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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017581
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】コイル
(51)【国際特許分類】
   H01F 5/00 20060101AFI20240201BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01F5/00 F
H01F38/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120310
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祥充
(57)【要約】
【課題】1回または螺旋状に複数回巻回された電線を備えるコイルにおける損失を低減する。
【解決手段】コイル100Aは、中心軸2の周りに1回または螺旋状に複数回巻回された電線1を備える。電線1は、中心軸2を含む平面における断面形状11が細長い導体10を含む。断面形状11は、長手方向の第1端12および第2端13が中心軸2から離れるように、曲がっている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルであって、
中心軸の周りに1回または螺旋状に複数回巻回された電線を備え、
前記電線は、前記中心軸を含む平面における断面形状が細長い導体を含み、
前記断面形状は、長手方向の第1端および第2端が前記中心軸から離れるように、曲がっている、コイル。
【請求項2】
前記断面形状の中心点を通り、前記第1端と前記第2端とを結ぶ線分と直交する直線を基準直線とするとき、前記断面形状は、前記基準直線に対して線対称である、請求項1に記載のコイル。
【請求項3】
前記基準直線は、前記中心軸と直交する、請求項2に記載のコイル。
【請求項4】
前記電線は、前記中心軸の対象区間の周りに螺旋状に3回以上巻回され、
前記電線は、
前記対象区間のうちの一方の端部側に位置する第1区間の周りに巻回される第1部分と、
前記対象区間のうちの他方の端部側に位置する第2区間の周りに巻回される第2部分と、
前記対象区間のうちの前記第1区間と前記第2区間との間に位置する第3区間の周りに巻回される第3部分と、を有し、
前記断面形状の中心点を通り、前記第1端と前記第2端とを結ぶ線分と直交する直線を基準直線とするとき、
前記第3部分における前記基準直線は、前記中心軸に直交し、
前記第1部分における前記基準直線は、前記第3部分に対応する前記基準直線に対して、前記中心軸との交点同士が離れる方向に傾斜し、
前記第2部分における前記基準直線は、前記第3部分に対応する前記基準直線に対して、前記中心軸との交点同士が離れる方向に傾斜する、請求項1に記載のコイル。
【請求項5】
前記電線は、螺旋状に2回以上巻回され、
前記中心軸と前記電線との距離は、前記中心軸に沿って増大または減少する、請求項1から4のいずれか1項に記載のコイル。
【請求項6】
磁界結合式ワイヤレス給電用コイルである、請求項1から4のいずれか1項に記載のコイル。
【請求項7】
電界共振結合式ワイヤレス給電の共振用コイルである、請求項1から4のいずれか1項に記載のコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、断面形状が円形となる導体を備えた電線を巻回することにより得られるコイルが汎用されている。しかし、このようなコイルでは、電線の表皮効果及び近接効果によって電流の流れに偏在が生じることが知られている。このため、コイルに交流電流が流されると、これらの効果に起因する損失が生じ、電力の伝送効率が低下するという問題がある。
【0003】
そのため、コイルにおける上記損失を低減することが検討されている。例えば、特開2021-100102号公報(特許文献1)には、断面形状が非円形となる導体を備える電線が渦巻状に複数回巻回されたコイルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-100102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コイルにおける電線の巻回方法は、コイルの用途に応じて異なる。特許文献1に開示の技術は、電線が渦巻状に複数回巻回されたコイルを対象としており、1回または螺旋状に複数回巻回されたコイルを対象としていない。すなわち、特許文献1には、1回または螺旋状に複数回巻回されたコイルにおける損失の低減について開示されていない。
【0006】
本開示は、上記の問題点に着目してなされたもので、1回または螺旋状に複数回巻回された電線を備えるコイルにおける損失の低減を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係るコイルは、中心軸の周りに1回または螺旋状に複数回巻回された電線を備える。電線は、中心軸を含む平面における断面形状が細長い導体を含む。断面形状は、長手方向の第1端および第2端が中心軸から離れるように、曲がっている。
【0008】
上記のコイルによれば、導体における逆流電流の発生および電流の偏在が抑制される。その結果、1回または螺旋状に複数回巻回された電線を備えるコイルにおける損失を低減できる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、1回または螺旋状に複数回巻回された電線を備えるコイルにおける損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係るコイルの外観斜視図である。
図2】第1実施例のコイルを示す断面図である。
図3】第2実施例のコイルを示す断面図である。
図4】第3実施例のコイルを示す断面図である。
図5】絶縁材を含む電線の一例を示す断面図である。
図6】絶縁材を含む電線の別の例を示す断面図である。
図7】第1参考例のコイルを示す断面図である。
図8】第2参考例のコイルを示す断面図である。
図9】第3参考例のコイルを示す断面図である。
図10】第4参考例のコイルを示す断面図である。
図11】第5参考例のコイルを示す断面図である。
図12】周波数が100kHzのときの、No.1A~38A,27A1,27A2のモデルの導体断面における電流分布を示す図である。
図13】コイル径dが50mmであり、周波数が100kHzであるときの、実施の形態1における各モデルのQ値を示すグラフである。
図14】コイル径dが100mmであり、周波数が100kHzであるときの、実施の形態1における各モデルのQ値を示すグラフである。
図15】実施の形態2に係るコイルの外観斜視図である。
図16】第4実施例のコイルを示す断面図である。
図17】第5実施例のコイルを示す断面図である。
図18】第6実施例のコイルを示す断面図である。
図19】第7実施例のコイルを示す断面図である。
図20】第6参考例のコイルを示す断面図である。
図21】第7参考例のコイルを示す断面図である。
図22】第8参考例のコイルを示す断面図である。
図23】第9参考例のコイルを示す断面図である。
図24】第10参考例のコイルを示す断面図である。
図25】第11参考例のコイルを示す断面図である。
図26】周波数が100kHzのときの、No.1B~15Bのモデルの導体断面における電流分布を示す図である。
図27】周波数が100kHzのときの、No.16B~30Bのモデルの導体断面における電流分布を示す図である。
図28】周波数が100kHzのときの、No.31B~38B,27B1,27B2のモデルの導体断面における電流分布を示す図である。
図29】周波数が100kHzのときの、No.2B1~2B3,18B1~18B3,21B1~21B3のモデルの導体断面における電流分布を示す図である。
