(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175839
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】車両および車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20241212BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241212BHJP
B60K 13/04 20060101ALI20241212BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20241212BHJP
【FI】
B60L3/00 S ZHV
B60L50/60
B60K13/04 A
B60L58/10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093881
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浮田 恵佑
(72)【発明者】
【氏名】來間 雄介
(72)【発明者】
【氏名】右田 翼
(72)【発明者】
【氏名】森川 桂
(72)【発明者】
【氏名】小熊 泰正
【テーマコード(参考)】
3D038
5H125
【Fターム(参考)】
3D038BA09
3D038BB01
3D038BC16
5H125AA01
5H125AC12
5H125CD00
5H125EE51
5H125EE52
5H125EE55
5H125FF30
(57)【要約】
【課題】電池パック内のガスを適切なタイミングで排出可能とする。
【解決手段】ECUは、電池パック内のガス濃度が上昇していると判定すると(S100にてYES)、位置情報を取得するステップ(S102)と、日射量を取得するステップ(S104)と、走行中である判定し(S106にてYES)、上方に遮蔽物がないと判定し(S108にてNO)、かつ、排出影響のない場所であると判定する場合に(S110にてYES)、ガス排出処理を実行するステップ(S112)とを含む、処理を実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池を有する電池パックと、
前記電池パック内の前記二次電池から発生したガスを車外に排出可能に構成される排出装置と、
車両の位置および前記車両の走行状態のうちの少なくともいずれかを検出する検出装置と、
前記検出装置の検出結果が予め定められた検出結果である場合に前記ガスが前記車外に排出されるように前記排出装置を制御する制御装置とを備える、車両。
【請求項2】
前記検出装置は、車両速度を検出し、
前記制御装置は、
前記車両が走行中となる前記車両速度が検出される場合に前記ガスが前記車外に排出され、
前記車両が停止中となる前記車両速度が検出される場合に前記ガスが前記車外に排出されないように前記排出装置を制御する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記車両の位置が第1領域内であることが検出される場合に前記ガスが前記車外に排出され、
前記車両の位置が前記第1領域と異なる第2領域内であることが検出される場合に前記ガスが前記車外に排出されないように前記排出装置を制御し、
前記第1領域は、前記第2領域よりも前記ガスの排出による影響度が低い領域として予め設定される、請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記車両の位置が前記車両の上方が遮蔽されない位置である場合に前記ガスが前記車外に排出され、
前記車両の位置が前記車両の上方が遮蔽される位置である場合に前記ガスが前記車外に排出されないように前記排出装置を制御する、請求項1に記載の車両。
【請求項5】
前記電池パックは、全固体電池を含み、
前記ガスは、硫化水素を含む、請求項1~4のいずれかに記載の車両。
【請求項6】
二次電池を有する電池パックを搭載する車両の制御方法であって、前記車両は、前記電池パック内の前記二次電池から発生したガスを車外に排出可能に構成される排出装置を含み、
前記車両の位置および前記車両の走行状態のうちの少なくともいずれかを検出するステップと、
検出結果が予め定められた検出結果である場合に前記ガスが前記車外に排出されるように前記排出装置を制御するステップとを含む、車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2022-012308号公報(特許文献1)には、電池パック内の硫化水素を含むガスの濃度がしきい値よりも高い場合に冷却装置の駆動を禁止して、車外への排出を抑制する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車外への排出が抑制されると電池パック内にガスが充満することになるため、適切なタイミングで電池パック内のガスを車外へ排出することが求められる場合がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、電池パック内のガスを適切なタイミングで排出可能な車両および車両の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に係る車両は、二次電池を有する電池パックと、電池パック内の二次電池から発生したガスを車外に排出可能に構成される排出装置と、車両の位置および車両の走行状態のうちの少なくともいずれかを検出する検出装置と、検出装置の検出結果が予め定められた検出結果である場合にガスが車外に排出されるように排出装置を制御する制御装置とを備える。
