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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175895
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】判定装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/02 20060101AFI20241212BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B60W10/00 102
B60W10/06
B60W10/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093982
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】馬場 紫音
(72)【発明者】
【氏名】竹田 育弘
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241AA63
3D241AC01
3D241AC13
3D241AD02
3D241AD23
3D241AD50
3D241AE03
(57)【要約】
【課題】クラッチスイッチを設けることなく、クルーズコントロールの実行中にエンジン回転数の吹け上がりを防止する。
【解決手段】判定装置(40)はクルーズコントロール中にクラッチ(27)の切断を判定する。判定装置には、クランク回転速度及び駆動輪回転速度のいずれかを減速比で換算した上で、クランク回転速度及び駆動輪回転速度の相対値を算出する算出部(41)と、クランク回転の加速及び減速の切り替わりを示すクランクトルクの反転を判定する第1の判定部(43)と、クランク回転速度及び駆動輪回転速度の相対値からクラッチの切断を判定する第2の判定部(44)と、が設けられている。第2の判定部は、クランクトルクの非反転時には相対値が第1の閾値以上の場合にクラッチが切断されたと判定し、クランクトルクの反転時には相対値が第1の閾値よりも大きな第2の閾値以上の場合にクラッチが切断されたと判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク回転速度及び駆動輪回転速度が検出される車両にて、クルーズコントロール中にクラッチの切断を判定する判定装置であって、
クランク回転速度及び駆動輪回転速度のいずれか一方を減速比で換算した上で、クランク回転速度及び駆動輪回転速度の相対値を算出する算出部と、
クランク回転の加速及び減速の切り替わりを示すクランクトルクの反転を判定する第1の判定部と、
クランク回転速度及び駆動輪回転速度の相対値から前記クラッチの切断を判定する第2の判定部と、を備え、
前記第2の判定部は、クランクトルクの非反転時には相対値が第1の閾値以上の場合に前記クラッチが切断されたと判定し、クランクトルクの反転時には相対値が第1の閾値よりも大きな第2の閾値以上の場合に前記クラッチが切断されたと判定することを特徴とする判定装置。
【請求項2】
クランク回転速度及び駆動輪回転速度の相対値が回転速度差であることを特徴とする請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
クランク回転速度が駆動輪回転速度よりも大きい場合に、前記第1の判定部がクランクトルクの反転を判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の判定装置。
【請求項4】
クランク回転速度が駆動輪回転速度よりも小さい場合に、前記第2の判定部は前記クラッチが切断されたと判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の判定装置。
【請求項5】
クランク回転速度及び駆動輪回転速度が検出される車両にて、クルーズコントロール中にクラッチの切断を判定する制御装置のプログラムであって、
クランク回転速度及び駆動輪回転速度のいずれか一方を減速比で換算した上で、クランク回転速度及び駆動輪回転速度の相対値を算出するステップと、
クランク回転の加速及び減速の切り替わりを示すクランクトルクの反転を判定するステップと、
クランクトルクの非反転時には相対値が第1の閾値以上の場合に前記クラッチが切断されたと判定するステップと、
