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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175830
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20241212BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B41J2/165 211
B41J2/01 401
B41J2/165 101
B41J2/165 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093868
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA16
2C056EC22
2C056EC24
2C056EC35
2C056EC57
2C056JA02
2C056JA04
2C056JA06
2C056JA08
2C056JA13
2C056JA17
2C056JA20
2C056JB03
2C056JB04
2C056JB08
2C056JC20
2C056JC25
(57)【要約】
【課題】傾斜して配置された記録ヘッドにキャップを装着した状態で吸引パージを行う際に、記録ヘッドの側面へのインク付着を抑制可能なインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置は、ノズル面が傾斜して配置される記録ヘッドと、搬送ユニットと、キャップと、吸引部と、制御部と、を備える。キャップは、ノズル面と対向する底面部と、底面部の四辺に沿って立設される側壁部と、を有する。吸引部は、キャップとノズル面との間の密閉空間を吸引する吸引パージ処理を行う。制御部は、ノズル面からキャップを取り外す際に、下側に位置する側壁部をノズル面に接触させた状態で、他の側壁部をノズル面から離間させる第1離間動作と、下側に位置する側壁部をノズル面に接触させながら、キャップをノズル面に沿って上方へ移動させる拭き取り動作と、キャップの全ての側壁部をノズル面から離間させる第2離間動作と、を順に実行する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルが形成されたノズル面を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの前記ノズル面に対して着脱可能なキャップと、
前記ノズル面に装着された前記キャップと前記ノズル面との間の密閉空間を吸引することで前記ノズル内の前記インクを吸い出す吸引パージ処理を行う吸引部と、
前記ノズル面に対する前記キャップの着脱動作を制御する制御部と、
を備えたインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドは、前記ノズル面が水平面に対して傾斜して配置されており、
前記キャップは、
前記ノズル面と所定の間隔を隔てて対向する矩形状の底面部と、
前記底面部の四辺に沿って立設され、先端部が前記ノズル面に接触する側壁部と、
を有し、
前記制御部は、前記ノズル面から前記キャップを取り外す際に、
前記キャップの下側に位置する前記側壁部を前記ノズル面に接触させた状態で、前記キャップの他の前記側壁部を前記ノズル面から離間させる第1離間動作と、
前記キャップの下側に位置する前記側壁部を前記ノズル面に接触させながら、前記キャップを前記ノズル面に沿って上方へ所定量移動させる拭き取り動作と、
前記キャップの全ての前記側壁部を前記ノズル面から離間させる第2離間動作と、
を順に実行することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドに装着されたとき前記キャップの下側に位置する前記側壁部の先端に、外側の角部を下向きに面取りした傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記傾斜面の水平面に対する角度は、前記第1離間動作における前記キャップの回転角と同一であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドに装着されたとき前記キャップの下側に位置する前記側壁部の先端に、内側の角部を断面視円弧状とした曲面部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記キャップの内側には、前記底面部に沿って多孔質材料で形成されたインク吸収体が配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンターなどのインクジェット記録装置において、長期間印刷動作を行わない時は、記録ヘッドのノズル内のインクが乾燥してしまいインクの不吐出の要因となる。そのため、キャップと呼ばれる扁平箱体状の部材をノズル面に装着するキャッピング動作によりノズル周辺を密閉し、密閉空間内を高湿度に保つことにより、インクの乾燥を抑制している。
【0003】
