(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175883
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】分散体組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/04 20060101AFI20241212BHJP
A61K 8/898 20060101ALI20241212BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20241212BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20241212BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20241212BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A61K8/04
A61K8/898
A61K8/36
A61K8/92
A61Q1/00
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093964
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100137512
【弁理士】
【氏名又は名称】奥原 康司
(72)【発明者】
【氏名】福原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】那須 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 克行
(72)【発明者】
【氏名】岡本 寛史
(72)【発明者】
【氏名】水野 翔太
(72)【発明者】
【氏名】小畑 ターシャ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB212
4C083AB242
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC251
4C083AC252
4C083AC261
4C083AC262
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC432
4C083AC622
4C083AC852
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD202
4C083AD212
4C083AD282
4C083AD662
4C083BB13
4C083BB23
4C083CC11
4C083CC19
4C083DD28
4C083DD30
4C083DD33
4C083DD39
4C083DD41
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】本発明は、粉体の分散性に優れる分散体組成物、および、べたつきがなく、使用感に優れた当該分散体組成物を含む化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明に係る分散体組成物は、(A)金属酸化物粉体、(B)アミノ変性シリコーン、(C)イソステアリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸および乳酸からなる群から選択される1種または2種以上のカルボン酸、および、(D)液状油分を含み、前記(B)成分に対する前記(C)成分の配合質量比[(C)/(B)]が0.01~0.7であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)金属酸化物粉体、
(B)アミノ変性シリコーン、
(C)イソステアリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸および乳酸からなる群から選択される1種または2種以上のカルボン酸、および
(D)液状油分、
を含有し、
前記(B)成分に対する前記(C)成分の配合質量比[(C)/(B)]が0.01~0.7である、分散体組成物。
【請求項2】
前記(A)成分に対する前記(B)成分の配合質量比[(B)/(A)]が0.01~0.4である、請求項1に記載の分散体組成物。
【請求項3】
前記(D)成分がシリコーン油を含む、請求項1に記載の分散体組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の分散体組成物を含む乳化組成物。
【請求項5】
水中油型乳化組成物である、請求項4に記載の乳化組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の分散体組成物を含む化粧料。
【請求項7】
前記(C)成分の配合量が、化粧料全量に対して0.01~0.8質量%である、請求項6に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の分散性に優れ、使用感が良好な分散体組成物および当該分散体組成物を含む化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線散乱剤や顔料等の粉体は、日焼け止め効果やメークアップ効果を持たせることを目的として化粧料に汎用される。粉体を含む化粧料は、あらかじめ油性成分に粉体を均一に分散させた組成物を得、その後水性成分等を含む化粧料基剤と混合することによって製造されることが多い。
【0003】
