(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017586
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】運搬治具
(51)【国際特許分類】
B65D 19/32 20060101AFI20240201BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B65D19/32 Z
E04G21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120320
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安保 篤康
【テーマコード(参考)】
2E174
3E063
【Fターム(参考)】
2E174CA24
2E174CA35
3E063AA03
3E063BA05
3E063CA04
3E063CA06
3E063CA13
3E063CA24
3E063EE01
(57)【要約】
【課題】建設現場の資機材を仮置きする仮置き場所や荷降ろし場所で、りん木の配置、回収、再配置などの煩雑な作業を不要とする。
【解決手段】本治具Aは、挟持部材1と連結部材2からなり、挟持部材1が各りん木Sに固定され、連結部材2により各りん木S間が連結されて、各りん木S間に装着され、フォーク付きの荷役運搬装置Fによる資機材の運搬作業で、資機材を各りん木Sとともに揚重し、資機材とともに各りん木Sを運搬するようにした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場で建設工事に用いる資機材が仮置き場所に一対のりん木を介して仮置きされ、当該資機材をフォーク付きの荷役運搬装置で揚重し運搬する資機材の運搬作業で、一対のりん木に使用する運搬治具であって、
前記各りん木の幅方向両側から加圧挟持する一対の挟持部材と、
前記各挟持部材間に架け渡し固定される連結部材と、
を備え、
前記挟持部材が前記各りん木に固定され、前記連結部材により前記各りん木間が連結されて、前記各りん木間に装着され、
前記資機材の運搬作業で、資機材を前記各りん木とともに揚重し、資機材とともに前記各りん木を運搬する、
ことを特徴とする運搬治具。
【請求項2】
一対の挟持部材は合成樹脂材により形成される請求項1に記載の運搬治具。
【請求項3】
一対の挟持部材はそれぞれ、断面コ字形又は断面U字形に形成されて、一対の挟持部と前記各挟持部を連結する連結部とからなる請求項1に記載の運搬治具。
【請求項4】
一対の挟持部材の各挟持部の内面は、前記各挟持部間に挟持したりん木を保持可能に、摩擦係数の大きな素材又は摩擦力の大きな断面形状からなる摩擦係合面をなす請求項3に記載の運搬治具。
【請求項5】
連結部材は合成樹脂材により形成される請求項1に記載の運搬治具。
【請求項6】
連結部材は、2部材からなり、一方の部材に対して他方の部材が伸縮可能にかつ任意の伸縮状態で固定可能に構成されて、前記連結部材の長さを調節する長さ調節機能を有する請求項1に記載の運搬治具。
【請求項7】
一方の部材又は他方の部材又は両方の部材間に連結部材の長さを表示する目盛りを併せて備える請求項6に記載の運搬治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬治具に関し、特に、建設現場で建設工事に用いる資機材を仮置き場所に一対のりん木を介して仮置きし、資機材をフォーク付きの荷役運搬装置で揚重し運搬する資機材の運搬作業に使用する運搬治具に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場では、石膏ボード、ALCパネルその他の板状の資機材が仮置き場所の床や地面などに積み重ねて仮置きされ、これがフォークリフトやハンドパレットなどのフォーク付きの荷役運搬装置を使用して、仮置き場所から荷降ろし場所へ運搬される。また、建設現場の状況や工事の工程に応じて、資機材の仮置き場所を変更することがあり、この場合も、資機材は荷役運搬装置により、同様に、変更先の仮置き場所へ運搬される。
【0003】
