(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175885
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電力系統計画装置、電力系統計画方法および電力系統保護制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20241212BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241212BHJP
H02H 3/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J13/00 301A
H02H3/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093966
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】末永 晋也
(72)【発明者】
【氏名】船矢 祐介
(72)【発明者】
【氏名】金 成昊
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 大地
(72)【発明者】
【氏名】多田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】片山 茂樹
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5G142
【Fターム(参考)】
5G064BA12
5G064CA12
5G064CB06
5G064DA03
5G066AA03
5G066AA09
5G066AE03
5G066AE09
5G142AB05
(57)【要約】
【課題】電力系統の内外の変化に対応する、システムと電力の両面の信頼性を担保した保護プログラムの構築および適時での配備を可能とする。
【解決手段】電力系統計画装置であって、電力系統の状態の変化を検知し、検知した変化の影響を緩和するための代替保護制御モジュールを特定し、特定された代替保護制御モジュールを使用した場合の電力系統の信頼性を評価し、電力系統の信頼性を評価した結果に基づいて、特定された代替保護制御モジュールを使用するかを判定し、特定された代替保護制御モジュールを使用すると判定した場合、特定された代替保護制御モジュールを使用した制御を実行する指示を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統計画装置であって、
電力系統は、前記電力系統における電力潮流の状態を変更する複数の電気機器と、前記電力系統の状態を計測する複数の計測機器と、を有し、
前記電力系統には、電力系統保護制御装置が接続され、
前記電力系統計画装置は、処理部と、記録部と、を有し、
前記記録部は、
前記複数の電気機器の状態を含む機器状態データと、
前記複数の電気機器のパラメータ値を含む機器構成データと、
前記電力系統の状態の変化と、前記電力系統保護制御装置が実行することによって前記電力系統を制御するための保護制御モジュールのうち、前記変化の影響を受ける保護制御モジュールと、前記変化の影響を受ける保護制御モジュールを代替することによって前記変化の影響を緩和するための保護制御モジュールである代替保護制御モジュールと、を対応付ける変化検知データと、を保持し、
前記処理部は、
前記電力系統の状態の変化を検知し、
前記変化検知データに基づいて、前記検知した変化の影響を緩和するための前記代替保護制御モジュールを特定し、
前記機器状態データ及び前記機器構成データに基づいて、前記電力系統保護制御装置が前記特定された代替保護制御モジュールを使用した場合の前記電力系統の信頼性を評価し、
前記電力系統の信頼性を評価した結果に基づいて、前記特定された代替保護制御モジュールを使用するかを判定し、
前記特定された代替保護制御モジュールを使用すると判定した場合、前記電力系統保護制御装置に、前記特定された代替保護制御モジュールを使用した制御を実行する指示を出力することを特徴とする電力系統計画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力系統計画装置であって、
前記処理部は、前記特定された代替保護制御モジュールを使用した場合の前記電力系統の信頼性を、前記電力系統の電気回路としての信頼性を評価するための電力モデルと、前記電気機器、前記計測機器及び前記電力系統保護制御装置を含めた情報システムの信頼性を評価するためのシステムモデルと、の両方に基づいて評価することを特徴とする電力系統計画装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力系統計画装置であって、
前記変化検知データは、前記電力系統の状態の変化のうち、前記電力系統の電気回路としての信頼性に影響を与える変化、及び、前記情報システムの信頼性に影響を与える変化のそれぞれについて、前記変化の影響を受ける保護制御モジュールと、前記代替保護制御モジュールと、を対応付ける情報を含み、
前記処理部は、前記変化検知データに基づいて、検知した前記電力系統の状態の変化に対応する前記代替保護制御モジュールを特定し、前記特定された代替保護制御モジュールを使用した場合の前記電力系統の信頼性を、前記電力モデル及び前記システムモデルの両方に基づいて評価することを特徴とする電力系統計画装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力系統計画装置であって、
前記処理部は、前記電力モデルに基づいて、前記特定された代替保護制御モジュールを適用した場合の前記電力系統の電気回路としての信頼性を評価する指標を計算することを特徴とする電力系統計画装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力系統計画装置であって、
前記処理部は、さらに、前記電力モデルに基づいて、前記特定された代替保護制御モジュールを使用した場合の前記電力系統の運用効率を評価する指標を計算し、
前記電力系統の信頼性及び前記電力系統の運用効率を評価した結果に基づいて、前記特定された代替保護制御モジュールを使用するかを判定することを特徴とする電力系統計画装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力系統計画装置であって、
前記電力系統の電気回路としての信頼性を評価する指標は、前記電力系統の1以上の計測点における電圧及び周波数の少なくとも一方を含み、
前記電力系統の運用効率を評価する指標は、前記電力系統における送電ロスを含むことを特徴とする電力系統計画装置。
【請求項7】
請求項3に記載の電力系統計画装置であって、
前記処理部は、前記システムモデルに基づいて、前記特定された代替保護制御モジュールを使用した場合の前記情報システムの信頼性を評価する指標を計算することを特徴とする電力系統計画装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電力系統計画装置であって、
前記情報システムの信頼性を評価する指標は、前記情報システムの処理遅延及び通信遅延の少なくとも一方を含むことを特徴とする電力系統計画装置。
【請求項9】
請求項3に記載の電力系統計画装置であって、
前記記録部は、電力系統における前記複数の計測機器による計測値及び予測される将来の計測値の少なくとも一方を含む状態計測データを保持し、
前記変化検知データは、前記複数の計測機器の少なくともいずれかによる計測値及び将来の計測値の少なくとも一方の変化と、前記変化の影響を受ける保護制御モジュールと、前記代替保護制御モジュールと、を対応付ける情報を含み、
前記処理部は、
前記状態計測データに基づいて、前記計測値及び将来の計測値の少なくとも一方の変化を、前記電力系統の状態の変化として検知することを特徴とする電力系統計画装置。
【請求項10】
請求項3に記載の電力系統計画装置であって、
前記処理部は、
前記機器状態データ及び前記機器構成データに基づいて、前記電力系統に事故が発生した場合に前記特定された代替保護制御モジュールを適用したときの前記電力系統の信頼性を評価することを特徴とする電力系統計画装置。
【請求項11】
請求項3に記載の電力系統計画装置であって、