図30】周波数が100kHzのときの、No.24B1~24B3,27B3~27B5,30B1~30B3のモデルの導体断面における電流分布を示す図である。
図31】コイル径dが50mmであり、周波数が100kHzであるときの、実施の形態2における各モデルのQ値を示すグラフである。
図32】コイル径dが100mmであり、周波数が100kHzであるときの、実施の形態2における各モデルのQ値を示すグラフである。
図33】実施の形態3に係るコイルの外観斜視図である。
図34】第8実施例のコイルを示す断面図である。
図35】コイル径dが50mmであり、周波数が100kHzであるときの、実施の形態3における各モデルのQ値を示すグラフである。
図36】コイル径dが100mmであり、周波数が100kHzであるときの、実施の形態3における各モデルのQ値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。また、以下で説明する実施の形態または変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0012】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係るコイルの外観斜視図である。図1に示されるように、実施の形態1に係るコイル100Aは、中心軸2の周りに1回巻回された電線1を備える。コイル100Aの直径(以下、「コイル径」と称する。)はdである。
【0013】
図2は、第1実施例のコイルを示す断面図である。図3は、第2実施例のコイルを示す断面図である。図4は、第3実施例のコイルを示す断面図である。図2図4には、中心軸2を含む平面におけるコイル100Aの断面図が示される。図2図4に示されるように、電線1は、中心軸2の周りに、中心軸2からの距離がd/2となるように1回巻回される。なお、図2図4には、コイル100Aの一部のみが描かれている。すなわち、図2図4において、中心軸2の左側に存在するコイル100Aの断面の図示が省略されている。
【0014】
図2図4に示されるように、電線1は、中心軸2を含む平面における断面形状11が非円形となる導体10を含む。導体10の断面形状11は、逆流電流が流れやすくなるような箇所及び電流が流れにくくなる箇所を回避又は迂回するような形状を有する。その結果、導体10の損失が低減される。具体的には、断面形状11は、細長く、かつ、長手方向の一方端である第1端12と長手方向の他方端である第2端13とが中心軸2から離れるように、曲がっている。これにより、コイル100Aに交流電流を流したときに、導体10における逆流電流の発生及び電流の偏在が抑制される。
【0015】
第1端12及び第2端13が先細りとなっている場合、この部分に電流の偏在が生じやすくなる。そのため、第1端12及び第2端13は、全体が丸みを帯びた状態となるように先細りに形成されていることが好ましい。
【0016】
断面形状11の中心点16を通り、第1端12と第2端13とを結ぶ線分17と直交する直線を基準直線18とするとき、断面形状11は、基準直線18に対して線対称であることが好ましい。これにより、コイル100Aに交流電流を流したときの導体10における逆流電流の発生及び電流の偏在がさらに抑制される。
【0017】
基準直線18は、導体10の姿勢を定義付ける。図2図4に示されるように、電線1の任意の部分において、基準直線18は、中心軸2に直交することが好ましい。これにより、導体10における逆流電流の発生及び電流の偏在がさらに抑制される。
【0018】
上述したように、断面形状11は、第1端12及び第2端13が中心軸2から離れるように曲がっている。そのため、断面形状11は、コイル100Aの外側を向く凹状の第1縁14と、中心軸2に対向する凸状の第2縁15と、を有する。
【0019】
断面形状11は、第1縁14と第2縁15との間隔tが一定となるように形成されていることが好ましい。間隔tは、コイル100Aの使用周波数における表皮深さ(電流が表面電流の1/eになる深さ)の2倍以下であることが好ましい。
【0020】
図2に示されるように、第1実施例のコイル100Aにおける導体10の断面形状11aは、中心角θsの円弧状である。すなわち、第1縁14及び第2縁15は、中心角θsの円弧状である。これにより、導体10における逆流電流の発生及び電流の偏在がより一層抑制される。断面形状11aは、基準直線18に対して線対称である。
【0021】
導体10が円弧状の断面形状11aを有する場合、後述するシミュレーション結果から、中心角θsは、15°~345°であることが好ましく、60°~345°であることがより好ましく、105°~345°であることがさらに好ましく、120°~345°であることがよりさらに好ましく、180°~345°であることが特に好ましく、240°~345°であることが最も好ましい。中心角θsが上記値であることによって、導体10における逆流電流の発生及び電流の偏在がより効果的に抑制される。なお、中心角θsは、例えば、電線1の任意の位置10箇所の断面形状11aにおける当該角度の測定値の算術平均値として算出される。
【0022】
導体10が円弧状の断面形状11aを有し、間隔tが一定である場合、円弧の中心点Oに対する第1縁14の半径をR1としたときに、半径R1は、間隔tと中心角θsと必要とされる導体断面積(断面形状11aの面積)とにより算出される。
【0023】
例えば、100kHzの周波数で2mm相当の導体断面積が必要である場合、半径R1は、間隔t(mm)と中心角θs(°)とを用いて、
R1=(2×360/θs-πt)/2tπ
で表される。なお、間隔t及び半径R1は、例えば、電線1の任意の位置10箇所の断面形状における各測定値の算術平均値として算出される。
【0024】
図3に示されるように、第2実施例のコイル100Aにおける導体10の断面形状11bはV字状(V字を90°回転させた形状)である。具体的には、断面形状11bは、中心点16の箇所において屈曲部20を有する。屈曲部20から第1端12までの領域および屈曲部20から第2端13までの領域の各々は、中心軸2に対して傾斜する方向に直線的に延びる。断面形状11bは、基準直線18に対して線対称である。
【0025】
屈曲部20が尖っている場合、この部分に電流の偏在が生じやすくなる。そのため、屈曲部20の外側(図3では中心軸2に対向する側)は、面取りされている形状であることが好ましい。
【0026】
導体10がV字状の断面形状11bを有する場合、後述するシミュレーション結果から、屈曲部20の内側に形成される角度θvは、90°~165°であることが好ましく、105°~165°であることがより好ましく、120°~165°であることがさらに好ましく、120°~150°であることが特に好ましい。なお、角度θvは、例えば、電線1の任意の位置10箇所の断面形状における当該角度の測定値の算術平均値として算出される。
【0027】
導体10がV字状の断面形状11bを有し、間隔tが一定である場合、第1縁14の長さの半分の長さをL1としたときに、長さL1は、間隔tと角度θvと必要とされる導体断面積(断面形状11bの面積)とにより算出される。
【0028】
図4に示されるように、第3実施例のコイル100Aにおける導体10の断面形状11cはU字状(U字を90度回転させた状態)である。具体的には、断面形状11cは、2つの屈曲部21,22を有する。断面形状11における屈曲部21,22間の部分は、中心軸2に平行に直線的に延びる。屈曲部21から第1端12までの領域および屈曲部22から第2端13までの領域の各々は、中心軸2に対して傾斜する方向に直線的に延びる。断面形状11cは、基準直線18に対して線対称である。そのため、屈曲部21,22の内側に形成される角度θは、同一である。
【0029】
