(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175831
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】インク供給ユニットおよびそれを備えたインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B41J2/175 153
B41J2/175 501
B41J2/175 503
B41J2/175 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093870
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪井 竣
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA20
2C056FA13
2C056KB04
2C056KB09
2C056KB13
2C056KB19
2C056KB37
(57)【要約】
【課題】インクが充填された状態でも要素部品を容易に取り外し可能なインク供給ユニットおよびそれを備えたインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インク供給ユニットは、インク供給路と、1つ以上の要素部品と、を有する。インク供給路は、第1インク流通孔と、第1弁部材と、第1付勢部材と、を有する。要素部品は、第2インク流通孔と、第2弁部材と、第2付勢部材と、を有する。要素部品をインク供給路に装着したとき、第1弁部材および第2弁部材が、それぞれ第1付勢部材および第2付勢部材の付勢力に抗して第1インク流通孔および第2インク流通孔から離間することで第1インク流通孔と第2インク流通孔が連通される。要素部品をインク供給路から取り外したとき、第1弁部材および第2弁部材が、それぞれ第1付勢部材および第2付勢部材の付勢力によって第1インク流通孔および第2インク流通孔を閉鎖する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するインクコンテナと、
前記インクを吐出する複数のノズルを有する1つ以上の記録ヘッドと、
の間に接続され、前記インクコンテナから前記記録ヘッドに前記インクを供給するインク供給ユニットであって、
前記インクが流通するインク供給路と、
前記インク供給路に対して着脱可能であり、前記インク供給路と連通する1つ以上の要素部品と、
を有し、
前記インク供給路は、
前記要素部品の装着面に形成される第1インク流通孔と、
前記第1インク流通孔を開閉する第1弁部材と、
前記第1弁部材を前記第1インク流通孔に近づく方向に付勢する第1付勢部材と、
を有し、
前記要素部品は、
前記第1インク流通孔と重なる位置に形成される第2インク流通孔と、
前記第2インク流通孔を開閉する第2弁部材と、
前記第2弁部材を前記第2インク流通孔に近づく方向に付勢する第2付勢部材と、
を有し、
前記要素部品を前記インク供給路に装着したとき、前記第1弁部材と前記第2弁部材とが互いに接触し、前記第1弁部材および前記第2弁部材が、それぞれ前記第1付勢部材および前記第2付勢部材の付勢力に抗して前記第1インク流通孔および前記第2インク流通孔から離間することで前記第1インク流通孔と前記第2インク流通孔が連通されて前記インクの流路が形成され、
前記要素部品を前記インク供給路から取り外したとき、前記第1弁部材と前記第2弁部材とが互いに離間し、前記第1弁部材および前記第2弁部材が、それぞれ前記第1付勢部材および前記第2付勢部材の付勢力によって前記第1インク流通孔および前記第2インク流通孔を閉鎖することを特徴とするインク供給ユニット。
【請求項2】
前記第1弁部材は、
外径が前記第1インク流通孔の内径よりも小さく前記第1インク流通孔から外部に突出する小径部と、
外径が前記第1インク流通孔の内径よりも大きく前記インク供給路内に配置される大径部と、
を有し、
前記要素部品を前記インク供給路に装着したとき、前記小径部と前記第2弁部材とが接触し、前記第1弁部材および前記第2弁部材が、それぞれ前記第1付勢部材および前記第2付勢部材の付勢力に抗して前記第1インク流通孔および前記第2インク流通孔から離間することを特徴とする請求項1に記載のインク供給ユニット。
【請求項3】
前記第1弁部材と前記第1インク流通孔との間に配置される第1封止部材と、
前記第2弁部材と前記第2インク流通孔との間に配置される第2封止部材と、
を有し、
