(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001759
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】燃焼バーナ
(51)【国際特許分類】
F23G 5/16 20060101AFI20231227BHJP
F23Q 9/00 20060101ALI20231227BHJP
F23D 14/62 20060101ALI20231227BHJP
F23D 14/02 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
F23G5/16 E
F23Q9/00 L
F23D14/62
F23D14/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100628
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 亮
(72)【発明者】
【氏名】福田 尚倫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 暁
【テーマコード(参考)】
3K017
3K078
【Fターム(参考)】
3K017AA02
3K017AB05
3K017AC01
3K017AD03
3K017AG01
3K017CA04
3K017CB08
3K017CE03
3K017CG03
3K078AA04
3K078BA02
3K078CA02
(57)【要約】
【課題】廃棄物のガス化により発生する可燃性ガスを燃焼させる燃焼バーナにおいて、着火及び着火後の火炎の安定化を図り、かつ化石燃料の使用量を削減する。
【解決手段】廃棄物のガス化により発生する可燃性ガスと燃焼空気とを予混合領域8で混合して燃焼させる燃焼バーナBである。予混合領域8は、予混合領域8の中央に設けられる中央予混合領域8Aと、可燃性ガスの流れ方向において中央予混合領域8Aより下流側に設けられ、かつ中央予混合領域8Aを挟む又は囲むように設けられる周辺予混合領域8B,8Cとを含む。更に中央予混合領域8A内の混合気を着火させる着火手段B3を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物のガス化により発生する可燃性ガスと燃焼空気とを予混合領域で混合して燃焼させる燃焼バーナであって、
前記予混合領域は、当該予混合領域の中央に設けられる中央予混合領域と、前記可燃性ガスの流れ方向において前記中央予混合領域より下流側に設けられ、かつ前記中央予混合領域を挟む又は囲むように設けられる周辺予混合領域とを含み、
更に、前記中央予混合領域内の混合気を着火させる着火手段を有する燃焼バーナ。
【請求項2】
前記着火手段は、前記中央予混合領域へ向けて鉛直下向きに設けられている、請求項1に記載の燃焼バーナ。
【請求項3】
前記着火手段はパイロットバーナである、請求項2に記載の燃焼バーナ。
【請求項4】
前記中央予混合領域及び前記周辺予混合領域は、前記予混合領域の中央軸を通る鉛直面を基準として面対称の関係を有する、請求項1又は2に記載の燃焼バーナ。
【請求項5】
前記中央予混合領域の基端領域が、バーナタイルによって挟まれ又は囲まれている、請求項1又は2に記載の燃焼バーナ。
【請求項6】
前記中央予混合領域へ可燃性ガスを吐出する中央ガス吐出部と、前記中央予混合領域へ燃焼空気を吐出する中央空気吐出部と、前記周辺予混合領域へ可燃性ガスを吐出する周辺ガス吐出部と、前記周辺予混合領域へ燃焼空気を吐出する周辺空気吐出部とを有し、
前記中央ガス吐出部、前記中央空気吐出部、前記周辺ガス吐出部及び前記周辺空気吐出部は、いずれも鉛直方向に延びるように設けられている、請求項1又は2に記載の燃焼バーナ。
【請求項7】
前記中央ガス吐出部、前記中央空気吐出部、前記周辺ガス吐出部及び前記周辺空気吐出部は、前記予混合領域の中央軸を通る鉛直面に対して面対称となるように設けられている、請求項6に記載の燃焼バーナ。
