(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175875
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】システム及び通信装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20241212BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20241212BHJP
【FI】
A61B5/00 102B
G16H50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093951
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 哲三
(72)【発明者】
【氏名】福田 泰士
【テーマコード(参考)】
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
4C117XA07
4C117XB02
4C117XD13
4C117XE15
4C117XE54
4C117XH12
4C117XR01
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】意図した通信装置と測定装置とのペアでのペアリングを容易に行うことのできるシステム及び通信装置を提供する。
【解決手段】情報分析システム100は、ペアリングが可能な通信方式による通信を行う第1通信部12を含む血圧計10と、ペアリングが可能な通信方式による通信を行う第2通信部22を含む通信装置20と、を有し、通信装置20は、載置面41に載置された状態において、載置面41に交差する方向に立設され且つ第2通信部22の通信アンテナ22Aを囲んで配置された電波遮蔽部25Aを有し、載置面41に直交する方向における電波遮蔽部25Aの載置面41側と反対側の端縁と載置面41との距離L1は、載置面41に載置された血圧計10の上記方向における高さL2以上となっている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペアリングが可能な通信方式による通信を行う第1近距離無線通信部を含む測定装置と、ペアリングが可能な通信方式による通信を行う第2近距離無線通信部を含む通信装置と、を有するシステムであって、
前記通信装置は、載置面に載置された状態において、前記載置面に交差する方向に立設され且つ前記第2近距離無線通信部のアンテナを囲んで配置された電波遮蔽部を有し、
前記載置面に直交する方向における前記電波遮蔽部の前記載置面側と反対側の端縁と前記載置面との距離は、前記載置面に載置された前記測定装置の前記方向における高さ以上となっている、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記アンテナは、漏洩同軸ケーブルを含んで構成される、システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシステムであって、
前記通信装置は、プロセッサを含み、
前記プロセッサは、前記第2近距離無線通信部によってブロードキャスト信号を受信した場合には、当該ブロードキャスト信号の送信元の前記測定装置のうち、近距離無線通信の電波強度が閾値以上となる前記測定装置との間でペアリングの処理を行う、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、
前記プロセッサは、前記ペアリングの対象となる前記測定装置の識別情報を取得し、前記識別情報に対応する認証情報を記憶部から取得できた場合に、当該測定装置との間で暗号化情報の共有を行う、システム。
【請求項5】
ペアリングが可能な通信方式による通信を行う近距離無線通信部を含む通信装置であって、
プロセッサを備え、
前記近距離無線通信部のアンテナは、前記通信装置が載置面に載置された状態において、前記載置面に直交する方向に指向性を持ち、
前記プロセッサは、前記近距離無線通信部によってブロードキャスト信号を受信した場合には、当該ブロードキャスト信号の送信元の装置のうち、近距離無線通信の電波強度が閾値以上となる装置との間でペアリングの処理を行い、
当該処理において、前記プロセッサは、前記ペアリングの対象となる前記装置の識別情報を取得し、前記識別情報に対応する認証情報を記憶部から取得できた場合に、当該装置との間で暗号化情報の共有を行う、通信装置。
【請求項6】
ペアリングが可能な通信方式による通信を行う近距離無線通信部と、
載置面に載置された状態において、前記載置面に交差する方向に立設され且つ前記近距離無線通信部のアンテナを囲んで配置された電波遮蔽部と、を備え、