前記要素部品を前記インク供給路から取り外したとき、前記第1封止部材が前記第1弁部材と前記第1インク流通孔の周縁部とに接触して前記第1弁部材と前記第1インク流通孔との隙間が封止され、前記第2封止部材が前記第2弁部材と前記第2インク流通孔の周縁部とに接触して前記第2弁部材と前記第2インク流通孔との隙間が封止されることを特徴とする請求項1に記載のインク供給ユニット。
【請求項4】
前記要素部品は、
前記インクコンテナから供給される前記インクを収容するサブタンク、
前記インクコンテナと前記サブタンクの間に配置され、前記インク供給路を開閉する開閉弁、
前記サブタンクと前記記録ヘッドの間に配置され、前記記録ヘッドから前記サブタンクへの前記インクの流通を規制する逆止弁、
のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載のインク供給ユニット。
【請求項5】
前記インク供給路は、
前記要素部品に対向するレーザー光吸収性樹脂で形成された第1プレートと、
前記第1プレートに対向するレーザー光透過性樹脂で形成された第2プレートと、
前記第1プレートから前記第2プレートに向かって突出する複数の流路形成リブと、
を有し、
前記第2プレート側から前記流路形成リブにレーザー光を照射して前記第2プレートと前記流路形成リブとを接着することで前記インク供給路が形成されることを特徴とする請求項1に記載のインク供給ユニット。
【請求項6】
インクを収容するインクタコンテナと、
前記インクを吐出する複数のノズルを有する1つ以上の記録ヘッドと、
前記インクコンテナと前記記録ヘッドの間に接続され、前記インクタンクから前記記録ヘッドに前記インクを供給する請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のインク供給ユニットと、
を備えたインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に搭載されるインク供給ユニット、およびそれを備えたインクジェット記録装置に関し、特に液体供給流路に対する要素部品の取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置には、インクタンクから記録ヘッドへインクを供給するインク供給ユニットを有するものがある。インク供給ユニットは、インクが流れる流路と、インクの流れを制御するポンプ、バルブ等の要素部品から構成される。例えば特許文献1には、インク流路と、要素部品へのインクの出入口を形成した平板状の部品に、インク流路を封止するシール部材と当て板、要素部品を締結したインク供給ユニットが開示されている。
【0003】
特許文献1の構成では、要素部品の数に応じて締結箇所が増えた場合、締結部品の増加によるインク供給ユニットの大型化の虞がある。
【0004】
特許文献2には、インクタンクから記録ヘッドへインクを供給するインク供給ユニットであって、インクを供給するためのポンプを含みレーザー光吸収材で構成される当接部を有する要素部品と、当接部と当接可能な第1面と、第1面と反対の第2面と、第1面と第2面を貫通する開口部を囲い第2面から突出した流路形成部と、を有するプレートと、開口部を封止するための封止部材と、当接部が開口部の周囲の第1面に当接した第1当接箇所に対して第2面側からレーザー照射された後、封止部材が流路形成部と当接した第2当接所に対して第2面側からレーザー照射されることで形成されるインク流路と、を備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-36586号公報
【特許文献2】特開2020-49908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の方法では、樹脂プレート上に要素部品をレーザー光で溶着する構成であり、要素部品を一度固定すると取り外すことができない。そのため、メンテナンス時はインク供給ユニット全体での交換が必要になるという問題点があった。さらに、要素部品を交換可能とした場合であっても、インクが充填された状態では要素部品の交換時にインク漏れが発生するという問題点もあった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、インクが充填された状態でも要素部品を容易に取り外し可能なインク供給ユニットおよびそれを備えたインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、インクを収容するインクコンテナと、インクを吐出する複数のノズルを有する1つ以上の記録ヘッドと、の間に接続され、インクコンテナから記録ヘッドにインクを供給するインク供給ユニットである。