(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175827
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0202 20160101AFI20241212BHJP
H01M 8/0247 20160101ALI20241212BHJP
C25B 1/042 20210101ALI20241212BHJP
C25B 1/26 20060101ALI20241212BHJP
C25B 9/63 20210101ALI20241212BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20241212BHJP
【FI】
H01M8/0202
H01M8/0247
C25B1/042
C25B1/26 A
C25B9/63
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093863
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】堀田 信行
(72)【発明者】
【氏名】林 諒平
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA02
4K021DB43
4K021DB53
5H126AA12
5H126AA14
5H126BB06
5H126DD05
5H126EE11
5H126JJ03
(57)【要約】
【課題】電気化学反応セルスタックの発電効率の低下を抑制する。
【解決手段】燃料電池スタック10は、空気極114と、電解質層112と、燃料極116とがこの順に重なっている単セル110と、空気極114若しくは燃料極116の周囲へのガスの供給と空気極114若しくは燃料極116の周囲からのガスの排出とを行うためのガス流路を構成する流路構成部材と、単セル110と電気的に接続される導通部材と、を備えている。流路構成部材および導通部材のうちIC用セパレータ180は、燃料室323内に配される孔縁181Eを有し、インターコネクタ190は、IC用セパレータ180と重なって配され、IC用セパレータ180に溶接されている。IC用セパレータ180とインターコネクタ190との溶接部分400は、主溶接部410と、主溶接部410よりも孔縁181Eに近接して配される端縁側溶接部420と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気極と、電解質層と、燃料極とがこの順に重なっている単セルと、
前記空気極若しくは前記燃料極の周囲へのガスの供給と前記空気極若しくは前記燃料極の周囲からのガスの排出との少なくとも一方を行うためのガス流路を構成する流路構成部材と、
前記単セルに電気的に接続される導通部材と、
を備え、
前記流路構成部材および前記導通部材の少なくとも一方が、
前記ガス流路内に配される端縁を有する第1の接合部材と、
前記第1の接合部材と重なって配され、前記第1の接合部材に溶接されている第2の接合部材と、
を含み、
前記第1の接合部材と前記第2の接合部材との溶接部分が、主溶接部と、前記主溶接部よりも前記端縁に近接して配される端縁側溶接部と、を備える、
電気化学反応セルスタック。
【請求項2】
前記第1の接合部材において前記第2の接合部材に重なっている部位の厚さが、前記第2の接合部材において前記第1の接合部材に重なっている部位の厚さよりも小さい、
請求項1に記載の電気化学反応セルスタック。
【請求項3】
前記端縁側溶接部が、前記端縁から10mm以内の領域に配されている、
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応セルスタック。
【請求項4】
前記主溶接部が、前記端縁に沿って延びる線状である、
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応セルスタック。
【請求項5】
前記端縁側溶接部が、前記主溶接部から前記端縁に向かって突出する突出部である、
請求項4に記載の電気化学反応セルスタック。
【請求項6】
複数の前記突出部を備え、
前記複数の突出部のうち第1の突出部の突出端から前記主溶接部の中心線に対して下した第1の垂線と、前記複数の突出部のうち第1の突出部に隣り合う第2の突出部の突出端から前記主溶接部の中心線に対して下した第2の垂線との距離で表される第1の突出部と第2の突出部との距離が、前記主溶接部の幅よりも短い、
請求項5に記載の電気化学反応セルスタック。
【請求項7】
前記端縁側溶接部が前記主溶接部から離れて配されている、
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応セルスタック。
【請求項8】
前記端縁側溶接部が、前記端縁に沿って延びる線状である、
請求項7に記載の電気化学反応セルスタック。
【請求項9】
前記端縁側溶接部の複数が間隔を空けて配されている、
請求項7に記載の電気化学反応セルスタック。
【請求項10】
前記端縁が、
前記単セルの中央部よりも前記ガス流路の上流側に位置する第1の端縁と、
前記単セルの中央部よりも前記ガス流路の下流側に位置する第2の端縁と、
を含み、
前記主溶接部が、
前記第1の端縁に沿って配される第1の主溶接部と、
前記第2の端縁に沿って配される第2の主溶接部と、
を含み、
前記端縁側溶接部が、
前記第1の主溶接部よりも前記第1の端縁に近接して配される第1の端縁側溶接部と、
前記第2の主溶接部よりも前記第2の端縁に近接して配される第2の端縁側溶接部と、
を含み、
前記第2の端縁と前記第2の端縁側溶接部との距離が、前記第1の端縁と前記第1の端縁側溶接部との距離よりも小さい、
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、電気化学反応セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物を含む電解質層を備える固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という)が知られている。SOFCは、一般に、複数の構成単位(電気化学反応単位)が所定の方向に並べて配置された燃料電池スタックの形態で利用される。各電気化学反応単位は、固体酸化物を含む電解質層と、電解質層を挟んで互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルを備える。燃料電池を構成する2つの部材、例えば、隣り合う2つの電気化学反応単位の単セル同士を電気的に接続するインターコネクタと、このインターコネクタを支持するセパレータとは、溶接によって接合されることがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、例えばセパレータのうち溶接位置よりも端縁に近い部位が、浮き上がるように変形して、空気極または燃料極にガスを供給するためのガス流路内に突出してしまうことがある。このような事態が生じると、ガス流路が狭くなり、発電効率が低下することが懸念される。
【0005】
このような課題は、溶接により接合されている2つの部材が、インターコネクタとセパレータとは異なる部材である場合であっても共通の課題である。また、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の構成単位である電解セル単位を複数備える電解セルスタックにも共通の課題であり、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応セルスタックにも共通の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本明細書によって開示される電気化学反応セルスタックは、空気極と、電解質層と、燃料極とがこの順に重なっている単セルと、前記空気極若しくは前記燃料極の周囲へのガスの供給と前記空気極若しくは前記燃料極の周囲からのガスの排出との少なくとも一方を行うためのガス流路を構成する流路構成部材と、前記単セルに電気的に接続される導通部材と、を備え、前記流路構成部材および前記導通部材の少なくとも一方が、前記ガス流路内に配される端縁を有する第1の接合部材と、前記第1の接合部材と重なって配され、前記第1の接合部材に溶接されている第2の接合部材と、を含み、前記第1の接合部材と前記第2の接合部材との溶接部分が、主溶接部と、前記主溶接部よりも前記端縁に近接して配される端縁側溶接部と、を備える。
