(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175866
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体装置の製造方法、および車両
(51)【国際特許分類】
H01L 23/28 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H01L23/28 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093927
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】福井 啓之
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA04
4M109CA21
4M109DA07
4M109DB16
4M109EA02
(57)【要約】
【課題】 封止樹脂から露出する金属層の周縁において形成される樹脂バリの発生を抑制することが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】 半導体装置A10は、絶縁層11、導電層12、第1金属層13、半導体素子および封止樹脂50を備える。第1金属層13は、封止樹脂50の第1面521から露出する第1裏面131を有する。封止樹脂50には、凸部55が設けられている。凸部55の第2面522は、第1方向zにおいて第1裏面131よりも第1面521から遠くに位置する。さらに封止樹脂50には、第1方向zにおいて第1面521が向く側とは反対側に凹む溝部56が設けられている。溝部56は、第1方向zに視て第1裏面131と凸部55との間に位置する。第1方向zにおける溝部56の寸法dは、第1方向zおよび溝部56が延びる方向の各々に対して直交する方向における溝部56の寸法wよりも大きい。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
前記絶縁層の第1方向の一方側に接合された導電層と、
前記絶縁層を基準として前記導電層とは反対側に位置するとともに、前記絶縁層に接合された第1金属層と、
前記導電層に接合された半導体素子と、
前記導電層および前記半導体素子を覆う封止樹脂と、を備え、
前記封止樹脂は、前記第1方向において前記絶縁層を基準として前記第1金属層が位置する側を向く第1面を有し、
前記第1金属層は、前記第1面から露出する第1裏面を有し、
前記封止樹脂には、前記第1面から突出する凸部が設けられており、
前記凸部は、前記第1方向において前記第1面と同じ側を向くとともに、前記第1方向において前記第1裏面よりも前記第1面から遠くに位置する第2面を有し、
前記封止樹脂には、前記第1方向に視て前記第1裏面と前記凸部との間に位置するとともに、前記第1方向において前記第1面が向く側とは反対側に凹む溝部が設けられており、
前記第1方向における前記溝部の寸法は、前記第1方向および前記溝部が延びる方向の各々に対して直交する方向における前記溝部の寸法よりも大きい、半導体装置。
【請求項2】
前記溝部は、前記第1裏面を囲んでいる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1金属層は、前記第1方向に対して直交する方向を向く端面を有し、
前記溝部から前記端面が露出している、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記封止樹脂は、前記第1方向において前記第1面と同じ側を向くとともに、前記溝部の一部を規定する第3面を有し、
前記第3面は、前記第1方向において前記第1面と前記第1裏面との間に位置する、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第3面の表面粗さは、前記第1面の表面粗さよりも大きい、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記溝部は、前記第1裏面を基準として互いに反対側に位置する第1溝および第2溝を含み、
前記第2溝の前記第1方向の寸法は、前記第1溝の前記第1方向の寸法と異なる、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項7】
絶縁層と、
前記絶縁層の第1方向の一方側に接合された導電層と、
前記絶縁層を基準として前記導電層とは反対側に位置するとともに、前記絶縁層に接合された第1金属層と、
前記導電層に接合された半導体素子と、
前記導電層および前記半導体素子を覆う封止樹脂と、を備え、
前記封止樹脂は、前記第1方向において前記絶縁層を基準として前記第1金属層が位置する側を向く第1面を有し、
前記第1金属層は、前記第1面から露出する第1裏面を有し、
前記封止樹脂には、前記第1面から突出する凸部が設けられており、
前記凸部は、前記第1方向において前記第1面と同じ側を向くとともに、前記第1方向において前記第1裏面よりも前記第1面から遠くに位置する第2面を有し、
前記凸部は、前記第1裏面に接している、半導体装置。
【請求項8】
前記凸部は、前記第1面から突出する基部と、前記基部から前記第1方向に対して直交する方向に延びる張出部と、を有し、
前記張出部は、前記第1裏面に接している、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記張出部の前記第1方向の寸法は、前記基部の前記第1方向の寸法よりも小さい、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記凸部は、前記第1裏面を囲んでいる、請求項1ないし9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記絶縁層は、前記封止樹脂に覆われており、
前記第1方向に視て、前記第1裏面は、前記絶縁層の周縁よりも内方に位置する、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1裏面に積層されるとともに、前記第1金属層とは異なる金属元素を含む第2金属層をさらに備え、
前記第2金属層は、前記第1方向において前記第1裏面と同じ側を向く第2裏面を有し、
前記第2裏面は、前記封止樹脂から露出している、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第2金属層の前記第1方向の寸法は、前記第1金属層の前記第1方向の寸法よりも小さい、請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第1方向に視て、前記第2裏面は、前記第1裏面の周縁よりも内方に位置しており、
前記第2裏面は、前記第1方向において前記第1裏面と前記第2面との間に位置する、請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記半導体素子に導通する端子をさらに備え、
前記半導体素子および前記端子の各々は、前記導電層に導電接合されている、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項16】
絶縁層の第1方向の両側に個別に接合された導電層および第1金属層の各々を形成する工程と、