前記載置面に直交する方向における前記電波遮蔽部の前記載置面側と反対側の端縁と前記載置面との距離は、15mm以上300mm以下となっている、通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書に記載する測定装置は、体重、体組成、血圧、脈拍、心拍、体温、血糖、又は血中酸素飽和度等の生体情報を測定する生体情報測定装置と、歩数、歩行距離、又は消費カロリー等の活動量を測定する活動量測定装置と、を含む。測定装置には、測定対象量を測定するための測定用センサが含まれる。測定用センサの測定対象量には、測定装置に応じて、体重、体脂肪率、血圧値、脈拍数、心拍数、体温、血糖値、又は血中酸素飽和度等の生体情報や、歩数、走行距離、又は消費カロリー等の活動量が含まれる。こういった測定装置の測定結果を、スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン、及びデスクトップパソコン等の情報端末で記録及び分析することが行われている。
【0003】
このような測定結果の記録及び分析を行う場合には、測定結果を、情報端末に都度ユーザが入力するのではなく、測定装置から情報端末が自動的に測定結果を取得できるようになっていることが望ましい。具体的には、例えば、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を利用して、測定装置からの測定結果を情報端末に転送する方法等が考えられる。
【0004】
特許文献1には、ユーザに装着されるクライアント装置とマスタ装置とが無線通信可能に構成され、クライアント装置からマスタ装置に送信されたユーザの生体情報が衛星を経由して個人データ管理装置に送られるシステムが記載されている。
【0005】
特許文献2には、患者監視システム内の測定モジュールと中央処理ユニットとを無線で接続してデータ伝達を行うシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-191566号公報
【特許文献2】特表2018-526121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
測定装置と情報端末等の装置との間でセキュアな近距離無線通信を行うためには、測定装置と装置とをペアリングする処理が必要である。ペアリングは、近距離無線通信に用いる暗号化の情報を測定装置と装置の間で共有する処理を言う。例えば、多数のユーザの生体情報や活動量を収集して臨床研究を行う場合には、各ユーザに貸与した測定装置を回収し、その測定装置を1つずつ、装置とペアリングして、その測定装置から情報を装置に送信する必要がある。しかし、装置と複数の測定装置とが同じ空間に配置されている場合には、意図しない装置と測定装置とのペアでペアリングがなされる可能性があり、作業効率が低下する。また、この作業効率の向上のために、装置を複数用意した場合には、複数の装置と複数の測定装置とが同じ空間に配置されることになる。この場合、例えば、第1装置と第1測定装置とのペアリングの作業と、第2装置と第2測定装置とのペアリングの作業を並行して行うと、第1装置と第2測定装置との間でペアリングがなされてしまったり、第2装置と第1測定装置との間でペアリングがなされてしまったりする可能性があり、複数の装置を準備しているにもかかわらず、作業の効率が低下する可能性がある。
【0008】
本開示の技術は、装置と複数の測定装置が存在する空間であっても、意図した装置と測定装置とのペアでの通信を容易に行うことのできるシステムと、それに用いることが可能な通信装置と、を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の技術は以下に示すものである。なお、括弧内には、以降の実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0010】
(1)
ペアリングが可能な通信方式による通信を行う第1近距離無線通信部(第1通信部12)を含む測定装置(血圧計10、活動量計10Z)と、ペアリングが可能な通信方式による通信を行う第2近距離無線通信部(第2通信部22)を含む通信装置(通信装置20)と、を有するシステム(情報分析システム100)であって、
上記通信装置は、載置面(載置面41)に載置された状態において、上記載置面に交差する方向に立設され且つ上記第2近距離無線通信部のアンテナ(通信アンテナ22A)を囲んで配置された電波遮蔽部(電波遮蔽部25A)を有し、
上記載置面に直交する方向における上記電波遮蔽部の上記載置面側と反対側の端縁と上記載置面との距離(距離L1)は、上記載置面に載置された上記測定装置の上記方向における高さ(高さL2)以上となっている、システム。
【0011】
