(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175859
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16H 1/28 20060101AFI20241212BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20241212BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20241212BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20241212BHJP
F16D 125/40 20120101ALN20241212BHJP
F16D 125/50 20120101ALN20241212BHJP
【FI】
F16H1/28
B60T13/74 G
F16D65/18
F16D121:24
F16D125:40
F16D125:50
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093909
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中岡 賢一
(72)【発明者】
【氏名】岩脇 健
(72)【発明者】
【氏名】平岡 大治
【テーマコード(参考)】
3D048
3J027
3J058
【Fターム(参考)】
3D048BB53
3D048HH18
3D048HH58
3D048NN08
3D048PP02
3D048QQ07
3D048QQ12
3J027FA50
3J027FB01
3J027GB03
3J027GC13
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE01
3J027GE05
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA62
3J058AA73
3J058AA78
3J058AA87
3J058BA64
3J058CC15
3J058CC63
3J058CC64
3J058DD05
3J058FA06
(57)【要約】
【課題】組立の容易化を図った電動アクチュエータを提供する。
【解決手段】電動アクチュエータは、出力軸を有するモータと、出力軸から出力された回転動力を変速する遊星歯車機構と、遊星歯車機構により変速された回転動力が伝達されるボールねじ機構と、少なくとも遊星歯車機構を収容するハウジングとを有し、遊星歯車機構は、出力軸に連結されるサンギヤと、ハウジングに取り付けられ、サンギヤの径方向外側に同心状に配置されるリングギヤと、サンギヤ及びリングギヤの径方向の間に配置され、サンギヤ及びリングギヤに噛み合う複数の遊星ギヤと、各遊星ギヤに軸方向の一端側が連結される複数の支持軸と、複数の支持軸の軸方向の他端側が連結されるキャリアと、リングギヤと一体に形成されてハウジングに取り付けられた外輪を含み、キャリアを回転自在に支持する転がり軸受と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸を有するモータと、前記出力軸から出力された回転動力を変速する遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構により変速された回転動力が伝達されるボールねじ機構と、少なくとも前記遊星歯車機構を収容するハウジングとを有し、
前記遊星歯車機構は、
前記出力軸に連結されるサンギヤと、
前記ハウジングに取り付けられ、前記サンギヤの径方向外側に同心状に配置されるリングギヤと、
前記サンギヤ及び前記リングギヤの径方向の間に配置され、前記サンギヤ及び前記リングギヤに噛み合う複数の遊星ギヤと、
前記各遊星ギヤに軸方向の一端側が連結される複数の支持軸と、
複数の前記支持軸の軸方向の他端側が連結されるキャリアと、
前記リングギヤと一体に形成されて前記ハウジングに取り付けられる外輪を含み、前記キャリアを回転自在に支持する転がり軸受と、を備える、電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記ハウジングに連結されるフランジが、前記リングギヤ及び前記外輪と一体に形成されている、請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記転がり軸受が、外周面に軌道が形成されかつ前記キャリアと一体に形成された内輪と、前記軌道を転動する転動体とを有し、
前記ボールねじ機構は、前記キャリアと一体に形成されたねじ軸を備え、