前記導電層に半導体素子を接合する工程と、
前記第1方向において前記絶縁層を基準として前記第1金属層が位置する側を向く第1面を有するとともに、前記導電層および前記半導体素子を覆う封止樹脂を形成する工程と、
前記第1方向において前記第1面が向く側とは反対側に凹む溝部を前記封止樹脂に形成する工程と、を備え、
前記封止樹脂を形成する工程では、前記第1方向において前記第1面と同じ側を向く前記第1金属層の第1裏面を前記第1面から露出させる工程と、前記第1面から突出する凸部を前記封止樹脂に形成する工程と、を含み、
前記凸部は、前記第1方向において前記第1面と同じ側を向くとともに、前記第1方向において前記第1裏面よりも前記第1面から遠くに位置する第2面を有し、
前記溝部を形成する工程では、前記第1方向に視て前記第1裏面と前記凸部との間に位置するように前記溝部が形成され、
前記第1方向における前記溝部の寸法は、前記第1方向および前記溝部が延びる方向の各々に対して直交する方向における前記溝部の寸法よりも大きい、半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記溝部は、レーザ照射により前記封止樹脂の一部を除去することによって形成される、請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記溝部を形成する工程では、前記第1方向に対して直交する方向を向く前記第1金属層の端面を前記溝部から露出させる、請求項17に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
駆動源と、
請求項15に記載の半導体装置と、を備え、
前記半導体装置は、前記駆動源に導通している、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置およびその製造方法と、当該半導体装置が搭載された車両とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、MOSFETが搭載された半導体装置の一例が開示されている。当該半導体装置は、電源電圧が印加されるドレイン端子と、MOSFETに電気信号を入力するためのゲート端子と、当該電源電圧に対応した電力が当該電気信号に基づき変換された後、変換された電力が出力されるソース端子とを備える。MOSFETは、ドレイン端子に導通するドレイン電極と、ソース端子に導通するソース電極と、ゲート端子に導通するゲート電極とを有する。ドレイン電極は、ダイパッド(タブ)に導電接合されている。ドレイン端子は、ダイパッドと一体となっている。ソース電極は、金属クリップに導電接合されている。さらに金属クリップは、ソース端子にも導電接合されている。これにより、当該半導体装置に、より大きな電流を流すことが可能となっている。
【0003】
特許文献1に開示されている半導体装置は、ダイパッド一部を覆う封止樹脂をさらに備える。当該半導体装置においては、ダイパッドの裏面が封止樹脂から露出している。この場合において、当該半導体装置が具備する封止樹脂を形成する工程では、ダイパッドの裏面の周縁において樹脂バリが形成されることがある。樹脂バリの範囲や大きさが過多になると、当該半導体装置をヒートシンクに取り付ける際の支障となる。このため、樹脂バリの発生を抑制するための方策が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は上記事情に鑑み、封止樹脂から露出する金属層の周縁において形成される樹脂バリの発生を抑制することが可能な半導体装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の側面によって提供される半導体装置は、絶縁層と、前記絶縁層の第1方向の一方側に接合された導電層と、前記絶縁層を基準として前記導電層とは反対側に位置するとともに、前記絶縁層に接合された第1金属層と、前記導電層に接合された半導体素子と、前記導電層および前記半導体素子を覆う封止樹脂とを備える。前記封止樹脂は、前記第1方向において前記絶縁層を基準として前記第1金属層が位置する側を向く第1面を有する。前記第1金属層は、前記第1面から露出する第1裏面を有する。前記封止樹脂には、前記第1面から突出する凸部が設けられている。前記凸部は、前記第1方向において前記第1面と同じ側を向くとともに、前記第1方向において前記第1裏面よりも前記第1面から遠くに位置する第2面を有する。前記封止樹脂には、前記第1方向に視て前記第1裏面と前記凸部との間に位置するとともに、前記第1方向において前記第1面が向く側とは反対側に凹む溝部が設けられている。前記第1方向における前記溝部の寸法は、前記第1方向および前記溝部が延びる方向の各々に対して直交する方向における前記溝部の寸法よりも大きい。
【0007】
本開示の第2の側面によって提供される半導体装置は、絶縁層と、前記絶縁層の第1方向の一方側に接合された導電層と、前記絶縁層を基準として前記導電層とは反対側に位置するとともに、前記絶縁層に接合された第1金属層と、前記導電層に接合された半導体素子と、前記導電層および前記半導体素子を覆う封止樹脂とを備える。前記封止樹脂は、前記第1方向において前記絶縁層を基準として前記第1金属層が位置する側を向く第1面を有する。前記第1金属層は、前記第1面から露出する第1裏面を有する。前記封止樹脂には、前記第1面から突出する凸部が設けられている。前記凸部は、前記第1方向において前記第1面と同じ側を向くとともに、前記第1方向において前記第1裏面よりも前記第1面から遠くに位置する第2面を有する。前記凸部は、前記第1裏面に接している。
【0008】
本開示の第3の側面によって提供される半導体装置の製造方法は、絶縁層の第1方向の両側に個別に接合された導電層および第1金属層の各々を形成する工程と、前記導電層に半導体素子を接合する工程と、前記第1方向において前記絶縁層を基準として前記第1金属層が位置する側を向く第1面を有するとともに、前記導電層および前記半導体素子を覆う封止樹脂を形成する工程と、前記第1方向において前記第1面が向く側とは反対側に凹む溝部を前記封止樹脂に形成する工程とを備える。前記封止樹脂を形成する工程では、前記第1方向において前記第1面と同じ側を向く前記第1金属層の第1裏面を前記第1面から露出させる工程と、前記第1面から突出する凸部を前記封止樹脂に形成する工程とを含む。前記凸部は、前記第1方向において前記第1面と同じ側を向くとともに、前記第1方向において前記第1裏面よりも前記第1面から遠くに位置する第2面を有する。前記溝部を形成する工程では、前記第1方向に視て前記第1裏面と前記凸部との間に位置するように前記溝部が形成される。前記第1方向における前記溝部の寸法は、前記第1方向および前記溝部が延びる方向の各々に対して直交する方向における前記溝部の寸法よりも大きい。
【0009】
本開示の第4の側面によって提供される車両は、駆動源と、半導体装置とを備える。前記半導体装置は、前記駆動源に導通している。前記半導体装置は、本開示の第1の側面によって提供される半導体装置、および本開示の第2の側面によって提供される半導体装置に対して、これらの半導体装置が具備する半導体素子に導通する端子をさらに備える。前記半導体素子および前記端子の各々は、本開示の第1の側面によって提供される半導体装置、および本開示の第2の側面によって提供される半導体装置が具備する導電層に導電接合されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示にかかる半導体装置が具備する構成によれば、封止樹脂から露出する金属層の周縁において形成される樹脂バリの発生を抑制することが可能となる。