しかし、印刷動作を繰り返すことにより、ノズルに異物等が付着することでインクの吐出不良を引き起こす場合がある。このような場合、ノズル面にキャッピングした状態でキャップ内部と連通した吸引手段により、キャップとノズル面との間の密閉空間内を吸引することでノズルから異物と共にインクを強制的に排出させる、いわゆる吸引パージと呼ばれる技術がある。
【0004】
一方、特に小型化、省スペース化が求められるようなインクジェット記録装置の場合、搬送される記録媒体とのレイアウトの関係により、記録ヘッドを水平面に対して傾斜させて配置し、鉛直方向から水平方向寄りの角度にインクを吐出させる場合がある。このように傾斜した状態で取り付けられた記録ヘッドに対して吸引パージを行う場合、キャップ内に排出されたインクのうち吸引手段で吸引しきれなかったインクがキャップ内の下端部に溜まることがある。
【0005】
その結果、印刷時にキャップを取り外す際に、キャップとノズル面が接触していた部分にインクが残存してしまい、重力によって下に垂れて記録ヘッドの側面にインクが付着する。記録ヘッドの側面に付着したインクが堆積していくと、インクが下に垂れ落ちて用紙搬送路を汚染する。また、記録ヘッドの側面でインクが乾燥、固着すると、キャップの形状によってはノズル面を密閉できなくなり、記録ヘッドの清掃や交換が必要となる。
【0006】
そこで、記録ヘッドの側面のインク汚染の対策として、例えば特許文献1には、記録ヘッドのノズル面が鉛直面に対して略平行となる状態で用紙に対してインク液滴を吐出する記録ヘッドを備えた水平吐出型の画像形成装置において、キャップの下端に記録ヘッドの下面を清掃するための清掃部材を設け、キャップのデキャップ動作時に記録ヘッドの下面を清掃部材で摺擦して清掃する構成が開示されている。また、特許文献2には、吸引キャップがキャップホルダに対して移動可能に保持され、キャップホルダには、キャッピング時に記録ヘッドの上方側端面に接するヘッドガイド部が設けられ、記録ヘッドの下方側端面に接するガイド部が設けられていない構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-35501号公報
【特許文献2】特開2013-144411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の構成では、記録ヘッドの下面(側面)を清掃するための清掃部材を追加する必要がある。そのため、キャップの構成が大型となり、装置の小型化、省スペース化の妨げになるという問題点があった。特許文献2では、記録ヘッドのインクが付着している側面はキャップの位置決めに使用しないという対策を行っている。しかし、この対策は記録ヘッドの側面にインクが付着すること自体を防止するものではないため、付着したインクが下に垂れ、装置内部を汚染するという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、傾斜して配置された記録ヘッドにキャップを装着した状態で吸引パージを行う際に、記録ヘッドの側面へのインク付着を抑制可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、記録ヘッドと、キャップと、吸引部と、制御部と、を備えたインクジェット記録装置である。記録ヘッドは、インクを吐出する複数のノズルが形成されたノズル面を有する。キャップは、記録ヘッドのノズル面に対して着脱可能である。吸引部は、ノズル面に装着されたキャップとノズル面との間の密閉空間を吸引することでノズル内のインクを吸い出す吸引パージ処理を行う。制御部は、ノズル面に対するキャップの着脱動作を制御する。記録ヘッドは、ノズル面が水平面に対して傾斜して配置されている。キャップは、ノズル面と所定の間隔を隔てて対向する矩形状の底面部と、底面部の四辺に沿って立設され、先端部がノズル面に接触する側壁部と、を有する。制御部は、ノズル面からキャップを取り外す際に、キャップの下側に位置する側壁部をノズル面に接触させた状態で、キャップの他の側壁部をノズル面から離間させる第1離間動作と、キャップの下側に位置する側壁部をノズル面に接触させながら、キャップをノズル面に沿って上方へ所定量移動させる拭き取り動作と、キャップの全ての側壁部をノズル面から離間させる第2離間動作と、を順に実行する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の構成によれば、傾斜して配置された記録ヘッドに対して吸引パージ処理を実行した際に、ノズル面のキャップの側壁部との接触部分周辺に付着したインクをノズル面の中央付近に移動させつつ、インクをキャップ内へ効率よく回収することができる。これにより、記録ヘッドの側面にインクが回り込んで付着することによるプリンター内部の汚染を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置としてのプリンター100の概略構成を示す側面断面図
図2図1のプリンター100において、記録ヘッド9にキャップ20を装着した状態を示す側面断面図
図3図2のプリンター100において、記録ヘッド9からキャップ20を取り外した状態を示す側面断面図
