(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017583
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】コインホッパ、コインホッパの回転体、およびコイン処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 1/00 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
G07D1/00 Z GBL
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120315
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116987
【氏名又は名称】旭精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安部 寛
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA08
3E141FA03
3E141GA01
3E141GB07
3E141HA03
3E141HA06
3E141LA32
3E141LA45
(57)【要約】
【課題】コインを格納する容器から、コインを一枚ずつ分離し、排出する回転体を備えたコインホッパは、回転体のコインとの当接部分が摩耗し、搬送不良を引き起こす問題があった。
【解決手段】回転体5は、金属回転体と第1樹脂回転体20と第2樹脂回転体21を備える。金属回転体は、第1樹脂回転体20と第2樹脂回転体21とによって間に挟まれて固定されている。金属回転体の各アームの一部が曲げられ押動片40が形成され、押動片40のコインとの当接部は湾曲している。金属回転体の押動片40は、第2樹脂回転体21に備わる押動片孔23から突出し、ベース上のコインを押動する。各アームにはリブが形成され、全体の強度が高められている。コインホッパは、耐久性があり強度の高い回転体5を備えることで搬送不良を防止できる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コインを格納する容器と、
前記コインを支持するベースと、
前記コインを一枚ずつ保持する複数の分離孔を有し、前記ベースに対向する位置に配置され、樹脂製の第1樹脂回転体と樹脂製の第2樹脂回転体との間に前記コインを押動する金属製の押動片を備える金属回転体が配置された回転体と、
前記回転体によって保持される前記コインの搬送経路に配置され、搬送される前記コインに当接し、前記コインの移動方向を変える制御突起と、
を有し、
前記容器に格納されている前記コインを前記分離孔に保持した状態で前記ベースの上を搬送し、前記コインを前記制御突起に当接させ、搬送される前記コインの移動方向を変え、外部に前記コインを排出するコインホッパにおいて、
前記金属回転体は、前記回転体の回転中心から放射状に配置されたアーム部と、前記アーム部の表面から突出すると共に前記回転中心と前記アーム部の先端の間であって前記回転体の隣り合う前記分離孔の間に配置される凸部と、前記アーム部の端部を曲げて形成された前記押動片と、を備え、
前記第2樹脂回転体は、前記ベースに対向する位置に配置され、
前記金属回転体は、前記第1樹脂回転体と前記第2樹脂回転体の間に挟まれ、前記押動片が前記第2樹脂回転体から前記ベースの方向に露出すると共に前記凸部が前記第1樹脂回転体と前記第2樹脂回転体の間に収納されることを特徴とするコインホッパ。
【請求項2】
前記凸部は、前記回転体の回転方向に交差する方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載のコインホッパ。
【請求項3】
前記押動片は、前記アーム部に備わる突出部であり、
前記突出部の一部は、溝によって前記アーム部から離隔しており、
前記押動片は、前記突出部を前記溝の端部から曲げた第1曲部と、前記突出部の前記溝によって前記アーム部から離隔された部分を湾曲させた第2曲部とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコインホッパ。
【請求項4】
前記第2樹脂回転体は、
表裏を貫通する押動片孔と、
前記押動片よりも厚く、前記押動片孔に隣接して前記第2樹脂回転体の表面から立設するリブと、を有し、
前記リブの側面は前記押動片の前記第2曲部に対応する曲面を有し、
前記押動片孔に前記押動片が挿入され、
前記押動片の前記コインとの当接面とは逆側の面が、前記リブの前記曲面と接し、
前記押動片が前記コインを押動するときに前記押動片にかかる力を、前記押動片と共に前記リブが受けることを特徴とする請求項3に記載のコインホッパ。
【請求項5】
前記第2樹脂回転体には、それぞれの前記押動片に対応させて配置され、前記コインを押動する金属製の押動ピンを備え、
前記押動ピンは、前記第2樹脂回転体の表裏を貫通する貫通孔に挿入されており、
前記押動ピンは、対応する前記押動片よりも前記回転体の回転方向の上流側に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコインホッパ。
【請求項6】
前記第2樹脂回転体には、それぞれの前記押動片に対応させて配置され、前記コインを押動する金属製の押動ピンを備え、
前記押動ピンは、前記第2樹脂回転体の表裏を貫通する貫通孔に挿入されており、