【0007】
このようにすると、車両の走行状態や車両の位置の検出結果が予め定められた検出結果である場合に、ガスが車外に排出されるように排出装置が制御されるため、電池パック内のガスを適切なタイミングで排出することができる。
【0008】
本実施の形態においては、検出装置は、車両速度を検出する。制御装置は、車両が走行中となる車両速度が検出される場合にガスが車外に排出され、車両が停止中となる車両速度が検出される場合にガスが車外に排出されないように排出装置を制御する。
【0009】
このようにすると、車両の走行中にガスが車外に排出され、排出されたガスは滞留することなく拡散されるため、車両の周囲に影響を及ぼすことなく電池パック内のガス量を減少させることができる。また、車両の停止中にガスの車外への排出が抑制されるため、車両の周囲にガスが滞留することが抑制される。
【0010】
さらに本実施の形態においては、制御装置は、車両の位置が第1領域内であることが検出される場合にガスが車外に排出され、車両の位置が第1領域と異なる第2領域内であることが検出される場合にガスが車外に排出されないように排出装置を制御する。第1領域は、第2領域よりもガスの排出による影響度が低い領域として予め設定される。
【0011】
このようにすると、車両の位置が第1領域内である場合には、ガスが車外に排出されることによって車両の周囲に影響を及ぼすことなく電池パック内のガス量を減少させることができる。一方、車両の位置が第2領域内である場合にはガスが車外に排出されないため、第2領域内において車両の周囲にガスが滞留することが抑制される。
【0012】
さらに本実施の形態においては、制御装置は、車両の位置が車両の上方が遮蔽されない位置である場合にガスが前記車外に排出され、車両の位置が車両の上方が遮蔽される位置である場合にガスが車外に排出されないように排出装置を制御する。
【0013】
このようにすると、車両の位置が車両の上方が遮蔽されない位置である場合にガスが車外に排出されることによって、ガスが車両の周囲に滞留することなく拡散されるため、車両の周囲に影響を及ぼすことなく電池パック内のガス量を減少させることができる。一方、車両の位置が車両の上方が遮蔽される位置である場合にガスが車外に排出されないため、車両の周囲にガスが滞留することが抑制される。
【0014】
さらに本実施の形態においては、電池パックは、全固体電池を含む。ガスは、硫化水素を含む。
【0015】
このようにすると、車両の走行状態や車両の位置の検出結果を用いて電池パック内の全固体電池において発生したガスを適切なタイミングで車外に排出することができる。
【0016】
本開示の他の局面に係る車両の制御方法は、二次電池を有する電池パックを搭載する車両の制御方法である。車両は、電池パック内の二次電池から発生したガスを車外に排出可能に構成される排出装置を含む。車両の位置および車両の走行状態のうちの少なくともいずれかを検出するステップと、検出結果が予め定められた検出結果である場合にガスが車外に排出されるように排出装置を制御するステップとを含む。
【発明の効果】
【0017】
本開示によると、電池パック内のガスを適切なタイミングで排出可能な車両および車両の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施の形態に係る車両の構成の一例を示す図である。
【
図2】ECUで実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
以下では、本実施の形態に係る車両200が電気自動車である場合を一例として説明する。
図1は、本実施の形態に係る車両200の構成の一例を示す図である。なお、車両200としては、電池パックを搭載する車両であれば特に限定されるものではなく、ハイブリッド自動車であってもよいし、プラグインハイブリッド自動車であってもよいし、燃料電池自動車であってもよい。
【0021】
図1に示すように、車両200は、ECU(Electronic Control Unit)100と、日射センサ102と、位置検出装置104と、濃度センサ106と、電池パック214と、PCU(Power Control Unit)216と、MG(Motor Generator)218と、駆動輪222と、排出装置240とを備える。
【0022】
MG218は、代表的には交流回転電機であり、たとえば、ロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機である。MG218は、電動機(モータ)としての機能と発電機(ジェネレータ)としての機能とを有する。MG218の出力トルクは、減速機および差動装置等を介して駆動輪222に伝達される。
