの内圧を高圧にするため強制閉弁動作を実現でき、また三方切換弁により弁室VSに高圧冷媒を送出することで、本来の膨張弁の動作を実現できる。
【0086】
この例では、三方切換弁を介して、高圧室HSへの流路と弁室VSへの流路とを切り換えるものであるが、他の例では、分岐配管DPに配設した開閉弁VLに代えて三方切換弁を設けることにより、コンデンサ102と高圧室HSとをつなぐ流路と、高圧室HSとエバポレータ103の入り口側とをつなぐ流路とを選択的に切り換えるようにしてもよい。三方切換弁を介して高圧室HSとエバポレータ103の入り口側とをつなぐことで、シリンダ室CSの圧力を迅速に低下させることができる。この変形例によれば、シリンジ部材6Aに孔6eを形成する必要がない。なお、高圧室HSとエバポレータ103の入り口側をつなぐ流路は、例えば、高圧室HSと第2流路22とをつなぐ流路や、高圧室HSと中間通路22aとをつなぐ流路がある。
【0087】
(第1の変形例)
図7は、第1の変形例にかかる膨張弁1Bの
図6と同様な縦断面図であり、模式的に示す冷凍サイクル100A内に設置された状態を示す。
本実施形態の膨張弁1Bにおいては、第2の実施形態に対して、弁本体2Bおよびシリンジ部材6Bの形状のみが異なり、それ以外の構成は第2の実施形態と同様であるため、共通する構成には同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0088】
弁本体2Bは、第2の実施形態に対して、O-リングを収容する中径孔の代わりに、均圧室ECを形成する均圧孔29Bを、連通孔2dに接続するようにして、拡径孔26と中央孔28との間に形成している。中央孔28と作動棒5との間にクリアランスが形成される。強制閉弁の為の高圧供給時においても、後述するように高圧流体が該クリアランスを介して流出するが、このクリアランスは、シリンダ室CS内の圧力を強制閉弁できる圧力に保つことができる量である。それ以外の弁本体2Bの構成は、第2の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0089】
シリンジ部材6Bは、軸部62Bの形状が異なり、円盤基部61は第2の実施形態と同様である。軸部62Bは、均一な内径の貫通穴63Bのみを有し、O-リングを収容する外周の周溝や、内外を連通する孔を有しない。軸部62Bの下端は、拡径孔26と均圧孔29Bとの段部26aに当接している。それ以外のシリンジ部材6Bの構成は、上述した実施の形態と同様である。
【0090】
本変形例において、開閉弁VLを第2の位置(開放位置)とすると、
図7に示すように、分岐配管DP内の高圧冷媒が配管部105Aaを介して高圧室HSに供給され、高圧室HSの冷媒の圧力は連通孔2d、均圧室EC、及び貫通穴63Bを介してシリンダ室CSに伝達され、シリンダ室CSの内部圧力を高圧とする。これにより、作動棒5を下方に押し下げるストッパ部材84の駆動力の伝達が中断されるため、弁体3が付勢装置4の付勢力で上方に付勢されて弁座20に着座し、圧力作動室PAと下部空間LSとの圧力差にかかわらず、強制的な閉弁状態が維持される。
【0091】
一方、開閉弁VLを第1の位置(閉止位置)とすると、分岐配管DP内の冷媒の高圧が高圧室HSに伝達されなくなり、シリンダ室CS内の冷媒の一部が、貫通穴63B,中央孔28と作動棒5との隙間を介して、中間通路22a内へと流れ出る。これによりシリンダCSの内部圧力が低下するため、ストッパ部材84を押し上げる力が消失し、作動棒5の上端に対してダイアフラム83からの押圧力を伝達可能となり、強制的な閉弁状態が解除される。
【0092】
本変形例によれば、O-リングを省略できるので、組立性が向上し、コスト低減を図れる。
【0093】
(第2の変形例)
図8は、第2の変形例にかかる膨張弁1Cの
図6と同様な縦断面図であり、模式的に示す冷凍サイクル100A内に設置された状態を示す。
本変形例の膨張弁1Cにおいては、第2の実施形態に対して、弁本体2Cおよびシリンジ部材6Cの形状のみが異なり、それ以外の構成は第2の実施形態と同様であるため、共通する構成には同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0094】