前記押動ピンは、対応する前記押動片よりも前記回転体の回転方向の上流側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のコインホッパ。
【請求項7】
前記金属回転体の側面には、段差部が備わり、
前記第1樹脂回転体または前記第2樹脂回転体は、前記分離孔の縁を形成する壁部を有し、
夫夫の前記壁部は、前記段差部を含む前記回転体の側面の形状に対応する肉厚部と肉薄部を備え、
前記金属回転体は、前記段差部を含む前記金属回転体の側面の一部が、前記肉厚部と前記肉薄部を含む前記壁部の側面と対向する位置に配置され、前記アーム部が、隣り合う前記分離孔の間に配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコインホッパ。
【請求項8】
前記アーム部は、前記押動片の前記回転体の回転方向の上流側に貫通孔を有し、
前記第1樹脂回転体または前記第2樹脂回転体は、前記貫通孔に嵌合する突起部を有し、
前記突起部は、前記第1樹脂回転体または前記第2樹脂回転体の平坦な面であって前記金属回転体の平坦な面と接する面から突出しており、
前記突起部には、先端側を複数の柱状体に分ける溝が備わることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコインホッパ。
【請求項9】
請求項1に記載のコインホッパと、
前記コインホッパから排出される前記コインを受けて集めるコイン受部と、を有し、
前記コインホッパは複数台配置され、それぞれの前記コインホッパから排出される前記コインを前記コイン受部が受けとることを特徴とするコイン処理装置。
【請求項10】
請求項1に記載のコインホッパに使用される回転体であることを特徴とするコインホッパの回転体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コインを一枚ずつ送り出すコインホッパ、コインホッパに用いる回転体、およびコインホッパを備えるコイン処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚のコインを格納する容器を備え、容器に格納されているコインを、1枚ずつ排出するコインホッパが知られている。
【0003】
例えば、特開2022-48988号公報に記載のコインホッパは、多数のコインを保留する容器と、容器内のコインを1枚ずつ排出する払出手段を備える。容器の底部には、開口が設けられている。払出手段の上面には、その開口に対向して回転体が配置されている。回転体には、コインが入り込む複数の分離孔が設けられている。回転体の分離孔に入ったコインは、回転体の裏面に対向するとともに離隔して配置された平坦なベース上に保持される。また、分離孔の側面には、コインを押動する押動片が設けられている。回転体の回転に伴い、コインは、押動片に押され、ベース上を移動する。ベース上の所定の位置に移動したコインは、払出手段のピンによって移動方向を変えられ、払出口から排出される。また、回転体が回転することにより容器内のコインは、攪拌される。
【0004】
押動片は、分離孔に入ったコインに当接し、回転体の回転に伴いコインを移動方向に押して搬送する。押動片は、コインとの接触によって生じる摩耗や損傷を低減するため、金属製である。
【0005】
また、この様なコインホッパを搭載したコイン処理装置が知られている。コイン処理装置は、複数のコインホッパを備え、コインを金種毎にコインホッパに格納し、コインホッパを制御して所望の金額のコインを払出すことができる。例えば、コイン処理装置は、自動釣銭機や両替機などが知られている。自動釣銭機は、投入されたコインを金種毎に格納し、釣銭の額に基づきコインを排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の回転体は、金属製の回転体を、樹脂製の2つの回転体の間に挟んで構成されている。押動片は、金属製の回転体の一部を曲げることで形成されている。押動片のコインとの当接面は、平坦である。コインは、当接部に押されると共に、当接面に沿って移動する。コインは、回転体の回転に伴い、徐々に回転体の外周方向に移動する。コインは、押動片の表面をすりながら、徐々に外周方向に移動する。ピンによって回転方向への移動を妨げられたコインを、押動片は外周方向に押すことになる。そのため、押動片のコインにかかる外周方向に働く力の成分が大きい方が望ましい。また、コインとの当接部には強い力が加わるので、回転体は、撓まないような剛性や耐久性が必要である。
【0008】
コインに当接する回転体の耐久性を向上させると共に、コインをなめらかに移動させることができ、剛性の高い回転体およびその回転体を備えたコインホッパが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコインホッパは、コインを格納する容器と、前記コインを支持するベースと、前記コインを一枚ずつ保持する複数の分離孔を有し、前記ベースに対向する位置に配置され、樹脂製の第1樹脂回転体と樹脂製の第2樹脂回転体との間に前記コインを押動する金属製の押動片を備える金属回転体が配置された回転体と、前記回転体によって保持される前記コインの搬送経路に配置され、搬送される前記コインに当接し、前記コインの移動方向を変える制御突起と、を有し、前記容器に格納されている前記コインを前記分離孔に保持した状態で前記ベースの上を搬送し、前記コインを前記制御突起に当接させ、搬送される前記コインの移動方向を変え、外部に前記コインを排出するコインホッパにおいて、前記金属回転体は、前記回転体の回転中心から放射状に配置されたアーム部と、前記アーム部の表面から突出すると共に前記回転中心と前記アーム部の先端の間であって前記回転体の隣り合う前記分離孔の間に配置される凸部と、前記アーム部の端部を曲げて形成された前記押動片と、を備え、前記第2樹脂回転体は、前記ベースに対向する位置に配置され、前記金属回転体は、前記第1樹脂回転体と前記第2樹脂回転体の間に挟まれ、前記押動片が前記第2樹脂回転体から前記ベースの方向に露出すると共に前記凸部が前記第1樹脂回転体と前記第2樹脂回転体の間に収納されることを特徴とする。