【0023】
車両200の制動時には、駆動輪222によりMG218が駆動され、MG218が発電機として動作する。これにより、MG218は、車両200の運動エネルギーを電力変換する回生制動を行う制動装置としても機能する。MG218における回生制動力により生じた回生電力は、電池パック214に蓄えられる。
【0024】
PCU216は、MG218と電池パック214との間で双方向に電力を変換する電力変換装置である。PCU216は、たとえば、ECU100からの制御信号に基づいて動作するインバータとコンバータとを含む。
【0025】
コンバータは、電池パック214の放電時に、電池パック214から供給された電圧を昇圧してインバータに供給する。インバータは、コンバータから供給された直流電力を交流電力に変換してMG218を駆動する。
【0026】
一方、インバータは、電池パック214の充電時に、MG218によって発電された交流電力を直流電力に変換してコンバータに供給する。コンバータは、インバータから供給された電圧を電池パック214の充電に適した電圧に降圧して電池パック214に供給する。
【0027】
また、PCU216は、ECU100からの制御信号に基づいてインバータおよびコンバータの動作を停止することによって電池パック214の充放電を休止する。なお、PCU216は、コンバータを省略した構成であってもよい。
【0028】
電池パック214は、MG218を駆動するための電力を蓄える蓄電装置である。電池パック214は、再充電が可能な直流電源であり、たとえば、複数個のセルが直列に接続されて構成される電池モジュール212を含む。セルは、正極と負極との間のイオン移動に固体の電解質が用いられる二次電池であって、その構成部材が全固体化された全固体電池である。セルを構成する材料としては、全固体電池を構成する材料として公知の材料が用いらればよいが、固体の電解質としては、たとえば、硫化ガラス等の硫化物系の材料が用いられる場合がある。固体の電解質としては、たとえば、Li2S-P2S5、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Si2S-P2S5、LiI-LiBr-Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2S5、LiI-Li2O-Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、および、Li2S-P2S5-GeS2からなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。
【0029】
排出装置240は、電池パック214内に発生したガスを車外に排出可能に構成される。排出装置240は、第1排出ダクト250と、第2排出ダクト258と、シャッター機構260とを含む。
【0030】
第1排出ダクト250は、電池パック214の内部に設けられる。第1排出ダクト250の一方端には、開口部が形成される。開口部は、電池モジュール212の直上に設けられ、電池パック214の上方に向けて設けられる。第1排出ダクト250の他方端は、電池パック214のケース(筐体)の上方の開口部に接続され、第2排出ダクト258の一方端に接続される。第1排出ダクト250の一方端側の通路には、第1フィルタ252が設けられる。第1排出ダクト250の他方端側の通路には、第2フィルタ256が設けられる。第1排出ダクト250における第1フィルタ252と第2フィルタ256との間の通路には、ガス中の硫黄成分を吸着させるための脱硫剤が設けられる。
【0031】
第2排出ダクト258の一方端は、上述したように第1排出ダクト250の他方端と接続される。第2排出ダクト258の他方端は、車外への開口部(図示せず)に接続される。第2排出ダクト258の一方端と他方端との間には、シャッター機構260が設けられる。シャッター機構260は、たとえば、ECU100からの制御信号に応じて駆動するアクチュエータ(図示せず)によって第2排出ダクト258において流路を閉じてガスの流通を遮断する遮断状態と、流路を開いてガスの流通を可能とする流通可能状態との間で切り替え可能に構成される。なお、第2排出ダクト258には、電池パック214内のガスを強制的に車外に排出させるためのファン(図示せず)がさらに設けられる。
【0032】
ECU100には、日射センサ102と位置検出装置104と濃度センサ106とが接続される。
【0033】
日射センサ102は、たとえば、フロントガラスから日射を受光可能に設けられる。日射センサ102は、たとえば、受光面が受ける単位時間当たりの日射量(熱量あるいはエネルギー量)を検出する。日射センサ102は、たとえば、車両200の屋根の上に設けられるようにしてもよい。日射センサ102は、検出した日射量を示す信号をECU100に出力する。
【0034】