(1)によれば、通信装置の電波特性を、電波遮蔽部によって、載置面の上方へ指向性を持つものとすることができる。この電波遮蔽部の端縁から載置面までの距離が、その載置面に載置された測定装置の高さ以上となっていることで、通信装置と測定装置が載置面において隣接配置されている状況では、通信装置で受信されるその測定装置の電波の強度を小さくすることができる。一方、通信装置の上方に測定装置が位置している状況では、通信装置で受信されるその測定装置の電波の強度を大きくすることができる。このため、複数の通信装置と複数の測定装置とを同じ載置面に載置し、各通信装置によって、この複数の測定装置のいずれかとペアリングする作業を並行して行う状況であっても、例えば、通信装置で受信される電波強度を利用することで、各通信装置の上方に配置された測定装置だけを、その通信装置のペアリング相手として特定できる。例えば、測定装置を各通信装置の上に載置して該測定装置とのペアリングを行い、そのペアリングが終了したら、別の測定装置を各通信装置の上に載置して該測定装置とのペアリングを行う、といった作業を繰り返し行うだけで、全ての測定装置と通信装置とのペアリングを効率的に行うことができる。これにより、複数の測定装置で測定された情報を通信装置によって安全かつ効率的に収集して、臨床研究などに役立てることができる。
【0012】
(2)
(1)に記載のシステムであって、
上記アンテナは、漏洩同軸ケーブルを含んで構成される、システム。
【0013】
(2)によれば、アンテナからの電波の放射範囲をより制限できるため、通信装置の上方に位置していない測定装置とその通信装置との間でペアリングがなされるのを防ぐことができる。
【0014】
(3)
(1)又は(2)に記載のシステムであって、
上記通信装置は、プロセッサ(プロセッサ21)を含み、
上記プロセッサは、上記第2近距離無線通信部によってブロードキャスト信号を受信した場合には、そのブロードキャスト信号の送信元の上記測定装置のうち、近距離無線通信の電波強度が閾値以上となる上記測定装置との間でペアリングの処理を行う、システム。
【0015】
(3)によれば、通信装置の上方に位置していない測定装置とその通信装置との間でペアリングがなされるのを防ぐことができる。
【0016】
(4)
(3)に記載のシステムであって、
上記プロセッサは、上記ペアリングの対象となる上記測定装置の識別情報を取得し、上記識別情報に対応する認証情報を記憶部から取得できた場合に、その測定装置との間で暗号化情報の共有を行う、システム。
【0017】
(4)によれば、測定装置の識別情報と認証情報を対応付けて記憶部に事前に記憶しておくことで、測定装置を通信装置の上方に配置した状態で、通信装置において複雑な操作(例えば数字の入力やボタン操作等)を行うことなく、測定装置と通信装置とのペアリングを完了させることができる。これにより、多数の測定装置と通信装置との間でのペアリングの作業を効率的に行うことができる。
【0018】
(5)
ペアリングが可能な通信方式による通信を行う近距離無線通信部(第2通信部22)を含む通信装置(通信装置20)であって、
プロセッサ(プロセッサ21)を備え、
上記近距離無線通信部のアンテナ(通信アンテナ22A)は、上記通信装置が載置面(載置面41)に載置された状態において、上記載置面に直交する方向に指向性を持ち、
上記プロセッサは、上記近距離無線通信部によってブロードキャスト信号を受信した場合には、そのブロードキャスト信号の送信元の装置のうち、近距離無線通信の電波強度が閾値以上となる装置との間でペアリングの処理を行い、
その処理において、上記プロセッサは、上記ペアリングの対象となる上記装置の識別情報を取得し、上記識別情報に対応する認証情報を記憶部から取得できた場合に、その装置との間で暗号化情報の共有を行う、通信装置。
【0019】
(5)によれば、測定装置の識別情報と認証情報を対応付けて記憶部に事前に記憶しておくことで、測定装置を通信装置の上方に配置するだけで、通信装置において複雑な操作を行うことなく、測定装置と通信装置とのペアリングを完了させることができる。これにより、多数の測定装置と通信装置との間でのペアリングの作業を効率的に行うことができる。また、通信装置の構成を簡素化してコストを低減できる。
【0020】
(6)
ペアリングが可能な通信方式による通信を行う近距離無線通信部(第2通信部22)と、
載置面(載置面41)に載置された状態において、上記載置面に交差する方向に立設され且つ上記近距離無線通信部のアンテナ(通信アンテナ22A)を囲んで配置された電波遮蔽部(電波遮蔽部25A)と、を備え、
上記載置面に直交する方向における上記電波遮蔽部の上記載置面側と反対側の端縁と上記載置面との距離(距離L1)は、15mm以上300mm以下となっている、通信装置。
【0021】