屈曲部21,22が尖っている場合、この部分に電流の偏在が生じやすくなる。そのため、屈曲部21,22の外側(図4では中心軸2に対向する側)は、面取りされている形状であることが好ましい。
【0030】
導体10がU字状の断面形状11cを有す場合、後述するシミュレーション結果から、屈曲部21,22の内側に形成される角度θuは、105~165°であることが好ましく、105~150°であることがより好ましい。なお、角度θuは、例えば、電線1の任意の位置10箇所の断面形状における当該角度の測定値の算術平均値として算出される。
【0031】
導体10がU字状の断面形状11cを有し、間隔tが一定である場合、第1縁14のうちの屈曲部21から第1端12までの長さ(または屈曲部22から第2端13までの長さ)をL2、第1縁14のうちの屈曲部21,22間の長さをL3としたときに、長さL2,L3は、間隔tと角度θuと必要とされる導体断面積(断面形状11の面積)とにより算出される。
【0032】
導体10は、例えば、平編銅線、銅板、銅テープ、銅箔などによって構成される。また、導体10の材料は、銅に限定されず、銅以外の金属であってもよい。
【0033】
電線1は、導体10を被覆する絶縁材を含んでもよい。あるいは、導体10は、絶縁材によって被覆されておらず、裸導体であってもよい。
【0034】
図5は、絶縁材を含む電線の一例を示す断面図である。図5には、導体10の全体が絶縁材30によって被覆されている電線1が示される。例えば図5(a)に示されるように、電線1は、導体10の全体を被覆し、かつ、導体10の周縁と対応した形状の周縁を有する絶縁材30を備えてもよい。あるいは、図5(b)に示されるように、電線1は、導体10の全体を被覆し、かつ、周縁が矩形状である絶縁材30を備えてもよい。
【0035】
図6は、絶縁材を含む電線の別の例を示す断面図である。図6には、導体10の一部のみが絶縁材30によって被覆されている電線1が示される。例えば図6(a)に示されるように、電線1は、導体10の第1縁14に接触する外周を有する、中空円筒状の絶縁材30を備えてもよい。あるいは、図6(b)に示されるように、電線1は、導体10の第2縁15に接触する内周を有する、中空円筒状の絶縁材30を備えていてもよい。
【0036】
絶縁材30の材料は、以下に限定されないが、電気絶縁性のポリマー組成物であることが好ましく、1×1012Ω・cm以上の体積抵抗率を有するポリマー組成物であることがより好ましい。
【0037】
(シミュレーション)
解析ソフトFemtet(登録商標)(Version 2018.1.2.70140)を用い、表1に示される解析条件で、導体の断面形状および導体の姿勢の異なる複数のコイルの各々のモデルを評価した。
【0038】
【表1】
【0039】
評価対象のモデルは、図2図4にそれぞれ示す第1~第3実施例のコイル100Aに対応するモデルに加えて、以下に示す第1~第5参考例のコイルに対応するモデルを含む。第1~第5参考例のコイルは、図1に示すコイル100Aと同様に、中心軸2の周りに1回巻回された電線を含む。
【0040】
図7は、第1参考例のコイルを示す断面図である。図7に示すように、第1参考例のコイルに備えられる電線は、中心軸2を含む平面の断面形状11dが円形である導体10を有する。断面形状11dの直径Dは、必要とされる導体断面積(断面形状11dの面積)により算出される。
【0041】
図8は、第2参考例のコイルを示す断面図である。図8に示すように、第2参考例のコイルに備えられる電線は、中心軸2を含む平面の断面形状11eがI字状である導体10を有する。断面形状11eは、断面形状11a~11cと同様に、細長い。ただし、断面形状11eは、直線状である。断面形状11eの中心点16を通り、第1端12と第2端13とを結ぶ線分17と直交する基準直線18は、断面形状11eを有する導体10の姿勢を定義付ける。図8に示されるように、基準直線18は、中心軸2に直交する。すなわち、断面形状11eは、中心軸2に沿って延びている。断面形状11eの長手方向の長さL4は、断面形状11eの中心軸2側の縁と中心軸2とは反対側の縁との間隔tと、必要とされる導体断面積(断面形状11eの面積)とにより算出される。
【0042】
図9は、第3参考例のコイルを示す断面図である。図9に示すように、第3参考例のコイルに備えられる電線は、中心軸2を含む平面の断面形状11fがO字状である導体10を有する。断面形状11fの内径R2は、断面形状11fの外周縁と内周縁との間隔tと必要とされる導体断面積(断面形状11dの面積)とにより算出される。
【0043】
図10は、第4参考例のコイルを示す断面図である。図10に示すように、第4参考例のコイルに備えられる電線は、図2に示す第1実施例と同じ断面形状11aを有する導体10を有する。ただし、第4参考例において、導体10は、基準直線18が中心軸2と平行になるように配される。すなわち、第4参考例における導体10は、第1実施例における導体10の姿勢から、中心軸2を含む平面上において基準直線18を90°回転させた姿勢を取る。
【0044】
図11は、第5参考例のコイルを示す断面図である。図11に示すように、第5参考例のコイルに備えられる電線は、図2に示す第1実施例と同じ断面形状11aを有する導体10を有する。ただし、第5参考例において、導体10は、凹状の第1縁14が中心軸2に対向し、凸状の第2縁15がコイルの外側を向くように配される。すなわち、第5参考例における導体10は、第1実施例における導体10の姿勢から、中心軸2を含む平面に上において基準直線18を180°回転させた姿勢を取る。
【0045】
表2は、評価対象のモデルに用いた導体の断面形状の一覧を示す。断面形状は、中心軸2を含む平面における断面積が2mmとなるように設計されている。No.1の断面形状は、図7に示す円形の断面形状11dである。No.2の断面形状は、図8に示すI字状の断面形状11eである。No.2の断面形状の長さL4は、間隔tが0.4mmとなるように設計されている。No.3の断面形状は、図9に示すO字状の断面形状11fである。No.3の断面形状の内径R2は、間隔tが0.4mmとなるように設計されている。No.4~9の断面形状は、図3に示すV字状の断面形状11bであり、互いに異なる角度θvを有する。No.4~9の断面形状の長さL1は、間隔tが0.4mmとなり、かつ、角度θvが90°~165°(15°間隔)となるように設計されている。No.10~15の断面形状は、図4に示すU字状の断面形状11cであり、互いに異なる角度θuを有する。No.10~15の断面形状の長さL3は、間隔tが0.4mm、長さL2が2.5mm、かつ、角度θuが90°~165°(15°間隔)となるように設計されている。No.16~38の断面形状は、図2に示す円弧状の断面形状11aであり、互いに異なる中心角θsを有する。No.16~38の断面形状の半径R1は、間隔tが0.4mm、かつ、中心角θsが15°~345°(15°間隔)となるように設計されている。
【0046】
【表2】
【0047】
評価対象のモデルは、No.1A~38A,27A1,27A2のモデルを含む。No.1Aのモデルは、No.1の断面形状の導体を有する電線を中心軸2の周りに1回巻回したコイル(図7に示す第1参考例のコイル)に対応する。No.2Aのモデルは、No.2の断面形状の導体を有する電線を中心軸2の周りに1回巻回し、断面形状の基準直線18が中心軸2と直交するコイル(図8に示す第2参考例のコイル)に対応する。No.3Aのモデルは、No.3の断面形状の導体を有する電線を中心軸2の周りに1回巻回したコイル(図9に示す第3参考例のコイル)に対応する。
【0048】
No.4A~9Aのモデルは、No.4~9の断面形状の導体を有する電線を中心軸2の周りに1回巻回したコイル(図3に示す第2実施例のコイル100A)にそれぞれ対応する。
【0049】
