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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175876
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/10 20180101AFI20241212BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20241212BHJP
   H04W 12/08 20210101ALI20241212BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20241212BHJP
   H04W 8/00 20090101ALI20241212BHJP
【FI】
H04W76/10
A61B5/00 D
H04W12/08
H04W84/10 110
H04W8/00 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093953
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 哲三
(72)【発明者】
【氏名】福田 泰士
【テーマコード(参考)】
4C117
5K067
【Fターム(参考)】
4C117XA01
4C117XB01
4C117XC19
4C117XD13
4C117XE13
4C117XE26
4C117XE37
4C117XE38
4C117XE62
4C117XH02
4C117XH12
4C117XQ07
5K067AA33
5K067EE25
(57)【要約】
【課題】意図した情報端末との間でペアリングを行うことのできる測定装置を提供する。
【解決手段】血圧計10は、ペアリングが可能な通信方式による通信を行う通信部12と、プロセッサ11と、プロセッサ11及び通信部12を収容する筐体17と、を備え、通信部12のアンテナ12Aは、第1方向への指向性が前記第1方向以外の第2方向への指向性よりも大きく且つ最大となっており、筐体17の外面における、アンテナ12Aから前記第1方向へ延びる仮想線との交点Pを含む側面17Cには、撮像によって第1情報を取得可能な情報表示部17Eが設けられ、プロセッサ11は、前記第1情報に基づく情報を含む信号を受信し且つ前記信号の受信強度が閾値以上の場合に、ペアリングに必要な処理を開始する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペアリングが可能な通信方式による通信を行う近距離無線通信部と、
プロセッサと、
前記プロセッサ及び前記近距離無線通信部を収容する筐体と、を備え、
前記近距離無線通信部のアンテナは、第1方向への指向性が前記第1方向以外の第2方向への指向性よりも大きく且つ最大となっており、
前記筐体の外面における、前記アンテナから前記第1方向へ延びる仮想線との交点を含む面には、撮像によって第1情報を取得可能な情報表示部が設けられ、
前記プロセッサは、前記第1情報に基づく情報を含む信号を受信し且つ前記信号の受信強度が閾値以上の場合に、ペアリングに必要な処理を開始する、測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記プロセッサは、前記信号を受信し且つ前記信号の受信強度が前記閾値以上の場合に、近距離無線通信による通信の接続確立に必要な情報を含むブロードキャスト信号の送信を開始し、当該ブロードキャスト信号に応答した情報端末と接続確立し、ペアリングを行う測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の測定装置であって、
前記プロセッサは、前記信号を受信し且つ前記信号の受信強度が前記閾値以上の場合に、前記アンテナの電波強度を、前記信号の受信より前のタイミングにおける電波強度よりも低下させる、測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の測定装置であって、
前記情報表示部は、前記第1情報を表示可能なディスプレイであり、