前記支持軸が、前記キャリアにすきま嵌めで回転自在に連結されている、請求項1又は2に記載の電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ディスクブレーキ装置のブレーキキャリパに用いられる電動アクチュエータが開示されている。この電動アクチュエータは、モータと、モータの回転動力を減速する遊星歯車機構と、減速された回転動力により作動するボールねじ機構とを有する。遊星歯車機構は、モータによって回転駆動されるサンギヤと、サンギヤと同心状に配置され電動アクチュエータのハウジングに固定されるリングギヤと、サンギヤ及びリングギヤに噛みあう複数の遊星ギヤと、各遊星ギヤが回転自在に取り付けられる複数の支持軸と、複数の支持軸が固定される内輪を含みハウジングに取り付けられる転がり軸受とを含む。ボールねじ機構は、転がり軸受の内輪に固定されるねじ軸と、複数のボールを介してねじ軸に螺合され、ねじ軸の回転により軸方向に移動するナットとを備えている。ブレーキキャリパは、ナットに連動して移動するピストンによってブレーキパッドをブレーキディスクに圧接し、制動動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の電動アクチュエータにおいては、ハウジングに支持されるリングギヤと転がり軸受の外輪との同心度が悪化すると、ギヤの噛み合い部分で異音が発生したり動力伝達効率が低下したりする可能性があるため、高精度な組立が要求される。
本発明は、以上のような実情に鑑み、組立の容易化を図った電動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電動アクチュエータは、出力軸を有するモータと、前記出力軸から出力された回転動力を変速する遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構により変速された回転動力が伝達されるボールねじ機構と、少なくとも前記遊星歯車機構を収容するハウジングとを有し、
前記遊星歯車機構は、
前記出力軸に連結されるサンギヤと、
前記ハウジングに取り付けられ、前記サンギヤの径方向外側に同心状に配置されるリングギヤと、
前記サンギヤ及び前記リングギヤの径方向の間に配置され、前記サンギヤ及び前記リングギヤに噛み合う複数の遊星ギヤと、
前記各遊星ギヤに軸方向の一端側が連結される複数の支持軸と、
複数の前記支持軸の軸方向の他端側が連結されるキャリアと、
前記リングギヤと一体に形成されて前記ハウジングに取り付けられる外輪を含み、前記キャリアを回転自在に支持する転がり軸受と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電動アクチュエータの組立の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電動アクチュエータの断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る電動アクチュエータの断面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る電動アクチュエータの断面図である。
【
図5】遊星ギヤの周辺を拡大して示す断面図である。
【
図6A】変形例に係る遊星ギヤの周辺を拡大して示す断面図である。
【
図6B】変形例に係る遊星ギヤの周辺を拡大して示す断面図である。
【
図6C】変形例に係る遊星ギヤの周辺を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
(1) 実施形態に係る電動アクチュエータは、出力軸を有するモータと、前記出力軸から出力された回転動力を変速する遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構により変速された回転動力が伝達されるボールねじ機構と、少なくとも前記遊星歯車機構を収容するハウジングとを有し、
前記遊星歯車機構は、
前記出力軸に連結されるサンギヤと、
前記ハウジングに取り付けられ、前記サンギヤの径方向外側に同心状に配置されるリングギヤと、
前記サンギヤ及び前記リングギヤの径方向の間に配置され、前記サンギヤ及び前記リングギヤに噛み合う複数の遊星ギヤと、
前記各遊星ギヤに軸方向の一端側が連結される複数の支持軸と、
複数の前記支持軸の軸方向の他端側が連結されるキャリアと、
前記リングギヤと一体に形成されて前記ハウジングに取り付けられる外輪を含み、前記キャリアを回転自在に支持する転がり軸受と、を備える。
【0009】
上記構成によれば、遊星歯車機構のリングギヤと転がり軸受の外輪とが一体に形成されているので、リングギヤと外輪との同心度が部品の製造段階で確保され、電動アクチュエータの組立を容易に行うことができる。
【0010】
(2) 上記(1)の電動アクチュエータにおいて、前記ハウジングに連結されるフランジが、前記リングギヤ及び前記外輪と一体に形成されている。
このような構成によって、ハウジングに対する遊星歯車機構の取付を容易に行うことができ、電動アクチュエータの組立を一層容易に行うことができる。
【0011】
(3) 上記(1)又は(2)の電動アクチュエータにおいて、前記転がり軸受が、外周面に軌道が形成されかつ前記キャリアと一体に形成された内輪と、前記軌道を転動する転動体とを有し、
前記ボールねじ機構は、前記キャリアと一体に形成されたねじ軸を備え、
前記支持軸が、前記キャリアにすきま嵌めで回転自在に連結されている。
【0012】