No.10A~15Aのモデルは、No.10~15の断面形状の導体を有する電線を中心軸2の周りに1回巻回したコイル(図4に示す第3実施例のコイル100A)にそれぞれ対応する。
【0050】
No.16A~38Aのモデルは、No.16~38の断面形状の導体を有する電線を中心軸2の周りに1回巻回したコイル(図2に示す第1実施例のコイル100A)にそれぞれ対応する。なお、No.4A~38Aのモデルは、第2縁15が中心軸2に対向し、基準直線18が中心軸2と直交するような姿勢をとる導体を有するコイルに対応する。
【0051】
No.27A1のモデルは、No.27の断面形状の導体を有する電線を、基準直線18が中心軸2と平行となるような姿勢となるように、中心軸2の周りに1回巻回したコイル(図10に示す第4参考例のコイル)に対応する。
【0052】
No.27A2のモデルは、No.27の断面形状の導体を有する電線を、第1縁14が中心軸2に対向し、かつ、基準直線18が中心軸2と直交するような姿勢となるように、中心軸2の周りに1回巻回したコイル(図11に示す第5参考例のコイル)に対応する。
【0053】
各モデルのコイル径dを50mmとしたときのシミュレーションの結果を表3~表5に示す。さらに、各モデルのコイル径dを100mmとしたときのシミュレーションの結果を表6~表8に示す。表3及び表6には、各周波数におけるインダクタンス(nH)が示され、表4及び表7には、各周波数における抵抗(Ω)が示され、表5及び表8には、各周波数におけるQ値が示される。Q値は、インダクタンスL及び抵抗Rを用いて、2πfL/Rで表される。Q値が高いほど損失が少ない。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
【表7】
【0059】
【表8】
【0060】
図12は、周波数が100kHzのときの、No.1A~38A,27A1,27A2のモデルの導体断面における電流分布を示す図である。図12には、各モデルのコイル径dを50mmとしたときの電流分布が示される。なお、図12には、左側に中心軸2が存在する導体断面における電流分布が示される。
【0061】
図13は、コイル径dが50mmであり、周波数が100kHzであるときの、実施の形態1における各モデルのQ値を示すグラフである。図14は、コイル径dが100mmであり、周波数が100kHzであるときの、実施の形態1における各モデルのQ値を示すグラフである。図13及び図14において、横軸は中心角θs,角度θv,θuを示し、縦軸はQ値を示す。なお、図13及び図14において、θs=360°の点は、第3参考例のコイルに対応するモデルから得られた値を示している。また、θs=0°の点およびθv,θu=180°の点は、第2参考例のコイルに対応するモデルから得られた値を示している。
【0062】
図13および図14に示されるように、断面形状が円形である第1参考例に対応するNo.1のモデルよりも、第1~第3実施例のコイルに対応するNo.4A~38AのモデルのQ値が高くなっている。これは、図12に示されるように、断面形状が円形である第1参考例に対応するNo.1Aのモデルでは電流の偏在が顕著であるのに対し、第1~第3実施例のコイルに対応するNo.4A~38Aのモデルでは電流の偏在が抑制されているためである。
【0063】
第2実施例及び第3実施例のコイル(V字状及びU字状)に対応するNo.4A~15AのモデルのQ値よりも、第1実施例のコイル(円弧状)に対応するNo.16A~38AのモデルのQ値の方が高くなる傾向が見られる。これは、図12に示されるように、屈曲部20~22を有するV字状及びU字状の導体では、当該屈曲部20~22において電流が偏在しやすくなるのに対して、円弧状の導体では、屈曲部に起因する電流の偏在が抑制されるためである。
【0064】
No.27A,27A1,27A2のモデルは、いずれもθs=180°の円弧状の導体を有するコイルに対応する。しかしながら、第4及び第5参考例のコイルに対応するNo.27A1,27A2のモデルよりも、第1実施例のコイルに対応するNo.27AのモデルのQ値が高いことが認められる。これは、凸状の第2縁15(図2参照)が中心軸2と対向することにより、図12に示されるように電流の偏在が抑制されるためである。
【0065】
図13及び図14に示されるように、円弧状の導体を有するコイルに対応するモデルのうち、中心角θが15°~345°であるモデルのQ値は、円形およびI字状の断面形状の導体を有するコイルに対応するモデルよりも高くなることが確認された。また、中心角θが105°~345°であるモデルのQ値は、他の断面形状の導体を有するコイルに対応するモデルよりも高くなることが確認された。中心角θが180°~345°のときにQ値がさらに高くなり、中心角θが240°~345°のときにQ値がより一層高くなることが確認された。
【0066】
V字状の導体を有するコイルに対応するモデルのうち、角度θvが105°~165°のときにQ値が高くなり、角度θvが120°~150°のときにQ値が特に高くなることが確認された。
【0067】
U字状の導体を有するコイルに対応するモデルのうち、角度θuが105°~165°のときにQ値が高くなり、角度θuが105°~150°のときにQ値が特に高くなることが確認された。
【0068】
<実施の形態2>
図15は、実施の形態2に係るコイルの外観斜視図である。図15に示されるように、実施の形態2に係るコイル100Bは、実施の形態1に係るコイル100Aと比較して、電線1が中心軸2の周りに螺旋状に複数回巻回される点で相違する。
【0069】
図16は、第4実施例のコイルを示す断面図である。図17は、第5実施例のコイルを示す断面図である。図18は、第6実施例のコイルを示す断面図である。図16図18には、中心軸2を含む平面におけるコイル100Bの断面図が示される。図16図18に示されるように、電線1は、中心軸2の周りに、中心軸2からの距離がd/2となるように螺旋状に複数回巻回される。dはコイル径である。なお、図16図18には、コイル100Bの一部のみが描かれている。すなわち、図16図18において、中心軸2の左側に存在するコイル100Bの断面の図示が省略されている。
【0070】
図16図18に示されるように、実施の形態2に係る電線1は、実施の形態1と同様の特徴を有する。
【0071】
すなわち、電線1は、中心軸2を含む平面における断面形状11が非円形となる導体10を含む。そして、断面形状11は、電流が流れにくくなる箇所を回避又は迂回するために、細長く、かつ、長手方向の一方端である第1端12と長手方向の他方端である第2端13とが中心軸2から離れるように、曲がっている。また、第1端12及び第2端13は、全体が丸みを帯びた状態となるように先細りに形成されていることが好ましい。
【0072】
また、断面形状11は、中心点16を通り、第1端12と第2端13とを結ぶ線分17と直交する基準直線18に対して線対称であることが好ましい。電線1の任意の位置において、基準直線18は、中心軸2に直交することが好ましい。
【0073】
さらに、凹状の第1縁14がコイル100Bの外側を向き、凸状の第2縁15が中心軸2に対向する。断面形状11は、第1縁14と第2縁15との間隔tが一定となるように形成されていることが好ましい。間隔tは、コイル100Bの使用周波数における表皮深さ(電流が表面電流の1/eになる深さ)の2倍以下であることが好ましい。
【0074】
図16に示されるように、第4実施例のコイル100Bに備えられる導体10の断面形状11aは、図2に示す実施の形態1の第1実施例と同様に円弧状である。コイル径dが50mmとなるように断面形状11aを有する導体10を巻回する場合、後述するシミュレーション結果から、中心角θsは、15°~330°であることが好ましく、60°~285°であることがより好ましく、90°~240°であることがさらに好ましく、105°~240°であることが特に好ましい。コイル径dが100mmとなるように断面形状11aを有する導体10を巻回する場合、中心角θsは、60°~345°であることが好ましく、120°~345°であることがより好ましく、180°~300°であることがさらに好ましい。中心角θが上記値であることによって、電流の偏在がより効果的に抑制される。