【0007】
上記の構成によれば、第1の接合部材の端縁付近の部位が第2の接合部材から浮き上がるように変形することを抑制できる。これにより、ガス流路が狭くなって電気化学反応セルスタックの発電効率が低下することを抑制できる。
【0008】
(2)上記(1)に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1の接合部材において前記第2の接合部材に重なっている部位の厚さが、前記第2の接合部材において前記第1の接合部材に重なっている部位の厚さよりも小さくても構わない。
【0009】
このような構成によれば、2つの接合部材のうち相対的に薄く、変形が生じやすい第1の接合部材において、端縁付近の部位が、端縁側溶接部により固定される。これにより、第1の接合部材における端縁付近の部位の変形、およびそれに起因する発電効率の低下を、より確実に抑制できる。
【0010】
(3)上記(1)または(2)に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、前記端縁側溶接部が、前記端縁から10mm以内の領域に配されていても構わない。
【0011】
このような構成によれば、端縁から10mm以上の領域に端縁側溶接部が配されている場合と比較して、第1の接合部材における端縁付近の部位の変形、およびそれに起因する発電効率の低下を、確実に抑制できる。
【0012】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の電気化学反応セルスタックにおいて、前記主溶接部が、前記端縁に沿って延びる線状であっても構わない。
【0013】
このような構成によれば、ガスが2つの接合部材の隙間からガス流路外に漏れ出てしまうことを抑制できる。
【0014】
(5)上記(4)に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、前記端縁側溶接部が、前記主溶接部から前記端縁に向かって突出する突出部であっても構わない。
【0015】
(6)上記(5)に記載の電気化学反応セルスタックが、複数の前記突出部を備え、前記複数の突出部のうち第1の突出部の突出端から前記主溶接部の中心線に対して下した第1の垂線と、前記複数の突出部のうち第1の突出部に隣り合う第2の突出部の突出端から前記主溶接部の中心線に対して下した第2の垂線との距離で表される第1の突出部と第2の突出部との距離が、前記主溶接部の幅よりも短くても構わない。
【0016】
このような構成によれば、隣り合う2つの突出部が一定以下の間隔で配されていることにより、第1の接合部材における端縁付近の部位の変形を、より確実に抑制できる。これにより、発電効率の低下を、より確実に抑制できる。
【0017】
(7)上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の電気化学反応セルスタックにおいて、前記端縁側溶接部が前記主溶接部から離れて配されていても構わない。
【0018】
このような構成によれば、端縁側溶接部が主溶接部に繋がっている場合と比較して、端縁側溶接部の形状や配置の自由度が高い。
【0019】
(8)上記(7)に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、前記端縁側溶接部が、前記端縁に沿って延びる線状であっても構わない。
【0020】
このような構成によれば、端縁側溶接部が端縁に沿って延びる線状ではない場合と比較して、第1の接合部材における端縁付近の部位を、強固に固定できる。これにより、第1の接合部材における端縁付近の部位の変形、およびそれに起因する発電効率の低下を、より確実に抑制できる。
【0021】
(9)上記(7)または(8)に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、前記端縁側溶接部の複数が間隔を空けて配されていても構わない。
【0022】
このような構成によれば、端縁側溶接部が隙間なく延びる形状である場合と比較して、端縁側溶接部の周囲に生じる応力が主溶接部に及ぼす悪影響を小さくできる。
【0023】
(10)上記(1)から(9)のいずれか1つに記載の電気化学反応セルスタックにおいて、前記端縁が、前記単セルの中央部よりも前記ガス流路の上流側に位置する第1の端縁と、前記単セルの中央部よりも前記ガス流路の下流側に位置する第2の端縁と、を含み、前記主溶接部が、前記第1の端縁に沿って配される第1の主溶接部と、前記第2の端縁に沿って配される第2の主溶接部と、を含み、前記端縁側溶接部が、前記第1の主溶接部よりも前記第1の端縁に近接して配される第1の端縁側溶接部と、前記第2の主溶接部よりも前記第2の端縁に近接して配される第2の端縁側溶接部と、を含み、前記第2の端縁と前記第2の端縁側溶接部との距離が、前記第1の端縁と前記第1の端縁側溶接部との距離よりも小さくても構わない。
【0024】
電気化学反応セルスタックにおいては、単セルにおける水素と酸素との電気化学反応が発熱反応であるため、ガス流路において、単セルの上流側よりも下流側の方が高温になりやすい。このため、第1の接合部材が有する端縁のうち、単セルを基準として相対的に上流側に位置する端縁よりも下流側に位置する端縁に近い部位に、変形が生じやすい。したがって、相対的に下流側に位置する第2の端縁の近傍において、端縁に相対的に近い位置に端縁側溶接部を配することにより、変形をより効果的に抑制できる。これにより、発電効率の低下を、より確実に抑制できる。
【発明の効果】
【0025】
本明細書によって開示される電気化学反応セルスタックによれば、電気化学反応セルスタックの発電効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態1の燃料電池セルスタックの外観構成を示す斜視図
【
図2】実施形態1の燃料電池セルスタックを
図1のII-II線で切断して示す断面図
【
図3】実施形態1の燃料電池セルスタックを
図1のIII-III線で切断して示す断面図
【
図4】実施形態1の燃料電池セルスタックを
図1のIV-IV線で切断して示す断面図
【
図5】実施形態1の燃料電池セルスタックにおける隣り合う2つの電気化学反応単位を、
図1のII-II線と同じ位置で切断して示す断面図
【
図6】実施形態1の燃料電池セルスタックにおける隣り合う2つの電気化学反応単位を、
図1のIII-III線と同じ位置で切断して示す断面図
【
図7】実施形態1のICセパレータ、およびICセパレータに接合されたインターコネクタの平面図
【
図8】実施形態1において、ICセパレータとインターコネクタとが接合された部位を、
図7のVIII-VIII線で切断して示す部分拡大断面図
【
図9】実施形態1において、ICセパレータとインターコネクタとが重ねられた部位にレーザを照射して主溶接部を形成する工程を示す部分拡大断面図
【
図10】実施形態1において、ICセパレータとインターコネクタとが重ねられた部位にレーザを照射して端部側溶接部を形成する工程を示す部分拡大断面図
【
図11】実施形態2のICセパレータ、およびICセパレータに接合されたインターコネクタの平面図
【
図13】実施形態2において、ICセパレータとインターコネクタとが接合された部位を、
図12のXIII-XIII線で切断して示す部分拡大断面図
【
図14】実施形態3のICセパレータ、およびICセパレータに接合されたインターコネクタについて、
図11の枠Fで示す領域と同じ領域を拡大して示す平面図
【
図15】実施形態4のICセパレータ、およびICセパレータに接合されたインターコネクタについて、
図11の枠Fで示す領域と同じ領域を拡大して示す平面図
【
図16】実施形態5の燃料極集電部材、および燃料極集電部材に接合されたインターコネクタの一部を拡大して示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書によって開示される技術の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0028】
<実施形態1>
実施形態1を、
図1から
図10を参照しつつ説明する。本実施形態の燃料電池スタック10(電気化学反応セルスタックの一例)は、固体酸化物を含む電解質層112を備える固体酸化物形の燃料電池に用いられる。
