(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175810
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】乳母車の幌
(51)【国際特許分類】
B62B 9/14 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B62B9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093841
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】310019730
【氏名又は名称】グラコ・チルドレンズ・プロダクツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真輝
(72)【発明者】
【氏名】松下 祥三
(72)【発明者】
【氏名】本多 智行
【テーマコード(参考)】
3D051
【Fターム(参考)】
3D051AA02
3D051AA08
3D051BA03
3D051BB03
3D051CA09
3D051CC01
3D051CC11
3D051CC17
3D051CD01
3D051CG04
3D051CG06
3D051CG07
3D051DD05
(57)【要約】
【課題】子供を安全に着座させることが可能な乳母車の幌を提供すること。
【解決手段】乳母車の幌(7)は、子供を受け入れる座席(20)を形成する車体フレーム(6)に取り付けられる。乳母車の幌(7)は、幌骨(70)と、幌骨(70)の両端部を車体フレーム(6)に取り付ける一対の基部(80)と、幌骨(70)に取り付けられ、座席(20)の上方を覆う幌布(77)と、幌布(77)に取り付けられ、一対の基部(80)の座席(20)を向く面を覆う一対の覆い部(90)とを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
子供を受け入れる座席を形成する車体フレームに取り付けられる乳母車の幌であって、
幌骨と、
前記幌骨の両端部を前記車体フレームに取り付ける一対の基部と、
前記幌骨に取り付けられ、前記座席の上方を覆う幌布と、
前記幌布に取り付けられ、前記一対の基部の前記座席を向く面を覆う一対の覆い部とを備えている、乳母車の幌。
【請求項2】
前記幌布と前記覆い部とは、異なる材質により形成されている、請求項1に記載の乳母車の幌。
【請求項3】
前記覆い部は、前記幌布よりもクッション性を有している、請求項1または2に記載の乳母車の幌。
【請求項4】
前記基部は、前記車体フレームから前方に突出して設けられ、
前記幌骨は、幅方向内方に位置する内側幌骨と、幅方向外方に位置する外側幌骨と、前記内側幌骨と前記外側幌骨とを回動可能に前記基部に取り付ける回動軸とを含み、
前記回動軸は、幅方向に突出し、前記内側幌骨を長手方向一方端で支持し、前記外側幌骨を長手方向他方端で支持する支持棒を有する、請求項1または2に記載の乳母車の幌。
【請求項5】
前記覆い部は、前記支持棒に連結される連結部を含む、請求項4に記載の乳母車の幌。
【請求項6】
子供を受け入れる座席を形成する車体フレームに取り付けられる乳母車の幌であって、
幌骨と、
前記幌骨の両端部を前記車体フレームに取り付ける一対の基部と、
前記幌骨に取り付けられ、前記座席の上方を覆う幌布と、
前記車体フレームに取り付けられ、前記一対の基部の前記座席を向く面を覆う一対の覆い部とを備えている、乳母車の幌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乳母車の幌に関し、特に子供を受け入れる座席を形成する車体フレームに取り付けられる乳母車の幌に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、乳母車には、座席に着座した子供へ直接日光が当たらないようにするために、座席部の上方空間を覆う幌が設けられている。このような乳母車の幌を開示する文献として、たとえば特開2004-203354号公報(特許文献1)および特開2016-150654号公報(特許文献2)などが知られている。
【0003】