インク供給ユニットは、インクが流通するインク供給路と、インク供給路に対して着脱可能であり、インク供給路と連通する1つ以上の要素部品と、を有する。インク供給路は、要素部品の装着面に形成される第1インク流通孔と、第1インク流通孔を開閉する第1弁部材と、第1弁部材を第1インク流通孔に近づく方向に付勢する第1付勢部材と、を有する。要素部品は、第1インク流通孔と重なる位置に形成される第2インク流通孔と、第2インク流通孔を開閉する第2弁部材と、第2弁部材を第2インク流通孔に近づく方向に付勢する第2付勢部材と、を有する。要素部品をインク供給路に装着したとき、第1弁部材と第2弁部材とが互いに接触し、第1弁部材および第2弁部材が、それぞれ第1付勢部材および第2付勢部材の付勢力に抗して第1インク流通孔および第2インク流通孔から離間することで第1インク流通孔と第2インク流通孔が連通されてインクの流路が形成される。要素部品をインク供給路から取り外したとき、第1弁部材と第2弁部材とが互いに離間し、第1弁部材および第2弁部材が、それぞれ第1付勢部材および第2付勢部材の付勢力によって第1インク流通孔および第2インク流通孔を閉鎖する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の構成によれば、インク供給ユニットを構成する要素部品を個別に交換可能であるため、インク供給ユニット全体を交換する場合に比べてメンテナンスコストの低減に繋がる。また、インク供給路に第1弁部材を設け、要素部品に第2弁部材を設けることにより、要素部品を交換する際のインク供給路および要素部品の両方からのインク漏れを抑制することができる。そのため、交換時にインク供給路の閉鎖やインク回収等の作業が不要となり、メンテナンス性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置としてのプリンター100の概略の構成を示す説明図
【
図3】プリンター100のラインヘッド11Yを構成するインク供給路40および記録ヘッド17a~17cの内部構造を示す模式図
【
図4】インク供給ユニット80の第1供給路41と逆止弁53とを含む部分斜視図
【
図5】インク供給ユニット80の第1供給路41と逆止弁53とを含む部分断面図
【
図6】第1供給路41の逆止弁53付近の部分平面図
【
図7】インク供給ユニット80の第1供給路41と逆止弁53とを含む部分断面図であって、逆止弁53が第1供給路41から取り外された状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔1.インクジェット記録装置の構成〕
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置としてのプリンター100の概略の構成を示す説明図である。プリンター100は、用紙収容部である給紙カセット2を備えている。給紙カセット2は、プリンター本体1の内部下方に配置されている。給紙カセット2の内部には、記録媒体の一例である用紙Pが収容されている。
【0012】
給紙カセット2の用紙搬送方向下流側、すなわち
図1における給紙カセット2の右側の上方には給紙装置3が配置されている。この給紙装置3により、用紙Pは
図1において給紙カセット2の右上方に向け、1枚ずつ分離されて送り出される。
【0013】
プリンター100は、その内部に第1用紙搬送路4aを備えている。第1用紙搬送路4aは、給紙カセット2に対してその給紙方向である右上方に位置する。給紙カセット2から送り出された用紙Pは、第1用紙搬送路4aにより、プリンター本体1の側面に沿って垂直上方に搬送される。
【0014】
用紙搬送方向において第1用紙搬送路4aの下流端には、レジストローラー対13が設けられている。さらに、レジストローラー対13の用紙搬送方向下流側直近には、第1搬送ユニット5および記録部9が配置されている。給紙カセット2から送り出された用紙Pは、第1用紙搬送路4aを通ってレジストローラー対13に到達する。レジストローラー対13は、用紙Pの斜め送りを矯正しつつ、記録部9が実行するインク吐出動作とのタイミングを計り、第1搬送ユニット5(特に後述する第1搬送ベルト8)に向かって用紙Pを送り出す。
【0015】