前記ディスプレイには測定結果が表示可能に構成される測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書に記載する測定装置は、体重、体組成、血圧、脈拍、心拍、体温、血糖、又は血中酸素飽和度等の生体情報を測定する生体情報測定装置と、歩数、歩行距離、又は消費カロリー等の活動量を測定する活動量測定装置と、を含む。測定装置には、測定対象量を測定するための測定用センサが含まれる。測定用センサの測定対象量には、測定装置に応じて、体重、体脂肪率、血圧値、脈拍数、心拍数、体温、血糖値、又は血中酸素飽和度等の生体情報や、歩数、走行距離、又は消費カロリー等の活動量が含まれる。こういった測定装置の測定結果を、スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン、及びデスクトップパソコン等の情報端末で記録及び分析することが行われている。
【0003】
このような測定結果の記録及び分析を行う場合には、測定結果を、情報端末に都度ユーザが入力するのではなく、測定装置から情報端末が自動的に測定結果を取得できるようになっていることが望ましい。具体的には、例えば、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を利用して、測定装置からの測定結果を情報端末に転送する方法等が考えられる。
【0004】
特許文献1には、生体情報を測定して無線で外部機器に送信可能なウエアラブル機器が記載されている。
【0005】
特許文献2には、超音波により外部の端末と通信する生体情報測定装置であって、測定情報を含む情報を外部の端末と通信する通信手段と、光を照射することにより、外部の端末の配置すべき場所に関する情報を可視化する投光手段と、を備える生体情報測定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許04665904号公報
【特許文献2】特開2020-156600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
測定装置と情報端末との間でセキュアな近距離無線通信を行うためには、測定装置と情報端末とをペアリングする処理が必要である。ペアリングは、近距離無線通信に用いる暗号化の情報を測定装置と情報端末の間で共有する処理を言う。ペアリングを行う場合、意図しない情報端末との間でペアリングがなされるのを防ぐ必要がある。
【0008】
本開示の技術は、意図した情報端末との間でペアリングを行うことが可能な測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の技術は以下に示すものである。なお、括弧内には、以降の実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0010】
(1)
ペアリングが可能な通信方式による通信を行う近距離無線通信部(通信部12)と、
プロセッサ(プロセッサ11)と、
上記プロセッサ及び上記近距離無線通信部を収容する筐体(筐体17)と、を備え、
上記近距離無線通信部のアンテナ(アンテナ12A)は、第1方向への指向性が上記第1方向以外の第2方向への指向性よりも大きく且つ最大となっており、
上記筐体の外面における、上記アンテナから上記第1方向へ延びる仮想線との交点(交点P)を含む面(側面17C)には、撮像によって第1情報を取得可能な情報表示部(情報表示部17E)が設けられ、
上記プロセッサは、上記第1情報に基づく情報を含む信号を受信し且つ上記信号の受信強度が閾値以上の場合に、ペアリングに必要な処理を開始する、測定装置(血圧計10)。
【0011】
(1)によれば、情報端末と測定装置の間でペアリングを行う際には、情報端末を用いて情報表示部を撮像して第1情報を取得し、その第1情報に基づく情報を含む信号を情報端末から測定装置に送信することで、アンテナの指向性が高い方向且つ測定装置と近い位置に情報端末が位置した状態で、その情報端末からの信号が測定装置で受信される。この結果、測定装置において、信号の受信強度は十分に大きくなるため、その信号の送信元の情報端末をペアリング相手として特定することができる。このように、測定装置の近くにあり且つ情報表示部から情報を取得可能な位置にある情報端末をペアリング相手として特定できるため、意図した情報端末との間でのペアリングを実現することができる。
【0012】
(2)
(1)に記載の測定装置であって、
上記プロセッサは、上記信号を受信し且つ上記信号の受信強度が上記閾値以上の場合に、近距離無線通信による通信の接続確立に必要な情報を含むブロードキャスト信号の送信を開始し(ステップS14)、そのブロードキャスト信号に応答した情報端末と接続確立し(ステップS20)、ペアリングを行う測定装置。