【0075】
図17に示されるように、第5実施例のコイル100Bに備えられる導体10の断面形状11bは、図3に示す実施の形態1の第2実施例と同様にV字状である。コイル径dが50mmとなるように断面形状11bを有する導体10を巻回する場合、後述するシミュレーション結果から、屈曲部20の内側に形成される角度θvは、120°~165°であることが好ましい。コイル径dが100mmとなるように断面形状11bを有する導体10を巻回する場合、角度θvは、90°~165°であることが好ましく、105°~165°であることがより好ましく、120°~165°であることがさらに好ましい。角度θvが上記値であることによって、電流の偏在がより効果的に抑制される。
【0076】
図18に示されるように、第6実施例のコイル100Bに備えられる導体10の断面形状11cは、図4に示す実施の形態1の第3実施例と同様にU字状である。コイル径dが50mmとなるように断面形状11cを有する導体10を巻回する場合、後述するシミュレーション結果から、屈曲部21,22の内側に形成される角度θuは、105°~165°であることが好ましく、120°~165°であることがより好ましく、120°~150°であることがさらに好ましい。コイル径dが100mmとなるように断面形状11cを有する導体10を巻回する場合、角度θuは、90°~165°であることが好ましく、90°~150°であることがより好ましく、105°~135°であることがさらに好ましい。角度θuが上記値であることによって、電流の偏在がより効果的に抑制される。
【0077】
図19は、第7実施例のコイルを示す断面図である。図19に示されるように、第7実施例のコイル100Bに備えられる導体10の断面形状11aは、図17に示す第1実施例と同様に円弧状である。ただし、第7実施例のコイル100Bは、第4実施例のコイル100Bと比較して、電線1の一部において基準直線18が中心軸2と直交しない点で異なる。
【0078】
電線1は、中心軸2の対象区間3の周りに螺旋状に3回以上巻回される。図19に示す例では、電線1は、10回巻回されている。電線1は、対象区間3のうちの一方の端部側に位置する第1区間3aの周りに巻回される第1部分1aと、対象区間3のうちの他方の端部側に位置する第2区間3bの周りに巻回される第2部分1bと、対象区間3のうちの第1区間3aと第2区間3bとの間に位置する第3区間3cの周りに巻回される第3部分1cと、を有する。第3部分1cにおける基準直線18cは、中心軸2に直交する。第1部分1aにおける基準直線18aは、第3部分1cに対応する基準直線18cに対して、中心軸2との交点40a,40c同士が離れる方向に傾斜する。第2部分1bにおける基準直線18bは、第3部分1cに対応する基準直線18cに対して、中心軸2との交点40b,40c同士が離れる方向に傾斜する。傾斜の度合いは、基準直線18a,18cと中心軸2に直交する線とのなす角度φによって表される。
【0079】
第1部分1a、第2部分1b及び第3部分1cにおいて導体10の姿勢を互いに異ならせることは、電線1がねじられることによってなされてもよく、導体10の姿勢が互いに異なる状態で、第1部分1a、第2部分1b及び第3部分1cを接合することによってなされてもよい。
【0080】
なお、図19に示す例では、第1部分1aおよび第2部分1bにおける巻回数は3回であり、第3部分1cにおける巻回数は4回である。ただし、第1部分1a、第2部分1bおよび第3部分1cにおける巻回数は、これに限定されない。
【0081】
後述するシミュレーション結果によって示されるように、第1部分1a及び第2部分1bの導体10では、第3部分1cから遠い側に電流が流れやすい。そのため、図19に示されるにように、第1部分1a及び第2部分1bにおける基準直線18a,18bを傾斜させることにより、電流が流れやすい部分に導体10が位置することとなり、導体10における電流の偏在が抑制される。
【0082】
実施の形態2においても、電線1は、導体10を被覆する絶縁材を含んでもよい。絶縁材は、図5に示されるように、導体10の全体を被覆してもよいし、図6に示されるようい、導体10の一部を被覆してもよい。また、絶縁材は、中心軸2に沿って延びている、螺旋状に複数回巻回された導体10を一括して被覆してもよい。
【0083】
(シミュレーション)
実施の形態1と同じ方法に従って、導体の断面形状および導体の姿勢の異なる複数のコイルの各々のモデルを評価した。
【0084】
評価対象のモデルは、図16図19にそれぞれ示す第4~第7実施例のコイルに対応するモデルに加えて、以下に示す第6~第11参考例のコイルに対応するモデルを含む。第6~第11参考例のコイルは、図15に示すコイル100Bと同様に、中心軸2の周りに螺旋状に複数回巻回された電線を含む。
【0085】
図20は、第6参考例のコイルを示す断面図である。図20に示されるように、第6参考例のコイルに備えられる導体10の断面形状11dは、図7に示す第1参考例と同様に円形状であり、直径D(図7参照)によって定義される。
【0086】
図21は、第7参考例のコイルを示す断面図である。図21に示されるように、第7参考例のコイルに備えられる導体10の断面形状11eは、図8に示す第2参考例と同様にI字状であり、長手方向の長さL4(図8参照)と、中心軸2側の縁と中心軸2とは反対側の縁との間隔t(図8参照)とによって定義される。電線の任意の部分において、基準直線18は、中心軸2に直交する。
【0087】
図22は、第8参考例のコイルを示す断面図である。図22に示されるように、第8参考例のコイルに備えられる導体10の断面形状11fは、図9に示す第3参考例と同様にO字状であり、外周縁と内周縁との間隔t(図9参照)と内径R2(図9参照)とによって定義される。
【0088】
図23は、第9参考例のコイルを示す断面図である。図23に示すように、第9参考例のコイルに備えられる電線は、図16に示す第4実施例と同じ断面形状11aを有する導体10を有する。ただし、第9参考例において、電線1は、任意の部分において、基準直線18が中心軸2と平行になるように配される。すなわち、第9参考例における断面形状11aは、第4実施例における姿勢から、中心軸2を含む平面上において基準直線18を90°回転させた姿勢を取る。
【0089】
図24は、第10参考例のコイルを示す断面図である。図24に示すように、第10参考例のコイルに備えられる電線は、図16に示す第4実施例と同じ断面形状11aを有する導体10を有する。ただし、第10参考例において、電線1は、凹状の第1縁14が中心軸2に対向し、凸状の第2縁15がコイルの外側を向くように配される。すなわち、第10参考例における断面形状11aは、第4実施例における姿勢から、中心軸2を含む平面に上において基準直線18を180°回転させた姿勢を取る。
【0090】
図25は、第11参考例のコイルを示す断面図である。図25に示すように、第11参考例のコイルに備えられる電線の導体10は、図21に示す第7参考例と同じ断面形状11eを有する。ただし、第11参考例のコイルは、第7参考例のコイルと比較して、電線の一部において基準直線18が中心軸2と直交しない点で異なる。具体的には、第7実施例と同様に、電線は、対象区間3のうちの一方の端部側に位置する第1区間3aの周りに巻回される第1部分1aと、対象区間3のうちの他方の端部側に位置する第2区間3bの周りに巻回される第2部分1bと、対象区間3のうちの第1区間3aと第2区間3bとの間に位置する第3区間3cの周りに巻回される第3部分1cと、を有する。第3部分1cにおける基準直線18cは、中心軸2に直交する。第1部分1aにおける基準直線18aは、第3部分1cに対応する基準直線18cに対して、中心軸2との交点40a,40c同士が離れる方向に傾斜する。第2部分1bにおける基準直線18bは、第3部分1cに対応する基準直線18cに対して、中心軸2との交点40b,40c同士が離れる方向に傾斜する。傾斜の度合いは、基準直線18a,18cと中心軸2の法線とのなす角度φによって表される。第1部分1aおよび第2部分1bにおける巻回数は3回であり、第3部分1cにおける巻回数は4回である。
