(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017584
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】動物忌避剤
(51)【国際特許分類】
A01N 63/20 20200101AFI20240201BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20240201BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20240201BHJP
A01N 25/06 20060101ALI20240201BHJP
A01M 29/12 20110101ALI20240201BHJP
【FI】
A01N63/20
A01P17/00
A01N25/04 103
A01N25/06
A01M29/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120316
(22)【出願日】2022-07-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)古谷隆浩が、ウェブサイトにて動物忌避剤を公開した。ウェブサイトの掲載日 令和4年4月21日、ウェブサイトのアドレス https://fkchimeji.cart.fc2.com/ca2/12447/p-r2-s/ (2)古谷隆浩が、ウェブサイトにて動物忌避剤を公開した。ウェブサイトの掲載日 令和4年7月25日、ウェブサイトのアドレス https://fkchimeji.cart.fc2.com/ca2/12728/p-r2-s/ (3)古谷隆浩が、動物忌避剤を卸売・小売業者(goldfish Z-FACTORY 杉原)に販売した。販売日 令和4年4月17日 (4)古谷隆浩が、動物忌避剤を卸売・小売業者(goldfish Z-FACTORY 杉原)に販売した。販売日 令和4年7月20日 (5)古谷隆浩が、動物忌避剤を卸売・小売業者(有限会社フィッシュファームツボタ)に販売した。販売日 令和4年6月14日 (6)古谷隆浩が、動物忌避剤を卸売・小売業者(株式会社ウエスイ設備)に販売した。販売日 令和4年6月26日
(71)【出願人】
【識別番号】504001808
【氏名又は名称】古谷 隆浩
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】古谷 隆浩
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121CC21
2B121CC31
2B121EA21
2B121FA08
2B121FA13
4H011AE02
4H011BA01
4H011BB21
4H011BC20
4H011BC22
4H011DA17
4H011DA21
4H011DB05
4H011DE16
4H011DG03
4H011DG08
(57)【要約】
【課題】肉食動物の排泄物を原料としながら悪臭の問題がなく、忌避効果が長時間持続し、しかも、多量の排泄物原料を必要とせず簡便に製造できる動物忌避剤を提供する。
【解決手段】本発明の動物忌避剤は、肉食動物の排泄物の発酵水溶液を含む動物忌避剤である。また、本発明の動物忌避剤の製造方法は、水、植物性資材及び肉食動物の排泄物を含む混合物を発酵して発酵水溶液を得る、動物忌避剤の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉食動物の排泄物の発酵水溶液を含む動物忌避剤。
【請求項2】
更に刺激臭成分を含む、請求項1に記載の動物忌避剤。
【請求項3】
更に増粘剤を含み、ゲル状である、請求項1又は2に記載の動物忌避剤。
【請求項4】
スプレー容器に収容されて用いられる、請求項1又は2に記載の動物忌避剤。
【請求項5】
水、植物性資材及び肉食動物の排泄物を含む混合物を発酵して発酵水溶液を得る、動物忌避剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動物忌避剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、養魚場、農園・果樹園では、ネコ、アライグマ、ハクビシン、コウモリ、鹿、猪等による被害が生じている。
【0003】
これらの迷惑動物に対しては、ライオン等の肉食動物の排泄物(糞、尿)が忌避効果を有することが知られており、例えば、特許文献1には、ライオンの糞を農作物の周辺に散布することが提案されている。しかし、ライオン等の肉食動物の排泄物の散布には、非常な悪臭や腐敗という衛生面の問題があり、また、長時間の忌避効果を持続するためには多量の肉食動物の排泄物が必要になるという問題があった。
【0004】
悪臭の問題を解決するために、例えば、特許文献2には、ライオン糞のジエチルエーテル抽出物を有効成分とする動物忌避剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-191868号公報
【特許文献2】特開2007-254385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に開示の動物忌避剤には、有効成分の抽出・分離に煩雑な手間が掛かるという問題があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、肉食動物の排泄物を原料としながら悪臭の問題がなく、しかも、多量の肉食動物の排泄物を必要とせず、簡便に製造できる動物忌避剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、肉食動物の排泄物を植物性資材とともに発酵させて発酵水溶液を得ることによって、簡便に、悪臭の問題がない動物忌避剤を製造できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、肉食動物の排泄物の発酵水溶液を含む動物忌避剤を提供する。