粉体を含む化粧料において、粉体の分散状態を良くし、経時安定性を向上する技術として、あらかじめ油性成分に粉体とともに各種分散剤を添加し、ビーズミル等の高い破砕力を有する媒体撹拌ミルで処理することによって分散体組成物を調製し、この分散体組成物を化粧料基剤と混合して製造することが提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、粉体はその母核の粒子径が小さくなるほど基剤と混合する際に凝集しやすいという問題が知られている。また、特許文献1において分散剤として用いられるアミノ変性シリコーンは粉体の分散性を向上する効果に優れるが、配合量が多くなるとべたつきが強くなる傾向があった。
よって、紫外線散乱剤等の粒子径が小さい粉体を均一に分散した分散体組成物を得るために、高濃度のアミノ変性シリコーンを用いるとべたつくなどの使用感が悪くなるという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、紫外線散乱剤等の粉体の分散性に優れる分散体組成物、および、べたつきがなく、使用感に優れた当該分散体組成物を含む化粧料を提供することを目的とする。
【0007】
発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、粉体を含む油性成分に、従来より分散剤として用いられるアミノ変性シリコーンと特定のカルボン酸とを併用して添加することにより、粉体の分散状態が良好な分散体組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(A)金属酸化物粉体、
(B)アミノ変性シリコーン、
(C)イソステアリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸および乳酸からなる群から選択される1種または2種以上のカルボン酸、および
(D)液状油分、
を含有し、
前記(B)成分に対する前記(C)成分の配合質量比[(C)/(B)]が0.01~0.7である、分散体組成物を提供する。
さらに、本発明は、前記分散体組成物を含む化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記構成とすることにより、粉体の分散性に優れ、使用感の良好な分散体組成物を得ることができる。本発明によれば、粉体の分散状態を向上するために必要とされるアミノ変性シリコーンの配合量を少なくすることが可能であるので、アミノ変性シリコーンに起因するべたつきを回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る分散体組成物は、(A)金属酸化物粉体、(B)アミノ変性シリコーン、(C)特定のカルボン酸、および(D)液状油分を含むことを特徴とする。以下、本発明の組成物を構成する各成分について詳述する。
【0011】
<(A)金属酸化物粉体>
本発明の(A)金属酸化物粉体(以下、単に「(A)成分」と称する場合がある)は、特に限定されるものではないが、紫外線散乱剤や顔料として化粧料に通常配合されるものから選択することができる。例として、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化鉄等が挙げられる。なかでも、本発明の(A)金属酸化物粉体としては、酸化チタン、酸化亜鉛等の紫外線散乱剤として用いられる粉体であることが好ましい。
【0012】
本発明における金属酸化物(酸化鉄を除く)の粒子の形状としては、特に限定されるものではなく、板状(薄片状、薄板状、鱗片状、葉片状、雲母状、箔状等を含む)、球状、柱状、塊状等が挙げられる。粒子径としては、特に限定されず、平均一次粒子径が2nm~5μm程度のものが挙げられる。
【0013】
通常粒子径が小さい粉体ほど均一な分散状態を維持するのが困難であるので、本発明においては粉体の平均一次粒子径が2nm~500nm、特に2nm~250nmの微粒子である場合に特に利点がある。本明細書において「平均一次粒子径」とは透過型電子顕微鏡(TEM)画像における一次粒子の投影面積円相当径を意味する。
【0014】
本発明の(A)金属酸化物粉体は、未処理のものであってもよいし、表面が疎水性であるものあるいは表面が疎水化処理されているものであってもよい。また、(A)金属酸化物粉体として、金属酸化物を基材としてシリカや水酸化アルミニウム等により被覆されたものを用いることもできる。
【0015】
(A)金属酸化物粉体を疎水化処理剤で疎水化する方法としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルポリシロキサン等のシリコーン化合物処理;パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルコール等によるフッ素化合物処理;N-アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理;トリエトキシカプリリルシラン等のシラン化合物処理;その他、レシチン処理;金属石鹸処理;脂肪酸処理;アルキルリン酸エステル処理等が挙げられる。なかでも、シリコーン化合物処理が好ましい。
【0016】
シリコーン化合物処理に用いられるシリコーン化合物としては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコンとも称する)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルセチルオキシシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルステアロキシシロキサン共重合体等の各種シリコーン油を挙げることができる。好ましくは、メチルハイドロジェンポリシロキサンやメチルポリシロキサンである。