【0029】
(燃料電池スタック10の全体構成)
燃料電池スタック10は、
図1-
図4に示すように、発電ブロック100と、第1エンドプレート210と、第2エンドプレート230と、末端セパレータ220と、4つのガス通路部材280A、280Bと、を備える。発電ブロック100は、複数(本実施形態では7つ)の電気化学反応単位100U(以下、「反応単位100U」と略記することがある)により構成される。各電気化学反応単位100Uは、単セル110と、単セル用セパレータ120と、空気極フレーム130と、燃料極フレーム140と、燃料極集電部材144と、2つのインターコネクタ190と、2つのIC用セパレータ180と、を備える。
【0030】
単セル用セパレータ120、空気極フレーム130、燃料極フレーム140、インターコネクタ190、IC用セパレータ180、末端セパレータ220、および第2エンドプレート230が、流路構成部材に該当する。流路構成部材は、単セル110の周囲へのガスの供給、および単セル110の周囲からのガスの排出を行うためのガス流路(マニホールド311、312、321、322、および空気室313、燃料室323)を形成するための部材である。また、燃料極集電部材144、インターコネクタ190、IC用セパレータ180、燃料極フレーム140、第1エンドプレート210、末端セパレータ220、および第2エンドプレート230が、導通部材に該当する。なお、IC用セパレータ180、燃料極フレーム140、インターコネクタ190、末端セパレータ220、および第2エンドプレート210は、流路構成部材と導通部材とを兼ねている。導通部材は、単セル110と電気的に接続され、単セル110上での電気化学反応により生成された電気エネルギーを燃料電池スタック10から外部へ取り出すための部材である。
【0031】
第1エンドプレート210、発電ブロック100、末端セパレータ220、および第2エンドプレート230は、ほぼ同じ大きさの矩形の外形を有しており、所定の配列方向(
図2の上下方向)に、この順に重なって配置されている。
【0032】
燃料電池スタック10は、
図1および
図4に示すように、4つの角部付近に、それぞれ、第1エンドプレート210から末端セパレータ220まで貫通するボルト孔BHを有している。各ボルト孔BHにはボルトBが挿入されている。第2エンドプレート230は、4つのボルト孔BHに対応する位置に、4つのねじ穴THを有している。各ボルトBの一端が各ねじ穴THにねじ込まれており、各ボルトBの他端にはナットNがねじ付けられている。これらのボルトBおよびナットNにより、第1エンドプレート210から第2エンドプレート230までの部材が一体に締結されている。なお、ナットNと第1エンドプレート210との間には第1絶縁シートS1が介在している。
図2-
図4に示すように、4つのガス通路部材280A、280Bは第2エンドプレート230に接続されている。
【0033】
発電ブロック100を構成する複数の反応単位100Uは、所定の配列方向(
図2の上下方向)に並んで配置されている。
図5および
図6に示すように、各反応単位100Uは、一方のIC用セパレータ180、空気極フレーム130、単セル用セパレータ120、燃料極フレーム140、他方のIC用セパレータ180が、この順に重なって構成されている。単セル110は単セル用セパレータ120に支持され、2つのインターコネクタ190は2つのIC用セパレータ180にそれぞれ支持され、燃料極集電部材144は単セル110とインターコネクタ190との間に配されている。
【0034】
図5および
図6に示すように、IC用セパレータ180およびインターコネクタ190は、隣り合う2つの反応単位100Uに共有されている。但し、
図2に示すように、複数の反応単位100Uのうち一端(
図2の下端)に位置する反応単位100Uは、燃料極フレーム140に隣り合うIC用セパレータ180とインターコネクタ190とを備えておらず、燃料極フレーム140に末端セパレータ220が重なっている。
【0035】
(単セル110)
単セル110は、電解質層112と、空気極114と、燃料極116と、を備える。
図5および
図6に示すように、空気極114と、電解質層112と、燃料極116とが、この順に重なって配されており、電解質層112と空気極114との間には、反応防止層118が介在している。本実施形態の単セル110は、燃料極116によって単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、反応防止層118)が支持される燃料極支持形の単セルである。
【0036】
電解質層112は、矩形の平板状の部材であって、空気極114が配された一面(
図5、
図6の上面)と、燃料極116が配され、一面に平行な他面(
図5、
図6の下面)と、を有する。電解質層112は、固体酸化物(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア))を含む層である。空気極114は、電解質層112より小さい矩形の外形を有する層であり、例えばペロブスカイト型酸化物(例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))を含む。燃料極116は、電解質層112と略同じ大きさの矩形の外形を有する層であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等を含む。反応防止層118は、空気極114と略同じ大きさの矩形の外形を有する層であり、例えばGDC(ガドリニウムドープセリア)とを含む。反応防止層118は、空気極114から拡散した元素(例えば、Sr)が電解質層112に含まれる元素(例えば、Zr)と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO
3)が生成されることを抑制する機能を有する。
【0037】
(単セル用セパレータ120)
単セル用セパレータ120は、
図5および
図6に示すように、中央付近に略矩形の貫通孔121を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。単セル用セパレータ120の板厚は、比較的薄く、例えば0.05mm以上、0.2mm以下程度である。単セル用セパレータ120における貫通孔121の周縁部は、電解質層112の一面(空気極114が配された面:
図5、
図6の上面)に、接合部124によって接合されている。接合部124は、例えばロウ材(Agロウ)により形成されている。
【0038】
(空気極フレーム130)
空気極フレーム130は、
図5および
図6に示すように、中央付近に略矩形の貫通孔131を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えば、絶縁性を有するセラミックス(マイカ等)により形成されている。
【0039】
(燃料極フレーム140)
燃料極フレーム140は、
図5および
図6に示すように、中央付近に略矩形の貫通孔141を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。
【0040】
(IC用セパレータ180)
IC用セパレータ180は、
図5および
図6に示すように、中央付近に略矩形の貫通孔181を有するフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。貫通孔181は、略矩形の孔縁181E(端縁の一例)によって規定される孔である。IC用セパレータ180は、
図5、
図6および
図8に示すように、空気極フレーム130に接し、単セル110の方を向く第1面180F1と、第1面180F1とは反対側の面であって、燃料極フレーム140に接する第2面180F2と、を有している。IC用セパレータ180は、
図7に示すように、4つのボルト孔BHのそれぞれを構成する孔である4つのボルト構成孔BHAを有している。
【0041】
(インターコネクタ190、および、燃料極集電部材144)
インターコネクタ190は、
図5および