弁本体2Cは、第2の実施形態に対して、開口部(シリンジ部材6Cを移動可能に配置する孔)2Caの内径よりも連通路2Cbの内径が小さく、このため開口部2Caと連通路2Cbとの間に段部(開口部2Caの内部空間の底面)2Cmが形成される。それ以外の弁本体2Cの構成は、第2の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0095】
シリンジ部材6Cは、上端側の円盤基部(単に基部ともいう)61Cと、下端側の軸部(シリンジ部材用軸部ともいう)62Cとを同軸に連設してなり、上端側から下端まで貫通する貫通穴63Cを有する。貫通穴63Cは、上端側の第1穴63Caと、下端側の第2穴63Cbとを有する。円盤基部61Cは、例えば、上部に対して下部が小径となる形状を有しており、この小径となる部分を中間部64Cとする。軸部62Cの他端となる中間部64cと段部2Cm、または円盤基部61Cと前記円盤基部61Cに対向する弁本体2Cの面が、移動規制部を構成する。第2穴63Cbは、第1穴63Caよりも内径が小さくなっており、作動棒5の外周に摺動可能に嵌合する。第2穴63Cbと作動棒5との間にクリアランスが形成される。該クリアランスは、これを介して高圧流体が均圧室ECからシリンダ室CSに流れることができる量に設定される。
【0096】
円盤基部61Cは、パワーエレメント8の中空であるストッパ部材84の円筒凹部84a内に収容されている。円盤基部61Cの外周には第1周溝61Caが形成され、その内部に第1のO-リングOR1が配置されており、円筒凹部84aと円盤基部61Cとの間をシールする。
【0097】
円盤基部61Cに隣接する中間部64Cは、環状の係止部材85を貫通し、その下端が開口部2Caの段部2Cmに当接可能となっている。
【0098】
軸部62Cの下端近傍における外周には、第2周溝62Caが形成され、その内部に第2のO-リングOR2が配置されており、弁本体2Cの拡径孔26と軸部62Cとの間をシールする。軸部62Cは、拡径孔26に対して摺動可能に嵌合する。
【0099】
第2周溝62Caより下方における軸部62Cの下端に、細径部62Cbが形成されており、中径孔29内に収容された第3のO-リングOR3に対向している。細径部62Cbと拡径孔26との間が均圧室ECとなる。シリンジ部材6Cの中間部64Cの下端が、開口部2Caの段部2Cmに当接した状態で、細径部62Cbの下端が第3のO-リングOR3に接しないと好ましい。また、軸部62Cの内外を連通する孔6eが形成されている。
【0100】
本変形例において、開閉弁VLを第2の位置(開放位置)とすると、
図8に示すように、分岐配管DP内の高圧冷媒が配管部105Aaを介して高圧室HSに供給され、高圧室HSの冷媒の圧力は連通孔2d、均圧室EC、第2穴63Cbと作動棒5との隙間、及び貫通穴63Cを介してシリンダ室CSに伝達される。シリンジ部材6Cの中間部64Cの下端が、開口部2Caの段部2Cmに当接した状態で、シリンダ室CSの内部圧力を高圧とすることにより、作動棒5を下方に押し下げるストッパ部材84の駆動力の伝達が中断されるため、弁体3が付勢装置4の付勢力で上方に付勢されて弁座20に着座し、圧力作動室PAと下部空間LSとの圧力差にかかわらず、強制的な閉弁状態が維持される。
【0101】
一方、開閉弁VLを第1の位置(閉止位置)とすると、分岐配管DP内の冷媒の高圧が高圧室HSに伝達されなくなり、シリンダ室CS内の冷媒の一部が、軸部62Cに形成された孔6eから徐々に戻り流路23内へと流れ出る。これによりシリンダCSの内部圧力が低下するため、ストッパ部材84を押し上げる力が消失し、作動棒5の上端に対してダイアフラム83からの押圧力を伝達可能となり、強制的な閉弁状態が解除される。
【0102】