前記変化検知データは、前記変化の影響を受ける一つの前記保護制御モジュールと、複数の前記代替保護制御モジュールと、を対応付ける情報を含み、
前記処理部は、前記複数の代替保護制御モジュールの各々を使用した場合の前記電力系統の信頼性を評価し、
前記電力系統の信頼性の評価の結果を所定の条件に基づいて比較することによって、使用する前記代替保護制御モジュールを特定することを特徴とする電力系統計画装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電力系統計画装置であって、
前記処理部は、前記電力系統の信頼性の評価結果に基づいて、使用した場合の前記電力系統の信頼性の評価が最も高い前記代替保護制御モジュールを、使用する代替保護制御モジュールとして特定することを特徴とする電力系統計画装置。
【請求項13】
電力系統計画装置が実行する電力系統計画方法であって、
電力系統は、前記電力系統における電力潮流の状態を変更する複数の電気機器と、前記電力系統の状態を計測する複数の計測機器と、を有し、
前記電力系統には、電力系統保護制御装置が接続され、
前記電力系統計画装置は、処理部と、記録部と、を有し、
前記記録部は、
前記複数の電気機器の状態を含む機器状態データと、
前記複数の電気機器のパラメータ値を含む機器構成データと、
前記電力系統の状態の変化と、前記電力系統保護制御装置が実行することによって前記電力系統を制御するための保護制御モジュールのうち、前記変化の影響を受ける保護制御モジュールと、前記変化の影響を受ける保護制御モジュールを代替することによって前記変化の影響を緩和するための保護制御モジュールである代替保護制御モジュールと、を対応付ける変化検知データと、を保持し、
前記電力系統計画方法は、
前記処理部が、前記電力系統の状態の変化を検知する手順と、
前記処理部が、前記変化検知データに基づいて、前記検知した変化の影響を緩和するための前記代替保護制御モジュールを特定する手順と、
前記処理部が、前記機器状態データ及び前記機器構成データに基づいて、前記電力系統保護制御装置が前記特定された代替保護制御モジュールを使用した場合の前記電力系統の信頼性を評価する手順と、
前記処理部が、前記電力系統の信頼性を評価した結果に基づいて、前記特定された代替保護制御モジュールを使用するかを判定する手順と、
前記処理部が、前記特定された代替保護制御モジュールを適用すると判定した場合、前記電力系統保護制御装置に、前記特定された代替保護制御モジュールを使用した制御を実行する指示を出力する手順と、を含むことを特徴とする電力系統計画方法。
【請求項14】
電力系統保護制御システムであって、
電力系統は、前記電力系統における電力潮流の状態を変更する複数の電気機器と、前記電力系統の状態を計測する複数の計測機器と、を有し、
前記電力系統保護制御システムは、電力系統計画装置と、電力系統保護制御装置と、を有し、
前記電力系統計画装置は、処理部と、記録部と、を有し、
前記記録部は、
前記複数の電気機器の状態を含む機器状態データと、
前記複数の電気機器のパラメータ値を含む機器構成データと、
前記電力系統の状態の変化と、前記電力系統保護制御装置が実行することによって前記電力系統を制御するための保護制御モジュールのうち、前記変化の影響を受ける保護制御モジュールと、前記変化の影響を受ける保護制御モジュールを代替することによって前記変化の影響を緩和するための保護制御モジュールである代替保護制御モジュールと、を対応付ける変化検知データと、を保持し、
前記処理部は、
前記電力系統の状態の変化を検知し、
前記変化検知データに基づいて、前記検知した変化の影響を緩和するための前記代替保護制御モジュールを特定し、
前記機器状態データ及び前記機器構成データに基づいて、前記電力系統保護制御装置が前記特定された代替保護制御モジュールを使用した場合の前記電力系統の信頼性を評価し、
前記電力系統の信頼性を評価した結果に基づいて、前記特定された代替保護制御モジュールを使用するかを判定し、
前記特定された代替保護制御モジュールを使用すると判定した場合、前記電力系統保護制御装置に、前記特定された代替保護制御モジュールを使用した制御を実行する指示を出力し、
前記電力系統保護制御装置は、前記特定された代替保護制御モジュールに基づいて前記電力系統を制御することを特徴とする電力系統保護制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力系統計画装置、電力系統計画方法および電力系統保護制御システムに関し、例えば電力系統に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発電設備、送電設備、変電設備、配電設備、需要家設備といった電力の生産から消費までを行う設備全体(以下、電力系統と適宜称する。)が知られている。電力系統において高品質な電力供給を維持するために、中央制御所などの広域での協調動作などを担う上位システムや、変電所等などの装置の監視制御を担う下位システムなどが連携して動作している。電力系統の運用者は、これらシステムを利用して、例えば事故が発生した場合でも電力品質の長期的、短期的な維持、および効率的な運用を実現している。
【0003】
変電所では、その設備群の状態監視や遮断器の開閉等の操作を行うと共に、電力系統の設備の故障や異常が発生した場合に、異常箇所を電力系統から切り離し、事故の波及を防止することで、電力の信頼性を維持する保護機能を提供している。設備の電流や電圧の過剰時に、対象設備を切り離す保護リレーなどがその例である。近年では、このような変電所設備のためのデータ伝送の国際規格(IEC61850)が整備されており、インテリジェント電子デバイス(IED)と呼ばれる規格対応設備により、ある程度柔軟なシステム構成が可能となっている。
【0004】
例えば、特開2013-164731(特許文献1)には、これら規格に基づく変電所自動化システムにおいて、IEDの新設時や回線増幅時の変化を自動で認識する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、IEDおよび特許文献1に記載の技術などによる変電所装置の変更の容易化が進められているとはいえ、電力系統の大きな状態変化に対して、適応的に処理内容を変更することは難しかった。従来は電力系統の長期間の動作実績をもとに、信頼性を維持するために必要な保護機能が動作するように、センサーや遮断器等の保護制御装置の設置、接続および動作設定などを行っており、気象状況に大きく左右される再生可能エネルギー電源の大量導入や、大規模災害の発生など、予測の難しい状況への対応が難しい場合があった。
【0007】
また、従来の保護リレーやIEDなどは、ある程度処理が固定化された組込み機器での実現が一般的であり、システム構築時に想定していない新規センサーの追加や更新、保護や制御の機能更新などへの対応が難しい場合があった。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたものであり、電力系統において、故障や更新などによるセンサー装置の変更、および、保護装置の処理の変更、再生可能エネルギー電源の追加や発電状況の変化などの多様な状況変化があった場合にも、電力およびシステム上の信頼性を確保しつつ、変電所等の保護や制御の装置・システムの適応的な更新を可能とする電力系統保護制御システムを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。例えば、本発明の一態様は、電力系統計画装置であって、電力系統は、前記電力系統における電力潮流の状態を変更する複数の電気機器と、前記電力系統の状態を計測する複数の計測機器と、を有し、前記電力系統には、電力系統保護制御装置が接続され、前記電力系統計画装置は、処理部と、記録部と、を有し、前記記録部は、前記複数の電気機器の状態を含む機器状態データと、前記複数の電気機器のパラメータ値を含む機器構成データと、前記電力系統の状態の変化と、前記電力系統保護制御装置が実行することによって前記電力系統を制御するための保護制御モジュールのうち、前記変化の影響を受ける保護制御モジュールと、前記変化の影響を受ける保護制御モジュールを代替することによって前記変化の影響を緩和するための保護制御モジュールである代替保護制御モジュールと、を対応付ける変化検知データと、を保持し、前記処理部は、前記電力系統の状態の変化を検知し、前記変化検知データに基づいて、前記検知した変化の影響を緩和するための前記代替保護制御モジュールを特定し、前記機器状態データ及び前記機器構成データに基づいて、前記電力系統保護制御装置が前記特定された代替保護制御モジュールを使用した場合の前記電力系統の信頼性を評価し、前記電力系統の信頼性を評価した結果に基づいて、前記特定された代替保護制御モジュールを使用するかを判定し、前記特定された代替保護制御モジュールを使用すると判定した場合、前記電力系統保護制御装置に、前記特定された代替保護制御モジュールを使用した制御を実行する指示を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、電力系統において、故障や更新などによるセンサー装置の変更や、保護装置の処理の変更、再生可能エネルギー電源の追加や発電状況の変化などの多様な状況変化があった場合にも、電力およびシステム上の信頼性を確保しつつ、変電所等の保護や制御の装置・システムを適応的に更新できる。