【0011】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態にかかる半導体装置の平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に対応する平面図であり、封止樹脂を透過している。
【
図7】
図7は、
図5の部分拡大図であり、第1半導体素子およびその近傍を示している。
【
図8】
図8は、
図5の部分拡大図であり、第2半導体素子およびその近傍を示している。
【
図17】
図17は、本開示の第2実施形態にかかる半導体装置の底面図である。
【
図20】
図20は、本開示の第3実施形態にかかる半導体装置の底面図である。
【
図23】
図23は、本開示の第3実施形態の変形例にかかる半導体装置の断面図である。
【
図25】
図25は、本開示の第4実施形態にかかる半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示を実施するための形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0014】
〔第1実施形態〕
図1~
図9に基づき、本開示の第1実施形態にかかる半導体装置A10について説明する。一般的に半導体装置A10は、インバータなどの電力変換回路に用いられる。半導体装置A10は、絶縁層11、導電層12、第1金属層13、ゲート配線層14、第1半導体素子21、第2半導体素子22、第1端子31、第2端子32、第1信号端子33、第2信号端子34および封止樹脂50を備える。さらに半導体装置A10は、第1導通部材41、第2導通部材42および第3導通部材43を備える。ここで、
図2は、理解の便宜上、封止樹脂50を透過している。
図2では、透過した封止樹脂50を想像線(二点鎖線)で示している。
【0015】
半導体装置A10の説明においては、便宜上、後述する導電層12の搭載面121の法線方向を「第1方向z」と呼ぶ。第1方向zに対して直交する方向を「第2方向x」と呼ぶ。第1方向zおよび第2方向xの各々に対して直交する方向を「第3方向y」と呼ぶ。第1方向zに視て、第2方向xは、半導体装置A10の長辺方向に相当する。第1方向zに視て、第3方向yは、半導体装置A10の短辺方向に相当する。
【0016】
封止樹脂50は、
図5に示すように、導電層12、第1半導体素子21および第2半導体素子22を覆っている。封止樹脂50は、絶縁体である。封止樹脂50は、たとえば黒色のエポキシ樹脂を含む材料からなる。
【0017】
図4に示すように、封止樹脂50は、頂面51、第1面521、第1側面53および第2側面54を有する。
図5および
図6に示すように、頂面51は、第1方向zにおいて後述する導電層12の搭載面121と同じ側を向く。第1面521は、第1方向zにおいて頂面51とは反対側を向く。換言すると、第1面521は、第1方向zにおいて絶縁層11を基準として第1金属層13が位置する側を向く。
【0018】
図1、
図3および
図4に示すように、第1側面53および第2側面54は、第2方向x互いに反対側を向く。第1側面53および第2側面54の各々は、頂面51および第1面521につながっている。
【0019】
絶縁層11は、
図5および
図6に示すように、封止樹脂50に覆われている。絶縁層11は、熱伝導率が比較的高い材料からなる。絶縁層11は、たとえば、窒化ケイ素(Si
3N
4)および窒化アルミニウム(AlN)のいずれかを含むセラミックスからなる。この他、絶縁層11は、樹脂を含む材料からなる場合でもよい。
【0020】
導電層12は、
図5および
図6に示すように、絶縁層11の第1方向zの一方側に接合されている。導電層12は、第1半導体素子21および第2半導体素子22を搭載している。第1方向zに視て、導電層12は、絶縁層11の周縁11Aよりも内方に位置する。導電層12は、封止樹脂50に覆われている。導電層12は、銅(Cu)を含む。導電層12の第1方向zの寸法は、絶縁層11の第1方向zの寸法よりも大きい。
【0021】
図2および
図5に示すように、導電層12は、搭載面121を有する。搭載面121は、第1方向zにおいて封止樹脂50の頂面51と同じ側を向く。搭載面121は、第1半導体素子21および第2半導体素子22の各々に対向している。
【0022】
第1金属層13は、
図5および
図6に示すように、絶縁層11を基準として導電層12とは反対側に位置しており、かつ絶縁層11に接合されている。第1方向zに視て、第1金属層13は、導電層12に重なっている。第1金属層13は、第1裏面131および端面132を有する。
図3に示すように、第1裏面131は、封止樹脂50の第1面521から露出している。第1方向zに視て、第1裏面131は、絶縁層11の周縁11Aよりも内方に位置する。端面132は、第1方向zに対して直交する方向を向く。第1金属層13は、銅を含む。半導体装置A10においては、第1金属層13の第1方向zの寸法は、絶縁層11の第1方向zの寸法よりも大きく、かつ導電層12の第1方向zの寸法に等しい。この他、絶縁層11および導電層12の各々の第1方向zの寸法に対する第1金属層13の第1方向zの寸法の大小関係は、種々にとることが可能である。
【0023】
ゲート配線層14は、
図2および
図6に示すように、絶縁層11を基準として導電層12と同じ側に位置しており、かつ絶縁層11に接合されている。ゲート配線層14は、第2方向xにおいて導電層12の隣に位置する。ゲート配線層14は、第3方向yに延びている。第1方向zに視て、ゲート配線層14は、絶縁層11の周縁11Aよりも内方に位置する。ゲート配線層14は、封止樹脂50に覆われている。ゲート配線層14は、銅を含む。ゲート配線層14の第1方向zの寸法は、絶縁層11の第1方向zの寸法よりも大きい。
【0024】
第1半導体素子21は、
図5および
図6に示すように、導電層12に接合されている。第1半導体素子21は、たとえばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。この他、第1半導体素子21は、MISFET(Metal-Insulator-Semiconductor Field-Effect Transistor)を含む電界効果トランジスタや、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のようなバイポーラトランジスタでもよい。半導体装置A10の説明においては、第1半導体素子21は、nチャネル型であり、かつ縦型構造のMOSFETを対象とする。第1半導体素子21は、化合物半導体基板を含む。当該化合物半導体基板の組成は、炭化ケイ素(SiC)を含む。
【0025】
図7に示すように、第1半導体素子21は、第1電極211、2つの第2電極212、および第1ゲート電極213を有する。
【0026】