仮置き場所に仮置きされた資機材をフォーク付きの荷役運搬装置で揚重し、運搬するには、仮置き場所の床や地面と資機材との間にフォークを差し込む隙間が必要で、通常、仮置き場所の床や地面には一対のりん木が敷かれて、資機材はこれらりん木の上に載せられる。この場合、一対のりん木は、資機材の長さに合わせて、資機材の両端付近を支持可能に、両りん木間に適宜の間隔を介して並列に配置される。またこの場合、資機材の長さによって、つまり、資機材の長さが比較的長い場合には、資機材の中央が撓まないように、りん木がさらに一つ資機材の中央に配置されることがある。かくして資機材は仮置き場所に一対のりん木を介して積み重ねて仮置きされ、このりん木によって、仮置き場所の床や地面と資機材との間に隙間が確保される。そして、資機材を運搬する際は、荷役運搬装置のフォークを資機材の下部にりん木によってできた隙間に差し込んで資機材を揚重し、荷役運搬装置を荷降ろし場所まで走行して、荷降ろし場所で同様に配置された一対のりん木の上に資機材を荷降ろしする。
【0004】
この種のりん木として、従来、木製の柱状のもの(端太角や枕木)が用いられていたが、近時は、軽量で扱いやすく、耐久性に優れた合成樹脂製のものを使用することが多い。この種のりん木が特許文献1や特許文献2により提案されている。
【0005】
このりん木は商品名「エースマンボ」(登録商標)と称せられるもので、プラスチック成形品で、帯状部材を波状に形成されている。
なお、このりん木の寸法は、幅100-150mm、長さ490-590mm、高さ100mm、重量430-550gである。
このような波形のプラスチック成型品にすることで、従来の木製の柱状のものに比して全体の重量を軽減し、しかも作業者が把握し易く、従来に比して作業性と共に安全性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2577643号公報
【特許文献2】特許第3826233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、りん木に既述のプラスチック成形品の波形のものを用いる場合、その軽量で取り扱いのしやすさから、仮置き場所から資機材を運搬する際に、仮置き場所で荷役運搬装置のフォークで資機材を上昇させた後、床や地面に敷くりん木を荷役運搬装置の運転手が回収し、資機材の上面に載せて、荷役運搬装置を走行し、荷降ろし場所であらためてりん木を床や地面に同様に配置して、荷降ろししている。つまり、運転手は資機材を移動させる都度、荷役運搬装置の乗降とりん木の回収、配置を繰り返しており、作業が煩雑になっている。
この場合、資機材を荷役運搬装置で荷降ろし場所近傍まで運搬し、荷降ろし先に待機する作業員に資機材を受け渡し、その作業員がハンドパレットで位置を修正することがあるが、この場合も、その都度、りん木を配置し直すため、作業が煩雑である。
また、このりん木の配置、回収、そして再配置の作業が、複数段に積み重ねられた資機材をフォークで上昇させている間に、最下部の資機材の下方(床や地面と最下部の資機材との間)に手を入れて行われるため、資機材が荷崩れした場合に、作業員が資機材の下敷きになるおそれがあり、好ましくない。
【0008】
本発明は、このような従来の問題を解決するもので、建設現場で工事に用いる資機材をフォーク付きの荷役運搬装置で運搬する際に、資機材を仮置き場所や荷降ろし場所に仮置きするのに一般に使用するりん木を配置、回収、再配置する煩雑な各作業を不要として、資機材の運搬作業の効率を向上させるとともに、運搬作業の安全を確保することのできる運搬治具を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、
建設現場で建設工事に用いる資機材が仮置き場所に一対のりん木を介して仮置きされ、当該資機材をフォーク付きの荷役運搬装置で揚重し運搬する資機材の運搬作業で、一対のりん木に使用する運搬治具であって、
前記各りん木の幅方向両側から加圧挟持する一対の挟持部材と、
前記各挟持部材間に架け渡し固定される連結部材と、
を備え、
前記挟持部材が前記各りん木に固定され、前記連結部材により前記各りん木間が連結されて、前記各りん木間に装着され、
前記資機材の運搬作業で、資機材を前記各りん木とともに揚重し、資機材とともに前記各りん木を運搬する、
ことを要旨とする。
【0010】
この場合、一対の挟持部材は次のように具体化される。