【0011】
前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例の電力系統保護制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施例の特定の計測ポイントにおける状態計測データの一例を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施例の電気機器の機器設定データの一例を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施例の電気機器の機器状態データの一例を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施例の電力系統の送電線を例とした機器構成データの一例を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施例のシステム構成データの一例を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施例の変化検知データの一例を示す説明図である。
【
図8】本発明の実施例の処理構成データの一例を示す説明図である。
【
図9】本発明の実施例の処理評価データの一例を示す説明図である。
【
図10】本発明の実施例において保護制御モジュールを電力系統状態の変化に応じて適応的に変更する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施例における変化検知表示画面の一例を示す説明図である。
【
図12】本発明の実施例における処理構成表示画面の一例を示す説明図である。
【
図13】本発明の実施例における処理評価表示画面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照して、本発明の一実施形態を詳述する。
【0014】
図1は、本発明の実施例の電力系統保護制御システムの構成を示すブロック図である。
【0015】
電力系統保護制御システム1は、電力系統計画装置2、電力系統保護制御装置5および電力系統電気装置6を備える。電力系統計画装置2と電力系統保護制御装置5とは第一の通信ネットワーク3を介して通信可能に接続され、電力系統保護制御装置5と電力系統電気装置6は第二の通信ネットワーク4を介して通信可能に接続される。
【0016】
電力系統計画装置2および電力系統保護制御装置5は、CPU(Central Processing Unit)、マイクロプロセッサ等のコントローラと、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置と、通信装置とを備えた、回路、プリント基板、サーバ、情報処理装置などである。
【0017】
電力系統計画装置2は、各種の処理を行う処理部10と、各種の情報を記録(記憶)する記録部20と、第一の通信ネットワーク3を介して通信を行う通信部31と、各種の情報を入力する入力部32と、各種の情報を出力する表示部33とを備える。
【0018】
電力系統保護制御装置5は、保護制御モジュールの構成を管理する管理部501と、第一の通信ネットワーク3を介して通信を行う通信部502と、保護制御の処理を行う保護制御モジュール50とを備える。電力系統保護制御装置5は、計測データの取得および処理、電気機器の操作および設定変更の具体的な処理の内容を保護制御モジュール50として一つ以上保持し、管理部501により、実際に処理を実行するモジュールを選択できる。電力系統保護制御装置5は、仮想マシンまたはコンテナといった公知の技術により保護制御モジュールを入替可能とするように実現できるが、その他の方法を用いて実現してもよい。
【0019】
保護制御モジュール50は、電力系統電気装置6への保護および制御動作の処理を実行するモジュール処理部551と、処理の内容を記録するモジュール記録部552と、第二の通信ネットワーク4を介して電力系統電気装置との通信を行うモジュール通信部553とを備える。モジュール処理部551からの指示で、モジュール通信部553に接続された第二の通信ネットワーク4を介して、計測機器601から計測データを取得し、モジュール記録部552に保存することができる。
【0020】
モジュール処理部551は、モジュール記録部552の計測データおよびその他の設定データを利用して電気機器602への操作内容を決定することができる。モジュール通信部553は、モジュール処理部551が決定した操作内容を含む操作データを、第二の通信ネットワーク4を介して電気機器602へ送信し、その設定を変更することができる。これは一例であり、保護制御モジュール50の処理は、通信部502を介した電力系統計画装置2への情報送信、計測機器601からの計測データの保持、電気機器602の操作、および、その他有用な処理を組合わせた、電力系統の保護制御を向上させる様々な処理であってもよい。
【0021】
処理部10、管理部501およびモジュール処理部551は、記憶装置に記憶された各種のプログラムに従ってコントローラが処理を行うソフトウェアによって実現されてもよいし、回路等のハードウェアによって実現されてもよい。また、これらは単一の装置で実現されるものに限られるものではなく、相互に通信可能に接続された複数の装置によって実現されてもよい。記録部20およびモジュール記録部552は、記憶装置によって実現される。通信部31、502およびモジュール通信部553は、通信装置によって実現される。入力部32は、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、タッチパネル、音声指示装置などであり、それらの少なくとも1つを含んで実現される。表示部33は、ディスプレイ装置、プリンタ、音声出力装置などであり、それらの少なくとも1つを含んで実現される。
【0022】
電力系統電気装置6は、発電装置を用いて発電を行う発電設備(例えば発電所)、発電設備が発生した電力を消費する需要家設備、発電設備から需要家設備までの電力を送る電力流通設備(送電設備、変電設備、配電設備等)、または、設備を保護し適切に制御するための保護制御設備(例えば保護リレー)などの電気機器602と、これらの設備の状態または周辺環境の状態を計測する計測機器601とを含む。
【0023】
発電装置は、火力発電、水力発電、原子力発電、地熱発電、太陽光発電、風力発電等を行う装置であるが、他にも様々な発電方法で発電を行う装置であってもよい。電力流通設備としては、架空送電線、地中送電線、変圧器、遮断器、開閉器、調相設備、母線を含むが、他にも送配電に関わる様々な設備が含まれてもよい。これらが統合されて電力系統を構成することとなる。
【0024】
計測機器601は、電力系統の特定の計測ポイントにおける状態を計測する複数の計測装置を示す。計測項目としては、電圧、位相、電力などの電力項目と、気温、風速、風向、降水量、日射量などの気象項目と、電気機器602の設定状態および動作状態の項目と、電力流通設備、発電装置等の電力潮流状態を変化させる機器の動作状態の項目とを含み、他にも様々な項目が計測項目となり得る。計測ポイントは、発電設備の母線、変電設備の母線、電力流通設備、需要家設備等を含み、1つの計測ポイントに対する計測装置は、単数であてもよいし、複数であってもよい。計測機器601が計測した値は、第二の通信ネットワーク4を介して、電力系統保護制御装置5に送信される。また、計測機器601が計測した値は、さらに第一の通信ネットワーク3を介して、電力系統計画装置2に送信されてもよい。このとき、計測機器601は、計測した値と共に、計測日時の情報を付加して送信してもよい。
