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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175847
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】水田作業車
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20241212BHJP
   B60B 15/00 20060101ALI20241212BHJP
   B60B 15/02 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A01C11/02 333C
B60B15/00 M
B60B15/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093894
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 亘樹
(72)【発明者】
【氏名】尼崎 喬士
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田尾 哲也
(72)【発明者】
【氏名】天野 遼介
【テーマコード(参考)】
2B063
【Fターム(参考)】
2B063AA03
2B063AA04
2B063AB01
2B063BA01
2B063BA02
2B063BA04
2B063BA15
2B063BA30
2B063BB31
(57)【要約】
【課題】車体左右方向の傾斜姿勢に対しても十分な安全対策を講じた水田作業車を提供する。
【解決手段】水田作業車は、走行車体と、走行車体に設けられ、円環状の本体部と本体部の外周領域に設けられたラグ4とを有する車輪と、本体部の外周領域に配置された横転阻止体5を備え、横転阻止体5には、ラグ4の接地点を回転軸とする走行車体の左右方向の傾斜運動時に、傾斜運動の所定傾斜角において接地する阻止部が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体と、
前記走行車体に設けられ、円環状の本体部と前記本体部の外周領域に設けられたラグとを有する車輪と、
前記本体部の前記外周領域に配置された横転阻止体を備え、
前記横転阻止体には、前記ラグの接地点を回転軸とする前記走行車体の左右方向の傾斜運動時に、前記傾斜運動の所定傾斜角において接地する阻止部が形成されている水田作業車。
【請求項2】
前記阻止部は、平面状に形成される請求項1に記載の水田作業車。
【請求項3】
前記横転阻止体は、前記ラグと一体的に成形される請求項1に記載の水田作業車。
【請求項4】
前記横転阻止体は、前記ラグとは別の成形体であり、前記ラグの側面に固定される請求項1に記載の水田作業車。
【請求項5】
前記横転阻止体は前記車輪に前記車輪の左右方向で連結される連結部材によって着脱可能に固定される請求項1に記載の水田作業車。
【請求項6】
前記横転阻止体は、前記横転阻止体は、前記ラグとは別の成形体であり、前記ラグを固定しているリムまたは前記ラグと前記リムの両方に固定される請求項1に記載の水田作業車。
【請求項7】
前記車輪が前記走行車体に取り付けられた状態で、前記本体部の外側を向く側面に、前記横転阻止体が設けられている請求項1に記載の水田作業車。
【請求項8】
前記横転阻止体は、前記本体部とは別体の補助輪体部に設けられている請求項1に記載の水田作業車。
【請求項9】
前記横転阻止体の前記阻止部は、異なる前記所定傾斜角で接地する第1阻止部と第2阻止部とを有し、前記第2阻止部の接地傾斜角は前記第1阻止部の接地傾斜角より大きい請求項1から8のいずれか一項に記載の水田作業車。
【請求項10】
前記第2阻止部の接地面積は前記第1阻止部の接地面積より大きく形成されている請求項9に記載の水田作業車。
【請求項11】
前記横転阻止体の前記阻止部は、前記所定傾斜角を超える姿勢において、地面に突き刺さる突入先端を有する請求項1に記載の水田作業車。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型や歩行型の田植機、直播機、薬剤散布機などの、車輪を備えた水田作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の水田作業車の車輪は、車軸に連結されるハブと、スポークによりハブに連結される円環状の環状リムと、環状リムの左右両側に突出するラグとから構成されている(例えば、特許文献1参照)。このように構成された車輪は、エンジンから変速装置を介して伝達された駆動力により回転駆動される(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-098851号公報