図7に示すように、第1電極211は、第1方向zの一方側に位置する。第1電極211は、導電層12の搭載面121に対向している。第1電極211は、導電接合層29を介して搭載面121に導電接合されている。これにより、第1電極211は、導電層12に導通している。導電接合層29は、たとえばハンダである。この他、導電接合層29は、銀(Ag)などを含む焼結金属でもよい。第1電極211には、第1半導体素子21により変換される前の電力に対応する電流が流れる。すなわち、第1電極211は、第1半導体素子21のドレインに相当する。
【0027】
図7に示すように、2つの第2電極212は、第1方向zにおいて第1電極211とは反対側に位置する。
図2に示すように、2つの第2電極212は、第2方向xにおいて互いに離れている。2つの第2電極212の各々には、第1半導体素子21により変換された後の電力に対応する電流が流れる。すなわち、2つの第2電極212は、第1半導体素子21のソースに相当する。
【0028】
図2および
図7に示すように、第1ゲート電極213は、第1方向zにおいて2つの第2電極212と同じ側に位置する。第1ゲート電極213には、第1半導体素子21を駆動するためのゲート電圧が印加される。第1ゲート電極213は、ゲート配線層14に導通している。
図2に示すように、第1方向zに視て、第1ゲート電極213の面積は、2つの第2電極212の各々の面積よりも小さい。
【0029】
第2半導体素子22は、
図5に示すように、導電層12に接合されている。第2半導体素子22は、第1半導体素子21と同一の素子である。したがって、第2半導体素子22は、nチャネル型であり、かつ縦型構造のMOSFETである。第2半導体素子22は、第3方向yにおいて第1半導体素子21の隣に位置する。
【0030】
図8に示すように、第2半導体素子22は、第3電極221、2つの第4電極222、および第2ゲート電極223を有する。
【0031】
図8に示すように、第3電極221は、第1方向zの一方側に位置する。第3電極221は、導電層12の搭載面121に対向している。第3電極221は、導電接合層29を介して搭載面121に導電接合されている。これにより、第3電極221は、導電層12に導通している。第3電極221には、第2半導体素子22により変換される前の電力に対応する電流が流れる。すなわち、第3電極221は、第2半導体素子22のドレインに相当する。
【0032】
図8に示すように、2つの第4電極222は、第1方向zにおいて第3電極221とは反対側に位置する。
図2に示すように、2つの第4電極222は、第2方向xにおいて互いに離れている。2つの第4電極222の各々には、第2半導体素子22により変換された後の電力に対応する電流が流れる。すなわち、2つの第4電極222は、第2半導体素子22のソースに相当する。
【0033】
図2および
図8に示すように、第2ゲート電極223は、第1方向zにおいて2つの第4電極222と同じ側に位置する。第2ゲート電極223には、第2半導体素子22を駆動するためのゲート電圧が印加される。第2ゲート電極223は、ゲート配線層14に導通している。
図2に示すように、第1方向zに視て、第2ゲート電極223の面積は、2つの第4電極222の各々の面積よりも小さい。
【0034】
第1端子31は、
図2に示すように、第1半導体素子21および第2半導体素子22の第2方向xの一方側に位置する。第1端子31は、第1半導体素子21の第1電極211と、第2半導体素子22の第3電極221とに導通している。したがって、第1端子31は、半導体装置A10のドレイン端子に相当する。第1端子31は、銅を含む。
【0035】
図2および
図6に示すように、第1端子31は、第1基部311、および複数の第1接合部312を有する。第1方向zに視て、第1基部311は、導電層12から離れている。
図1に示すように、第1基部311は、封止樹脂50に覆われた部分と、封止樹脂50の第1側面53から外部に露出する部分とを含む。第1方向zに視て、複数の第1接合部312は、第2方向xにおいて第1半導体素子21および第2半導体素子22が位置する側に第1基部311から延びている。複数の第1接合部312は、第3方向yに沿って配列されている。複数の第1接合部312の各々は、封止樹脂50に覆われている。
【0036】
図6に示すように、複数の第1接合部312の各々は、導電接合層29を介して導電層12の搭載面121に導電接合されている。この他、複数の第1接合部312の各々は、溶接により導電層12に導電接合されている構成でもよい。
【0037】
第2端子32は、
図2および
図5に示すように、第1半導体素子21の2つの第2電極212と、第2半導体素子22の2つの第4電極222とに導電接合されている。これにより、第2端子32は、2つの第2電極212の各々と、2つの第4電極222の各々とに導通している。したがって、第2端子32は、半導体装置A10のソース端子に相当する。第2端子32は、銅を含む。
【0038】
図2および
図5に示すように、第2端子32は、第2基部321、複数の第2接合部322、および複数の第3接合部323を有する。第1方向zに視て、第2基部321は、導電層12の搭載面121に重なっている。
図1に示すように、第2基部321は、封止樹脂50に覆われた部分と、封止樹脂50の第2側面54から外部に露出する部分とを含む。複数の第2接合部322の各々は、第2基部321につながっており、かつ封止樹脂50に覆われている。
図6に示すように、複数の第2接合部322の各々は、第2基部321から第1半導体素子21に向けて突出している。複数の第2接合部322の各々は、導電接合層29を介して第1半導体素子21の2つの第2電極212のいずれかに導電接合されている。複数の第3接合部323の各々は、第2基部321につながっており、かつ封止樹脂50に覆われている。複数の第3接合部323の各々は、第2基部321から第2半導体素子22に向けて突出している。複数の第3接合部323の各々は、導電接合層29を介して第2半導体素子22の2つの第4電極222のいずれかに導電接合されている。
【0039】
第1信号端子33は、
図1に示すように、封止樹脂50に覆われた部分と、封止樹脂50の第2側面54から外部に露出する部分とを含む。第1信号端子33は、第2端子32の第2基部321の第3方向yの一方側に位置する。第1信号端子33は、ゲート配線層14に導通している。したがって、第1信号端子33は、第1半導体素子21の第1ゲート電極213と、第2半導体素子22の第2ゲート電極223とに導通している。すなわち、第1信号端子33は、半導体装置A10のゲート端子に相当する。第1信号端子33は、銅を含む。
図4に示すように、第2側面54から外部に露出する第1信号端子33の部分は、第1方向zに沿って延びる部分を含む。
【0040】
第2信号端子34は、
図1に示すように、封止樹脂50に覆われた部分と、封止樹脂50の第2側面54から外部に露出する部分とを含む。第2信号端子34は、第3方向yにおいて第1信号端子33と、第2端子32の第2基部321との間に位置する。半導体装置A10においては、第2信号端子34は、第2基部321につながっている。したがって、第2信号端子34は、2つの第2電極212の各々と、2つの第4電極222の各々とに導通している。第2信号端子34には、2つの第2電極212の各々と、2つの第4電極222の各々とに印加される電圧と等電位の電圧が印加される。第2信号端子34は、銅を含む。第1信号端子33と同様に、第2側面54から外部に露出する第2信号端子34の部分は、第1方向zに沿って延びる部分を含む。