クランクトルクの反転時には相対値が第1の閾値よりも大きな第2の閾値以上の場合に前記クラッチが切断されたと判定するステップと、を前記制御装置に実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両走行時の運転を支援するために、予め設定された目標速度に走行速度を保つクルーズコントロールが知られている。クルーズコントロールの実行中にはスロットルバルブが電子制御によって自動的に調整されているが、クラッチが切断されるとスロットルバルブが開かれたままになってエンジン回転数が吹け上がる場合がある。このため、クラッチレバーにクラッチスイッチを設けて、クラッチスイッチによってクラッチの切断を検出するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。クラッチスイッチによってクラッチの切断が検出されるとクルーズコントロールが解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6649501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、クラッチレバーにクラッチスイッチを設ける構成では、クラッチスイッチを追加するためのスペースや周辺部品との位置調整が必要になる。また、部品点数が増えてコストも増加するという不具合がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、クラッチスイッチを設けることなく、クルーズコントロールの実行中にエンジン回転数の吹け上がりを防止することができる判定装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の判定装置は、クランク回転速度及び駆動輪回転速度が検出される車両にて、クルーズコントロール中にクラッチの切断を判定する判定装置であって、クランク回転速度及び駆動輪回転速度のいずれか一方を減速比で換算した上で、クランク回転速度及び駆動輪回転速度の相対値を算出する算出部と、クランク回転の加速及び減速の切り替わりを示すクランクトルクの反転を判定する第1の判定部と、クランク回転速度及び駆動輪回転速度の相対値から前記クラッチの切断を判定する第2の判定部と、を備え、前記第2の判定部は、クランクトルクの非反転時には相対値が第1の閾値以上の場合に前記クラッチが切断されたと判定し、クランクトルクの反転時には相対値が第1の閾値よりも大きな第2の閾値以上の場合に前記クラッチが切断されたと判定することで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の判定装置によれば、減速比を考慮した上でクランク回転速度と駆動輪回転速度のズレからクラッチの切断が判定される。クラッチの切断以外にもクランク回転の加減速の切り替わりでもクランク回転速度と駆動輪回転速度にズレが生じるため、クランク回転の加減速の切り替わりを示すクランクトルクの反転が判定される。クランクトルクの非反転時には閾値が厳しく設定されて、クランク回転速度と駆動輪回転速度のズレからクラッチが切断されたと素早く判定される。クランクトルクの反転時には閾値が緩く設定されて、クランク回転の加減速によるズレよりも、クランク回転速度と駆動輪回転速度のズレが大きくなったときにクラッチが切断されたと判定される。よって、クルーズコントロールの解除によってエンジン回転数の吹け上がりが抑えられると共に、クランク回転の加減速時にクラッチの切断と誤判定されることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。
図2】本実施例の鞍乗型車両の主要要素のブロック図である。
図3】本実施例のクラッチの切断の判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の車両ではクランク回転速度及び駆動輪回転速度が検出されている。この車両にはクルーズコントロール中にクラッチの切断を判定する判定装置が設けられている。判定装置では、算出部によってクランク回転速度及び駆動輪回転速度のいずれか一方が減速比で換算された上で、クランク回転速度及び駆動輪回転速度の相対値が算出される。これにより、減速比を考慮した上でクランク回転速度と駆動輪回転速度のズレが算出される。クラッチの切断以外にもクランク回転の加減速の切り替わりでもクランク回転速度と駆動輪回転速度にズレが生じるため、第1の判定部によってクランク回転の加減速の切り替わりを示すクランクトルクの反転が判定される。クランクトルクの非反転時には第2の判定部によって相対値が第1の閾値以上の場合にクラッチが切断されたと判定され、クランクトルクの反転時には相対値が第1の閾値よりも大きな第2の閾値以上の場合にクラッチが切断されたと判定される。すなわち、クランクトルクの非反転時には閾値が厳しく設定されて、クランク回転速度と駆動輪回転速度のズレからクラッチが切断されたと素早く判定される。クランクトルクの反転時には閾値が緩く設定されて、クランク回転の加減速によるズレよりも、クランク回転速度と駆動輪回転速度のズレが大きくなったときにクラッチが切断されたと判定される。よって、クルーズコントロールの解除によってエンジン回転数の吹け上がりが抑えられると共に、クランク回転の加減速時にクラッチの切断と誤判定されることが防止される。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例の判定装置が設けられた鞍乗型車両について説明する。図1は本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1は、車体フレーム10にエンジン25や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10はヘッドパイプ(不図示)から左右に分岐して後方に延びる一対のメインフレーム11と、ヘッドパイプから左右に分岐して下方に延びる一対のダウンフレーム(不図示)とを有している。一対のメインフレーム11は、エンジン25の上方を通ってエンジン25の後方に回り込むように湾曲している。一対のメインフレーム11によってエンジン25の上側及び後側が懸架され、一対のダウンフレームによってエンジン25の前側が懸架されている。