【0017】
(A)金属酸化物粉体の配合量は、化粧料に紫外線防御効果やメーキャップ効果等の効果を付与するために必要とされる量である限りにおいて特に限定されない。例えば、本発明に係る分散体組成物全量に対する配合量の下限値として5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、11質量%、12質量%が挙げられ、上限値として60質量%、55質量%、50質量%が挙げられる。分散体組成物全量に対する配合量範囲として5~60質量%等が挙げられる。また、本発明に係る分散体組成物を含む化粧料を調製する場合には、化粧料全量に対する(A)成分の配合量は、下限値として5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%等が挙げられ、上限値として60質量%、55質量%、50質量%、45質量%、40質量%、35質量%等が挙げられる。化粧料全量に対する配合量範囲として5~60質量%等が挙げられる。
【0018】
<(B)アミノ変性シリコーン>
本発明の(B)アミノ変性シリコーン(以下、単に「(B)成分」と称する場合がある)は、粉体の分散剤として用いられているものであって、下記一般式(1)で示される官能基当量が1~20,000である側鎖型アミノ変性シリコーンである。
【化1】
上記一般式(1)において、Xは炭素数1~18のアルキル基、RおよびR’は炭素数1~6のアルキル基(アルキレン基)である。
(B)アミノ変性シリコーンの官能基当量は、1~20,000であり、1,000~15,000であることが好ましい。官能基当量が20,000を超えると、分散が不十分になることがある。
【0019】
本発明の(B)アミノ変性シリコーンとして市販品を使用することもでき、好ましい市販品としては、シリコーンKF8004(アモジメチコン)、シリコーンKF8005S(アミノエチルアミノプロピルジメチコン)、シリコーンKF867S(アモジメチコン)(いずれも信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0020】
(B)アミノ変性シリコーンの配合量は、本発明に係る分散体組成物ないしは当該分散体組成物を含む化粧料中に配合される前記(A)成分に対する配合質量比((B)/(A))が好ましくは0.01~0.4であり、より好ましくは0.05~0.3である。(B)成分の配合量が前記範囲を下回ると粉体の分散性が十分でない場合があり、前記範囲を超えて多くなるにつれべたつきが生じ、塗布時の使用感触が悪くなる場合がある。分散体組成物全量に対する配合量範囲として、例えば0.1~10質量%あるいは0.2~8質量%であることが好ましい。また、本発明に係る分散体組成物を含む化粧料を調製する場合には、化粧料全量に対する(B)成分の配合量は、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.2~8質量%である。
【0021】
<(C)特定のカルボン酸>
本発明の(C)カルボン酸(以下、単に「(C)成分」と称する場合がある)は、イソステアリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸および乳酸からなる群から選択される1種または2種以上のカルボン酸をいう。
【0022】
(C)成分の配合量は、本発明に係る分散体組成物ないしは当該分散体組成物を含む化粧料中に配合される前記(B)成分に対する配合質量比((C)/(B))が、0.01~0.7、好ましくは0.05~0.5である。(C)成分の配合量が前記範囲を下回ると分散状態が劣り、前記範囲を超えて多くなると、分散媒が過度に増粘・ゲル化されて使用感が悪くなる。
【0023】
本発明の(C)成分の配合量は、分散体組成物全量に対して0.1~6質量%であることが好ましく、0.2~4質量%であることがより好ましい。(C)成分の配合量が0.1質量%未満であると十分な分散性が得られない場合があり、6質量%を超えると使用感が劣る傾向がある。また、本発明に係る分散体組成物を含む化粧料を調製する場合には、化粧料全量に対する(C)成分の配合量は、例えば0.01~0.8質量%、さらには0.02~0.5質量%であることが好ましい。
【0024】
<(D)液状油分>
本発明の(D)液状油分(以下、単に「(D)成分」と称する場合がある)は、通常化粧料に配合される油分であり、室温(25℃)で液状であるものをいう。例えば、シリコーン油、炭化水素油、高級アルコール、エステル油、前記(C)成分以外の脂肪酸等が挙げられる。使用感を向上する観点から、シリコーン油を含むことが好ましい。
【0025】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン(ジメチコンとも称する)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサン、シクロテトラジメチルシロキサン、シクロペンタシロキサン、シクロペンタジメチルシロキサン等の直鎖状や環状のポリシロキサン等が挙げられる。
【0026】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、イソヘキサデカン、イソドデカン、ウンデカン、トリデカン、オゾケライト、スクワラン、スクワレン、プリスタン、パラフィン、イソパラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、水添ポリイソブテン、オレフィンオリゴマー等が挙げられる。
