(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175836
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】試料ホルダーおよび荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H01J37/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093876
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】永野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】廣田 成俊
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101AA04
5C101AA05
5C101AA22
5C101AA23
5C101AA32
5C101BB06
5C101FF43
5C101FF46
5C101FF49
5C101GG37
(57)【要約】
【課題】試料を容易に着脱できる試料ホルダーを提供する。
【解決手段】試料ホルダー100は、荷電粒子線装置用の試料ホルダーであって、試料を支持する試料支持部12を備えたホルダーベース110と、試料支持部12に配置された試料を押さえる試料押さえ部材120と、試料押さえ部材120をホルダーベース110に回転可能に固定する軸部材130と、試料押さえ部材120に試料を押さえるための第1方向の力を付与する少なくとも1つの弾性部材140,150と、を含み、試料押さえ部材120を回転させることによって、試料押さえ部材120で試料を押さえる状態と、試料支持部12を開放する状態と、を切り替え可能であり、試料押さえ部材20は、軸部材130が通る軸受穴を有し、試料押さえ部材120で試料を押さえる状態において、軸部材130は、軸受穴内を、第1方向に移動可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線装置用の試料ホルダーであって、
試料を支持する試料支持部を備えたホルダーベースと、
前記試料支持部に配置された前記試料を押さえる試料押さえ部材と、
前記試料押さえ部材を前記ホルダーベースに回転可能に固定する軸部材と、
前記試料押さえ部材に前記試料を押さえるための第1方向の力を付与する少なくとも1つの弾性部材と、
を含み、
前記試料押さえ部材を回転させることによって、前記試料押さえ部材で前記試料を押さえる状態と、前記試料支持部を開放する状態と、を切り替え可能であり、
前記試料押さえ部材は、前記軸部材が通る軸受穴を有し、
前記試料押さえ部材で前記試料を押さえる状態において、前記軸部材は、前記軸受穴内を、前記第1方向に移動可能である、試料ホルダー。
【請求項2】
請求項1において、
前記試料押さえ部材で前記試料を押さえる状態において、前記軸受穴は、前記第1方向に長い長孔である、試料ホルダー。
【請求項3】
請求項1において、
前記弾性部材として、
前記試料押さえ部材の一端に前記試料を押さえるための力を付与する第1弾性部材と、
前記試料押さえ部材の他端に前記試料を押さえるための力を付与する第2弾性部材と、を含む、試料ホルダー。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1弾性部材は、前記試料押さえ部材の一端に固定された板バネである、試料ホルダー。
【請求項5】
請求項4において、
前記試料押さえ部材で前記試料を押さえる状態において、前記第1弾性部材は、前記ホルダーベースに押し当てられて弾性変形し、前記試料押さえ部材に前記第1方向の力を付与する、試料ホルダー。
【請求項6】
請求項3において、
前記第2弾性部材は、前記試料押さえ部材の他端に固定された板バネであり、
前記ホルダーベースには、ピンが設けられ、
前記第2弾性部材には、前記ピンが嵌まる穴が設けられ、
前記ピンを前記穴に嵌めることによって前記第2弾性部材が弾性変形し、前記第2弾性部材が前記試料押さえ部材に前記第1方向の力を付与する、試料ホルダー。
【請求項7】
請求項1において、
前記軸部材は、前記第1方向に直交する第2方向に沿って配置されている、試料ホルダー。
【請求項8】
請求項1において、
前記試料支持部は、前記試料が配置される凹部を有し、
前記試料押さえ部材は、前記凹部に嵌まる凸部を有している、試料ホルダー。
【請求項9】
請求項8において、
前記凹部の底面には、電子線を通過させる第1貫通孔が設けられ、
前記凸部には、電子線を通過させる第2貫通孔が設けられている、試料ホルダー。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の試料ホルダーを含む、荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ホルダーおよび荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透過電子顕微鏡では、試料は試料ホルダーによって支持される。例えば、特許文献1には、試料を載せるための台座が形成されたホルダーベースと、試料押さえリングと、試料押さえリングを押圧して試料を台座に押し付ける2本の棒状スプリングと、を備えた試料ホルダーが開示されている。特許文献1に開示された試料ホルダーでは、試料を台座に載せ、台座に載せた試料上に試料押さえリングを載せ、2本の棒状スプリングで試料押さえリングを押さえることによって試料を試料ホルダーに固定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された試料ホルダーでは、試料ホルダーに試料を装着する場合、ピンセットなどの器具を用いて、試料押さえリングを試料上に置かなければならない。また、特許文献1に開示された試料ホルダーでは、試料ホルダーから試料を取り外す場合、ピンセットなどの器具を用いて、試料上に置かれた試料押さえリングを試料上から退かさなければならない。このように、特許文献1に開示された試料ホルダーでは、ピンセットなどの器具を用いて、試料押さえリングを試料上に載せたり、試料上から退かしたりしなければならず、試料を破損するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る試料ホルダーの一態様は、
荷電粒子線装置用の試料ホルダーであって、
試料を支持する試料支持部を備えたホルダーベースと、
前記試料支持部に配置された前記試料を押さえる試料押さえ部材と、
前記試料押さえ部材を前記ホルダーベースに回転可能に固定する軸部材と、
前記試料押さえ部材に前記試料を押さえるための第1方向の力を付与する少なくとも1つの弾性部材と、
を含み、
前記試料押さえ部材を回転させることによって、前記試料押さえ部材で前記試料を押さえる状態と、前記試料支持部を開放する状態と、を切り替え可能であり、
前記試料押さえ部材は、前記軸部材が通る軸受穴を有し、
前記試料押さえ部材で前記試料を押さえる状態において、前記軸部材は、前記軸受穴内を、前記第1方向に移動可能である。
【0006】