ここで、第2の実施形態においては、強制閉弁動作を実現するために、軸部62の下端が、拡径孔26と中径孔29との段部26aに当接した状態で、円盤基部61がストッパ部材84の円盤部84bの下面から離間した状態となるように、シリンジ部材6の軸線方向寸法が設定されている。このため、比較的長いシリンジ部材6の全長、および弁本体2Cの上端から拡径孔26と中径孔29との段部26aまでの寸法を管理する必要が生じ、その手間がかかる。
【0103】
これに対し、本変形例によれば、強制閉弁動作を実現するために、シリンジ部材6Cの上端に比較的近い中間部64C、および弁本体2Cから開口部2Caの段部2Cmまでの寸法を管理すれば足り、それにより製造容易性を向上できる。
【0104】
(第3の変形例)
図9は、第3の変形例にかかる膨張弁1Dの
図6と同様な縦断面図であり、模式的に示す冷凍サイクル100A内に設置された状態を示す。
本変形例の膨張弁1Dにおいては、第2の変形例に対して、パワーエレメント8D、およびシリンジ部材6Dの形状が異なり、それ以外の構成は弁本体2Aを含めて第2の実施形態と同様であるため、共通する構成には同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0105】
パワーエレメント8Dは、第2の実施形態に対して、ストッパ部材84Dおよび受け部材86Dの形状のみが異なり、栓81、上蓋部材82、およびダイアフラム83については第2の実施形態と同様であるため、共通する構成には同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0106】
受け部材86Dは、上蓋部材82に対して外周を溶接される環状の第1フランジ部86Daと、第1フランジ部86Daの内縁に接続されて下方に延在する第1円筒部86Dbと、第1円筒部86Dbの下端に接続されて径方向内方に向かう環状の第2フランジ部86Dcと、第2フランジ部86Dcの内縁に接続されて下方に延在する第2円筒部86Ddとを有する。第2円筒部86Ddの外周に、開口部2aの内周に形成された雌ねじに螺合する雄ねじ86Deが形成されている。
【0107】
シリンジ部材6Dは、上端側の円盤基部(単に基部ともいう)61Dと、下端側の軸部(シリンジ部材用軸部ともいう)62Dとを同軸に連設してなり、上端側から下端まで貫通する貫通穴63Dを有する。本実施形態では一例として、円盤基部61Dは、上部に比較して下部が小径となる形状に形成される。小径に形成される部分を中間部64Dとする。本変形例では、円盤基部61Dと、円盤基部61Dの一部を構成する中間部64Dに当接する第2フランジ部86Dcが、シリンジ部材6Dの弁室VS側への移動を規制する移動規制部を構成する。貫通穴63Dは、上端側の第1穴63Daと、下端側の第2穴63Dbとを有する。第2穴63Dbは、第1穴63Daよりも内径が小さくなっており、作動棒5の外周に摺動可能に嵌合する。第2穴63Dbと作動棒5との間にクリアランスが形成される。該クリアランスは、これを介して高圧流体が均圧室ECからシリンダ室CSに流れることができる量に設定される。
【0108】
円盤基部61Dは、パワーエレメント8Dのストッパ部材84Dの円筒凹部84Da内に収容されている。円盤基部61Dの外周には第1周溝61Daが形成され、その内部に第1のO-リングOR1が配置されており、円筒凹部84Daと円盤基部61Dとの間をシールする。
【0109】
円盤基部61Dに隣接する中間部64Dは、環状の係止部材85を貫通し、その下端がパワーエレメント8Dの受け部材86Dの第2フランジ部86Dcの上面に当接可能となっている。
【0110】
軸部62Dの下端近傍における外周には、第2周溝62Daが形成され、その内部に第2のO-リングOR2が配置されており、弁本体2Aの拡径孔26と軸部62Dとの間をシールする。軸部62Dは、拡径孔26に対して摺動可能に嵌合する。
【0111】
第2周溝62Daより下方における軸部62Dの下端に、細径部62Dbが形成されており、中径孔29内に収容された第3のO-リングOR3に対向している。細径部62Dbと拡径孔26との間が均圧室ECとなる。シリンジ部材6Dの中間部64Dの下端が、受け部材86Dの第2フランジ部86Dcの上面に当接した状態で、細径部62Cbの下端が第3のO-リングOR3に接することなく、円盤基部61Dの弁室側端面はストッパ部材84Dの弁室側端面より弁室側に位置すると好ましい。また、軸部62Dの内外を連通する孔6eが形成されている。
