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特開2024-175845低温用バルブのリーク検査方法および治具
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  • 特開-低温用バルブのリーク検査方法および治具 図1
  • 特開-低温用バルブのリーク検査方法および治具 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175845
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】低温用バルブのリーク検査方法および治具
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/04 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G01M3/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093892
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】池田 充志
(72)【発明者】
【氏名】上田 唯人
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA15
2G067AA37
2G067CC04
2G067CC13
2G067DD17
(57)【要約】

【課題】 使用環境を想定した低温流体のリーク量を適切に評価することができる低温用バルブのリーク検査方法を提供する。
【解決手段】 低温流体の流量制御に用いられる低温用バルブ100のリーク量を検査する方法であって、低温用バルブ100の二次側を二次側カバー治具30で覆う治具取付工程と、低温用バルブ100を閉じた状態で、二次側カバー治具30を介して二次側にヘリウムガスを供給し、低温用バルブ100の一次側にヘリウム以外の低温流体を供給して加圧する加圧工程と、加圧工程により二次側にリークしてヘリウムガスに混合された低温流体のリーク量を計測する計測工程とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温流体の流量制御に用いられる低温用バルブのリーク量を検査する方法であって、
前記低温用バルブの二次側を二次側カバー治具で覆う治具取付工程と、
前記低温用バルブを閉じた状態で、前記二次側カバー治具を介して前記二次側にヘリウムガスを供給し、前記低温用バルブの一次側にヘリウム以外の低温流体を供給して加圧する加圧工程と、
前記加圧工程により前記二次側にリークしてヘリウムガスに混合された低温流体のリーク量を計測する計測工程とを備える低温用バルブのリーク検査方法。
【請求項2】
前記二次側カバー治具は、ヘリウムガスが流入するガス供給口およびヘリウムガスが流出するガス排出口を備えており、
前記計測工程は、前記ガス供給口から流入して前記ガス排出口から流出したヘリウムガスに含まれる低温流体の濃度を検出する濃度検出工程と、
検出したヘリウムガスの濃度から低温流体のリーク量を演算する演算工程とを備える請求項1に記載の低温用バルブのリーク検査方法。
【請求項3】
前記濃度検出工程は、前記ガス供給口および前記ガス排出口を介して前記二次側にヘリウムガスを連続的に通過させながら行う請求項2に記載の低温用バルブのリーク検査方法。
【請求項4】
前記濃度検出工程は、前記ガス排出口からのヘリウムガスの流出を遮断して前記二次側にヘリウムガスを所定時間貯留した後に行う請求項2に記載の低温用バルブのリーク検査方法。
【請求項5】
前記計測工程は、前記二次側にヘリウムガスを所定時間貯留している間の前記二次側の温度変化を検出する温度検出工程と、
前記ガス排出口から流出するガス量に対して温度変化に伴う体積変化分を補正することにより、低温流体のリーク量を演算する演算工程とを備える請求項1に記載の低温用バルブのリーク検査方法。
【請求項6】
前記治具取付工程は、真空吸引可能なチャンバ内に前記低温用バルブを収容して行う請求項1に記載の低温用バルブのリーク検査方法。
【請求項7】
請求項1に記載の低温用バルブのリーク検査方法に使用される前記二次側カバー治具を備えるリーク検査治具であって、
前記二次側カバー治具は、ヘリウムガスが流入するガス供給口およびヘリウムガスが流出するガス排出口を備える低温用バルブのリーク検査治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温用バルブのリーク検査方法および治具に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(LNG)等の低温流体の流量制御に用いられる低温用バルブは、試験槽に貯留した液化窒素に浸漬させて、ヘリウムガスで加圧してリーク試験を行うことが、従来から行われている。このような浸漬検査法は、安定した計測が可能である一方で、実際に使用する低温流体をバルブに供給して検査を行うものではないことから、低温流体のリーク量を正確に評価することが困難という問題がある。