位置検出装置104は、車両200の位置情報を検出し、検出した位置情報を示す信号をECU100に出力する。なお、位置検出装置104は、たとえば、GPS(Global Positioning System)等の位置検出用の人工衛星からの位置情報を示す信号を受信する受信機であってもよいし、あるいは、無線LAN(Local Area Network)等の車両200の周囲の基地局からの位置情報を示す信号を受信する受信機であってもよい。
【0035】
濃度センサ106は、電池パック214内のガス濃度を検出する。より具体的には、濃度センサ106は、たとえば、ガスに含まれる硫化水素の濃度をガス濃度として検出し、検出されたガス濃度を示す信号をECU100に出力してもよい。
【0036】
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリ(ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory))とを含む。ECU100は、各センサから受ける信号、ならびにメモリに記憶されたマップおよびプログラム等の情報に基づいて車両200が所望の状態となるように各機器(たとえば、PCU216や後述する排出装置240のシャッター機構260)を制御する。
【0037】
このような車両200に搭載される電池パック214においては、硫化系の全固体電池である電池モジュール212が含まれるため、電池モジュール212を構成するいずれかのセルから硫黄の成分を含むガスがセル外に流出すると、硫黄の成分と電池パック214内の空気に含まれる水分とが反応することで硫化水素が発生し得る。
【0038】
そのため、たとえば、電池パック214内のガス濃度がしきい値よりも高い場合には、車外への排出を抑制することも考えられるが、車外への排出が抑制されると電池パック214内にガスが充満することになるため、適切なタイミングで電池パック214内のガスを車外へ排出することが求められる場合がある。
【0039】
そこで、本実施の形態においては、ECU100が、車両200の位置および車両200の走行状態のうちの少なくともいずれかの検出結果が予め定められた検出結果である場合にガスが車外に排出されるように排出装置を制御するものとする。
【0040】
ECU100は、たとえば、車両200が走行中となる車両速度が検出される場合にガスが車外に排出され、車両200が停止中となる車両速度が検出される場合にガスが車外に排出されないように排出装置240を制御するものとする。
【0041】
このようにすると、車両200の走行中にガスが車外に排出され、排出されたガスは滞留することなく拡散されるため、車両200の周囲に影響を及ぼすことなく電池パック214内のガス量を減少させることができる。また、車両200の停止中にガスの車外への排出が抑制されるため、車両200の周囲にガスが滞留することが抑制される。このようにして、電池パック214内のガスを適切なタイミングで排出することができる。
【0042】
以下、ECU100で実行される処理の一例について
図2を参照しつつ説明する。
図2は、ECU100で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、所定の周期毎に繰り返し実行される。
【0043】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU100は、電池パック214内のガス濃度が上昇しているか否かを判定する。ECU100は、たとえば、濃度センサ106によって検出された電池パック214内のガス濃度がしきい値を超える場合に電池パック214内のガス濃度が上昇していると判定してもよいし、あるいは、ガス濃度の単位時間当たりの変化量がしきい値を超える場合に電池パック214内のガス濃度が上昇していると判定してもよい。電池パック214内のガス濃度が上昇していると判定される場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。
【0044】
S102にて、ECU100は、位置検出装置104から位置情報を取得する。その後処理はS104に移される。
【0045】
S104にて、ECU100は、日射センサ102から日射量を取得する。その後処理はS106に移される。
【0046】
S106にて、ECU100は、車両200が走行中であるか否かを判定する。ECU100は、たとえば、位置情報を用いて算出される車両200の速度(車両速度)がしきい値以上である場合に車両200が走行中であると判定する。また、ECU100は、たとえば、車両速度がしきい値よりも低い場合に車両200が停止中である(走行中でない)と判定する。しきい値は、車両200が走行中であるか停止中であるかを判定するための値であって、実験等によって適合される。車両200が走行中であると判定される場合(S106にてYES)、処理はS108に移される。
【0047】
