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特開2024-175802チルト制御システム、フォークリフトおよびチルト制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175802
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】チルト制御システム、フォークリフトおよびチルト制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B66F9/24 E
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093825
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅田 輝
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333AE02
3F333BA02
3F333BB02
3F333BD02
3F333BE02
3F333FA05
3F333FA15
3F333FA23
3F333FD06
3F333FD08
(57)【要約】
【課題】随時、悪路であるか判定したり、フォーク角度を検出したりしなくても、悪路における荷崩れを防止する。
【解決手段】チルト制御システムSは、第1フォークリフト2aと、悪路エリア記憶部11と、を備えている。第1フォークリフト2aは、自らの位置を検出する位置検出部26と、フォークの角度を変更するチルト変更部(チルトシリンダ24)と、を有する。悪路エリア記憶部11は、所定のエリアごとに、各エリアの位置情報および各エリアが悪路エリアであるか否かを位置情報と紐づけて記憶している。第1フォークリフト2aは、チルト制御部27をさらに有し、チルト制御部27によって、悪路エリア記憶部11に記憶された情報と、第1フォークリフト2aの位置情報とを参照して、悪路エリアであると判定されたエリアE内の荷積載走行中において、チルト変更部を制御してフォーク23を後傾させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークリフトのフォークの角度を制御するチルト制御システムであって、
自らの位置を検出する位置検出部と、前記フォークの角度を変更するチルト変更部と、を有する第1フォークリフトと、
所定のエリアごとに、各前記エリアの位置情報および各前記エリアが悪路エリアであるか否かを位置情報と紐づけて記憶している悪路エリア記憶部と、を備え、
前記第1フォークリフトは、
前記悪路エリア記憶部に記憶された情報と、前記第1フォークリフトの位置情報とを参照して、前記悪路エリアであると判定された前記エリア内の荷積載走行中において、前記チルト変更部を制御して前記フォークを後傾させるチルト制御部をさらに有するチルト制御システム。
【請求項2】
サーバーと、
悪路エリア判定車と、をさらに備え、
前記サーバーは、前記悪路エリア記憶部を有し、
前記悪路エリア判定車は、
前記位置検出部と、
走行中の前記悪路エリア判定車の振動の値を検出する振動検出部と、
検出された振動の値に基づいてその前記エリアが前記悪路エリアであるか否かを判定する悪路エリア判定部と、
前記悪路エリア判定部によって判定された結果を前記サーバーに送信する通信部と、を有し、
前記悪路エリア記憶部は、前記悪路エリア判定部によって判定された結果に基づいて、各前記エリアが前記悪路エリアであるか否かの情報を更新する請求項1に記載のチルト制御システム。
【請求項3】
前記悪路エリア判定車は、カウント部をさらに有し、
前記カウント部は、位置情報と前記振動検出部によって検出された振動の値を参照し、前記エリアごとに所定以上の大きさの振動の回数をカウントし、
前記悪路エリア判定部は、前記カウント部によってカウントされた前記エリアごとの振動回数に基づいて、前記悪路エリアであるか否かを前記エリアごとに判定する請求項2に記載のチルト制御システム。
【請求項4】
前記悪路エリア判定部は、振動の大きさに基づいて、悪路度を判定し、
前記悪路エリア記憶部は、判定された前記悪路度と各前記エリアとを紐づけて記憶し、
前記チルト制御部は、各前記エリアの前記悪路度に応じて後傾させる角度を決定するとともに、決定した後傾角度に前記フォークを後傾させる請求項2に記載のチルト制御システム。
【請求項5】