この構成によれば、遊星歯車機構の内輪と、キャリアと、ボールねじ機構のねじ軸とが一体に形成されているので、当該内輪、キャリア、及びねじ軸の同心度が部品の製造段階で確保され、電動アクチュエータの組立をより容易に行うことができる。内輪とキャリアとねじ軸とが一体に形成されているので、これらを別体で備える場合に比べて径方向の寸法を小さくすることができ、電動アクチュエータを径方向に小型化することができる。内輪、キャリア、及びねじ軸の径方向の寸法が小さくなると、自ずと内輪の軌道と支持軸との径方向の距離が小さくなる。仮に、支持軸がキャリアに圧入固定されていたとすると、支持軸の圧入で内輪の軌道が変形しやすくなり、内輪の回転精度が悪化する可能性があるが、実施形態では、支持軸がキャリアにすきま嵌めで回転自在に連結されるので、軌道の変形が抑制され、回転精度を確保することができる。また、外輪とリングギヤとが一体に形成され、両者の同心度が確保されるので、その分、支持軸と内輪との嵌め合い精度を緩和することができ、製造を容易化することができる。
【0013】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態の詳細を説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電動アクチュエータの断面図である。
電動アクチュエータ10は、モータ11の回転動力をピストン37の直線運動に変換して出力する装置である。本実施形態の電動アクチュエータ10は、車両のディスクブレーキ装置において、ブレーキパッドをブレーキディスクに圧接させるブレーキキャリパの駆動装置として用いられる。
【0014】
電動アクチュエータ10は、モータ11と、遊星歯車機構12と、ボールねじ機構13と、ハウジング14とを有している。
モータ11は、ロータ及びステータを内蔵した本体部11bと、本体部11bから突出し、回転動力を出力する出力軸11aとを有する。
図1において、出力軸11aの軸心が符号Cで示されている。モータ11には、公知の電動モータが採用される。モータ11は、ハウジング14に固定されている。ハウジング14は、筒形状の外周壁14aと、外周壁14aの軸方向の両端部を閉じる一対の側壁14b、14cとを有する。本実施形態では、モータ11の本体部11bが一方の側壁14bに固定されている。
【0015】
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図1及び
図2に示すように、遊星歯車機構12は、サンギヤ21と、リングギヤ22と、複数の遊星ギヤ23と、複数の支持軸24と、キャリア35と、転がり軸受25と、を含む。
サンギヤ21は、モータ11の出力軸11aと同心状に配置され、出力軸11aに一体回転可能に連結されている。サンギヤ21の外周面には多数の歯21aが形成されている。
【0016】
リングギヤ22は、円環状に形成されている。リングギヤ22は、内歯車であり、内周面に多数の歯22aが形成されている。リングギヤ22は、外周面がハウジング14の外周壁14aの内側に固定されている。リングギヤ22は、サンギヤ21と同心状に配置されている。
【0017】
複数の遊星ギヤ23は、サンギヤ21とリングギヤ22との径方向の間に配置されている。本実施形態の遊星歯車機構12は、3つの遊星ギヤ23を備えている。各遊星ギヤ23は、外周面に多数の歯23aが形成されている。各遊星ギヤ23は、サンギヤ21とリングギヤ22とに噛み合っている。遊星ギヤ23の個数は限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0018】
支持軸24は、円柱状に形成されている。支持軸24の軸方向の一端側(
図1における右側)は、遊星ギヤ23に相対回転自在に連結されている。支持軸24の軸方向の他端側(
図1における左側)は、キャリア35に固定されている。
【0019】
キャリア35は、円板状に形成されている。キャリア35は、サンギヤ21及びリングギヤ22と同心状に配置されている。キャリア35は、転がり軸受25を介してハウジング14に回転自在に支持されている。キャリア35は、サンギヤ21の回転に伴って複数の遊星ギヤ23が軸心C回りに公転することで軸心C回りに回転する。
【0020】
転がり軸受25は、外輪26と、内輪28と、複数の転動体27とを含む。本実施形態の転がり軸受25は、深溝玉軸受である。転がり軸受25は、遊星歯車機構12のサンギヤ21、リングギヤ22、及びキャリア35と同心状に配置されている。転がり軸受25は、円筒ころ軸受等の他の形式の転がり軸受であってもよい。
【0021】
外輪26は円環状に形成されている。外輪26の内周面には軌道26aが形成されている。外輪26の外周面は、ハウジング14の外周壁14aの内側に固定されている。外輪26とリングギヤ22とは軸方向に並べて配置され、外周壁14aの内周面に形成された周溝14a3に嵌合されている。本実施形態の外輪26とリングギヤ22とは一体に形成されている。すなわち、本実施形態の遊星歯車機構12は、リングギヤ22として機能する部分と、転がり軸受25の外輪26として機能する部分とを有する環状部材30を備えている。環状部材30は、ボルト等の締結具16によってハウジング14に固定されている。
【0022】