図4】本発明の第1実施形態に係るプリンター100に用いられるキャップ20の側面断面図
図5】第1実施形態のプリンター100の記録ヘッド9にキャップ20が装着された状態を示す側面断面図
図6図5の状態から、キャップ20の下側に位置する側壁部21bとノズル面9aとの接触を維持しつつ、他の側壁部21bをノズル面9aから離間させた状態を示す側面断面図
図7図6の状態から、キャップ20の下側に位置する側壁部21bとノズル面9aとの接触を維持しつつ、キャップ20をノズル面9aに沿って上方に移動させた状態を示す側面断面図
図8図7の状態から、キャップ20をノズル面9aに対して完全に離間させた状態を示す側面断面図
図9】本発明の第2実施形態に係るプリンター100に用いられるキャップ20の側面断面図
図10】第2実施形態のプリンター100の記録ヘッド9にキャップ20が装着された状態から、キャップ20の下側に位置する側壁部21bとノズル面9aとの接触を維持しつつ、他の側壁部21bをノズル面9aから離間させた状態を示す側面断面図
図11】本発明の第3実施形態に係るプリンター100に用いられるキャップ20の側面断面図
図12】第3実施形態のプリンター100の記録ヘッド9にキャップ20が装着された状態から、キャップ20の下側に位置する側壁部21bとノズル面9aとの接触を維持しつつ、他の側壁部21bをノズル面9aから離間させた状態を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔1.インクジェット記録装置の構成〕
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置としてのプリンター100の概略構成を示す説明図である。プリンター100は、用紙収容部である給紙カセット2を備えている。給紙カセット2は、プリンター本体1の下方に配置されている。給紙カセット2の内部には、記録媒体の一例である用紙Pが収容されている。
【0014】
用紙搬送方向(以下、単に搬送方向という)に対し給紙カセット2の下流側(図1における給紙カセット2の右上方)には給紙部3が配置されている。給紙部3は、例えばフィードローラーとリタードローラーからなる給紙ローラー対で構成される。給紙カセット2に収容された用紙Pは、給紙部3によって搬送方向下流側に向けて1枚ずつ分離されて送り出される。
【0015】
プリンター100の内部には第1用紙搬送路4aが設けられている。第1用紙搬送路4aは、給紙カセット2に対して搬送方向下流側である右上方に位置する。給紙カセット2から送り出された用紙Pは、第1用紙搬送路4aにより、プリンター本体1の側面に沿って略垂直上方に搬送される。
【0016】
搬送方向に対し第1用紙搬送路4aの下流端には、搬送ユニット5および記録ヘッド9が配置されている。給紙カセット2から送り出された用紙Pは、第1用紙搬送路4aを通過して搬送ユニット5に到達する。
【0017】
記録ヘッド9は、水平面に対して所定の角度で傾斜して配置されている。搬送ユニット5は、記録ヘッド9のノズル面9a(図5参照)と所定の間隔を隔てて対向配置され、ノズル面9aに沿って用紙Pを搬送する。ノズル面9aには多数のインク吐出用のノズル(図示せず)が形成されている。記録ヘッド9は、制御部90からの制御信号により、外部コンピューターから受信した画像データに応じて用紙Pにインクを吐出することにより、用紙P上に画像が記録(印刷)される。なお、図1では1つの記録ヘッド9を記載しているが、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応して、それぞれ1つ以上の記録ヘッド9が設けられている。
【0018】
インクコンテナ11Y~11Kは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインクを貯留する。インク供給系6は、インク供給路、ポンプ、開閉弁、逆止弁(いずれも図示せず)等で構成される。インク供給系6は、制御部90からの制御信号により、インクコンテナ11Y~11Kに貯留されている4色(イエロー、シアン、マゼンタおよびブラック)のインクを記録ヘッド9の色毎に供給する。
【0019】
用紙搬送方向(矢印A方向)において、搬送ユニット5の下流側(図1の上方)には第2用紙搬送路4bが設けられている。記録ヘッド9により画像が記録された用紙Pは、第2用紙搬送路4bを通り、排出ローラー対からなる排出部12を介してプリンター100の上面に設けられた排出トレイ15に排出される。
【0020】
記録ヘッド9の下方には、キャップ20が配置されている。なお、図1では1つのキャップ20を記載しているが、4色のインクに対応して配置された記録ヘッド9と同数のキャップ20が用意されている。
【0021】
プリンター100では、記録ヘッド9のノズル内の乾燥、増粘インクや異物等を除去するために、長期間停止後の印刷開始時および印刷動作の合間には、ノズル面9aにキャップ20を装着した状態で、吸引ポンプ7によってノズル面9aとキャップ20との間の空間(密閉空間)を吸引して記録ヘッド9の全てのノズルからインクを強制的に吸い出す吸引パージ処理を実行し、次の印字動作に備える。ノズルからキャップ20内に吸い出されたインク(パージインク)は、吸引ポンプ7によってキャップ20の外部に排出された後、廃インク回収流路(図示せず)を介して廃インクタンク8に回収される。