【0003】
このため、特許文献1には、実際の使用状況に近い状態でバルブの検査を行うことができるように弁一次側に液化窒素を供給して、弁二次側の温度と圧力変動を記録計で記録するバルブの検査方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-270076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の検査方法は、弁二次側の圧力変動を検知することにより弁座封止性能を確認するものであるが、バルブのサイズが大きくなると、リークが生じたときの弁二次側の圧力変動が小さくなるために、リーク量の測定が困難になるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、使用環境を想定した低温流体のリーク量を適切に評価することができる低温用バルブのリーク検査方法および治具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、低温流体の流量制御に用いられる低温用バルブのリーク量を検査する方法であって、前記低温用バルブの二次側を二次側カバー治具で覆う治具取付工程と、前記低温用バルブを閉じた状態で、前記二次側カバー治具を介して前記二次側にヘリウムガスを供給し、前記低温用バルブの一次側にヘリウム以外の低温流体を供給して加圧する加圧工程と、前記加圧工程により前記二次側にリークしてヘリウムガスに混合された低温流体のリーク量を計測する計測工程とを備える低温用バルブのリーク検査方法により達成される。
【0008】
この低温用バルブのリーク検査方法において、前記二次側カバー治具は、ヘリウムガスが流入するガス供給口およびヘリウムガスが流出するガス排出口を備えていることが好ましく、前記計測工程は、前記ガス供給口から流入して前記ガス排出口から流出したヘリウムガスに含まれる低温流体の濃度を検出する濃度検出工程と、検出したヘリウムガスの濃度から低温流体のリーク量を演算する演算工程とを備えることが好ましい。前記濃度検出工程は、前記ガス供給口および前記ガス排出口を介して前記二次側にヘリウムガスを連続的に通過させながら行うことができ、あるいは、前記ガス排出口からのヘリウムガスの流出を遮断して前記二次側にヘリウムガスを所定時間貯留した後に行うことができる。
【0009】
前記計測工程は、前記二次側にヘリウムガスを所定時間貯留している間の前記二次側の温度変化を検出する温度検出工程と、前記ガス排出口から流出するガス量に対して温度変化に伴う体積変化分を補正することにより、低温流体のリーク量を演算する演算工程とを備えることができる。
【0010】
前記治具取付工程は、真空吸引可能なチャンバ内に前記低温用バルブを収容して行うことができる。
【0011】
また、本発明の前記目的は、上述した低温用バルブのリーク検査方法に使用される前記二次側カバー治具を備えるリーク検査治具であって、前記二次側カバー治具は、ヘリウムガスが流入するガス供給口およびヘリウムガスが流出するガス排出口を備える低温用バルブのリーク検査治具により達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の低温用バルブのリーク検査方法および治具によれば、使用環境を想定した低温流体のリーク量を適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る低温用バルブのリーク検査方法に使用する検査装置の概略構成図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る低温用バルブのリーク検査方法に使用する検査装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る低温用バルブのリーク検査方法に使用する検査装置の概略構成図である。図1に示す検査装置1は、液化水素等の低温流体の流量制御に用いられる低温用バルブ100のリーク量を検査するための装置である。本実施形態の低温用バルブ100は、真空二重配管用のバタフライ弁であるが、玉形弁、仕切弁、ボール弁など他の構造のバルブであってもよい。
【0015】
図1に示すように、検査装置1は、チャンバ10、一次側カバー治具20および二次側カバー治具30を備えている。チャンバ10は、内部に低温用バルブ100を収容した状態で密閉可能に構成されており、真空ポンプ11の作動により真空吸引することができる。
【0016】
