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特開2024-175904磁気ディスク装置、磁気ディスク装置の制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175904
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】磁気ディスク装置、磁気ディスク装置の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G11B 21/21 20060101AFI20241212BHJP
   G11B 5/596 20060101ALI20241212BHJP
   G11B 21/10 20060101ALI20241212BHJP
   G11B 21/12 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G11B21/21 D
G11B5/596
G11B21/10 N
G11B21/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093996
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大関 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】陳 毓
(57)【要約】
【課題】マイクロアクチュエータの切替時に発生する磁気ヘッドの振動を抑制し、位置決め精度の向上を図るとともに、アクセス性能の低下を抑制する。
【解決手段】実施形態の磁気ディスク装置は、対応する磁気ヘッドの位置決めを行う第1のマイクロアクチュエータを駆動する第1MAアンプと、対応する磁気ヘッドの位置決めを行う第2のマイクロアクチュエータと、前記第2のマイクロアクチュエータを駆動する第2MAアンプと、を備えた磁気ディスク装置において、オン状態にある切替元のMAアンプからオフ状態にある切替先のMAアンプに切り替える場合に、前記切替元のMAアンプをオン状態に維持したまま、前記切替先のMAアンプを立ち上げ、所定時間の経過後に前記切替元のMAアンプから前記切替先のMAアンプに切替を行わせる制御部を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する磁気ヘッドの位置決めを行う第1のマイクロアクチュエータを駆動する第1MAアンプと、対応する磁気ヘッドの位置決めを行う第2のマイクロアクチュエータと、前記第2のマイクロアクチュエータを駆動する第2MAアンプと、を備えた磁気ディスク装置において、
オン状態にある切替元のMAアンプからオフ状態にある切替先のMAアンプに切り替える場合に、前記切替元のMAアンプをオン状態に維持したまま、前記切替先のMAアンプを立ち上げ、所定時間の経過後に前記切替元のMAアンプから前記切替先のMAアンプに切替を行わせる制御部を備えた磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記所定時間は、切替先のMAアンプに対応するマイクロアクチュエータの切替に伴う振動が所定の大きさ未満となる時間として設定されている、
請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記切替先のMAアンプにおいて所定のスルーレートあるいは所定の割合で階段状に駆動力が上がるように制御を行う、
請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
対応する磁気ヘッドの位置決めを行う第1のマイクロアクチュエータを駆動する第1MAアンプと、対応する磁気ヘッドの位置決めを行う第2のマイクロアクチュエータと、前記第2のマイクロアクチュエータを駆動する第2MAアンプと、を備えた磁気ディスク装置において、
一つのアクチュエータアームの第1の面と、前記第1の面に対し、磁気ディスクの記録面に交差する方向であって前記第1の面とは反対の第2の面とに、それぞれ前記磁気ヘッドが設けられ、
前記アクチュエータアームに対応する一対の前記磁気ヘッドに対応するマイクロアクチュエータは独立に制御可能とされるとともに、排他的にオン状態とされ、
前記一対の前記磁気ヘッドに対応する一対の前記MAアンプのうち、オン状態にある一方の前記MAアンプを切替元のMAアンプとし、他方を切替先のMAアンプとし、前記切替元のMAアンプからオフ状態にある切替先のMAアンプへの切替を行わせる制御部を備え、
前記制御部は、前記オフ状態にあるMAアンプをオン状態に切り替える場合の電圧スルーレート及び前記オン状態にあるMAアンプをオフ状態に切り替える場合の電圧スルーレートを対応するマイクロアクチュエータの共振周波数を避けた値に設定する、