レジストローラー対13によって第1搬送ユニット5に送り出された用紙Pは、第1搬送ベルト8によって記録部9(特に後述する記録ヘッド17a~17c)との対向位置に搬送される。記録部9から用紙Pにインクが吐出されることにより、用紙P上に画像が記録される。このとき、記録部9におけるインクの吐出は、プリンター100の内部の制御装置110によって制御される。
【0016】
用紙搬送方向において、第1搬送ユニット5の下流側(
図1の左側)には、第2搬送ユニット12が配置されている。記録部9によって画像が記録された用紙Pは、第2搬送ユニット12へ送られる。用紙Pの表面に吐出されたインクは、第2搬送ユニット12を通過する間に乾燥される。
【0017】
用紙搬送方向において、第2搬送ユニット12の下流側であってプリンター本体1の左側面近傍には、デカーラー部14が設けられている。第2搬送ユニット12によってインクが乾燥された用紙Pは、デカーラー部14へ送られて、用紙Pに生じたカールが矯正される。
【0018】
用紙搬送方向において、デカーラー部14の下流側(
図1の上方)には、第2用紙搬送路4bが設けられている。デカーラー部14を通過した用紙Pは、両面記録を行わない場合、第2用紙搬送路4bを通り、プリンター100の左側面外部に設けられた用紙排出トレイ15aに排出される。用紙排出トレイ15aの下方には、印字不良等の発生した不要な用紙P(損紙)を排出するサブ排出トレイ15bが設けられている。
【0019】
プリンター本体1の上部であって記録部9および第2搬送ユニット12の上方には、両面記録を行うための反転搬送路16が設けられている。両面記録を行う場合、用紙Pの一方の面(第1面)への記録が終了して第2搬送ユニット12およびデカーラー部14を通過した用紙Pは、第2用紙搬送路4bを通って反転搬送路16へ送られる。
【0020】
反転搬送路16へ送られた用紙Pは、続いて用紙Pの他方の面(第2面)への記録のために搬送方向が切り替えられる。そして、用紙Pは、プリンター本体1の上部を通過して右側に向かって送られ、レジストローラー対13を経て第2面を上向きにした状態で再び第1搬送ユニット5へ送られる。第1搬送ユニット5では、記録部9との対向位置に用紙Pが搬送され、記録部9からのインク吐出によって第2面に画像が記録される。両面記録後の用紙Pは、第2搬送ユニット12、デカーラー部14、第2用紙搬送路4bを順に通過して用紙排出トレイ15aに排出される。
【0021】
また、第2搬送ユニット12の下方には、メンテナンスユニット19およびキャップユニット20が配置されている。メンテナンスユニット19は、パージを実行する際に記録部9の下方に水平移動し、記録ヘッドのインク吐出口から押出されたインクを拭き取り、拭き取られたインクを回収する。なお、パージとは、インク吐出口内の増粘インク、異物、気泡を排出するために、記録ヘッドのインク吐出口からインクを強制的に押し出す動作を言う。キャップユニット20は、記録ヘッドのインク吐出面をキャッピングする際に記録部9の下方に水平移動し、さらに上方に移動して記録ヘッドの下面に装着される。
【0022】
図2は、記録部9の平面図である。記録部9は、ヘッドハウジング10と、ラインヘッド11Y、11M、11C、11Kとを備えている。ラインヘッド11Y~11Kは、駆動ローラー6a、従動ローラー6b、およびテンションローラー(図示せず)を含む複数のローラーに張架された無端状の第1搬送ベルト8の搬送面に対して、所定の間隔(例えば1mm)が形成される高さでヘッドハウジング10に保持される。駆動ローラー6aは、第1搬送ベルト8を用紙Pの搬送方向(矢印A方向)に走行させる。
【0023】
ラインヘッド11Y~11Kは、複数(ここでは3個)の記録ヘッド17a~17cをそれぞれ有している。記録ヘッド17a~17cは、用紙搬送方向(矢印A方向)と直交する用紙幅方向(矢印BB′方向)に沿って千鳥状に配列されている。記録ヘッド17a~17cは、複数のインク吐出口18(ノズル)を有している。各インク吐出口18は、記録ヘッドの幅方向、つまり、用紙幅方向(矢印BB′方向)に等間隔で並んで配置されている。ラインヘッド11Y~11Kからは、記録ヘッド17a~17cのインク吐出口18を介して、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインクが、第1搬送ベルト8で搬送される用紙Pに向かってそれぞれ吐出される。
【0024】
各ラインヘッド11C~11Kを構成する記録ヘッド17a~17cには、それぞれインクコンテナ50(
図3参照)から4色(シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック)のインクがラインヘッド11C~11Kの色毎に供給される。