このような試料ホルダーでは、試料押さえ部材を回転させることによって、試料押さえ部材で試料を押さえる状態と、試料支持部を開放する状態と、を切り替え可能であるため、ピンセットなどの器具を用いることなく、試料押さえ部材を試料上に載せたり、試料上から退かしたりできる。したがって、このような試料ホルダーでは、試料を破損させる可能性を低減でき、容易に試料を着脱できる。
【0007】
本発明に係る荷電粒子線装置の一態様は、
上記試料ホルダーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る試料ホルダーを模式的に斜視図。
【
図2】第1実施形態に係る試料ホルダーを模式的に斜視図。
【
図8】第1実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す断面図。
【
図9】第2実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す斜視図。
【
図10】第2実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す斜視図。
【
図11】第2実施形態に係る試料ホルダーの先端部を模式的に示す図。
【
図12】第3実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す斜視図。
【
図13】第3実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す斜視図。
【
図14】第4実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す斜視図。
【
図15】第4実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す斜視図。
【
図16】第5実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す斜視図。
【
図17】第5実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す斜視図。
【
図19】第6実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す斜視図。
【
図20】第6実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す斜視図。
【
図21】第7実施形態に係る透過電子顕微鏡の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1. 第1実施形態
1.1. 試料ホルダー
まず、第1実施形態に係る試料ホルダーについて図面を参照しながら説明する。
図1および
図2は、第1実施形態に係る試料ホルダー100を模式的に斜視図である。
【0011】
図1および
図2には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。X方向は、X軸に沿う一方の方向である+X方向と、X軸に沿う他方の方向である-X方向と、を含む。Y方向は、Y軸に沿う一方の方向である+Y方向と、Y軸に沿う他方の方向である-Y方向と、を含む。Z方向は、Z軸に沿う一方の方向である+Z方向と、Z軸に沿う他方の方向である-Z方向と、を含む。
【0012】
試料ホルダー100は、透過電子顕微鏡用の試料ホルダーである。透過電子顕微鏡では、試料ホルダー100で保持された試料に電子線を照射し、試料を透過した電子を検出して像を取得できる。透過電子顕微鏡用の試料は電子線が透過する厚さに薄膜化されており、例えば直径3mm程度の環状の金属板であるグリッドに張り付けられている。
【0013】
試料ホルダー100は、
図1および
図2に示すように、ホルダーベース110と、試料押さえ部材120と、軸部材130と、第1弾性部材140と、第2弾性部材150と、ピン160と、を含む。
図1は、試料押さえ部材120を起こした状態を図示し、
図2は、試料押さえ部材120を倒した状態を図示している。
【0014】
図3は、ホルダーベース110を模式的に示す斜視図である。ホルダーベース110は、Z方向の厚みを有する板状の部材である。図示はしないが、試料ホルダー100は、試料を透過電子顕微鏡内の試料室に導入可能な長さを有するシャフトを含み、ホルダーベース110は当該シャフトに接続される。
【0015】
ホルダーベース110は、試料を支持する試料支持部12を備えている。試料支持部12には、Z方向の深さを有する凹部14が形成されている。凹部14は、試料を収容できる深さおよび直径を有している。試料支持部12には、凹部14に接続された溝15が形成されている。溝15の底面は、凹部14の底面よりも深い。溝15にピンセットなどの試料を掴むための器具を挿入することによって、凹部14に配置された試料を容易に掴むことができる。凹部14の底面には、貫通孔16が形成されている。貫通孔16は、電子線を通過させるための孔である。
【0016】
ホルダーベース110には、開口部18が形成されており、開口部18内に試料支持部12が設けられている。試料支持部12の厚さは、ホルダーベース110の開口部18を囲む部分の厚さよりも小さい。開口部18は、試料支持部12の-X方向側に位置する第1空間18aと、試料支持部12の+X方向側に位置する第2空間18bと、試料支持部12の上方の第3空間18cと、を有している。
【0017】
図4は、試料押さえ部材120を模式的に示す斜視図である。
図5は、試料押さえ部材120を模式的に示す断面図である。試料押さえ部材120は、試料支持部12の凹部14に配置された試料を押さえる。試料押さえ部材120は、板バネや、棒状の弾性体、ゴムなどで構成されておらず、リジッドな部品である。試料押さえ部材120は、例えば、ステンレス鋼、銅、アルミニウムなどの金属材料を加工したものである。試料押さえ部材120には、第1弾性部材140および第2弾性部材150によって試料を押さえるための力が付与される。
【0018】
試料押さえ部材120は、基部21aと、先端部21bと、基部21aと先端部21bとの間の押さえ部21cと、を有している。押さえ部21cの厚さは、基部21aの厚さよりも小さく、かつ、先端部21bの厚さよりも小さい。基部21aには、第1弾性部材140を固定するためのネジ穴28aが形成されている。先端部21bには、第2弾性部材150を固定するためのネジ穴28bが形成されている。
【0019】
試料押さえ部材120は、軸受穴22を有している。軸受穴22は、試料押さえ部材120の基部21aに設けられている。軸受穴22には、試料押さえ部材120をホルダーベース110に回転可能に固定するための軸部材130が挿入される。軸受穴22には軸部材130がY方向に挿入される。すなわち、軸部材130は、試料を押さえるための力の方向である-Z方向に直交するY方向に配置される。そのため、試料押さえ部材120の回転軸は、Y軸に平行な軸となる。
【0020】
試料押さえ部材120を軸部材130を回転軸として回転させることによって、
図2に示すように試料押さえ部材120を倒したり、