【0112】
ストッパ部材84Dは、円盤部84Dbと、円盤部84Dbの外周縁に接続されて下方に延在する円管部84Dcとを有する。円管部84cの内側が円筒凹部84aとなっている。円管部84Dcの下端内周段部には、環状の係止部材85が取り付けられている。シリンジ部材6Dの円盤基部61Dを円筒凹部84Daに挿入した後に、係止部材85の外周に配設された円管部84Dcの下端のカシメ部84Ddを径方向内側にカシメることで、係止部材85が円管部84Dcに取り付けられ、それによりストッパ部材84Dからの円盤基部61Dの抜け止めがなされる。円盤基部61Dは、軸部62Dの移動方向に第2フランジ部86Dcと対向する(突き当たる)寸法を有する。
【0113】
本変形例において、開閉弁VLを第2の位置(開放位置)とすると、
図9に示すように、分岐配管DP内の高圧冷媒が配管部105Aaを介して高圧室HSに供給され、高圧室HSの冷媒の圧力は連通孔2d、均圧室EC、第2穴63Dbと作動棒5との隙間、及び貫通穴63Dを介してシリンダ室CSに伝達される。シリンジ部材6Dの中間部64Dの下端が、受け部材86Dの第2フランジ部86Dcの上面に当接した状態(突き当て位置)で、シリンダ室CSの内部圧力を高圧とすることにより、作動棒5を下方に押し下げるストッパ部材84Dの駆動力の伝達が中断されるため、弁体3が付勢装置4の付勢力で上方に付勢されて弁座20に着座し、圧力作動室PAと下部空間LSとの圧力差にかかわらず、強制的な閉弁状態が維持される。
【0114】
一方、開閉弁VLを第1の位置(閉止位置)とすると、分岐配管DP内の冷媒の高圧が高圧室HSに伝達されなくなり、シリンダ室CS内の冷媒の一部が、軸部62Dに形成された孔6eから徐々に戻り流路23内へと流れ出る。これによりシリンダCSの内部圧力が低下するため、ストッパ部材84Dを押し上げる力が消失し、作動棒5の上端に対してダイアフラム83からの押圧力を伝達可能となり、強制的な閉弁状態が解除される。
【0115】
本変形例によれば、プレス成形にて安価に形成できる受け部材86に、シリンジ部材6Dの中間部64Dを当接させることができ、それにより弁本体側の加工を減らして、コスト低減を実現できる。
【0116】
(第4の変形例)
図10は、第4の変形例にかかる膨張弁1Eの
図6と同様な縦断面図であり、模式的に示す冷凍サイクル100A内に設置された状態を示す。
本変形例の膨張弁1Eにおいては、第2の実施形態に対して、弁本体2E,パワーエレメント8E、およびシリンジ部材6Eの形状が異なり、それ以外の構成は第2の実施形態と同様であるため、共通する構成には同じ符号を付して重複説明を省略する。他の実施形態および変形例においては、シリンジ部材がストッパ部材の内部に配置されているが、本変形例においては、ストッパ部材84Eがシリンジ部材6Eの内部に配置されている。
【0117】
弁本体2Eは、第2の実施形態に対して、開口部2Eaの内径よりも連通路2Ebの内径が小さく、このため開口部2Eaと連通路2Ebとの間に段部2Emが形成される。それ以外の弁本体2Eの構成は、第2の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0118】
パワーエレメント8Eは、第2の実施形態に対して、ストッパ部材84Eの形状のみが異なり、栓81、上蓋部材82、ダイアフラム83、および受け部材86については第2の実施形態と同様であるため、共通する構成には同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0119】
円柱状のストッパ部材84Eは、拡径円柱部84Eaと、拡径円柱部84Eaより小径の小径円柱部84Ebとを有する。拡径円柱部84Eaの外周には周溝84Edが形成され、その内部に第1のO-リングOR1が配置されている。
【0120】