特許文献1には、逆U字状に屈曲された複数の幌骨の基端部を互いに枢着し、幌骨間の角度を変えることにより幌の開き具合を変えるようにしたベビーカーの幌が開示されている。特許文献2には、複数の幌骨の両端に基部材が設けられ、基部材はアームレストの後端部に対して着脱可能であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-203354号公報
【特許文献2】特開2016-150654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の乳母車は、リクライニングで使用するよりも背もたれ部を立てて椅子状態で使用することが多い。そうすると、幌骨の基端部が子供の頭部や肩部などに配置されることになり、幌骨の基端部が子供の頭部や肩部などに接触する場合があり、安全性を担保しているとは言い難かった。
【0006】
また、上記特許文献1,2に開示された乳母車の幌においても、幌の基端部が乳母車の座席側に露出しており、座席に着座した子供に接触するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、子供を安全に着座させることが可能な乳母車の幌を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明の一態様に係る乳母車の幌は、子供を受け入れる座席を形成する車体フレームに取り付けられる乳母車の幌であって、幌骨と、幌骨の両端部を車体フレームに取り付ける一対の基部と、幌骨に取り付けられ、座席の上方を覆う幌布と、幌布に取り付けられ、一対の基部の座席を向く面を覆う一対の覆い部とを備えている。
【0009】
好ましくは、幌布と覆い部とは、異なる材質により形成されている。
【0010】
好ましくは、覆い部は、幌布よりもクッション性を有している。
【0011】
好ましくは、基部は、車体フレームから前方に突出して設けられ、幌骨は、幅方向内方に位置する内側幌骨と、幅方向外方に位置する外側幌骨と、内側幌骨と外側幌骨とを回動可能に基部に取り付ける回動軸とを含み、回動軸は、幅方向に突出し、内側幌骨を長手方向一方端で支持し、外側幌骨を長手方向他方端で支持する支持棒を有する。
【0012】
好ましくは、覆い部は、支持棒に連結される連結部を含む。
【0013】
本発明の他の態様に係る乳母車の幌は、子供を受け入れる座席を形成する車体フレームに取り付けられる乳母車の幌であって、幌骨と、幌骨の両端部を車体フレームに取り付ける一対の基部と、幌骨に取り付けられ、座席の上方を覆う幌布と、車体フレームに取り付けられ、一対の基部の座席を向く面を覆う一対の覆い部とを備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、子供を安全に着座させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態1に係る乳母車を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る乳母車の一部分を拡大して示す正面図である。
【
図3】同実施形態に係る乳母車の幌を拡大して示す斜視図であり、(A)は外側から見た図であり、(B)は内側から見た図である。
【
図4】同実施形態における幌骨および基部を拡大して示す図であり、(A)は
図3(A)に対応する図であり、(B)は側面図であり、(C)は正面図である。
【
図5】幌の基部に覆い部を装着する動作を示す図であり、(A)および(B)は、
図3(A)に対応する図であり、(C)および(D)は、
図4(C)に対応する図である。
【
図6】(A)は本発明の実施形態2に係る乳母車の一部分を拡大して示す正面図であり、(B)は覆い部の一部を示す図であり、(C)は覆い部の一部と支持棒を対比して示す図である。
【
図7】同実施形態に係る乳母車の幌に関し、幌の基部に覆い部を装着する動作を示す図であり、(A)および(B)は、
図3(A)に対応する図であり、(C)は、
図4(C)に対応する図であり、(D)は、
図4(B)に対応する図である。
【
図8】本発明の実施形態3に係る乳母車の幌を取り出して示す斜視図である。
【
図9】同実施形態に係る乳母車の幌の基部を拡大して示す斜視図であり、内側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
<乳母車の概要>
図1を参照して、本実施の形態に係る乳母車1の概要について説明する。以下の説明において、前後方向は、乳母車の前後方向に対応し、左右方向は、乳母車の前方から見た左右方向に対応している。また、理解容易のため、