【0013】
(2)によれば、情報表示部を情報端末で撮像し、情報端末から信号を測定装置に送信するだけで、測定装置を、ブロードキャスト信号を送信する状態に移行させることができる。これにより、測定装置がブロードキャスト信号を常時送信する状態を避けることができ、測定装置の消費電力を低減できる。また、測定装置のユーザは、迷うことなく、測定装置と情報端末とのペアリングを行うことができる。
【0014】
(3)
(2)に記載の測定装置であって、
上記プロセッサは、上記信号を受信し且つ上記信号の受信強度が上記閾値以上の場合に、上記アンテナの電波強度を、上記信号の受信より前のタイミングにおける電波強度よりも低下させる、測定装置。
【0015】
(3)によれば、測定装置から多少離れた位置にあり、且つ仮想線上に位置している別の情報端末が存在していた場合に、その別の情報端末において、測定装置からの電波強度は弱くなるため、その別の情報端末と測定装置との間で接続確立がなされるのを防ぐことができる。これにより、測定装置の近くにある意図した情報端末との間でのペアリングを実現することができる。
【0016】
(4)
(1)から(3)のいずれかに記載の測定装置であって、
上記情報表示部は、上記第1情報を表示可能なディスプレイ(表示部15)であり、
上記ディスプレイには測定結果が表示可能に構成される測定装置。
【0017】
(4)によれば、測定結果を表示するディスプレイと情報表示部とを共用できるため、情報表示部を専用で追加する必要がなく、装置のコスト低減とデザイン性の向上を図ることができる。また、ディスプレイが作動する限り、情報表示部からの情報の読み取りを行うことができるため、情報の欠落を防ぐことができる。また、情報表示部を他人が容易に確認できなくなり、セキュリティを向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の技術によれば、意図した情報端末との間でペアリングを行うことが可能な測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、管理システム100の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、図1に示す血圧計10の外観構成例を示す模式図である。
図3図3は、通信部12の概略構成を示す図であり、筐体17を背面17A側から見た模式図である。
図4図4は、通信部12の概略構成を示す図であり、筐体17を上面17B側から見た模式図である。
図5図5は、情報表示部17Eが設けられた側面17C側から血圧計10の筐体17を見た図である。
図6図6は、血圧計10とスマートフォン20のペアリング方法を説明するためのシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(本開示の技術の測定装置の概要)
本開示の技術の測定装置は、ペアリングが可能な通信方式(例えばBluetooth(登録商標))による通信を行う近距離無線通信部と、プロセッサと、前記プロセッサ及び前記近距離無線通信部を収容する筐体と、を備え、前記近距離無線通信部のアンテナは、第1方向への指向性が前記第1方向以外の第2方向への指向性よりも大きく且つ最大となっており、前記筐体の外面における、前記アンテナから前記第1方向へ延びる仮想線との交点を含む領域には、撮像によって第1情報を取得可能な情報表示部が設けられ、前記プロセッサは、前記第1情報に基づく情報を含む信号を受信し且つ前記信号の受信電波強度が閾値以上の場合に、ペアリングに必要な処理を開始する、ものである。この構成によれば、情報端末と測定装置の間でペアリングを行う際には、情報端末を用いて情報表示部を撮像して第1情報を取得し、その第1情報に基づく情報を含む信号を情報端末から測定装置に送信することで、アンテナの指向性が高い方向且つ測定装置と近い位置に情報端末が位置した状態で、その情報端末からの信号が測定装置で受信される。この結果、測定装置において、信号の受信電波強度は十分に大きくなるため、その信号の送信元の情報端末をペアリング相手として特定することができる。このように、測定装置の近くにあり且つ情報表示部から情報を取得可能な位置にある情報端末をペアリング相手として特定できるため、意図した情報端末との間でのペアリングを実現することができる。
【0021】
以下、本形態の測定装置を含む管理システム100の構成例について説明する。
【0022】
(システム構成)