シリンジ部材6Eは、上端側の円管基部(単に基部ともいう)61Eと、下端側の軸部(シリンジ部材用軸部ともいう)62Eとを、環状の中間部64Eを介して同軸に連設してなる。本変形例では、円管基部61Eの一部を構成する中間部64Eに当接する開口部2Ebの周囲面が、シリンジ部材6Eの弁室VS側への移動を規制する移動規制部を構成する。軸部62Eには、上端側から下端まで貫通する貫通穴63Eを有する。貫通穴63Eは、上端側の第1穴63Eaと、下端側の第2穴63Ebとを有する。第2穴63Ebは、第1穴63Eaよりも内径が小さくなっており、作動棒5の外周に摺動可能に嵌合する。第2穴63Ebと作動棒5との間にクリアランスが形成される。該クリアランスは、これを介して高圧流体が均圧室ECからシリンダ室CSに流れることができる量に設定される。
【0121】
円管基部61Eの内周に対して、ストッパ部材84Eの拡径円柱部84Eaが摺動可能に嵌合しており、第1のO-リングOR1が、ストッパ部材84Eと円管基部61Eとの間をシールする。
【0122】
円管基部61Eの上端内周段部には、環状の係止部材85が取り付けられている。ストッパ部材84Eの拡径円柱部84Eaを円管基部61Eに挿入した後に、係止部材85の外周に配設された円管基部61Eの上端のカシメ部61Eaを径方向内側にカシメることで、係止部材85がシリンジ部材6Eに取り付けられ、それによりシリンジ部材6Eからのストッパ部材84Eの抜け止めがなされる。
【0123】
軸部62Eの下端近傍における外周には、第2周溝62Eaが形成され、その内部に第2のO-リングOR2が配置されており、弁本体2Eの拡径孔26と軸部62Eとの間をシールする。軸部62Eは、拡径孔26に対して摺動可能に嵌合する。
【0124】
第2周溝62Eaより下方における軸部62Eの下端に、細径部62Ebが形成されており、中径孔29内に収容された第3のO-リングOR3に対向している。細径部62Ebと拡径孔26との間が均圧室ECとなる。シリンジ部材6Eの中間部64Eの下面が、開口部2aと連通路2bとの段部に当接した状態で、細径部62Ebの下端が第3のO-リングOR3に接しないと好ましい。また、軸部62Eの内外を連通する孔6eが形成されている。
【0125】
本変形例において、開閉弁VLを第2の位置(開放位置)とすると、
図10に示すように、分岐配管DP内の高圧冷媒が配管部105Aaを介して高圧室HSに供給され、高圧室HSの冷媒の圧力は連通孔2d、均圧室EC、第2穴63Ebと作動棒5との隙間、及び貫通穴63Eを介してシリンダ室CSに伝達される。シリンジ部材6Eの中間部64Eの下面が、開口部2Eaと連通路2Ebとの段部2Emに当接した状態で、シリンダ室CSの内部圧力を高圧とすることにより、作動棒5を下方に押し下げるストッパ部材84Eの駆動力の伝達が中断されるため、弁体3が付勢装置4の付勢力で上方に付勢されて弁座20に着座し、圧力作動室PAと下部空間LSとの圧力差にかかわらず、強制的な閉弁状態が維持される。
【0126】
一方、開閉弁VLを第1の位置(閉止位置)とすると、分岐配管DP内の冷媒の高圧が高圧室HSに伝達されなくなり、シリンダ室CS内の冷媒の一部が、軸部62Eに形成された孔6eから徐々に戻り流路23内へと流れ出る。これによりシリンダCSの内部圧力が低下するため、ストッパ部材84Eを押し上げる力が消失し、作動棒5の上端に対してダイアフラム83からの押圧力を伝達可能となり、強制的な閉弁状態が解除される。
【0127】
(第5の変形例)
図11は、第5の変形例にかかる膨張弁1Fの
図6と同様な縦断面図であり、模式的に示す冷凍サイクル100A内に設置された状態を示す。
本変形例の膨張弁1Fにおいては、第2の実施形態に対して、弁本体2F、およびシリンジ部材6Fの形状が異なり、それ以外の構成は第2の実施形態と同様であるため、共通する構成には同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0128】
本変形例は、第2の実施形態の変形例として、シリンダ室CS内の排圧に用いる専用の流路及び開閉弁を用いるものである。
【0129】