図1に示すように試料押さえ部材120を起こしたりすることができる。試料ホルダー100では、試料押さえ部材120を倒すことによって、試料押さえ部材120で試料を押さえることができ、試料押さえ部材120を起こすことによって、試料支持部12を開放することができる。すなわち、試料ホルダー100では、試料押さえ部材120を回転させることによって、試料押さえ部材120で試料を押さえる状態と、試料支持部12を開放する状態と、を切り替えることができる。
【0021】
図2に示すように、試料押さえ部材120を倒した状態では、ホルダーベース110の上面2aと、試料押さえ部材120の上面4aは、平行となる。また、試料押さえ部材120を起こした状態では、上面2aと上面4aが所定の角度となる。
図2に示す試料押さえ部材120を倒した状態において、上面2aおよび上面4aは、+Z方向を向く。
【0022】
試料押さえ部材120を倒した状態では、試料押さえ部材120の基部21aが第1空間18aに配置され、先端部21bが第2空間18bに配置され、押さえ部21cが第3空間18cに配置される。このように、試料押さえ部材120を倒した状態では、ホルダーベース110の開口部18は、試料押さえ部材120によって塞がれる。
【0023】
試料押さえ部材120に設けられた軸受穴22は、
図5に示すように、長孔である。試料押さえ部材120を倒した状態において、軸受穴22は、Z方向に長い長穴である。すなわち、軸受穴22のZ方向の長さLzは、軸受穴22のX方向の長さLxよりも大きい。そのため、試料押さえ部材120を倒した状態において、軸部材130は、軸受穴22内をZ方向に移動可能である。したがって、試料押さえ部材120を倒した状態において、試料押さえ部材120は、上面2aと上面4aが平行な状態を保ったまま、Z方向に移動できる。
【0024】
試料押さえ部材120は、凸部24を有している。凸部24は、試料押さえ部材120を倒すと、凹部14に嵌まる。これにより、凹部14に配置された試料を凸部24で押さえることができる。凸部24の高さは、例えば、凹部14の深さと等しい。なお、凸部24の高さは、凹部14の深さよりも大きくてもよい。凸部24には、電子線を通過させるための貫通孔26が形成されている。凸部24の上面は、貫通孔26を囲む円環状である。試料押さえ部材120を倒した状態において、貫通孔26と貫通孔16は重なる。
【0025】
軸部材130は、
図3に示すように、ホルダーベース110に形成された固定穴19に挿入されている。軸部材130は、例えば、カシメ、溶接、または接着によりホルダーベース110に固定されている。軸部材130は、試料押さえ部材120の回転軸として機能する。
【0026】
図6は、第1弾性部材140を模式的に示す斜視図である。第1弾性部材140は、試料押さえ部材120の基部21aに固定された板バネである。第1弾性部材140は、ホルダーベース110に固定された固定部40と、固定部40に接続された自由端である先端部42と、を有している。固定部40は、試料押さえ部材120の基部21aに形成されたネジ穴28aにネジ102aを螺合させることによってねじ止めされる。なお、第1弾性部材140を試料押さえ部材120に固定する方法は、ねじ止めに限定されず、例えば、溶接、接着などによって第1弾性部材140を試料押さえ部材120に固定してもよい。
【0027】
図7は、第2弾性部材150を模式的に示す斜視図である。第2弾性部材150は、試料押さえ部材120の先端部21bに固定された板バネである。第2弾性部材150は、ホルダーベース110に固定された固定部50と、固定部50に接続された自由端である先端部52と、を有している。固定部50は、試料押さえ部材120の先端部21bに形成されたネジ穴28bにネジ102bを螺合させることによってねじ止めされる。なお、第2弾性部材150を試料押さえ部材120に固定する方法は、ねじ止めに限定されず、例えば、溶接、接着などによって第2弾性部材150を試料押さえ部材120に固定してもよい。
【0028】
ホルダーベース110には、ピン160が設けられている。第2弾性部材150の先端部52には、ピン160が嵌まる穴54が設けられている。第2弾性部材150の先端部
52には、穴54に接続された溝56が形成されており、ピン160は、溝56を通って穴54に嵌まる。第2弾性部材150の先端部52には、第2弾性部材150の持ち手となるつまみ58が形成されている。
図2に示す試料押さえ部材120を倒した状態において、先端部52は、固定部50から+X方向に延びる部分と、当該+X方向に延びる部分に接続された-Z方向に延びる部分と、を有している。先端部52の-Z方向に延びる部分に、穴54、溝56、およびつまみ58が形成されている。
【0029】
図8は、試料ホルダー100を模式的に示す断面図である。
図8では、試料押さえ部材120を倒した状態を図示している。
【0030】
試料押さえ部材120を倒した状態において、第1弾性部材140は、試料押さえ部材120の一端に試料を押さえるための力を付与する。試料押さえ部材120を倒すことによって、第1弾性部材140の先端部42は、ホルダーベース110の下面2bに押し当てられて弾性変形し、基部21aに-Z方向の力を付与する。試料押さえ部材120を起こすことによって、第1弾性部材140の先端部42は、ホルダーベース110の下面2bから離れ、試料押さえ部材120に力を付与しない。
【0031】
試料押さえ部材120を倒した状態において、第2弾性部材150は、試料押さえ部材120の他端に試料を押さえるための力を付与する。試料押さえ部材120を倒して、穴54をピン160に嵌めることによって、第2弾性部材150の先端部52が湾曲して弾性変形し、先端部21bに-Z方向の力を付与する。穴54からピン160を外すことによって、第2弾性部材150の先端部52は湾曲した状態から開放されて、試料押さえ部材120に力を付与しない。
【0032】
1.2. 試料の着脱
1.2.1. 試料の装着
まず、試料押さえ部材120を軸部材130を回転軸として回転させて、
図1に示すように、試料押さえ部材120を起こす。これにより、試料支持部12が開放される。次に、ピンセットなどの試料をつかむための器具を用いて試料を試料支持部12の凹部14に配置する。
【0033】
次に、試料押さえ部材120を軸部材130を回転軸として回転させて、
図2に示すように、試料押さえ部材120を倒し、第2弾性部材150の穴54にピン160を引っ掛ける。これにより、試料押さえ部材120がホルダーベース110に固定される。
【0034】
このとき、
図8に示すように、第1弾性部材140の先端部42がホルダーベース110の下面2bに押し当てられて弾性変形し、試料押さえ部材120の基部21aに-Z方向の力を付与する。また、第2弾性部材150の穴54にピン160を引っ掛けることによって第2弾性部材150の先端部52が湾曲して弾性変形し、試料押さえ部材120の先端部21bに-Z方向の力を付与する。これにより、試料押さえ部材120の両端に-Z方向の力が付与され、試料押さえ部材120の凸部24で試料支持部12の凹部14に配置された試料を押さえることができる。したがって、試料を試料支持部12に固定できる。
【0035】
ここで、