図1以降の図において、座席20の内方側(幅方向内側)を「I」で示し、座席20の外方側(幅方向外側)を「O」で示している。
【0018】
乳母車1の基本構造としては、一般的な乳母車の構造と同様であってよく、乳母車1は、乳母車本体2と、脚部3と、前ガード4と、一対のアームレスト5と、押し棒6と、幌7とを備える。
【0019】
乳母車本体2は、子供を受け入れる座席20を有している。座席20は、子供が着座する箇所であり、たとえば、座部21と、背もたれ部22とを有している。座部21は、座席支持部材により下方から支持されており、背もたれ部22は、背もたれ支持部材により下方から支持されている。
【0020】
図示はしていないが、座席支持部材および背もたれ支持部材には、ハンモックが掛け渡され、ハンモック上には、クッションが取り付けられている。これにより、座席支持部材上には、座部21を形成する座面が形成され、座席支持部材は、座面を下方から支持する。背もたれ支持部材上には、背もたれ部22を形成する背面が形成され、背もたれ支持部材は、背面を下方から支持する。なお、背もたれ支持部が設けられずに、押し棒6にハンモックが架け渡されて、背もたれ部22が形成されてもよい。
【0021】
脚部3は、前輪31をそれぞれ有する一対の前脚33と、後輪32をそれぞれ有する一対の後脚34とを含む。一対の前脚33と一対の後脚34には、内部に荷物を収容可能な籠状の荷物収容部35が取り付けられている。荷物収容部35は、上方が開放した平面視四角形の箱状である。荷物収容部35は、座席20の下方空間に位置する。
【0022】
前ガード4は、座席20の前方位置において幅方向に延び、座席20の左右両側に配置される一対のアームレスト5の前方に連結されている。前ガード4は、アームレスト5に対して着脱自在に設けられるものであってもよい。アームレスト5の前端は、前脚33の上端に連結され、その後端は、押し棒6の上下方向途中位置に連結される。押し棒6の両下端は、後脚34に当接し、押し棒6と後脚34とはロックされている。
【0023】
押し棒6は、略U字形状であり、その下端が、一対の後脚34に連結している反転ブラケット36に回動可能に取り付けられている。押し棒6は、
図1に示す背面押しの位置で固定されているが、前後方向に揺動可能に設けられ、対面押し位置および背面押し位置の間で切り換え可能に設けられていてもよい。以上で説明した、一対の前脚33、一対の後脚34、アームレスト5、座席支持部材、背もたれ支持部材、および押し棒6は、「車体フレーム」として機能する。
【0024】
本実施の形態に係る乳母車1は、
図1に示す展開状態(背面押し位置)と折り畳み状態とを取り得る。乳母車1を展開状態から折り畳み状態にするには、押し棒6の下端部と後脚34とのロックを解除し、反転ブラケット36を上下に反転させ、後脚34の上方に当接していた押し棒6の下端部を後脚34の下方に当接させる。このような折り畳み状態では、前脚33および後脚34の前後方向の間隔が近づき、座席20と背もたれ部22はV字状になり、前ガード4は押し棒6に沿って上方に立ち上がる。
【0025】
幌7は、押し棒6に対して取り付けられる。以下、乳母車1の幌7について詳細に説明する。
【0026】
<実施の形態1>
(幌について)
次に、
図2~
図5をさらに参照して、座席20の上方を覆う幌7について説明する。
図2は、乳母車の上方部分を拡大して示す正面図である。
図3は、幌の基部を拡大して示す斜視図であり、(A)は外側から見た図であり、(B)は内側から見た図である。
図3(A)では、理解容易のため、幌布を破線で示している。
図4は、幌骨および基部を拡大して示す図であり、(A)は
図3(A)に対応する図であり、(B)は外方から見た側面図であり、(C)は正面図である。
図5は、覆い部で幌の基部を覆う動作を示す図である。
【0027】
特に
図3(B)に示すように、幌7は、幌骨70と、幌骨70の両端部を押し棒6に取り付ける基部80と、幌骨70に取り付けられる幌布77と、幌布77に取り付けられ、基部80の座席20を向く面を覆う覆い部90とを備えている。
【0028】
幌骨70は、幅方向外方に位置する外側幌骨71と、幅方向内方に位置する内側幌骨72と、外側幌骨71および内側幌骨72の下端を回動可能に基部80に取り付ける回動軸75とを含む。外側幌骨71と内側幌骨72との間には、その幌骨71,72よりも細い補助幌骨73が位置する。補助幌骨73は、回動軸75には連結されていない幌骨であり、幌7のドーム形状を維持するために設けられる。なお、外側幌骨71が幅方向内方に位置し、内側幌骨72が幅方向外側に位置していてもよい。