弁本体2Fにおいて、均圧室ECと外部とを連通する排出路EXを形成しており、この排出路EXの外方端が、第2の開閉弁(第2の弁装置)VL2及び配管(外部流路部ともいう)HTを介してエバポレータ103の入口側に接続されている。なお、本変形例では、排出路EXが流出路に含まれる。それ以外の構成は、シリンジ部材6Fが孔6eを有しないことを除き、
図5に示す実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0130】
膨張弁1Fにおいて、第2の開閉弁VL2を閉止しつつ、開閉弁VLを開放することで、均圧室EC内に高圧の冷媒が導入され、それにより強制閉弁動作を実現できる。一方、開閉弁VLを閉止しつつ、第2の開閉弁VL2を開放することで、均圧室ECから排出路EX及び配管HTを介して、エバポレータ103に冷媒が流れることとなるため、通常の膨張弁1Fの動作を実現できる。
【0131】
本変形例によれば、均圧室ECから排出路EX及び配管HTを介して迅速に冷媒を流出させることができ、膨張弁1Fを強制閉弁動作から通常動作へスムーズに移行させることができる。
【0132】
(第6の変形例)
図12は、第6の変形例にかかる冷凍サイクル100Gにおける膨張弁1Gの
図6と同様な縦断面図である。
本変形例の膨張弁1Gにおいては、第2の実施形態に対して、配管部105Aaと、エバポレータ103の入口側とを接続する第2の配管HT2と、第2の配管HT2を開閉する第2の開閉弁VL2とを設けた点が異なり、それ以外の構成は第2の実施形態と同様であるため、共通する構成には同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0133】
本変形例においては、第2の開閉弁VL2を閉止しつつ、開閉弁VLを開放することで、高圧室HSを介して均圧室EC内に高圧の冷媒が導入され、それにより強制閉弁動作を実現できる。一方、開閉弁VLを閉止しつつ、第2の開閉弁VL2を開放することで、均圧室ECから高圧室HS及び第2の配管HT2を介して、エバポレータ103に冷媒が流れることとなる。
【0134】
なお、第1の実施形態、第2の実施形態、及び各変形例では、ストッパ部材84、84D、84Eに対するシリンジ部材6、6A,6B、6C、6D,6E,6Fの移動を規制する係止部材85がストッパ部材84、84D、84Eに設けられる例が説明された。他の例では、係止部材85は、シリンジ部材6、6A,6B、6C、6D,6E,6Fに設けられてもよい。係止部材85がシリンジ部材6、6A,6B、6C、6D,6E,6Fに設けられる構成の一例としては、係止部材85がシリンジ部材6、6A,6B、6C、6D,6E,6Fの外周部に設けられ、ストッパ部材84、84D、84Eに係止部材85に当接する凸部を設けてもよい。この凸部が係止部材85に当接することで、シリンジ部材6、6A,6B、6C、6D,6E,6Fがストッパ部材84、84D、84Eに対してそれ以上移動することが防止される。
【0135】
なお、係止部材85は、シリンジ部材6、6A,6B、6C、6D,6E,6Fと別体に設けられてシリンジ部材に固定されることに限定されない。他の例では、係止部材85はシリンジ部材6、6A,6B、6C、6D,6E,6Fと一体に形成されてもよい。ここで言う一体とは、ストッパ部材及び係止部材が1つの部材として形成されることである。すなわち、シリンジ部材6、6A,6B、6C、6D,6E,6Fの一部が、係止部材85を構成してもよい。係止部材85がストッパ部材84、84D、84Eに設けられる構成においても同様であり、係止部材85がストッパ部材84、84D、84Eと一体に形成されてもよい。
【0136】
本明細書は、以下の発明の開示を含む。
(第1の態様)
弁室及び弁座を有する弁本体と、
前記弁本体に設けられ、変位可能な変位部を有するパワーエレメントと、
前記弁室内に配置される弁体と、
前記弁体を前記弁座に向かって付勢する第1の付勢装置と、
前記弁本体に設けられ前記変位部及び前記弁体との間に配置され、前記変位部の変位を受けて前記弁体を駆動する作動棒と、