【0025】
電力系統計画装置2の処理部10は、主処理部101、系統状態取得部102、変化検知部103、模擬環境生成部104、電力動作評価部105、システム動作評価部106、処理決定部107および処理適用部108を備える。
【0026】
系統状態取得部102は、定期的に(例えば5分間隔で)または主処理部101からの指示時(例えばユーザが所望する時間)に、計測機器601が送信した各種データを、通信部31を介して取得し、記録部20の系統状態データ201として計測日時と共に記録する。計測機器601からのデータは、第二の通信ネットワーク4から電力系統保護制御装置5を介し、第一の通信ネットワーク3を通じて取得してもよいし、
図1に図示されない他の通信ネットワークを通じて、電力系統保護制御装置5を介さずに取得してもよい。また、図示されないネットワークを通じて、図示されない外部の情報源より、計測値ではなく将来状態を予測した予測値を取得するようにしても良い。この場合計測日時は将来の日付となる。
【0027】
記録部20は、記憶装置によって実現される。本実施例の記録部20には、系統状態データ201、機器構成データ202、システム構成データ203、変化検知データ204、処理構成データ205および処理評価データ206が保持される。これらの詳細については後述する。
【0028】
系統状態データ201には、状態計測データ211、機器設定データ212、および機器状態データ213が含まれる。
【0029】
状態計測データ211には、計測機器601にて計測した情報が含まれる。状態計測データ211には、例えば、電気機器602に流れる有効電力、無効電力、電圧および位相などの電力情報、ならびに、気温および風速などの気象情報が含まれる。
【0030】
図2は、本発明の実施例の特定の計測ポイントにおける状態計測データ211の一例を示す説明図である。
【0031】
状態計測データ211は、例えば、通し番号D101、日時D102、気温D103、有効電力D104、および無効電力D105等の情報を含む。状態計測データ211には、特定の計測ポイントの値(計測値)が時系列で格納される。なお、D102からD105は、計測に係わる項目の一例であり、計測ポイントおよび計測対象に応じて適宜変更される。気温D103は気象情報の例であり、例えば風速など、その他の気象情報をさらに含んでもよい。
【0032】
機器設定データ212は、電気機器602の設定状態の情報が含まれる。
【0033】
図3は、本発明の実施例の電気機器602の機器設定データ212の一例を示す説明図である。
【0034】
機器設定データ212は、例えば、通し番号D201、計測日時D202、遮断器B1の開閉D203、遮断器B2の開閉D204、変圧器T1のタップ位置D205、および変圧器T2のタップ位置D206等の情報を含む。機器設定データ212には、電気機器602の設定を示す情報(設定値)が時系列で格納される。なお、遮断器B1の開閉D203から変圧器T2のタップ位置D206D206は、電気機器602の設定に係る項目の一例であり、機器設定データ212に含まれる情報として計測機器601から取得可能な項目の組合せを適宜に採用可能である。
【0035】
機器状態データ213には、電気機器602の電力流通設備および発電装置等の電力潮流状態を変化させる機器の動作状態を示す情報(動作状態情報)が含まれる。
【0036】
図4は、本発明の実施例の電気機器602の機器状態データ213の一例を示す説明図である。
【0037】
図4に示すように、機器状態データ213は、例えば、通し番号D301、計測日時D302、遮断器B1の動作状態D303、遮断器B2の動作状態D304、変圧器T1の動作状態D305、および変圧器T2の動作状態D306等の情報を含む。機器状態データ213には、電気機器602の動作状態情報が時系列で格納される。遮断器B1の動作状態D303から変圧器T2の動作状態D306には、遮断器、開閉器などの開閉装置の開閉状態、送電線の送電ステータス等、電気機器602に関する同様の項目が含まれてもよい。また、機器状態データ213の項目は、電力流通設備、発電装置等の電力潮流状態を変化させる機器の動作状態の項目、および、計測機器601から取得したその他の機器の動作状態の項目の組合せを含んでもよい。
【0038】
機器構成データ202は、記録部20に予め記録され、電力系統を構成する計測機器601および電気機器602の電気回路的な側面に係る情報を含む。
【0039】
図5は、本発明の実施例の電力系統の送電線を例とした機器構成データ202の一例を示す説明図である。
【0040】
機器構成データ202は、例えば、ID D401、名称D402、定格電圧D403、基準容量D404、線路長D405、抵抗D406、およびリアクタンスD407等の情報を含み、送電線ごとに格納される。機器構成データ202は、電力系統の電気回路的な解析に必要な情報が含まれ、電気機器602に関する電気的な特性、送電容量および電圧範囲などの運用上の条件、機器の相互の電気的な接続形態、ならびに、過負荷保護などの保護制御機能などが含まれる。また、電力系統のセンサーなどによる計測に関する情報が含まれ、計測機器601に関する計測対象や計測条件、機器の電気的な接続形態などの情報が含まれる。
【0041】
図5は、送電線の場合を取り上げて示しているが、他の電気機器および計測機器の場合には、異なる項目を設けてもよい。機器構成データ202に含まれる情報は、短時間では大きく変化しない項目である場合が多いが、機器の更新、事故、またはその他の突発的な状況の変化に応じて更新されうる。
【0042】
システム構成データ203は、記録部20に予め記録され、電力系統を構成する計測機器601および電気機器602の情報システム的な側面に係る情報を含む。
【0043】
図6は、本発明の実施例のシステム構成データ203の一例を示す説明図である。
【0044】
システム構成データ203は、例えば、ID D501、名称D502、出力データ種別D503、更新頻度D504、通信ネットワークD505、および通信方式D506の情報を含み、電力系統電気装置6を構成する機器ごとに格納される。
【0045】
システム構成データ203には、電力系統の情報システム的な解析に必要な情報として、計測機器601の情報システムとしての構成に関する情報、及び、電気機器602の情報システムとしての構成に関する情報が含まれる。前者の例として、計測機器601の計測項目や、通信データの種別、通信頻度、および通信接続先といった通信関連情報が挙げられる。後者の例として、電気機器602の処理項目や、通信データの種別、通信頻度、通信接続先といった通信関連情報が挙げられる。
【0046】
図6には、例として、電気的な計測機器601に関する情報を示しているが、他の種別の計測機器601または電気機器602の場合には、異なる項目を設けてもよい。含まれる情報は短時間では大きく変化しない項目である場合が多いが、機器の更新や事故、その他の突発的な状況の変化に応じて更新されうる。
【0047】
変化検知データ204は、記録部20に予め記録され、保護制御モジュール50の変更が必要な状況変化を検知するための情報を含む。
【0048】
図7は、本発明の実施例の変化検知データ204の一例を示す説明図である。
【0049】
変化検知データ204は、例えば、ID D601、検知対象D602、検知方法D603、機器構成変化の対象D604、項目D605、値D606、システム構成変更の対象D607、項目D608、値D609、影響処理構成D610、および代替処理構成D611を含み、検知する項目ごとに格納される。
【0050】
検知対象D602および検知方法D603によって指定された電力系統の状態の変化に応じて、機器構成上に発生する変化が機器構成変化の対象D604から値D606に示され、システム構成上に発生する変化がシステム構成変化の対象D607から値D609に示される。検知する項目としては、計測値の範囲、計測データの受信状況、機器の動作状況もしくは設定状況、または保護制御モジュールの実行状況など、様々な項目が想定される。さらに例えば、検知対象D602に計測器ではなく、過渡解析や潮流計算などを指定し、検知方法D603に信頼性や安定性の基準を指定することで、直接的な測定値の変化のみでなく、解析的な変化事象について指定しても良い。