前記チルト制御部は、前記第1フォークリフトの位置情報を参照して、前記悪路エリアであると判定された前記エリアから所定の距離内に進入すると、前記チルト変更部を制御して前記フォークを後傾させる請求項2に記載のチルト制御システム。
【請求項6】
前記悪路エリア判定車は、第2フォークリフトであって、
前記チルト変更部と、前記チルト制御部とをさらに有し、
前記チルト制御部は、前記悪路エリア記憶部に記憶された情報と、前記第2フォークリフトの位置情報とを参照して、悪路であると判定された前記エリア内において、前記チルト変更部を制御して前記第2フォークリフトの前記フォークを後傾させる請求項2に記載のチルト制御システム。
【請求項7】
前記振動検出部は、前記フォークの振動を検出するよう構成されている請求項6に記載のチルト制御システム。
【請求項8】
フォークの角度を制御するチルト制御システムに利用されるフォークリフトであって、
前記チルト制御システムは、
所定のエリアごとに、各前記エリアの位置情報および各前記エリアが悪路エリアであるか否かを位置情報と紐づけて記憶している悪路エリア記憶部を有するサーバーを備え、
前記フォークリフトは、
前記サーバーと通信する通信部と、
自らの位置を検出する位置検出部と、
前記フォークの角度を変更するチルト変更部と、
前記悪路エリア記憶部に記憶されている各前記エリアの位置情報および各前記エリアが前記悪路エリアであるか否かの情報と、前記フォークリフトの位置情報とを参照して、前記悪路エリアであると判定された前記エリア内において、前記チルト変更部を制御して前記フォークを後傾させるチルト制御部と、を備えるフォークリフト。
【請求項9】
フォークリフトのフォークの角度を制御するチルト制御システムに利用されるチルト制御プログラムであって、
前記チルト制御システムは、
所定のエリアごとに、各前記エリアの位置情報および各前記エリアが悪路エリアであるか否かを位置情報と紐づけて記憶している悪路エリア記憶部を有するサーバーと、
フォークリフトと、を備え、
前記フォークリフトは、
前記サーバーと通信する通信部と、
自らの位置を検出する位置検出部と、
前記フォークの角度を変更するチルト変更部と、
前記チルト変更部を制御して前記フォークを後傾させるチルト制御部と、を有し、
前記チルト制御プログラムは、前記チルト制御部に、
前記悪路エリア記憶部に記憶されている各前記エリアの位置情報および各前記エリアが前記悪路エリアであるか否かの情報と、前記フォークリフトの位置情報とを参照させることと、
前記悪路エリアであると判定された前記エリア内において、前記チルト変更部を制御して前記フォークを後傾させることと、を実行させるチルト制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトに係るチルト制御システム、並びに当該チルト制御システムに利用されるフォークリフトおよびチルト制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のように、フォークリフトは、マストと、マストに沿って昇降するフォークとを備え、フォークによって荷をすくい上げて荷役作業を行う。フォークリフトは、フォークに荷を積載した状態で走行するが、凹凸のある路面(以下、「悪路」という)を走行すると、荷崩れすることがある。
【0003】
特許文献1に開示の発明は、フォークリフトの走行制御装置であり、悪路走行中の荷崩れを抑制することを課題としている。この制御装置は、フォークに積載された積み荷の荷重を検出する圧力センサを有し、圧力センサの検出信号から荷重変動の周波数wθを算出し、悪路であるか否かを判定する。そして、この制御装置は、悪路であると判定すると、走行速度を低下させて荷崩れを防止するよう構成されている。
【0004】
また、特許文献2に開示のように、荷崩れを防止する方法として、フォークの角度を制御(以下、「チルト制御」という)することが知られている。特許文献2に開示のチルト制御装置では、チルト角補正を自動で行う自動モードと手動で行う手動モードとを有し、自動モードに設定された時の検出チルト角を設定チルト角として記憶し、この設定チルト角を維持することで荷崩れを防止するよう構成されている。
【0005】
ところで、荷を搬送する際に、フォークを後傾させると荷崩れを防止することができるが、常に後傾させると、荷置をするたびに水平に戻さなければならず作業効率が悪い。また、複数のフォークリフトが荷役する施設において、特許文献1に開示のような構成をすべてのフォークリフトが備えることとすると、コストがかさむ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-217200号公報