図1は、管理システム100の概略構成を示す模式図である。管理システム100は、測定装置の一例である血圧計10と、情報端末の一例であるスマートフォン20と、を備え、血圧計10の測定データやプログラム等をスマートフォン20で管理するためのシステムである。血圧計10とスマートフォン20は近距離無線通信によって通信可能な構成となっている。近距離無線通信の方式は、ペアリングが可能な方式を採用することができる。以下では、近距離無線通信の方式をBluetooth(登録商標)として説明する。血圧計10とスマートフォン20を共に所有する所有者のことを以下ではユーザと記載する。
【0023】
(測定装置)
血圧計10は、プロセッサ11と、通信部12と、記憶部13と、操作部14と、表示部15と、センサ部16と、を備える。
【0024】
センサ部16は、血圧計10のカフ部分に配置される圧力センサを測定用センサとして備えており、この圧力センサにより、適正なカフ圧下でユーザの血管から脈波を検出する。血圧計10では、センサ部16が検出する脈波に基づいて、最高血圧と最低血圧と脈拍を含む血圧情報を算出可能である。
【0025】
通信部12は、近距離無線通信を行うための通信インタフェースであり、通信用のアンテナと各種回路とを含む。
【0026】
記憶部13は、RAM(Random Access Memory)等のワークメモリの他、例えばフラッシュメモリ等の非一時的な記憶媒体を含んで構成される。この記憶媒体には、測定された血圧情報等の各種の情報が記憶される。
【0027】
操作部14は、ユーザからの入力を受け付けるボタン又はタッチパネル等の入力手段であり、ユーザから、電源のON/OFF、血圧情報の測定の開始、及び項目の選択等の各種操作を受け付ける。操作部14には、血圧情報の測定開始を指示するための測定開始ボタン14Aと、通信部12を作動させる(近距離無線通信を有効とする)ための通信ボタン14Bと、が含まれる。測定開始ボタン14Aと通信ボタン14Bは、ハードウエアのボタンであってもよいし、タッチパネルが搭載された表示部15に表示されるソフトウエアのボタンであってもよい。
【0028】
表示部15は、例えば有機EL(electro-luminescence)ディスプレイ又は液晶ディスプレイ等のディスプレイによって構成され、測定された血圧情報等を表示する。
【0029】
プロセッサ11は、血圧計10の各部を統括制御する。プロセッサ11は、ソフトウエア(プログラム)を実行して各種機能を果たす汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等である。プロセッサ11は、1つのプロセッサで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGAや、CPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。プロセッサ11のハードウエア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0030】
プロセッサ11は、操作部14に含まれる測定開始ボタン14Aの押圧を検出すると、測定開始の指示を受け付け、カフに空気を供給し、適切なカフ圧下で、センサ部16が検出した脈波に基づいて血圧情報を算出する。そして、プロセッサ11は、算出した血圧情報を表示部15に表示させる。プロセッサ11は、操作部14を介して行われたユーザの操作に応じた処理を実行するように、血圧計10の各構成要素を制御する。測定開始ボタン14Aを押圧する行為は、センサ部16の作動を開始させる操作を構成する。測定開始ボタン14Aは、所定時間にわたって押圧し続ける(いわゆる長押し操作を行う)のではなく、短時間で1度押圧する(いわゆる短押し操作を行う)だけで、測定開始の指示をプロセッサ11に入力可能である。
【0031】
プロセッサ11は、操作部14に含まれる通信ボタン14Bの押圧を検出すると、通信部12を起動させる。通信部12の起動に必要な通信ボタン14Bの押圧操作は、例えば短押し操作である。
【0032】