【特許文献2】特開2018-117538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水田作業車は、納屋などから圃場へトラックによって搬送されることもあり、その積み降ろしにおいて、車体前後方向の傾斜姿勢となる。また、水田作業車は、傾斜面を有する畦によって区画された圃場内を作業走行するので、圃場への進入や圃場からの退出時には、水田作業車は車体前後方向や車体左右方向の傾斜姿勢となる。さらに、圃場作業において、圃場内に石や木材などの異物が存在した場合にも、異物に乗り上げた水田作業車は左右方向の傾斜姿勢となる。車体前後方向の傾斜姿勢は、積み降ろし時や坂道走行において確実に生じるので、車体前後方向の傾斜姿勢に対する安全対策は以前から講じられている。しかしながら、車体左右方向の傾斜姿勢に対する安全対策は不十分であった。
【0005】
上記実情に鑑み、本発明の目的は、車体左右方向の傾斜姿勢に対しても十分な安全対策を講じた水田作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による水田作業車は、走行車体と、前記走行車体に設けられ、円環状の本体部と前記本体部の外周領域に設けられたラグとを有する車輪と、前記本体部の前記外周領域に配置された横転阻止体を備え、前記横転阻止体には、前記ラグの接地点を回転軸とする前記走行車体の左右方向の傾斜運動時に、前記傾斜運動の所定傾斜角において接地する阻止部が形成されている。
【0007】
この構成によれば、水田作業車の走行車体が左右方向に傾斜した際、その傾斜角が所定傾斜角に達すると、横転阻止体の阻止部が接地し、それ以上の傾斜に対する抵抗力(踏ん張り力)が生み出される。これにより、所定傾斜角を超える傾斜が抑制される。所定傾斜角を、水田作業車の横転予防のために規定されている基底角より小さく、好ましくは当該横転角の1/2程度に設定することで、水田作業車の横転に対する安全性が向上する。
【0008】
本発明では、横転阻止体による、傾斜に対する踏ん張り力をより効果的に得るために、前記阻止部は、平面状に形成されている。
【0009】
横転阻止体の車輪への取付は、車輪の構造、特にリムとラグの構造に応じて、適切な方法で行うことができる。第1の実施形態では、前記横転阻止体は、前記ラグと一体的に成形される。これにより、ラグをリムに取り付けることにより、横転阻止体もリムに取り付けられることになる。また、ラグと横転阻止体との位置合わせも、成形時に完了するので、横転阻止体の取付工程が簡単となる。
【0010】
第2の実施形態では、前記横転阻止体は、前記ラグとは別の成形体であり、前記ラグの側面によって固定される。例えば、前記横転阻止体は前記車輪に前記車輪の左右方向で連結される連結部材によって着脱可能に固定される。前記横転阻止体が前記ラグとは別の成形体で構成され、前記ラグの側面にボルトなどの連結部材によって固定されることで、着脱自在となる。より具体的な、第3の実施形態では、前記横転阻止体は、前記ラグとは別の成形体であり、前記ラグを固定しているリムまたは前記ラグと前記リムの両方に固定される。
【0011】
横転阻止体をラグと別体で成形する場合、横転阻止体の形状や阻止部の位置が、ラグとの一体成形の際の制限を回避することができ、大きな自由度で、横転阻止体の形状や阻止部の位置を決めることができる。ラグとは別の成形体である横転阻止体、つまりラグとは別体で成形された横転阻止体をラグと連結する場合、横転阻止体とラグとの距離が近いので、連結手段としてボルトやネジなどの簡単な連結具の使用が容易である。別体で成形された横転阻止体をリムと連結する場合、一般的にリムの剛性はラグより高いので、横転阻止体はより安定的に車輪に組み付けられる。
【0012】
横転阻止体の車輪への取付に関する第4の実施形態では、前記横転阻止体は、前記本体部とは別体の補助輪体部に設けられている。具体例としては、横転阻止体は、車輪のハブに専用スポークを介して連結されている専用リムに固定される。この形態では、横転阻止体は、いわゆる補助輪として構成されているので、横転阻止体の設計自由度が高いだけでなく、その着脱が容易であるので、必要に応じて選択的に使用することが可能となる。
【0013】