【0010】
上記動物忌避剤は、更に刺激臭成分を含むものであってよい。
【0011】
上記動物忌避剤は、更に増粘剤を含み、ゲル状であってもよい。
【0012】
上記動物忌避剤は、スプレー容器に収容されて用いられるものであってもよい。
【0013】
本発明は、また、水、植物性資材及び肉食動物の排泄物を含む混合物を発酵して発酵水溶液を得る、動物忌避剤の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の動物忌避剤は、悪臭の問題がなく、忌避効果が長時間持続し、しかも、多量の排泄物原料を必要とせず簡便に製造できるので、養魚場、農園・果樹園等における迷惑動物による被害を好適に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の動物忌避剤は、肉食動物の排泄物の発酵水溶液を含む動物忌避剤である。本発明の動物忌避剤は、肉食動物の排泄物そのものに代えて発酵水溶液を用いるため、腐敗して悪臭を放つことがなく、使用場所において衛生面の問題が生じない。本発明の動物忌避剤は、迷惑動物(例えば、ネコ、タヌキ、ハクビシン、ネズミ、アライグマ、コウモリ、鹿、猪等)について忌避効果を有する。
【0016】
本発明に係る肉食動物の排泄物としては、例えば、ネコ科の大型肉食獣(ライオン、トラ、チーター等)、オオカミ、クマなどの排泄物が挙げられる。中でも、迷惑動物の忌避効果に優れる点から、ネコ科の大型肉食獣の排泄物が好ましく、より好ましくはライオンの排泄物である。これらは1種のみを用いてよいし2種以上を用いてもよい。また、上記排泄物としては、糞や尿が挙げられ、中でも、取扱いが容易である点から、糞が好ましい。
【0017】
本発明に係る発酵水溶液は、好ましくは、植物性資材由来の発酵菌によって肉食動物の排泄物を発酵処理して得られるものである。
【0018】
上記植物性資材としては、発酵菌の供給源となればよく特に限定されないが、例えば、稲ワラ、麦ワラ、籾殻、落葉、刈草、米糠、油粕、腐葉土、ボカシ肥料等が挙げられる。中でも、理由は明らかではないが、迷惑動物の忌避効果に優れる発酵水溶液が得られやすい点から、稲ワラ及び米糠を併用することが好ましい。これらは1種のみを用いてよいし2種以上を用いてもよい。
【0019】
本発明の動物忌避剤は、更に、植物酢液(木酢液、竹酢液等)、植物由来の刺激臭成分等の刺激臭成分を含むものであってよい。植物酢液とは、植物材料を乾留した際に生じる乾留液の上澄み分として得られるものである。中でも、迷惑動物の忌避効果が一層向上する点から、植物酢液及び植物由来の刺激臭成分を含むことが好ましい。
【0020】
上記植物由来の刺激臭成分に係る植物は、忌避効果が一層向上すればよく、特に限定されないが、例えば、ハーブ類(ニンニク、ネギ、玉ネギ、トウガラシ、コショウ、ワサビ、ショウガ、シナモン、ラベンダー、ローズマリー、タイム、ミント、大葉、シソ、ヨモギ、ドクダミ等)、緑茶、クマザサ、サンショ、ヒノキ、ヒバ、ショウブ葉、ビワ葉、ゲットウ等が挙げられる。中でも、迷惑動物の忌避効果に特に優れる点から、ハーブ類が好ましく、ニンニクがより好ましい。これらは1種のみを用いてよいし2種以上を用いてもよい。
【0021】
本発明に係る発酵水溶液は、上記肉食動物の排泄物、上記植物性資材、水、及び、必要に応じて上記刺激臭成分(植物酢液、植物由来の刺激臭成分)を混合し、その混合物を時々撹拌しながら発酵して、発酵した混合物から、上記肉食動物の排泄物、上記植物性資材及び上記刺激臭成分に由来する固形分を取り除くことによって得ることができる。
【0022】
上記固形分を取り除いた後の、上記発酵水溶液中の上記固形分の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0023】
上記植物性資材の配合量は、上記肉食動物の排泄物1質量部に対して、1~20質量部が好ましく、より、好ましくは2~15質量部、更に好ましくは4~10質量部である。
【0024】
水の配合量は、上記肉食動物の排泄物1質量部に対して、100~500質量部が好ましく、より好ましくは150~400質量部、更に好ましくは200~300質量部である。
【0025】
上記植物酢液の配合量は、上記肉食動物の排泄物1質量部に対して、0.1~1質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~0.6質量部である。
【0026】
上記植物由来の刺激臭成分の配合量は、上記肉食動物の排泄物1質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~3質量部である。なお、上記植物由来の刺激臭成分の配合は、上記刺激臭成分に係る植物を配合することによって行うことができる。
【0027】
上記混合物の発酵は、上記混合物を、好ましくは5~40℃、より好ましくは20~30℃となるように温度調節して行うことができる。
【0028】
上記発酵を行う期間は、好ましくは30~500日間、より好ましくは60~450日間、更に好ましくは90~400日間である。
【0029】
上記発酵は、水及び上記植物性資材を混合し予め発酵した後に上記肉食動物の排泄物を追加混合した混合物に対して行うものであってもよい。
【0030】