【0022】
図2は、図1のプリンター100において、記録ヘッド9にキャップ20を装着した状態を示す側面断面図である。長時間印刷動作を行わない場合、制御部90は、モーター等の駆動源(図示せず)によって記録ヘッド9を搬送方向と直交する方向(矢印B方向)に移動させて搬送ユニット5から離間させる。次に、制御部90は、キャップ20を待避位置(図1の位置)から上方に移動させて記録ヘッド9と搬送ユニット5の間に配置する。さらに、キャップ20を記録ヘッド9に近づく方向(矢印B方向)に移動させて、記録ヘッド9のノズル面9aに装着する。
【0023】
図3は、図2のプリンター100において、記録ヘッド9からキャップ20を取り外した状態を示す側面断面図である。図2の状態から印刷動作を行う場合、制御部90は、キャップ20を記録ヘッド9から離間する方向(矢印Bと反対方向)に移動させて、記録ヘッド9のノズル面9aから取り外す。その後、制御部90は、キャップ20を再び待避位置に移動し、記録ヘッド9を搬送ユニット5に近づく方向(矢印Bと反対方向)に移動させて図1の状態に戻す。
【0024】
〔2.キャップの構成〕
次に、キャップ20の構成について説明する。図4は、本発明の第1実施形態に係るプリンター100に用いられるキャップ20の側面断面図である。キャップ20は、本体部21と、インク吸収体22とを有する。本体部21は、ノズル面9a(図5参照)と所定の間隔を隔てて対向する矩形状の底面部21aと、底面部21aの四辺に沿って立設される側壁部21bと、を有する、上面が開口した扁平な直方体状である。本体部21は、例えばゴム等の弾性材料で一体形成されている。
【0025】
インク吸収体22は、本体部21の内側に底面部21aに沿って配置されている。インク吸収体22は、例えばスポンジ等の多孔質材料で形成されている。なお、ここでは図示しないが、キャップ20には吸引ポンプ7が連結される吸引口と、キャップ20の内部と外部を連通または遮蔽してキャップ20内部を密閉状態と大気解放状態とに切り替える大気解放弁(いずれも図示せず)とが設けられている。
【0026】
図5は、第1実施形態のプリンター100の記録ヘッド9にキャップ20が装着された状態を示す側面断面図である。図5に示すように、記録ヘッド9にキャップ20が装着された状態では、本体部21の四辺に形成された側壁部21bの先端がノズル面9aに密着している。これにより、ノズル面9aとキャップ20との間に密閉空間が形成され、ノズル面9aに形成されたノズル内のインクの増粘を抑制する。
【0027】
また、記録ヘッド9が傾斜しているため、傾斜したノズル面9aに沿ってキャップ20も傾斜して装着される。そのため、インク吸収体22によって吸収しきれなかったインクInはキャップ20の下端側に溜まる。
【0028】
〔3.記録ヘッドからのキャップの取り外し動作〕
次に、記録ヘッド9からのキャップ20の取り外し動作について詳細に説明する。図6は、図5の状態から、キャップ20の下側に位置する側壁部21bとノズル面9aとの接触を維持しつつ、他の側壁部21bをノズル面9aから離間させた状態を示す側面断面図である。
【0029】
先ず、図6に示すように、キャップ20の下側(図6の左下側)に位置する側壁部21bをノズル面9aに接触(ニップ)させた状態で、キャップ20の他の側壁部21bをノズル面9aから離間させる(第1離間動作)。このとき、キャップ20の下端側にインク吸収体22によって吸収しきれなかったインクIn(図5参照)が溜まっていたとしても、キャップ20の傾きを変化させる(緩やかにする)ことで、インクInがインク吸収体22側へ流れ易くなる。その結果、キャップ20の下端側に溜まったインクInをインク吸収体22に吸収させることができる。なお、キャップ20の下側に位置する側壁部21bとノズル面9aとのニップ部分には若干のインクInが残存している。
【0030】
図7は、図6の状態から、キャップ20の下側に位置する側壁部21bとノズル面9aとの接触を維持しつつ、キャップ20をノズル面9aに沿って上方に移動させた状態を示す側面断面図である。第1離間動作の実行後、図7に示すように、キャップ20の下側に位置する側壁部21bをノズル面9aに接触(ニップ)させながら、キャップ20をノズル面9aに沿って上方へ所定量(例えば1cm程度)移動させる(拭き取り動作)。この動作を行うことにより、ノズル面9aの側壁部21bが接触する部分に付着したインクが側壁部21bによって拭き取られ、ニップ部分に残存していたインクInと共に側壁部21bに沿ってキャップ20の内側へ流れ落ちる。
【0031】
図8は、図7の状態から、キャップ20をノズル面9aに対して完全に離間させた状態を示す側面断面図である。拭き取り動作の実行後、図8に示すように、キャップ20の全ての側壁部21bをノズル面9aから離間させる(第2離間動作)。ここで、ノズル面9aにはフッ素樹脂等からなる撥水膜(図示せず)が形成されているため、インクはノズル面9aよりもゴム製のキャップ20に付着し易い。