走行車体の左右方向の傾斜は、一方の車輪の接地部を回転軸(傾斜軸)として生じるので、横転阻止体は、当該回転軸となる車輪のラグの外側に配置されるだけでよい。このことから、本発明の好適な実施形態では、前記車輪が前記走行車体に取り付けられた状態で、前記本体部の外側を向く側面に、前記横転阻止体が設けられている。もちろん、車輪の回転バランス等を考慮して、車輪のラグの両側に横転阻止体が設けられてもよい。
【0014】
本発明の実施形態の1つでは、前記横転阻止体の前記阻止部は、異なる前記所定傾斜角で接地する第1阻止部と第2阻止部とを有し、前記第2阻止部の接地傾斜角は前記第1阻止部の接地傾斜角より大きく設定されている。この構成では、横転阻止体は、第1阻止部と第2阻止部とを用いて、段階的に走行車体の左右方向の傾斜運動に制限を与えることができる。第1阻止部が予備的な車体傾斜の制限手段とすれば、第2阻止部は最後の車体傾斜の制限手段として機能させることができる。例えば、第1阻止部が接地している状態では、車体走行は可能とし、第2阻止部が接地している状態では、車体走行が困難となるようにしてもよい。もちろん、第3、第4・・の阻止部が設けられてもよい。
【0015】
第2阻止部が第1阻止部に比べてより大きな傾斜制限手段として機能させるために、前記第2阻止部の接地面積は前記第1阻止部の接地面積より大きく形成されていることが好適である。
【0016】
本発明のさらに別な実施形態の1つでは、前記横転阻止体の前記阻止部は、前記所定傾斜角を超える姿勢において、地面に突き刺さる突入先端を有する。この構成では、阻止部が走行車体が所定傾斜角を超えて傾斜した場合、阻止部の突入先端が地面に突き刺さることで、横転阻止体による車体横転制止力が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】乗用型田植機の全体側面図である。
図2】後輪の側面図である。
図3】後車軸ケース及び後輪支持ケース、後輪の縦断正面図である。
図4】左右傾斜時のラグと横転阻止体の姿勢を示す模式図である。
図5】横転阻止体の取付構成の第1形態を示す模式図である。
図6】横転阻止体の取付構成の第2形態を示す模式図である。
図7】横転阻止体の取付構成の第3形態を示す模式図である。
図8】横転阻止体の取付構成の第4形態を示す模式図である。
図9】横転阻止体の別実施形態を示す模式図である。
【0018】
なお、本明細書では、特に断りがない限り、「前」は機体前後方向(走行方向)に関して前方を意味し、「後」は機体前後方向(走行方向)に関して後方を意味する。また、左右方向または横方向は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)を意味する。「上」または「下」は、機体の鉛直方向(垂直方向)での位置関係であり、地上高さにおける関係を示す。
【0019】
図1に、水田作業車の一例である乗用型田植機が示されている。図1に示すように、左右一対の前輪1と左右一対の後輪2とからなる車輪により対地支持された走行車体10の後部に、上下揺動自在なリンク機構11が備えられて、リンク機構11の後部に苗作業装置の一例である苗植付装置12が支持されている。リンク機構11は油圧シリンダによって昇降し、これにより、苗植付装置12も昇降する。
【0020】
図1に示すように、苗植付装置12は、植付アーム、フロート、苗のせ台などを備えている。作業走行において、苗のせ台が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、植付アームによって苗のせ台の下部から苗が取り出され、田面に植え付けられる。
【0021】
図1図2とに示すように、走行車体10の後部に後輪支持ケース13が縦軸芯周りに操向自在に支持されている。図2に示すように、後輪支持ケース13の内部に伝動軸15及び車軸16が支持されている。車軸16の外端部にフランジ部16aが備えられており、車軸16のフランジ部16aに、後輪2(車輪の1つ)が連結されて支持されている。
【0022】
駆動源の一例としてのエンジン(図示せず)の動力が、静油圧式無段変速装置(図示せず)、ギヤ変速装置(図示せず)、プロペラシャフト(図示せず)等を介して、伝動軸15、伝動軸15のベベルギヤ15a及び車軸16のベベルギヤ16bを介して、車軸16に伝達されて、後輪2が回転駆動される(図2参照)。なお、駆動源としては、エンジン(内燃機関)以外に、電動モータ、電動モータとエンジンとを組み合わせたハイブリッドエンジンなどが用いられる。
【0023】