【請求項8】
前記中央空気吐出部は、前記中央ガス吐出部を挟むように二つ設けられている、請求項7に記載の燃焼バーナ。
【請求項9】
前記中央予混合領域へ可燃性ガスを吐出する中央ガス吐出部と、前記中央予混合領域へ燃焼空気を吐出する中央空気吐出部と、前記周辺予混合領域へ可燃性ガスを吐出する周辺ガス吐出部と、前記周辺予混合領域へ燃焼空気を吐出する周辺空気吐出部とを有し、
前記中央ガス吐出部から、前記着火手段による前記中央予混合領域内の混合気の着火点までの距離L(m)が、次式(1)を満たす、請求項1又は2に記載の燃焼バーナ。
L < T×S (1)
ここで、T:前記中央予混合領域内の混合気の着火遅れ時間(s)
S:前記中央予混合領域内の混合気の流速(m/s)
【請求項10】
前記中央予混合領域へ可燃性ガスを吐出する中央ガス吐出部と、前記中央予混合領域へ燃焼空気を吐出する中央空気吐出部と、前記周辺予混合領域へ可燃性ガスを吐出する周辺ガス吐出部と、前記周辺予混合領域へ燃焼空気を吐出する周辺空気吐出部とを有し、
前記中央予混合領域内の混合気の可燃性ガス濃度が、前記周辺予混合領域内の混合気の可燃性ガス濃度以上である、請求項1又は2に記載の燃焼バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物のガス化により発生する可燃性ガスを燃焼させる燃焼バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物、産業廃棄物などの廃棄物の処理に廃棄物ガス化溶融炉などの廃棄物処理炉が利用され、廃棄物処理炉で発生する可燃性ガスは燃焼室で燃焼バーナにより燃焼させて熱回収が行われる。
廃棄物のガス化により発生する可燃性ガスを燃焼させる燃焼バーナとして、簡単な構造で燃焼性を向上させることが可能な予混合形式の燃焼バーナが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1の燃焼バーナでは、廃棄物のガス化で発生する可燃性ガスが低カロリー時にも安定した火炎形成が可能なように、複数のバーナポートのうちの一つのバーナポートを、バーナタイルを延設して予混合領域を拡張した着火用バーナポートとし、この着火用バーナポートの出口付近にパイロットバーナを設置している。
この燃焼バーナにより、廃棄物のガス化で発生する可燃性ガスの燃焼時の火炎安定化に一定の効果は得られている。
【0004】
しかし、この燃焼バーナにおいてパイロットバーナは、着火用バーナポートの出口付近の側面側から種火を供給するように設置されており、そのため、廃棄物のガス化で発生する可燃性ガスの燃焼時の火炎安定化に関し、依然として以下のような問題があった。
(1)着火用バーナポートから他のバーナポートへの火炎伝播が生じにくい場合があり、可燃性ガスに対する着火性の更なる向上の余地がある。
(2)パイロットバーナの種火を他のバーナポートの混合気に接触させるためには、種火を伸長させる必要があり、その結果、化石燃料(通常燃料)の使用量が増加する。特に大型の燃焼バーナでは、他のバーナポートまでの距離が長くなり、化石燃料の使用量が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、廃棄物のガス化により発生する可燃性ガスを燃焼させる燃焼バーナにおいて、着火及び着火後の火炎の安定化を図り、かつ化石燃料の使用量を削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明者らが試験及び検討を重ねたところ、予混合領域における混合気の形成過程を二段階に分けることが有効であることを知見した。具体的には、第一段階として、予混合領域の中央に設けられる中央予混合領域で混合気を形成し、第二段階として、中央予混合領域より下流側に設けられる周辺予混合領域で混合気を形成し、かつ着火手段で中央予混合領域内の混合気を着火させることが有効であることを知見した。