磁気ディスク装置。
【請求項5】
対応する磁気ヘッドの位置決めを行う第1のマイクロアクチュエータを駆動する第1MAアンプと、対応する磁気ヘッドの位置決めを行う第2のマイクロアクチュエータと、前記第2のマイクロアクチュエータを駆動する第2MAアンプと、を備えた磁気ディスク装置において、
前記磁気ヘッドのシーク順序の並び替えを行って、並び替えた前記シーク順序にしたがって、オン状態にある切替元のMAアンプからオフ状態にある切替先のMAアンプに切り替える場合に、前記並び替えにおいて、前記切替元のMAアンプを用いる磁気ヘッドを先の順番で並べ、前記切替先のMAアンプを用いる磁気ヘッドを後の順番で並べるようにする制御部を備えた磁気ディスク装置。
【請求項6】
シーケンシャルアクセス時に、同一のMAアンプにより駆動される磁気ヘッドが連続してアクセスされるように、予め論理アドレスの割当が行われている、
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の磁気ディスク装置。
【請求項7】
前記マイクロアクチュエータへの切替時の振動レベルを予め複数ランクに区分けし、
前記制御部は、前記MAアンプの切替に際しては、切替先のMAアンプとして選択可能なMAアンプとして最も振動の少ないランクに属するMAアンプを選択する、
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の磁気ディスク装置。
【請求項8】
前記制御部は、所定距離以上の長距離シークが発生した場合に前記MAアンプの切替を行う、
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の磁気ディスク装置。
【請求項9】
磁気ヘッドの位置決めを行うマイクロアクチュエータ及び対応するMAアンプを複数組備えた磁気ディスク装置の制御方法において、
オン状態にある切替元のMAアンプからオフ状態にある切替先のMAアンプに切り替える場合に、前記切替元のMAアンプをオン状態に維持するステップと、
前記切替元のMAアンプをオン状態に維持したまま、切替先のMAアンプを所定のスルーレートで立ち上げるステップと、
前記切替先のMAアンプに対応するマイクロアクチュエータの切替に伴う振動が所定の大きさ未満となる所定時間の経過後に前記切替元のMAアンプから前記切替先のMAアンプに切替を行わせるステップと、
を備えた磁気ディスク装置の制御方法。
【請求項10】
対応する磁気ヘッドの位置決めを行う第1のマイクロアクチュエータを駆動する第1MAアンプと、対応する磁気ヘッドの位置決めを行う第2のマイクロアクチュエータと、前記第2のマイクロアクチュエータを駆動する第2MAアンプと、を備えた磁気ディスク装置の制御方法において、
前記磁気ヘッドのシーク順序の並び替えを行うに際し、
前記並び替えにおいて、切替元のMAアンプを用いる磁気ヘッドを先の順番で並べ、切替先のMAアンプを用いる磁気ヘッドを後の順番で並べるステップと、
並び替えた前記シーク順序にしたがって、オン状態にある切替元のMAアンプからオフ状態にある切替先のMAアンプに切り替えるステップと、
を備えた磁気ディスク装置の制御方法。
【請求項11】
対応する磁気ヘッドの位置決めを行う第1のマイクロアクチュエータを駆動する第1MAアンプと、対応する磁気ヘッドの位置決めを行う第2のマイクロアクチュエータと、前記第2のマイクロアクチュエータを駆動する第2MAアンプと、を備えた磁気ディスク装置をコンピュータにより制御するプログラムにおいて、
前記コンピュータを、
オン状態にある切替元のMAアンプからオフ状態にある切替先のMAアンプに切り替える場合に、前記切替元のMAアンプをオン状態に維持する手段と、
前記切替元のMAアンプをオン状態に維持したまま、切替先のMAアンプを所定のスルーレートで立ち上げる手段と、
前記切替先のMAアンプに対応するマイクロアクチュエータの切替に伴う振動が所定の大きさ未満となる所定時間の経過後に前記切替元のMAアンプから前記切替先のMAアンプに切替を行わせる手段と、
して機能させるプログラム。
【請求項12】
対応する磁気ヘッドの位置決めを行う第1のマイクロアクチュエータを駆動する第1MAアンプと、対応する磁気ヘッドの位置決めを行う第2のマイクロアクチュエータと、前記第2のマイクロアクチュエータを駆動する第2MAアンプと、を備えた磁気ディスク装置をコンピュータにより制御するプログラムにおいて、
前記コンピュータを、
前記磁気ヘッドのシーク順序の並び替えを行うに際し、
前記並び替えにおいて、切替元のMAアンプを用いる磁気ヘッドを先の順番で並べ、切替先のMAアンプを用いる磁気ヘッドを後の順番で並べる手段と、
並び替えた前記シーク順序にしたがって、オン状態にある切替元のMAアンプからオフ状態にある切替先のMAアンプに切り替える手段と、