図6に示すように、矩形の平板形状の平板部191と、平板部191から空気極114に向かって突出した複数の板状の空気極集電部192と、被覆層193と、酸化被膜194と、を備えている。平板部191と空気極集電部192とは、導電性を有し、金属(例えば、フェライト系ステンレス)により形成されている。被覆層193は、導電性を有し、空気極集電部192の表面と、平板部191において空気極集電部192が配された面と、を覆うように配されている。酸化被膜194は、平板部191において空気極集電部192が配された面と反対側の面を覆うように配されている。
【0042】
インターコネクタ190は、
図5、
図6および
図7に示すように、孔縁181Eよりも一回り大きな外形を有しており、IC用セパレータ180の第1面180F1に、貫通孔181を塞ぐように重ねられている。平板部191は、IC用セパレータ180における貫通孔181の周縁部に酸化被膜194を介して重ねられ、溶接により接合されている。
図8に示すように、インターコネクタ190においてIC用セパレータ180に重なっている部位の厚さT2は、IC用セパレータ180においてインターコネクタ190に重なっている部位の厚さT1よりも大きくなっている。「IC用セパレータ180においてインターコネクタ190に重なっている部位の厚さT1」は、IC用セパレータ180の当該部位において、インターコネクタ190に接する第1面180F1から、その反対側の第2面180F2までの距離で表される。また、「インターコネクタ190においてIC用セパレータ180に溶接されている部分の厚さT2」は、インターコネクタ190の当該部位において、IC用セパレータ180の第1面180F1に接する面(
図8において酸化被膜194の上面)から、その反対側の面(
図8において被覆層193の下面)までの距離で表される。なお、IC用セパレータ180においてインターコネクタ190に重なっている部位の厚さが一定ではない場合には、最も厚い部位の厚さの値を「厚さT1」とすればよい。また、インターコネクタ190においてIC用セパレータ180に重なっている部位の厚さが一定ではない場合には、最も厚い部位の厚さの値を「厚さT2」とすればよい。
【0043】
燃料極集電部材144は、インターコネクタ190と燃料極116とを接続する部材であって、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等の導電性材料により形成されている。燃料極集電部材144は、
図5および
図6に示すように、インターコネクタ対向部146と、インターコネクタ対向部146に平行な電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部(図示せず)とを備えている。電極対向部145は、燃料極116に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ190の平板部191に接触している。
【0044】
上記したように、インターコネクタ190は、隣り合う2つの反応単位100Uに共有されている。より具体的には、
図5および
図6に示すように、空気極集電部192は、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性接合材196を介して、隣り合う2つの反応単位100Uのうち一方に備えられる単セル110の空気極114に接合されており、これにより空気極114に電気的に接続されている。平板部191は、燃料極集電部材144を介して、隣り合う2つの反応単位100Uのうち他方に備えられる単セル110の燃料極116に電気的に接続されている。これにより、隣り合う2つの反応単位100U間の電気的導通が確保されている。
【0045】
但し、上述したように、複数の反応単位100Uのうち一端(
図2の下端)に位置する反応単位100Uは、燃料極116側のインターコネクタ190を備えていない。この反応単位100Uに備えられる燃料極116は、燃料極集電部材144を介して末端セパレータ220に接続されている。
【0046】
電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極集電部材144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による反応単位100Uの変形に追随し、燃料極集電部材144を介した燃料極116とインターコネクタ190(または末端セパレータ220)との電気的接続が良好に維持される。
【0047】
(空気室313および燃料室323)
図5および
図6に示すように、単セル用セパレータ120および単セル110と、空気極フレーム130と、IC用セパレータ180およびインターコネクタ190と、で区画される空間は、空気極114に面し、酸化剤ガスOGが流通する空気室313となっている。空気極フレーム130は、空気室313を全周にわたって外部空間から区画するとともに、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180との間をシールし、空気室313から外部空間へガスが漏れ出ることを防ぐ役割を果たしている。
【0048】
また、単セル用セパレータ120および単セル110と、燃料極フレーム140と、IC用セパレータ180およびインターコネクタ190と、で区画される空間は、燃料極116に面し、燃料ガスFGが流通する燃料室323となっている。燃料極フレーム140は、燃料室323を全周にわたって外部空間から区画するとともに、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180との間をシールし、燃料室323から外部空間へガスが漏れ出ることを防ぐ役割を果たしている。
【0049】
単セル用セパレータ120により、空気室313と燃料室323とが区画され、単セル110の周辺において空気極114側から燃料極116側、または燃料極116側から空気極114側へのガスのリーク(クロスリーク)が抑制される。また、IC用セパレータ180とインターコネクタ190とにより、隣り合う反応単位100U間のガスのリークが抑制される。
【0050】
単セル用セパレータ120における貫通孔121の孔縁付近には、ガラスを含むガラスシール部125が配置されている。ガラスシール部125は、貫通孔121の孔縁を覆うとともに、単セル110(本実施形態では電解質層112)の表面に接触するように配され、貫通孔121の孔縁と単セル110との隙間を塞いでいる。ガラスシール部125により、空気極114側から燃料極116側、または燃料極116側から空気極114側へのガスのクロスリークが効果的に抑制される。
【0051】
(第1エンドプレート210)
第1エンドプレート210は、中央付近に貫通孔211を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。第1エンドプレート210は、発電ブロック100を構成する複数の反応単位100Uのうち他端(
図2の上端)に配された反応単位100Uに電気的に接続されている。第1エンドプレート210は、燃料電池スタック10のプラス側の出力端子として機能する。
【0052】
(末端セパレータ220)
末端セパレータ220は、矩形の平板状の部材であり、例えば金属などの導電材料により形成されている。
【0053】
(第2エンドプレート230)
第2エンドプレート230は、中央付近に貫通孔231を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。末端セパレータ220の周縁部は、発電ブロック100と第2エンドプレート230との間に挟み込まれた状態で、第2エンドプレート230と例えば溶接により接合されており、第2エンドプレート230と電気的に接続されている。第2エンドプレート230は、複数の反応単位100Uのうち一端(
図2の下端)に配された反応単位100Uに備えられる燃料極116に、燃料極集電部材144および末端セパレータ220を介して接続されており、これにより、この反応単位100Uと第2エンドプレート230とが電気的に接続されている。第2エンドプレート230は、燃料電池スタック10のマイナス側の出力端子として機能する。
【0054】
(マニホールド311、312、321、322)
図1、
図2および
図3に示すように、燃料電池スタック10は、発電ブロック100から第2エンドプレート230まで貫通する4つの孔を有している。4つの孔は、それぞれ、酸化剤ガス供給マニホールド311、酸化剤ガス排出マニホールド312、燃料ガス供給マニホールド321、燃料ガス排出マニホールド322である。