【0025】
各記録ヘッド17a~17cは、制御装置110(
図1参照)からの制御信号により、外部コンピューターから受信した画像データに応じて、第1搬送ベルト8の搬送面に吸着保持されて搬送される用紙Pに向かってインク吐出口18からインクを吐出する。これにより、第1搬送ベルト8上の用紙Pにはシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクが重ね合わされたカラー画像が形成される。また、用紙搬送方向(矢印A方向)と直交する記録ヘッド17a~17cの長手方向(矢印BB′方向)の一端部には、クリーニング液を供給するクリーニング液供給部(図示せず)が設けられている。クリーニング液供給部には多数のクリーニング液供給口が形成されている。
【0026】
プリンター100では、記録ヘッド17a~17cのインク吐出面を清浄にするために、長期間停止後の印字開始時および印字動作の合間には、全ての記録ヘッド17a~17cのインク吐出口18からインクを押出(パージ)するとともに、クリーニング液供給口からクリーニング液を供給し、ワイパー(図示せず)によりインク吐出面に吐出されたインクをクリーニング液と共に拭き取る記録ヘッド17a~17cの回復動作を実行し、次の印字動作に備える。インク吐出面から拭き取られたインクおよびクリーニング液はインク受け部(図示せず)によって回収される。
【0027】
図3は、プリンター100のラインヘッド11Yを構成するインク供給路40および記録ヘッド17a~17cの内部構造を示す模式図である。なお、ラインヘッド11M~11Kについても全く同様の構成であるため説明を省略する。
【0028】
図3に示すように、記録ヘッド17a~17cには、インクおよびクリーニング液が通過するインク供給路40が接続されている。インク供給路40内には、インクが通過する2本の第1供給路41、第2供給路42が形成されている。第1供給路41、第2供給路42は、インクコンテナ50に接続されている。インクコンテナ50には、インクを送り出すポンプ(図示せず)が接続されている。
【0029】
第1供給路41は、インクコンテナ50から記録ヘッド17a~17cへのインクの供給に用いられ、第2供給路42は、記録ヘッド17a~17cからインクコンテナ50へのインクの回収に用いられる。なお、インク吐出量の多い画像を記録する場合は、第1供給路41、第2供給路42の両方を記録ヘッド17a~17cへのインクの供給に用いることもできる。
【0030】
インク供給路40には、サブタンク51と、開閉弁52と、逆止弁53とが取り付けられている。サブタンク51、開閉弁52、逆止弁53は、それぞれインク供給路40に対して着脱可能である。インク供給路40は、サブタンク51、開閉弁52、逆止弁53と共に、インクコンテナ50から記録ヘッド17a~17cにインクを供給するインク供給ユニット80(
図4参照)を構成する。インク供給路40に対するサブタンク51、開閉弁52、逆止弁53の取り付け構造については後述する。
【0031】
サブタンク51は、第1供給路41のインクコンテナ50と記録ヘッド17a~17cとの間に配置される。サブタンク51は、インクコンテナ50から供給されたインクを一時的に貯留する。
【0032】
開閉弁52は、第1供給路41のインクコンテナ50とサブタンク51の間に配置される。開閉弁52は、インクコンテナ50とサブタンク51の間で第1供給路41を開閉する。
【0033】
通常は、サブタンク51内に一定量のインクが貯留されており、サブタンク51と記録ヘッド17a~17cとの間でインクの循環が行われる。このとき、開閉弁52は閉状態となっている。そして、画像記録によってサブタンク51内のインクが消費されると、開閉弁53を開放してインクコンテナ50からサブタンク51内に所定量のインクが供給される。
【0034】
逆止弁53は、第1供給路41のサブタンク51と記録ヘッド17a~17cとの間に配置される。逆止弁53は、第1供給路41内のインクが記録ヘッド17a~17cからサブタンク51へ逆流することを防止する。
【0035】
記録ヘッド17a~17cは、ヘッド正面部43と、ヘッド背面部44と、ヒーター45と、を有する。ヘッド正面部43には、インク吐出口18(
図2参照)が多数配列されたインク吐出面が設けられている。
【0036】