図5に示すように、試料押さえ部材120を倒した状態において、試料押さえ部材120の軸受穴22は、Z方向に長い長穴である。そのため、試料押さえ部材120は、上面2aと上面4aが平行な状態を保ったまま、Z方向に移動できる。したがって、第1弾性部材140および第2弾性部材150によって試料押さえ部材120の両端に-Z方向の力が付与されたときに、試料押さえ部材120は、傾くことなく上面2aと上面4aが平行な状態を保つことができる。これにより、試料押さえ部材120の凸部24を
試料に面で接触させることができ、試料の破損を低減できる。さらに、試料の厚さに応じて、試料押さえ部材120とホルダーベース110との間の隙間が変化するため、様々な厚さの試料に対して凸部24を面で接触させることができる。
【0036】
以上の工程により、試料ホルダー100に試料を装着できる。
【0037】
1.2.2. 試料の取り外し
まず、ピンセットなどでピン160と第2弾性部材150のつまみ58を挟むことによって、第2弾性部材150の穴54からピン160を外す。これにより、第2弾性部材150の先端部52は湾曲した状態から開放される。また、第1弾性部材140は、ホルダーベース110から離れる。したがって、第1弾性部材140および第2弾性部材150は、試料押さえ部材120に試料を押さえるための力を付与しない。
【0038】
次に、
図1に示すように、試料押さえ部材120を起こし、試料支持部12を開放する。次に、ピンセットなどの試料をつかむための器具を試料支持部12の溝15に挿入し、凹部14に配置された試料をつかむ。これにより、凹部14から試料を取り出すことができる。
【0039】
以上の工程により、試料ホルダー100から試料を取り外すことができる。
【0040】
1.3. 効果
試料ホルダー100は、試料を支持する試料支持部12を備えたホルダーベース110と、試料支持部12に配置された試料を押さえる試料押さえ部材120と、試料押さえ部材120をホルダーベース110に回転可能に固定する軸部材130と、試料押さえ部材120に試料を押さえるための-Z方向の力を付与する第1弾性部材140および第2弾性部材150と、を含む。また、試料ホルダー100では、試料押さえ部材120を回転させることによって、試料押さえ部材120で試料を押さえる状態と、試料支持部12を開放する状態と、を切り替え可能である。また、試料ホルダー100では、試料押さえ部材120は、軸部材130が通る軸受穴22を有し、試料押さえ部材120で試料を押さえる状態において、軸部材130は、軸受穴22内をZ方向に移動可能である。
【0041】
試料ホルダー100では、試料押さえ部材120を回転させることによって、試料押さえ部材120で試料を押さえる状態と、試料支持部12を開放する状態と、を切り替え可能であるため、試料を破損させる可能性を低減でき、容易に試料を着脱できる。
【0042】
例えば、試料押さえリングで試料を押さえる場合、ピンセットなどの器具を用いて、直径3mm程度の小さな試料押さえリングを試料上に載せたり、試料上から退かしたりしなければならず、試料を破損するおそれがある。これに対して、試料ホルダー100では、試料押さえ部材120を回転させることによって、試料押さえ部材120で試料を押さえる状態と、試料支持部12を開放する状態と、を切り替え可能である。そのため、試料ホルダー100では、ピンセットなどの器具を用いることなく、試料押さえ部材120を試料上に載せたり、試料上から退かしたりできる。したがって、試料ホルダー100では、試料を破損させる可能性を低減でき、容易に試料を着脱できる。
【0043】
試料ホルダー100では、試料押さえ部材120で試料を押さえる状態において軸部材130は、軸受穴22内をZ方向に移動可能であるため、第1弾性部材140および第2弾性部材150によって試料押さえ部材120に-Z方向の力が付与されたときに、試料押さえ部材120は、傾くことなく水平な状態でZ方向に移動できる。したがって、試料ホルダー100では、試料押さえ部材120を試料に面で接触させることができ、試料の破損を低減できる。
【0044】
試料ホルダー100では、試料押さえ部材120で試料を押さえる状態において、軸受穴22は、Z方向に長い長孔である。そのため、試料ホルダー100では、試料押さえ部材120の両端に-Z方向の力が付与されたときに、試料押さえ部材120は、上面2aと上面4aとが平行な状態を保ったまま、Z方向に移動できる。したがって、試料ホルダー100では、様々な厚さの試料を破損することなく固定できる。例えば、軸受穴22内を軸部材130が移動できない場合、試料の厚さによっては試料押さえ部材120が試料面に対して傾いた状態で試料を押さえることになる。そのため、試料押さえ部材120の凸部24の角が試料に接触してしまい、試料を破損する可能性がある。
【0045】
試料ホルダー100は、試料押さえ部材120の一端に試料を押さえるための力を付与する第1弾性部材140と、試料押さえ部材120の他端に試料を押さえるための力を付与する第2弾性部材150と、を含む。そのため、試料ホルダー100では、試料押さえ部材120の両端に試料を押さえるための力を付与できる。したがって、試料ホルダー100では、試料押さえ部材120で試料を面で押さえることができる。
【0046】
試料ホルダー100では、第1弾性部材140は、試料押さえ部材120の一端に固定された板バネである。また、試料ホルダー100では、試料押さえ部材120で試料を押さえた状態において、第1弾性部材140は、ホルダーベース110に押し当てられて弾性変形し、試料押さえ部材120に-Z方向の力を付与する。このように、試料ホルダー100では、第1弾性部材140によって、試料押さえ部材120に試料を押さえるための力を容易に付与できる。
【0047】
試料ホルダー100では、第2弾性部材150は、試料押さえ部材120の他端に固定された板バネである。また、ホルダーベース110には、ピン160が設けられ、第2弾性部材150には、ピン160が嵌まる穴54が設けられ、ピン160を穴54に嵌めることによって第2弾性部材150が弾性変形し、第2弾性部材150が試料押さえ部材120に-Z方向の力を付与する。このように、試料ホルダー100では、第2弾性部材150によって、試料押さえ部材120に試料を押さえるための力を容易に付与できる。
【0048】
試料ホルダー100では、軸部材130は、試料押さえ部材120で試料を押さえるための力の方向である-Z方向に直交するY方向に沿って配置されている。そのため、試料ホルダー100では、試料押さえ部材120を倒したり、試料押さえ部材120を起こしたりすることによって、試料押さえ部材120で試料を押さえる状態と、試料支持部12を開放する状態と、を切り替えることができる。
【0049】
試料ホルダー100では、試料支持部12は、試料が配置される凹部14を有し、試料押さえ部材120は、凹部14に嵌まる凸部24を有している。そのため、試料ホルダー100では、確実に試料支持部12に試料を固定できる。さらに、試料ホルダー100では、試料押さえ部材120を軸部材130を回転軸として回転することによって凸部24が凹部14に嵌まるため、容易に試料を試料支持部12に固定できる。
【0050】
試料ホルダー100では、凹部14の底面には、電子線を通過させる第1貫通孔としての貫通孔16が設けられ、凸部24には、電子線を通過させる第2貫通孔としての貫通孔26が設けられている。そのため、試料ホルダー100を、透過電子顕微鏡用の試料ホルダーとして用いることができる。