図1では、測定装置の一例として血圧計10を例示しているが、血圧計10は、体重計、体組成計、脈拍計、心拍計、体温計、血糖計、パルスオキシメータ、又は活動量計等に置換可能である。これらのいずれの測定装置においても、センサ部16には、測定対象の物理量を測定するための各種の測定用センサ(圧力センサ、脈波センサ、血糖センサ、光電センサ、温度センサ、又は加速度センサ等)が含まれる。測定装置が生体情報測定装置である場合には、プロセッサ11は、操作部14に含まれる測定開始ボタン14Aの押圧を検出すると、センサ部16に含まれる測定用センサ(圧力センサ、脈波センサ、血糖センサ、光電センサ、又は温度センサ等)を作動させて、生体情報を測定する。測定装置が活動量測定装置である場合には、プロセッサ11は、測定開始ボタン14Aの代わりに、装置の電源を投入するための電源ボタンが押圧された場合に、センサ部16に含まれる測定用センサ(加速度センサ又は角速度センサ等)を作動させて、活動量を測定する。
【0033】
(情報端末)
スマートフォン20は、プロセッサ21と、通信部22と、記憶部23と、操作部24と、表示部25と、撮像部26と、を備える。
【0034】
通信部22は、近距離無線通信を行うための通信インタフェースであり、通信用アンテナと各種回路とを含む。
【0035】
記憶部23は、RAM等のワークメモリの他、例えばフラッシュメモリ等の非一時的な記憶媒体を含んで構成される。この記憶媒体には、アプリケーションプログラム(情報端末の作動プログラム、後述する管理アプリ)を含む各種の情報が記憶される。
【0036】
操作部24は、ユーザからの入力を受け付けるボタン又はタッチパネル等の入力手段であり、ユーザからの各種操作を受け付ける。
【0037】
表示部25は、例えば有機ELディスプレイ又は液晶ディスプレイ等のディスプレイによって構成される。
【0038】
撮像部26は、撮像素子と画像処理部を含み、撮像素子によって被写体を撮像して撮像画像データを生成する。
【0039】
プロセッサ21は、スマートフォン20の各部を統括制御する。プロセッサ21は、プロセッサ11と同様に、1つ又は複数のプロセッサで構成される。プロセッサ21は、記憶部23に記憶された各種プログラムを実行することにより、これらプログラムに応じた処理を行う。
【0040】
図2は、図1に示す血圧計10の外観構成例を示す模式図である。血圧計10は、図1に示したプロセッサ11、通信部12、及び記憶部13を少なくとも収容する筐体17と、ユーザの測定部位(例えば上腕)に巻き付け可能なカフ19と、筐体17とカフ19を接続するエアチューブ18と、を備える。
【0041】
筐体17は、図2の例では5面体であり、血圧計10の使用時(血圧情報の測定時)には、机又は床等の載置面に載置される。筐体17の外面は、血圧計10の使用時において載置面と対面する底面17Dと、底面17Dと所定の角度をなす上面17Bと、底面17Dに対して略垂直な一対の側面17Cと、背面17Aとを有している。上面17Bには、表示部15と操作部14が設けられている。
【0042】
筐体17における一方の側面17Cには、撮像によって第1情報を読み取り可能な情報表示部17Eが設けられている。情報表示部17Eは、第1情報を表す数字、文字、又は記号等のテキスト、或いは、第1情報を表す一次元コード又は二次元コード等のコード画像等が、印刷又はシール等の貼付部材で貼付けされた領域である。第1情報は、血圧計10に固有の情報であり、例えば、通信部12のアドレス情報、又は、血圧計10の個体識別情報(製造番号等)等である。第1情報は、血圧計10毎にランダムに生成された数字、文字、又は記号等であってもよい。第1情報は、記憶部13にも記憶されている。
【0043】
管理システム100では、スマートフォン20の記憶部23に、血圧情報を管理するための管理アプリが事前にインストールされて記憶される。この管理アプリは、スマートフォン20の撮像部26によって情報表示部17Eを撮像して得られる撮像画像データを処理することで、撮像画像データにおける情報表示部17Eの部分に含まれるテキストを認識して第1情報を取得したり、撮像画像データにおける情報表示部17Eの部分のコード画像をデコードして第1情報を取得したりすることが可能となっている。
【0044】
図3は、通信部12の概略構成を示す図であり、筐体17を背面17A側から見た模式図である。図4は、通信部12の概略構成を示す図であり、筐体17を上面17B側から見た模式図である。図4において、表示部15及び操作部14は省略されている。通信部12は、平板状の基板12Bの表面に、アンテナ12Aが導線パターンとして形成された構成である。アンテナ12Aは、図の例では、八木アンテナパターンにより構成されている。
【0045】