【0012】
メインフレーム11の前側部分のタンクレール12には燃料タンク14が被せられており、メインフレーム11の後側部分のボディフレーム13にはスイングアーム15が揺動可能に支持されている。ボディフレーム13の上部から後方にシートレール16が延びており、シートレール16には燃料タンク14の後方のシート17が支持されている。ヘッドパイプにはステアリングシャフト(不図示)を介してフロントフォーク18が操舵可能に支持されている。フロントフォーク18の上部にはハンドル19が設けられ、フロントフォーク18の下部には前輪21が回転可能に支持されている。
【0013】
スイングアーム15はボディフレーム13から後方に向かって延びており、スイングアーム15の後端には後輪22が回転可能に支持されている。後輪22にはチェーンドライブ式の変速機構26(図2参照)を介してエンジン25が連結されており、変速機構26を介してエンジン25からの動力が後輪22に伝達されている。スイングアーム15、リアサスペンション23、ボディフレーム13がリンク機構を介して連結されている。スイングアーム15の揺動に伴ってリアサスペンション23が伸縮することで、路面の凹凸が吸収されて振動が抑えられると共に路面と後輪22の接地性が高められている。
【0014】
本実施例の鞍乗型車両1は、スロットルバルブの制御によって走行速度を一定に保つクルーズコントロールが実行可能に構成されている。クルーズコントロールの実行中にクラッチが切断されると、スロットルバルブが開かれた状態に制御されるのでエンジン回転数が吹け上がる場合がある。クラッチが切断されると、走行速度が一定に保てなくなるためクルーズコントロールが解除されるが、クラッチの切断の検出用にスイッチを設けるとコストが増加する。このため、減速比を考慮した上でクランク回転速度と駆動輪回転速度のズレからクラッチの切断を検出することが望ましい。
【0015】
しかしながら、エンジン25のクランクから後輪22までの動力伝達経路には、ギアのバッククラッシュ等の隙間やチェーンの弛み等が存在している。このため、クラッチ操作をしていなくても、加減速の切り替わりによっても瞬間的にランク回転速度と駆動輪回転速度にズレが生じる場合がある。この瞬間的な回転速度のズレ以上のズレが生じたときにクラッチの切断を検出することもできるが、検出用の閾値が緩く(大きく)なる分だけエンジン回転数の吹け上がりが発生する。そこで、本実施例では、加減速の切り替わりの有無に応じて、クラッチの切断を検出するための閾値を使い分けている。
【0016】
図2を参照して、本実施例の制御装置について説明する。図2は本実施例の鞍乗型車両の主要要素のブロック図である。なお、図2のブロック図には、説明の便宜上、特定処理を実現するためのブロックを図示しているが、車両が通常備える構成については備えているものとする。
【0017】
図2に示すように、エンジン25のクランク回転が変速機構26を介して後輪22に伝達されている。変速機構26には複数の変速ギアが設けられており、運転者のシフト操作に応じて変速ギアの組み合わせが変わることで変速比が段階的に変更されている。エンジン25と変速機構26の間にはクラッチ27が介在しており、クラッチ27によってエンジン25から変速機構26へのクランク回転が伝達及び遮断されている。エンジン25には制御装置30が接続されており、制御装置30によってエンジン25が統括制御されると共にエンジン出力の制御によってクルーズコントロールが実行されている。
【0018】
鞍乗型車両1の走行中には、クランク回転速度センサ31によってエンジン25のクランク回転速度(単位時間当たりのクランク回転数)が検出され、駆動輪回転速度センサ32によって後輪22の駆動輪回転速度(単位時間当たりの駆動輪回転数)が検出され、スロットル開度センサ33によってスロットル開度が検出されている。クランク回転速度センサ31、駆動輪回転速度センサ32、スロットル開度センサ33の検出結果は制御装置30に出力されている。また、制御装置30には、クルーズコントロール中にクラッチ27の切断を判定する判定装置40と、クルーズコントロールを実行するクルーズコントロール部34と、が設けられている。
【0019】
判定装置40は、算出部41と、記憶部42と、第1の判定部43と、第2の判定部44と、を有している。算出部41にはクランク回転速度及び駆動輪回転速度が入力されている。算出部41によって駆動輪回転速度を減速比(総合減速比)で換算した上で、クランク回転速度及び駆動輪回転速度の相対値が算出される。具体的には、駆動輪回転速度に減速比が乗算され、クランク回転速度から駆動輪回転速度を減算した回転速度差が相対値として算出される。これにより、クランク回転が後輪22に伝わる間の減速比を考慮した上で、エンジン25側のクランク回転速度と後輪22側の駆動輪回転速度のズレが算出されている。