【0008】
本発明は上記知見に基づき想到されたもので、その一観点によれば、次の燃焼バーナが提供される。
廃棄物のガス化により発生する可燃性ガスと燃焼空気とを予混合領域で混合して燃焼させる燃焼バーナであって、
前記予混合領域は、当該予混合領域の中央に設けられる中央予混合領域と、前記可燃性ガスの流れ方向において前記中央予混合領域より下流側に設けられ、かつ前記中央予混合領域を挟む又は囲むように設けられる周辺予混合領域とを含み、
更に、前記中央予混合領域内の混合気を着火させる着火手段を有する燃焼バーナ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、廃棄物のガス化により発生する可燃性ガスを燃焼させる燃焼バーナにおいて、着火及び着火後の火炎の安定化を図り、かつ化石燃料の使用量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態である燃焼バーナを適用した廃棄物ガス化溶融システムの概念図。
【
図2】本発明の一実施形態である燃焼バーナの模式的な縦断面図。
【
図5A】本発明の一実施形態である燃焼バーナを下流側から
図5Bとは別アングルで見た模式的な斜視図。
【
図5B】本発明の一実施形態である燃焼バーナを下流側から
図5Aとは別アングルで見た模式的な斜視図。
【
図6】本発明の一実施形態である燃焼バーナを上流側から見た模式的な斜視図。
【
図8】本発明の他の実施形態である燃焼バーナを模式的に示し、(a)は下流側から見た模式図、(b)は側方から見た模式図。
【
図9】本発明の更に他の実施形態である燃焼バーナを模式的に示し、(a)は下流側から見た模式図、(b)は側方から見た模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
図1に、本発明の一実施形態である燃焼バーナを適用した廃棄物ガス化溶融システムを概念的に示している。
廃棄物処理炉Aには、廃棄物が副資材であるコークス、石灰石とともに炉上部から投入装置A1を介して投入され、乾燥、熱分解、燃焼、溶融の過程を経て炉底部の出滓口A2から溶融物として排出される。一方、可燃分は、可燃性ダスト及び熱分解ガス(CO,H
2,CH
4,CO
2,N
2等)を含む可燃性ガスとして、炉上部のガス管A3から排出される。可燃性ガスは燃焼バーナBを介して二次燃焼室Cへ導入されて燃焼し、ボイラDで熱交換により熱回収が行われ、ボイラDで発生した蒸気は蒸気タービン・発電装置Eへ送られる。ボイラDの排ガスは、集じん装置Fで固気分離され、ブロワGにより煙突Hから排出される。
【0012】
次に、燃焼バーナBの構成について説明する。
図2に、本発明の一実施形態である燃焼バーナBを縦断面で模式的に示している。また、
図3には
図2のI-I断面、
図4には
図3のII-II断面を示している。更に、
図5A及び
図5Bには燃焼バーナBを下流側(二次燃焼室C側)からそれぞれ異なるアングルで見た模式的な斜視図、
図6には燃焼バーナBを上流側(ガス管A3側)から見た模式的な斜視図を示している。そして、
図7には
図6の平面透視図を示している。
なお、本明細書において「上流側」及び「下流側」とは、可燃性ガスの流れ方向を基準とする。
【0013】
図2に表れているように、燃焼バーナBは、ガス管A3の下流側の端部に接続されるバーナ本体B1、このバーナ本体B1の下流側の端部と二次燃焼室Cのガス流入口C1とを接続するバーナポートB2、及びこのバーナポートB2に設置されている着火手段としてのパイロットバーナB3を備えている。
バーナ本体B1には、廃棄物処理炉Aで発生した可燃性ガスがガス管A3を経由して導入されるとともに、図示しない空気源からの空気が空気ダクトB4を経由して燃焼空気として導入される。バーナ本体B1に導入された可燃性ガスと燃焼空気とは、後述する予混合領域で混合されて混合気となる。なお、空気ダクトB4内には、整流板としてパンチングメタルB5が配置されている。