【0027】
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール;モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等が挙げられる。
【0028】
エステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリ-2-エチルヘキシル酸グリセリン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0029】
前記(C)成分以外の脂肪酸としては、例えば、リノール酸、リノレイン酸等が挙げられる。
【0030】
本発明の(D)液状油分として、前記油分から選択される1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)成分の配合量は、前記(A)~(C)成分の分散媒となる量であって特に限定されない。例えば、分散体組成物全量に対して25~80質量%、30~70質量%が挙げられる。
【0031】
本発明に係る分散体組成物は、化粧料に通常用いられる任意配合成分がさらに配合されて、油性化粧料または水中油型あるいは油中水型の乳化組成物として調製されうる。本発明に係る分散体組成物は、当該分散体組成物を内油相とした水中油型乳化組成物の調製に特に適する。
【0032】
上記任意配合成分として、各種油分、紫外線吸収剤、油性薬剤、香料、水性溶媒、界面活性剤、保湿剤、水溶性薬剤、前記(A)成分以外の粉体、色材、色素のほか、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤、キレート剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0033】
紫外線吸収剤としては、例えば、オクチルメトキシシンナメート、オクトクリレン、ジエチルアミノヒドロキシ安息香酸ヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン等を挙げることができる。
【0034】
水性溶媒としては、例えば、水(精製水、イオン交換水、水道水等)、低級アルコール、またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0035】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油誘導体、POEアルキルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類、PEG脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、POEグリセリン脂肪酸エステル類、およびイソステアリン酸PEGグリセリル類を挙げることができる。この他、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、セスキイソステアリン酸ソルビタン等を挙げることができる。ここで、POE、POPおよびPEGは、それぞれポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリエチレングリコールの略である。
【0036】
保湿剤としては、ポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテル、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、D-マンニット等が挙げられる。
【0037】
本発明に係る分散体組成物および当該分散体組成物を含む化粧料は、常法により製造することができる。例えば、分散媒となる本発明の(D)成分に、(A)~(C)成分を添加・混合し、混合液をホモジナイザー等の攪拌機やビーズミル等の攪拌粉砕機にて十分に分散することにより分散体組成物を得ることができる。本発明に係る分散体組成物を含む化粧料を調製する場合は、前記分散体組成物に他の油性成分を添加し、別途混合して得た水相成分と混合し、ホモミキサー等で乳化することにより乳化化粧料を得ることができる。
【0038】
本発明に係る化粧料の形態は特に限定されず、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、美容液等のスキンケア化粧料、日焼け止め化粧料、メーキャップ化粧料等、いずれの形態にも広く適用可能である。
【実施例0039】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、組成物全体に対する質量%で示す。各実施例について具体的に説明する前に、採用した評価方法について説明する。
【0040】
1.分散性
粉体の分散性の評価には、粘度減衰率を利用した。具体的には、調製した分散体組成物を、レオメーター(MCR302、アントンパール社製)を用いて、各組成物にかかるせん断速度を徐々に大きくしながら粘度を測定した。せん断速度10s-1のときの粘度η(10s-1)および、せん断速度1000s-1のときの粘度η(1000s-1)を記録し、以下の式より粘度減衰率を求めた。
粘度減衰率={η(10s-1)-η(1000s-1)}/η(1000s-1)
粘度減衰率の数値が小さいほど、せん断による粘度低下が生じない、すなわち粉体の凝集による構造粘度の発現がないことを示し、粉体の分散状態が良好であることが表される。
<評価基準>
A:粘度減衰率が3.0以下の数値であった。