ヘッド背面部44は、インク加温流路46と、フィルター47と、リザーバタンク48と、ダンパー49と、を備える。第1供給路41、第2供給路42は、インク加温流路46、フィルター47、リザーバタンク48、ダンパー49を順次通過した後、ヘッド正面部43のインク吐出口18に接続されている。
【0037】
ヘッド正面部43とヘッド背面部44との間にはヒーター45が配置されている。ヒーター45は、必要に応じて後述するインク加温流路46内のインクを所定の温度に加温するとともに、インク吐出口18からインクが円滑に吐出されるようにヘッド正面部43を加温する。
【0038】
インク加温流路46は、第1供給路41、第2供給路42内のインクを所定の温度に加温する。インク加温流路46は、ヘッド背面部44内においてヒーター45に隣接する位置に設けられている。フィルター47は、第1供給路41内を通過するインクから異物を除去する。リザーバタンク48は、第1供給路41、第2供給路42を通過するインクを一時的に貯留する。ダンパー49は、可撓性を有する樹脂フィルムで形成されており、ダンパー49を脈動させることでヘッド正面部43へインクを押し出す。
〔2.インク供給ユニットの構成〕
【0039】
図4は、インク供給ユニット80の第1供給路41と逆止弁53とを含む部分斜視図である。
図5は、インク供給ユニット80の第1供給路41と逆止弁53とを含む部分断面図(
図4のXX矢視断面図)である。
図6は、第1供給路41の逆止弁53付近の部分平面図である。
【0040】
第1供給路41は、樹脂プレート401と透明プレート402とを有する。樹脂プレート401は、インクの流通方向(
図5の紙面と垂直な方向、
図6の上下方向)に沿って延びる3本の流路形成リブ401aを有する。流路形成リブ401aの先端は透明プレート402に固定されている。第1供給路41の内部は、流路形成リブ401aによって上流側供給路41a、下流側供給路41bに区画されている。逆止弁53は、上流側供給路41aと下流側供給路41bの連結部分に配置されている。
【0041】
樹脂プレート401はレーザー光吸収性樹脂で形成されており、透明プレート402はレーザー光透過性の樹脂で形成されている。透明プレート402側から流路形成リブ401aにレーザー光を照射して透明プレート402と流路形成リブ401aとを溶着することで第1供給路41が形成される。なお、ここでは図示しないが、第2供給路42(
図3参照)も第1供給路41と同様に樹脂プレート401と透明プレート402とで形成される。
【0042】
上流側供給路41a、下流側供給路41bには、それぞれ第1弁部材60a、60bが配置されている。第1弁部材60a、60bは、それぞれ大径部601と小径部602(
図7参照)を有する。小径部602は、樹脂プレート401に形成された第1インク流通孔401bを貫通して逆止弁53の内部に突出している。
【0043】
第1弁部材60a、60bと透明プレート402との間には第1コイルバネ61a、61bが配置されている。第1コイルバネ61a、61bの一端部は透明プレート402のバネ保持部402aに保持されている。第1コイルバネ61a、61bの他端部には第1弁部材60a、60bの大径部601が固定されている。第1コイルバネ61a、61bは、それぞれ第1弁部材60a、60bを第1インク流通孔401bに近づく方向(
図5の上方向)に付勢する。
【0044】
第1弁部材60a、60bは、それぞれ大径部601と小径部602との連結部分に第1封止部材62a、62bが付設されている。第1封止部材62a、62bは、例えば弾性材料で形成されたオーリングである。
【0045】
逆止弁53は、ハウジング530と、第2弁部材70a、70bと、第2コイルバネ71a、71bとを備える。ハウジング530の内部は、仕切壁530aによって第1貯留室53aと第2貯留室53bに区画されている。第1貯留室53aと第2貯留室53bは仕切壁530aの上方において連通している。ハウジング530は、ビス等の固定部材(図示せず)によって樹脂プレート401に固定されている。
【0046】
ハウジング530の下面には、第2インク流通孔530bが形成されている。第2インク流通孔530bは、第1インク流通孔401bと重なる位置に形成されている。第1インク流通孔401b、第2インク流通孔530bを介して第1供給路40a、第2供給路40bと逆止弁53の内部とが連通される。
【0047】
第1貯留室53a、第2貯留室53bには、それぞれ第2弁部材70a、70bと第2コイルバネ71a、71bとが配置されている。第2コイルバネ71a、71bの一端部はハウジング530のバネ保持部530cに保持されている。第2コイルバネ71a、71bの他端部には第2弁部材70a、70bが固定されている。第2コイルバネ71a、71bは、それぞれ第2弁部材70a、70bを第2インク流通孔530bに近づく方向(