(1)一対の挟持部材は合成樹脂材により形成される。
(2)一対の挟持部材はそれぞれ、断面コ字形又は断面U字形に形成されて、一対の挟持部と前記各挟持部を連結する連結部とからなる。
(3)一対の挟持部材の各挟持部の内面は、前記各挟持部間に挟持したりん木を保持可能に、摩擦係数の大きな素材又は摩擦力の大きな断面形状からなる摩擦係合面をなす。
【0011】
この場合、連結部材は次のように具体化される。
(1)連結部材は合成樹脂材により形成される。
(2)連結部材は、2部材からなり、一方の部材に対して他方の部材が伸縮可能にかつ任意の伸縮状態で固定可能に構成されて、前記連結部材の長さを調節する長さ調節機能を有する。
(3)一方の部材又は他方の部材又は両方の部材間に連結部材の長さを表示する目盛りを併せて備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の運搬治具によれば、上記の構成により、一対の挟持部材を一対のりん木に固定し、連結部材により各りん木間を連結して、各りん木間に装着し、資機材の運搬作業で、資機材を各りん木とともに揚重し、資機材とともに各りん木を運搬するようにしたので、建設現場で工事に用いる資機材をフォーク付きの荷役運搬装置で運搬する際に、資機材を仮置き場所や荷降ろし場所に仮置きするのに一般に使用するりん木を配置、回収、再配置する煩雑な各作業を不要として、資機材の運搬作業の効率を向上させるとともに、運搬作業の安全を確保することができる、という本発明独自の各別な作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る運搬治具の構成を示す図
【
図2】同運搬治具の長さ調節機能の構成を示す図((a)は平面図(b)は底面図)
【
図4】同運搬治具の基本的な使用例を示すもので、特に、仮置き場所で荷役運搬装置により、資機材をりん木とともに揚重搬送する状態を示す図
【
図5】同運搬治具の基本的な使用例を示すもので、特に、荷降ろし場所で荷役運搬装置により、資機材をりん木とともに荷降ろしする状態を示す図
【
図6】同運搬治具の長さ調整機能を用いた使用例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1にこの発明の一実施の形態に係る運搬治具を示している。
【0015】
図1に示すように、この運搬治具A(以下、本治具Aという。)は、建設現場で建設工事に用いる資機材が仮置き場所に一対のりん木を介して仮置きされ、当該資機材をフォーク付きの荷役運搬装置で揚重し運搬する資機材の運搬作業で、一対のりん木Sに使用するもので、一対の挟持部材1と、連結部材2とを備えて構成される。なお、この実施の形態では、本治具Aは、本明細書の背景技術の欄で例示した波形のりん木に適用され、以降の説明で、一対のりん木Sはこの波形のりん木をいうものである。
【0016】
本治具Aの一対の挟持部材1は、各りん木Sの幅方向両側から加圧挟持するもので、各挟持部材1は合成樹脂材により、下向きの断面コ字形又は断面U字形に形成されて、一対の挟持部11と各挟持部11を連結する連結部12とからなる。
【0017】
この場合、一対の挟持部材1はそれぞれ、本治具A全体として持ち運び、取り扱いに負担にならないように軽量で、圧縮耐力に優れたポリプロピレンなどのプラスチック系により成形される。各挟持部材1は、後述する連結部材2に一体に形成されてもよく、連結部材2とは別体に形成されてもよい。各挟持部材1が連結部材2と一体に形成される場合は、各挟持部材1は連結部材2の両端にそれぞれ、一対の挟持部11のみがりん木Sを加圧挟持可能な間隔で一体成形されて、連結部材2の一部(両端部)とともに断面コ字形又は断面U字形に形成される。各挟持部材1が連結部材2と別体に形成される場合は、各挟持部材11は単体として、断面コ字形又は断面U字形に形成される。
【0018】
また、この場合、各挟持部材1の各挟持部11は、りん木Sの両側、つまり、りん木Sの波形の片側一方に突出される凸状部s1の一つとこの凸状部s1に連続して片側他方に突出される凸状部s2の一つとに跨って各凸状部s1、s2を両側から挟持可能な四角形の平板状のプレートで、かつ各凸状部s1、s2を両側から加圧可能に各挟持部11間(内寸)が各凸状部s1、s2間の寸法と略同じか又は少し小さい間隔に形成される。各挟持部11間の連結部12は、各挟持部材1が連結部材2と一体に形成される場合は、連結部材2の一部として形成され、各挟持部材1が連結部材2と別体に形成される場合は、各挟持部11の上端部間に四角形の平板状のプレートにして形成される。なお、ここで各挟持部11は四角形の平板状のプレートとして形成されるものとしたが、りん木Sの各凸状部s1、s2を両側から挟持できれば、その形状は任意である。