【0029】
本実施の形態では、外側幌骨71、内側幌骨72、および補助幌骨73は、逆U字形状である。
図1に示すように、外側幌骨71と内側幌骨72との間には、リンク機構からなる開度規制部74が枢着されている。この開度規制部74によって、外側幌骨71の内側幌骨72に対する開度が規制される。外側幌骨71が内側幌骨72に近づくことで、図示しない閉状態とすることができ、外側幌骨71が内側幌骨72から離れることで、
図1に示すような開状態にすることができる。なお、本実施の形態では、幌骨70が2本設けられるとしたが、少なくとも1本の幌骨が設けられていればよい。
【0030】
図4(A)および
図4(B)に示すように、基部80は、押し棒6から前方に突出して設けられる。具体的には、基部80は、押し棒6に固定される固定部81と、固定部81の前面側から前方に突出し、内側幌骨72を保持する突出部82とを含む。固定部81は、押し棒6の外径形状に沿う筒形状である。固定部81は、上下に延びるスリット(図示せず)が設けられ、押し棒6に対して着脱可能であってもよい。突出部82は、上方に内側幌骨72の下端部を挿入して保持する貫通孔(図示せず)が設けられている。突出部82の略中央部には、幌骨70の回動軸75が設けられる。
【0031】
図4(C)に示すように、回動軸75は、押し棒6よりも幅方向外側に突出し、内側幌骨72を長手方向一方端(幅方向内側)で支持し、外側幌骨71を長手方向他方端(幅方向外側)で支持する支持棒76を有する。支持棒76は筒形状であり、中央孔に軸部が貫通する。そのため、支持棒76は、幌骨70の開閉動作の際に回動しない。支持棒76の幅方向寸法W(外側幌骨71の内側端部と突出部82の外側端部との間隔)は、2mm以上5mm未満、または、13mm以上20mm未満であり、幌7の開閉による指はさみを防止するために設けられている。支持棒76が設けられることにより、外側幌骨71と内側幌骨72の下端部は、幅方向に離れて位置する。なお、支持棒76は、幅方向外方に突出して設けられていたが、幅方向内方に突出していてもよい。
【0032】
図1および
図2に示すように、幌布77は、幌骨70の間に掛け渡され、ドーム型の立体形状を形成する。
図3(B)に示すように、幌布77は、典型的には2層構造であり、幌骨70の外側および内側をそれぞれ覆う外布78および内布79を含む。外布78および内布79は、布製であり、薄い生地で形成されている。外布78および内布79の厚さは、それらを重ねた厚さが0.2mm以上1.5mm以下である。外布78および内布79の材質は、たとえばポリエステル、ナイロン、ポリウレタンなどである。
【0033】
外布78および内布79は、たとえば、それぞれの外周端縁に沿って縫い付けられるとともに、外側幌骨71、内側幌骨72、および補助幌骨73の長手方向に沿って縫い付けられている。内布79は、回動軸75の上方で切断されており、外布78は、内布79よりも下方に延びており、幌骨70の外方を覆っている。これにより、幌骨70の回動軸75の外方側は、外布78により被覆されているが、回動軸75の内方側は露出している形状となる。
【0034】
図1および
図2に示すように、幌7の前端縁には、前方に向かって延びるバイザー部77aが設けられている。バイザー部77aは、前方からの日差しを遮るためのものである。バイザー部77aは、幌布77の一部が延長して設けられるものであってもよいし、幌布77とは別の布であり、幌7の前端縁に着脱可能に取り付けられるものであってもよい。
【0035】
図5(A)に示すように、覆い部90は、幌布77に取り付けられ、基部80の座席20を向く面(Iで示す幅方向内側)を覆うものである。覆い部90は、基部80の座席20を向く面全体を覆う大きさを有しているが、少なくとも突出部82の座席20を向く面覆う大きさを有していればよい。覆い部90は、幌布77とは異なる材質により形成されている。具体的には、覆い部90は、布製であり、幌布77よりもクッション性(弾力性)を有している。覆い部90の材質は、たとえばウレタンなどである。覆い部90の厚さは、2mm以上10mm以下であり、好ましくは2.5mm以上5mm以下である。2mm未満であると、薄すぎて基部80の凹凸をカバーすることができないからである。10mmを超えると、基部80を覆った場合に、覆い部90が座席20側に極端に突出することになり、邪魔になるからである。