【0055】
図2に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド311は、燃料電池スタック10の外部から導入された酸化剤ガスOGを各反応単位100Uの空気室313に供給するためのガス流路である。酸化剤ガス排出マニホールド312は、各反応単位100Uの空気室313から排出された酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック10の外部へ排出するためのガス流路である。酸化剤ガスOGとしては、例えば空気が使用される。酸化剤ガス供給マニホールド311と酸化剤ガス排出マニホールド312とは、空気室313を挟んで、互いに反対側に配されている。
【0056】
図3に示すように、燃料ガス供給マニホールド321は、燃料電池スタック10の外部から導入された燃料ガスFGを各反応単位100Uの燃料室323に供給するためのガス流路である。燃料ガス排出マニホールド322は、各反応単位100Uの燃料室323から排出された燃料オフガスFOGを燃料電池スタック10の外部へ排出するためのガス流路である。燃料ガスFGとしては、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。燃料ガス供給マニホールド321と燃料ガス排出マニホールド322とは、燃料室323を挟んで、互いに反対側に配されている。
【0057】
各IC用セパレータ180は、
図7に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド311、酸化剤ガス排出マニホールド312をそれぞれ構成する孔であるマニホールド孔311A、312Aと、燃料ガス供給マニホールド321、燃料ガス排出マニホールド322をそれぞれ構成する孔であるマニホールド孔321A、322Aと、を有している。
【0058】
(ガス通路部材280A、280B)
4つのガス通路部材280A、280Bのうち2つは、酸化剤ガス供給マニホールド311、酸化剤ガス排出マニホールド312にそれぞれ接続されるガス通路部材280Aである。各ガス通路部材280Aは、
図2に示すように、略角筒状の本体部281Aと、本体部281Aの側面から分岐した円筒状の分岐部282Aとを有している。分岐部282Aの内部空間は本体部281Aの内部空間と連通している。分岐部282Aには、ガス配管(図示せず)が接続される。2つのガス通路部材280Aは、それぞれ、第2絶縁シートS2を介して第2エンドプレート230に接続されている。2つのガス通路部材280Aの内部空間は、酸化剤ガス供給マニホールド311、酸化剤ガス排出マニホールド312にそれぞれ連通している。
【0059】
4つのガス通路部材280A、280Bのうち他の2つは、燃料ガス供給マニホールド321、燃料ガス排出マニホールド322にそれぞれ接続されるガス通路部材280Bである。各ガス通路部材280Bは、
図3に示すように、円筒状の本体部281Bと、本体部281Bの側面から分岐した円筒状の分岐部282Bとを有している。分岐部282Bの内部空間は本体部281Bの内部空間と連通している。分岐部282Bには、ガス配管(図示せず)が接続される。2つのガス通路部材280Bは、それぞれ、第2絶縁シートS2を介して第2エンドプレート230に接続されている。2つのガス通路部材280Bの内部空間は、燃料ガス供給マニホールド321、燃料ガス排出マニホールド322にそれぞれ連通している。
【0060】
(溶接部分400)
上記したように、インターコネクタ190は、IC用セパレータ180の第1面180F1に、貫通孔181を塞ぐように重ねられている。平板部191は、IC用セパレータ180における孔縁181Eの周縁部に酸化被膜194を介して重ねられ、溶接により接合されている。
【0061】
IC用セパレータ180とインターコネクタ190とを接合する溶接部分400は、
図7および
図8に示すように、主溶接部410と、端縁側溶接部420と、を備える。
【0062】
主溶接部410は、
図7に示すように、貫通孔181の孔縁181Eに沿って延びる線状をなしている。より具体的には、主溶接部410は、孔縁181Eの外側に、孔縁181Eを全周にわたって取り囲むように配されている。主溶接部410は、
図8に示すように、IC用セパレータ180の第2面180F2から平板部191の下端付近まで延びており、第2面180F2から離れるにしたがって細くなっている。主溶接部410は、一部が孔縁181Eから20mm以内の範囲に配されていてもよく、全体が孔縁181Eから15mm以内の範囲に配されていることが、より好ましい。
【0063】
端縁側溶接部420は、
図7に示すように、主溶接部410から離れて配されており、貫通孔181の孔縁181Eに沿って延びる線状をなしている。より具体的には、端縁側溶接部420は、孔縁181Eと主溶接部410との間に、孔縁181Eを全周にわたって取り囲むように配されている。端縁側溶接部420は、
図8に示すように、IC用セパレータ180の第2面180F2から平板部191の下端付近まで延びており、第2面180F2から離れるにしたがって細くなっている。端縁側溶接部420は、孔縁181Eから10mm以内の範囲に配されていることが好ましい。端縁側溶接部420は、一部が孔縁181Eから10mm以内(より好ましくは5mm以内)の範囲に配されていてもよく、全体が孔縁181Eから10mm以内の範囲に配されていることが、より好ましい。
【0064】
IC用セパレータ180は、上記したように4つのボルト構成孔BHAと、4つのマニホールド孔311A、312A、321A、322Aと、を有している。
図7に示すように、溶接部分400は、これらのボルト構成孔BHAおよびマニホールド孔311A、312A、321A、322Aの配置位置を避けて配されている。より具体的には、溶接部分400は、これらのボルト構成孔BHAおよびマニホールド孔311A、312A、321A、322Aよりも内側(孔縁181Eに近い位置)に配されている。
【0065】
図7に示すように、孔縁181Eは、第1の孔縁181EU(第1の端縁の一例)と、第2の孔縁181ED(第2の端縁の一例)と、を含む。第1の孔縁181EUは、燃料ガス供給マニホールド321を構成するマニホールド孔321Aに近接して配される端縁であって、燃料ガスFGの流路において、単セル110の中央部よりも上流側に位置する。第2の孔縁181EDは、燃料ガス排出マニホールド322を構成するマニホールド孔322Aに近接して配される端縁であり、燃料ガスFGの流路において、単セル110の中央部よりも下流側に位置する。
【0066】
主溶接部410は、第1の孔縁181EUに沿って配される第1の主溶接部410Uと、第2の孔縁181EDに沿って配される第2の主溶接部410Dと、を含む。
【0067】
端縁側溶接部420は、第1の端縁側溶接部420Uと、第2の端縁側溶接部420Dと、を含む。第1の端縁側溶接部420Uは、第1の孔縁181EUに沿って配され、第1の主溶接部410Uよりも第1の孔縁181EUに近接して配されている。第2の端縁側溶接部420Dは、第2の孔縁181EDに沿って配され、第2の主溶接部410Dよりも第2の孔縁181EDに近接して配されている。第2の孔縁181EDと第2の端縁側溶接部420Dとの距離D2は、第1の孔縁181EUと第1の端縁側溶接部420Uとの距離D1よりも小さくなっている。
【0068】
(溶接部分400の形成工程)
上記の溶接部分400を形成するための工程の一例を、以下に説明する。
【0069】
まず、
図9に示すように、基台BA上にインターコネクタ190を載置し、インターコネクタ190上の所定位置にIC用セパレータ180を重ねる。次に、IC用セパレータ180において溶接したい部位と孔縁181Eとの中間位置を、治具Jで押さえ、インターコネクタ190をIC用セパレータ180に密着させる。
【0070】
この状態で、溶接装置のレーザヘッドLHを用いて、IC用セパレータ180の第1面180F1側からレーザを照射し、主溶接部410を形成させる。
【0071】