して機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気ディスク装置、磁気ディスク装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気ディスク装置としてのHDDにおいて磁気ヘッドの位置決めを行うマイクロアクチュエータ(Micro actuator)の特性向上のため、オフセット制御の機能やHDD本体の機械機構のみを使い、外部回路を用いてプロダクト・サーボ・パターンを書き込むSSW(Self Servo Write)における処理時間を短縮するため、複数のマイクロアクチュエータを同時に駆動する機能が提案されている。
このような構成を採った場合、1台のHDDにマイクロアクチュエータアンプ(MAアンプ)を複数系統持つことになり、実際にHDDの製品を使用する環境において待機電力が増えることとなっていた。
このための対策として、使用しない磁気ヘッドのMAアンプをオフ状態とすることが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第9007714号明細書
【特許文献2】米国特許第11393496号明細書
【特許文献3】米国特許第6646825号明細書
【特許文献4】特開平4-113850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術においては、マイクロアクチュエータを駆動するための駆動電力を供給するMAアンプのオン/オフの切換はシークの開始時に行っていたが、この切り替え時に磁気ヘッドを保持するサスペンションの振動が発生し、磁気ヘッドの位置決め精度が悪化し、HDDのランダムアクセス性能が悪化してしまうこととなっていた。
これを解決するため、例えば、ピエゾ駆動回路で、MAアンプの電圧に傾きを設ける技術が提案されているが、MAアンプの電圧の傾きをゆるやかにするだけだと切り替えに時間がかかり、結局、HDDのランダムアクセス性能が悪化してしまっていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、マイクロアクチュエータの切替時に発生する磁気ヘッドの振動を抑制し、位置決め精度の向上を図るとともに、アクセス性能の低下を抑制することが可能な磁気ディスク装置、磁気ディスク装置の制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の磁気ディスク装置は、対応する磁気ヘッドの位置決めを行う第1のマイクロアクチュエータを駆動する第1MAアンプと、対応する磁気ヘッドの位置決めを行う第2のマイクロアクチュエータと、前記第2のマイクロアクチュエータを駆動する第2MAアンプと、を備えた磁気ディスク装置において、オン状態にある切替元のMAアンプからオフ状態にある切替先のMAアンプに切り替える場合に、前記切替元のMAアンプをオン状態に維持したまま、前記切替先のMAアンプを立ち上げ、所定時間の経過後に前記切替元のMAアンプから前記切替先のMAアンプに切替を行わせる制御部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る磁気ディスク装置の概要構成例の説明図である。
図2図2は、実施形態の磁気ディスク装置の概要構成例の平面図である。
図3図3は、従来の磁気ヘッドチェンジ時の動作説明図である。
図4図4は、第1実施形態の動作原理の説明図である。
図5図5は、第1実施形態の磁気ヘッドチェンジ時の動作説明図である。
図6図6は、第1実施形態で用いる制御用データテーブルの説明図である。
図7図7は、実施形態のマイクロアクチュエータの切替処理の処理フローチャートである。
図8図8は、第1実施形態のMAアンプの切替の一例の説明図である。
図9図9は、第2実施形態のMAアンプの切替の一例の説明図である。
図10図10は、第3実施形態で用いる制御用データテーブルの説明図である。
図11図11は、第3実施形態のMAアンプの切替の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、実施形態について、図面を参照して説明する。
[1]第1実施形態
図1は、実施形態に係る磁気ディスク装置の概要構成例の説明図である。
磁気ディスク装置10は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)である。なお、磁気ディスク装置10は、ハイブリッドHDDのような他の磁気ディスク装置であっても良い。
【0009】
磁気ディスク装置10は、ホスト2に通信ラインを介して接続可能である。ここで、磁気ディスク装置10とホスト2とは、例えば、SAS(Serial Attached SCSI)規格に準拠した通信プロトコルを用いて通信ラインを介した通信を行うことができる。なお、磁気ディスク装置10とホスト2との間の通信ラインの規格は、この例に限られるものではない。