【0036】
図5(A)に示すように、覆い部90は、幌布77に縫い付けられる覆い部本体91と、覆い部本体91に設けられ、支持棒76に連結可能な連結部92とを含む。覆い部本体91は、略矩形形状であり、幌布77の内布79の下端部に縫い付けられ、内布79の下端部から延出する延出部である。連結部92は、覆い部本体91の下端部から舌状に突出する部分であり、覆い部本体91と対向する面が雄型の面ファスナで形成されている。覆い部本体91は、雌型の面ファスナで形成されているため、固定部81を覆い部本体91に固定することが可能である。
【0037】
(覆い部の装着方法について)
図5(A)~(D)を参照して、覆い部90の装着方法について説明する。
図5(C)および
図5(D)においては、理解容易のため、幌布77の図示を省略している。
【0038】
図5(A)に示すように、覆い部90は、幌布77の内布79の下端位置であり、押し棒6と対向する位置に縫い付けられている。まず、連結部92を指で掴み、覆い部90を内側から外側に向かって基部80に巻き付けて
図5(B)に示す位置に移動させる。
図5(C)に示すように、連結部92を支持棒76に対応した位置(外側幌骨71と押し棒6との間)に移動させる。連結部92の幅方向長さは、支持棒76の幅方向長さよりもやや小さい。そのため、
図5(D)に示すように、連結部92を支持棒76の外周に沿うように巻き付けて、連結部92の雄型の面ファスナを覆い部本体91の雌型の面ファスナに固定する。
【0039】
本実施の形態の幌7は、基部80の座席20を向く面を覆い部90で覆うことができるため、幌7の基部80が子供の頭部や肩部などに直接接触することを防止することができ、子供を安全に着座させることができる。さらに、覆い部90は、幌骨70の開閉動作の際に回動しない支持棒76に固定されるため、基部80を覆い部90で覆ったとしても、幌骨70の開閉動作を妨げることがない。
【0040】
<実施の形態2>
次に、
図6および
図7を参照して、実施の形態2に係る乳母車1の幌7Aの構成例について説明する。
図6および
図7は、実施の形態2に係る乳母車の幌の一部分を示す図であり、特に
図7は、覆い部で幌の基部を覆う動作を示す図である。
図7(C)および
図7(D)においては、理解容易のため、幌布77の図示を省略している。以下に実施の形態1に示した乳母車1との相違点のみ詳細に説明する。実施の形態1と実施の形態2とは、覆い部の形状において異なる。
【0041】
図6(A)を参照して、本実施の形態の幌7Aの覆い部90Aは、幌布77に縫い付けられる覆い部本体91Aと、覆い部本体91Aの先端に設けられ、硬質の部材で形成される板状部93Aとを含む。覆い部本体91Aは、略矩形形状であり、幌布77の内布79の下端部に縫い付けられ、内布79の下端部から延出する延出部である。板状部93Aは、覆い部本体91Aの前面(装着時にて基部80を向く側)上に重ねて設けられている。板状部93Aは、たとえばポリプロピレン板(PPシート)などであり、覆い部本体91Aよりも硬い部材で形成される。
【0042】
図6(B)は覆い部本体91Aだけを取り出して示す図であり、
図6(C)は板状部93Aだけを取り出し、支持棒76の断面図と対比させた図である。
図6(C)に示すように、板状部93Aの端部には、切込み部94Aが形成されている。
図6(B)に示すように、覆い部本体91Aの端部には、板状部93Aの切込み部95Aに対応する位置に線状の切欠き部92Bが設けられている。覆い部本体91Aは、布製であるのに対し、板状部93Aは硬質の部材で形成されている。そのため、支持棒76への固定の際に機能するのは、板状部93Aの切り込み部94Aである。
【0043】
切込み部94Aは、内方に向かって凹んだ形状であり、円部95Aと、覆い部本体91Aの端部から円部95Aに連なる連通部96Aとを有する。円部95は、支持棒76の円形の断面形状に沿う形状である。支持棒76の直径をL1、連通部96Aの幅をL2、円部95の直径をL3とした場合、L2<L1<3の関係が成立する。このような寸法で設計されているため、切込み部94Aが支持棒76から抜けにくい形状となる。本実施の形態では、この切込み部94Aが支持棒76に連結される連結部として機能する。