【0051】
影響処理構成D610には、対象D604から値D609に示される構成変化が影響する可能性のある処理構成を実現する保護制御モジュール50の指定情報が含まれる。代替処理構成D611には、影響処理構成D610に示された保護制御モジュール50を代替できる可能性のある処理構成を実現する保護制御モジュール50の指定情報が含まれる。これらは一例であり、変化検知データ204は、上記と同様の目的を達成するための異なる項目を含んでもよい。
【0052】
ここで、
図7に示した変化検知データ204の具体例について説明する。
図7に示した変化検知データ204の1行目では、検知対象D602および検知方法D603がそれぞれ「M001」および「計測温度が30~40℃」であり、機器構成変化の対象D604、項目D605および値D606がそれぞれ「送電線A」、「送電容量」および「再計算」であり、システム構成変更の対象D607、項目D608および値D609がいずれも空欄であり、影響処理構成D610および代替処理構成D611がそれぞれ「Mo001」および「Mo101」である。
【0053】
ここで、「M001」は計測機器601の識別情報の例であり、「Mo001」および「Mo101」は保護制御モジュール50の識別情報の例である。以下の説明では、これらの識別情報によって識別される計測機器601および保護制御モジュール50を、計測機器「M001」、保護制御モジュール「Mo001」、保護制御モジュール「Mo101」のように記載する場合がある。他の識別情報が付されたものも同様である。
【0054】
この1行目の例は、計測機器「M001」が計測した温度が30℃から40℃の範囲内になるという変化が検知された場合(例えば、夏季の気温上昇などによって計測対象の温度が30℃から40℃の範囲に上昇した場合など)に、送電線Aの送電容量が変化することによって、保護制御モジュール「Mo001」を使用すると最適な保護をすることができず、電力系統に望ましくない事象(例えば、十分な余裕があるにも関わらず電力が遮断されたりするなど)が発生する可能性があること、および、その場合には、保護制御モジュール「Mo001」の代わりに保護制御モジュール「Mo101」を使用することで、より最適に近い制御を行い、望ましくない事象の発生を防げる可能性があることを示している。なお、値D606が「再計算」であることは、上記の温度の変化が検知された場合に、変化後の温度に依存した計算式で送電線Aの送電容量が再計算されることを示している。
【0055】
一方、
図7に示した変化検知データ204の2行目では、検知対象D602および検知方法D603がそれぞれ「M002」および「データ量が0」であり、機器構成変化の対象D604、項目D605および値D606がいずれも空欄であり、システム構成変更の対象D607、項目D608および値D609がそれぞれ「出力データ」、「更新頻度」および「計測値」であり、影響処理構成D610および代替処理構成D611がそれぞれ「Mo002」および「Mo102」である。
【0056】
この2行目の例は、計測機器「M002」から出力されるデータ量が0となるという変化が検知された場合(例えば、計測機器「M002」が故障して計測不能となった場合など)に、計測機器「M002」の出力データの更新頻度の計測値が変化することによって、保護制御モジュール「Mo002」を使用すると最適な制御をすることができず、電力系統に望ましくない事象が発生する可能性があること、および、その場合には、保護制御モジュール「Mo002」の代わりに保護制御モジュール「Mo102」を使用することで、より最適に近い制御を行い、望ましくない事象の発生を防げる可能性があることを示している。なお、値D609が「計測値」であることは、上記のデータ量の変化が検知された場合に、検知されたデータ量が変化後のデータ量として流用されることを示している。
【0057】
なお、
図7の例では、一つの影響処理構成D610に対応する代替処理構成D611として一つの保護制御モジュール50のIDが保持されているが、代替処理構成D611として複数の保護制御モジュール50のIDが保持されていてもよい。その場合、後述するように、所定の基準に基づいて複数の保護制御モジュール50のいずれかを実際に代替する保護制御モジュール50として選択してもよい。
【0058】
処理構成データ205は、記録部20に予め記録され、電力系統保護制御装置5で実行される保護制御モジュール50についての情報を含む。
【0059】
図8は、本発明の実施例の処理構成データ205の一例を示す説明図である。
【0060】
処理構成データ205は、例えば、ID D701、名称D702、実行状態D703、機器構成の処理D704、対象D705、設定値D706、システム構成の実行保護制御装置D708、通信ネットワークD709、入力データD710、およびモジュールデータを含み、保護制御モジュールごとに格納される。
【0061】
ID D701には、保護制御モジュール50を特定するための管理番号が含まれる。名称D702には、各保護制御モジュール50の処理概要および特徴を示す簡易表現が含まれる。実行状態D703には、当該保護制御モジュール50が電力系統保護制御装置5において実行されているかどうかの情報が含まれる。当該保護制御モジュール50が実行された場合の機器構成における設定情報は機器構成の処理D704から設定値D706に、システム構成における設定情報はシステム構成の実行保護制御装置D708から入力データD710に含まれる。
【0062】
例えば、保護制御モジュール「Mo001」は、機器構成の処理D704から設定値D706によって、電力回路の特定の送電線に対するOLR(過負荷保護リレー)の機能を提供することが分かり、情報システムとしては、モジュールが実行される電力系統保護制御装置としてIDがPc001のものが想定され、通信ネットワークとしてネットワークAが、入力データとして有力電力を利用することが分かる。
【0063】
保護制御モジュール「Mo101」は、保護制御モジュール「Mo001」を代替するモジュールである。
図8の例では、保護制御モジュール「Mo001」は実行中、保護制御モジュール「Mo101」は停止中である。
【0064】
一方、保護制御モジュール「Mo002」は、機器構成の処理D704から設定値D706によって、電力回路の特定の負荷に対するUFR(周波数低下リレー)の機能を提供することが分かり、情報システムとしては、モジュールが実行される電力系統保護制御装置としてIDがPc002のものが想定され、通信ネットワークとしてネットワークBが、入力データとして周波数を利用することが分かる。
【0065】
保護制御モジュール「Mo102」は、保護制御モジュール「Mo101」を代替するモジュールである。
図8の例では、保護制御モジュール「Mo101」は実行中、保護制御モジュール「Mo102」は停止中である。
【0066】
これらは一例であり、同様の目的を達成するために、項目の追加、変更または削除があってもよい。また、モジュールデータD711には、電力系統保護制御装置5で実行される保護制御モジュール50のバイナリデータが含まれる。
【0067】
処理評価データ206は、記録部20に予め記録され、変化検知により変更した処理構成の電気回路的およびシステム的な検証の結果の情報を含む。
【0068】
図9は、本発明の実施例の処理評価データ206の一例を示す説明図である。
【0069】
処理評価データ206は、例えば、通し番号D801、検知日時D802、変化検知ID D803、モジュールの変更前D804、変更後D805、電力評価の電圧範囲D806と周波数D807、システム評価の処理遅延D808および通信遅延D809を含み、変化検知により保護制御モジュールの変更が評価されるごとに格納される。
【0070】
検知日時D802には、変化を検知した日時が含まれる。変化検知ID D803には、変化検知のもととなった変化検知データのIDが含まれる。モジュールの変更前D804および変更後D805には、変化検知に伴うモジュールの変更に関して、変更前後の保護制御モジュール50のIDが含まれる。電力評価の電圧範囲D806および周波数D807、ならびに、システム評価の処理遅延D808および通信遅延D809には、後述のフローチャートによる、変更後の保護制御モジュール50を使用した場合の電気回路的な信頼性評価の結果と、システム的な信頼性評価の結果とがそれぞれ含まれる。これらは一例であり、同様の目的を達成するために、項目の追加、変更または削除があってもよい。