【0032】
そのため、キャップ20の下側に位置する側壁部21bとノズル面9aとのニップ部分に多少インクInが残存していたとしても、殆どのインクはキャップ20側に付着し、ノズル面9aに残存するインクは僅かなものとなる。このように僅かな量のインクであればノズル面9aの傾斜に沿って垂れることもなく、記録ヘッド9の側面を汚染するおそれもない。
【0033】
上記の手順によって記録ヘッド9のノズル面9aからキャップ20を取り外すことで、傾斜して配置された記録ヘッド9に対して吸引パージ処理を実行した際に、ノズル面9aのキャップ20の側壁部21bとの接触部分周辺に付着したインクInをノズル面9aの中央付近に移動させつつ、インクInをキャップ20内へ効率よく回収することができる。これにより、記録ヘッド9の側面にインクが回り込んで付着することによるプリンター100内部の汚染を効果的に抑制することができる。
【0034】
〔4.キャップの他の構成〕
図9は、本発明の第2実施形態に係るプリンター100に用いられるキャップ20の側面断面図である。本実施形態では、記録ヘッド9に装着されたときキャップ20の下端部に位置する側壁部21b(図9の左側の側壁部21b)の先端に、外側の角部を下向きに面取り(カット)した傾斜面23が形成されている。
【0035】
図10は、第2実施形態のプリンター100の記録ヘッド9にキャップ20が装着された状態から、キャップ20の下側に位置する側壁部21bとノズル面9aとの接触を維持しつつ、他の側壁部21bをノズル面9aから離間させた状態を示す側面断面図である。傾斜面23の水平面に対する角度θ1(図9参照)は、キャップ20が装着された状態(図5の状態)から第1離間動作を行う場合のキャップ20の回転角θ2と同一とする。例えば、第1離間動作を行う際にキャップ20を装着状態から20°回転させる場合、傾斜面23の角度θ1を20°とする。
【0036】
これにより、図10に示すように、第1離間動作の実行後にノズル面9aと傾斜面23とを確実に面接触させることが可能となる。従って、キャップ20の下側に位置する側壁部21bとノズル面9aとのニップ部分に残存するインクInがニップ部分をすり抜け難くなり、記録ヘッド9の側面へのインクの垂れをより効果的に抑制することができる。
【0037】
図11は、本発明の第3実施形態に係るプリンター100に用いられるキャップ20の側面断面図である。本実施形態では、記録ヘッド9に装着されたときキャップ20の下端部に位置する側壁部21b(図11の左側の側壁部21b)の先端に、内側の角部を断面視円弧状(R面)とした曲面部24が形成されている。
【0038】
図12は、第3実施形態のプリンター100の記録ヘッド9にキャップ20が装着された状態から、キャップ20の下側に位置する側壁部21bとノズル面9aとの接触を維持しつつ、他の側壁部21bをノズル面9aから離間させた状態を示す側面断面図である。本実施形態の構成によれば、拭き取り動作を行う際に、キャップ20の下側に位置する側壁部21bとノズル面9aとのニップ部分に残存するインクInが曲面部24に沿って下方へ流れ落ち易くなる。その結果、インクInがインク吸収体22へ回収され易くなり、インクInがニップ部分をすり抜けることによる記録ヘッド9の側面の汚染を抑制することができる。
【0039】
〔5.その他〕
本発明は、上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、記録ヘッド9のノズル面9aの傾斜角は、プリンター100内部のレイアウトや構成に応じて適宜設定することができる。また、キャップ20の第1離間動作を行う場合のキャップ20の回転角や、キャップ20の拭き取り動作を行う場合のキャップ20の移動量についても、記録ヘッド9の側面へのインク付着を抑制可能な範囲で適宜設定することができる。
【0040】
また、上記実施形態では、インクジェット記録装置として、4色のインクを用いてカラーの画像を記録するカラープリンターについて説明したが、ブラックのインクを用いてモノクロの画像を記録するモノクロプリンターにおいても、本発明を適用することは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、インクジェットプリンターなどのインクジェット記録装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 プリンター本体
2 給紙カセット
3 給紙部
4a 第1用紙搬送路
4b 第2用紙搬送路
5 搬送ユニット
6 インク供給系
7 吸引ポンプ(吸引部)
8 廃インクタンク
9 記録ヘッド
9a ノズル面
11Y~11K インクコンテナ
20 キャップ
21 本体部
21a 底面部
21b 側壁部
22 インク吸収体
23 傾斜面
24 曲面部
90 制御部
100 プリンター(インクジェット記録装置)
P 用紙(記録媒体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12