(6)によれば、通信装置の電波特性を、電波遮蔽部によって、載置面の上方へ指向性を持つものとすることができる。この電波遮蔽部の端縁から載置面までの距離は、15mm以上300mm以下であり、これは、測定装置(活動量計や血圧計等)をその載置面に載置したときのその測定装置の高さ以上となる。このため、通信装置と測定装置が載置面において隣接配置されている状況では、通信装置で受信されるその測定装置の電波の強度を小さくすることができる。一方、通信装置の上方に測定装置が位置している状況では、通信装置で受信されるその測定装置の電波の強度を大きくすることができる。このため、複数の通信装置と複数の測定装置とを同じ載置面に載置し、各通信装置によって、この複数の測定装置のいずれかとペアリングする作業を並行して行う状況であっても、例えば、通信装置で受信される電波強度を利用することで、各通信装置の上方に配置された測定装置だけを、その通信装置のペアリング相手として特定できる。これにより、複数の測定装置で測定された情報を通信装置によって安全かつ効率的に収集して、臨床研究などに役立てることができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の技術によれば、装置と複数の測定装置が存在する空間であっても、意図した装置と測定装置とのペアでのペアリングを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、情報分析システム100の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す血圧計10の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す通信装置20の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す血圧計10の外観の一例と、測定装置の1つである活動量計の外観の一例とを模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す通信装置20の外観の一例を模式的に示す分解斜視図である。
【
図6】
図6は、上腕式血圧計10X、手首式血圧計10Y、活動量計10Z、及び通信装置20が載置面41に載置された状態を示す側面図である。
【
図7】
図7は、血圧計10として血圧計Aと血圧計Bが存在している場合に、血圧計Aと通信装置20とをペアリングする際の処理の手順を示すシーケンスチャートである。
【
図8】
図8は、通信装置20に搭載される通信アンテナ22Aの変形例を示す通信装置20の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(本開示の技術のシステムの概要)
本開示の技術のシステムは、ペアリングが可能な通信方式による通信を行う第1近距離無線通信部を含む測定装置と、ペアリングが可能な通信方式による通信を行う第2近距離無線通信部を含む通信装置と、を有するものである。通信装置は、載置面に載置された状態において、載置面に交差する方向に立設され且つ第2近距離無線通信部のアンテナを囲んで配置された電波遮蔽部を有し、載置面に直交する方向における電波遮蔽部の載置面側と反対側の端縁と載置面との距離は、載置面に載置された測定装置の前記方向における高さ以上となっている。このような構成により、通信装置の電波特性を、電波遮蔽部によって、載置面の上方へ指向性を持つものとすることができる。この電波遮蔽部の端縁から載置面までの距離が、当該載置面に載置された測定装置の高さ以上となっていることで、通信装置と測定装置が載置面において隣接配置されている状況では、通信装置で受信されるその測定装置の電波の強度を小さくすることができる。一方、通信装置の上方に測定装置が位置している状況では、通信装置で受信されるその測定装置の電波の強度を大きくすることができる。このため、複数の通信装置と複数の測定装置とを同じ載置面に載置し、各通信装置によって、この複数の測定装置のいずれかとペアリングする作業を並行して行う状況であっても、例えば、通信装置で受信される電波強度を利用することで、各通信装置の上方に配置された測定装置だけを、その通信装置のペアリング相手として特定できる。例えば、各通信装置の上に測定装置を載置して該測定装置とのペアリングを行い、そのペアリングが終了したら、別の測定装置を各通信装置の上に載置して該測定装置とのペアリングを行う、といった作業を繰り返し行うだけで、全ての測定装置と通信装置とのペアリングを効率的に行うことができる。これにより、複数の測定装置で測定された情報を通信装置によって安全かつ効率的に収集して、臨床研究などに役立てることができる。
【0025】
以下、システムの一実施形態である情報分析システム100について説明する。
【0026】
(システム構成)
図1は、情報分析システム100の概略構成を示す模式図である。情報分析システム100は、測定装置の一例である血圧計10と、通信装置20と、情報端末の一例であるパーソナルコンピュータ(PC)30と、を備え、血圧計10の測定データ等をPC30で分析するためのシステムである。
図1の例では、複数(一例として5つ)の血圧計10と、複数(一例として2つ)の通信装置20と、通信装置20の総数と同じ数のPC30と、により、情報分析システム100が構成されている。血圧計10は、非侵襲的に血圧情報を測定するものである。