【0019】
また、この一対の挟持部材1は、各挟持部11の内面が、各挟持部11間に挟持したりん木Sを保持可能に、摩擦係数の大きな素材又は摩擦力の大きな断面形状からなる摩擦係合面11fになっている。前者の場合、各挟持部11の内面に、摩擦係数の大きいゴムなどからなるプレート又はシートが貼り付けられる。後者の場合、各挟持部11の内面が摩擦力が大きい凹凸形状又はくさび形の凸形状又はこれらの組み合わせにより形成される。これにより、各挟持部11間に保持されるりん木Sの脱落が防止される。
【0020】
本治具Aの連結部材2は、各挟持部材1間に架け渡し固定されて各挟持部材1を連結するもので、合成樹脂材により、(連結部材2の両端で)各挟持部材1を支持可能な限り、任意の形状に形成される。
【0021】
この場合、連結部材2は、本治具A全体として持ち運び、取り扱いに負担にならないように軽量で、圧縮耐力に優れたポリプロピレンなどのプラスチック系により成形される。この連結部材2は横に細長い長方形の平板状のプレートに形成される。既述のとおり、連結部材2が各挟持部材1と一体に形成される場合は、連結部材2は細長い長方形のプレートに形成されて、その下面の両端にそれぞれ一対の挟持部11がりん木Sを加圧挟持可能な間隔で一体成形される。各挟持部材1が連結部材2と別体に形成される場合は、連結部材2は単体として、細長い長方形の平板状のプレートに形成され、その下面両端に、断面コ字形又は断面U字形に形成された挟持部材1が、ボルト止め、又は接着剤、又は熱圧着若しくは熱溶着などの固着手段により、結合される。
【0022】
また、本治具Aの連結部材2は、基本的に、一定の長さの一連一体のプレートとして形成されればよいが、一対のりん木Sの上に積載する資機材の長さによって一対のりん木Sの配置間隔が変わるので、これに合わせて、連結部材2の長さを変える必要がある。この場合、本治具Aに連結部材2の長さの異なる複数種類のものが用意されて対応することもできるが、本治具Aの連結部材2に長さを調節可能に長さ調節機能を持たせることで対応することもできる。
図2に連結部材2の長さ調節機能を示している。
【0023】
図2に示すように、本治具Aの連結部材2の長さ調節機能は、この連結部材2が2部材21、22からなり、一方の部材21に対して他方の部材22が伸縮可能にかつ任意の伸縮状態に固定可能に構成される。併せて、一方の部材21又は他方の部材22又は両方の部材21、22間に連結部材2の長さを表示する目盛り23を備える。
【0024】
この場合、一方の部材21は所定の長さを有する細長い長方形の平板状のプレートからなる。なお、この一方の部材21の下面の一端に一方の挟持部材1が設けられる。この下面の一端中央にガイドピン211が突設され、このガイドピン211にストッパー212が設けられる。他方の部材22は一方の部材21と略同じ長さの細長い長方形の平板状のプレートからなる。なお、この他方の部材22の下面の他端(一方の部材21の一端とは反対側の端部)に他方の挟持部材1が設けられる。この他方の部材22には一端と他端の挟持部材1との間で幅方向中央に一方の部材21のガイドピン211が挿通可能に細長い孔が貫通して形成され、スライドピン211のスライドガイド220が設けられる。このようにして一方の部材21に他方の部材22が、ガイドピン211とスライドガイド220との係合により、スライド可能に重ねられて、一対のりん木S間の長さに合わせて連結部材2の長さを調整可能に組み立てられる。なお、この場合、一方の部材21の下面にさらに長辺両縁部に沿ってガイド部が凸状に設けられ、他方の部材22がこの一方の部材21のガイド部間に嵌合配置されるようにしてもよい。また、この他方の部材22の上面には、一方の部材21の他端から他方の部材22が伸長又は収縮されたときの一方の部材21の他端と他方の部材22の他端との間の長さ又は連結部材2全体の長さを表示する目盛り23が併せて設けられる。この目盛り23で本治具Aの長さが確認できる。但し、連結部材2の最大長さは、後述するように、荷役運搬装置で資機材とともに本治具Aをリフトアップした際に、本治具Aの端部の撓みで、資機材、各りん木Sの運搬に支障のない長さとする。