【0044】
次に、本実施の形態の幌7Aの装着方法について説明する。
図7(A)に示すように、覆い部本体91Aの端部を指で掴んで、基部80を覆うように覆い部90Aを内側から外側に向かって移動させ、覆い部本体91Aを基部80に巻き付け、
図7(B)に示す位置に移動させる。さらに、
図7(C)および
図7(D)に示すように、覆い部本体91Aおよび板状部93Aの端部を支持棒76に対応した位置に移動させ、覆い部本体91Aおよび板状部93Aの端部を外側幌骨71と突出部82との間に挿入し、切込み部94Aの円部95Aを支持棒76に引っ掛けて、基部80を覆い部本体91で覆った状態で固定する。
【0045】
本実施の形態の覆い部90Aは、板状部93Aを硬質の部材で形成したため、切込み部94Aを支持棒76に差し込むだけで、基部80の座席20を向く面(I側)を覆い部90Aで覆うことが可能となる。これにより、より簡易な方法で子供の安全性を向上させることができる。
【0046】
<実施の形態3>
次に、
図8および
図9を参照して、実施の形態3に係る乳母車1の幌7Bの構成例について説明する。
図8は、本発明の実施形態3に係る乳母車の幌だけを拡大して示す斜視図である。
図9は、乳母車の幌の基部を拡大して示す斜視図であり、外側から見た図である。以下に実施の形態1,2に示した乳母車1との相違点のみ詳細に説明する。実施の形態1,2と実施の形態3とは、覆い部の形状において異なる。なお、
図8,
図9において、理解容易のため、覆い部90Bに薄墨を付して示している。
【0047】
本実施の形態の幌7Bの覆い部90Bは、内布79の下端に取り付けられている。覆い部90Bは、たとえば略半円形状であり、直線部分は、内布79の下端に縫い付けられ、円弧部分は、縫い付けられていない形状である。本実施の形態の覆い部90Bは、実施の形態1で説明した覆い部90と同様に、クッション性を有している。本実施の形態の覆い部90Bは、より簡易な構成で基部80の座席20を向く面を覆うことができ、覆い部90Bの下方部分が縫い付けられておらず開口しているため、幌骨70の開閉動作に影響を与えない。このように、覆い部90Bは、必ずしも連結部を備えていなくてもよい。
【0048】
<変形例について>
なお、実施の形態1~3では、基部80は、押し棒6の両端部に取り付けられたが、車体フレームに取り付けられるものであればよく、具体的には、アームレスト5、座席支持部材、背もたれ支持部材など乳母車1の車体を構成するフレームに取り付けられていればよい。
【0049】
また、実施の形態1の連結部92は、面ファスナであり、実施の形態2の連結部は、切込み94Aであるとしたが、覆い部本体91,91Aを連結する部材、方法については限定されず、たとえば、フック、紐などで支持棒76に連結されていてもよい。また、実施の形態1,2では、覆い部90が固定される箇所は、幌7,7Aの開閉に邪魔にならないようにするために、支持棒76であるとしたが、幌7,7Aの開閉に邪魔にならない箇所であれば覆い部90の連結箇所は限定されない。
【0050】
本実施の形態1の覆い部90は、クッション性を有するとして説明したが、材質によりクッション性を有することに限定されず、たとえば、厚みを有することによりクッション性を有していてもよい。たとえば、覆い部90は、幌布77と同一の材質により形成され、積層されて幌布77よりも厚みが厚く形成されることでクッション性を有していてもよい。
【0051】
他の実施形態に係る乳母車の幌は、子供を受け入れる座席を形成する車体フレームに取り付けられる乳母車の幌であって、幌骨と、幌骨の両端部を車体フレームに取り付ける一対の基部と、幌骨に取り付けられ、座席の上方を覆う幌布と、車体フレームに取り付けられ、一対の基部の座席を向く面を覆う一対の覆い部とを備えている。つまり、覆い部は、幌7ではなく、車体フレームに取り付けられるものであってもよく、具体的には、アームレスト5、座席支持部材、背もたれ支持部材などに取り付けられていればよい。
【0052】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 乳母車、6 押し棒(車体フレーム)、7,7A,7B 幌、20 座席、70 幌骨、71 外側幌骨、72 内側幌骨、75 回動軸、76 支持棒、77 幌布、80 基部、81 固定部、82 突出部、90,90A,90B 覆い部、92 連結部、94A 切込み部(連結部)。