【0071】
図10は、本発明の実施例において保護制御モジュール50を電力系統状態の変化に応じて適応的に変更する処理の一例を示すフローチャートである。
【0072】
変化検知部103は、定期的に、またはユーザの指示を契機に、系統状態データ201を取得し(S101)、当該データが変化検知データ204に記載の条件を満たすかを判定する(S102)。当該データが変化検知データ204に記載の条件を満たしていない場合は処理を終了する(S102:N)。当該データが変化検知データ204に記載の条件を満たしている場合は(S102:Y)、模擬環境生成部104は、変化検知データ204を取得して、系統状態データ201のうち変化検知データ204に記載の条件を満たす構成変化(以下、これを検知変化とも記載する)の情報を抽出する(S103)。
【0073】
例えば、ステップS102において、計測機器「M001」が計測した温度が30℃から40℃の範囲内になることが検知された場合に、ステップS103において、送電線Aの送電容量を再計算することを示す情報が抽出される。あるいは、ステップS102において、計測機器「M002」が計測したデータ量が0になることが検知された場合に、ステップS103において、出力データの更新頻度として上記の計測値である0が流用されることを示す情報が抽出される。
【0074】
上記は電力系統の状態の変化の検知の例であり、本実施例の変化検知部103が変化検知データ204に基づいて行う検知は上記に限定されない。例えば、変化検知部103は、いずれかの計測機器601による現在までの計測値に基づいて、当該計測機器601又はその他の計測機器601の現在までの計測値に生じた変化を検知してもよい。あるいは、変化検知部103は、いずれかの計測機器601による現在までの計測値に基づいて、当該計測機器601又はその他の計測機器601の将来の計測値を予測し、将来の計測値に生じる変化を検知してもよい。あるいは、変化検知部103は、予測された将来の計測値を(例えば外部システム等から)取得できた場合に、その将来の計測値に基づいて、変化を検知してもよい。
【0075】
あるいは、変化検知部103は、計測機器601による計測値以外の情報に基づいて計測機器601による計測値の変化を検知してもよい。また、検知対象の変化は、電力系統の状態の変化であれば、計測機器601による計測値の変化以外の変化であってもよい。例えば、変化検知部103は、過渡解析または潮流計算などに基づいて、現在又は将来の解析的な変化事象を検知してもよい。上記のいずれの場合であっても、変化検知データ204は、検知対象において検知される電力系統の状態の変化と、その影響を受ける保護制御モジュール50と、それを代替することで変化の影響を軽減するための保護制御モジュール50(すなわち代替モジュール)と、を対応付ける情報を含む。
【0076】
次に、模擬環境生成部104は、処理構成データ205を取得して、検知変化に対応して現在使用している保護制御モジュール50を代替する保護制御モジュール50(以下、これを代替モジュールとも記載する)の情報を抽出する(S104)。次に、模擬環境生成部104は、抽出した代替モジュールの情報と、系統状態データ201、機器構成データ202およびシステム構成データ203とを統合して、検知された構成変化が発生している状況に代替モジュールを適用した場合の電気回路的な特性を模擬する電力模擬環境と、システム的な特性を模擬するシステム模擬環境と、を生成する(S105)。
【0077】
次に、電力動作評価部105およびシステム動作評価部106は、電力模擬環境およびシステム模擬環境において、模擬した特性から電力的な評価およびシステム的な評価を実施し、評価の結果を処理評価データ206へ保存する(S106)。
【0078】
次に、処理決定部107は、処理評価データ206を取得し、当該代替モジュールが適用可能条件を満たすかを判定する(S107)。当該代替モジュールが適用可能条件を満たしている場合は(S107:Y)、処理適用部108は、処理構成データ205から変更する代替モジュールのモジュールデータを取得し、当該モジュールへの代替を適用対象の電力系統保護制御装置5に対して指示する(S108)。当該代替モジュールが適用可能条件を満たしていない場合には(S107:N)、ステップS108は実行されず、モジュールは代替されない。
【0079】
なお、処理適用部108は、ステップS108において、保護制御モジュール50の代替の指示とともに、モジュールデータを保護制御装置5に送信し、保護制御装置5が受信した代替モジュールを使用した電力系統の制御を開始してもよい。あるいは、保護制御装置5が使用中の保護制御モジュール50のモジュールデータに加えてそれを代替する可能性がある1以上の保護制御モジュール50のモジュールデータも保持しておいてもよい。その場合、ステップS108において処理適用部108はモジュールの代替の指示とともに代替する保護制御モジュール50の識別情報を送信し、保護制御装置5は受信した識別情報に該当する保護制御モジュール50を使用した電力系統の制御を開始してもよい。
【0080】
模擬環境生成部104がステップS105において生成する電気回路的な特性を模擬する電力模擬環境は、例えば、機器構成データ202に記載の機器を統合して電気回路を生成し、系統状態データ201から発電量、負荷量、機器の設定状況および動作状況などを抽出して追加し、処理構成データ205の実行中モジュールの機器構成からその保護および制御動作を追加し、検知した変化検知データの機器構成変化と、代替モジュール機器構成とを適用することで生成できる。この際、代替によって停止されるモジュールの機器構成は削除される。これら電力モデルに対して、例えば潮流計算などで電気回路上の電力潮流の特性を模擬できる。さらに、過渡解析および事故状況の再現など、より高度な特性の模擬を行えるモデルを構築してもよい。
【0081】
模擬環境生成部104が、ステップS105において生成する情報システム的な特性を模擬するシステム模擬環境は、例えば、システム構成データ203に記載の機器を統合して、計測機器601、電気機器602および電力系統保護制御装置5が通信ネットワークを介して接続されたシステムモデルを生成し、系統状態データ201から機器の設定状況、動作状況などを抽出して追加し、処理構成データ205の実行中モジュールのシステム構成を追加し、変化検知データ204に基づいて検知したシステム構成変化と、検知したシステム構成変化に対応する代替モジュール機器構成とを適用することで生成できる。この際、代替によって停止されるモジュールの機器構成は削除される。
【0082】
電力系統内の変電所等に分散した複数のシステム環境が想定されるため、複数のシステム模擬環境が生成される。システムモデルは、仮想化技術を用いて、仮想ネットワークや仮想マシンを用いて構築してもよいが、評価の項目および精度に応じて、個別要素の通信量および演算量の総和といった形で、特性を模擬してもよい。
【0083】
電力動作評価部105は、ステップS106において、上記生成された電力モデルを利用して、潮流計算や過渡計算などを実施し、処理評価データ206の電力評価の項目に応じて各特性値を計算する。例えば、母線の電圧が規定範囲を逸脱していないかを評価するために、電力モデルの潮流状態を潮流計算により模擬し、特性値として各母線の電圧値を算出し、全母線の電圧が電圧範囲に収まっていれば評価をOKとする。
【0084】
これら評価の指標として、上記のように、事前に設定した条件を満たしている場合にOKと判断し、満たさない場合にNGと判断する、といった可否判断の指標を保存してもよい。あるいは、そのような可否判断の指標ではなく、例えば電圧が電圧範囲から逸脱する箇所の数といった定量的な指標を保存してもよい。後者に関して、例えば、検知変化に対応する代替処理構成D611が複数の保護制御モジュール50を含む場合に、電力動作評価部105がそれらの各々を評価して、それらのうち電圧の逸脱箇所の数が最も少ないものを代替する保護制御モジュール50として選択してもよい。また、さらに既存の保護制御モジュールについても同様に指標を計算し、その他の候補と比較する形としても良い。既存案が選択された場合、既存案が一番良い処理を行っているため、保護制御モジュール50の変更は発生しないと解釈できる。これらは一例であり、達成すべき信頼性の程度にあわせ、評価の項目の追加、変更または削除があってもよい。