この場合、水及び上記植物性資材に対して行う発酵は、好ましくは5~40℃、より好ましくは20~30℃となるように温度調節して行う。発酵期間は、好ましくは30~500日間、より好ましくは60~450日間、更に好ましくは90~400日間である。
【0031】
上記肉食動物の排泄物を追加混合した後の発酵は、好ましくは5~40℃、より好ましくは20~30℃となるように温度調節して行う。発酵期間は、好ましくは10~60日間、より好ましくは15~50日間、更に好ましくは20~40日間である。
【0032】
上記刺激臭成分(植物酢液、植物由来の刺激臭成分)の配合は、上記のいずれの混合に際して行ってもよい。上記植物由来の刺激臭成分が上記植物の抽出物である場合には、上記刺激臭成分の配合は、上記発酵した混合物から上記固形物を取り除いた後に行ってもよい。上記植物酢液の配合は、混合物に対する虫類の飛来を抑制する効果がある点から、上記肉食動物の排泄物や上記植物性資材とともに行うことが好ましい。
【0033】
本発明の動物忌避剤は、上記発酵水溶液をそのまま用いるものであってもよいし、水によって2~100倍(好ましくは10~50倍)に希釈調整したものであってもよい。
【0034】
上記動物忌避剤中の、上記肉食動物の排泄物、上記植物性資材及び上記刺激臭成分に由来する固形分の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0035】
本発明の動物忌避剤は、更に増粘剤を含みゲル状であってもよい。ゲル状の動物忌避剤は、ビーズ状に形成されたものであってもよい。ゲル状であると、長時間の忌避効果が得られやすい。
【0036】
上記増粘剤としては、例えば、吸水性樹脂(ポリアクリル酸塩架橋体、アクリル酸-アクリルアミド共重合物架橋体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合物架橋体等)、ゲル化剤(ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース、ゼラチン、寒天、キサンタンガム、アラビアガム、グアーガム、カラギーナン、ローカストビーンガム等)が挙げられる。
【0037】
上記動物忌避剤中の、上記増粘剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.1~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3~7質量%、更に好ましくは0.5~5質量%である。
【0038】
本発明の動物忌避剤は、霧状に吐出して容易に散布できる点から、スプレー容器に収容されて用いるものであってもよい。スプレー容器としては、特に限定されないが、例えば、トリガー式スプレー容器等が挙げられる。
【0039】
本発明の動物忌避剤は、有効成分の抽出や加熱加工といった手間を要しない製造方法によって、非常に簡便に製造することができる。また、本発明の動物忌避剤では、上記製造方法における発酵によって、上記肉食動物の排泄物による悪臭が抑制されるので悪臭の問題が生じず、更に、腐敗菌が死滅させられるので、衛生面の問題が生じなくなる。また、上記製造方法によって、多量の水を配合しても十分な忌避効果を示す発酵水溶液が得られることから、忌避効果を持続するために多量の肉食動物の排泄物が必要という問題が解消する。
【実施例0040】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
水45L、稲ワラ1Kg、米糠200g、木酢液100g及びニンニク100gの混合物を、20~30℃において365日間、時々撹拌しながら発酵させた後、ライオンの糞200gを追加混合して、更に30日間、時々撹拌しながら発酵させてから、固形物を取り除いて発酵水溶液を得た。この発酵水溶液を水で30倍に希釈し、100gに対して吸水性樹脂2gを加えゲル化して、透気性の容器に収納することによって、ゲル状の動物忌避剤のサンプルを得た。
【0042】
(実施例2)
ライオンの糞に代えて、チーターの糞を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0043】
(実施例3)
ライオンの糞に代えて、トラの糞を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0044】
(比較例1)
ライオンの糞を用いない以外は、実施例1と同様にした。
【0045】
(比較例2)
ライオンの糞200gを、直接、透気性の容器に収納してサンプルとした。
【0046】
得られたサンプルについて、臭いと、迷惑動物に対する忌避効果の評価を行った。結果を表1に示す。
【0047】
<臭いの評価>
評価者10名による、悪臭が感じられない、あるいは臭気はあるが気にならない程度を合格とし、それ以外を不合格とする官能評価を行った。評価基準は以下の通りである。
〇:合格と判定した評価者が10名
△:合格と判定した評価者が6名以上9名以下
×:合格と判定した評価者が5名以下
【0048】
<忌避効果の評価>
迷惑動物に対する忌避効果として、屋外の金魚養殖池(20m×20m)にサンプルを2m間隔で設置し、90日間における野生の迷惑動物(ネコ、アライグマ等)による金魚の捕食の有無を評価した。評価基準は以下の通りである。
〇:金魚が全く捕食されなかった
△:金魚が多少捕食された
×:金魚が数多く捕食された
【0049】
【0050】
表1に示されるように、実施例1~3の動物忌避剤は、臭い及び忌避効果に優れると評価された(臭い:〇、忌避効果:〇~△)。これらに対して、比較例1では忌避効果に劣ることが確認された(忌避効果:×)。また、比較例2では、悪臭が強く、忌避効果が90日間持続しない結果、金魚が多少捕食されることが確認された(臭い:×、忌避効果:△)。