【特許文献2】特開2010-23940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、随時、悪路であるか判定したり、フォーク角度を検出したりしなくても、悪路における荷崩れを防止することができるチルト制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るチルト制御システムは、フォークリフトのフォークの角度を制御するチルト制御システムであって、自らの位置を検出する位置検出部と、フォークの角度を変更するチルト変更部と、を有する第1フォークリフトと、所定のエリアごとに、各エリアの位置情報および各エリアが悪路エリアであるか否かを位置情報と紐づけて記憶している悪路エリア記憶部と、を備えている。第1フォークリフトは、悪路エリア記憶部に記憶された情報と、第1フォークリフトの位置情報とを参照して、悪路エリアであると判定されたエリア内の荷積載走行中において、チルト変更部を制御してフォークを後傾させるチルト制御部をさらに有する。
【0009】
上記チルト制御システムは、好ましくは、サーバーと、悪路エリア判定車と、をさらに備えている。サーバーは、悪路エリア記憶部を有し、悪路エリア判定車は、位置検出部と、走行中の悪路エリア判定車の振動の値を検出する振動検出部と、検出された振動の値に基づいてそのエリアが悪路エリアであるか否かを判定する悪路エリア判定部と、悪路エリア判定部によって判定された結果をサーバーに送信する通信部と、を有する。悪路エリア記憶部は、悪路エリア判定部によって判定された結果に基づいて、各エリアが悪路エリアであるか否かの情報を更新する。
【0010】
上記チルト制御システムでは、好ましくは、悪路エリア判定車が、カウント部をさらに有する。カウント部は、位置情報と振動検出部によって検出された振動の値を参照し、エリアごとに所定以上の大きさの振動の回数をカウントする。悪路エリア判定部は、カウント部によってカウントされたエリアごとの振動回数に基づいて、悪路エリアであるか否かをエリアごとに判定する。
【0011】
上記チルト制御システムでは、好ましくは、悪路エリア判定部が、振動の大きさに基づいて、悪路度を判定し、悪路エリア記憶部は、判定された悪路度と各エリアとを紐づけて記憶する。チルト制御部は、各エリアの悪路度に応じて後傾させる角度を決定するとともに、決定した後傾角度にフォークを後傾させる。
【0012】
上記チルト制御システムでは、好ましくは、チルト制御部が、第1フォークリフトの位置情報を参照して、悪路エリアであると判定されたエリアから所定の距離内に進入すると、チルト変更部を制御してフォークを後傾させる。
【0013】
上記チルト制御システムでは、好ましくは、悪路エリア判定車が、第2フォークリフトであって、チルト変更部と、チルト制御部とをさらに有する。チルト制御部は、悪路エリア記憶部に記憶された情報と、第2フォークリフトの位置情報とを参照して、悪路であると判定されたエリア内において、チルト変更部を制御して第2フォークリフトのフォークを後傾させる。
【0014】
上記チルト制御システムでは、好ましくは、振動検出部が、フォークの振動を検出するよう構成されている。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係るフォークリフトは、フォークの角度を制御するチルト制御システムに利用されるフォークリフトであって、チルト制御システムは、所定のエリアごとに、各エリアの位置情報および各エリアが悪路エリアであるか否かを位置情報と紐づけて記憶している悪路エリア記憶部を有するサーバーを備えている。フォークリフトは、サーバーと通信する通信部と、自らの位置を検出する位置検出部と、フォークの角度を変更するチルト変更部と、悪路エリア記憶部に記憶されている各エリアの位置情報および各エリアが悪路エリアであるか否かの情報と、フォークリフトの位置情報とを参照して、悪路エリアであると判定されたエリア内において、チルト変更部を制御してフォークを後傾させるチルト制御部と、を備えている。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係るチルト制御プログラムは、フォークリフトのフォークの角度を制御するチルト制御システムに利用されるチルト制御プログラムであって、チルト制御システムは、所定のエリアごとに、各エリアの位置情報および各エリアが悪路エリアであるか否かを位置情報と紐づけて記憶している悪路エリア記憶部を有するサーバーと、フォークリフトと、を備えている。