【0041】
第1導通部材41は、
図2に示すように、第1半導体素子21の第1ゲート電極213と、ゲート配線層14とに導電接合されている。これにより、ゲート配線層14は、第1ゲート電極213に導通している。第1導通部材41は、封止樹脂50に覆われている。第1導通部材41は、たとえば、アルミニウム(Al)および金(Au)のいずれかを含有するワイヤである。
【0042】
第2導通部材42は、
図2に示すように、第2半導体素子22の第2ゲート電極223と、ゲート配線層14とに導電接合されている。これにより、ゲート配線層14は、第2ゲート電極223に導通している。第2導通部材42は、封止樹脂50に覆われている。第2導通部材42は、たとえば、アルミニウムおよび金のいずれかを含有するワイヤである。
【0043】
第3導通部材43は、
図2に示すように、ゲート配線層14と第1信号端子33とに導電接合されている。これにより、ゲート配線層14は、第1信号端子33に導通している。第3導通部材43は、封止樹脂50に覆われている。第3導通部材43は、たとえば、アルミニウムおよび金のいずれかを含有するワイヤである。半導体装置A10においては、第3導通部材43は、第2導通部材42につながっている。
【0044】
図3~
図6に示すように、封止樹脂50には、第1面521から突出する凸部55が設けられている。第1方向zに視て、凸部55は、第1金属層13の第1裏面131を囲んでいる。
図9に示すように、凸部55は、第2面522、外周面55Aおよび内周面55Bを有する。第2面522は、第1方向zにおいて封止樹脂50の第1面521と同じ側を向く。第2面522は、第1方向zにおいて第1裏面131よりも第1面521から遠くに位置する。第1方向zに視て、内周面55Bは、第1裏面131と第2面522との間に位置する。第1方向zに視て、外周面55Aは、第2面522を基準として内周面55Bとは反対側に位置する。外周面55Aは、第1面521に対して傾斜している。外周面55Aは、第1方向zにおいて第1面521から第2面522にかけて内周面55Bに近づく側に傾斜している。
【0045】
図3~
図6に示すように、封止樹脂50には、第1方向zに視て第1裏面131の第1裏面131と凸部55との間に位置する溝部56が設けられている。溝部56は、封止樹脂50の第1面521が向く側とは反対側に凹んでいる。第1方向zに視て、溝部56は、第1裏面131を囲むとともに、絶縁層11に重なっている。溝部56は、第1方向zに対して直交する方向に延びている。
【0046】
図9に示すように、第1方向zにおける溝部56の寸法dは、第1方向zおよび溝部56が延びる方向の各々に対して直交する方向における溝部56の寸法wよりも大きい。寸法dは、溝部56の深さに相当する。寸法wは、溝部56の幅に相当する。
【0047】
図9に示すように、溝部56から第1金属層13の端面132が露出している。封止樹脂50は、第1方向zにおいて封止樹脂50の第1面521と同じ側を向く第3面523を有する。第3面523、端面132、および凸部55の内周面55Bの各々は、溝部56を規定している。第3面523は、第1方向zにおいて第1面521と第1金属層13の第1裏面131との間に位置する。第3面523および内周面55Bの各々の表面粗さは、第1面521の表面粗さよりも大きい。
【0048】
【0049】
最初に、
図10に示すように、絶縁層11の第1方向zの一方側に第1導体層81を接合する。あわせて、絶縁層11の第1方向zの他方側に第2導体層82を接合する。第1導体層81は、半導体装置A10が具備する導電層12およびゲート配線層14を含む要素である。第2導体層82は、半導体装置A10が具備する第1金属層13を含む要素である。第1導体層81および第2導体層82の各々は、銅を含む。
【0050】
次いで、
図11に示すように、第1導体層81および第2導体層82の各々の一部を除去する。本工程では、第1導体層81および第2導体層82の各々に対してフォトリソグラフィパターニングを施した後、当該フォトリソグラフィパターニングにかかるマスク層から露出する部分をウェットエッチングにより除去する。本工程により、半導体装置A10が具備する導電層12、第1金属層13およびゲート配線層14が形成される。
【0051】
次いで、
図12に示すように、導電接合層29を介して、導電層12の搭載面121に第1半導体素子21および第2半導体素子22の各々を導電接合する。導電接合層29を介して、搭載面121に第1端子31の複数の第1接合部312の各々を導電接合する。さらに、導電接合層29を介して、第1半導体素子21の2つの第2電極212に、第2端子32の複数の第2接合部322を導電接合する。あわせて、導電接合層29を介して、第2半導体素子22の2つの第4電極222に、第2端子32の複数の第3接合部323を導電接合する。本工程では、第1端子31の第1基部311と、第2端子32の第2基部321とは、金属フレームなどの支持部材(図示略)に支持されている。
【0052】
次いで、図示は省略するが、第1半導体素子21の第1ゲート電極213と、ゲート配線層14とに第1導通部材41を導電接合する。第2半導体素子22の第2ゲート電極223と、ゲート配線層14とに第2導通部材42を導電接合する。さらに、ゲート配線層14と第1信号端子33とに第3導通部材43を導電接合する。
【0053】
次いで、
図13に示すように、絶縁層11、導電層12、第1半導体素子21および第2半導体素子22を覆う封止樹脂50を形成する。封止樹脂50は、トランスファモールド成形により形成される。
図14に示すように、封止樹脂50を形成する工程では、第1金属層13の第1裏面131を封止樹脂50の第1面521から露出させる工程と、第1面521から突出する凸部55を封止樹脂50に形成する工程とを含む。凸部55は、封止樹脂50の他の部位と一体的にトランスファモールド成形により形成される。
【0054】
次いで、
図15に示すように、第1方向zにおいて封止樹脂50の第1面521が向く側とは反対側に凹む溝部56を封止樹脂50に形成する。本工程では、第1方向zに視て第1金属層13の第1裏面131と凸部55との間に位置するように溝部56が形成される。溝部56は、レーザ89の照射により封止樹脂50の一部を除去することにより形成される。
図9は、封止樹脂50に溝部56が形成された後の状態を示している。
図9に示すように、本工程では、第1方向zにおける溝部56の寸法dが、第1方向zおよび溝部56が延びる方向の各々に対して直交する方向における溝部56の寸法wよりも大きくなるようにする。さらに本工程では、第1金属層13の端面132を溝部56から露出させる。その後、支持部材から第1端子31の第1基部311と第2端子32の第2基部321との各々を切り離す。以上の工程を経ることにより、半導体装置A10が得られる。
【0055】
次に、
図16に基づき、半導体装置A10が搭載された車両Bについて説明する。車両Bは、たとえば電気自動車(EV)である。
【0056】