前記弁本体に設けられ、前記作動棒の一部を移動可能に内部に収容し、かつ前記変位部との間に、前記弁体の移動方向に伸縮可能なシリンダ室を構成するシリンジ部材と、
前記シリンジ部材の前記弁室側への移動を規制する移動規制部と、
前記シリンダ室に、前記弁室内の流体または前記弁室より上流側の流体を供給する供給部と、を備える、
ことを特徴とする膨張弁。
【0137】
(第2の態様)
前記シリンダ室内の圧力を、前記弁室より下流側に排圧する排出部を備えることを特徴とする第1の態様の膨張弁。
【0138】
(第3の態様)
前記供給部は、
前記弁本体に形成され、前記弁室内の前記流体または前記弁室より上流側の流体を前記シリンダ室に流入する流入路と、
前記流入路に設けられ、前記シリンダ室への前記流体の流入を制御する第1の弁装置と、
を備え、
前記排出部は、前記シリンダ室内の前記流体を前記弁室より下流側に流出する流出路を備え、
前記流出路は、前記流入路の一部、並びに、当該一部から分岐して当該一部及び前記弁室より下流側を連通する分岐流路を備え、
前記第1の弁装置は、第2の弁装置を兼ね、前記流入路を開きかつ前記流出路を閉じる状態、及び、前記流出路を開きかつ前記流入路を閉じる状態を切り換え可能に構成される、
ことを特徴とする第2の態様の膨張弁。
【0139】
(第4の態様)
前記流入路は、
前記弁本体に形成され、前記シリンジ部材の前記弁室側の部位が配置される第1の孔と、
前記シリンジ部材に形成され、前記第1の孔及び前記シリンダ室を連通する第2の孔と、
前記弁本体に形成され、前記弁室または前記弁室より上流側に連通する第1の流路部と、
前記弁本体に形成され、前記第1の孔に連通する第2の流路部と、
前記弁本体に形成され、前記第1の流路部及び前記第2の流路部に接続される接続室と、
を備え、
前記流出路は、
前記第2の流路部、前記接続室、並びに、前記弁室より下流側及び前記接続室を連通する第3の流路部を備え、
前記接続室は、
前記第1の流路部及び前記第2の流路部を連通する第1連通流路と、
前記第2の流路部及び前記第3の流路部を連通する第2連通流路と、
を備え、
前記第1の弁装置は、前記接続室に配置される弁軸部材、及び前記弁軸部材を駆動する駆動装置を備え、
前記弁軸部材は、前記接続室の前記第1連通流路を介して前記第1の流路部および前記第2の流路部を連通させて、前記第1の流路部及び前記第2の流路部の双方と前記第3の流路部とを非連通とする第2の位置、並びに、前記接続室の前記第2連通流路を介して前記第2の流路部及び前記第3の流路部を連通させて、前記第2の流路部及び前記第3の流路部の双方と前記第1の流路部とを非連通とする第1の位置の間で移動可能に形成される、
ことを特徴とする第3の態様の膨張弁。
【0140】
(第5の態様)
前記駆動装置は、
プランジャを有し、前記プランジャによって前記弁軸部材を前記第1の位置及び前記第2の位置の一方から他方へ移動する、前記弁本体に設けられる駆動部と、
前記接続室に設けられて前記弁軸部材を前記他方側から前記一方に向かって付勢する第2の付勢装置と、
を備えることを特徴とする第4の態様の膨張弁。
【0141】
(第6の態様)
前記接続室内において前記第1の流路部の開口及び前記第3の流路部の開口の間に配置されて前記第1の流路部から前記第3の流路部への流体の流れを防止し、前記第2の流路部の開口を覆い、前記第3の流路部の前記開口との間に隙間を有する弁座部材を備え、
前記弁座部材は、前記プランジャの移動方向に貫通する貫通孔と、前記貫通孔及び前記第2の流路部の前記開口を中継する中継路とを有し、
前記弁軸部材は、前記貫通孔内に配置されて前記貫通孔の軸方向に移動可能に形成されかつ前記貫通孔の内面との間に流路を構成する軸部と、前記軸部に設けられて前記隙間に配置され、前記弁座部材に当接することで前記貫通孔の開口と前記接続室とを非連通とする鍔部と、
を備え、
前記プランジャの先端面は、前記弁軸部材に当接することで、前記貫通孔の開口及び前記接続室を非連通にする面に形成される、
ことを特徴とする第5の態様の膨張弁。
【0142】
(第7の態様)
前記弁座部材の前記第3の流路部側の端面において前記貫通孔の前記開口の周囲は、第1シール部材により形成され、