【0051】
2. 第2実施形態
2.1. 試料ホルダー
次に、第2実施形態に係る試料ホルダーについて、図面を参照しながら説明する。
図9
および
図10は、第2実施形態に係る試料ホルダー200を模式的に示す斜視図である。
図9は、試料押さえ部材120を起こした状態を図示し、
図10は、試料押さえ部材120を倒した状態を図示している。
図11は、第2実施形態に係る試料ホルダー200の先端部を模式的に示す図である。以下、第2実施形態に係る試料ホルダー200において、第1実施形態に係る試料ホルダー100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0052】
試料ホルダー200では、試料押さえ部材120をホルダーベース110に固定するための構成が、上述した試料ホルダー100と異なる。
【0053】
ホルダーベース110の先端には、+X方向に突出する第1突出部210および+X方向に突出する第2突出部212が形成されている。第1突出部210は、ホルダーベース110の上面2aに対して傾斜した傾斜面211aを有している。上面2aと傾斜面211aが接続された角部の角度は、鋭角である。第2突出部212は、ホルダーベース110の上面2aに対して傾斜した傾斜面213aを有している。上面2aと傾斜面213aが接続された角部の角度は、例えば、上面2aと傾斜面211aが接続された角部の角度と等しい。傾斜面211aおよび傾斜面213aは、ホルダーベース110の内側を向く側面に形成されている。
【0054】
試料押さえ部材120の先端部21bには、第2弾性部材150が固定されている。第2弾性部材150は、金属板を折り曲げて形成された板バネである。第2弾性部材150は、試料押さえ部材120に固定される固定部50と、固定部50の-Y方向の端部に接続された自由端である第1折り曲げ部252と、固定部50の+Y方向の端部に接続された自由端である第2折り曲げ部254と、を含む。固定部50は、例えば、ねじ止め、溶接、または接着によって試料押さえ部材120に固定されている。
【0055】
第1折り曲げ部252および第2折り曲げ部254は、固定部50から折れ曲がっている。第1折り曲げ部252と固定部50がなす角度は、鈍角である。第2折り曲げ部254と固定部50がなす角度は、例えば、第1折り曲げ部252と固定部50がなす角度と等しい。第1折り曲げ部252の先端および第2折り曲げ部254の先端は、内側に折れ曲がっている。
【0056】
試料押さえ部材120を倒した状態において、第1折り曲げ部252は、傾斜面211aに押し当てられて、第1折り曲げ部252の曲げ角度が大きくなるように弾性変形する。また、試料押さえ部材120を倒した状態において、第2折り曲げ部254は、傾斜面213aに押し当てられて第2折り曲げ部254の曲げ角度が大きくなるように弾性変形する。第1弾性部材140が弾性変形することによって生じる力と第2弾性部材150が弾性変形することによって生じる力の合力の方向は、-Z方向となる。そのため、第2弾性部材150によって試料押さえ部材120の先端部21bに-Z方向の力を付与できる。
【0057】
また、第2弾性部材150は、第1突出部210と第2突出部212との間に引っ掛かるため、試料押さえ部材120をホルダーベース110に固定できる。
【0058】
第1突出部210の先端部216は、第1突出部210の他の部分よりも薄い。第2突出部212の先端部218は、第2突出部212の他の部分よりも薄い。試料押さえ部材120の先端には、つまみ220が設けられている。試料押さえ部材120で試料を押さえる状態において、つまみ220は、第1突出部210の先端部216および第2突出部212の先端部218よりも下、すなわち、-Z方向に位置する。
【0059】
2.2. 試料の着脱
2.2.1. 試料の装着
まず、
図9に示すように、試料押さえ部材120を起こして、試料支持部12を開放する。次に、ピンセットなどの試料をつかむための器具を用いて試料を試料支持部12の凹部14に配置する。
【0060】
次に、
図10に示すように、試料押さえ部材120を倒し、第2弾性部材150を第1突出部210および第2突出部212の間に押し込む。これにより、
図11に示すように、第2弾性部材150の第1折り曲げ部252が傾斜面211aに押し当てられ、第2折り曲げ部254が傾斜面213aに押し当られる。この結果、第1折り曲げ部252が弾性変形することによって生じる力と第2折り曲げ部254が弾性変形することによって生じる力の合力の方向が-Z方向となり、試料押さえ部材120の先端部21bに-Z方向の力を付与できる。また、第1弾性部材140の先端部42がホルダーベース110の下面2bに押し当てられて弾性変形し、試料押さえ部材120の基部21aに-Z方向の力を付与する。これにより、試料押さえ部材120の両端に-Z方向の力を付与することができ、試料押さえ部材120で試料を押さえることができる。
【0061】
また、第2弾性部材150を第1突出部210および第2突出部212の間に押し込むことによって、第2弾性部材150が第1突出部210および第2突出部212の間に引っ掛かり、試料押さえ部材120をホルダーベース110に固定できる。ここで、試料押さえ部材120が倒れた状態において、試料押さえ部材120の軸受穴22は、Z方向に長い長穴である。そのため、試料の厚さに応じて、試料押さえ部材120とホルダーベース110との間の隙間が変化するため、様々な厚さの試料に対して凸部24を面で接触させることができる。
【0062】
以上の工程により、試料ホルダー200に試料を装着できる。
【0063】
2.2.2. 試料の取り外し
まず、
図10に示す試料押さえ部材120を倒して試料押さえ部材120をホルダーベース110に固定した状態において、試料押さえ部材120のつまみ220と、第1突出部210の先端部216および第2突出部212の先端部218と、をピンセットなどで挟み、第2弾性部材150を、第1突出部210および第2突出部212の間から外す。これにより、第2弾性部材150の第1折り曲げ部252および第2折り曲げ部254は弾性変形した状態から解放される。また、第1弾性部材140は、ホルダーベース110から離れる。したがって、第1弾性部材140および第2弾性部材150は、試料押さえ部材120に試料を押さえるための力を付与しない。
【0064】
次に、試料押さえ部材120を軸部材130を回転軸として回転させて、
図9に示すように、試料押さえ部材120を起こす。これにより、試料支持部12が開放される。次に、ピンセットなどの試料をつかむための器具で凹部14に配置された試料をつかみ、凹部14から試料を取り外す。
【0065】
以上の工程により、試料ホルダー200から試料を取り外すことができる。
【0066】
2.3. 効果
試料ホルダー200では、試料ホルダー100と同様に、試料を破損させる可能性を低減でき、容易に試料を着脱できる。
【0067】
3. 第3実施形態
3.1. 試料ホルダー
次に、第3実施形態に係る試料ホルダーについて、図面を参照しながら説明する。
図12および