図10に示すように、主溶接部410の形成後に、治具Jを取り除く。そして、溶接装置のレーザヘッドLHを用いて、IC用セパレータ180の第1面180F1側から、主溶接部410よりも孔縁181Eに近い位置にレーザを照射し、端縁側溶接部420を形成させる。このとき、インターコネクタ190とIC用セパレータ180とは、主溶接部410によって接合されているため、インターコネクタ190をIC用セパレータ180に密着させるために治具Jを用いる必要がない。つまり、溶接位置が治具Jの制約を受けることがないので、主溶接部410を溶接する工程よりも、孔縁181Eに近い位置に溶接を施すことができる。
【0072】
上記したように、IC用セパレータ180においてインターコネクタ190に重ねられている部位の厚さT1は、インターコネクタ190においてIC用セパレータ180に重ねられている部位の厚さT2よりも小さい。このため、相対的に薄いIC用セパレータ180側からレーザを照射することにより、相対的に厚いインターコネクタ190側からレーザを照射する場合と比較して、IC用セパレータ180を貫通してインターコネクタ190に至る主溶接部410および端縁側溶接部420を容易に形成できる。これにより、IC用セパレータ180とインターコネクタ190とが確実に接合される。
【0073】
(燃料電池スタック10の動作)
図2および
図5に示すように、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材280Aおよび酸化剤ガス供給マニホールド311を通って空気室313に供給される。また、
図3および
図6に示すように、燃料ガスFGは、ガス通路部材280Bおよび燃料ガス供給マニホールド321を通って燃料室323に供給される。
【0074】
各反応単位100Uの空気室313に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室323に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。上記したように、インターコネクタ190は、隣り合う2つの反応単位100Uに共有されており、インターコネクタ190によって隣り合う2つの反応単位100U間の導通が確保されている。つまり、燃料電池スタック10に含まれる複数の反応単位100Uは、電気的に直列に接続されている。また、複数の反応単位100Uのうち一端(
図2の下端)に位置する反応単位100Uには、第2エンドプレート230が電気的に接続されており、他端(
図2の上端)に位置する反応単位100Uには、第1エンドプレート210が電気的に接続されている。これにより、燃料電池スタック10の出力端子として機能する第2エンドプレート230から、各反応単位100Uにおいて生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック10が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0075】
図2に示すように、各反応単位100Uの空気室313から酸化剤ガス排出マニホールド312に排出された酸化剤オフガスOOGは、ガス通路部材280Aの内部を通って燃料電池スタック10の外部に排出される。また、
図3に示すように、各反応単位100Uの燃料室323から燃料ガス排出マニホールド322に排出された燃料オフガスFOGは、ガス通路部材280Bの内部を通って燃料電池スタック10の外部に排出される。
【0076】
ここで、発電中は燃料電池スタック10の内部が高温になるため、熱履歴によってIC用セパレータ180が変形し、孔縁181E付近の部位がインターコネクタ190から浮き上がり、燃料室323の内部に突出してしまうことが考えられる。このような事態が生じると、燃料室323が狭くなって燃料ガスFGの流れが阻害され、燃料電池の発電効率が低下することが懸念される。
【0077】
本実施形態では、インターコネクタ190とIC用セパレータ180との溶接部分400が、主溶接部410と、主溶接部410よりも孔縁181Eに近接して配される端縁側溶接部420と、を有している。これにより、IC用セパレータ180の孔縁181Eに近い部位が浮き上がるように変形することが抑制され、燃料ガスFGの流れが阻害されることが抑制される。これにより、発電効率の低下を抑制できる。
【0078】
また、IC用セパレータ180においてインターコネクタ190に重なっている部位の厚さT1は、インターコネクタ190においてIC用セパレータ180に重なっている部位の厚さT2よりも小さい。
【0079】
インターコネクタ190よりも薄いIC用セパレータ180において、変形が生じやすい。相対的に薄いIC用セパレータ180において、孔縁181E付近の部位が端縁側溶接部420によって固定されていることにより、IC用セパレータ180の孔縁181E付近の部位が浮き上がるように変形することが、より確実に抑制される。
【0080】
また、主溶接部410および端縁側溶接部420が、孔縁181Eに沿って延びる線状であって、孔縁181Eを全周にわたって取り囲むように配されている。これにより、燃料ガスFGが、IC用セパレータ180とインターコネクタ190との隙間を通って燃料室323の外部に漏れ出てしまうことを抑制できる。また、IC用セパレータ180の孔縁181E付近の部位が浮き上がるように変形することが、より確実に抑制される。
【0081】
また、単セル110を基準として、燃料ガスFGの流路において相対的に下流側に位置する第2の孔縁181EDと第2の端縁側溶接部420Dとの距離D2が、相対的に上流側に位置する第1の孔縁181EUと第1の端縁側溶接部420Uとの距離D1よりも小さくなっている。
【0082】
ここで、燃料電池スタック10においては、単セル110における水素と酸素との電気化学反応が発熱反応であるため、単セル110の上流側よりも下流側の方が高温になりやすい。このため、IC用セパレータ180において、単セル110を基準として、相対的に上流側に位置する部位よりも、下流側に位置する部位において、熱による変形が生じやすい。また、単セル110の近傍を通過した燃料オフガスFOGは、単セル110における電気化学反応によって発生した水蒸気を含むため、単セル110の近傍を通過する前の燃料ガスFGと比較して粘性が高い。このため、単セル110を基準として相対的に上流側の位置よりも、下流側の位置において変形が生じ、ガス流路が狭くなった場合に、ガスの圧力損失が大きくなりやすい。本実施形態では、相対的に下流側に位置する第2の孔縁181EDの近傍において、第2の孔縁181EDに近い位置に第2の端縁側溶接部420Dを配することで、変形をより確実に抑制できる。これにより、燃料電池スタック10の発電効率の低下を、より確実に抑制できる。
【0083】
(作用効果)
以上のように本実施形態によれば、燃料電池スタック10は、空気極114と、電解質層112と、燃料極116とがこの順に重なっている単セル110と、空気極114若しくは燃料極116の周囲へのガスの供給と空気極114若しくは燃料極116の周囲からのガスの排出とを行うためのガス流路(空気室313、燃料室323、およびマニホールド311、312、321、322)を構成する流路構成部材(単セル用セパレータ120、空気極フレーム130、燃料極フレーム140、インターコネクタ190、IC用セパレータ180、末端セパレータ220、および第2エンドプレート230)と、単セル110と電気的に接続される導通部材(燃料極集電部材144、インターコネクタ190、IC用セパレータ180、燃料極フレーム140、第1エンドプレート210、末端セパレータ220、および第2エンドプレート230)と、を備えている。流路構成部材および導通部材のうちIC用セパレータ180は、燃料室323内に配される孔縁181Eを有している。インターコネクタ190は、IC用セパレータ180と重なって配され、IC用セパレータ180に溶接されている。IC用セパレータ180とインターコネクタ190との溶接部分400は、主溶接部410と、主溶接部410よりも孔縁181Eに近接して配される端縁側溶接部420と、を備える。
【0084】
上記の構成によれば、IC用セパレータ180の孔縁181E付近の部位がインターコネクタ190から浮き上がるように変形することを抑制できる。これにより、ガス流路が狭くなって燃料電池スタック10の発電効率が低下することを抑制できる。
【0085】