【0014】
続いて、バーナ本体B1の具体的な構成を説明する。
図5A、
図5B及び
図6に表れているように、バーナ本体B1は、略四角筒状の内筒体1、この内筒体1を取り囲むように間隔をおいて配置された、略四角筒状の外筒体2、及び内筒体1と外筒体2との間隔を規定する仕切板3を有する。この仕切板3には間隔をおいて複数の開口3aが設けられており、この仕切板3は燃焼空気の整流板としての機能も有する。なお、
図5A、
図5B及び
図6では、バーナ本体B1の内部の構成を表すために外筒体2を部分的に適宜省略している。
内筒体1は、その上流側の端部がガス管A3の下流側の端部に接続される。これにより内筒体1には、廃棄物処理炉Aで発生した可燃性ガスが導入される。一方、外筒体2には、上述の空気ダクトB4を経由して燃焼空気が導入される。具体的には
図6及び
図7に表れているように、外筒体2の底板21には燃焼空気流入口21aが設けられ、この燃焼空気流入口21aに空気ダクトB4が接続されている。すなわち外筒体2には、空気ダクトB4及び燃焼空気流入口21aを経由して燃焼空気が導入される。
【0015】
図6及び
図7に明確に表れているように、内筒体1内には4つの分岐ポスト4が、可燃性ガスの流れ方向と直交する方向(以下「幅方向」ともいう。)に並列に間隔をおいて配置されている。分岐ポスト4は、平面視において上流側が尖るように形成されている。具体的に分岐ポスト4の上流部41の形状は、平面視において上流側の端部を頂点として下流側に向かうにつれて両側に広がる形状となっている。そして、この上流部41に連続する下流部42は、下流側に向けて平行に延びる一対の側板42A,42Bによって形成されている。ここで、
図7に表れているように、4つの分岐ポスト4のうち周辺側に位置する2つの分岐ポスト4Bでは、側板42Aと側板42Bの、可燃性ガスの流れ方向に沿った長さ(以下、単に「長さ」という。)は同一である。一方、4つの分岐ポスト4のうち中央側に位置する2つの分岐ポスト4Aでは、中央側の側板42Aの長さが、周辺側の側板42Bの長さより短くなっている。
なお、以下の説明では、中央側の分岐ポスト4Aと周辺側の分岐ポスト4Bとを区別する必要のない場合、これらを総称して「分岐ポスト4」と表記する。
【0016】
図6に表れているように、分岐ポスト4は、鉛直方向に沿って延びる板部材であり、鉛直方向において内筒体1の底板11と天板12との間に設けられている。すなわち、分岐ポスト4の下端は底板11に接続され、分岐ポスト4の上端は天板12に接続されている。
【0017】
図3、
図4、
図5A、
図5B及び
図7に表れているように、分岐ポスト4の下流側の端部にはバーナタイル5が配置されている。具体的には
図7に明確に表れているように、バーナタイル5の上流部51の全部と下流部52の一部が、分岐ポスト4の下流部42を構成する側板42Aと側板42Bとの間に、幅方向に間隔をおいて挿入されている。すなわち、バーナタイル5の下流部52の残部は、分岐ポスト4の下流部42から下流側に突出している。
一方、側板42Aの下流側の端部とバーナタイル5の側面との間には仕切板6が設けられ、側板42Bの下流側の端部とバーナタイル5の側面との間にも仕切板6が設けられている。また、内筒体1の2つの側板13の下流側の端部と外筒体2の2つの側板23の下流側の端部との間にも仕切板6が設けられている。そして各仕切板6には、
図4、
図5A及び
図5Bに表れているように、燃焼空気を吐出する吐出孔6aが鉛直方向に間隔をおいて複数設けられている。
【0018】
図6に表れているように内筒体1の天板12には、8つの開口12a~hが設けられている。また、