なお、本実施形態のハウジング14は、一方の側壁14bと外周壁14aの軸方向の一部14a1とを含む第1部材14Aと、他方の側壁14cと外周壁14aの軸方向の他の一部14a2とを含む第2部材14Bとを備え、第1部材14Aと第2部材14Bとをボルト等の締結具17で連結することによって構成されている。第1部材14Aと第2部材14Bとは、周溝14a3の軸方向の途中において分割されている。したがって、第1部材14Aと第2部材14Bとが連結されていない状態で周溝14a3を開放可能である。ハウジング14の具体的な構造は特に限定されるものではなく、適宜設計変更することができる。
【0023】
本実施形態の内輪28は、円環状に形成されている。内輪28の外周面には軌道28aが形成されている。内輪28は、外輪26の径方向内側に配置されている。内輪28は、外輪26と同心状に配置されている。内輪28の内周面は、キャリア35の外周面に固定されている。
【0024】
複数の転動体27は、外輪26と内輪28との径方向の間に配置されている。本実施形態の転動体27は、玉である。転動体27は外輪26の軌道26a及び内輪28の軌道28aを転動する。なお、図示はしていないが、転がり軸受25は、複数の転動体27の周方向の間隔を保持する保持器を備えている。
【0025】
ボールねじ機構13は、ねじ軸32と、ナット33と、複数のボール34とを備えている。
ねじ軸32は、円柱形状に形成されている。ねじ軸32は、遊星歯車機構12のキャリア35と同心状に配置されている。ねじ軸32は、キャリア35に固定されている。
【0026】
ナット33は、円筒形状に形成されている。ナット33は、ねじ軸32の径方向外側に配置されている。ナット33は、ねじ軸32と同心状に配置されている。ナット33の内周面には内周軌道面33aが形成されている。内周軌道面33aは、外周軌道面32aの径方向外側に対向して配置されている。
【0027】
複数のボール34は、外周軌道面32aと内周軌道面33aとの間に配置され、外周軌道面32a上及び内周軌道面33a上を転動する。ねじ軸32とナット33とは、複数のボール34を介して螺合している。したがって、ナット33は、ねじ軸32の回転に伴って軸方向に移動する。ナット33には、ピストン(押圧部材)37が固定されている。このピストン37は、ナット33とともに軸方向に移動し、図示しないブレーキパッドをブレーキディスクに圧接させる。ピストン37は、ハウジング14の側壁14cに形成された開口14c1に挿入されている。ピストン37の外周面と開口14c1の内周面との間はシール18で密封されている。
【0028】
上記実施形態の電動アクチュエータ10は、モータ11から出力された回転動力が遊星歯車機構12で減速されてボールねじ機構13に伝達され、ピストン37を軸方向に往復移動させる。本実施形態の遊星歯車機構12におけるリングギヤ22と転がり軸受25の外輪26とは一体に形成されている。そのため、リングギヤ22と外輪26との同心度を製造段階で確保することができる。したがって、電動アクチュエータ10を組み立てる際の組立精度を緩和することができ、組立作業を容易に行うことができる。
【0029】
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2の実施形態に係る電動アクチュエータの断面図である。
本実施形態の電動アクチュエータ10は、遊星歯車機構12のリングギヤ22に径方向外方へ突出するフランジ22bが一体に形成されている。その他の構成は第1実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0030】
フランジ22bは、リングギヤ22及び外輪26をハウジング14に固定するために用いられる。本実施形態のハウジング14は、一方の側壁14bにより構成された第1部材14Aと、外周壁14aと他方の側壁14cとにより構成された第2部材14Bとを有している。フランジ22bは、第1部材14Aと第2部材14Bとに挟まれた状態で、ボルト等の締結具19で第1、第2部材14A,14Bに固定されている。
【0031】
本実施形態では、リングギヤ22にフランジ22bが一体に形成されているので、ハウジング14に対する遊星歯車機構12の取付を容易に行うことができ、電動アクチュエータ10の組立を一層容易に行うことができる。
【0032】
<第3実施形態>
図4は、本発明の第3の実施形態に係る電動アクチュエータの断面図である。
図5は、遊星ギヤの周辺を拡大して示す断面図である。
本実施形態の電動アクチュエータ10は、転がり軸受25の内輪28と、キャリア35と、ねじ軸32とが一体に形成されている。すなわち、本実施形態の遊星歯車機構12は、内輪28として機能する部分と、キャリア35として機能する部分と、ねじ軸32として機能する部分とを有する回転部材31を備えている。
【0033】
また、本実施形態では、支持軸24が、遊星ギヤ23に一体回転可能に固定されている。支持軸24は、キャリア35に対して相対回転自在に連結されている。
図5に示すように、キャリア35の軸方向一端面には、軸方向に延びる支持穴36が形成されている。支持軸24は、支持穴36に嵌合されている。支持穴36の内径は、支持軸24の外径よりもわずかに大きい。したがって、支持軸24は、支持穴36にすきま嵌めで嵌合される。そのため、支持軸24は、キャリア35に回転自在に連結される。支持軸24と支持穴36との間に生じる隙間にはグリース等の潤滑剤40が充填されている。この潤滑剤40により支持軸24の円滑な回転が可能になるとともに、支持軸24及びキャリア35の摩耗が抑制される。