【0010】
本発明のコイン処理装置は、上述のコインホッパと、前記コインホッパから排出される前記コインを受けて集めるコイン受部と、を有し、前記コインホッパは複数台配置され、それぞれの前記コインホッパから排出される前記コインを前記コイン受部が受けとることを特徴とする。
【0011】
本発明のコインホッパの回転体は、上述のコインホッパに使用される回転体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転体およびコインホッパの耐久性を向上させることができ、また剛性を高めることができ、コインホッパにおけるコインの移動をなめらかにできる。また、本発明のコインホッパを備えたコイン処理装置によれば、コインの払出不良を低減乃至防止ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】
図3は、回転体を構成する第2樹脂回転体の斜視図である。
【
図4】
図4は、回転体を構成する金属回転体の斜視図である。
【
図5】
図5は、第2樹脂回転体と金属回転体を組み合わせた状態の斜視図である。
【
図6】
図6は、回転体の裏面側から見た場合の斜視図である。
【
図7】
図7は、第1樹脂回転体の裏面側から見た場合の斜視図である。
【
図8】
図8は、第2樹脂回転体を外した状態の回転体を、裏面側から見た場合の斜視図である。
【
図9】
図9は、コインホッパの動作を説明する図であり、
図9(a)はコインホッパの第1状態を示す図であり、
図9(b)はコインホッパの第2状態を示す図であり、
図9(c)はコインホッパの第3状態を示す図であり、
図9(d)はコインホッパの第4状態を示す図である。
【
図10】
図10は、コイン処理装置の例を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0015】
まず、コインホッパについて、
図1を用いて説明する。
図1は、コインホッパの斜視図である。コイン10は、硬貨、メダル、トークンなどである。またコイン10は、円形または多角形状の金属板である。
【0016】
コインホッパ1は、コイン10を格納する容器2と、コイン10を1枚ずつに分離して払出す本体3を備える。容器2は、本体3に対して着脱することができる。容器2の下部には、略円形の開口部であるガイド部8が設けられている。本体3の上部には、回転体5が配置されている。ガイド部8は、回転体5の外周に沿って配置され、コイン10が回転体5の上に堆積するように案内する。
【0017】
回転体5には、複数の分離孔6が設けられている。分離孔6は、回転体5の表裏を貫通する貫通孔である。ベース7は平坦な面を有し、ベース7の平坦な面に対向する位置に回転体5が回転可能に配置されている。ベース7の平坦な面と回転体5は、間にコイン10が入り込むことのできない所定の間隔で離隔している。コイン10は、分離孔6に入り、ベース7の上に保持される。コイン10は、回転体5の回転に伴い、回転体5によって押されてベース7上を摺動する。回転体5は、外周と分離孔6の間に、コイン10が通過可能な溝が備わる。回転体5によって搬送されるコイン10の移動を妨げる後述する制御突起が、ベース7の所定の位置に備わる。制御突起は、ベース7の表面から突出している。例えば、制御突起は、ピンなどの制御ピンや、板などの制御板である。制御突起はコイン10の回転方向の移動を妨げ、コイン10の移動方向を変更させ、コイン10を外周方向に案内する。制御突起に当接したコイン10は、払出口4の方向に進路を変え、分離孔6と回転体5の外周の間に設けられた溝を通り、排出方向にある払出口4から排出される。回転体5に保持されたコイン10は、所定位置に搬送されると、制御突起によって払出口4の方向に案内される。
【0018】
本体3の上部には、平坦なベース7が備わり、その上方を回転体5が回動する。回転体5の外周に沿って、容器2のガイド部8が配置される。ベース7は、払出口4が高く、その反対側が低くなるように、水平方向に対して傾斜している。ベース7が傾斜しているので、コイン10は、容器2の低い方側に集まる。堆積したコイン10の下を回転体5が通ることで、分離孔6にコイン10が入る。コイン10は回転体5によって搬送される。
【0019】
このように、コインホッパ1は、分離孔6が備わる回転体5が使用され、回転体5を回転させることで、容器2内のコイン10を分離孔6に1枚ずつ入れて払出口4から排出する。例えば、回転体5が磨耗または変形し、コイン10がベース7と回転体5の間に入り込んだ場合、コインホッパ1は、コイン10の搬送不良が生じ、最悪の場合、コインホッパ1が破損する。コインホッパ1は、摩耗や変形が防止または低減された回転体5を使用することで、コイン10を好適に搬送することができる。
【0020】
また、コイン10は、サイズ、材質、デザインなどの要素が金種毎に異なる。コイン処理装置は、所定の位置に所定の金種のコインホッパ1を備える。そのために、コインホッパ1には、金種に対応した識別孔9が備わる。コイン処理装置には、識別孔9に対応する突起が所定の位置に配置される。コイン処理装置の所定の位置に、対応する識別孔9を備えるコインホッパ1がセットされる。識別孔9と対応する突起は、コインホッパ1の装着ミスを防止できる。識別孔9と対応する突起の位置、形状は変えることができる。