図2図3とに示すように、後輪2は、円環状の本体部20と、接地部として機能するラグ4と、横転阻止体5とを備えている。本体部20は、円環状のリム21と、リム21によって形成される円環の中心領域に位置するハブ22と、リム21とハブ22とに亘って設けられた複数(本実施形態では4本)のスポーク23とからなる。
【0024】
図3に示すように、リム21は、例えば、中空のパイプ部材を円環状に曲げ加工することにより構成されている。この実施形態では、ハブ22は、板状部材を絞り加工(プレス加工)することにより製作され、スポーク23は、中空のパイプ部材により製作されている。
【0025】
スポーク23の先端部(後輪2の径方向における外側の端部)が、リム21の内周部分に取付けられている。スポーク23とリム21とは、例えば、溶接により連結されている。スポーク23の他端部(後輪2の径方向における内側の端部)が、ハブ22に取付けられている。
【0026】
ハブ22の中央領域に円環状のフランジ部22aが形成され、当該フランジ部22aに複数(この実施形態では3つ)の孔部が形成されている。フランジ部22aが、車軸16のフランジ部16aに複数本のボルトにより連結されている。これにより、後輪2が車軸16に取付けられている。ハブ22の内側面(凹面)は機体内側を向いている。
【0027】
ラグ4は、本体部20の外周部に装着されている。図4から図8で示すように、ラグ4は、スポーク23の先端部に装着される装着部41と、リム21を外囲する外囲部42とを有する。ラグ4は、硬質のゴムで成形されている。しかしながら、ラグ4の材質や製造方法は、成形及び硬質ゴムに限定されず、金属を材料として機械加工等で製作されてもよい。
【0028】
さらに、本体部20の外周領域には、横転阻止体5が配置されている。図4で拡大表示されているように、横転阻止体5には、ラグ4の接地点を回転軸とする田植機(走行車体10)の左右方向の傾斜運動時に、傾斜運動(図4で記号RMと矢印で示されている)の所定傾斜角:θにおいて接地する阻止部51が形成されている。横転阻止体5の形態の一例は、一面が斜面となっている略直方体である。この平面状の斜面が阻止部51としての機能を有し、走行車体10の所定傾斜角:θの傾斜において、地面(圃場面100)と接触し(接地)、それ以上の傾斜に対する抵抗力(踏ん張り力)を作り出している。所定傾斜角:θは、水田作業車の横転を予防するために規則で規定されている規定角より小さくすることはもちろんであるが、安全性を考慮して、規定角の1/4から3/4程度に設定される。
【0029】
横転阻止体5は、以下に示すように、種々の形態で車輪に取り付けることができる。
第1形態では、図5で示すように、横転阻止体5は、横転阻止体5はラグ4と一体成形され、その際、横転阻止体5はラグ4の円周部の一方の側面から阻止部51が下方を向いて車軸方向に突出している。横転阻止体5は所定ピッチで形成されてもよいし、連続的に形成された円環状であってもよい。
【0030】
第2形態では、図6で示すように、横転阻止体5は、ラグ4の円周部の一方の側面に、連結具6を用いて固定されている。連結具6は、例えば、ラグ4を横方向に貫通する連結ボルト61とスペーサ62とナット63によって構成される。スペーサ62は、ラグ4と横転阻止体5との間隔を調整する機能(踏ん張り力を調整する機能)を有する。横転阻止体5はラグ4とは別の成形体、つまりラグ4とは別体であるので、その材料は、金属であってもよいし、ラグ4と同じであってもよい。横転阻止体5は、複数の小片で製作され、所定ピッチで配置されてもよいし、円環として製作されてもよい。
【0031】
第3形態では、図7で示すように、横転阻止体5は、スポーク23の外端領域に、連結部材としての連結具6とブラケット65とによって、固定されている。連結具6によってスポーク23に固定されているブラケット65には外周溝66が形成され、この外周溝66に横転阻止体5の上部が挿入される。この実施形態でも、横転阻止体5は、所定ピッチで配置される小片であってもよいし、円環として配置されてもよい。ブラケット65も同様に、所定ピッチで配置されてもよいし、円環として配置されてもよい。図7では、ブラケット65とスポーク23との間にラグ4が介在しているが、ブラケット65はスポーク23に直接固定させてもよい。その場合、ブラケット65は溶接によりスポーク23に固定することができる。また、連結具6をボルトなどによって構成することで、横転阻止体5は、車輪に対して着脱可能となり、必要に応じて、横転阻止体5の利用が選択できる。
【0032】