図13は、第3実施形態に係る試料ホルダー300を模式的に示す斜視図である。
図12は、試料押さえ部材120を起こした状態を図示し、
図13は、試料押さえ部材120を倒した状態を図示している。以下、第3実施形態に係る試料ホルダー300において、上述した試料ホルダー100および試料ホルダー200の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0068】
試料ホルダー300では、試料押さえ部材120をホルダーベース110に固定するための構成が、上述した試料ホルダー100および試料ホルダー200と異なる。具体的には、試料ホルダー200では、ホルダーベース110の第1突出部210と第2突出部212の間に第2弾性部材150を引っ掛けることによって、試料押さえ部材120をホルダーベース110に固定した。これに対して、試料ホルダー300では、第2弾性部材150の第1折り曲げ部252および第2折り曲げ部254で第1突出部210および第2突出部212を挟むことによって、試料押さえ部材120をホルダーベース110に固定する。
【0069】
第1突出部210は、ホルダーベース110の上面2aに対して傾斜した傾斜面211bを有している。上面2aと傾斜面211bが接続された角部の角度は、鋭角である。第2突出部212は、ホルダーベース110の上面2aに対して傾斜した傾斜面213bを有している。上面2aと傾斜面213bが接続された角部の角度は、例えば、上面2aと傾斜面211bが接続された角部の角度と等しい。傾斜面211bおよび傾斜面213bは、ホルダーベース110の外側を向く側面に形成されている。
【0070】
第1折り曲げ部252と固定部50とがなす角度は、鋭角である。固定部50と第2折り曲げ部254とがなす角度は、例えば、第1折り曲げ部252と固定部50とがなす角度と等しい。試料押さえ部材120を倒した状態において、第1折り曲げ部252はホルダーベース110の傾斜面211bに押し当てられて、第1折り曲げ部252の曲げ角度が小さくなるように弾性変形する。また、第2折り曲げ部254はホルダーベース110の傾斜面213bに押し当てられて、第2折り曲げ部254の曲げ角度が小さくなるように弾性変形する。これにより、第1折り曲げ部252が弾性変形することによって生じる力と第2折り曲げ部254が弾性変形することによって生じる力の合力の方向が-Z方向となり、試料押さえ部材120に-Z方向の力を付与できる。
【0071】
また、第1折り曲げ部252が第1突出部210に引っ掛かり、第2折り曲げ部254が第2突出部212に引っ掛かることによって、試料押さえ部材120をホルダーベース110に固定できる。
【0072】
3.2. 試料の着脱
試料ホルダー300では、上述したように、試料押さえ部材120をホルダーベース110に固定する方法が上述した試料ホルダー200の例と異なる。以下では、上述した試料ホルダー200の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0073】
試料ホルダー300では、第2弾性部材150で第1突出部210および第2突出部212を挟むことによって、試料押さえ部材120をホルダーベース110に固定できる。具体的には、第1折り曲げ部252を第1突出部210に引っ掛け、第2折り曲げ部254を第2突出部212に引っ掛けることによって、試料押さえ部材120をホルダーベース110に固定できる。このとき、第1折り曲げ部252はホルダーベース110の傾斜面211bに押し当てられて弾性変形し、第2折り曲げ部254はホルダーベース110の傾斜面213bに押し当てられて弾性変形する。この結果、第2弾性部材150によって試料押さえ部材120に-Z方向の力を付与できる。
【0074】
3.3. 効果
試料ホルダー300では、試料ホルダー100と同様に、試料を破損させる可能性を低減でき、容易に試料を着脱できる。
【0075】
4. 第4実施形態
4.1. 試料ホルダー
次に、第4実施形態に係る試料ホルダーについて、図面を参照しながら説明する。
図14および
図15は、第4実施形態に係る試料ホルダー400を模式的に示す斜視図である。
図14は、試料押さえ部材120を起こした状態を図示し、
図15は、試料押さえ部材120を倒した状態を図示している。以下、第4実施形態に係る試料ホルダー400において、上述した試料ホルダー100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0076】
試料ホルダー400では、試料押さえ部材120をホルダーベース110に固定するための構成が、上述した試料ホルダー100と異なる。
【0077】
ホルダーベース110の先端には、傾斜面410が形成されている。第2弾性部材150は、固定部50と、先端部52と、を含み、先端部52は、第1折り曲げ部452と、第2折り曲げ部454と、つまみ456と、を有している。
【0078】
第1折り曲げ部452および第2折り曲げ部454は、固定部50に対して所定の角度で折れ曲がった部分である。
図15に示す試料押さえ部材120を倒した状態において、第1折り曲げ部452および第2折り曲げ部454は、-Z方向に折れ曲がっている。第1折り曲げ部452と第2折り曲げ部454との間には、つまみ456が設けられている。
【0079】
図15に示すように、試料押さえ部材120を倒したときに、第1折り曲げ部452および第2折り曲げ部454が傾斜面410に引っ掛かる。第1折り曲げ部452および第2折り曲げ部454が傾斜面410に引っ掛かることによって、試料押さえ部材120がホルダーベース110に固定される。このとき、第2弾性部材150の先端部52が湾曲して弾性変形し、試料押さえ部材120の先端部21bに-Z方向の力を付与する。
【0080】
4.2. 試料の着脱
試料ホルダー400では、試料押さえ部材120をホルダーベース110に固定する方法が上述した試料ホルダー100の例と異なる。以下では、上述した試料ホルダー100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0081】
試料ホルダー400では、
図15に示すように、試料押さえ部材120を倒して第1折り曲げ部452および第2折り曲げ部454を傾斜面410に引っ掛けることによって、試料押さえ部材120をホルダーベース110に固定できる。また、つまみ456を持ちあげて、試料押さえ部材120を起こすことによって、
図14に示すように、試料支持部12を開放できる。
【0082】
4.3. 効果
試料ホルダー400では、試料ホルダー100と同様に、試料を破損させる可能性を低減でき、容易に試料を着脱できる。
【0083】
5. 第5実施形態
5.1. 試料ホルダー
次に、第5実施形態に係る試料ホルダーについて、図面を参照しながら説明する。
図16および
図17は、第5実施形態に係る試料ホルダー500を模式的に示す斜視図である。
図16は、試料押さえ部材120を起こした状態を図示し、
図17は、試料押さえ部材120を倒した状態を図示している。以下、第5実施形態に係る試料ホルダー500において、上述した試料ホルダー100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0084】