フォークリフトは、サーバーと通信する通信部と、自らの位置を検出する位置検出部と、フォークの角度を変更するチルト変更部と、チルト変更部を制御してフォークを後傾させるチルト制御部と、を有する。チルト制御プログラムは、チルト制御部に、悪路エリア記憶部に記憶されている各エリアの位置情報および各エリアが悪路エリアであるか否かの情報と、フォークリフトの位置情報とを参照させることと、悪路エリアであると判定されたエリア内において、チルト変更部を制御してフォークを後傾させることと、を実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るチルト制御システムは、随時、悪路であるか判定したり、フォーク角度を検出したりしなくても、悪路における荷崩れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るチルト制御システムの概略を示す平面図である。
図2】チルト制御システムのブロック図である。
図3図1に示された第1および第2フォークリフトの側面図である。
図4】チルト制御部の動作を示すフロー図である。
図5】チルト制御システムによる悪路エリア判定の動作を示すフロー図である。
図6】チルト制御システムによる別の悪路エリア判定の動作を示すフロー図である。
図7】別のエリア分けを示す平面図である。
図8】さらに別のエリア分けを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明のチルト制御システム、フォークリフトおよびチルト制御プログラムについて説明する。
【0020】
図1に示すように、チルト制御システムSは、サーバー1と、複数の第1フォークリフト2aと、第2フォークリフト2bと、を備えている。図1に示すように、施設内には、複数の棚Rと、各棚Rに隣接する走行路とを有する。棚Rは、荷置位置および荷取位置を有する。本実施形態におけるエリアE1~E11は、走行路ごとに規定されている。各エリアEの規定方法は、単なる一例であって、これに限定されない。
【0021】
第1フォークリフト2aおよび第2フォークリフト2bは、同一の施設内で荷役作業を行うよう構成されており、チルト制御システムSは、施設内で第1および第2フォークリフト2a、2bのフォーク23(図3参照)の角度を制御するシステムとして構成されている。第1および第2フォークリフト2a、2bの数は、特に限定されない。
【0022】
<サーバー>
まず、サーバー1のハードウェア構成について説明する。サーバー1は、コンピュータと、通信装置とを有する。コンピュータは、演算装置(図示略)と、記憶装置(図示略)とを有する。サーバー1は、施設内に設置されていてもよいし、いわゆるクラウド環境に設置されていてもよい。
【0023】
次に、サーバー1の機能的構成について説明する。図2に示すように、サーバー1は、通信部10と、悪路エリア記憶部11とを有する。
【0024】
通信部10は、第1および第2フォークリフト2a、2bと無線通信しデータを送受信可能に構成されている。
【0025】
悪路エリア記憶部11は、所定のエリアE1~E11ごとに、悪路エリアであるか否かをエリアE1~E11の位置情報と紐づけてあらかじめ記憶している。
【0026】
エリアE1~E11が悪路エリアであるか否かの情報は、後で説明する第2フォークリフト2bから受信した情報のみに基づいていてもよいし、施設の構造からあらかじめ定められていてもよい。本発明における悪路には、路面の劣化や付着物等による凹凸を含む路面だけでなく、施設の構造による段差や傾斜面を含む路面が含まれている。すなわち、フォークリフトに積載された荷Wが荷崩れする可能性のある路面を「悪路」としている。そして、悪路エリア記憶部11は、悪路を含むエリアEを悪路エリアとしてあらかじめ位置情報とともに記憶している。
【0027】
<フォークリフト>
次に、第1フォークリフト2aおよび第2フォークリフト2bの共通の構成について説明する。図3に示すように、第1および第2フォークリフト2a、2bは、カウンター式フォークリフトであるが、本発明の第1および第2フォークリフトは、これに限定されない。例えば、第1および第2フォークリフトは、リーチ式フォークリフトであってもよい。また、例えば、第1および第2フォークリフト2a、2bは、自律して走行する無人フォークリフトであってもよいし、有人無人兼用のフォークリフトであってもよい。第1および第2フォークリフト2a、2bは、前後の車輪20と、車体21と、左右のマスト22と、左右のフォーク23と、左右のチルトシリンダ24と、を有する。