【0091】
評価対象のモデルは、No.1B~38B,2B1~2B3,18B1~18B3,21B1~21B3,24B1~24B3,27B1~27B5,30B1~30B3のモデルを含む。No.1Bのモデルは、表2に示すNo.1の断面形状の導体を有する電線を中心軸2の周りに螺旋状に10回巻回したコイル(図20に示す第6参考例のコイル)に対応する。No.2Bのモデルは、No.2の断面形状の導体を有する電線を中心軸2の周りに螺旋状に10回巻回し、断面形状の基準直線18が中心軸2と直交するコイル(図21に示す第7参考例のコイル)に対応する。No.3Bのモデルは、No.3の断面形状の導体を有する電線を中心軸2の周りに螺旋状に10回巻回したコイル(図22に示す第8参考例のコイル)に対応する。
【0092】
No.4B~9Bのモデルは、No.4~9の断面形状の導体を有する電線を中心軸2の周りに螺旋状に10回巻回したコイル(図17に示す第5実施例のコイル100B)にそれぞれ対応する。
【0093】
No.10B~15Bのモデルは、No.10~15の断面形状の導体を有する電線を中心軸2の周りに螺旋状に10回巻回したコイル(図18に示す第6実施例のコイル100B)にそれぞれ対応する。
【0094】
No.16B~38Bのモデルは、No.16~38の断面形状の導体を有する電線を中心軸2の周りに螺旋状に10回巻回したコイル(図16に示す第4実施例のコイル100B)にそれぞれ対応する。
【0095】
なお、No.4B~38Bのモデルは、第2縁15が中心軸2に対向し、基準直線18が中心軸2と直交するような姿勢をとる導体を有するコイルに対応する。
【0096】
No.27B1のモデルは、No.27の断面形状の導体を有する電線を、基準直線18が中心軸2と平行となるような姿勢となるように、中心軸2の周りに螺旋状に10回巻回したコイル(図23に示す第9参考例のコイル)に対応する。
【0097】
No.27B2のモデルは、第1縁14が中心軸2に対向し、かつ、基準直線18が中心軸2と直交するような姿勢となるように、No.27の断面形状の導体を有する電線を中心軸2の周りに螺旋状に10回巻回したコイル(図24に示す第10参考例のコイル)に対応する。
【0098】
No.2B1~2B3のモデルは、第1部分1aおよび第2部分1bの基準直線18a,18bが中心軸2の法線に対して傾斜し、第3部分1cの基準直線18cが中心軸2に直交するように、No.2の断面形状の導体を有する電線を中心軸2の周りに螺旋状に10回巻回したコイル(図25に示す第11参考例のコイル)に対応する。No.2B1~2B3のモデルは、角度φ(図25参照)がそれぞれ30°,45°,60°に設計されたコイルに対応する。第1部分1aおよび第2部分1bの巻回数を3回とし、第3部分1cの巻回数は4回とした。
【0099】
No.18B1~18B3,21B1~21B3,24B1~24B3,27B3~27B5,30B1~30B3のモデルは、第1部分1aおよび第2部分1bの基準直線18a,18bが中心軸2の法線に対して傾斜し、第3部分1cの基準直線18cが中心軸2に直交するように、断面形状11aの導体を有する電線を中心軸2の周りに螺旋状に10回巻回したコイル(図19に示す第7実施例のコイル)に対応する。第1部分1aおよび第2部分1bの巻回数を3回とし、第3部分1cの巻回数は4回とした。
【0100】
No.18B1~18B3のモデルは、No.18の断面形状11aの導体を有するコイル100Bに対応する。No.21B1~21B3のモデルは、No.21の断面形状11aの導体を有するコイル100Bに対応する。No.24B1~24B3のモデルは、No.24の断面形状11aの導体を有するコイル100Bに対応する。No.27B3~27B5のモデルは、No.27の断面形状11aの導体を有するコイル100Bに対応する。No.30B1~30B3のモデルは、No.30の断面形状11aの導体を有するコイル100Bに対応する。
【0101】
No.18B1,21B1,24B1,27B3,30B1のモデルは、角度φ(図19参照)が30°に設計されたコイルに対応する。No.18B2,21B2,24B2,27B4,30B2のモデルは、角度φ(図19参照)が45°に設計されたコイルに対応する。No.18B3,21B3,24B3,27B5,30B3のモデルは、角度φ(図19参照)が60°に設計されたコイルに対応する。
【0102】
各モデルにおいて、巻回される電線1間のピッチP1(図16~25参照)は6mmに設定される。
【0103】
各モデルのコイル径dを50mmとしたときのシミュレーションの結果を表9~表14に示す。さらに、各モデルのコイル径dを100mmとしたときのシミュレーションの結果を表15~表20に示す。表9,10,15,16には、各周波数におけるインダクタンス(μH)が示され、表11,12,17,18には、各周波数における抵抗(Ω)が示され、表13,14,19,20には、各周波数におけるQ値が示される。
【0104】
【表9】
【0105】
【表10】
【0106】
【表11】
【0107】
【表12】
【0108】
【表13】
【0109】
【表14】
【0110】
【表15】
【0111】
【表16】
【0112】
【表17】
【0113】
【表18】
【0114】
【表19】
【0115】
【表20】
【0116】
図26は、周波数が100kHzのときの、No.1B~15Bのモデルの導体断面における電流分布を示す図である。図27は、周波数が100kHzのときの、No.16B~30Bのモデルの導体断面における電流分布を示す図である。図28は、周波数が100kHzのときの、No.31B~38B,27B1,27B2のモデルの導体断面における電流分布を示す図である。図29は、周波数が100kHzのときの、No.2B1~2B3,18B1~18B3,21B1~21B3のモデルの導体断面における電流分布を示す図である。図30は、周波数が100kHzのときの、No.24B1~24B3,27B3~27B5,30B1~30B3のモデルの導体断面における電流分布を示す図である。図26図30には、各モデルのコイル径dを50mmとしたときの電流分布が示される。なお、図26図30には、左側に中心軸2が存在する導体断面における電流分布が示される。
【0117】
図31は、コイル径dが50mmであり、周波数が100kHzであるときの、実施の形態2における各モデルのQ値を示すグラフである。図32は、コイル径dが100mmであり、周波数が100kHzであるときの、実施の形態2における各モデルのQ値を示すグラフである。図31及び図32において、横軸は中心角θs,角度θv,θuを示し、縦軸はQ値を示す。なお、図31及び図32において、θs=360°の点は、第8参考例のコイルに対応するモデルから得られた値を示している。また、θs=0°の点およびθv,θu=180°の点は、第7参考例または第11参考例のコイルに対応するモデルから得られた値を示している。
【0118】
実施の形態1と同様に、導体の断面形状が円形である第6参考例に対応するNo.1Bのモデルよりも、第4~第6実施例のコイルに対応するNo.4B~38BのモデルのQ値が高いことが認められる。
【0119】