【0021】
本体3の内部には、回転体5を駆動するための不図示のモーターと不図示の制御回路が備わる。モーターと回転体5は、不図示の歯車と回転軸を備える伝達機構で接続される。モーターは、制御回路の制御によって回転し、モーターに接続された回転体5を駆動する。回転軸は、ベース7に設けられた貫通孔に通され、ベース7から突出した回転軸に回転体5が固定される。
【0022】
次に回転体5について
図2を用いて説明する。
図2は、回転体の斜視図である。回転体5の上面側は、プラスチックなどの樹脂製の第1樹脂回転体20である。回転体5の裏面側は、プラスチックなどの樹脂製の第2樹脂回転体21である。回転体5には、回転体5の表裏を貫通する分離孔6が3つ備わる。回転体5には、少なくとも1つの分離孔6が設けられる。回転体5のサイズとコインのサイズに基づいて、回転体5に配置可能な分離孔6の最大数が決まる。排出溝22は、回転体5の裏面側に配置され、分離孔6と回転体5の外周の間に備わる溝である。コインは、排出溝22を通り、分離孔6から回転体5の外側に排出される。
【0023】
第1樹脂回転体20と第2樹脂回転体21の材質は、強度、耐久性、加工性、重さなどの面から、エンジニアリングプラスチックが好ましい。第1樹脂回転体20と第2樹脂回転体21が固定され、その間に、後述する金属製の回転体が挟まれている。攪拌突起14は、回転体5の表面側、すなわち第1樹脂回転体20の表面に配置された突起である。攪拌突起14は、堆積するコインを攪拌する。また、攪拌突起14は、コインが第1樹脂回転体20の表面に留まることを防止する。軸孔11は、回転体5の回転中心に設けられ、回転軸を配置する孔である。
【0024】
回転体5は、コインと接触することで摩耗や損傷が生じる。そこで、回転体5は、摩耗の低減乃至防止をするために、一部を金属製にしている。回転体5の全体を金属製にすることもできるが、回転体5を軽くするためには、回転体5の一部をプラスチックなどの樹脂製にすることが好ましい。回転体5の摩耗の激しい部分を金属製にすることで、回転体5の耐久性を高めることができる。回転体5における摩耗の激しい部分は、分離孔6の中に入ったコインを押動する部分である。コインを押動する部分は、後述する制御ピン13(
図9参照)、固定ローラー55(
図9参照)、移動ローラー56(
図9参照)にコインが当接した状態で、そのコインを押動する。コインを押動する部分には、押す力に相当する力が反力としてかかる。特にコインと接する部分には、大きな力が加わる。そのため、コインを押動する部分を金属製にし、耐久性を向上させる必要がある。コインを押動する部分は、回転体5の裏面側に配置されている。
【0025】
次に
図3を用いて説明する。
図3は、回転体を構成する第2樹脂回転体の斜視図である。
【0026】
第2樹脂回転体21の中央部には、回転軸を挿入する軸孔を形成する軸孔枠部31が、第2樹脂回転体21の底面部27から立設する。第2樹脂回転体21の外周には、底面部27から立設する枠部15が形成されている。枠部15には、コインが排出されるときに通過する窪みである排出溝22が形成されている。枠部15の内側に突出する肉厚部分に、後述する押動ピン42(
図6参照)を挿通する押動ピン孔30が備わる。
【0027】
底面部27には、分離孔6に対応し、押動片孔23が備わる。押動片孔23には、後述する金属回転体32(
図4参照)の押動片40(
図4参照)が嵌まる。底面部27には、第1貫通孔29が枠部15に沿って備わる。第1貫通孔29には、後述する第1樹脂回転体20のフック47(
図7参照)が挿入され、第2樹脂回転体21に引っ掛かり、第2樹脂回転体21と第1樹脂回転体20(
図6参照)が固定される。
【0028】
底面部27には、押動片孔23に対応し、位置決突起28が立設する。位置決突起28は、第2樹脂回転体21の平坦な面から突出している。位置決突起28は、3つ設けられている。夫々の位置決突起28は、後述する金属回転体32(
図4参照)の対応する第3貫通孔38(
図4参照)が嵌り、位置決突起28が備わる平坦な面と金属回転体32(
図4参照)の平坦な面が接する。位置決突起28は、底面部27から突出した突起部であり、先端が複数の柱状体に分かれている。底面部27から立設する位置決突起28には、溝部25が備わり、先端側が複数の柱部26に分かれている。夫々の位置決突起28の先端は、第1樹脂回転体20(
図7参照)の穴に挿入され、固定される。柱部26が撓んだ状態で穴に挿入されるので、その反力で摩擦力が大きくなり柱部26は穴から外れ難い。位置決突起28の底面部27側は溝部25が無く、基部24を形成している。基部24の外周には、第3貫通孔38(
図4参照)の内周が接し、嵌る。
【0029】
次に
図4を用いて説明する。
図4は、回転体を構成する金属回転体の斜視図である。
【0030】