【0025】
また、本治具Aを連結部材2の最大長さ以上の資機材に使用する場合、つまり、資機材が大きく、資機材の下部の両端及び中央にそれぞれりん木を敷くような場合は、本治具Aを2つ用い、一方を一端のりん木と中央のりん木との間に取り付け、他方を他端のりん木と中央のりん木との間に取り付けるなど、複数の本治具Aを組み合わせて長さを延長することで、全体の長さを調整することができる。
【0026】
このように本治具Aは、一対の挟持部材1、連結部材2が一体に形成されて、又は各別に形成されて既述の固着手段により結合されてなる。そして各挟持部材1が各りん木Sに被せ固定され、連結部材2により各りん木S間が連結されて、各りん木S間に装着され、資機材の運搬作業で、資機材を各りん木Sとともに揚重し、資機材とともに各りん木Sを運搬するようになっている。すなわち、本治具Aにより、荷役運搬装置のフォークを資機材下部の本治具A(連結部材2)の下方からリフトアップすることにより、フォークの上面を各りん木Sを接続する連結部材2の外面に接しせしめ、資機材とともに本治具A及び各りん木Sを同時に持ち上げ、荷役運搬装置を走行させて、そのまま移動できるようにしている。
【0027】
図3乃至
図7に建設現場での資機材の仮置き場所に配置した一対のりん木に用いる本治具Aの使用例を示している。
【0028】
図3、
図4及び
図5は本治具Aの基本的な使用例を示している。
図3に示すように、建設現場の資機材の仮置き場(の床や地面)に、一対のりん木Sが資機材の長さに合わせて所定の間隔を介して設置され、これらのりん木Sに本治具Aを装着する。この場合、本治具Aの各挟持部材1を各りん木Sの上から各りん木Sに被せ付ける。これにより、各りん木Sの両側に、この場合、波形の両側に突出される各凸状部s1、s2が各挟持部材1の下向きに略コ字形又は略U字形の各挟持部11で加圧挟持され、さらに各凸状部s1、s2に各挟持部11内面の摩擦係合面11fが摩擦係合されて、各挟持部材1が固定される。また、各挟持部材1間の連結部材2により各りん木S間が連結され、各りん木Sが一体化される。
【0029】
このようにして各りん木Sの上に資機材が積み重ねられる。そして、資機材を運搬する際に、
図4に示すように、荷役運搬装置FのフォークF11を資機材の下部に各りん木Sによってできた隙間に差し込んで資機材を本治具A(連結部材2)とともに揚重し、荷役運搬装置Fで資機材とともに本治具Aを荷降ろし場所へ運搬する。この運搬中、各挟持部材1により挟持された各りん木Sは、各挟持部材1の各挟持部11間の内寸が各りん木Sの幅と同じか又は少し小さい各挟持部11により加圧挟持され、さらに各挟持部11内面の摩擦係合面11fにより摩擦係合されるので、各りん木Sは各挟持部材1から脱落することがない。そして、
図5に示すように、荷降ろし場所で、資機材を本治具Aとともに荷降ろしする。このとき、資機材は本治具Aにより資機材の下部に保持された一対のりん木Sを介して荷降ろし場所に荷降ろしされる。この場合、荷降ろし場所に一対のりん木Sを置く必要がなく、資機材をそのまま指定の位置に降ろすことができる。したがって、荷役運搬装置Fの運転手は荷役運搬装置Fから降りて荷降ろし場所にりん木Sを配置する作業を行う必要がない。しかも、資機材は荷降ろし場所の指定の位置に確実に降ろされる。また、荷降ろし場所に作業員が待機する場合でも、同様に、りん木Sを配置する作業を行う必要がない。
【0030】
このように、本治具Aによると、資機材を現場に搬入したときに、本治具Aをりん木Sに取り付け、このりん木Sに資機材を載せてしまえば、その後、資機材を移動する都度、運頓手や作業員がりん木Sを回収したり配置し直したりする必要がない。
【0031】
図6は本治具Aに連結部材2の長さ調整機能を有する場合の使用例を示している。