また、第5実施例及び第6実施例のコイル(V字状及U字状)のコイルに対応するNo.4B~15BのモデルのQ値よりも、第4実施例のコイル(円弧状)のコイルに対応するNo.16B~38BのモデルのQ値の方が高くなる傾向が見られる。
【0120】
No.27B,27B1,27B2のモデルは、いずれもθs=180°の円弧状の導体を有するコイルに対応する。しかしながら、第9及び第10参考例のコイルに対応するNo.27B1,27B2のモデルよりも、第4実施例のコイルに対応するNo.27BのモデルのQ値が高いことが認められる。
【0121】
円弧状の導体を有するコイルに対応するモデルのシミュレーション結果から、Q値が中心角θsに依存することが認められる。具体的には、コイル径dが50mmの場合、中心角θsが15°~330°のときにQ値が高くなり、中心角θsが60°~285°のときにQ値がより高くなり、中心角θsが90°~240°のときにQ値がさらに高くなり、中心角θsが105°~240°のときにQ値が特に高くなる。コイル径dが100mmの場合、中心角θsが60°~345°のときにQ値が高くなり、中心角θsが120°~345°のときにQ値がより高くなり、中心角θsが180°~300°のときにQ値がさらに高くなる。
【0122】
さらに、中心軸2の対象区間3の両端側に位置する第1区間3a及び第2区間3bの周りに巻回される電線1の第1部分1a及び第2部分1bの基準直線18a,18bを傾斜させることにより、Q値が顕著に高くなることが認められる。図27及び図28に示されるように、上方側端部の第1部分1aの導体において、電流は、上方側に集中しやすい。一方、下方側端部の第2部分1bの導体において、電流は、下方側に集中しやすい。そのため、図29及び図30に示されるように、電流が集中しやすい方向に導体の姿勢を傾けることにより、導体における電流の偏在が抑制される。
【0123】
V字状の導体を有するコイルに対応するモデルのシミュレーション結果から、Q値が角度θvに依存することが認められる。コイル径dが50mmの場合、角度θvが120°~165°であるときにQ値が高くなる。コイル径dが100mmである場合、角度θvが90°~165°であるときに高くなり、角度θvが90°~150°であるときにより高くなり、角度θvが105°~135°であるときにさらに高くなる。
【0124】
U字状の導体を有するコイルに対応するモデルのシミュレーション結果から、Q値が角度θuに依存することが認められる。コイル径dが50mmの場合、角度θuが105°~165°であるときに高くなり、角度θuが120°~165°であるときにより高くなり、角度θuが120°~150°であるときにさらに高くなる。コイル径dが100mmである場合、角度θuが90°~165°であるときに高くなり、角度θuが90°~150°であるときにより高くなり、角度θuが105°~135°であるときにさらに高くなる。
【0125】
<実施の形態3>
図33は、実施の形態3に係るコイルの外観斜視図である。図33に示されるように、実施の形態3に係るコイル100Cは、実施の形態2に係るコイル100Bと比較して、中心軸2と電線1との距離が中心軸2に沿って増大または減少する点で相違する。図33に示す例では、中心軸2の上方にいくほど、中心軸2と電線1との距離が増大する。図33に示されるように、コイル径dは、電線1のうち中心軸2に最も近く巻回された部分の直径である。
【0126】
図34は、第8実施例のコイルを示す断面図である。第8実施例のコイル100Cは、図16に示す第4実施例のコイル100Bに対して実施の形態3の構成を適用することにより得られる。すなわち、図34に示されるように、第8実施例のコイル100Cは、第4実施例のコイル100Bと比較して、中心軸2に沿って電線1を螺旋状に1回巻回する間に中心軸2と電線1との距離がピッチP2だけ大きくなる点でのみ相違する。
【0127】
同様に、図17図19に示す第5~第7実施例のコイル100Bに対して実施の形態3の構成を適用することにより、第9~第11実施例のコイル(図示せず)がそれぞれ得られる。すなわち、第9実施例のコイル100Cは、第5実施例のコイル100B(図17参照)と比較して、中心軸2に沿って電線1を螺旋状に1回巻回する間に中心軸2と電線1との距離がピッチP2だけ大きくなる点でのみ相違する。第10実施例のコイル100Cは、第6実施例のコイル100B(図18参照)と比較して、中心軸2に沿って電線1を螺旋状に1回巻回する間に中心軸2と電線1との距離がピッチP2だけ大きくなる点でのみ相違する。第11実施例のコイル100Cは、第7実施例のコイル100B(図19参照)と比較して、中心軸2に沿って電線1を螺旋状に1回巻回する間に中心軸2と電線1との距離がピッチP2だけ大きくなる点でのみ相違する。
【0128】
(シミュレーション)
実施の形態2と同じ方法に従って、導体の断面形状の異なる複数のコイルの各々のモデルを評価した。
【0129】
評価対象のモデルは、第8~第11実施例のコイル100Cに対応するモデルに加えて、第12~第17参考例のコイル(図示せず)に対応するモデルを含む。第12~第17参考例のコイルは、図20図25に示す第6~第11参考例のコイルに対して実施の形態3の構成をそれぞれ適用することにより得られる。すなわち、第12~第17参考例のコイルは、第6~第11参考例のコイルとそれぞれ比較して、中心軸2に沿って電線1を螺旋状に1回巻回する間に中心軸2と電線1との距離がピッチP2だけ大きくなる点でのみ相違する。
【0130】
評価対象のモデルは、No.1C~38C,2C1~2C3,18C1~18C3,21C1~21C3,25C1~25C3,27C1~27C5,29C1~29C3のモデルを含む。No.1C~38C,2C1~2C3,18C1~18C3,21C1~21C3,25C1~25C3,27C1~27C5,29C1~29C3のモデルは、上記のNo.1B~38B,2B1~2B3,18B1~18B3,21B1~21B3,25B1~25B3,27B1~27B5,29B1~29B3のモデルとそれぞれ比較して、中心軸2に沿って電線1を螺旋状に1回巻回する間に中心軸2と電線1との距離がピッチP2だけ大きくなる点でのみ相違する。
【0131】
すなわち、No.1Cのモデルは、表2に示すNo.1の断面形状の導体を有する、第12参考例のコイルに対応する。No.2Cのモデルは、No.2の断面形状の導体を有する、第13参考例のコイルに対応する。No.3Cのモデルは、No.3の断面形状の導体を有する、第14参考例のコイルに対応する。No.4C~9Cのモデルは、No.4~9の断面形状の導体をそれぞれ有する、第9実施例のコイル100Cに対応する。No.10C~15Cのモデルは、No.10~15の断面形状の導体をそれぞれ有する、第10実施例のコイル100Cに対応する。No.16C~38Cのモデルは、No.16~38の断面形状の導体をそれぞれ有する、第8実施例のコイル100Cに対応する。No.27C1のモデルは、No.27の断面形状の導体を有する第15参考例のコイルに対応する。No.27C2のモデルは、No.27の断面形状の導体を有する第16参考例のコイルに対応する。
【0132】
No.2C1~2C3のモデルは、No.2の断面形状の導体を有する第17参考例のコイルであって、基準直線18a,18bと中心軸2の法線とのなす角度φがそれぞれ30°,45°,60°に設計されたコイルに対応する。No.18C1~18C3のモデルは、No.18の断面形状の導体を有する第11実施例のコイル100Cであって、基準直線18a,18bと中心軸2の法線とのなす角度φがそれぞれ30°,45°,60°に設計されたコイル100Cに対応する。No.21C1~21C3のモデルは、No.21の断面形状の導体を有する第11実施例のコイル100Cであって、基準直線18a,18bと中心軸2の法線とのなす角度φがそれぞれ30°,45°,60°に設計されたコイル100Cに対応する。No.24C1~24C3のモデルは、No.24の断面形状の導体を有する第11実施例のコイル100Cであって、基準直線18a,18bと中心軸2の法線とのなす角度φがそれぞれ30°,45°,60°に設計されたコイル100Cに対応する。No.27C3~27C5のモデルは、No.27の断面形状の導体を有する第11実施例のコイル100Cであって、基準直線18a,18bと中心軸2の法線とのなす角度φがそれぞれ30°,45°,60°に設計されたコイル100Cに対応する。No.30C1~30C3のモデルは、No.30の断面形状の導体を有する第11実施例のコイル100Cであって、基準直線18a,18bと中心軸2の法線とのなす角度φがそれぞれ30°,45°,60°に設計されたコイル100Cに対応する。