【0028】
車体21は、前後の車輪20の上に配置されており、左右のマスト22は、上下に延びるとともに車体21の前方に配置されている。左右のフォーク23は、ブラケットを介して左右のマスト22に連結されるとともに、左右のマスト22に沿って昇降可能に構成されている。
【0029】
左右のチルトシリンダ24は、油圧によって伸縮可能に構成されており、左右のマスト22にそれぞれ連結されている。左右のチルトシリンダ24が、本発明の「チルト変更部」に相当する。左右のチルトシリンダ24は、伸縮することにより、マスト22を前傾させたり、水平にしたり、後傾させたりする。これにより、左右のチルトシリンダ24は、フォーク23を前傾させたり、水平にしたり、後傾させたりすることができる。
【0030】
なお、本発明のチルト変更部は、チルトシリンダ24に限定されず、例えば、フォーク23のみを後傾させるよう構成されていてもよい。この例として、例えば、チルト変更部は、フォーク23と一体的に構成されたヒンジドフォークであってもよい。または、チルト変更部は、ヒンジドフォークおよびチルトシリンダ24によって構成されていてもよい。
【0031】
また、本実施形態では、チルト変更部は、油圧によって動作するが電力によって動作してもよく、動力源を特に限定されない。
【0032】
本実施形態におけるフォーク23の後傾角度は、最大6度となっているが、単なる一例であってこれに限定されない。例えば、ヒンジドフォークの場合、最大後傾角度は、35度でもよい。
【0033】
図2に示すように、第1および第2フォークリフト2a、2bは、通信部25と、位置検出部26と、チルト制御部27と、をさらに有する。
【0034】
通信部25は、サーバー1と無線通信しデータを送受信可能に構成されている。
【0035】
位置検出部26は、自ら(フォークリフト)の位置を検出するよう構成されている。位置検出部26の構成は特に限定されず、位置検出部26は、例えば、GPS(global positioning system)や、Wi-Fi、ビーコン、RFID(Radio Frequency Identification)、IMES(Indoor MEssaging System)、UWB(Ultra Wide Band)等を利用した屋内測位技術によって構成されていてもよい。
【0036】
チルト制御部27は、コンピュータによって構成されており、演算装置と記憶装置とを有する。記憶装置には、チルト制御プログラムが記憶されており、チルト制御部27は、チルト制御プログラムによって動作する。
【0037】
チルト制御部27は、第1フォークリフト2a(または第2フォークリフト2b)の位置情報と、悪路エリア記憶部11に記憶された情報とを参照して、悪路エリアであると判定されたエリアE内における荷W積載走行中において、第1フォークリフト2a(または第2フォークリフト2b)のチルト変更部を制御してフォーク23の角度を後傾させる。
【0038】
<チルト制御部の動作>
図4は、チルト制御部27の動作を示すフロー図である。図4を参照してチルト制御部27の動作を説明する。(1)まず、チルト制御部27は、位置情報を参照して、現在フォークリフトがいずれのエリアEにいるのかを認識する(図4のS(ステップ)41参照)。(2)次いで、チルト制御部27は、悪路エリア記憶部11に記憶された情報を参照して、当該エリアEが悪路エリアであるか否かを判定する(図4のS42参照)。(3)当該エリアEが悪路エリアである場合(図4のS42のYes)、チルト制御部27は、第1フォークリフト2a(または第2フォークリフト2b)が荷W積載状態であるか否かをさらに判定する(図4のS43参照)。(4)荷W積載状態である場合(図4のS3のYes)、チルト制御部27は、チルト変更部を制御してマスト22を後傾させることによりフォーク23を後傾させる(図4のS44参照)。
【0039】
これにより、チルト制御システムSは、随時、悪路であるか判定したり、フォーク23の角度を検出したりしなくても、悪路エリアにおいては必ずフォーク23を後傾させることにより、荷崩れを防止することができる。しかも、チルト制御システムSは、悪路エリアと判定されたエリアE外ではフォーク23を後傾させないので、悪路エリアでないエリアEではフォーク23の角度を水平に保たせることもでき、それによって荷役作業の効率を維持させることもできる。
【0040】
<第2フォークリフト独自の構成>