金属回転体32には、回転中心に第2貫通孔35が備わり、金属回転体32の中心部33から放射状に延びた3つのアーム部34が備わる。金属回転体32は、1枚の金属板を加工して形成することができる。例えば、金属回転体32は、平坦な金属平板をプレス加工で外周や貫通孔部分を切り抜き、押動片40や第1リブ37の部分をプレス加工で曲げることで容易に作ることができる。金属回転体32は、ステンレス鋼などの鉄合金、アルミ合金などの金属の板である。夫々のアーム部34には、強度向上のために、第1リブ37が備わる。第1リブ37は、アーム部34の表面から略直方体状に突出している凸部である。凸部の裏側は窪んでいる。また、凸部は、金属回転体を変形させる他に、所望の形状の他の金属板を溶接等で固定したものでもよい。また、第1リブ37は、寸法や形状を変えても良い。第1リブ37は、各アーム部34の回転方向の略中央部に配置されている。金属回転体32の中心部33から先端方向に向かう線に沿って配置されている。第1リブ37は、金属回転体32が回転する回転方向に対して、交差する方向に延びている。第1リブ37の長手方向は回転方向に対して略90度の角度で配置されている。第1リブ37は、アーム部34に加わる回転方向を含む様々な方向の力に対して抗し、アーム部34の撓みを防いでいる。また、夫々のアーム部34の側面には、段差部36が備わる。段差部36は、夫々のアーム部34を独立させ、他のアーム部34に力を伝わり難くしている。段差部36が無くともアーム部34を形成できるが、あった方が好ましい。また、段差部36は中心部33とアーム部34を分ける分岐位置でもある。
【0031】
樹脂製の第1樹脂回転体20(
図8参照)と第2樹脂回転体21(
図5参照)の中で金属回転体32が動いてしまうと、第1樹脂回転体20(
図8参照)と第2樹脂回転体21(
図5参照)の内部が損傷し、使用の度に損傷が徐々に拡大し、金属回転体32が、がたつく問題がある。第1リブ37が配置されているアーム部34は、剛性が高く、撓み難い。複数のアーム部34を備える金属回転体32は、剛性が高く、コインとの当接時に強い力が加わったとしても、撓みが抑制される。
【0032】
夫々のアーム部34の先端部には、第3貫通孔38が備わる。夫々のアーム部34の先端部には、押動片40が備わる。第3貫通孔38は、同じアーム部34に備わる押動片40に対して、回転方向の上流側に配置されている。押動片40は、アーム部34の先端部に備わる突出部を、曲部39において凡そ90度曲げて形成されている。突出部の根元には溝があり、押動片40の先端側はアーム部34から離隔している。アーム部34から離隔している突出部の先端側を、中心部33方向に湾曲させ、湾曲部41が形成される。曲部39は、突出部の根元であり、突出部の溝の端部から曲げられた部分である。曲部39は、溝の延長線上に沿って曲げられている。押動片40は、湾曲部41を備える。押動片40は、突出部を2度曲げて形成される。押動片40を形成するための第1曲部は曲部39であり、第2曲部は、湾曲部41である。曲げる位置、量を変えることで、湾曲部41は形状を変えることができる。湾曲部41は、アーム部34の本体から溝によって離隔されているので、アーム部34から独立して曲げることができる。また、金属回転体32の基本部分を共通化し、押動片40の形状だけを変えることで、様々なサイズのコイン10に対応する押動片40付きの金属回転体32を容易に製造できる。押動片40の設けられているアーム部34の端部は、アーム部34の縁を含む部分であり、先端とは限らない。また、アーム部34の先端部は、先端を含むアーム部34の先端側の大凡半分の領域である。例えば、金属回転体32の回転中心から、アーム部34の根元と先端までの距離に基づいて判断できる。
【0033】
次に
図5を用いて説明する。
図5は、第2樹脂回転体と金属回転体を組み合わせた状態の斜視図である。第2樹脂回転体21に金属回転体32を嵌めた状態の図である。
【0034】
第2貫通孔35に底面部27から立設する軸孔枠部31が嵌り、第3貫通孔38に底面部27から立設する夫々の位置決突起28が嵌り、底面部27に備わる押動片孔23に押動片40が嵌り、金属回転体32と第2樹脂回転体21は固定される。第2樹脂回転体21と金属回転体32は、分離と結合が可能である。押動片40の形状に応じた押動片孔23が第2樹脂回転体21に備わる。押動片40の形状が変われば、押動片孔23の形状も変える必要がある。
【0035】
金属回転体32の第1リブ37が備わる面の反対側の面は、平坦であり、第2樹脂回転体21の平坦な底面部27に載置される。夫々のアーム部34は、隣り合う分離孔6の間に配置される。金属回転体32は、表裏の両側の面に第1リブ37の突出した部分を備えることもでき、また、どちらか一方側の面に突出した部分を備えることもできる。例えば、金属回転体32の第2樹脂回転体21側に第1リブ37の突出した部分を備える場合は、第2樹脂回転体21の対応する位置に凹部を設ける。第1リブ37は、第2樹脂回転体21と第1樹脂回転体20(
図8参照)の間に挟まれ、その間に収納される。
【0036】
次に、
図6について説明する。
図6は、回転体の裏面側から見た場合の斜視図である。
【0037】
回転体5は、第1樹脂回転体20と第2樹脂回転体21がフック47によって固定される。フック47は、隣り合う分離孔6の間に対応して備わる。この例では、フック47は3つである。フック47の位置や形状は変えても良い。また、フックとフックに掛かる部分との配置が逆でも良い。第1樹脂回転体20と第2樹脂回転体21は、分離と結合が可能である。回転体5は、組み立て、部品の交換、メンテナンスなどの作業が容易である。
【0038】
排出溝22、ピン逃溝46の底面を、第2樹脂回転体21の裏側底面とした場合、裏側底面から内側リブ43、中側リブ44、外側リブ45が立設する。裏側底面は平坦な面である。
【0039】