試料ホルダー500では、第2弾性部材150の構成が、上述した試料ホルダー100と異なる。試料ホルダー500では、第2弾性部材150は、試料押さえ部材120に固定されていない。
【0085】
ホルダーベース110の上面2aには、2つのネジ穴が形成され、2つのネジ穴のうちの一方にはネジ502が挿入され、2つのネジ穴のうちの他方にはネジ504が挿入されている。また、ホルダーベース110には、切り欠き506が形成されている。
【0086】
図18は、第2弾性部材150を模式的に示す斜視図である。第2弾性部材150は、軸穴550と、ネジ受け552と、押圧部554と、バネフック556と、を含む。第2弾性部材150は、軸穴550を通るネジ502によってホルダーベース110に回転可能に固定されている。すなわち、第2弾性部材150は、ネジ502を回転軸として、回転可能である。第2弾性部材150は、
図16および
図17に示す例では、Z軸に平行な軸を回転軸として回転する。第2弾性部材150を回転させて、バネフック556を切り欠き506に引っ掛けることによって、第2弾性部材150をホルダーベース110に固定できる。このとき、ネジ受け552にネジ504が引っ掛かる。これにより、第2弾性部材150のZ方向の移動を制限でき、第2弾性部材150がホルダーベース110から外れることを防ぐことができる。
【0087】
試料押さえ部材120を倒した状態で、第2弾性部材150をホルダーベース110に固定することによって、試料押さえ部材120をホルダーベース110に固定できる。このとき、第2弾性部材150の押圧部554が試料押さえ部材120の先端部21bに押し当てられ、先端部21bに-Z方向の力を付与できる。押圧部554は、第2弾性部材150の他の部分よりも-Z方向に突出した部分である。押圧部554は、例えば、金属板を折り曲げることによって、押圧部554の他の部分よりも突出させている。
【0088】
5.2. 試料の着脱
試料ホルダー500では、試料押さえ部材120をホルダーベース110に固定する方法が上述した試料ホルダー100の例と異なる。以下では、上述した試料ホルダー100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0089】
試料ホルダー500では、
図17に示すように、試料押さえ部材120を倒した後、第2弾性部材150をネジ502まわりに回転させて、押圧部554を試料押さえ部材120の上面4aに押し当てる。この状態で、バネフック556を切り欠き506に引っ掛け、かつ、ネジ受け552にネジ504を引っ掛けることによって、第2弾性部材150をホルダーベース110に固定する。これにより、試料押さえ部材120をホルダーベース110に固定できる。
【0090】
試料ホルダー500では、
図16に示すように、バネフック556を切り欠き506から外して、第2弾性部材150を回転させることによって、試料押さえ部材120を開放できる。
【0091】
5.3. 効果
試料ホルダー500では、試料ホルダー100と同様に、試料を破損させる可能性を低減でき、容易に試料を着脱できる。
【0092】
6. 第6実施形態
6.1. 試料ホルダー
次に、第6実施形態に係る試料ホルダーについて、図面を参照しながら説明する。
図19および
図20は、第6実施形態に係る試料ホルダー600を模式的に示す斜視図である。
図19は、試料押さえ部材120を起こした状態を図示し、
図20は、試料押さえ部材120を倒した状態を図示している。以下、第6実施形態に係る試料ホルダー600において、上述した試料ホルダー100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0093】
試料ホルダー600では、試料押さえ部材120に試料を押さえるための力を付与する弾性部材の構成が、上述した試料ホルダー100と異なる。
【0094】
ホルダーベース110は、ホルダーベース110の上面2aに対して傾斜した傾斜面612および傾斜面614を有している。傾斜面612は、ホルダーベース110の外側を向く側面に形成されており、図示の例では、-Y方向を向く側面に形成されている。傾斜面614は、ホルダーベース110の外側を向く側面に形成されており、図示の例では、+Y方向を向く側面に形成されている。
【0095】
弾性部材640は、試料押さえ部材120に試料を押さえるための力を付与する。弾性部材640は、軸部材130によってホルダーベース110に回転可能に固定されている。図示の例では、弾性部材640と試料押さえ部材120が共通の軸部材130によって回転可能に固定されているが、弾性部材640を回転可能に固定するための軸部材と、試料押さえ部材120を回転可能に固定するための軸部材が別であってもよい。
図20に示すように、弾性部材640を軸部材130を回転軸として回転させて弾性部材640を倒すことによって、試料押さえ部材120に-Z方向の力を付与できる。
【0096】
弾性部材640は、窓部642と、第1押圧部644と、第2押圧部646と、第1バネフック648aと、第2バネフック648bと、を含む。
【0097】
窓部642は、電子線を通過させるための開口である。試料ホルダー600では、弾性部材640および試料押さえ部材120を倒した状態において、電子線は、窓部642、貫通孔26、および貫通孔16を通過する。
【0098】
第1押圧部644は、試料押さえ部材120の一端に試料を押さえるための力を付与する。第2押圧部646は、試料押さえ部材120の他端に試料を押さえるための力を付与する。第1押圧部644は、窓部642を規定する辺から窓部642の中心に向かって延在している。第2押圧部646は、窓部642を規定する辺であって第1押圧部644が設けられた辺とは反対側の辺から窓部642の中心に向かって延在している。
【0099】
図20に示す弾性部材640を倒した状態において、第1押圧部644は、窓部642を規定する辺から-Z方向に延在し、試料押さえ部材120の一端を押圧する。弾性部材640を倒した状態において、第2押圧部646は、窓部642を規定する辺から-Z方向に延在し、試料押さえ部材120の他端を押圧する。これにより、試料押さえ部材120の両端に-Z方向の力を付与できる。
【0100】
第1バネフック648aは、弾性部材640を倒したときに、ホルダーベース110の傾斜面612に引っ掛かる。第2バネフック648bは、弾性部材640を倒したときに
、ホルダーベース110の傾斜面614に引っ掛かる。これにより、弾性部材640をホルダーベース110に固定できる。
【0101】
6.2. 試料の着脱
6.2.1. 試料の装着
まず、
図19に示すように、弾性部材640および試料押さえ部材120を軸部材130を回転軸として回転させて、弾性部材640および試料押さえ部材120を起こす。これにより、試料支持部12が開放される。次に、試料を試料支持部12の凹部14に配置する。
【0102】
次に、
図20に示すように、試料押さえ部材120を倒す。これにより、試料押さえ部材120の凸部24が凹部14に配置された試料上に配置される。
【0103】