次に、第2フォークリフト2b独自の構成について説明する。図2に示すように、第2フォークリフト2bは、振動検出部28と、カウント部29と、悪路エリア判定部30と、をさらに有する。
【0041】
振動検出部28は、第2フォークリフト2bの走行中の振動を検出する。本実施形態では、振動検出部28は、加速度センサによって構成されているが単なる一例であって、振動検出部28の構成は、これに限定されない。振動検出部28は、フォークリフトの車体21ではなくフォーク23の振動を検出する方がより好ましい。したがって、振動検出部28は、フォーク23や、フォーク23の近傍、例えば、バックレストの上部に設けられていてもよい。なお、車体21の振動を解析してフォーク23の振動を推測できるのであれば、振動検出部28は、車体21に設けられていてもよい。
【0042】
振動検出部28が検出した振動の値(本実施形態では加速度値)は、カウント部29および悪路エリア判定部30に送信される。
【0043】
カウント部29は、位置情報と振動検出部28によって検出された振動の値を参照し、エリアEごとに所定の大きさ(加速度a[m/s])以上の振動の回数をカウントする。カウント部29によってカウントされたエリアEごとのカウント数は、悪路エリア判定部30に送信される。
【0044】
エリアEごとの振動のカウント数は、第2フォークリフト2bがエリアE内の走行を完了するまでの間のカウント数としている。本実施形態では、走行路ごとにエリアEが設定されているので、本実施形態における振動のカウント数は、第2フォークリフト2bが各エリアE内を通過する間にカウントされた振動の数としている。
【0045】
悪路エリア判定部30は、カウント部29によってカウントされたエリアEごとの振動のカウント数に基づいて、悪路エリアであるか否かをエリアEごとに判定する。悪路エリア判定部30は、例えば、エリアE内において3カウント以上の振動があったとき、そのエリアEを悪路エリアと判定してもよい。本実施形態において、悪路エリアであるか否かを振動のカウント数としている理由は、荷崩れが複数回の所定以上の振動によって発生することに基づいている。
【0046】
悪路エリア判定部30によって判定された結果は、悪路エリア記憶部11に送信され、悪路エリア記憶部11は、当該結果に基づいて、各エリアEが悪路エリアであるか否かの情報を更新する。
【0047】
<悪路エリア判定の動作>
図5は、チルト制御システムSによる悪路エリア判定の動作を示すフロー図である。図5を参照して、チルト制御システムSの悪路エリア判定の動作をあらためて説明する。
【0048】
(1)まず、第2フォークリフト2bがエリアE内を走行する(図5のS51参照)。(2)次いで、チルト制御システムSは、第2フォークリフト2bの走行中、振動検出部28によって振動を検出すると(図5のS52参照)、検出された振動をカウント部29によってカウントする(図5のS53参照)。(3)次いで、チルト制御システムSは、第2フォークリフト2bがそのエリアE内の走行を完了すると(図5のS54のYes)、悪路エリア判定部30によって、受信したカウント数に基づきそのエリアEが悪路エリアであるか否かを判定する(図5のS55参照)。(4)次いで、チルト制御システムSは、判定結果に基づいて、悪路エリア記憶部11の情報を更新する(図5のS56参照)。
【0049】
これにより、チルト制御システムSは、第2フォークリフト2bに各エリアEを走行させることにより、各エリアEが悪路エリアであるか否かの情報を更新するので、経年劣化などにより各エリアEにおける悪路部分が増加したときには、悪路エリア情報を更新することにより、新たな凹凸の増加による荷崩れを防止することができる。
【0050】
また、第2フォークリフト2bは、第1フォークリフト2aと同様に荷役作業を行うので、荷役作業を行いながら、振動の数をカウントすることができる。すなわち、チルト制御システムSは、随時、悪路エリアであるか否かの情報を更新しつつ、荷崩れを防止することができる。
【0051】
なお、チルトシリンダ24によるフォークリフトの角度変更は、もちろん運転者の手動によっても可能であるが、チルト制御システムSによって自動的にフォーク23を後傾させることにより、悪路エリアにおける荷崩れを自動的に防止することができる。
【0052】
以上、本発明のチルト制御システム、フォークリフトおよびチルト制御プログラムの一実施形態について説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明に係るチルト制御システムSは、以下の変形例を適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0053】