【0020】
記憶部42には、クランク回転速度、スロットル開度、クランクトルクを座標軸とし、クランク回転速度及びスロットル開度からクランクトルクを求める3次元のトルクマップ45が記憶されている。第1の判定部43にはクランク回転速度及びスロットル開度が入力されている。第1の判定部43によってトルクマップ45からクランクトルクが求められて、クランク回転の加速と減速の切り替わったときに生じるクランクトルクの反転が判定される。クランクトルクが増加から減少に変化、又はクランクトルクが減少から増加に変化したときにクランクトルクが反転したと判定される。
【0021】
また、クランク回転速度が駆動輪回転速度よりも小さい状況は、クラッチ27を切断しなければ起こり得ずクランクトルクの反転を判定する必要がない。このため、クランク回転速度が駆動輪回転速度よりも大きな正の相対値の場合にのみ、第1の判定部43によってクランクトルクの反転が判定されて処理が簡略化されている。なお、トルクマップ45としては、事前に実験的、経験的、理論的に求められたものが用いられる。また、トルクマップ45の代わりに鞍乗型車両1にトルクセンサが設けられて、トルクセンサによってクランクトルクが検出されてもよい。
【0022】
第2の判定部44にはクランク回転速度と駆動輪回転速度の相対値が入力されている。第2の判定部44によってクランク回転速度及び駆動輪回転速度の相対値からクラッチ27の切断が判定される。この場合、クランクトルクの非反転時には相対値が第1の閾値以上の場合にクラッチ27が切断されたと判定され、クランクトルクの反転時には相対値が第2の閾値以上の場合にクラッチ27が切断されたと判定される。第1の閾値よりも第2の閾値が大きく設定されており、クランクトルクの非反転時よりもクランクトルクの反転時の判定条件が緩くなっている。
【0023】
クランク回転の加減速の切り替わりがないときには、比較的厳しい第1の閾値によって小さな相対値でもクラッチ27が切断されたと判定される。クランク回転の加減速が切り替わらない状況では、クラッチ27の切断の有無が素早く判定されてエンジン回転数の吹け上がりが抑えられている。一方で、クランク回転の加減速の切り替わったときには、比較的緩い第2の閾値によって相対値が大きくなるまではクラッチ27が切断されたと判定されない。このため、クランク回転の加減速の切り替わり時にクラッチ27が切断されたと誤判定されることが防止される。
【0024】
上記したように、クランク回転速度が駆動輪回転速度よりも小さい状況はクラッチ27を切断しなければ起こり得ない。クラッチ27を切断してもエンジン回転数の吹け上がりも生じないため、クランクトルクの反転に応じて閾値を使い分ける必要もない。このため、クランク回転速度が駆動輪回転速度よりも小さな負の相対値の場合には、第2の判定部44によってクラッチ27が切断されたと判定されて処理が簡略化されている。なお、負の相対値が負の閾値以下の場合にクラッチ27が切断されたと判定されてもよい。第1、第2の閾値としては、事前に実験的、経験的、理論的に求められたものが用いられる。
【0025】
クルーズコントロール部34には運転者によって目標速度が設定され、クルーズコントロールスイッチ(不図示)が操作されることで鞍乗型車両1のクルーズコントロールが実行される。クルーズコントロール部34によって走行速度が目標速度に維持されるようにスロットルバルブ29(エンジン出力)が調整される。また、クルーズコントロール部34にはクラッチ27の切断の判定結果が入力される。第2の判定部44によってクラッチ27が切断されたと判定された場合には、走行速度が目標速度に維持できなくなるため、クルーズコントロール部34によってクルーズコントロールが解除される。
【0026】
なお、制御装置30の各部の処理は、プロセッサを用いてソフトウェアによって実現されてもよいし、集積回路等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。プロセッサを用いる場合には、プロセッサがメモリに記憶されているプログラムを読み出して実行することで各種処理が実施される。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)が使用される。また、メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体によって構成されている。
【0027】
図3を参照して、クラッチの切断の判定処理について説明する。図3は本実施例のクラッチの切断の判定処理のフローチャートである。なお、図3に示すフローチャートは一例を示すものであり、判定装置の処理動作はこのフローチャートに限定されない。ここでは、図1及び図2の符号を適宜使用して説明する。
【0028】