S108にて、ECU100は、車両200の上方に遮蔽物がないかどうかを判定する。ECU100は、たとえば、車両200の位置情報を用いて地図上の車両200の位置を特定し、特定された車両200の地図上の位置が車両200の上方に遮蔽物がある位置であるか否かを判定する。ECU100は、たとえば、地図上の車両200の位置がトンネル内の位置であったり、屋内駐車場内の位置であって、地下駐車場内の位置である場合に、車両200の位置が車両200の上方に遮蔽物がある位置であると判定してもよい。あるいは、ECU100は、車両200の上方に遮蔽物がある位置であって、かつ、日射量がしきい値よりも小さい場合に、車両200の位置が車両200の上方に遮蔽物がある位置であると判定してもよい。車両200の上方に遮蔽物がないと判定される場合(S108にてYES)、処理はS110に移される。
【0048】
S110にて、ECU100は、車両200の位置が排出影響がない位置であるか否かを判定する。ECU100は、たとえば、車両200の位置が予め定められた地域であって、かつ、現在時刻が予め定められた時間帯内の時刻である場合に車両200の位置がガスの排出影響がない位置であると判定してもよい。予め定められた地域(第1領域に相当)は、たとえば、住宅地(第2領域に相当)以外のガスの排出による影響度が低い地域を含む。予め定められた時間帯は、たとえば、人通りの少ない夜間帯や深夜帯等の時間帯を含む。車両200の位置が排出影響がない位置であると判定される場合(S110にてYES)、処理はS112に移される。
【0049】
S112にて、ECU100は、ガス排出処理を実行する。ガス排出処理は、シャッター機構260を動作させて第1排出ダクト250の一方端から第2排出ダクト258の他方端までを流通可能状態にする処理を含む。その後処理は終了される。
【0050】
なお、電池パック214内のガス濃度が上昇していないと判定される場合(S100にてNO)、車両200が走行中でない(すなわち、停止中である)と判定される場合(S106にてNO)、車両200の上方に遮蔽物があると判定される場合(S108にてNO)、あるいは、車両200の位置が排出影響がある位置であると判定される場合(S110にてNO)、この処理は終了される。
【0051】
以上のような構造およびフローチャートに基づくECU100の動作の一例について説明する。
【0052】
たとえば、電池パック214内の電池モジュールのいずれかのセルにおいて劣化等によって内部でガスが発生し、発生したガスがセルの安全弁等から流出する場合を想定する。発生したセル外に流出するガスが増加すると、ガスに含まれる硫黄成分も増加することとなる。その結果、電池パック124内に流出したガスの硫黄成分と電池パック124内の空気に含まれる水分とによって生成される硫化水素の濃度も上昇していくこととなる。
【0053】
そのため、ガス濃度がしきい値を超えると(S100にてYES)、車両200の位置情報が位置検出装置104を用いて取得されるとともに(S102)、車両200への日射量が日射センサ102を用いて取得される(S104)。
【0054】
車両200が走行中であって(S106にてYES)、車両200の上方に遮蔽物がなく(S108にてYES)、ガスの排出の影響がないと判定される場合(S110にてYES)、ガス排出処理が実行される(S112)。
【0055】
図3は、ガスの排出経路を説明するための図である。
図3に示す車両200の構成は、
図1に示す車両200の構成と同様である。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0056】
ガス排出処理が実行されると、シャッター機構において流通可能状態になるため、車外と電池パック214内とが第1排出ダクト250および第2排出ダクト258とを介して連通状態になる。電池パック214内において発生したガスによって電池パック214内の圧力が上昇していたり、あるいは、図示しないファンの駆動により、電池パック214内のガスが第1排出ダクト250に導入される。第1排出ダクト250に導入されたガスは、
図3の破線矢印に示すように、第1排出ダクト250と第2排出ダクト258を経由して車外に流通していく。ガスが、第1フィルタ252、第2フィルタ256および脱硫剤254を通過するときに、ガスに含まれる硫黄成分等が吸着され、その他の成分を含むガスが車外に排出される。
【0057】
一方、車両200が停止中の場合(S106にてNO)、あるいは、車両200が走行中であって(S106にてYES)、かつ、トンネル等の車両200の上方に遮蔽物がある場合(S108にてNO)、あるいは、ガスの排出による影響があると判定される場合(S110にてNO)、ガス排出処理が実行されない。この場合、電池パック214内のガスが車外に排出されない。
【0058】
以上のようにして、本実施の形態に係る車両200によると、車両200の走行状態や車両200の位置に応じてガスを車外に排出したり、排出を抑制したりすることができるため、電池パック214内の全固体電池の電池モジュールにおいて発生したガスを適切なタイミングで排出することができる。したがって、電池パック内のガスを適切なタイミングで排出可能な車両および車両の制御方法を提供することができる。
【0059】