【0085】
システム動作評価部106は、ステップS106において、上記生成されたシステムモデルを利用して、代替モジュールおよび接続機器を模擬的に動作させ、処理評価データ206のシステム評価の項目に応じて各特性値を計算する。例えば、代替モジュールにおける処理の計算時間が既定の遅延時間以内であるかを評価するために、代替モジュールの実行環境を電力系統保護制御装置上の演算能力に一致させ、計測データ入力から制御データ出力までの計算プロセスを模擬し、特性値としてプロセス完了までの時間を算出し、この時間が遅延時間以内に収まっていれば評価をOKとする。
【0086】
これら評価の指標として、上記のように、事前に設定した条件を満たしている場合にOKと判断し、満たさない場合にNGと判断する、といった可否判断の指標を保存してもよい。あるいは、そのような可否判断の指標ではなく、算出した特性値が所定の範囲から逸脱する箇所の数といった定量的な指標を保存してもよい。後者に関して、例えば、検知変化に対応する代替処理構成D611が複数の保護制御モジュール50を含む場合に、システム動作評価部106がそれらの各々を評価して、それらのうち算出した特性値の逸脱箇所の数が最も少ないものを代替する保護制御モジュール50として選択してもよい。また、さらに既存の保護制御モジュールについても同様に指標を計算し、その他の候補と比較する形としても良い。既存案が選択された場合、既存案が一番良い処理を行っているため、保護制御モジュール50の変更は発生しないと解釈できる。これらは一例であり、達成すべき信頼性の程度にあわせ、評価の項目の追加、変更または削除があってもよい。
【0087】
処理決定部107は、ステップS107において、ステップS106で生成された評価値を利用して代替モジュールが適用可能かを決定する。例えば、処理評価データ206の該当データについて、電力評価とシステム評価について全てOKであれば、その代替モジュールは適用可能と判定する。信頼性を維持できれば、全てがOKである必要はなく、各項目に評価値を利用したその他の組合せであってもよい。また、評価値が定量的である場合にも評価値ごとに基準および重みを設定し、それらを組み合わせた値により評価をしてもよい。
【0088】
処理適用部108は、ステップS108において、ステップS107で実行可能と判定されたモジュールのモジュールデータ(すなわち当該保護制御モジュール50のモジュールデータD711に該当するバイナリデータ)を、モジュールの実行先として指定されている電力系統保護制御装置5へ送信し、実行を指示することで、モジュールの変更を行う。
【0089】
電力系統保護制御装置5の管理部501は、上記モジュールデータとその実行指示を、第一の通信ネットワーク3から通信部502を介して受信すると、受信したモジュールデータを保護制御モジュール50として配置し、保護制御モジュールの実行を開始する。
【0090】
模擬環境生成部104は、ステップS104を処理する際に、変化検知データ204の一つの影響処理構成D610の指定に対して、複数の代替処理構成D611の指定がなされている場合には、それぞれに電力模擬環境およびシステム模擬環境を生成してもよい。この場合は、ステップS104からS106をそれぞれの代替処理構成について並列で(または順次)実行するとともに、ステップS107では定量的な評価値を採用し、並列で複数の構成を評価して、信頼性を担保できる構成のうち、より良い評価値を持つ処理構成を適用してもよい。
【0091】
模擬環境生成部104は、上記複数の代替モジュールの評価項目として信頼性のみでなく、送電ロスなどの運用効率なども追加することで、信頼性の担保しつつ、効率的な保護制御を適応的に選択することができる。
【0092】
模擬環境生成部104は、ステップS105を処理する際に、系統状態データ201として将来予測値を利用してもよい。この処理を行う場合には、系統状態取得部102は例えば公知の予測技術を用いて予測した将来時刻のデータも系統状態データ201に格納し、将来時刻の電力モデルおよびシステムモデルを生成する。また、将来状況として送電線の断線などの事故状況を反映した電力モデルおよびシステムモデルを生成してもよい。これら将来を想定した条件およびデータの異なる複数のモデルを生成し、ステップS105からS106をそれぞれのモデルについて並列で(又は順次)実行するとともに、ステップS107では複数のモデルに基づくすべての電力評価とシステム評価について全てOKであれば、その代替モジュールは適用可能と判定する。このようにすることで、発生可能性のある様々な状況に対しても信頼性を担保することが可能となる。
【0093】
図11は、本発明の実施例における変化検知表示画面の一例を示す説明図である。
【0094】
変化検知表示画面1100は、メニュー画面(図示省略)から呼び出され、変化検知データ204の内容を表示する。変化検知表示画面1100で表示される変化検知データ204の内容は、
図7で説明したものと同じであるため、詳細の説明は省略する。また、変化検知表示画面1100では、変化検知データ204の一部を表示しても、変化検知データ204に含まれないデータを併せて表示してもよい。変化検知表示画面1100は、変化検知データ204の一部をユーザが変更するための[変更]ボタン(図示省略)、および、画面を閉じて、呼出元のメニュー画面に戻るための[戻る]ボタン(図示省略)を含んでもよい。
【0095】
図12は、本発明の実施例における処理構成表示画面の一例を示す説明図である。
【0096】
処理構成表示画面1200は、メニュー画面から呼び出され、処理構成データ205の内容を表示する。処理構成表示画面1200で表示される処理構成データ205の内容は、
図8で説明したものと同じであるため、詳細の説明は省略する。また、処理構成表示画面1200では、処理構成データ205の一部を表示しても、処理構成データ205に含まれないデータを併せて表示してもよい。処理構成表示画面1200は、処理構成データ205の一部をユーザが変更するための[変更]ボタン(図示省略)、および、画面を閉じて、呼出元のメニュー画面に戻るための[戻る]ボタン(図示省略)を含んでもよい。
【0097】
図13は、本発明の実施例における処理評価表示画面の一例を示す説明図である。
【0098】
処理評価表示画面1300は、メニュー画面から呼び出され、処理評価データ206の内容を表示する。処理評価表示画面1300で表示される処理評価データ206の内容は、
図9で説明したものと同じであるため、詳細の説明は省略する。また、処理評価表示画面1300では、処理評価データ206の一部を表示しても、処理評価データ206に含まれないデータを併せて表示してもよい。
【0099】
以上の本発明の実施例によれば、電力系統において、故障または更新などによるセンサー装置の変更、保護装置の処理の変更、および、再生可能エネルギー電源の追加または発電状況の変化などの多様な状況変化があった場合にも、電力およびシステム上の信頼性を確保しつつ、変電所等の保護および制御のための装置・システムを適応的に更新できる。
【0100】
また、本発明の実施形態のシステムは次のように構成されてもよい。
【0101】