【0133】
各モデルにおいて、巻回される電線1間のピッチP1(図34参照)は6mmに設定され、ピッチP2は3mmに設定されている。
【0134】
各モデルのコイル径dを50mmとしたときのシミュレーションの結果を表21~表26に示す。さらに、各モデルのコイル径dを100mmとしたときのシミュレーションの結果を表27~表32に示す。表21,22,27,28には、各周波数におけるインダクタンス(μH)が示され、表23,24,29,30には、各周波数における抵抗(Ω)が示され、表25,26,31,32には、各周波数におけるQ値が示される。
【0135】
【表21】
【0136】
【表22】
【0137】
【表23】
【0138】
【表24】
【0139】
【表25】
【0140】
【表26】
【0141】
【表27】
【0142】
【表28】
【0143】
【表29】
【0144】
【表30】
【0145】
【表31】
【0146】
【表32】
【0147】
図35は、コイル径dが50mmであり、周波数が100kHzであるときの、実施の形態3における各モデルのQ値を示すグラフである。図36は、コイル径dが100mmであり、周波数が100kHzであるときの、実施の形態3における各モデルのQ値を示すグラフである。図35及び図36において、横軸は中心角θs,角度θv,θuを示し、縦軸はQ値を示す。なお、図35及び図36において、θs=360°の点は、第13参考例のコイルに対応するモデルから得られた値を示している。また、θs=0°の点およびθv,θu=180°の点は、第13参考例または第17参考例のコイルに対応するモデルから得られた値を示している。
【0148】
実施の形態1と同様に、導体の断面形状が円形である第12参考例に対応するNo.1Cのモデルよりも、第8~第10実施例のコイルに対応するNo.4C~38CのモデルのQ値が高いことが認められる。
【0149】
また、第9実施例及び第10実施例のコイル(V字状及びU字状)のコイルに対応するNo.4C~15CのモデルのQ値よりも、第4実施例のコイル(円弧状)のコイルに対応するNo.16C~38CのモデルのQ値の方が高くなる傾向が見られる。
【0150】
No.27C,27C1,27C2のモデルは、いずれもθs=180°の円弧状の導体を有するコイルに対応する。しかしながら、第15及び第16参考例のコイルに対応するNo.27C1,27C2のモデルよりも、第8実施例のコイルに対応するNo.27CのモデルのQ値が高いことが認められる。
【0151】
円弧状の導体を有するコイルに対応するモデルのシミュレーション結果から、Q値が中心角θsに依存することが認められる。具体的には、コイル径dが50mmの場合、中心角θsが60°~345°のときにQ値が高くなり、中心角θsが90°~300°のときにQ値がより高くなり、中心角θsが120°~255°のときにQ値がさらに高くなる。コイル径dが100mmの場合、中心角θsが60°~345°のときにQ値が高くなり、中心角θsが90°~345°のときにQ値がより高くなり、中心角θsが120°~330°のときにQ値がさらに高くなり、中心角θsが180°~300°のときにQ値が特に高くなる。
【0152】
さらに、中心軸2の対象区間3の両端側に位置する第1区間3a及び第2区間3bの周りに巻回される電線1の第1部分1a及び第2部分1bの基準直線18a,18bを傾斜させることにより、Q値が顕著に高くなることが認められる。
【0153】
V字状の導体を有するコイルに対応するモデルのシミュレーション結果から、Q値が角度θvに依存することが認められる。角度θvが105°~165°であるときにQ値が高くなり、角度θvが120°~150°であるときにより高くなる。
【0154】
U字状の導体を有するコイルに対応するモデルのシミュレーション結果から、Q値が角度θuに依存することが認められる。角度θuが105°~165°であるときに高くなり、角度θuが120°~150°であるときにより高くなる。
【0155】
<変形例>
上記の説明では、導体10の断面形状11として、円弧状、V字状及びU字状のものを示したが、断面形状11は、これらの形状に限定されない。例えば、導体10の断面形状11は、第1端12及び第2端13が中心軸2から離れるように、3以上の屈曲部を有していてもよい。屈曲部の個数が多くなるにつれて、円弧状に近づき、電流の偏在が生じにくくなるため、屈曲部の個数は多い方が好ましい。その場合、屈曲部の外側は面取りされている形状であることが好ましい。
【0156】
<適用例>
上記の実施の形態1~3に係るコイル100A~100Cは、磁界結合式ワイヤレス給電用コイルとして好適に用いられ得る。磁界結合式ワイヤレス給電用コイルとしては、例えば、比較的小型のウェアラブル機器の充電用コイル、スマートフォン充電用コイルや、比較的大型の電気自動車のバッテリー充電用コイルが挙げられる。また、このような非接触給電用コイルでは、通常85kHz、6.78MHz、13.56MHzなどの交流電流が流され、本実施形態のコイル100A~100Cは、10kHz以上又は100kHz以上の交流電流が流される用途において、好適に用いられ得る。
【0157】
また、上記の実施の形態1~3に係るコイル100A~100Cは、電界共振結合式ワイヤレス給電の共振用コイルとして好適に用いられ得る。電界共振結合式ワイヤレス給電の用途としては、電気自動車や電車が挙げられる。このような電界共振結合式ワイヤレス給電では、通常6.78MHz、13.56MHz、27.12MHzなどの交流電流が流され、本実施形態のコイル100A~100Cは、10kHz以上又は100kHz以上の交流電流が流される用途において、好適に用いられ得る。電界共振結合式ワイヤレス給電の共振用コイルとは、電界結合式ワイヤレス給電の送電側あるいは受電側の電力伝送カプラを含む電気回路において、力率を改善し共振状態を発生させるために挿入されるコイルである。
【0158】
磁界結合式ワイヤレス給電用コイルや電界共振結合式ワイヤレス給電の共振用コイルに限らず、特に、通常コイル用電線として使用されるリッツ線の抵抗が大きくなるような高周波数の用途や、リッツ線が使用困難であるような小型の用途では、リッツ線を用いたコイルにとって代わり上記の実施の形態1~3に係るコイル100A~100Cが好適に用いられ得る。「高周波数」とは、好ましくは1MHz以上の周波数であり、より好ましくは5MHz以上の周波数である。
【0159】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0160】
1 電線、1a 第1部分、1b 第2部分、1c 第3部分、2 中心軸、3 対象区間、3a 第1区間、3b 第2区間、3c 第3区間、10 導体、11,11a~11f 断面形状、12 第1端、13 第2端、14 第1縁、15 第2縁、16 中心点、17 線分、18,18a~18c 基準直線、20~22 屈曲部、30 絶縁材、40a~40c 交点、100A~100C コイル。
図1
図2
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