次に、弾性部材640を倒し、第1バネフック648aを傾斜面612に引っ掛け、第2バネフック648bを傾斜面614に引っ掛ける。これにより、弾性部材640をホルダーベース110に固定できる。このとき、第1押圧部644が試料押さえ部材120の一端を押圧し、第2押圧部646が試料押さえ部材120の他端を押圧する。これにより、試料押さえ部材120の両端に-Z方向の力を付与することができ、試料押さえ部材120で試料を押さえることができる。また、試料押さえ部材120の軸受穴22は長穴であるため、様々な厚さの試料に対して凸部24を面で接触させることができる。
【0104】
6.2.2. 試料の取り外し
まず、第1バネフック648aを傾斜面612から外し、第2バネフック648bを傾斜面614から外して、
図19に示すように、弾性部材640を起こす。次に、試料押さえ部材120を起こす。これにより、試料支持部12が開放され、凹部14から試料を取り外すことができる。
【0105】
6.3. 効果
試料ホルダー600では、試料ホルダー100と同様に、試料を破損させる可能性を低減でき、容易に試料を着脱できる。さらに、試料ホルダー600では、1つの弾性部材で試料押さえ部材120の両端を押さえることができるため、小型化や、部品点数の削減を図ることができる。
【0106】
7. 第7実施形態
次に、第7実施形態に係る透過電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。
図21は、第7実施形態に係る透過電子顕微鏡700の構成を示す図である。
【0107】
透過電子顕微鏡700では、試料ホルダー100に保持された試料Sに電子線(荷電粒子線の一例)EBを照射し、試料Sを透過した電子を結像することによって、試料Sの透過電子顕微鏡像(TEM像)を取得できる。また、透過電子顕微鏡700では、細く絞った電子線EBで試料Sを走査することによって、走査電子顕微鏡像(STEM像)を取得できる。
【0108】
透過電子顕微鏡700は、
図21に示すように、試料ホルダー100を含む。透過電子顕微鏡700は、さらに、電子銃710と、照射レンズ711と、偏向器712と、ゴニオメータ(ステージ)714と、対物レンズ716と、中間レンズ717と、投影レンズ718と、検出器720と、を含む。
【0109】
電子銃710は、電子線EBを放出する。電子銃710は、例えば、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線EBを放出する。照射レンズ711は、電子銃710から放
出された電子線EBを集束して試料Sに照射する。偏向器712は、試料Sに照射される電子線EBを偏向する。偏向器712で照射レンズ711において収束された電子線EBを偏向することによって、電子線EBで試料Sを走査できる。これにより、STEM像を取得できる。
【0110】
試料ホルダー100は、試料Sを保持している。試料ホルダー100は、ゴニオメータ714に挿入され、試料Sを試料室に導入する。ゴニオメータ714は、試料ホルダー100を移動および傾斜させる駆動機構を有している。
【0111】
対物レンズ716は、試料Sを透過した電子線EBでTEM像を結像する初段のレンズである。対物レンズ716、中間レンズ717、および投影レンズ718は、結像レンズ系を構成し、結像レンズ系は、試料Sを透過した電子線EBで検出器720上にTEM像を結像する。
【0112】
検出器720は、結像レンズ系によって結像されたTEM像を撮影する。検出器720は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等のデジタルカメラである。また、図示はしないが、透過電子顕微鏡700は、試料Sを透過した電子を検出してSTEM像を取得するためのSTEM検出器を備えている。
【0113】
なお、上記では、試料ホルダー100を透過電子顕微鏡に適用した場合について説明したが、例えば、試料ホルダー100は、走査電子顕微鏡や、集束イオンビーム装置、電子線マイクロアナライザーなどの試料に電子線やイオンビームなどの荷電粒子線を照射する荷電粒子線装置にも適用可能である。すなわち、試料ホルダー100を荷電粒子線装置用の試料ホルダーとして用いてもよい。
【0114】
8. 変形例
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0115】
上述した第1~第6実施形態では、試料押さえ部材120の軸受穴22は、試料押さえ部材120を倒した状態で、軸部材130がZ方向に長い長穴であったが、軸受穴22は、試料押さえ部材120を倒したときに軸部材130がZ方向に移動可能であれば長穴に限定されない。例えば、軸受穴22は、試料押さえ部材120を倒したときに軸部材130がZ方向に移動可能な直径を有する丸い穴であってもよい。
【0116】
また、上述した第1~第5実施形態では、第1弾性部材140および第2弾性部材150が板バネであったが、試料押さえ部材120の両端に試料を押さえるための力を付与できれば、第1弾性部材140および第2弾性部材150は板バネ以外の弾性部材であってもよい。また、上述した第6実施形態では、弾性部材640が板バネであったが、試料押さえ部材120の両端に試料を押さえるための力を付与できれば、弾性部材640は板バネ以外の弾性部材であってもよい。
【0117】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0118】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する
構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0119】
2a…上面、2b…下面、4a…上面、12…試料支持部、14…凹部、15…溝、16…貫通孔、18…開口部、18a…第1空間、18b…第2空間、18c…第3空間、19…固定穴、21a…基部、21b…先端部、21c…押さえ部、22…軸受穴、24…凸部、26…貫通孔、28a…ネジ穴、28b…ネジ穴、40…固定部、42…先端部、50…固定部、52…先端部、54…穴、56…溝、58…つまみ、100…試料ホルダー、102a…ネジ、102b…ネジ、110…ホルダーベース、120…試料押さえ部材、130…軸部材、140…第1弾性部材、150…第2弾性部材、160…ピン、200…試料ホルダー、210…第1突出部、211a…傾斜面、211b…傾斜面、212…第2突出部、213a…傾斜面、213b…傾斜面、216…先端部、218…先端部、220…つまみ、252…第1折り曲げ部、254…第2折り曲げ部、300…試料ホルダー、400…試料ホルダー、410…傾斜面、452…第1折り曲げ部、454…第2折り曲げ部、456…つまみ、500…試料ホルダー、502…ネジ、504…ネジ、506…切り欠き、550…軸穴、552…ネジ受け、554…押圧部、556…バネフック、600…試料ホルダー、612…傾斜面、614…傾斜面、640…弾性部材、642…窓部、644…第1押圧部、646…第2押圧部、648a…第1バネフック、648b…第2バネフック、700…透過電子顕微鏡、710…電子銃、711…照射レンズ、712…偏向器、714…ゴニオメータ、716…対物レンズ、717…中間レンズ、718…投影レンズ、720…検出器