また、IC用セパレータ180においてインターコネクタ190と重なっている部位の厚さT1が、インターコネクタ190においてIC用セパレータ180と重なっている部位の厚さT2よりも小さくなっている。このような構成によれば、2つの接合部材のうち相対的に薄く、変形が生じやすいIC用セパレータ180において、孔縁181E付近の部位が、端縁側溶接部420により固定される。これにより、IC用セパレータ180における孔縁181E付近の部位の変形、およびそれに起因する発電効率の低下を、より確実に抑制できる。
【0086】
また、端縁側溶接部420が、孔縁181Eから10mm以内の領域に配されている。このような構成によれば、孔縁181Eから10mm以上の領域に端縁側溶接部420が配されている場合と比較して、IC用セパレータ180における孔縁181E付近の部位の変形、およびそれに起因する発電効率の低下を、確実に抑制できる。
【0087】
また、主溶接部410が、孔縁181Eに沿って延びる線状である。このような構成によれば、ガスがIC用セパレータ180とインターコネクタ190との隙間からガス流路外に漏れ出てしまうことを抑制できる。
【0088】
また、端縁側溶接部420が主溶接部410から離れて配されている。このような構成によれば、端縁側溶接部420が主溶接部410に接続されている場合と比較して、端縁側溶接部420の形状や配置の自由度が高い。
【0089】
また、端縁側溶接部420が、孔縁181Eに沿って延びる線状である。このような構成によれば、端縁側溶接部420が孔縁181Eに沿って延びる線状ではない場合と比較して、IC用セパレータ180における孔縁181E付近の部位を、強固に固定できる。これにより、IC用セパレータ180における孔縁181E付近の部位の変形、およびそれに起因する発電効率の低下を、より確実に抑制できる。
【0090】
また、孔縁181Eが、単セル110の中央部よりもガス流路の上流側に位置する第1の孔縁181EUと、単セル110の中央部よりもガス流路の下流側に位置する第2の孔縁181EDと、を含み、主溶接部410が、第1の孔縁181EUに沿って配される第1の主溶接部410Uと、第2の孔縁181EDに沿って配される第2の主溶接部410Dと、を含み、端縁側溶接部420が、第1の主溶接部410Uよりも第1の孔縁181EUに近接して配される第1の端縁側溶接部420Uと、第2の主溶接部410Dよりも第2の孔縁181EDに近接して配される第2の端縁側溶接部420Dと、を含み、第2の孔縁181EDと第2の端縁側溶接部420Dとの距離D2が、第1の孔縁181EUと第1の端縁側溶接部420Uとの距離D1よりも小さくなっている。
【0091】
燃料電池スタック10においては、単セル110における水素と酸素との電気化学反応が発熱反応であるため、ガス流路において、単セル110の上流側よりも下流側の方が高温になりやすい。このため、IC用セパレータ180が有する孔縁181Eのうち、単セル110を基準として、相対的に上流側に位置する孔縁181Eよりも下流側に位置する孔縁181Eに近い部位に変形が生じやすい。したがって、相対的に下流側に位置する第2の孔縁181EDの近傍において、孔縁181Eにより近い位置に端縁側溶接部420を配することにより、変形をより効果的に抑制できる。これにより、発電効率の低下を、より確実に抑制できる。
【0092】
<実施形態2>
実施形態2は、IC用セパレータ180とインターコネクタ190とを接合する溶接部分510の形状が実施形態1と異なる。溶接部分510は、
図11-13に示すように、主溶接部511と、複数の突出部512、513と、を備える。
【0093】
主溶接部511は、実施形態1と同様に、貫通孔181の孔縁181Eに沿って延びる線状をなしている。より具体的には、主溶接部511は、孔縁181Eの外側に、孔縁181Eを全周にわたって取り囲むように配されている。主溶接部511は、
図13に示すように、IC用セパレータ180の第2面180F2から平板部191の下端付近まで延びており、第2面180F2から離れるにしたがって細くなっている。
【0094】
図12に示すように、複数の突出部512、513のうち一部は、主溶接部511よりも孔縁181Eに近接して配される突出部512(端縁側溶接部の一例)である。突出部512は、主溶接部511の2つの側縁のうち一方(孔縁181Eに近い側)の側縁から孔縁181Eに向かって突出している。本実施形態では、突出部512は、主溶接部511から離れるほど細くなっている。複数の突出部512、513のうち残りは、主溶接部511の他方(孔縁181Eから遠い側)の側縁から突出する突出部513である。
【0095】
突出部512は、孔縁181Eから10mm以内に配されていることが好ましい。すべての突出部512が孔縁181Eから10mm以内に配されていてもよく、複数の突出部512のうち一部の突出部512が孔縁181Eから10mm以内に配されていてもよく、各突出部512のうち一部分が孔縁181Eから10mm以内に配されていてもよい。
【0096】
図12に示すように、複数の突出部512のうち一の突出部(第1の突出部512A)と、第1の突出部512Aと隣り合う第2の突出部512Bとの距離D3は、主溶接部511の2つの側縁間の距離で表される主溶接部511の幅Wよりも短いことが好ましい。第1の突出部512Aと第2の突出部512Bとの距離D3は、第1の突出部512Aの突出端から主溶接部511の中心線CLに対して下した第1の垂線PL1と、第2の突出部512Bの突出端から主溶接部511の中心線CLに対して下した第2の垂線PL2との距離で表される。
【0097】
その他の構成は実施形態1と同様であるので、実施形態1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0098】
本実施形態によれば、インターコネクタ190とIC用セパレータ180との溶接部分510が、主溶接部511と、主溶接部511よりも孔縁181Eに近接して配される突出部512と、を有している。これにより、実施形態1と同様に、IC用セパレータ180の孔縁181E付近の部位が浮き上がるように変形することが抑制され、燃料ガスFGの流れが阻害されることが抑制される。これにより、発電効率の低下を抑制できる。
【0099】
また、溶接部分510が複数の突出部512を備え、隣り合う2つの突出部512A、512Bの距離が、主溶接部511の幅Wよりも短くなっている。
【0100】
このような構成によれば、隣り合う2つの突出部512A、512Bが一定以下の間隔で配されていることにより、IC用セパレータ180における孔縁181E付近の部位の変形を、より確実に抑制できる。これにより、発電効率の低下を、より確実に抑制できる。
【0101】
<実施形態3>
実施形態3は、IC用セパレータ180とインターコネクタ190とを接合する溶接部分520の形状が実施形態1と異なる。溶接部分520は、
図14に示すように、主溶接部521と、複数の端縁側溶接部522と、を備える。
【0102】
主溶接部521は、実施形態1と同様に、貫通孔181の孔縁181Eに沿って延びる線状をなしている。より具体的には、主溶接部521は、貫通孔181の孔縁181Eの外側に、孔縁181Eを全周にわたって取り囲むように配されている。
【0103】
複数の端縁側溶接部522は、互いに間隔を空けて、孔縁181Eを取り囲むように並んで配されている。端縁側溶接部522は、主溶接部521よりも孔縁181Eに近接して配されている。各端縁側溶接部522は、例えばスポット状であり、複数の端縁側溶接部522は、等間隔に配されている。
【0104】
その他の構成は実施形態1と同様であるので、実施形態1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0105】
本実施形態によれば、実施形態1と同様に、IC用セパレータ180の孔縁181E付近の部位が浮き上がるように変形することが抑制され、燃料ガスFGの流れが阻害されることが抑制される。これにより、発電効率の低下を抑制できる。
【0106】
また、複数の端縁側溶接部522が間隔を空けて配されている。このような構成によれば、端縁側溶接部が隙間なく延びる形状である場合と比較して、端縁側溶接部522の周囲に生じる応力が主溶接部521に及ぼす悪影響を小さくできる。
【0107】
<実施形態4>
実施形態4は、IC用セパレータ180とインターコネクタ190とを接合する溶接部分530の形状が実施形態1と異なる。溶接部分530は、
図15に示すように、複数の主溶接部531と、端縁側溶接部532と、を備える。
【0108】