通信部12の基板12Bの表面は、図3及び図4の例では、底面17Dに平行となっている。図3には、アンテナ12Aの給電部を通り且つ基板12Bの表面に垂直な仮想軸LZと、アンテナ12Aの給電部を通り且つ基板12Bの表面に平行な仮想軸LXと、アンテナ12Aの給電部を中心とする仮想円LC1とが示されている。図4には、仮想軸LX及び仮想軸LZに垂直且つアンテナ12Aの給電部を通る仮想軸LYと、アンテナ12Aの給電部を中心とする仮想円LC2とが示されている。アンテナ12Aの放射特性は、図3に示す仮想軸LX及び仮想軸LZを含む平面における放射パターンDB1と、図4に示す仮想軸LX及び仮想軸LYを含む平面における放射パターンDB2と、で表される。放射パターンDB1と放射パターンDB2は模式的に示している。仮想円LC1と仮想円LC2は、それぞれ、指向性(利得)が最大となる位置を示す。
【0046】
図3においては、アンテナ12Aの給電部と仮想円LC1上の1点とを結ぶ直線と、仮想軸LZの給電部よりも上側部分とのなす角度が、アンテナ12Aに対する方向として定義される。図4においては、アンテナ12Aの給電部と仮想円LC2上の1点とを結ぶ直線と、仮想軸LYの給電部よりも上側部分とのなす角度が、アンテナ12Aに対する方向として定義される。
【0047】
図3及び図4に示すように、アンテナ12Aは、90°の方向(第1方向)における指向性が、90°以外の方向(第2方向)における指向性よりも大きく、且つ、全ての方向において最大となっている。アンテナ12Aは、メインビーム幅が90°の方向とその近傍の方向(例えば、60°から120°の各角度の方向)における指向性が、これら方向以外の全ての方向における指向性よりも閾値以上大きく(例えば2倍以上)なっている。つまり、アンテナ12Aは、第1方向に強い指向性を持つものとなっている。
【0048】
図3及び図4に示すように、アンテナ12Aの給電部から90°の方向に延びる仮想線(図3における仮想軸LXの仮想軸LZよりも左側の部分、及び、図4に示す仮想軸LXの仮想軸LYよりも左側の部分に相当)を設定した場合に、この仮想線と側面17Cは交差している。
【0049】
図5は、情報表示部17Eが設けられた側面17C側から血圧計10の筐体17を見た図である。図5に示すように、側面17Cには上記仮想線との交点Pが存在する。この交点Pの近傍に情報表示部17Eが設けられている。図5に示すように、情報表示部17Eは、交点Pと重なっていることが好ましいが、交点Pに重なることは必須ではない。図5の例では、情報表示部17Eは、矩形状となっており、その中心が交点Pと一致している。
【0050】
(血圧計とスマートフォンのペアリング方法)
次に、血圧計10とスマートフォン20のペアリング方法について説明する。図6は、血圧計10とスマートフォン20のペアリング方法を説明するためのシーケンスチャートである。
【0051】
ユーザは、血圧計10の電源をオンし、スマートフォン20を操作して管理アプリを起動する。起動した血圧計10のプロセッサ11は、通信部12によるスキャンを開始させる(ステップS11)。スキャンとは、通信部12が受信状態になり、周りにいる機器の情報を取得することを言う。スマートフォン20のプロセッサ21は、管理アプリが起動すると、機器登録画面を表示部25に表示させる(ステップS1)。ステップS1において、スマートフォン20のプロセッサ21は、血圧計10の情報表示部17Eの撮像を行うことを指示する情報を機器登録画面に含めて、表示部25に表示させる。また、プロセッサ21は、ステップS1と並行して、通信部22によるスキャンを開始させる。
【0052】
ステップS1で表示される機器登録画面には、図6に示したように、例えば、「血圧計のコード画像を撮像してください」といったメッセージが表示される。このメッセージは、音声で出力されてもよい。ユーザは、このメッセージを確認すると、スマートフォン20の撮像部26を情報表示部17Eに近づけて、この情報表示部17Eを撮像する操作を行う。この操作に応じて、スマートフォン20のプロセッサ21は、撮像部26による撮像を実行し、撮像画像データ(図では“撮像画像”と記載)を取得する(ステップS2)。
【0053】
スマートフォン20のプロセッサ21は、取得した撮像画像データを処理して、この撮像画像データに含まれる情報表示部17Eの画像から、第1情報を取得する(ステップS3)。そして、スマートフォン20のプロセッサ21は、取得した第1情報に基づく第2情報を含むアドバタイズパケットを生成して、通信部22によるアドバタイズを開始させる(ステップS4)。ステップS4では、第2情報を含むアドバタイズパケットが定期的にブロードキャストされる。第2情報は、第1情報そのものとしてもよいし、第1情報が管理システム100にて管理される鍵で暗号化されているものである場合には、第1情報をこの鍵で復号化して得られる情報としてもよい。