図16に示すように、車両Bは、車載充電器91、蓄電池92および駆動系統93を備える。車載充電器91には、屋外に設置された給電施設(図示略)から無線により電力が供給される。この他、給電施設から車載充電器91への電力の供給手段は、有線でもよい。車載充電器91には、昇圧型のDC-DCコンバータが構成されている。車載充電器91に供給された電力の電圧は、当該コンバータにより昇圧された後、蓄電池92に給電される。昇圧された電圧は、たとえば600Vである。
【0057】
駆動系統93は、車両Bを駆動する。駆動系統93は、インバータ931および駆動源932を有する。半導体装置A10は、インバータ931の一部を構成する。蓄電池92に蓄えられた電力は、インバータ931に給電される。蓄電池92からインバータ931に給電される電力は、直流電力である。この他、
図16に示す電力系統とは異なり、蓄電池92とインバータ931との間に昇圧型のDC-DCコンバータをさらに設けてもよい。インバータ931は、直流電力を交流電力に変換する。半導体装置A10を含めたインバータ931は、駆動源932に導通している。駆動源932は、交流モータおよび変速機を有する。インバータ931によって変換された交流電力が駆動源932に供給されると、交流モータが回転するとともに、その回転が変速機に伝達される。変速機は、交流モータから伝達された回転数を適宜減じた上で、車両Bの駆動軸を回転させる。これにより、車両Bが駆動する。車両Bの駆動にあたっては、アクセルペダルの変動量などの情報に基づき交流モータの回転数を自在に操作する必要がある。そこで、インバータ931における半導体装置A10は、要求される交流モータの回転数に対応させるべく、周波数が適宜変化された交流電力を出力するために必要である。
【0058】
次に、半導体装置A10の作用効果について説明する。
【0059】
半導体装置A10は、絶縁層11、導電層12、第1金属層13、第1半導体素子21および封止樹脂50を備える。第1金属層13は、封止樹脂50の第1面521から露出する第1裏面131を有する。封止樹脂50には、凸部55が設けられている。凸部55の第2面522は、第1方向zにおいて第1裏面131よりも第1面521から遠くに位置する。さらに封止樹脂50には、第1方向zにおいて第1面521が向く側とは反対側に凹む溝部56が設けられている。溝部56は、第1方向zに視て第1裏面131と凸部55との間に位置する。第1方向zにおける溝部56の寸法dは、第1方向zおよび溝部56が延びる方向の各々に対して直交する方向における溝部56の寸法wよりも大きい。封止樹脂50に凸部55を設けることにより、
図13に示す封止樹脂50を形成する工程において、凸部55の形成にかかる金型の部位に位置する溶融樹脂は、第1方向zにおける流動が主体となる。これにより、第1方向zに対して直交する方向において、封止樹脂50を形成する金型から第1金属層13の第1裏面131に向けた溶融樹脂の漏れが抑制される。ここで、金型から漏れた当該溶融樹脂は、第1裏面131の周縁131A(
図9参照)において形成される樹脂バリの発生要因である。そこで、封止樹脂50に溝部56を設けることにより、周縁131Aにおいて形成された樹脂バリを除去することができる。したがって、本構成によれば、半導体装置A10においては、封止樹脂50から露出する金属層の周縁において形成される樹脂バリの発生を抑制することが可能となる。
【0060】
凸部55および溝部56の各々は、第1金属層13の第1裏面131を囲んでいる。本構成をとることにより、第1裏面131の周縁131Aにおいて形成される樹脂バリの発生を効果的に抑制できる。
【0061】
溝部56から、第1金属層13の端面132が露出している。本構成をとることにより、第1金属層13の第1裏面131の周縁131Aにおいて形成された樹脂バリを、より確実に除去できる。
【0062】
封止樹脂50は、溝部56の一部を規定する第3面523を有する。第3面523は、第1方向zにおいて封止樹脂50の第1面521と第1金属層13の第1裏面131との間に位置する。本構成をとることにより、第1方向zにおける溝部56の寸法dが過大になることを防止できる。さらに、第3面523の表面粗さは、第1面521の表面粗さよりも大きい。このような表面粗さの相違は、
図15に示すように、レーザ89の照射により溝部56が形成されために生じる。
【0063】
絶縁層11は、封止樹脂50に覆われている。第1方向zに視て、第1金属層13の第1裏面131は、絶縁層11の周縁11Aよりも内方に位置する。本構成をとることにより、周縁11Aの近傍は、第1方向zにおいて第1裏面131が向く側とは反対側から封止樹脂50に押し当てられたものとなる。これにより、封止樹脂50から絶縁層11および導電層12の脱落を防止できる。
【0064】
導電層12および第1金属層13の各々の第1方向zの寸法は、絶縁層11の第1方向zの寸法よりも大きい。本構成をとることにより、導電層12および第1金属層13の各々の第1方向zにおける熱抵抗が低減される。これにより、半導体装置A10の放熱性をより向上させることができる。
【0065】
〔第2実施形態〕
図17~
図19に基づき、本開示の第2実施形態にかかる半導体装置A20について説明する。これらの図において、先述した半導体装置A10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。ここで、
図18の断面位置は、半導体装置A10を示す
図5の断面位置に対応している。
図19の断面位置は、半導体装置A10を示す
図6の断面位置に対応している。
【0066】
半導体装置A20においては、溝部56の構成が半導体装置A10の当該構成と異なる。
【0067】
図17に示すように、溝部56は、第1溝561、第2溝562、および2つの第3溝563を含む。第1溝561および第2溝562は、第2方向xにおいて第1金属層13の第1裏面131を基準として互いに反対側に位置する。2つの第3溝563は、第3方向yにおいて第1裏面131を基準として互いに反対側に位置する。
【0068】
図19に示すように、第1溝561の第1方向zの寸法d1は、第2溝562の第1方向zの寸法d2よりも大きい。したがって、寸法d2は、寸法d1と異なる。さらに、
図18および
図19に示すように、2つの第3溝563の各々の第1方向zの寸法d3は、寸法d2以上かつ寸法d3以下である。
【0069】
次に、半導体装置A20の作用効果について説明する。
【0070】
半導体装置A20は、絶縁層11、導電層12、第1金属層13、第1半導体素子21および封止樹脂50を備える。第1金属層13は、封止樹脂50の第1面521から露出する第1裏面131を有する。封止樹脂50には、凸部55が設けられている。凸部55の第2面522は、第1方向zにおいて第1裏面131よりも第1面521から遠くに位置する。さらに封止樹脂50には、第1方向zにおいて第1面521が向く側とは反対側に凹む溝部56が設けられている。溝部56は、第1方向zに視て第1裏面131と凸部55との間に位置する。第1方向zにおける溝部56の寸法dは、第1方向zおよび溝部56が延びる方向の各々に対して直交する方向における溝部56の寸法wよりも大きい。したがって、本構成によれば、半導体装置A20においても、封止樹脂50から露出する金属層の周縁において形成される樹脂バリの発生を抑制することが可能となる。さらに半導体装置A20においては、半導体装置A10と共通する構成を具備することにより、半導体装置A10と同等の作用効果を奏する。