複数の主溶接部531は、互いに間隔を空けて、孔縁181Eを取り囲むように並んで配されている。各主溶接部531は、例えばスポット状である。複数の主溶接部531は、等間隔に配されている。
【0109】
端縁側溶接部532は、主溶接部531よりも孔縁181Eに近接して配されている。端縁側溶接部532は、貫通孔181の孔縁181Eに沿って延びる線状をなしている。より具体的には、端縁側溶接部532は、貫通孔181の孔縁181Eの外側に、孔縁181Eを全周にわたって取り囲むように配されている。
【0110】
その他の構成は実施形態1と同様であるので、実施形態1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0111】
本実施形態によれば、実施形態1と同様に、IC用セパレータ180の孔縁181E付近の部位が浮き上がるように変形することが抑制され、燃料ガスFGの流れが阻害されることが抑制される。これにより、発電効率の低下を抑制できる。
【0112】
また、端縁側溶接部532が、孔縁181Eに沿って延びる線状であって、孔縁181Eを全周にわたって取り囲むように配されている。これにより、燃料ガスFGが、IC用セパレータ180とインターコネクタ190との隙間を通って燃料室323の外部に漏れ出てしまうことを抑制できる。また、IC用セパレータ180の孔縁181E付近の部位が浮き上がるように変形することが、より確実に抑制される。
【0113】
<実施形態5>
実施形態5では、燃料極集電部材144(第1の接合部材)に備えられるインターコネクタ対向部146が、インターコネクタ190(第2の接合部材)に対して溶接により接合されている。インターコネクタ対向部146は、端縁146Eを有している(
図5および
図6参照)。インターコネクタ対向部146とインターコネクタ190との溶接部分540は、複数の主溶接部541と、複数の端縁側溶接部542と、を備える。
【0114】
複数の主溶接部541は、互いに間隔を空けて、端縁146Eに沿うように一列に並んでいる。各主溶接部541は、例えばスポット状であり、複数の主溶接部541は、等間隔に配されている。
【0115】
複数の端縁側溶接部542は、互いに間隔を空けて、端縁146Eに沿うように一列に並んでいる。端縁側溶接部542は、主溶接部541よりも端縁146Eに近接して配されている。各端縁側溶接部542は、例えばスポット状であり、複数の端縁側溶接部542は、等間隔に配されている。
【0116】
その他の構成は実施形態1と同様であるので、実施形態1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0117】
本実施形態によれば、燃料極集電部材144とインターコネクタ190との溶接部分540が、複数の主溶接部541と、主溶接部541よりもインターコネクタ対向部146の端縁146Eに近接して配される端縁側溶接部542と、を備える。このような構成によれば、インターコネクタ対向部146の端縁146E付近の部位が浮き上がるように変形することが抑制され、燃料ガスFGの流れが阻害されることが抑制される。これにより、発電効率の低下を抑制できる。
【0118】
また、燃料極集電部材144は、全体が燃料室323の内部に配されており、燃料室323を外部空間から区画する部材ではないから、インターコネクタ対向部146とインターコネクタ190との隙間をシールする必要性がない。このような場合には、複数の主溶接部541が互いに間隔を空けて配され、かつ、複数の端縁側溶接部542が互いに間隔を空けて配されていても構わない。
【0119】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、溶接部分400をレーザ溶接によって形成させる例を示したが、溶接部分を形成させる方法はレーザ溶接に限られず、例えば抵抗溶接であっても構わない。
(2)実施形態1-4では、第1の接合部材がIC用セパレータ180であり、第2の接合部材がインターコネクタ190であり、実施形態5では、第1の接合部材が燃料極集電部材144であり、第2の接合部材がインターコネクタ190であったが、第1の接合部材と第2の接合部材は、例えば、空気極フレームとセパレータであってもよく、燃料極フレームとセパレータであってもよく、セルスタックの外部に構成され、マニホールドを構成する部材であっても構わない。
(3)上記実施形態では、IC用セパレータ180の孔縁181Eが燃料室323の内部に配されていたが、第1の接合部材の端縁が配される位置は燃料室の内部に限られず、例えば空気室の内部であってもよく、マニホールドの内部であっても構わない。
(4)実施形態1では、第2の孔縁181EDと第2の端縁側溶接部420Dとの距離が、第1の孔縁181EUと第1の端縁側溶接部420Uとの距離よりも小さくなっていたが、例えば、第2の端縁と第2の端縁側溶接部との距離が、第1の端縁と第1の端縁側溶接部との距離と等しいか、または大きくなっていても構わない。また、他の実施形態でも同様に、第2の端縁と第2の端縁側溶接部との距離と、第1の端縁と第1の端縁側溶接部との距離との関係は任意である。
(5)実施形態2では、突出部512の形状は略三角形であったが、突出部の形状は任意であり、例えば半円状であっても構わない。
(6)実施形態2では、突出部512、513が主溶接部511の主溶接部511の2つの側縁の双方に配されていたが、突出部が主溶接部の2つの側縁のうち、端縁に近い側の側縁のみに配されていても構わない。
(7)実施形態3、5では、複数の端縁側溶接部522、542が等間隔に配されていたが、複数の端縁側溶接部の間隔は任意である。同様に、実施形態4、5では、複数の主溶接部531、541が等間隔に配されていたが、複数の主溶接部の間隔は任意である。
(8)実施形態3、5では、各端縁側溶接部522、542がスポット状であったが、複数の端縁側溶接部のそれぞれの形状は任意である。同様に、実施形態4、5では、各主溶接部531、541がスポット状であったが、複数の主溶接部のそれぞれの形状は任意である。
(9)上記実施形態では、流路構成部材である単セル用セパレータ120、空気極フレーム130、燃料極フレーム140、インターコネクタ190、IC用セパレータ180、末端セパレータ220、および第2エンドプレート230は、供給側のガス流路である酸化剤ガス供給マニホールド311、燃料ガス供給マニホールド321と、排出側のガス流路である酸化剤ガス排出マニホールド312、燃料ガス排出マニホールド322の双方を構成していたが、流路構成部材が、供給側のガス流路および排出側のガス流路のうちいずれか一方のみを構成する部材であっても構わない。あるいは、流路構成部材が、酸化剤ガスが流通するためのガス流路、および燃料ガスが流通するためのガス流路のうちいずれか一方のみを構成する部材であっても構わない。
(10)第1の接合部材と第2の接合部材とは、共に流路形成部材であってもよく、共に導通部材であってもよく、一方が流路形成部材で他方が導通部材であっても構わない。
【符号の説明】
【0120】
10:燃料電池スタック(電気化学反応セルスタック) 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 140:燃料極フレーム(導通部材) 144:燃料極集電部材(導通部材、第1の接合部材) 146E:端縁 180:IC用セパレータ(流路構成部材、導通部材、第1の接合部材) 181E:孔縁(端縁) 181ED:第2の孔縁(第2の端縁) 181EU:第1の孔縁(第1の端縁) 190:インターコネクタ(流路構成部材、導通部材、第2の接合部材) 210:第1エンドプレート(導通部材) 220:末端セパレータ(流路構成部材、導通部材) 230:第2エンドプレート(流路構成部材、導通部材) 311:酸化剤ガス供給マニホールド(ガス流路) 312:酸化剤ガス排出マニホールド(ガス流路) 313:空気室(ガス流路) 321:燃料ガス供給マニホールド(ガス流路) 322:燃料ガス排出マニホールド(ガス流路) 323:燃料室(ガス流路) 400、510、520、530、540:溶接部分 410、511、521、531、541:主溶接部 410D:第2の主溶接部 410U:第1の主溶接部 420、522、532、542:端縁側溶接部 420D:第2の端縁側溶接部 420U:第1の端縁側溶接部 512:突出部(端縁側溶接部) 512A:第1の突出部 512B:第2の突出部