一次側カバー治具20は、低温流体が流入する低温流体供給口21および低温流体が流出する低温流体排出口22を備えており、低温用バルブ100の一次側(入口側)にフランジ結合等により着脱可能に固定される。低温流体供給口21は、低温流体供給ライン23によりボンベ等の低温流体供給源24に接続され、開閉弁25の操作により低温用バルブ100の一次側に低温流体を供給することができる。低温流体排出口22には、圧力調整用リリーフ弁26を備える低温流体排出ライン27が接続されている。圧力調整用リリーフ弁26は、低温用バルブ100の一次側が所定圧力を超えると開き、低温流体を大気開放することで、低温用バルブ100の一次側の圧力を、試験条件等に基づき設定された所定の圧力に維持することができる。
【0017】
二次側カバー治具30は、ヘリウムガスが流入するガス供給口31およびヘリウムガスが流出するガス排出口32を備えており、低温用バルブ100の二次側(出口側)にフランジ結合等により着脱可能に固定される。ガス供給口31は、ガス供給ライン33によりヘリウムガス供給源34に接続され、開閉弁35の操作により低温用バルブ100の二次側にヘリウムガスを供給することができる。ガス排出口32には、開閉弁36を備えるガス排出ライン37が接続されている。
【0018】
ガス排出ライン37の開閉弁36よりも下流側には、加熱器40、流量計41および濃度計42が設けられている。加熱器40は、ガス排出ライン37を通過するガスを、水道水等により常温近くまで加熱する。流量計41は、例えばマスフローメータであり、加熱器40による加熱後のガス流量を計測する。濃度計42は、低温用バルブ100の二次側にリークすることによりヘリウムガスに混入した低温流体の濃度を計測する。低温流体が液化水素の場合、濃度計42は、接触燃焼式の水素濃度計を使用することが可能であり、酸素を供給しながら水素濃度をリアルタイムに計測することができる。濃度計42は、半導体式など他の方式のセンサであってもよく、低温流体の種類に応じたガスセンサを適宜選択することができる。
【0019】
図1に示す検査装置1を用いた本実施形態の低温用バルブのリーク検査方法は、まず、低温用バルブ100をチャンバ10内に収容し、図1に示すように、低温用バルブ100の一次側および二次側をそれぞれ一次側カバー治具20および二次側カバー治具30で覆う治具取付工程を行う。この後、低温用バルブ100を閉じた状態でチャンバ10を密閉し、チャンバ10内を真空引きする。
【0020】
ついで、二次側カバー治具30を介して低温用バルブ100の二次側にヘリウムガスを供給する。こうして、低温用バルブ100の二次側の雰囲気をヘリウムガスで置換した後、一次側カバー治具20を介して低温用バルブ100の一次側に低温流体を供給し、低温用バルブ100の一次側を所定の圧力(例えば、1~2MPa)に加圧する加圧工程を行う。本実施形態の低温流体は液化水素であるが、ヘリウム以外の低温流体であればよく、例えば、液化アンモニア、液化窒素、液化酸素、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)等であってもよい。
【0021】
次に、上記の加圧工程により低温用バルブ100の二次側にリークしてヘリウムガスに混合された低温流体のリーク量を計測する計測工程を行う。これにより、低温用バルブ100を真空二重配管に接続した場合と同様の使用環境下でリーク検査を行うことができる。
【0022】
上記の計測工程は、ガス供給口31から流入してガス排出口32から流出したヘリウムガスに含まれる低温流体の濃度を濃度計42により検出する濃度検出工程と、検出したヘリウムガスの濃度から低温流体のリーク量を演算する演算工程とにより行うことができる。低温用バルブ100の二次側は、ヘリウムガスの供給によって、低温流体とは異なる種類の気体に置換されているため、低温流体の濃度を検出することにより、低温流体のリーク量を正確に取得することができる。
【0023】
上記の濃度検出工程は、開閉弁35,36を常時開放することで、ガス供給口31およびガス排出口32を介して低温用バルブ100の二次側にヘリウムガスを連続的に通過させ、ヘリウムガスに含まれる低温流体の濃度を濃度計42によりリアルタイムに検出して行うことができる。低温用バルブ100の二次側を通過するガス流量は略一定であり、流量計41の検出により確認することが可能であり、あるいは、ヘリウムガス供給源34のヘリウムガスの消費量からガス流量を求めることができる。
【0024】
上記の演算工程は、低温流体の供給開始前後における濃度計42の検出濃度の差をリーク濃度として、低温流体の供給開始からのリーク濃度とガス流量を積算することで、試験時間内の低温流体のリーク量を求めることができる。また、上記の演算工程は、試験時間内のリーク濃度の最大値(ピーク値)または平均値から、低温流体のリーク流量を求めることができる。リーク濃度およびガス流量の測定は、加熱器40により常温近くまで加熱した後に行うことが好ましく、これによって計測結果を安定させることができ、リーク量またはリーク流量の測定を正確に行うことができる。