図7に示すように内筒体1の底板11にも、8つの開口11a~hが設けられている。これら底板11の8つの開口11a~hと天板12の8つの開口12a~hとは、それぞれ平面視で重なるように設けられている。すなわち、例えば底板11の開口11aと天板12の開口12aとは同一形状であって平面視で重なる位置に設けられている。底板11の開口11b~hと天板12の開口12b~hとにおいても同様である。そして、底板11の8つの開口11a~h及び天板12の8つの開口12a~hは、いずれも分岐ポスト4の内部空間と連通するように設けられている。すなわち、分岐ポスト4の内部空間は、底板11の8つの開口11a~hを介して内筒体1の底板11と外筒体2の底板21との間の空間(隙間)に通じ、また、天板12の8つの開口12a~hを介して内筒体1の天板12と外筒体2の天板22との間の空間(隙間)に通じている。
【0019】
次に、燃焼バーナBの動作について説明する。
廃棄物処理炉Aで発生した可燃性ガスは、ガス管A3を経由して内筒体1の上流側に導入される。その可燃性ガスは、内筒体1内にある4つの分岐ポスト4によって
図3中に白抜き矢印で示しているように5つの流れ7A~Eに分岐され、それぞれ下流側に向けて流れる。そのうち中央の流れ7Aは
図7を併せて参照すると、中央側に位置する2つの分岐ポスト4Aの中央側の2つの側板42Aによって規定され、この中央の流れ7Aに沿った可燃性ガスは上述の2つの側板42Aの下流側の端部間から、予混合領域8の中央に設けられている中央予混合領域8Aへ吐出される。すなわち、本実施形態において中央側に位置する2つの分岐ポスト4Aの中央側の2つの側板42Aの下流側の端部間が、中央予混合領域8Aへ可燃性ガスを吐出する中央ガス吐出部81Aとなっている。
【0020】
また、中央の流れ7Aに隣接する2つの周辺の流れ7B,7Cはそれぞれ、中央側に位置する2つの分岐ポスト4Aの周辺側の2つの側板42Bと、周辺側に位置する2つの分岐ポスト4Bの中央側の2つの側板42Aとによって規定され、これら周辺の流れ7B,7Cに沿った可燃性ガスはそれぞれ、上述の2つの側板42B及び2つの側板42Aの下流側の端部間から、予混合領域8の周辺側に設けられている周辺予混合領域8Bへ吐出される。すなわち、本実施形態において上述の2つの側板42B及び2つの側板42Aの下流側の端部間がそれぞれ、周辺予混合領域8Bへ可燃性ガスを吐出する周辺ガス吐出部81Bとなっている。
【0021】
更に、上述の2つの周辺の流れ7B,7Cに隣接する2つの周辺の流れ7D,7Eはそれぞれ、周辺側に位置する2つの分岐ポスト4Bの周辺側の2つの側板42Bと、内筒体1の2つの側板13とによって規定され、これら周辺の流れ7D,7Eに沿った可燃性ガスはそれぞれ、上述の2つの側板42B及び2つの側板13の下流側の端部間から、予混合領域8の周辺側に設けられている周辺予混合領域8Cへ吐出される。すなわち、本実施形態において上述の2つの側板42B及び2つの側板13の下流側の端部間がそれぞれ、周辺予混合領域8Cへ可燃性ガスを吐出する周辺ガス吐出部81Cとなっている。
【0022】
一方、燃焼空気は、空気ダクトB4及び燃焼空気流入口21aを経由して、内筒体1と外筒体2との間の空間(隙間)に導入される。そしてその燃焼空気の一部は、底板11の8つの開口11a~h及び天板12の8つの開口12a~hを通じて4つの分岐ポスト4の内部空間に導入される。4つの分岐ポスト4の内部空間に導入された燃焼空気は、バーナタイル5によって
図3中に短尺の黒塗り矢印で示しているように、それぞれ2つの流れに分岐され、仕切板6に設けられている吐出孔6aから吐出される。
また、空気ダクトB4及び燃焼空気流入口21aを経由して内筒体1と外筒体2との間の空間(隙間)に導入された燃焼空気の一部は、
図3中に長尺の黒塗り矢印で示しているように、内筒体1の2つ側板13と外筒体2の2つ側板23との間の2つのスリット状の空間(隙間)を下流側に向けて流れ、内筒体1の2つの側板13の下流側の端部と外筒体2の2つの側板23の下流側の端部との間の仕切板6に設けられている吐出孔6aから吐出される。
【0023】