【0027】
血圧計10と通信装置20は、近距離無線通信によって通信可能な構成となっている。近距離無線通信の方式は、ペアリング(通信の暗号化のための暗号化情報の共有)を行ってセキュアな通信を行うことが可能な方式であり、例えばBluetooth(登録商標)(以下、BLEと記載)を採用することができる。PC30と通信装置20は、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等のケーブルによって有線接続されており、通信可能に構成されている。PC30と通信装置20は、無線で接続される構成であってもよい。
【0028】
情報分析システム100は、例えば、臨床研究の際に利用される。臨床研究を行う研究者は、複数の協力者のそれぞれに血圧計10を貸与し、血圧情報の測定を各協力者で定期的に行ってもらう。一定期間経過後、研究者は、各協力者から血圧計10を回収し、回収した血圧計10に記憶されている測定データを、通信装置20を介して、PC30に取り込む作業を行う。PC30は、インターネットやイントラネット等のネットワークに接続されており、PC30に取り込まれた測定データは、例えば、不図示のサーバにアップロードされて管理される。なお、情報分析システム100において、PC30は必須ではない。例えば、通信装置20がサーバに測定データをアップロードする機能を有しているのであれば、通信装置20を直接ネットワークに接続する構成とすることも可能である。また、1つのPC30に対して1つの通信装置20が接続される構成であるが、1つのPC30に対して複数の通信装置20が接続される構成も可能である。また、通信装置20は複数としているが1つであってもよい。
【0029】
血圧計10の測定データをPC30に取り込むためには、その血圧計10といずれかの通信装置20との間でペアリングが必要となる。ペアリングする際の動作については後述する。
【0030】
(血圧計)
図2は、
図1に示す血圧計10の構成の一例を示すブロック図である。血圧計10は、プロセッサ11と、第1通信部12と、記憶部13と、操作部14と、表示部15と、センサ部16と、を備える。
【0031】
センサ部16は、血圧計10のカフ部分に配置される圧力センサを測定用センサとして備えており、この圧力センサにより、適正なカフ圧下でユーザの血管から脈波を検出する。血圧計10では、センサ部16が検出する脈波に基づいて、最高血圧と最低血圧と脈拍を含む血圧情報を算出可能である。
【0032】
第1通信部12は、近距離無線通信を行うための通信インタフェース(ここではBLEチップ)であり、通信アンテナと各種回路とを含む。
【0033】
記憶部13は、RAM(Random Access Memory)等のワークメモリの他、例えばフラッシュメモリ等の非一時的な記憶媒体を含んで構成される。この記憶媒体には、測定された血圧情報等の各種の情報が記憶される。
【0034】
操作部14は、ユーザからの入力を受け付けるボタン又はタッチパネル等の入力手段であり、ユーザから、電源のON/OFF、血圧情報の測定の開始、及び項目の選択等の各種操作を受け付ける。操作部14には、血圧情報の測定開始を指示するための測定開始ボタン14Aと、第1通信部12を作動させる(近距離無線通信を有効とする)ための通信ボタン14Bと、が含まれる。測定開始ボタン14Aと通信ボタン14Bは、ハードウエアのボタンであってもよいし、タッチパネルが搭載された表示部15に表示されるソフトウエアのボタンであってもよい。
【0035】
表示部15は、例えば有機EL(electro-luminescence)ディスプレイ又は液晶ディスプレイ等のディスプレイによって構成され、測定された血圧情報等を表示する。
【0036】
プロセッサ11は、血圧計10の各部を統括制御する。プロセッサ11は、操作部14に含まれる測定開始ボタン14Aの押圧を検出すると、測定開始の指示を受け付け、カフを加圧し、適切なカフ圧下で、センサ部16が検出した脈波に基づいて血圧情報を算出する。そして、プロセッサ11は、算出した血圧情報を表示部15に表示させる。プロセッサ11は、操作部14を介して行われたユーザの操作に応じた処理を実行するように、血圧計10の各構成要素を制御する。
【0037】
プロセッサ11は、操作部14に含まれる通信ボタン14Bの短時間の押圧を検出すると、第1通信部12を起動させる。ペアリングが済んでいる装置と通信の接続が確立している場合には、プロセッサ11は、記憶部13に記憶されている測定データを、第1通信部12からその装置に送信する制御を行う。プロセッサ11は、通信ボタン14Bが所定時間にわたって押圧され続ける操作(いわゆる長押し操作)を検出すると、血圧計10の動作モードをペアリングモードに遷移させる。ペアリングモードは、ペアリングを行う相手の装置を検出し、その装置との間でペアリングを行うモードである。