【0054】
スマートフォン20のプロセッサ21は、ステップS2からステップS3の処理を行っている間は、表示部25に、撮像部26により撮像されている画像をライブビュー表示する制御を行う。スマートフォン20のプロセッサ21は、ステップS3の後は、ペアリングの進行状況を示す情報を表示部25に表示させる(ステップS5)。例えば、表示部25には、「血圧計とペアリング中です。スマホをそのままの位置に保持してお待ちください。」といったメッセージが表示される。
【0055】
血圧計10のプロセッサ11は、ステップS4の処理でスマートフォン20から送信されてきたブロードキャスト信号を受信すると、記憶部13に記憶されているものと同じ第1情報がこのブロードキャスト信号に含まれ、且つ、このブロードキャスト信号の受信強度が閾値以上である場合に、通信部12によるスキャンを停止し(ステップS12)、ペアリングモードに移行する(ステップS13)。ペアリングモードとは、近距離無線通信で暗号通信を行うための暗号化情報を情報端末と共有する処理を実行可能なモードである。血圧計10は、このペアリングモードにて作動中のときにのみ、情報端末とペアリングが可能となる。血圧計10のプロセッサ11は、受信したブロードキャスト信号に、記憶部13に記憶されているものと同じ情報が含まれていない場合、又は、受信強度が閾値未満の場合には、ペアリングモードに移行せずに、スキャンを継続する。
【0056】
なお、ステップS2からステップS4の処理が行われている状態では、スマートフォン20は、血圧計10の側面17Cとほぼ対向する位置にあり、更に、情報表示部17Eから第1情報を取得可能な程度に情報表示部17Eに近づいた位置にある。つまり、血圧計10の通信部12の指向性の強い範囲にスマートフォン20が位置することになる。したがって、通信部12のアンテナ12Aに指向性がある本形態であっても、情報表示部17Eをスマートフォン20で撮像し、その状態を保持することで、血圧計10に対して特別な操作を行うことなく、血圧計10をペアリングモードに移行させることが可能となる。
【0057】
なお、情報表示部17Eの中心は、アンテナ12Aからメインローブ3dBビーム幅(最大80度)で側面17Cに投影した投影面の範囲内となるように、情報表示部17Eが交点Pの近傍に配置されるようにすることで、通信部12の指向性の強い範囲にスマートフォン20をより精度よく誘導して、血圧計10をより確実にペアリングモードに移行させることが可能となる。また、情報表示部17Eのサイズ(3角形以上の多角形状とした場合の外接円の直径、又は、円形とした場合の直径)を1cm以上5cm以下とすることで、情報表示部17Eから第1情報を読み取る際の、情報表示部17Eとスマートフォン20との距離(換言すると、通信部12とスマートフォン20との距離)を十分に小さくできる。これにより、血圧計10の近くに存在するスマートフォン20によって、血圧計10をペアリングモードにより確実に移行させることが可能となる。
【0058】
血圧計10のプロセッサ11は、ペアリングモードに移行すると、通信部12によるアドバタイズを開始させる(ステップS14)。ステップS14では、近距離無線通信による通信接続の確立のために必要な情報(例えば血圧計10の個体識別情報等)を含むパケットが定期的にブロードキャストされる。この情報は、第1情報と共通化されていてもよい。
【0059】
スマートフォン20のプロセッサ21は、ステップS14の処理で血圧計10から送信されてきたブロードキャスト信号を取得すると、このブロードキャスト信号の受信強度が閾値以上である場合に、通信部22を介して、血圧計10に対する接続要求を行う。血圧計10のプロセッサ11が、通信部12を介してこの接続要求に応答すると、血圧計10とスマートフォン20との間で近距離無線通信による通信接続が確立される(ステップS20)。ここでは、血圧計10とスマートフォン20が近接した状態であるため、ステップS20において、これらの間での接続が確立される。
【0060】
なお、ステップS2からステップS5及びステップS12からステップS14の処理が行われている状態では、スマートフォン20が情報表示部17Eを撮像可能な位置にある。このため、血圧計10の通信部12の指向性の強い範囲にスマートフォン20が位置することになる。したがって、通信部12のアンテナ12Aに指向性がある本形態であっても、血圧計10とスマートフォン20との間での通信は安定して行うことが可能である。