ここで上述の通り、4つの分岐ポスト4のうち中央側に位置する2つの分岐ポスト4Aでは、中央側の側板42Aの長さが周辺側の側板42Bの長さより短くなっている。そのため、中央側に位置する2つの分岐ポスト4Aにおいて中央側の側板42Aの下流側の端部とバーナタイル5の側面との間に設けられている2つの仕切板6(以下「中央側仕切板6A」という。)は、周辺側の6つの仕切板6(以下「周辺側仕切板6B」という。)より上流側に位置する。また、内筒体1の2つの側板13の下流側の端部と外筒体2の2つの側板23の下流側の端部との間に設けられている2つの仕切板6は、中央側仕切板6Aより下流側に位置する(以下、この2つの仕切板6を「周辺側仕切板6C」という。)。
【0024】
2つの中央側仕切板6Aは、上述の中央ガス吐出部81Aを挟むように設けられており、2つの中央側仕切板6Aのそれぞれに設けられている吐出孔6aから燃焼空気が中央予混合領域8Aへ吐出される。すなわち、本実施形態において2つの中央側仕切板6Aがそれぞれ、中央予混合領域8Aへ燃焼空気を吐出する中央空気吐出部82Aとなっている。
また、6つの周辺側仕切板6B及び2つの周辺側仕切板6Cは、上述の周辺ガス吐出部81B又は周辺ガス吐出部81Cを挟むように設けられており、6つの周辺側仕切板6B及び2つの周辺側仕切板6Cにそれぞれに設けられている吐出孔6aから燃焼空気が周辺予混合領域8B,8Cへ吐出される。すなわち、本実施形態において6つの周辺側仕切板6B及び2つの周辺側仕切板6Cがそれぞれ、周辺予混合領域8B,8Cへ燃焼空気を吐出する周辺空気吐出部82B,82Cとなっている。
【0025】
以上を整理すると、燃焼バーナBは
図3に概念的に示しているように、可燃性ガスと燃焼空気とを混合する予混合領域8を含み、この予混合領域8は中央予混合領域8Aと周辺予混合領域8B,8Cとを含む。具体的に、中央予混合領域8Aは予混合領域8の中央に設けられ、周辺予混合領域8B,8Cは中央予混合領域8Aより下流側に設けられている。
また、着火手段であるパイロットバーナB3は、上述の予混合領域8(中央予混合領域8A及び周辺予混合領域8B,8C)とともに
図3に概念的に示しているように、中央予混合領域8A内の混合気を着火させることのできる位置に配置されている。
したがって燃焼バーナBでは、予混合領域8における混合気の形成過程が二段階に分かれる。具体的には、第一段階として、予混合領域8の中央に設けられる中央予混合領域8Aで混合気を形成し、第二段階として、中央予混合領域8Aより下流側に設けられる周辺予混合領域で混合気を形成し、かつパイロットバーナB3で中央予混合領域8A内の混合気を着火させる。
これにより、廃棄物のガス化により発生する可燃性ガスを燃焼させる燃焼バーナBにおいて、着火及び着火後の火炎の安定化を図り、かつ化石燃料の使用量を削減することができる。すなわち燃焼バーナBでは、予混合領域8において中央予混合領域8Aが周辺予混合領域8B,8Cより上流側に存在するから、限られた空間の中で混合の助走距離を確保でき、十分な混合気を形成することができる。そして、中央予混合領域8A内の混合気を着火させることで、中央予混合領域8Aの下流側に設けられかつ中央予混合領域8Aを挟むように設けられる周辺予混合領域8B,8Cへの火炎伝播がスムーズに進み、限られた時間内で予混合領域8全体に素早く着火を誘発できる。更に、本実施形態では着火手段であるパイロットバーナB3で中央予混合領域8A内の混合気を着火させるようにしており、パイロットバーナB3の種火を中央予混合領域8A内の混合気に直接接触させることができる。そのため、中央予混合領域8Aにおいて着火及び着火後の火炎を安定して維持できる。また、パイロットバーナB3の種火長さは
図2に概念的に示しているように、中央予混合領域8A内の混合気に直接接触させることができる程度の必要最小限度の種火長さL1でよい。そのため、化石燃料の使用量を削減することもできる。以上より本実施形態によれば、廃棄物のガス化により発生する可燃性ガスを燃焼させる燃焼バーナBにおいて、着火及び着火後の火炎の安定化を図り、かつ化石燃料の使用量を削減することができる。
なお、