【0071】
半導体装置A20においては、溝部56は、第1金属層13の第1裏面131を基準として互いに反対側に位置する第1溝561および第2溝562を含む。第2溝562の第1方向zの寸法d2は、第1溝561の第1方向zの寸法d1と異なる。ここで、
図13に示す封止樹脂50を形成する工程において、第1方向zに対して直交する方向の回りに絶縁層11の回転変位が発生することがある。これにより、第1方向zと当該回転変位の軸方向との双方に対して直交する方向における第1裏面131の周縁131A(
図9参照)の両側においては、形成される樹脂バリの大きさに差異が生じる。そこで、本構成をとることにより、周縁131Aにおいて形成される樹脂バリの大きさに差異があっても、当該樹脂バリをより確実に除去できる。
【0072】
〔第3実施形態〕
図20~
図22に基づき、本開示の第3実施形態にかかる半導体装置A30について説明する。これらの図において、先述した半導体装置A10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。ここで、
図21の断面位置は、半導体装置A10を示す
図6の断面位置に対応している。
【0073】
半導体装置A30においては、第2金属層15をさらに具備することが、半導体装置A10の場合と異なる。
【0074】
第2金属層15は、
図20および
図21に示すように、第1金属層13の第1裏面131に積層されている。第2金属層15は、第1金属層13とは異なる金属元素を含む。第2金属層15は、たとえば銀を含む。第1金属層13が銅を含み、かつ第2金属層15が銀を含む場合は、第2金属層15の熱伝導率が第1金属層13の熱伝導率よりも高くなる。第2金属層15は、第1方向zにおいて第1金属層13の第1裏面131と同じ側を向く第2裏面151を有する。第2裏面151は、封止樹脂50から露出している。
【0075】
図20に示すように、第1方向zに視て、第2裏面151は、第1金属層13の第1裏面131の周縁131Aよりも内方に位置する。
図22に示すように、第2裏面151は、第1方向zにおいて第1裏面131と凸部55の第2面522との間に位置する。
【0076】
図22に示すように、第2金属層15の第1方向zの寸法t2は、第1金属層13の第1方向zの寸法t1よりも小さい。
【0077】
次に、
図23および
図24に基づき、本開示の第3実施形態の変形例にかかる半導体装置A31について説明する。ここで、
図23の断面位置は、
図21の断面位置に対応している。
【0078】
半導体装置A31においては、第2金属層15の構成が半導体装置A30の当該構成と異なる。
図23および
図24に示すように、第2金属層15の第2裏面151は、第1方向zにおいて凸部55の第2面522を基準として、第1金属層13の第1裏面131とは反対側に位置する。本構成は、
図15に示す溝部56を凸部55に形成する工程において、レーザ89の照射により凸部55の一部を除去することにより形成される。このため、半導体装置A31においては、第2面522の表面粗さは、封止樹脂50の第1面521の表面粗さよりも大きい。
【0079】
次に、半導体装置A30の作用効果について説明する。
【0080】
半導体装置A30は、絶縁層11、導電層12、第1金属層13、第1半導体素子21および封止樹脂50を備える。第1金属層13は、封止樹脂50の第1面521から露出する第1裏面131を有する。封止樹脂50には、凸部55が設けられている。凸部55の第2面522は、第1方向zにおいて第1裏面131よりも第1面521から遠くに位置する。さらに封止樹脂50には、第1方向zにおいて第1面521が向く側とは反対側に凹む溝部56が設けられている。溝部56は、第1方向zに視て第1裏面131と凸部55との間に位置する。第1方向zにおける溝部56の寸法dは、第1方向zおよび溝部56が延びる方向の各々に対して直交する方向における溝部56の寸法wよりも大きい。したがって、本構成によれば、半導体装置A30においても、封止樹脂50から露出する金属層の周縁において形成される樹脂バリの発生を抑制することが可能となる。さらに半導体装置A30においては、半導体装置A10と共通する構成を具備することにより、半導体装置A10と同等の作用効果を奏する。
【0081】
半導体装置A30においては、第1金属層13の第1裏面131に積層されるとともに、第1金属層13とは異なる金属元素を含む第2金属層15をさらに備える。第2金属層15の第2裏面151は、封止樹脂50から露出している。本構成をとることにより、第2金属層15を介して半導体装置A30をヒートシンクに取り付けることができる。この場合において、第2金属層15に含まれる金属元素を、当該ヒートシンクへの取り付けに適した元素とすることができる。
【0082】
〔第4実施形態〕
図25~
図27に基づき、本開示の第4実施形態にかかる半導体装置A40について説明する。これらの図において、先述した半導体装置A10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。ここで、
図26の断面位置は、半導体装置A10を示す
図6の断面位置に対応している。
【0083】
半導体装置A40においては、封止樹脂50に設けられた凸部55の構成が、半導体装置A10の当該構成と異なる。さらに半導体装置A40においては、封止樹脂50には溝部56が設けられていない。
【0084】
図25および
図26に示すように、凸部55は、基部551および張出部552を含む。基部551は、封止樹脂50の第1面521から突出している。基部551は、第2面522、外周面55Aおよび内周面55Bを含む。第1金属層13の端面132は、内周面55Bに覆われている。張出部552は、基部551から第1方向zに対して直交する方向に延びている。張出部552は、第1金属層13の第1裏面131に接している。張出部552は、第1裏面131の周縁131Aにおいて形成される樹脂バリを含む。
【0085】
図27に示すように、張出部552の第1方向zの寸法h2は、基部551の第1方向zの寸法h1よりも小さい。
【0086】
次に、半導体装置A40の作用効果について説明する。
【0087】
半導体装置A40は、絶縁層11、導電層12、第1金属層13、第1半導体素子21および封止樹脂50を備える。第1金属層13は、封止樹脂50の第1面521から露出する第1裏面131を有する。封止樹脂50には、凸部55が設けられている。凸部55の第2面522は、第1方向zにおいて第1裏面131よりも第1面521から遠くに位置する。凸部55は、第1裏面131に接している。本構成をとることにより、
図13に示す封止樹脂50を形成する工程において、凸部55の形成にかかる金型の部位に位置する溶融樹脂は、第1方向zにおける流動が主体となる。これにより、第1方向zに対して直交する方向において、封止樹脂50を形成する金型から第1金属層13の第1裏面131に向けた溶融樹脂の漏れが抑制される。したがって、本構成によれば、半導体装置A40においても、封止樹脂50から露出する金属層の周縁において形成される樹脂バリの発生を抑制することが可能となる。
【0088】