【0061】
スマートフォン20と血圧計10との通信接続が確立されると、所定の方法によって、スマートフォン20と血圧計10の相互認証が行われ、相互認証が完了すると、スマートフォン20と血圧計10の間で、近距離無線通信で暗号通信を行うための暗号化情報(例えば暗号鍵等)の共有が行われる(ステップS21)。暗号化情報の共有とは、血圧計10のプロセッサ11が暗号化情報を生成し、その暗号化情報を記憶部13に記憶すると共にスマートフォン20に送信し、スマートフォン20がその暗号化情報を記憶部23に記憶することをいう。なお、スマートフォン20のプロセッサ21が暗号化情報を生成し、その暗号化情報を記憶部23に記憶すると共に血圧計10に送信し、血圧計10がその暗号化情報を記憶部13に記憶することで、暗号化情報の共有がなされてもよい。
【0062】
ステップS21の後、スマートフォン20のプロセッサ21は、例えば、ペアリングが完了したことを示すメッセージを表示部25に表示させる。スマートフォン20のプロセッサ21は、その後、血圧計10との通信接続を切断する。以降は、スマートフォン20と血圧計10の間で、暗号化情報を用いたセキュアな通信が可能となる。例えば、カフが腕又は手首に巻き付けられた状態で測定開始ボタン14Aが押圧されると、血圧情報が導出されて記憶部13に記憶される。そして、血圧計10のプロセッサ11は、通信部12を起動して、暗号化情報を共有済みのスマートフォン20との接続を確立し、血圧情報を暗号化してそのスマートフォン20に送信する。
【0063】
血圧計10のプロセッサ11は、ステップS13においてペアリングモードに移行するよりも前の状態では、通信部12の電波強度を第1強度とし、ペアリングモードに移行した後の状態では、通信部12の電波強度を第1強度よりも低い第2強度とすることが好ましい。このようにすると、血圧計10から多少離れた位置にあり、且つ上記仮想線上に位置している別の情報端末が存在していた場合に、その別の情報端末において、血圧計10からの電波強度は弱くなるため、その別の情報端末と血圧計10との間で接続確立がなされるのを防ぐことができる。これにより、血圧計10の近くにある意図したスマートフォン20との間でのペアリングを実現することができる。
【0064】
以上のように、血圧計10によれば、血圧計10の近くで情報表示部17Eを撮像可能なスマートフォン20だけが、血圧計10をペアリング可能な状態に移行させることができる。このため、血圧計10から離れた場所にある意図しない情報端末と血圧計10とがペアリングされるのを防ぐことができる。
【0065】
血圧計10において、情報表示部17Eは印刷領域又は貼付部材により構成されるものとしたが、これに限定されない。例えば、表示部15を情報表示部17Eとして機能させることも可能である。この場合、プロセッサ11は、表示部15の一部の範囲に第1情報(テキスト又はコード画像)を表示させる。そして、血圧計10では、通信部12のアンテナ12Aの上記仮想線が上面17Bにおける表示部15の上記範囲において交差するように配置される。このようにすることで、血圧計10の電源がオンされ、表示部15に表示されている第1情報がスマートフォン20で撮像されると、血圧計10がペアリングモードに移行し、血圧計10とスマートフォン20の間でペアリングが行われる。この構成によれば、表示部15が作動している限り、第1情報を表示できるため、第1情報の欠落を防ぐことができる。
【0066】
また、アンテナ12Aは、八木アンテナパターンにより構成される例を示したが、特定の方向に強い指向性を持つ放射パターンを持つものであればよく、その他のパターンを採用することもできる。
【符号の説明】
【0067】
10 血圧計
11,21 プロセッサ
12,22 通信部
12A アンテナ
12B 基板
13,23 記憶部
14,24 操作部
14A 測定開始ボタン
14B 通信ボタン
15,25 表示部
16 センサ部
17 筐体
17A 背面
17B 上面
17C 側面
17D 底面
17E 情報表示部
18 エアチューブ
19 カフ
20 スマートフォン
26 撮像部
100 管理システム
LC1,LC2 仮想円
DB1,DB2 放射パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6