図3において符号C2は二次燃焼室Cの内周壁を示している。
【0026】
更に本実施形態では、着火手段であるパイロットバーナB3は中央予混合領域8Aへ向けて鉛直下向きに設けられている。すなわち、本実施形態において着火手段であるパイロットバーナB3は
図2に示されるようにバーナポートB2の天板部分に設けられている。バーナポートB2の天板部分ではダスト堆積が少なく、しかもパイロットバーナB3の種火は重力に従って鉛直下向きに形成される。そのためパイロットバーナB3の種火が維持されやすく、化石燃料の使用量を更に削減することができる。
【0027】
また、本実施形態では
図3からわかるように、中央予混合領域8A及び周辺予混合領域8B,8Cは、予混合領域8の中央軸8Dを通る鉛直面を基準として面対称の関係を有する。これにより、中央予混合領域8Aから周辺予混合領域8B,8Cへの火炎伝播がよりスムーズに進み、着火及び着火後の火炎が更に安定化する。加えて本実施形態では、着火手段であるパイロットバーナB3の中心軸B31が上述の予混合領域8の中央軸8Dを通る鉛直面に沿うように、パイロットバーナB3を配置している。すなわち、本実施形態において中央予混合領域8A及び周辺予混合領域8B,8Cは、パイロットバーナB3の中心軸B31及び予混合領域8の中央軸8Dを通る鉛直面を基準として面対称の関係を有する。そのため、着火及び着火後の火炎が更に安定化する。
なお、
図3では、中央予混合領域8A及び周辺予混合領域8B,8Cを含む予混合領域8を概念的に示しており、実際の予混合領域8は必ずしも
図3のように層状に形成されるわけではないが、上述の対称性等の観点では
図3に示されている通りである、
【0028】
また、本実施形態では
図3に示されているように、中央予混合領域8Aの基端領域が、中央側の2つのバーナタイル5によって挟まれている。すなわち、中央側の2つのバーナタイル5は中央予混合領域8Aの基端領域の保炎手段となっている。そのため、着火及び着火後の火炎が更に安定化する。
【0029】
また、本実施形態では例えば
図4に表れているように、中央ガス吐出部81A、中央空気吐出部82A、周辺ガス吐出部81B,81C及び周辺空気吐出部82B,82Cは、いずれも鉛直方向に延びるように設けられ、しかも上述の予混合領域8の中央軸8Dを通る鉛直面に対して面対称となるように設けられている。これにより、中央予混合領域8A及び周辺予混合領域8B,8Cが、上述の通り面対称の関係で適切に設けられる。そのため、中央予混合領域8Aから周辺空気吐出部82B,82Cへの火炎伝播がよりスムーズに進み、着火及び着火後の火炎が更に安定化する。
【0030】
また、本実施形態では、中央ガス吐出部81Aから、パイロットバーナB3による中央予混合領域8A内の混合気の着火点までの距離L(m)(
図3参照)が、次式(1)を満たすように構成している。
L < T×S (1)
なお、本実施形態において、Tは中央予混合領域8A内の混合気の着火遅れ時間(s)、Sは中央予混合領域8A内の混合気の流速(m/s)である。
ここで、「L ≧ (T×S)」、すなわちパイロットバーナB3による中央予混合領域8A内の混合気の着火点までの距離Lが(T×S)以上になると、パイロットバーナB3による強制着火前に混合気が自己着火して逆火が生じる可能性がある。したがって、この距離Lが上記式(1)を満たすように構成することが好ましい。
【0031】
更に、本実施形態では、中央予混合領域8A内の混合気の可燃性ガス濃度(以下「中央可燃性ガス濃度」という。)が、周辺予混合領域8B,8C内の混合気の可燃性ガス濃度(以下「周辺可燃性ガス濃度」という。)以上となるようにしている。
ここで、廃棄物のガス化により発生する可燃性ガスが高カロリーであれば、中央可燃性ガス濃度と周辺可燃性ガス濃度とは同等でもよいが、可燃性ガスが低カロリーであったりダストを多く含んでいたりする場合、着火安定性の観点より、中央可燃性ガス濃度を高める方が好ましい。