【0025】
このように、濃度検出工程を、低温用バルブ100の二次側にヘリウムガスを連続的に通過させながら行うことで、低温流体のリーク量の検査を短時間で完了することができる。但し、濃度検出工程は、開閉弁36を閉じてガス排出口32からのヘリウムガスの流出を遮断し、低温用バルブ100の二次側にヘリウムガスを所定時間貯留した後にヘリウムガスを流出させて行ってもよい。
【0026】
この場合は、低温用バルブ100の二次側をヘリウムガスにより置換した後に開閉弁36を閉じて、低温用バルブ100の二次側の圧力を一次側の圧力よりも若干高くした後(例えば、一次側が0.0MPa、二次側が0.05~0.1MPa)、低温用バルブ100の一次側に低温流体を供給して所定の圧力(例えば、1~2MPa)に加圧する加圧工程を行う。
【0027】
ついで、この加圧状態を所定時間維持した後、開閉弁36を開いて計測工程を行う。計測工程が備える演算工程は、開閉弁36の開閉前後における濃度計42の検出濃度の差をリーク濃度として、開閉弁36を開いた後のリーク濃度とガス流量を積算することで、試験時間内の低温流体のリーク量を求めることができる。また、このリーク量を所定時間で除することで、低温流体のリーク流量を求めることができる。
【0028】
本実施形態の計測工程は、ガス供給口31から低温用バルブ100の二次側に流入してガス排出口32から流出したヘリウムガスに含まれる低温流体の濃度を検出する濃度検出工程を備えているが、濃度検出工程を備える代わりに、後述するように、低温用バルブ100の二次側の温度変化を検出する温度検出工程を備えることもできる。
【0029】
図2は、本発明の他の実施形態に係る低温用バルブのリーク検査方法に使用する検査装置の概略構成図である。図2に示す検査装置1’は、図1に示す検査装置1において、濃度計42の代わりに温度計43を備えるものであり、その他の構成は図1に示す検査装置1と同様である。したがって、図2において図1と同様の構成部分には同一の符号を付して、繰り返しの説明を省略する。
【0030】
図2に示すように、温度計43は、二次側カバー治具30の内側の温度を測定可能に取り付けられており、低温用バルブ100の二次側の温度変化を検出する。ガス排出ライン37には、ヘリウムガスを貯留可能な可撓性の貯留袋44が、流量計41の下流側で分岐接続されており、開閉弁45,46の操作により、低温用バルブ100の二次側の連通先を、大気と貯留袋44との間で切り替え可能に構成されている。
【0031】
図2に示す検査装置1’を用いた低温用バルブのリーク検査方法は、開閉弁45を開き開閉弁46を閉じた状態で、開閉弁35,36を開いて低温用バルブ100の二次側および貯留袋44にヘリウムガスを供給した後、開閉弁35,45を閉じて開閉弁46を開くことにより、ヘリウムガス供給源34および貯留袋44からのヘリウムガスの供給を遮断した状態で、計測工程が行われる。計測工程は、低温用バルブ100の二次側にヘリウムガスを所定時間貯留している間の二次側の温度変化を温度計43により検出する温度検出工程を備えている。低温用バルブ100の二次側の貯留ガスは、時間の経過と共に温度が上昇すると、体積膨張によりガス排出ライン37に流出する。温度変化による貯留ガスの体積膨張は、低温用バルブ100の二次側において定圧変化が起こると仮定すると、ボイルシャルルの法則により温度上昇に比例するため、演算により求めることができる。したがって、演算工程は、ガス排出口37から実際に流出するガス量を、ガス排出ライン37に設けた流量計41の検出により取得し、このガス量に対して温度変化に伴う体積変化分を減算して補正することにより、低温用バルブ100の二次側にリークしてヘリウムガスに混合された低温流体のリーク量を演算することができる。
【0032】
上記の温度検出工程は、開閉弁36を閉じて行うことも可能であるが、開閉弁36を開いた後に低温用バルブ100の二次側からの排出流量が安定するまで長時間を要するおそれがあり、また、低温用バルブ100の二次側の温度上昇後に開閉弁36を開くと定圧変化にならないおそれがあることから、開閉弁36は常時開いておくことが好ましい。低温用バルブ100の二次側が温度低下により負圧になる場合には、開閉弁46を閉じて開閉弁45を開くことで貯留袋44からヘリウムガスを供給できるため、低温用バルブ100の二次側に空気が吸い込まれるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 検査装置
10 チャンバ
20 一次側カバー治具
30 二次側カバー治具
31 ガス供給口
32 ガス排出口
35,36 開閉弁
40 加熱器
41 流量計
42 濃度計
43 温度計
100 低温用バルブ
図1
図2