<変形例>
・チルト制御システムSは、すべてのフォークリフトを第2フォークリフト2bとして実施されてもよい。または、チルト制御システムSは、例えば、第2フォークリフト2bをあらかじめ施設内を走行させて各エリアEが悪路エリアであるか否かを判定させ、その後は、第1フォークリフト2aのみによって運用してもよい。
【0054】
・チルト制御システムSは、カウント部29によってカウントされたエリアEごとの振動のカウント数に基づいて悪路エリアを判定するが、当該カウント数は1つでもよい。言い換えると、チルト制御システムSは、振動の数ではなく、所定の振動以上の振動があったか否かに基づいて悪路エリアであるか否かを判定してもよい。この場合、チルト制御システムSは、図6に示すようなフローで、各エリアEが悪路エリアであるか否かを判定する。すなわち、チルト制御システムSは、(1)まず、第2フォークリフト2bをエリアE内を走行させ(図6のS61参照)、(2)振動検出部28によって振動を検出させ(図6のS62参照)、(3)そのエリアEの走行が完了すると(図6のS63のYes)、(4)悪路エリア判定部30によって、検出された振動が所定の振動以上の大きさ(例えば所定の加速度a[m/s])であるか否かに基づいて、そのエリアEが悪路エリアであるか否かを判定し(図6のS64参照)、(5)判定結果に基づいて、悪路エリア記憶部11の情報を更新する(図6のS65参照)。これにより、チルト制御システムSは、施設が大きな段差を有する場合や大きな凹凸を有する場合などの荷崩れを防止することができる。
【0055】
・各エリアEが悪路エリアであるか否かを判定する車両は、フォークリフトに限定されない。例えば、第2フォークリフト2bの代わりに、振動検出部28と、カウント部29と、悪路エリア判定部30とを備えた悪路エリア判定車によって悪路エリアであるか否かを判定してもよく、本発明における「悪路エリア判定車」の車種は特に限定されない。悪路エリア判定車は、他のAGV(Automated Guided Vehicle)であってもよい。
【0056】
・各エリアEが悪路エリアであるか否かを、まずは人手によって判断するとともにその判断結果を悪路エリア記憶部11に記憶しておいてもよいし、はじめから悪路エリア判定部30による判定結果を悪路エリア記憶部11にあらかじめ記憶させておいてもよい。
【0057】
・チルト制御部27は、第1フォークリフト2a(または第2フォークリフト2b)の位置情報を参照して、悪路であると判定されたエリアEから所定の距離内に第1フォークリフト2a(または第2フォークリフト2b)が進入すると、フォーク23の角度を後傾させてもよい。この場合、例えば、エリアEの端部に段差がある場合に、チルト制御システムSは、悪路エリアに進入する前、すなわち段差を通過する前にあらかじめフォーク23の角度を後傾させておくことにより、適切に荷崩れを防止することができる。
【0058】
図7に示すように、走行路が明確でない施設内に関しては、エリアEは、所定の面積ごとに区分けされてもよい。また、図8に示すように、各エリアEは互いに重なっていてもよい。例えば、エリアEnとエリアEnとの境目に段差がある場合、その境目に沿って延びる追加のエリアE5、E6を設けることにより、チルト制御システムSは、フォークリフトが段差を超える前にフォーク23を後傾させて荷崩れを防止することができる。
【0059】
・悪路エリア判定部30は、例えば、振動検出部28によって検出された振動の値に基づいて、悪路度を判定してもよい。この場合、悪路エリア記憶部11は、判定された悪路度と各エリアEとを紐づけて記憶し、チルト制御部27は、フォーク23の後傾角度を調整することができるフォークリフトに対して、各エリアEの悪路度に応じて後傾させる角度を決定するとともに決定した後傾角度にフォーク23を後傾させてもよい。
【符号の説明】
【0060】
S チルト制御システム
E エリア
R 棚
W 荷
1 サーバー
10 通信部
11 悪路エリア記憶部
2a 第1フォークリフト
2b 第2フォークリフト(悪路エリア判定車)
20 車輪
21 車体
22 マスト
23 フォーク
24 チルトシリンダ(チルト変更部)
25 通信部
26 位置検出部
27 チルト制御部
28 振動検出部
29 カウント部
30 悪路エリア判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8