なお、中央可燃性ガス濃度及び周辺可燃性ガス濃度の調整は、例えば上述の中央ガス吐出部81A、中央空気吐出部82A、周辺ガス吐出部81B,81C及び周辺空気吐出部82B,82Cの大きさ等を調整することにより実現可能である。
【0032】
<実施形態2>
図8に、本発明の他の実施形態である燃焼バーナを模式的に示している。なお、
図8において先の実施形態(実施形態1)と対応する構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0033】
先の実施形態1では、バーナ本体B1を構成する内筒体1及び外筒体2をそれぞれ略四角筒状としたが、本実施形態2では内筒体1及び外筒体2をそれぞれ略円筒状としている。
図8に概念的に示しているように、本実施形態2においても中央予混合領域8Aは予混合領域8の中央に設けられ、周辺予混合領域8Bは中央予混合領域8Aより下流側に設けられている。また、周辺予混合領域8Bは中央予混合領域8を囲むように設けられている。更に着火手段であるパイロットバーナB3は、中央予混合領域8A内の混合気を着火させることのできる位置に配置されている。したがって、本実施形態2においても先の実施形態1と同様に、廃棄物のガス化により発生する可燃性ガスを燃焼させる燃焼バーナBにおいて、着火及び着火後の火炎の安定化を図り、かつ化石燃料の使用量を削減することができる。
【0034】
<実施形態3>
図9に、本発明の更に他の実施形態である燃焼バーナを模式的に示している。なお、
図9において先の実施形態1と対応する構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0035】
先の実施形態1では、中央ガス吐出部81A、中央空気吐出部82A、周辺ガス吐出部81B,81C及び周辺空気吐出部82B,82Cを、いずれも鉛直方向に延びるスリット状に設けたが、本実施形態3では中央ガス吐出部81A、中央空気吐出部82A、周辺ガス吐出部81B及び周辺空気吐出部82Bを、いずれも水平方向に延びるスリット状に設けている。
図9に概念的に示しているように、本実施形態3においても中央予混合領域8Aは予混合領域8の中央に設けられ、周辺予混合領域8Bは中央予混合領域8Aより下流側に設けられている。また、周辺予混合領域8Bは中央予混合領域8を挟むように設けられている。更に着火手段であるパイロットバーナB3は、中央予混合領域8A内の混合気を着火させることのできる位置に配置されている。したがって、本実施形態3においても先の実施形態1及び2と同様に、廃棄物のガス化により発生する可燃性ガスを燃焼させる燃焼バーナBにおいて、着火及び着火後の火炎の安定化を図り、かつ化石燃料の使用量を削減することができる。
なお、先の実施形態1及び本実施形態3において内筒体1及び外筒体2はそれぞれ略四角筒状であるが、内筒体1及び外筒体2をそれぞれ略円筒状とすることもできる。
【0036】
以上の実施形態1~3では、着火手段としてパイロットバーナを使用したが、点火プラグ等の着火手段を使用することもできる。また、着火手段として点火プラグを使用する場合、その点火プラグは中央予混合領域へ向けて鉛直上向きに設けてもよい。更に、中央予混合領域内の混合気を着火させる着火手段であるパイロットバーナに加えて、周辺予混合領域内の混合気を着火させる補助的な着火手段として点火プラグ等を配置することもできる。
【実施例0037】
本発明の実施例として上述の実施形態1の燃焼バーナを用いて燃焼試験を実施した。また比較例として、上述の特許文献1のように側面側からパイロットバーナの種火を供給する方式の燃焼バーナを用いて同様に燃焼試験を実施した。
その結果、実施例では比較例に比べて燃焼バーナの燃焼温度が高くなることが確認された。このことより、実施例では比較例に比べて着火及び着火後の火炎が安定することが確認された。また、実施例と比較例とでパイロットバーナの化石燃料(都市ガス)の使用量を比較したところ、実施例では比較例の1/6以下に削減することができた。