図3に示すように、クルーズコントロールスイッチが押されてクルーズコントロールが開始されると(ステップS01)、制御装置30にクランク回転速度、駆動輪回転速度、スロットル開度が入力される(ステップS02)。次に、算出部41によって駆動輪回転速度に減速比が乗算され、クランク回転速度と駆動輪回転速度の回転速度差が相対値として算出される(ステップS03)。また、相対値の算出処理に並行して、第1の判定部43によってトルクマップ45が参照されてクランク回転速度とスロットル開度からクランクトルクが算出される(ステップS04)。
【0029】
次に、クランク回転速度と駆動輪回転速度の相対値の正負が確認される(ステップS05)。クランク回転速度と駆動輪回転速度の相対値が負である(クランク回転速度<駆動回転点速度)の場合(ステップS05でYes)、クラッチ27の切断時にしか相対値が負にならないため、第2の判定部44によってクラッチ27が切断されたと判定される(ステップS06)。クランク回転速度と駆動輪回転速度の相対値が負ではない(クランク回転速度≧駆動輪回転速度)の場合(ステップS05でNo)、第1の判定部43によってクランクトルクが反転したか否か判定される(ステップS07)。
【0030】
第1の判定部43によってクランクトルクが反転したと判定された場合(ステップS07でYes)、クランク回転の加速及び減速の切り替わりが生じているため、第2の判定部44によってクランク回転速度と駆動輪回転速度の相対値と比較的大きな第2の閾値が比較される(ステップS08)。相対値が第2の閾値以上の場合(ステップS08でYes)、第2の判定部44によってクラッチ27が切断されたと判定される(ステップS09)。相対値が第2の閾値未満の場合(ステップS08でNo)、第2の判定部44によってクラッチ27が切断されていないと判定される(ステップS10)。
【0031】
第1の判定部43によってクランクトルクが反転してないと判定された場合(ステップS07でNo)、クランク回転の加速及び減速の切り替わりが生じていないため、第2の判定部44によってクランク回転速度と駆動輪回転速度の相対値と比較的小さな第1の閾値が比較される(ステップS11)。相対値が第1の閾値以上の場合(ステップS11でYes)、第2の判定部44によってクラッチ27が切断されたと判定される(ステップS12)。相対値が第1の閾値未満の場合(ステップS11でNo)、第2の判定部44によってクラッチ27が切断されていないと判定される(ステップS13)。
【0032】
第2の判定部44によってクラッチ27が切断されたと判定されると(ステップS06、S09、S12)、クルーズコントロール部34によってクルーズコントロールが解除される(ステップS14)。クルーズコントロール解除は、例えば、鞍乗型車両1のインストルメントパネルによって視覚的又は聴覚的に運転者に通知される。第2の判定部44によってクラッチ27が切断されていないと判定されると(ステップS10、S13)、クルーズコントロールが終了するまでステップS02からステップS13までの処理が繰り返される(ステップS15でNo)。
【0033】
以上、本実施例の判定装置40によれば、減速比を考慮した上でクランク回転速度と駆動輪回転速度のズレからクラッチ27の切断が判定される。クラッチ27の切断以外にもクランク回転の加減速の切り替わりでもクランク回転速度と駆動輪回転速度にズレが生じるため、クランク回転の加減速の切り替わりを示すクランクトルクの反転が判定される。クランクトルクの非反転時には閾値が厳しく設定されて、クランク回転速度と駆動輪回転速度のズレからクラッチ27が切断されたと素早く判定される。クランクトルクの反転時には閾値が緩く設定されて、クランク回転の加減速によるズレよりも、クランク回転速度と駆動輪回転速度のズレが大きくなったときにクラッチ27が切断されたと判定される。よって、クルーズコントロールの解除によってエンジン回転数の吹け上がりが抑えられると共に、クランク回転の加減速時にクラッチ27の切断と誤判定されることが防止される。
【0034】
なお、本実施例においては、算出部によって駆動輪回転速度に減速比が乗算されて駆動輪回転速度が換算されたが、算出部によってクランク回転速度が減速比で除算されてクランク回転速度が換算されてもよい。
【0035】
また、本実施例においては、算出部によってクランク回転速度から駆動輪回転速度が減算された回転速度差が相対値として算出されたが、算出部によってクランク回転速度が駆動輪回転速度で除算されたものが相対値として算出されてもよい。この場合、相対値が1未満の場合にはクランクトルクの反転を判定せずにクラッチが切断されたと判定され、相対値が1以上の場合には第1、第2の閾値を用いてクラッチの切断が判定されてもよい。
【0036】
また、本実施例においては、減速比とは、変速後の回転速度と後輪の回転速度の比に変速比を乗算した総合減速比を意味している。
【0037】
また、本実施例においては、制御装置にプログラムをインストールすることによって、クラッチの切断の判定機能が追加されてもよい。このプログラムは記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は特に限定されないが、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等の非一過性の記憶媒体であってもよい。