特に、走行中においては、排出されたガスが拡散されるため、ガスを車外に排出することによって電池パック内のガス量を減少させることができる。また、停止中においては、ガスの車外への排出を抑制することによって車両の周囲にガスが滞留することを抑制し、滞留したガスが車内に侵入することを抑制できる。
【0060】
さらに、車両200の上方に遮蔽物があると判定される場合には、トンネルの側壁や屋内駐車場等の側壁などにより車両の周囲のいずれかの方向に壁があるような場所である可能性が高い。そのため、車両200の上方に遮蔽物がある場合にガスが車外に排出されないようにすることで、車両の周囲にガスが滞留することを抑制することができる。一方、車両200の上方に遮蔽物がない場合には、車両の周囲のいずれかの方向に壁があるような場所である可能性が低い。そのため、車両200の上方に遮蔽物がない場合にガスが車外に排出されるようにすることで、ガスが車外に排出されてもガスの排出による影響の発生を抑制することができる。これにより、電池パック214内のガスによる圧力の上昇を抑制することができる。
【0061】
以下、変形例について記載する。
上述の実施の形態では、電池パック214内の電池モジュール212のいずれかのセルから発生するガスとしては、硫化水素を含むガスである場合を一例として説明したが、特に硫化水素を含むガスに限定されるものではない。
【0062】
さらに上述の実施の形態では、位置検出装置104を用いて車両速度を算出するものとして説明したが、たとえば、車輪速等を検出して車両速度を算出するようにしてもよい。
【0063】
さらに上述の実施の形態では、ガス排出処理の実行時に、第1排出ダクト250の一方端と第2排出ダクト258と他方端とをシャッター機構260を連通状態にするとともにファンを駆動させて強制的に電池パック214内のガスを車外へ排出する場合を一例として説明したが、シャッター機構260を省略し、通常時は連通状態にしつつ、ガス排出処理の実行時のみファンを駆動させて強制的に電池パック214内のガスを車外へ排出するようにしてもよい。このようにすると、通常時は、連通状態になることで電池パック214内と車外との間で空気が出入りし、電池パック214内の圧力を一定に保つことができる。また、ガス濃度の上昇によって車両200の位置や走行状態に応じてファンを駆動させることで電池パック214内のガスを適切なタイミングで車外に排出することができる。なお、この場合、通常時においてもガス濃度の上昇時においてもガスに含まれる硫化水素は、脱硫剤254によって吸着される。
【0064】
さらに上述の実施の形態では、第1排出ダクト250の一方端と第2排出ダクト258と他方端とを連通状態にすることにより電池パック214内のガスを車外に排出する場合を一例として説明したが、たとえば、ファンや調整弁を用いて車外に排出されるガスの流通量を調整してもよい。
【0065】
ECU100は、たとえば、車両速度に基づいて車外に排出されるガスの流通量を調整してもよい。ECU100は、たとえば、車両速度が速いほど流通量が多くなるように、車両速度が遅いほど流通量が少なくなるようにファンや調整弁を制御してもよい。
【0066】
このようにすると、車両速度が速いほど排出したガスが広く拡散するため周囲に影響を及ぼすことなく多くのガスを車外に排出して、電池パック214内の圧力を低下させることができる。また、車両速度が遅いほど、車両速度が速い場合に比べてガスが広く拡散しないため、流通量を適切に調整することで周囲に影響を及ぼすことなく電池パック214内のガスを車外に排出することができる。
【0067】
さらに上述の実施の形態では、車両200が走行中であるという条件と、車両200の上方に遮蔽物がないという条件と、排出影響のない場所であるという条件とを含む実行条件が成立する場合にガス排出処理を実行するものとして説明したが、特に実行条件としてはこのような条件に限定されるものではない。たとえば、車両200の上方に遮蔽物がないという条件に代えて車両200を中心とした予め定められた領域内に壁等の障害物がないという条件を実行条件として含むようにしてもよい。ECU100は、たとえば、車両200の周囲を撮影するカメラや車両200の周囲の複数箇所に設けられる測距センサ等を用いて車両200を中心とした予め定められた領域に壁等の障害物があるか否かを判定してもよい。ECU100は、たとえば、車両200の前方向、後方向、左方向および右方向等を含む複数の方向のうちの少なくともいずれかの方向であって、かつ、車両200から各方向に対応した予め定められた距離以内に壁や他車両等の障害物があることがカメラや測距センサ等を用いて検出される場合には、予め定められた領域内に障害物があると判定してもよい。
【0068】
なお、上記した変形例は、その全部または一部を適宜組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
100 ECU、102 日射センサ、104 位置検出装置、106 濃度センサ、200 車両、212 電池モジュール、214 電池パック、222 駆動輪、240 排出装置、250 第1排出ダクト、252 第1フィルタ、254 脱硫剤、256 第2フィルタ、258 第2排出ダクト、260 シャッター機構。