図6に示すように、資機材の長さに応じて一対のりん木Sの間隔が変わるため、この場合、一対のりん木Sの間隔に合わせて、本治具Aの連結部材2の長さを調整する。この場合、連結部材2の一方の部材21から他方の部材22を、一方の部材21のガイドピン211と他方の部材22のスライドガイド220との係合案内により、引き出し、一方の部材21のストッパー212により適宜の位置で固定する。また、この場合、他方の部材22の上面に一方の部材21からの伸縮長さ又は連結部材2の全長の長さを表示する目盛り23があるので、これを目安に、連結部材2の全長を調整することができる。このようにすることで、資機材の長さが異なり、一対のりん木Sの間隔が変わっても、これに合わせて本治具Aの長さを調整することができ、上記基本的な使用例と同様に使用できる。
【0032】
図7は本治具Aの基本的な使用の応用例を示している。
図7に示すように、この場合、資機材の長さが比較的長く、資機材の中央が撓まないように、資機材の中央にりん木Sがさらに一つ置かれる。このような場合、両端の一方のりん木Sと中央のりん木Sを一方の一対のりん木Sとし、両端の他方のりん木Sと中央のりん木Sを他方の一対のりん木Sとして、一方の一対のりん木S間、他方の一対のりん木S間にそれぞれ、2つの本治具Aを装着する。このようにすることで、資機材の長い長さに対応でき、上記基本的な使用例と同様に使用できる。また、この場合、2つの本治具Aの両方又は一方に長さ調整機能を有することで、各りん木S間の間隔に合わせて、本治具Aの長さを調整することができ、上記の各使用例と同様に使用できる。
【0033】
以上説明したように、本治具Aによれば、一対の挟持部材1を一対のりん木Sに固定し、連結部材2により各りん木S間を連結して、各りん木S間に装着し、資機材の運搬作業で、資機材を各りん木Sとともに揚重し、資機材とともに各りん木Sを運搬するようにしたので、建設現場で工事に用いる資機材をフォーク付きの荷役運搬装置で運搬する際に、資機材を仮置き場所や荷降ろし場所に仮置きするのに一般に使用するりん木を配置、回収、再配置する煩雑な各作業を不要として、作業員の負担を減らし、資機材の運搬作業の効率を向上させることができる。さらに、作業員が資機材の下に手を入れるといった作業が大幅に減り、資機材に手を挟んだり資機材の荷崩れによりその下敷きになったりするような事故をなくす又は大幅に減少させることができ、運搬作業の安全性の向上を図ることができる。
【0034】
また、本治具Aでは、さらに次のような利点を有する。
(1)一対の挟持部材1、連結部材2が共に合成樹脂材により形成されるので、本治具A全体が軽量で、運搬や取り扱いを容易にすることができる。
(2)一対の挟持部材1はそれぞれ、断面コ字形又は断面U字形に形成されて、一対の挟持部11と各挟持部11を連結する連結部12とからなるので、各挟持部材1を各りん木Sに上から被せて嵌め込むだけでよく、本治具Aを各りん木Sに簡単に装着することができる。
(3)一対の挟持部材1の各挟持部11の内面は、各挟持部11間に挟持したりん木Sを保持可能に、摩擦係数の大きな素材又は摩擦力の大きな断面形状からなる摩擦係合面11fをなすので、各挟持部材1から各りん木Sが脱落することがなく、資機材とともに各りん木Sを確実に運搬することができる。
(4)連結部材2は、2部材21、22からなり、一方の部材21に対して他方の部材22が伸縮可能にかつ任意の伸縮状態で固定可能に構成されて、連結部材2の長さを調節する長さ調節機能を有するので、本治具A(連結部材2)の長さを、資機材の長さに合わせて配置する一対のりん木Sの間隔に調節して、本治具Aをりん木Sに容易かつ確実に取り付けることができる。また、この場合、一方の部材21又は他方の部材22又は両方の部材21、22間に連結部材2の長さを表示する目盛り23を併せて備えるので、本治具Aの長さを簡単に調節することができる。
【0035】
なお、この実施の形態では、本治具Aを、合成樹脂製の波形のりん木に適用するものとして例示したが、従来の木製の柱状の端太角や枕木をりん木として同様に適用することができ、木製の柱状のものに適用しても、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0036】
A 運搬治具
1 挟持部材
11 挟持部
11f 摩擦係合面
12 連結部
2連結部材
21 一方の部材
211 ガイドピン
212 ストッパー
22 他方の部材
220 スライドガイド
23 目盛り
S りん木(波形のりん木)
s1、s2 凸状部
F 荷役運搬装置
F11 フォーク