内側リブ43には、中心に回転軸を通す軸孔11が備わる。中側リブ44の回転体5の回転方向の端部の付け根には押動片孔23が備わる。押動片孔23に通された押動片40は、押動片孔23を突き抜け、押動片孔23に隣接する中側リブ44の端部の側面に接する。押動片40は、第2樹脂回転体21の押動片孔23から露出する。中側リブ44は、押動片40がコインを押動するときに加わる力を受け、押動片40の変形やがたつきを防止する。中側リブ44は、押動片40のコインとの当接面の反対側の面と接し、押動片40を支える。押動片40は中側リブ44の側面の広い面で支持されることが好ましく、さらに好ましいのは、中側リブ44の側面が押動片40の片側の全面と接することである。中側リブ44は、押動片40と共に、押動片40にかかる力を受けるので、折れ曲がらないように少なくとも押動片40よりも回転体の回転方向の厚みを厚くする。中側リブ44の押動片40と接する部分の形状は、押動片40の形状に対応した形状である。中側リブ44は、湾曲部41の少なくとも一部の形状に沿った形状を備える。中側リブ44は、湾曲部41の全面に沿った形状であっても良い。押動片孔23は、押動片40の形状に対応する形状の貫通孔であり、押動片孔23に押動片40が嵌まる。さらに、押動片40は、第2樹脂回転体21の裏面側の押動片孔23から、ベース7(
図9参照)の方向に突出する。押動片40は、湾曲部41が備わり、表面が曲面なので、押動片40の表面をすりながら移動するコインは、スムースな移動が可能である。また、回転体5の回転に応じ、押動片40は回転体の中心とコインの間に入り込み、押動片40とコインとの接点は、回転体5の中心とコインの中心とを結ぶ線に漸次近づく。
【0040】
中側リブ44は、周囲が第2樹脂回転体21の表面から突出し、中央が窪んだ形状をしている。また、中側リブ44は、押動片40の湾曲部41に対応する形状のため、回転体5の回転方向に突出する形状となっている。そのため、中側リブ44は、押動片40が扁平である場合に比べ、弾性変形し難い。回転体5のコインとの当接部は、表面は固いが、中側リブ44によって、極少しの撓みを生じさせることができる。
【0041】
外側リブ45のピン受48は、押動ピン42の回転体5の回転方向とは反対側に配置され、押動ピン42がコインとの当接によって加わる力を受ける。外側リブ45の端部の付け根には押動ピン孔30が備わる。押動ピン孔30に通された押動ピン42は、外側リブ45の端部のピン受48に接する。外側リブ45のピン受48は、押動ピン42に加わる力を受け、押動ピン42の変形やがたつきを防止する。押動ピン42のコインとの当接面の反対側は、外側リブ45のピン受48によって支えられる。外側リブ45は、第2樹脂回転体21の外周面を形成している。押動ピン42は円柱状であり、表面が曲面である。コインは、押動ピン42の表面に側面をこすりながら移動する。押動ピン42の表面が曲面なので、押動ピン42の表面をこすりながら移動するコインは、押動ピン42に引っ掛かることなくスムースに移動する。押動ピン42は、外側リブ45から回転体5の回転方向に突出した位置にあるので、コインの樹脂部との当接を防止できる。押動ピン42は、押動片40に対して、回転体5の回転方向の上流側に配置されている。押動ピン42は、押動片40に押動されたコインを、押動片40に続いて押動する。
【0042】
内側リブ43と中側リブ44の間には、ピン逃溝46が形成される。中側リブ44と外側リブ45の間には、ピン逃溝46が形成される。ピン逃溝46は、後述する制御ピン13(
図9参照)が、回転する回転体5に当接しないように配置される溝である。
【0043】
第1樹脂回転体20と第2樹脂回転体21が分離可能なので、押動ピン42の着脱も可能であり、各部品の交換も容易にできる。
【0044】
次に
図7を用いて説明する。
図7は、第1樹脂回転体の裏面側から見た場合の斜視図である。
【0045】
第1樹脂回転体20には、底面51から立設するフック47とリブ状の壁部49が備わる。第1樹脂回転体20は、外周側の3か所にフック47が備わる。フック47は、隣り合う分離孔6の間に配置されている。フック47の先端は、外側に突出する突出部が備わり、突出部を掛けることで他の部品に固定することができる。軸孔11を中心に同心円状に壁部49が形成されている。
【0046】
リブ逃溝50は、金属回転体32(
図8参照)の第1リブ37(
図8参照)の突出部分に対応する位置に備わる。リブ逃溝50は、壁部49が第1リブ37(
図8参照)を避けた状態で金属回転体32(
図8参照)を支持する。位置決突起受孔58は、対応する位置決突起28(
図5参照)が嵌合する。位置決突起28(
図5参照)は、形状、寸法を変えても良いし、第1樹脂回転体20に配置しても良い、この場合、対応する位置決突起受孔58は、第2樹脂回転体21(
図5参照)に配置することになる。
【0047】
次に
図8を用いて説明する。
図8は、第2樹脂回転体を外した状態の回転体を、裏面側から見た場合の斜視図である。第1樹脂回転体20の壁部49の上に金属回転体32と、押動ピン42が載置された状態の図である。
【0048】
隣り合う分離孔6の間に、金属回転体32の第1リブ37が配置される。また、それぞれの分離孔6に対応して押動片40が配置される。
【0049】
押動ピン42の端部には、円柱状のピンに対して直径を広げた拡径部54が備わる。拡径部54の直径は、押動ピン孔30(6参照)の開口の直径よりも大きく、押動ピン42は、押動ピン孔30を通り抜けできない。
【0050】
第1リブ37は、第1樹脂回転体20の方向に金属回転体32の表面から突出しているが、金属回転体32の裏面は窪んでいる。第1リブ37は第1樹脂回転体20のリブ逃溝50(
図7参照)に対応する位置に配置され、第3貫通孔38は位置決突起28(