前記弁座部材の前記駆動部側の端面において前記貫通孔の前記開口の周囲は、第2シール部材により形成される、
ことを特徴とする第6の態様の膨張弁。
【0143】
(第8の態様)
前記供給部は、
前記弁本体に設けられて前記弁本体外の前記弁室より上流側の外部流路部に接続され、前記弁室より上流側の前記流体を前記シリンダ室に流入する流入路と、
前記流入路、または前記外部流路部に設けられ、前記流入路を介する前記シリンダ室への前記流体の流入を制御する弁装置と、
を備えることを特徴とする第1の態様~第7の態様のいずれかの膨張弁。
【0144】
(第9の態様)
前記排出部は、
前記弁本体に設けられて前記弁本体外の前記弁室より下流側の外部流路部に接続され、前記外部流路部を介して前記シリンダ室の前記流体を前記弁室より下流側に流出する流出路と、
前記流出路、または前記外部流路部に設けられ、前記流出路を介する前記シリンダ室内の前記流体の前記弁室より下流側への流出を制御する弁装置と、
を備えることを特徴とする第2の態様~第8の態様のいずれかの膨張弁。
【0145】
(第10の態様)
前記弁本体は、前記弁室内の圧力より低圧の流体が流れる低圧流路を有し、
前記パワーエレメントは、
前記弁本体に固定されるハウジングと、
前記ハウジング内に設けられ、前記ハウジング内を、圧力作動室、及び前記低圧流路に連通する弁室側室に仕切るダイアフラムと、
前記弁室側室に配置され、前記変位部としてのストッパ部材と、
前記ストッパ部材及び前記シリンジ部材の一方に設けられる係止部と、
を備え、
前記ストッパ部材の内部に前記シリンジ部材が配置され、または、前記シリンジ部材の内部に前記ストッパ部材が配置され、
前記係止部は、前記ストッパ部材及び前記シリンジ部材の他方に当接することで、前記シリンジ部材が前記ストッパ部材から抜け出ること、または前記ストッパ部材が前記シリンジ部材から抜け出ることを防止することを特徴とする第1の態様の膨張弁。
【0146】
(第11の態様)
前記ハウジングの下端が内方に延出するフランジ部を有し、
前記シリンジ部材は、前記フランジ部の内側に挿通される軸部と、前記軸部の前記パワーエレメント側の端部に取り付けられ前記軸部より寸法が大きい基部とを有し、
前記基部は、前記軸部の移動方向に前記フランジ部と対向する寸法を有し、
前記係止部によって前記ストッパ部材に対する前記シリンジ部材の移動が規制された状態では、前記基部の前記弁室側の端面は前記ストッパ部材の前記弁室側の端面より前記弁室側に位置し、
前記フランジ部と前記基部とは、前記移動規制部を構成する、
ことを特徴とする第1の態様~第10の態様のいずれかの膨張弁。
【0147】
(第12の態様)
前記シリンジ部材は、軸部、及び前記軸部の前記パワーエレメント側となる一端に設けられ、前記軸部の軸線に直交する方向に前記軸部より大きな寸法を有する基部を有し、
前記弁本体は、前記シリンジ部材を移動可能に配置する孔を有し、
前記軸部の他端及び前記孔の内部空間の底面、または、前記基部及び前記弁本体における前記基部と対向する面は、前記移動規制部を構成する、
ことを特徴とする第1の態様~第10の態様のいずれかの膨張弁。
【0148】
(第13の態様)
前記シリンジ部材は、管状の基部と、前記基部に接続された軸部とを有し、
前記基部の内周に対して、前記変位部が摺動可能に嵌合しており、
前記軸部は、前記基部よりも寸法が小さい前記弁本体の開口部に挿通されており、
前記開口部の周囲により前記移動規制部が構成される、
ことを特徴とする第1の態様~第12の態様のいずれかの膨張弁。
【符号の説明】
【0149】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G :膨張弁
2、2A、2B、2C、2E、2F :弁本体
3 :弁体
4 :付勢装置
5 :作動棒
6、6A,6B、6C、6D,6E,6F :シリンジ部材
8、8E :パワーエレメント
20 :弁座
140 :吸引子
135 :プランジャ
132 :コイル
EV :電磁弁
VS :弁室
VL :開閉弁
VL2 :第2の開閉弁
CS :シリンダ室
HS :高圧室