【0010】
ホスト2は、例えばプロセッサ、パーソナルコンピュータ、又はサーバとして構成される。磁気ディスク装置10は、ホスト2からアクセスコマンド(例えば、リードコマンド及びライトコマンド)を受け付けることができる。
【0011】
図2は、実施形態の磁気ディスク装置の概要構成例の平面図である。
磁気ディスク装置10は、スピンドルモータ(SPM)11と、複数の磁気ディスク12と、複数の磁気ヘッド13と、アクチュエータユニット14と、ランプロード機構15と、ヘッドアンプ16と、SoC17と、サーボコントローラ(SVC)18とを備えている。
【0012】
スピンドルモータ11は、回転軸19を有している。この回転軸19には、複数の磁気ディスク12が、例えばクランプによって保持されている。スピンドルモータ11は、回転軸19まわりに、複数の磁気ディスク12を一体的に回転させる。
【0013】
複数の磁気ディスク12の両面には、データの記録が可能な記録面が形成されている。複数の磁気ヘッド13の数は、当該複数の磁気ヘッド13が複数の磁気ディスク12の記録面にアクセス可能なように設定される。
【0014】
複数の磁気ヘッド13のそれぞれは、対応する磁気ディスク12の記録面に対向可能なように設けられる。複数の磁気ヘッド13のそれぞれは、当該磁気ヘッド13が対向する磁気ディスク12の記録面に対し、データの記録及びデータの再生を行うことができる。
図1においては、図示の簡略化と理解の容易のため、磁気ヘッド13は、磁気ヘッドID=H0~H5の6個の磁気ヘッドを図示しているが、実際には、さらに多くの磁気ヘッド13(例えば、20個)が設けられている。
【0015】
また、図1に示したように、アクチュエータユニット14は、複数のサスペンション21と、複数のアクチュエータアーム22と、回転軸23と、ボイスコイルモータ(VCM)24と、複数のマイクロアクチュエータ(MA)25とを備えている。
【0016】
複数のサスペンション21のそれぞれは、弾性変形可能な板状に形成される。複数のサスペンション21のそれぞれは、複数の磁気ヘッド13のうちの対応する一つを、当該サスペンション21の先端近傍で支持している。
【0017】
複数のアクチュエータアーム22の一方の端部は、回転軸23まわりに回転可能に、当該回転軸23に支持される。複数のアクチュエータアーム22のそれぞれの他方の端部に、複数のサスペンション21のうち対応する一つが取り付けられる。
【0018】
ボイスコイルモータ24は、アクチュエータアーム22と、当該アクチュエータアーム22に取り付けられたサスペンション21とを、回転軸23まわりに所定の範囲内で回転させる。SPM11の回転軸19とアクチュエータユニット14の回転軸23とは、略平行且つ互いに離間した位置に設けられる。
このため、ボイスコイルモータ24は、サスペンション21に支持された磁気ヘッド13を磁気ディスク12に対して移動させることができる。
【0019】
ボイスコイルモータ24は、アクチュエータアーム22を磁気ディスク12の記録面に対して略平行に移動させる。本実施形態のボイスコイルモータ24は、磁気ヘッド13を、磁気ディスク12に対して、回転軸19と略直交する径方向に移動させる。
【0020】
マイクロアクチュエータ25は、サスペンション21とアクチュエータアーム22との接続部分に設けられる。マイクロアクチュエータ25は、例えば、圧電素子のようなアクチュエータ素子である。
マイクロアクチュエータ25は、サスペンション21を磁気ディスク12の記録面に対して略平行に移動させることができる。すなわち、アクチュエータユニット14は、ボイスコイルモータ24とマイクロアクチュエータ25とによって磁気ヘッド13を移動させる、二段アクチュエータとして構成される。
【0021】
上記構成において、サスペンション21、アクチュエータアーム22及びマイクロアクチュエータ25の数は、磁気ヘッド13の数に対応して設定される。また、アクチュエータユニット14が複数のボイスコイルモータ24を有しても良い。
【0022】
アクチュエータユニット14は、ボイスコイルモータ24とマイクロアクチュエータ25とによって、磁気ディスク12の記録面に対し、軌跡Tに沿って磁気ヘッド13を移動させることができる。磁気ディスク12の外端近傍の軌跡T上に、ランプロード機構15が設けられる。このため、ボイスコイルモータ24は、磁気ヘッド13を、ランプロード機構15と回転軸19との間で移動させることができる。
【0023】
ランプロード機構15は、例えば、アンロード時及びリトラクト時に、複数の磁気ヘッド13をパーキングする。例えば、ランプロード機構15は、サスペンション21の先端に設けられたリフトタブを支持することで、サスペンション21に支持された磁気ヘッド13を退避位置に保持することができる。