図5参照)に対応する位置に配置され、軸孔枠部31は、第2貫通孔35に対応する位置に配置される。
【0051】
押動片40は、曲がっている。押動片40の先端側は、上面視で壁部49の肉厚部53に重なる位置まで突出しているが、分離孔6の開口部には重ならない。押動片40には、コインを押動する方向以外に力が加わらないようにしている。例えば、アーム部34は、上面視で分離孔6に重ならない位置に配置されているので、コインは、分離孔6に入った後に押動片40と接触し、押動される。アーム部34は、第1樹脂回転体20に覆われるので、コインが投入されたときに落ちてくるコインに直接ぶつかることはない。
【0052】
分離孔6の縁を形成する壁部49は、金属回転体32の側面に備わる段差部36の形状に対応して、肉薄部52と肉厚部53とが備わる。肉薄部52と肉厚部53の切り替わり部分が、段差部36の形状に対応する。金属回転体32の段差部36を含む側面の一部は、壁部49と接する。壁部49と金属回転体32の側面とが接することで、金属回転体32は、第1樹脂回転体20上での位置が決まいり、固定される。また、金属回転体32の段差部36を含む側面の一部と壁部49とを接触させることで、コインの押動時に押動片40にかかる回転方向の力を、広い面積で受けることができ、力を分散させて受けることができる。また、第1リブ37と対応するリブ逃溝50(
図7参照)とが係合し、第3貫通孔38と対応する位置決突起28(
図5参照)とが係合し、アーム部34の側面と対応する壁部49とが係合し、これらによって金属回転体32の回転方向のがたつきが規制され、防止される。金属回転体32は、第1樹脂回転体20の複数の部分で支持される。
【0053】
段差部36を含む金属回転体32の側面に接する壁部49が、第1樹脂回転体20に配置された例を説明したが、壁部49を第2樹脂回転体21(
図5参照)に配置しても良いし、形状や寸法を変えても良い。
【0054】
次に
図9を用いて説明する。
図9は、コインホッパの動作を説明する図であり、
図9(a)はコインホッパの第1状態を示す図であり、
図9(b)はコインホッパの第2状態を示す図であり、
図9(c)はコインホッパの第3状態を示す図であり、
図9(d)はコインホッパの第4状態を示す図である。
図9(a)から
図9(d)は、矢印の示す順で変化する状態が示されている。分離孔6に入ったコイン10が排出される動作を
図9(a)から
図9(d)を用いて説明する。
図9は、回転体5を上面視した場合の図であり、ピン逃溝46、制御ピン13、押動片40、押動ピン42など、回転体5の背面に隠れ見えない部分は破線で示されている。また、コイン10は破線で示されている。制御ピン13は、回転軸12に近い位置と、外周に近い位置の2か所に配置されている。回転体5は、回転軸12を中心に反時計回りに回転する。制御ピン13は、コイン10が回転体5によって搬送される搬送経路に配置されている。ピン逃溝46は、回転する回転体5に制御ピン13が当接しないように、回転軸12を中心に同心円状に配置されている。
【0055】
固定ローラー55と移動ローラー56とガイド57は、コイン10を勢いよく外部に排出するための機構である。移動ローラー56は、ガイド57に沿って移動可能であり、固定ローラー55の方向にバネによって付勢されている。移動ローラー56はコイン10に押され、固定ローラー55から離れる方向に移動する。コイン10は、移動ローラー56と固定ローラー55の間に押し入れられる。コイン10の移動が進み、固定ローラー55と移動ローラー56の距離がコイン10の直径を超えると、バネの力で、移動ローラー56が固定ローラー方向に移動する。コイン10は、移動ローラー56に押され、排出溝22を通り、外部に勢いよく押し出される。
【0056】
まず、
図9(a)の第1状態を示す図では、回転体5の先行する分離孔6に入ったコイン10が、押動片40によって押されて搬送され、制御ピン13に当接寸前の状態が示されている。また、後続の分離孔6はコイン10が入る直前である。
【0057】
この後、押動片40に押されたコイン10は、回転軸12に近い制御ピン13に最初に当接し、移動方向を排出溝22方向に変える。制御ピン13に当接したコイン10を更に押動片40が押すので、押動片40には、大きな力が加わる。
【0058】
次に、
図9(b)の第2状態を示す図では、コイン10が押動片40に押動され、コイン10の一部が回転体5の外側に押し出されている状態が示されている。コイン10は、回転軸12に近い制御ピン13から離れ、回転体5の外周に近い制御ピン13に当接しながら、排出溝22を通り、コイン10の一部が回転体5の外部に押し出される。コイン10は、移動ローラー56に当接し、移動ローラー56を押して移動させる。コイン10は、押動片40との当接位置を変えながら移動する。押動片40のコイン10との接触位置は、回転体5の回転が進むに従い、回転体5の中心から離れる方向に移動する。湾曲部41によって、回転体5の単位回転角度あたりの、押動片40上のコイン10の移動距離を大きくすることができる。押動片40が湾曲しているので、押動片40が、コイン10と回転軸12の間に入るよう進む。コイン10は、回転軸12から離れる方向に押動片40の表面に沿って押し出されるように移動する。コイン10は、押動片40の表面をなめらかに摺動しながら移動することができる。
【0059】
次に、