B:粘度減衰率が3.0より大きく、5.0より小さい数値であった。
C:粘度減衰率が5.0以上かつ10.0より小さい数値であった。
D:粘度減衰率が10.0以上の数値であった。
E:組成物がゲル化・固化し、測定は不可能であった。
【0041】
2.使用感
調製した組成物を専門パネル10名が肌上に塗布し、塗布後の使用感(べたつきのなさ)について、以下の評価基準に従って評価した。
<評価基準>
A:パネル10名中8名以上がべたつきがないと回答した。
B:パネル10名中6名以上8名未満がべたつきがないと回答した。
C:パネル10名中4名以上6名未満がべたつきがないと回答した。
D:パネル10名中4名未満がべたつきがないと回答した。
【0042】
<実施例1~19および比較例1~13>
表に掲げる成分のうち分散媒である液状油分(シクロペンタシロキサン等)にその他の成分を添加・混合し、混合液に対し、卓上ホモジナイザーを用いて7000rpm・3分間の分散処理を行った。
得られた分散体組成物について、上記の評価方法および評価基準に基づいて評価を行った。評価結果を表に併せて示す。
【0043】
【0044】
【0045】
表1に示されるように、従来より分散剤として用いられているアミノ変性シリコーン(アモジメチコン)のみを、配合量を変えて添加した比較例1~3の組成物は、アミノ変性シリコーンの配合量を増やすことにより良好な分散性が得られたが、使用感にべたつきが生じた。また、(B)アミノ変性シリコーンを配合せず本発明の(C)特定のカルボン酸であるイソステアリン酸のみを含む比較例4~6の組成物では、粉体の分散状態が悪かった。
一方、表2に示されるように、本発明の(B)アミノ変性シリコーンと(C)特定のカルボン酸とを組み合わせて配合することにより、分散性に優れ、べたつきのない組成物が得られた。ただし、(C)特定のカルボン酸であるイソステアリン酸の配合量が、(B)アミノ変性シリコーンの配合量と同じ、すなわち((C)/(B))=1.0である比較例7においては、使用感の悪化が確認された。
【0046】
【0047】
表3では、本発明の(A)成分として、表面が未処理の粉体(酸化チタン、酸化亜鉛)または疎水化処理表面を有する粉体を用いた例を挙げる。
いずれの粉体を用いた場合でも分散性に優れ、べたつきのない組成物が得られた。
【0048】
【0049】
【0050】
表4に示されるように、本発明の(C)特定のカルボン酸を用いた実施例12~17および本発明の(D)液状油分としてシクロペンタシロキサン以外のシリコーン油または炭化水素油を用いた実施例18~19の組成物はいずれも、分散性に優れ、べたつきのない使用感が得られた。
一方、表5に示されるように、本発明の(C)成分を含まない比較例8、本発明の(C)成分以外のカルボン酸(クエン酸、リンゴ酸)を用いた比較例9~10の組成物では、分散性が悪かった。
表中のPEG-10ジメチコンは、粉体を含む乳化組成物において粉体分散性を向上させることを目的として、アミノ変性シリコーンとともに用いられる助剤(POE変性シロキサン)である(特開2009-209123)。本発明の(C)成分に代えてPEG-10ジメチコンを用いた比較例11の組成物では分散性が悪かった。
表中のジイソステアリン酸ポリグリセリル-2およびイソステアリン酸ソルビタンは、イソステアリン酸と同様に親油性の非イオン性界面活性剤であり、粉体の分散状態を向上する効果があることが知られている。本発明の(C)成分に代えてジイソステアリン酸ポリグリセリル-2またはイソステアリン酸ソルビタンを用いた比較例12~13の組成物では分散性が悪かった。
【0051】
以下に、本発明の分散体組成物を含む水中油型乳化化粧料の処方を例示する。本発明は以下の処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。なお、配合量は組成物または水中油型乳化化粧料それぞれの全量に対する質量%で表す。
【0052】
分散体組成物1の調製
成分 質量%
アモジメチコン 4.5
イソステアリン酸 0.5
ジメチコン 47.5
ジメチコン/シリカ処理微粒子酸化亜鉛(20nm) 47.5
ジメチコンにその他の成分を添加・混合し、卓上ホモジナイザーを用いて7000rpm・3分間の分散処理を行って分散体組成物1を調製した。
【0053】
処方例1:水中油型ジェルサンスクリーン
成分 質量%
1.分散体組成物1 21.1
2.ジメチコン 3
3.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 7
4.ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 2
5.エチルヘキシルトリアゾン 1
6.ネオペンタン酸イソデシル 2
7.PPG-17 1
8.トコフェロール 0.05
9.アルコール 5
10.ブチレングリコール 7
11.グリセリン 2.5
12.サクシノグリカン 0.15
13.(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)
クロスポリマー 0.25
14.ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.1
15.フェノキシエタノール 0.3
16.PEG-100水添ヒマシ油 1.5
17.トラネキサム酸 2
18.クエン酸/クエン酸Na 適量
19.水 残余
【0054】
上記1~8からなる油相成分と上記9~19からなる水相成分を常法により乳化・混合して水中油型ジェルサンスクリーンを得た。得られた水中油型ジェルサンスクリーンは、粉体の分散状態が良好であり、使用感に優れていた。