【0034】
支持軸24の軸方向の一端面24aと遊星ギヤ23の軸方向の一端面23bとは、ハウジング14の一方の側壁14bに当接可能である。支持軸24は、支持穴36にすきま嵌めで嵌合され、軸方向に移動しうるが、支持軸24の一端面24a及び遊星ギヤ23の一端面23bが側壁14cに当接することで、支持軸24の軸方向の移動が制限され、支持穴36からの支持軸24の離脱が防止される。
【0035】
本実施形態の電動アクチュエータ10は、転がり軸受25における内輪28と、キャリア35と、ボールねじ機構13におけるねじ軸32とが一体に形成されている。そのため、内輪28とキャリア35とねじ軸32とは、部品の製造段階で同心度が確保される。したがって、電動アクチュエータ10を組み立てる際に、内輪28とキャリア35とねじ軸32との軸心Cを一致させながらこれらを連結・固定する必要がなくなり、電動アクチュエータ10の組立に要求される精度が緩和され、組立作業を容易に行うことができる。
【0036】
本実施形態の電動アクチュエータ10は、内輪28とキャリア35とねじ軸32とが一体に形成されているので、当該内輪28とキャリア35とねじ軸32とを別体で備える場合に比べて径方向の寸法を小さくすることができる。そのため、電動アクチュエータ10を径方向に小型化することが可能となる。一方、内輪28、キャリア35、及びねじ軸32の径方向の寸法が小さくなると、内輪28の軌道28aと支持軸24との径方向の距離が小さくなる。この場合に、支持軸24がキャリア35に圧入固定されていたとすると、支持軸24の圧入によって内輪28の軌道28aが変形しやすくなり、内輪28の回転精度が悪化する可能性がある。本実施形態では、支持軸24がキャリア35にすきま嵌めで回転自在に連結されている。そのため、軌道28aの変形が抑制され、内輪28の回転精度を確保することができる。
【0037】
本実施形態では、外輪26とリングギヤ22とが一体に形成され、これらの同心度が確保されるので、その分、遊星歯車機構12の支持軸24とキャリア35との嵌め合いの精度を緩和することができ、これらの製造を容易にすることができる。
【0038】
第3実施形態におけるその他の構成は第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0039】
<変形例>
図6A~
図6Cは、変形例に係る遊星ギヤの周辺を拡大して示す断面図である。
図6Aに示す変形例では、支持穴36に挿入された支持軸24の外周面に溝24bが形成されている。溝24bは、支持軸24の周方向に延び、支持軸24の外周面全周に形成されている。
【0040】
図6Bに示す変形例では、支持穴36に挿入された支持軸24の外周面に複数の凹部24cが形成されている。凹部24cは、支持軸24の周方向及び軸方向に分散してランダムに形成されている。
【0041】
上記の
図6A及び
図6Bに示される変形例では、支持軸24の外周面と支持穴36の内周面との隙間に充填された潤滑剤40を溝24b又は凹部24cで保持することができる。そのため、キャリア35に対する支持軸24の摩擦抵抗を長期にわたって低減することができる。
【0042】
図6Cに示される変形例では、支持穴36に挿入された支持軸24の外周面に低摩擦被膜24dが設けられている。このような低摩擦被膜24dを設けることによって、キャリア35に対する支持軸24の摩擦抵抗を低減することができる。低摩擦被膜としては、高い潤滑性や耐摩耗性を発揮できるDLC(ダイアモンドライクカーボン)等の公知の構成を採用することができる。低摩擦被膜の施工方法としては、CVD,PVD等の蒸着、スパッタリング、メッキ、溶射等の公知の方法を採用することができる。
【0043】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
例えば、
図6A~
図6Cに示す変形例において、支持軸24に形成された溝24b、凹部24c、及び低摩擦被膜24dは、キャリア35の支持穴36の内周面に設けられていてもよい。溝24bは、周方向に限らず軸方向に延びていてもよい。
【0044】
図5に示す実施形態において、ハウジング14の側壁14bには、支持軸24及び遊星ギヤ23のうち一方の一端面24a、23bが当接していてもよい。支持軸24及び遊星ギヤ23の少なくとも一方の一端面24a、23bは、ハウジング14の側壁14bではなく、モータ11の本体部11bに当接していてもよい。
【0045】
ハウジング14は、少なくとも遊星歯車機構12を収容していればよい。ハウジング14は、モータ11やボールねじ機構13の全体を収容していてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 :電動アクチュエータ
11 :モータ
12 :遊星歯車機構
13 :ボールねじ機構
14 :ハウジング
21 :サンギヤ
22 :リングギヤ
22b :フランジ
23 :遊星ギヤ
24 :支持軸
25 :転がり軸受
26 :外輪
27 :転動体
28 :内輪
28a :軌道
32 :ねじ軸
34 :ボール
35 :キャリア