図9(c)の第3状態を示す図では、コイン10が、更に押動片40に押されながら移動する状態が示されている。コイン10は、制御ピン13と固定ローラー55によって移動方向が案内される。押動片40に押されるコイン10は、移動ローラー56を押して移動させながら、固定ローラー55と移動ローラー56の間を移動する。コイン10の移動が進み、コイン10が押動片40から離れても、コイン10は押動ピン42によって押される。コイン10は、固定ローラー55と移動ローラー56の間を外方向に向かい移動する。コイン10は、固定ローラー55と移動ローラー56の間隔がコイン10の直径に達した後に移動ローラー56が固定ローラー55の方向に移動方向が変わるまで、少なくとも押動片40または押動ピン42によって押動される。
【0060】
次に、
図9(d)の第4状態を示す図では、コイン10の移動が進み、固定ローラー55と移動ローラー56の間隔がコイン10の直径に達した後に、移動ローラー56が固定ローラー55の方向に移動している状態が示されている。移動ローラー56は固定ローラー55の方向に付勢されているので、移動ローラー56は固定ローラー55の方向に移動する。そのとき、コイン10は、移動ローラー56の戻る力によって押し出される。コイン10は排出方向に勢いよく移動する。押動ピン42は、コイン10が樹脂部分に当接しないように配置されている。
【0061】
制御ピン13、固定ローラー55または移動ローラー56にコイン10が当接しているときに押動片40または押動ピン42がコイン10を押動する場合、押動片40または押動ピン42には強い力が加わる。仮に、押動片40または押動ピン42のコイン10との接触部が樹脂製ならば、変形、摩耗してしまう。回転体5は、押動片40または押動ピン42を金属製とすることで、変形や磨耗を低減乃至防止できる。
【0062】
次に、
図10を用いてコイン処理装置について説明する。
図10は、コイン処理装置の例を説明する斜視図である。
【0063】
コイン処理装置60の貯留容器70に格納されるコイン10は、複数の金種が混じっている。コイン処理装置60は、貯留容器70に格納されたコイン10を金種毎に分けてコインホッパ1に格納する。また、コイン処理装置60は、外部機器からの指示に基づいて、コインホッパ1からコイン10を排出する。この様なコイン処理装置60は、POSシステムや両替機などに搭載される。
【0064】
コイン処理装置60は、分離部61、識別部62、振分部63からなる。貯留容器70に金種の異なるコイン10が混じった状態で投入される。分離部61では、1枚ずつコイン10を識別部62に受け渡す。識別部62では、不図示のセンサによって、1枚ずつ搬送されるコイン10の特徴を検出し、金種を特定する。金種の特定されたコイン10は、識別部62から振分部63へ受け渡される。振分部63では、金種の特定されたコイン10を、対応するコインホッパ1に格納する。
【0065】
振分部63では、コイン10がレール68に沿って、搬送ピン64によって搬送される。レール68に沿って、振分フラップ65が配置されている。振分フラップ65は、不図示の駆動部によって、コイン10の移動路を可変する。コイン10は、振分フラップ65の状態に応じて、スライダー66に落とされるか、または、落とされずに通過する。コイン10は、スライダー66に落とされた場合、案内路67を通り、コインホッパ1の容器2に格納される。
【0066】
金種の識別されたコイン10は、4つのコインホッパ1の何れかに格納されるか、または、リジェクト通路71に案内され、出金トレー72に排出される。コインホッパ1が4台配置されているので、4種類の金種のコイン10を格納でき、その他の金種は、受け付けずに排出される。列状に配置された複数台のコインホッパ1からコイン10が排出ベルト69上に排出される。すなわち排出ベルト69は、列状に複数台配置されたコインホッパ1から排出されるコイン10を受けるコイン受部とも言える。排出ベルト69を回転させることで、コイン10を一カ所に集めることができる。
【0067】
コインホッパ1の払出口4から排出されたコイン10は、排出ベルト69の上に載置される。排出ベルト69は、不図示の駆動部によって駆動され、コイン10を出金トレー72に搬送する。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、コインを一枚ずつ排出するコインホッパ、コインホッパに使用される回転体、コインホッパを搭載したコイン処理装置に利用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 コインホッパ
2 容器
3 本体
4 払出口
5 回転体
6 分離孔
7 ベース
8 ガイド部
9 識別孔
10 コイン
11 軸孔
12 回転軸
13 制御ピン
14 攪拌突起
15 枠部
20 第1樹脂回転体
21 第2樹脂回転体
22 排出溝
23 押動片孔
24 基部
25 溝部
26 柱部
27 底面部
28 位置決突起
29 第1貫通孔
30 押動ピン孔
31 軸孔枠部
32 金属回転体
33 中心部
34 アーム部
35 第2貫通孔
36 段差部
37 第1リブ
38 第3貫通孔
39 曲部
40 押動片
41 湾曲部
42 押動ピン
43 内側リブ
44 中側リブ
45 外側リブ
46 ピン逃溝
47 フック
48 ピン受
49 壁部
50 リブ逃溝
51 底面
52 肉薄部
53 肉厚部
54 拡径部
55 固定ローラー
56 移動ローラー
57 ガイド
58 位置決突起受孔
60 コイン処理装置
61 分離部
62 識別部
63 振分部
64 搬送ピン
65 振分フラップ
66 スライダー
67 案内路
68 レール
69 排出ベルト
70 貯留容器
71 リジェクト通路
72 出金トレー