図5の下方向)に付勢する。
【0048】
第2インク流通孔530bの周縁部には、第2封止部材72a、72bが付設されている。第2封止部材72a、72bは、例えば弾性材料で形成されたオーリングである。
【0049】
次に、第1供給路41に装着された逆止弁53の動作について説明する。サブタンク51(
図3参照)からインクが送り出されていない状態では、
図5に示すように、第1コイルバネ61aによって上向きに付勢された第1弁部材60aの小径部602が、逆止弁53の第2弁部材70aを押し上げる。これにより、第2コイルバネ71aの付勢力に抗して第2弁部材70aが第1貯留室53aの第2封止部材72aから離間する。
【0050】
一方、第1弁部材60aも、第2弁部材70aから受ける押圧力(抗力)によって押し下げられる。これにより、第1弁部材60aに付設された第1封止部材62aが上流側流路41aの第1インク流通孔401bから離間する。
【0051】
即ち、第1コイルバネ61aから第1弁部材60aに作用する上向きの押圧力と、第2コイルバネ71aから第2弁部材70aに作用する下向きの押圧力とが互いに釣り合い、上流側流路41aの第1インク流通孔401b、第1貯留室53aの第2インク流通孔530bが共に開放されて上流側流路41aと第1貯留室53aとが連通される。
【0052】
これに対し、第1コイルバネ61bから第1弁部材60bに作用する上向きの押圧力は、第2コイルバネ71bから第2弁部材70bに作用する下向きの押圧力よりも大きい。そのため、第1弁部材60bの小径部602が第2弁部材70bを押し上げ、第2弁部材70bは第2コイルバネ71bの付勢力に抗して第2貯留室53bの第2封止部材72bから離間しているが、第1弁部材60bに付設された第1封止部材62bは、第1コイルバネ61bの付勢力によって下流側流路41bの第1インク流通孔401bに押し付けられている。
【0053】
即ち、第2貯留室53bの第2インク流通孔530bは開放されているが、下流側流路41bの第1インク流通孔401bは閉鎖されているため、第2貯留室53bと下流側流路41bとは連通されていない。
【0054】
サブタンク51からインクが供給されると、上流側流路41aから第1貯留室53aに流入したインクは仕切壁530aの上方を通過して第2貯留室53bに流れ込む。このとき、第2弁部材70bに作用する第2コイルバネ71bの付勢力とインクの圧力の合力は、第1コイルバネ61bから第1弁部材60bに作用する上向きの押圧力よりも大きくなる。その結果、第1弁部材60bは第2弁部材70bによって押し下げられ、第1弁部材60bに付設された第1封止部材62bが下流側流路41bの第1インク流通孔401bから離間する。
【0055】
これにより、下流側流路41bの第1インク流通孔401b、第2貯留室53bの第2インク流通孔530bが共に開放されて下流側流路41bと第1貯留室53bとが連通される。従って、上流側流路41aから第1貯留室53a、第2貯留室53bを介して下流側流路41bに至るインク流路が開放される。
【0056】
サブタンク51からのインクの供給が停止すると、
図5に示すように第1弁部材60bは再び第1コイルバネ61bの付勢力によって押し上げられ、第1弁部材60bに付設された第1封止部材62bが下流側流路41bの第1インク流通孔401bに押し付けられる。これにより、上流側流路41aから下流側流路41bに至るインク流路が閉鎖される。上述したような逆止弁53の動作によって、下流側流路41bから上流側流路41aへ向かうインクの逆流を防止することができる。
【0057】
図7は、インク供給ユニット80の第1供給路41と逆止弁53とを含む部分断面図であって、逆止弁53が第1供給路41から取り外された状態を示す図である。逆止弁53が第1供給路41から取り外されると、第1弁部材60a、60bには第2弁部材70a、70bからの押圧力(抗力)が作用しなくなる。その結果、第1弁部材60a、60bに付設された第1封止部材62a、62bが、第1コイルバネ61a、61bの付勢力によって第1インク流通孔401bの周縁部に圧接され、上流側流路41aおよび下流側流路41bの第1インク流通孔401bが共に閉状態となる。また、第1弁部材60a、60bの小径部602が第1インク流通孔401bから突出する。
【0058】