【0038】
図1では、測定装置の一例として血圧計10を例示しているが、血圧計10は、体重計、体組成計、脈拍計、心拍計、体温計、血糖計、パルスオキシメータ、又は活動量計等に置換可能である。これらのいずれの測定装置においても、センサ部16には、測定対象の物理量を測定するための各種の測定用センサ(圧力センサ、脈波センサ、血糖センサ、光電センサ、温度センサ、又は加速度センサ等)が含まれる。測定装置が生体情報測定装置である場合には、プロセッサ11は、操作部14に含まれる測定開始ボタン14Aの押圧を検出すると、センサ部16に含まれる測定用センサ(圧力センサ、脈波センサ、血糖センサ、光電センサ、又は温度センサ等)を作動させて、生体情報を測定する。測定装置が活動量測定装置である場合には、活動量測定装置が移動された場合に、センサ部16に含まれる測定用センサ(加速度センサ又は角速度センサ等)から、その移動に応じた情報の出力がなされる。
【0039】
(通信装置)
図3は、
図1に示す通信装置20の構成の一例を示すブロック図である。通信装置20は、プロセッサ21と、第2通信部22と、第3通信部23と、を備える。
【0040】
第2通信部22は、血圧計10と近距離無線通信を行うための通信インタフェースであり、通信アンテナ(後述の通信アンテナ22A)と各種回路とを含む。
【0041】
第3通信部23は、PC30と有線通信を行うための通信インタフェースである。
【0042】
プロセッサ21は、通信装置20の各部を統括制御する。プロセッサ21は、ソフトウエア(プログラム)を実行して各種機能を果たす汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等である。プロセッサ21は、1つのプロセッサで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGAや、CPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。プロセッサ21のハードウエア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0043】
(血圧計の外観構成)
図1に示す情報分析システム100にて利用される血圧計10は、被測定部位へのカフの巻き付け及び固定をユーザが行うタイプの血圧計であり、いわゆるアームインタイプの血圧計は除外される。
【0044】
図4は、
図1に示す血圧計10の外観の一例と、測定装置の1つである活動量計の外観の一例とを模式的に示す斜視図である。
図4には、血圧計10として、上腕式血圧計10Xと、手首式血圧計10Yと、が示されている。上腕式血圧計10Xは、表示部15、操作部14、及び不図示のプロセッサ11等を含む主体部17と、上腕に巻き付けて固定されるカフ19と、主体部17及びカフ19を連結するエアチューブ18と、を備える。以下では、表示部15に表示される情報を平坦な載置面の上方から確認できるように、該載置面に主体部17が載置された状態を、上腕式血圧計10Xの標準載置状態と定義する。
【0045】
手首式血圧計10Yは、表示部15、操作部14、及び不図示のプロセッサ11等を含む主体部17と、手首に巻き付けて固定されるカフ19と、を備える。以下では、表示部15に表示される情報を平坦な載置面の上方から確認できるように、該載置面に主体部17及びカフ19が載置された状態を、手首式血圧計10Yの標準載置状態と定義する。
【0046】
図4には、活動量計10Zが示されている。活動量計10Zは、血圧計10の主体部17に相当する部分のみを有し、外形は直方体形状となっている。以下では、表示部15に表示される情報を平坦な載置面の上方から確認できるように、該載置面に活動量計10Zが載置された状態を、活動量計10Zの標準載置状態と記載する。
【0047】
(通信装置の外観構成)
図5は、
図1に示す通信装置20の外観の一例を模式的に示す斜視図である。通信装置20は、直方体形状の主体部20Mと、主体部20Mに接続されたケーブル20Cと、を備え、主体部20Mを机40の表面である載置面41(平面)に載置して利用される。主体部20Mは直方体形状としているが、これに限定されるものではなく、その他の形状とすることもできる。例えば、主体部20Mは、円柱状であってもよい。
【0048】
主体部20Mは、載置面41に載置された状態において載置面41と対面する面(以下、底面と記載)とは反対側の面(以下、上面と記載)に凹部25を有する本体部24と、本体部24の凹部25を覆う平板状の蓋部26と、を備え、蓋部26が本体部24の上面に固着されている。
【0049】
本体部24には、
図3に示したプロセッサ21、第2通信部22、及び第3通信部23が含まれる。凹部25には、第2通信部22に含まれる通信アンテナ22Aが設けられている。通信アンテナ22Aは、ダイポールアンテナ、モノポールアンテナ、逆Fアンテナ、ループアンテナ、又は八木アンテナ等で構成されている。通信アンテナ22Aは、