本開示は、先述した実施形態に限定されるものではない。本開示の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0089】
本開示は、以下の付記に記載した実施形態を含む。
[付記1]
絶縁層と、
前記絶縁層の第1方向の一方側に接合された導電層と、
前記絶縁層を基準として前記導電層とは反対側に位置するとともに、前記絶縁層に接合された第1金属層と、
前記導電層に接合された半導体素子と、
前記導電層および前記半導体素子を覆う封止樹脂と、を備え、
前記封止樹脂は、前記第1方向において前記絶縁層を基準として前記第1金属層が位置する側を向く第1面を有し、
前記第1金属層は、前記第1面から露出する第1裏面を有し、
前記封止樹脂には、前記第1面から突出する凸部が設けられており、
前記凸部は、前記第1方向において前記第1面と同じ側を向くとともに、前記第1方向において前記第1裏面よりも前記第1面から遠くに位置する第2面を有し、
前記封止樹脂には、前記第1方向に視て前記第1裏面と前記凸部との間に位置するとともに、前記第1方向において前記第1面が向く側とは反対側に凹む溝部が設けられており、
前記第1方向における前記溝部の寸法は、前記第1方向および前記溝部が延びる方向の各々に対して直交する方向における前記溝部の寸法よりも大きい、半導体装置。
[付記2]
前記溝部は、前記第1裏面を囲んでいる、付記1に記載の半導体装置。
[付記3]
前記第1金属層は、前記第1方向に対して直交する方向を向く端面を有し、
前記溝部から前記端面が露出している、付記2に記載の半導体装置。
[付記4]
前記封止樹脂は、前記第1方向において前記第1面と同じ側を向くとともに、前記溝部の一部を規定する第3面を有し、
前記第3面は、前記第1方向において前記第1面と前記第1裏面との間に位置する、付記3に記載の半導体装置。
[付記5]
前記第3面の表面粗さは、前記第1面の表面粗さよりも大きい、付記4に記載の半導体装置。
[付記6]
前記溝部は、前記第1裏面を基準として互いに反対側に位置する第1溝および第2溝を含み、
前記第2溝の前記第1方向の寸法は、前記第1溝の前記第1方向の寸法と異なる、付記3に記載の半導体装置。
[付記7]
絶縁層と、
前記絶縁層の第1方向の一方側に接合された導電層と、
前記絶縁層を基準として前記導電層とは反対側に位置するとともに、前記絶縁層に接合された第1金属層と、
前記導電層に接合された半導体素子と、
前記導電層および前記半導体素子を覆う封止樹脂と、を備え、
前記封止樹脂は、前記第1方向において前記絶縁層を基準として前記第1金属層が位置する側を向く第1面を有し、
前記第1金属層は、前記第1面から露出する第1裏面を有し、
前記封止樹脂には、前記第1面から突出する凸部が設けられており、
前記凸部は、前記第1方向において前記第1面と同じ側を向くとともに、前記第1方向において前記第1裏面よりも前記第1面から遠くに位置する第2面を有し、
前記凸部は、前記第1裏面に接している、半導体装置。
[付記8]
前記凸部は、前記第1面から突出する基部と、前記基部から前記第1方向に対して直交する方向に延びる張出部と、を有し、
前記張出部は、前記第1裏面に接している、付記7に記載の半導体装置。
[付記9]
前記張出部の前記第1方向の寸法は、前記基部の前記第1方向の寸法よりも小さい、付記8に記載の半導体装置。
[付記10]
前記凸部は、前記第1裏面を囲んでいる、付記1ないし9のいずれかに記載の半導体装置。
[付記11]
前記絶縁層は、前記封止樹脂に覆われており、
前記第1方向に視て、前記第1裏面は、前記絶縁層の周縁よりも内方に位置する、付記10に記載の半導体装置。
[付記12]
前記第1裏面に積層されるとともに、前記第1金属層とは異なる金属元素を含む第2金属層をさらに備え、
前記第2金属層は、前記第1方向において前記第1裏面と同じ側を向く第2裏面を有し、
前記第2裏面は、前記封止樹脂から露出している、付記11に記載の半導体装置。
[付記13]
前記第2金属層の前記第1方向の寸法は、前記第1金属層の前記第1方向の寸法よりも小さい、付記12に記載の半導体装置。
[付記14]
前記第1方向に視て、前記第2裏面は、前記第1裏面の周縁よりも内方に位置しており、
前記第2裏面は、前記第1方向において前記第1裏面と前記第2面との間に位置する、付記13に記載の半導体装置。
[付記15]
前記半導体素子に導通する端子をさらに備え、
前記半導体素子および前記端子の各々は、前記導電層に導電接合されている、付記11に記載の半導体装置。
[付記16]
絶縁層の第1方向の両側に個別に接合された導電層および第1金属層の各々を形成する工程と、
前記導電層に半導体素子を接合する工程と、
前記第1方向において前記絶縁層を基準として前記第1金属層が位置する側を向く第1面を有するとともに、前記導電層および前記半導体素子を覆う封止樹脂を形成する工程と、
前記第1方向において前記第1面が向く側とは反対側に凹む溝部を前記封止樹脂に形成する工程と、を備え、
前記封止樹脂を形成する工程では、前記第1方向において前記第1面と同じ側を向く前記第1金属層の第1裏面を前記第1面から露出させる工程と、前記第1面から突出する凸部を前記封止樹脂に形成する工程と、を含み、
前記凸部は、前記第1方向において前記第1面と同じ側を向くとともに、前記第1方向において前記第1裏面よりも前記第1面から遠くに位置する第2面を有し、
前記溝部を形成する工程では、前記第1方向に視て前記第1裏面と前記凸部との間に位置するように前記溝部が形成され、
前記第1方向における前記溝部の寸法は、前記第1方向および前記溝部が延びる方向の各々に対して直交する方向における前記溝部の寸法よりも大きい、半導体装置の製造方法。
[付記17]
前記溝部は、レーザ照射により前記封止樹脂の一部を除去することによって形成される、付記16に記載の半導体装置の製造方法。
[付記18]
前記溝部を形成する工程では、前記第1方向に対して直交する方向を向く前記第1金属層の端面を前記溝部から露出させる、付記17に記載の半導体装置の製造方法。
[付記19]
駆動源と、
付記15に記載の半導体装置と、を備え、
前記半導体装置は、前記駆動源に導通している、車両。
【符号の説明】
【0090】
A10,A20,A30,A40:半導体装置
11:絶縁層
11A:周縁
12:導電層
121:搭載面
13:放熱層
131:第1裏面
131A:周縁
132:端面
14:ゲート配線層
15:第2金属層
151:第2裏面
21:第1半導体素子
211:第1電極
212:第2電極
213:第1ゲート電極
22:第2半導体素子
221:第3電極
222:第4電極
223:第2ゲート電極
29:導電接合層
31:第1端子
311:第1基部
312:第1接合部
32:第2端子
321:第2基部
322:第2接合部
323:第3接合部
33:第1信号端子
34:第2信号端子
41:第1導通部材
42:第2導通部材
43:第3導通部材
50:封止樹脂
51:頂面
521:第1面
522:第2面
523:第3面
53:第1側面
54:第2側面
55:凸部
55A:外周面
55B:内周面
551:基部
552:張出部
56:溝部
561~563:第1溝~第3溝
81:第1導体層
82:第2導体層
89:レーザ
91:車載充電器
92:蓄電池
93:駆動系統
931:インバータ
932:駆動源
z:第1方向
x:第2方向
y:第3方向