一方、第2弁部材70a、70bには第1弁部材60a、60bからの押圧力(抗力)が作用しなくなる。その結果、第2弁部材70a、70bは、第2コイルバネ71a、71bの付勢力によって第2インク流通孔530bの周縁部に配置された第2封止部材72a、72b圧接され、第1貯留室53aおよび第2貯留室53bの第2インク流通孔530bが共に閉状態となる。
【0059】
逆止弁53を第1供給路41に装着する場合、
図7の状態から逆止弁53を第1供給路41に押し付ける。このとき、逆止弁53の第2インク流通孔530bを、第1インク流通孔401bから突出する第1弁部材60a、60bの小径部602に位置合わせする。そして、第1弁部材60a、60bの小径部602を第2インク流通孔530bに挿入しながら逆止弁53を第1供給路41に押し付けた状態で、ビス等によって固定する。
【0060】
これにより、上流側流路41aと第1貯留室53aとが連通され、第2貯留室53bと下流側流路41bとは連通されていない
図5の状態に戻る。そして、サブタンク51からインクが供給されたときのみ第2貯留室53bと下流側流路41bとが連通される。
【0061】
なお、上記実施形態ではインク供給路40に装着される要素部品として逆止弁53の取り付け構造を例に挙げて説明したが、インク供給路40とサブタンク51、開閉弁52との取り付け構造も上記実施形態と同様の構成である。
【0062】
上記の構成によれば、インク供給ユニット80を構成するサブタンク51、開閉弁52、逆止弁53等の要素部品を個別に交換可能となる。そのため、インク供給ユニット80全体を交換する場合に比べてメンテナンスコストの低減に繋がる。
【0063】
また、第1供給路41に第1弁部材60a、60bを設け、逆止弁53(要素部品)に第2弁部材70a、70bを設けることにより、要素部品を交換する際の第1供給路41および要素部品の両方からのインク漏れを抑制することができる。そのため、交換時にインク供給路40の閉鎖やインク回収等の作業が不要となり、メンテナンス性が向上する。
【0064】
その他、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、第1供給路41に対して逆止弁53が着脱可能に装着される構成について説明したが、第2供給路42に対して逆止弁53を着脱可能に装着する場合についても同様の構成とすることができる。
【0065】
また、上記実施形態では、インク供給ユニット80を構成する要素部品としてサブタンク51、開閉弁52、逆止弁53を例示したが、本発明は他の要素部品を備えたインク供給ユニット80にも適用可能である。
【0066】
また、上記実施形態では、インク供給路40を樹脂プレート401と透明プレート402を用いて構成し、透明プレート402側からレーザー光を照射することによって樹脂プレート401と透明プレート402を溶着しているが、透明プレート402に限定されず、レーザー光透過性を有する樹脂プレートであればよい。
【0067】
また、上記実施形態では、インクジェット記録装置として、4色のインクを用いてカラーの画像を記録するカラープリンターを用いた例について説明したが、ブラックのインクを用いてモノクロの画像を記録するモノクロプリンターを用いた場合でも、本実施形態のインク供給ユニットを用いることは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、インクコンテナと記録ヘッドの間にインク供給ユニットを備えたインクジェットプリンターなどのインクジェット記録装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
17a~17c 記録ヘッド
18 インク吐出口(ノズル)
30 クリーニング液供給部
40 インク供給路
401 樹脂プレート(第1プレート)
401a 流路形成リブ
401b 第1インク流通孔
402 透明プレート(第2プレート)
41 第1供給路
41a 上流側流路
41b 下流側流路
42 第2供給路
50 インクコンテナ
51 サブタンク(要素部品)
52 開閉弁(要素部品)
53 逆止弁(要素部品)
53a 第1貯留室
53b 第2貯留室
530 ハウジング
530a 仕切壁
530b 第2インク流通孔
60a、60b 第1弁部材
601 大径部
602 小径部
61a、61b 第1コイルバネ(第1付勢部材)
62a、62b 第1封止部材
70a、70b 第2弁部材
71a、71b 第2コイルバネ(第2付勢部材)
72a、72b 第2封止部材
80 インク供給ユニット
100 プリンター(インクジェット記録装置)