(1)電力系統計画装置(例えば電力系統計画装置2)であって、電力系統は、前記電力系統における電力潮流の状態を変更する複数の電気機器(例えば電気機器602)と、前記電力系統の状態を計測する複数の計測機器(例えば計測機器601)と、を有し、前記電力系統には、電力系統保護制御装置が接続され、前記電力系統計画装置は、処理部(例えば処理部10)と、記録部(例えば記録部20)と、を有し、前記記録部は、前記複数の電気機器の状態を含む機器状態データ(例えば機器設定データ212及び機器状態データ213の少なくとも一方)と、前記複数の電気機器のパラメータ値を含む機器構成データ(例えば機器構成データ202)と、前記電力系統の状態の変化と、前記電力系統保護制御装置が実行することによって前記電力系統を制御するための保護制御モジュールのうち、前記変化の影響を受ける保護制御モジュールと、前記変化の影響を受ける保護制御モジュールを代替することによって前記変化の影響を緩和するための保護制御モジュールである代替保護制御モジュールと、を対応付ける変化検知データ(例えば変化検知データ204)と、を保持し、前記処理部は、前記電力系統の状態の変化を検知し(例えばステップS102)、前記変化検知データに基づいて、前記検知した変化の影響を緩和するための前記代替保護制御モジュールを特定し(例えばステップS104)、前記機器状態データ及び前記機器構成データに基づいて、前記電力系統保護制御装置が前記特定された代替保護制御モジュールを使用した場合の前記電力系統の信頼性を評価し(例えばステップS105、S106)、前記電力系統の信頼性を評価した結果に基づいて、前記特定された代替保護制御モジュールを使用するかを判定し(例えばステップS107)、前記特定された代替保護制御モジュールを使用すると判定した場合、前記電力系統保護制御装置に、前記特定された代替保護制御モジュールを使用した制御を実行する指示を出力する(例えばステップS108)。
【0102】
これによって、電力系統において、故障や更新などによるセンサー装置の変更や、保護装置の処理の変更、再生可能エネルギー電源の追加や発電状況の変化などの多様な状況変化があった場合にも、電力系統の信頼性を確保しつつ、変電所等の保護や制御の装置・システムを適応的に更新できる。
【0103】
(2)上記(1)において、前記処理部は、前記特定された代替保護制御モジュールを使用した場合の前記電力系統の信頼性を、前記電力系統の電気回路としての信頼性を評価するための電力モデルと、前記電気機器、前記計測機器及び前記電力系統保護制御装置を含めた情報システムの信頼性を評価するためのシステムモデルと、の両方に基づいて評価する(例えばステップS105、S106)。
【0104】
これによって、電力およびシステム上の信頼性を確保しつつ、変電所等の保護や制御の装置・システムを適応的に更新できる。
【0105】
(3)上記(2)において、前記変化検知データは、前記電力系統の状態の変化のうち、前記電力系統の電気回路としての信頼性に影響を与える変化(例えば気温の変化)、及び、前記情報システムの信頼性に影響を与える変化(例えば出力データ量の変化)のそれぞれについて、前記変化の影響を受ける保護制御モジュールと、前記代替保護制御モジュールと、を対応付ける情報を含み、前記処理部は、前記変化検知データに基づいて、検知した前記電力系統の状態の変化に対応する前記代替保護制御モジュールを特定し、前記特定された代替保護制御モジュールを使用した場合の前記電力系統の信頼性を、前記電力モデル及び前記システムモデルの両方に基づいて評価する。
【0106】
これによって、電力およびシステム上の信頼性を確保しつつ、変電所等の保護や制御の装置・システムを適応的に更新できる。
【0107】
(4)上記(3)において、前記処理部は、前記電力モデルに基づいて、前記特定された代替保護制御モジュールを適用した場合の前記電力系統の電気回路としての信頼性を評価する指標を計算する。
【0108】
これによって、電力系統の電気回路としての信頼性を確保しつつ、変電所等の保護や制御の装置・システムを適応的に更新できる。
【0109】
(5)上記(4)において、前記処理部は、さらに、前記電力モデルに基づいて、前記特定された代替保護制御モジュールを使用した場合の前記電力系統の運用効率を評価する指標を計算し、前記電力系統の信頼性及び前記電力系統の運用効率を評価した結果に基づいて、前記特定された代替保護制御モジュールを使用するかを判定する。
【0110】
これによって、電力系統の電気回路としての信頼性を確保しつつ、運用効率も考慮して、変電所等の保護や制御の装置・システムを適応的に更新できる。
【0111】
(6)上記(5)において、前記電力系統の電気回路としての信頼性を評価する指標は、前記電力系統の1以上の計測点における電圧及び周波数の少なくとも一方を含み、前記電力系統の運用効率を評価する指標は、前記電力系統における送電ロスを含む。
【0112】
これによって、電力系統の電気回路としての信頼性を確保しつつ、運用効率も考慮して、変電所等の保護や制御の装置・システムを適応的に更新できる。
【0113】
(7)上記(3)において、前記処理部は、前記システムモデルに基づいて、前記特定された代替保護制御モジュールを使用した場合の、前記情報システムの信頼性を評価する指標を計算する。
【0114】
これによって、システム上の信頼性を確保しつつ、変電所等の保護や制御の装置・システムを適応的に更新できる。
【0115】
(8)上記(7)において、前記情報システムの信頼性を評価する指標は、前記情報システムの処理遅延及び通信遅延の少なくとも一方を含む。
【0116】
これによって、システム上の信頼性を確保しつつ、変電所等の保護や制御の装置・システムを適応的に更新できる。
【0117】
(9)上記(3)において、前記記録部は、電力系統における前記複数の計測機器による計測値及び予測される将来の計測値の少なくとも一方を含む状態計測データ(例えば状態計測データ211)を保持し、前記変化検知データは、前記複数の計測機器の少なくともいずれかによる計測値及び将来の計測値の少なくとも一方の変化と、前記変化の影響を受ける保護制御モジュールと、前記代替保護制御モジュールと、を対応付ける情報を含み、前記処理部は、前記状態計測データに基づいて、前記計測値及び将来の計測値の少なくとも一方の変化を、前記電力系統の状態の変化として検知する。
【0118】
これによって、将来に予測される状況変化があった場合にも、電力系統の信頼性を確保しつつ、変電所等の保護や制御の装置・システムを適応的に更新できる。
【0119】
(10)上記(3)において、前記処理部は、前記機器状態データ及び前記機器構成データに基づいて、前記電力系統に事故が発生した場合に前記特定された代替保護制御モジュールを使用したときの前記電力系統の信頼性を評価する。
【0120】
これによって、電力系統の信頼性を確保しつつ、事故が発生した場合にもその影響を受けにくくなるように、変電所等の保護や制御の装置・システムを適応的に更新できる。
【0121】
(11)上記(3)において、前記変化検知データは、前記変化の影響を受ける一つの前記保護制御モジュールと、複数の前記代替保護制御モジュールと、を対応付ける情報を含み、前記処理部は、前記複数の代替保護制御モジュールの各々を使用した場合の前記電力系統の信頼性を評価し、前記電力系統の信頼性の評価の結果を所定の条件に基づいて比較することによって、使用する前記代替保護制御モジュールを特定する。
【0122】
これによって、検知された変化により適した制御が行われるように、変電所等の保護や制御の装置・システムを適応的に更新できる。
【0123】
(12)上記(11)において、前記処理部は、前記電力系統の信頼性の評価結果に基づいて、使用した場合の前記電力系統の信頼性の評価が最も高い前記代替保護制御モジュールを、使用する代替保護制御モジュールとして特定する。
【0124】
これによって、検知された変化により適した制御が行われるように、変電所等の保護や制御の装置・システムを適応的に更新できる。
【0125】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0126】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によってハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによってソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等の記憶デバイス、または、ICカード、SDカード、DVD等の計算機読み取り可能な非一時的データ記憶媒体に格納することができる。
【0127】
また、制御線及び情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線及び情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1 電力系統保護制御システム
2 電力系統計画装置
3 第一の通信ネットワーク
4 第二の通信ネットワーク
5 電力系統保護制御装置
6 電力系統電気装置
10 処理部
20 記録部
31 通信部
32 入力部
33 表示部
50 保護制御モジュール