図5に示すように本体部24が載置面41に載置された状態において、載置面41に垂直且つ載置面41から離れていく方向における電波強度が、該方向以外の方向における電波強度よりも大きくなる(すなわち、載置面41の上方へ指向性を持つ)ように構成されることが好ましい。
【0050】
凹部25には、載置面41に交差する(
図5の例では直交する)方向に立設され且つ通信アンテナ22Aを囲んで配置された電波遮蔽部25Aが設けられている。凹部25の底面には、矩形板状の電波遮蔽部25Bが設けられ、電波遮蔽部25Bの上に通信アンテナ22Aが配置されている。電波遮蔽部25Aは、電波遮蔽部25Bの周縁から垂直に立ち上がって構成された矩形枠状を成している。電波遮蔽部25Aと電波遮蔽部25Bは、それぞれ、通信アンテナ22Aから放射される電波を遮蔽可能な遮蔽部材により構成されている。遮蔽部材は、電波を吸収又は反射、或いは、吸収及び反射させる材料で構成される。
【0051】
図6は、上腕式血圧計10X、手首式血圧計10Y、活動量計10Z、及び通信装置20が載置面41に載置された状態を示す側面図である。図中の一点鎖線で示す範囲は、通信装置20の電波特性を模式的に示しており、図示のように、載置面41の上方に指向性を持つものとなっている。
【0052】
図6には、載置面41に垂直な方向における通信装置20の電波遮蔽部25Aの上端縁(載置面41側とは反対側の端縁)と載置面41との距離L1が示されている。また、
図6には、標準載置状態にある上腕式血圧計10Xの主体部17の高さL2(載置面41に垂直な方向において、主体部17における載置面41から最も離れた部分と載置面41との距離)と、標準載置状態にある手首式血圧計10Yの高さL3(載置面41に垂直な方向において載置面41から最も離れた部分と載置面41との距離)と、標準載置状態にある活動量計10Zの高さL4(載置面41に垂直な方向において載置面41から最も離れた部分と載置面41との距離)と、が示されている。高さL2、高さL3、及び高さL4の大小関係は、L2>L3>L4となっている。通信装置20における距離L1は、測定装置の中でも標準載置状態において最も高さを持つ上腕式血圧計10Xの高さL2以上となっている。高さL2、高さL3、及び高さL4のうち、最大となる高さL2は、最大でも300mm程度である。高さL2、高さL3、及び高さL4のうち、最小となる高さL4は、最大でも15mm程度である。したがって、情報分析システム100にて用いる測定装置として活動量計や血圧計を想定するのであれば、距離L1を15mm以上300mm以下の範囲とすればよい。
【0053】
上腕式血圧計10X、手首式血圧計10Y、及び活動量計10Zのそれぞれの第1通信部12のアンテナは無指向性となっている。距離L1が高さL2以上となっていることで、測定装置(上腕式血圧計10X、手首式血圧計10Y、又は活動量計10Z)が、載置面41において通信装置20の近傍に載置されていた場合でも、その測定装置から放射される電波のうち載置面41に沿う方向の成分が、電波遮蔽部25Bによって遮蔽される。このため、近傍に載置された測定装置から放射されて通信装置20で受信される電波の強度を弱めることができる。一方、測定装置を蓋部26の上に載置した状態では、測定装置から放射されて通信装置20で受信される電波の強度を高めることができる。
【0054】
(測定装置と通信装置のペアリング方法)
次に、血圧計10と通信装置20のペアリング方法について説明する。
図7は、血圧計10として血圧計Aと血圧計Bが存在している場合に、血圧計Aと特定の通信装置20とをペアリングする際の処理の手順を示すシーケンスチャートである。
【0055】
研究者が特定の通信装置20の電源を投入すると、その通信装置20のプロセッサ21は、第2通信部22によるスキャンを開始させる。スキャンとは、第2通信部22が受信状態になり、周りにいる機器の情報を取得することを言う。
【0056】
研究者は、載置面41に載置した血圧計Aと血圧計Bそれぞれの電源をONしたうえで、各血圧計の操作部14に含まれる通信ボタン14Bを長押しして、各血圧計をペアリングモードに移行させる(ステップS1、ステップS21)。その後、研究者は、血圧計Aを、上記特定の通信装置20の蓋部26の上に載置する。
【0057】
血圧計Aと血圧計Bのそれぞれのプロセッサ11は、ペアリングモードに移行すると、第1通信部12を起動して、第1通信部12によるアドバタイズを開始させる(ステップS2、ステップS22)。アドバタイズとは、各種情報を含むパケットをブロードキャストすることを言う。以下では、アドバタイズにより送信される信号のことをブロードキャスト信号と記載する。この各種情報には、血圧計10の識別情報(例えば、第1通信部12の固有アドレス情報等)が含まれる。情報分析システム100では、血圧計10の識別情報と、血圧計10と他装置との間の相互認証に必要な認証情報(例えば6桁の数字等)とが対応付けられて、ネットワークに接続されたサーバ等の記憶部に予め記憶されている。