第4形態では、図8で示すように、横転阻止体5は、車輪の本体部20とは別体の補助輪体部7に設けられている。補助輪体部7は、補助ハブ71と補助スポーク72と補助リム73とから構成され、横転阻止体5は、補助リム73に固定されている。補助ハブ71は、車軸16のフランジ部16aに、ハブ22とともに、ボルト連結可能である。つまり、この実施形態では、横転阻止体5を含む補助輪体部7は、正規の車輪の補助輪として構成されている。
【0033】
第5形態では、その図示は省略されているが、横転阻止体5の阻止部51が、それぞれ異なる車体左右傾斜角で接地する第1阻止部と第2阻止部とを有する。第2阻止部の接地傾斜角は第1阻止部の接地傾斜角より大きく設定されている。もちろん、阻止部51は、第1阻止部と第2阻止部との2つだけでなく、3つ以上有していてもよい。このような構成では、横転阻止体は、第1阻止部と第2阻止部とを用いて、段階的に走行車体10の左右方向の傾斜運動に制限を与えることができる。第1阻止部が最小に機能する車体傾斜の制限手段とすれば、第2阻止部は最後に機能する車体傾斜の制限手段とすることができる。したがって、最後の車体傾斜の制限手段としての第2阻止部は、第1阻止部の接地面積より大きく形成され、第1阻止部に比べてより大きな踏ん張り力を生み出すように形成されている。
【0034】
図9には、横転阻止体5の上述した形態とは異なる別形態が示されている。この形態においても、横転阻止体5は、車輪の外周領域に配置されているが、横転阻止体5の阻止部51は、地面との接地面で踏ん張り力を得ている第1形態~第5形態とは異なり、突入先端52を地面に突き刺す(突き立てる)ことによって踏ん張り力を得ている。図9から明らかなように、この別形態では、横転阻止体5の阻止部51は、所定傾斜角:θを超える傾斜姿勢において、地面に突き刺さる突入先端52を有している。横転阻止体5全体としての形状及び車輪または走行車体10に対する固定方法は、上述した第1形態~第5形態で説明したものが適用可能である。さらに、この別形態での横転阻止体5の構造として、棒状体とこれを支持する支持体からなる構造体であってもよい。突入先端52は、車輪外周に沿って、所定間隔で配置されてもよいし、連続的に配置されてもよい。
【0035】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、本発明の水田作業車の車輪として、乗用型田植機の後輪2が取り挙げられていたが、同様の構造は、前輪1に対して適用してされてもよい。また、水田作業車は乗用型田植機に限定されず、歩行型の田植機や、播種装置を備えた直播機、あるいは薬剤散布機等であってもよい。
【0036】
(2)上述した実施形態では、横転阻止体5は、一面が斜面となっている略直方体であったが、その全体形状は限定されない。さらに、阻止部51も、平面以外の面であってもよく、例えば、複数の突起が形成された突起面でもよい。阻止部51は、ラグ4の接地点を回転軸とする水田作業車の左右方向の傾斜運動時に、当該傾斜運動の所定傾斜角において接地する機能を備えることができる限り、阻止部51の形状は限定されない。例えは、横転阻止体5は、横転阻止体5の下部が横転阻止体5の上部より、車輪の左右方向の幅が狭い、くさび状に形成されてもよい。特に、横転阻止体5の下部が、所定傾斜角を超える姿勢において横転阻止体5の下部が地面に突き刺さるようなくさび形状が好ましい。これにより、走行車体10が所定傾斜角を超えて傾斜した場合、横転阻止体5の先端(下端)が地面に突き刺さることで、横転阻止体5の車体横転制止力が向上する。
【0037】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、水田作業車の車輪に適用される。
【符号の説明】
【0039】
1 :前輪
2 :後輪
3 :本体部
4 :ラグ
5 :横転阻止体
6 :連結具(連結部材)
7 :補助輪体部
10 :走行車体
11 :リンク機構
12 :苗植付装置
13 :後輪支持ケース
15 :伝動軸
15a :ベベルギヤ
16 :車軸
16a :フランジ部
16b :ベベルギヤ
21 :リム
22 :ハブ
22a :フランジ部
23 :スポーク
51 :阻止部
52 :突入先端
61 :連結ボルト(連結部材)
62 :スペーサ
63 :ナット
65 :ブラケット(連結部材)
66 :外周溝
71 :補助ハブ
72 :補助スポーク
73 :補助リム
100 :圃場面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9