【0038】
また、本実施例の判定装置は上記の鞍乗型車両に限らず、自動四輪車、ATV(A11 Terrain Vehicle)や水上バイク等の他の乗り物にも適用可能である。なお、鞍乗型車両とは、運転者がシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、運転者がシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0039】
以上の通り、第1態様は、クランク回転速度及び駆動輪回転速度が検出される車両にて、クルーズコントロール中にクラッチ(27)の切断を判定する判定装置(40)であって、クランク回転速度及び駆動輪回転速度のいずれか一方を減速比で換算した上で、クランク回転速度及び駆動輪回転速度の相対値を算出する算出部(41)と、クランク回転の加速及び減速の切り替わりを示すクランクトルクの反転を判定する第1の判定部(43)と、クランク回転速度及び駆動輪回転速度の相対値からクラッチの切断を判定する第2の判定部(44)と、を備え、第2の判定部は、クランクトルクの非反転時には相対値が第1の閾値以上の場合にクラッチが切断されたと判定し、クランクトルクの反転時には相対値が第1の閾値よりも大きな第2の閾値以上の場合にクラッチが切断されたと判定する。この構成によれば、減速比を考慮した上でクランク回転速度と駆動輪回転速度のズレからクラッチの切断が判定される。クラッチの切断以外にもクランク回転の加減速の切り替わりでもクランク回転速度と駆動輪回転速度にズレが生じるため、クランク回転の加減速の切り替わりを示すクランクトルクの反転が判定される。クランクトルクの非反転時には閾値が厳しく設定されて、クランク回転速度と駆動輪回転速度のズレからクラッチが切断されたと素早く判定される。クランクトルクの反転時には閾値が緩く設定されて、クランク回転の加減速によるズレよりも、クランク回転速度と駆動輪回転速度のズレが大きくなったときにクラッチが切断されたと判定される。よって、クルーズコントロールの解除によってエンジン回転数の吹け上がりが抑えられると共に、クランク回転の加減速時にクラッチの切断と誤判定されることが防止される。
【0040】
第2態様は、第1態様において、クランク回転速度及び駆動輪回転速度の相対値が回転速度差である。この構成によれば、クランク回転速度及び駆動輪回転速度の回転速度差からクラッチの切断を判定することができる。
【0041】
第3態様は、第1態様及び第2態様において、クランク回転速度が駆動輪回転速度よりも大きい場合に、第1の判定部がクランクトルクの反転を判定する。この構成によれば、クランク回転速度が駆動輪回転速度よりも小さい状況は、クラッチを切断しなければ起こり得ないため、クランクトルクの反転を判定する必要がない。よって、クラッチの切断の判定処理を簡略化することができる。
【0042】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか1態様において、クランク回転速度が駆動輪回転速度よりも小さい場合に、第2の判定部はクラッチが切断されたと判定する。この構成によれば、クランク回転速度が駆動輪回転速度よりも小さい状況は、クラッチを切断しなければ起こり得ない。クラッチを切断してもエンジン回転数の吹け上がりも生じないため、クランクトルクの反転に応じて閾値を使い分ける必要もない。よって、クラッチの切断の判定処理を簡略化することができる。
【0043】
第5態様は、クランク回転速度及び駆動輪回転速度が検出される車両にて、クルーズコントロール中にクラッチの切断を判定する制御装置のプログラムであって、クランク回転速度及び駆動輪回転速度のいずれか一方を減速比で換算した上で、クランク回転速度及び駆動輪回転速度の相対値を算出するステップと、クランク回転の加速及び減速の切り替わりを示すクランクトルクの反転を判定するステップと、クランクトルクの非反転時には相対値が第1の閾値以上の場合にクラッチが切断されたと判定するステップと、クランクトルクの反転時には相対値が第1の閾値よりも大きな第2の閾値以上の場合にクラッチが切断されたと判定するステップと、を制御装置に実行させる。この構成によれば、制御装置にプログラムをインストールすることによって、クラッチの切断が効果的に判定されてエンジン回転数の吹け上がりが抑えられると共に、クランク回転の加減速時にクラッチの切断と誤認識されることが防止される。
【0044】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0045】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0046】
1 :鞍乗型車両
25:エンジン
26:変速機構
27:クラッチ
31:クランク回転速度センサ
32:駆動輪回転速度センサ
34:クルーズコントロール部
40:判定装置
41:算出部
43:第1の判定部
44:第2の判定部
図1
図2
図3