【0058】
通信装置20のプロセッサ21は、血圧計Aから送信されてきたブロードキャスト信号と、血圧計Bから送信されてきたブロードキャスト信号を受信する(ステップS12)と、血圧計Aと血圧計Bのうち、ブロードキャスト信号の電波強度が閾値以上となる装置を接続相手として決定する(ステップS13)。ここでは、血圧計Aが通信装置20の上に載置されているため、血圧計Aのブロードキャスト信号の電波強度が閾値以上となり、血圧計Bのブロードキャスト信号の電波強度は閾値未満となる。したがって、血圧計Aが接続先として決定される。なお、ステップS13では、ブロードキャスト信号の電波強度が閾値以上且つ最大となる装置を接続相手として決定することが好ましい。
【0059】
次に、通信装置20のプロセッサ21は、血圧計Aとの通信接続を確立する(ステップS14)。そして、プロセッサ21は、PC30を介して、サーバにアクセスし、ステップS12で血圧計Aから受信したブロードキャスト信号に含まれる識別情報に対応する認証情報を検索する。そして、この認証情報がサーバに存在していた場合には、この認証情報をサーバから取得し(ステップS15)、取得した認証情報を利用して、血圧計Aとの間での相互認証を完了する。そして、プロセッサ21は、血圧計Aとの間で、近距離無線通信で暗号通信を行うための暗号化情報の共有を行う(ステップS16)。暗号化情報の共有とは、血圧計Aのプロセッサ11が暗号化情報を生成し、その暗号化情報を記憶部13に記憶すると共に通信装置20に送信し、通信装置20のプロセッサ21がその暗号化情報を記憶することをいう。なお、プロセッサ21が暗号化情報を生成し、その暗号化情報を記憶すると共に血圧計Aに送信し、血圧計Aがその暗号化情報を記憶部13に記憶することで、暗号化情報の共有がなされてもよい。
【0060】
プロセッサ21は、その後、血圧計Aとの通信接続を切断する(ステップS17)。以降は、通信装置20と血圧計Aの間で、暗号化情報を用いたセキュアな通信が可能となる。次に、研究者は、血圧計Aを載置面41に載置し、代わりに、血圧計Bを上記特定の通信装置20の上に載置する。これにより、この通信装置20と血圧計Bとの間でステップS14からステップS17の処理が行われる。
【0061】
このように、研究者は、通信装置20の上に、ペアリングさせたい血圧計10を載置するだけで、その血圧計10とその通信装置20のペアリングを容易に完了することができる。通信装置20の上に血圧計Aが載置され、載置面41に血圧計Bが載置されている状況であっても、電波遮蔽部25Aの効果により、通信装置20が血圧計Bを接続先として決定することは防がれる。通信装置20の上に載せた血圧計10のみがその通信装置20とペアリング可能になることで、多数の血圧計10の各々と通信装置20とをペアリングする作業を効率よく行うことができる。
【0062】
なお、
図1に示すように、通信装置20が複数ある場合には、1つの通信装置20にペアリングモード中の血圧計Aが載置され、もう1つの通信装置20にアリングモード中の血圧計Bが載置される状況が生じ得る。この場合でも、通信装置20同士がある程度離れて配置されていれば、血圧計Aの載置された通信装置20において、血圧計Bの電波強度が閾値以上となるのを防ぐことが可能である。
【0063】
図8は、通信装置20に搭載される通信アンテナ22Aの変形例を示す通信装置20の断面模式図である。
図8に示す通信アンテナ22Aは、電波遮蔽部25Bの上に、漏洩同軸ケーブルを環状に配置した構成となっている。漏洩同軸ケーブルは、その軸回りの近傍範囲にのみ電波を放射する。このため、
図8の一点鎖線で示したように、通信アンテナ22Aの電波の放射範囲を例えば凹部25の内部とその近傍に制限できる。この結果、通信装置20の上に載置された測定装置以外の測定装置からの電波の受信強度を大幅に下げることができる。したがって、通信装置20のペアリング相手を、その通信装置20上に載置された測定装置に容易に限定でき、ペアリングの作業を効率よく行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
10 血圧計
10X 上腕式血圧計
10Y 手首式血圧計
10Z 活動量計
11 プロセッサ
12 第1通信部
13 記憶部
14 操作部
14A 測定開始ボタン
14B 通信ボタン
15 表示部
16 センサ部
17,20M 主体部
18 エアチューブ
19 カフ
20 通信装置
20C ケーブル
21 プロセッサ
22 第2通信部
22A 通信アンテナ
23 第3通信部
24 本体部
25 凹部
25A,25B 電波遮蔽部
26 蓋部
30 パーソナルコンピュータ
40 机
41 載置面
100 情報分析システム
L1 距離
L2、L3、L4 高さ