【0024】
図1に示すヘッドアンプ16は、磁気ヘッド13が磁気ディスク12から読み取った信号を増幅して出力してSoC17に供給する。SoC17は、ヘッドアンプ16から供給された信号を、リードチャネル回路によってデジタルデータに復調する。
【0025】
さらに、ヘッドアンプ16は、デジタルデータに対応した信号をSoC17から供給される。ヘッドアンプ16は、SoC17から供給された信号を増幅して、磁気ヘッド13に供給する。磁気ヘッド13は、ヘッドアンプ16から供給された信号を磁気ディスク12の記録面に記録する。
【0026】
SVC18は、アクチュエータユニット14のボイスコイルモータ24及びマイクロアクチュエータ25を制御する。具体的には、SVC18は、SoC17からの指示に基づいてアクチュエータユニット14を駆動することによって、磁気ヘッド13をSoC17から指示された位置に位置決めする。
【0027】
さらに、SVC18は、SoC17からの指示に基づいてスピンドルモータ11を駆動する。SVC18は、スピンドルモータ11の回転速度が予め決められた目標速度で一定となるように、スピンドルモータ11を駆動する。
【0028】
SVC18は、磁気ディスク装置10への電源供給が切断されたときに、磁気ヘッド13をリトラクトする。さらに、SVC18は、磁気ヘッド13の位置決め制御においてシークエラーが発生した場合に、磁気ヘッド13をリトラクトしても良い。
【0029】
SoC17は、ホスト2に電気的に接続される。SoC17は、ホスト2からのアクセスコマンドを解釈して、解釈結果に基づき、磁気ディスク12へのアクセスのような種々の制御を実行する。
【0030】
SoC17は、MPU(Micro-Processing Unit)17aを有する。MPU17aは、ファームウェアプログラムに従って動作する。ファームウェアプログラムは、所定の不揮発性の記憶領域に格納されている。所定の不揮発性の記憶領域は、磁気ディスク12であっても良いし、SoC17のROM(Read Only Memory)であっても良い。
【0031】
MPU17aは、磁気ディスク装置10全体の動作を制御する。例えば、MPU17aは、ヘッドアンプ16を介して磁気ヘッド13を用いた磁気ディスク12へのアクセスを制御する。また、MPU17aは、SVC18に対してスピンドルモータ11の回転制御を指示したり、SVC18を介してアクチュエータユニット14のロード/アンロードの制御を実行したりする。
【0032】
また、MPU17aは、位置決め制御では、磁気ヘッド13の位置を目標位置pos_targetに追従させるため、VCM24の駆動電圧の指示値及びMA25の駆動電圧の指示値を演算する。MPU17aは、磁気ヘッド13が磁気ディスク12の記録面に形成されたサーボ情報から読み出した位置信号posをフィードバック入力として用いて各指示値を演算し、得られた各指示値をSVC18に送信する。
【0033】
SVC18は、ボイスコイルモータ24の駆動電圧の指示値に応じた電圧をボイスコイルモータ24に印加し、マイクロアクチュエータ25の駆動電圧の指示値に応じた電圧をマイクロアクチュエータ25に印加する。これによって、磁気ヘッド13が目標位置位置決めされる。
【0034】
次に実施形態の動作説明に先立ち、まず従来の問題点について説明する。
図3は、従来の磁気ヘッドチェンジ時の動作説明図である。
図3において、マイクロアクチュエータ(MA)をオン状態にする場合にMAアンプからマイクロアクチュエータに印加される電圧を10Vとし、マイクロアクチュエータ(MA)をオフ状態にする場合にMAアンプからマイクロアクチュエータに印加される電圧を0Vとする。
【0035】
図3の例では、オフ状態にあるマイクロアクチュエータMA1をオン状態とし、オン状態にあるマイクロアクチュエータMA2をオフ状態とする場合、従来においては、ヘッドチェンジタイミングに相当する時刻t11の直前の時刻t10に、第1スルーレート(Slew rate)でMAアンプの出力電圧を変化させてマイクロアクチュエータを切り替えていた。
より詳細には、マイクロアクチュエータMA1を駆動するために第1のMAアンプから出力される電圧をVMA11とし、マイクロアクチュエータMA2を駆動するために第2のMAアンプから出力される電圧をVMA2とした場合、時刻t10において第1のMAアンプから出力される電圧VMA1を第1スルーレートで上昇させ、第2のMAアンプから出力される電圧VMA12を第1スルーレートで下降させる。
この場合において、磁気ヘッドを保持するサスペンションの振動が発生して、図3に示すように、ヘッドチェンジ後に磁気ヘッド位置の目標位置PTGに対するずれが大きくなり、位置決め精度が低下することとなっていた。
【0036】
次に第1実施形態の動作原理について説明する。
図4は、第1実施形態の動作原理の説明図である。
図4において、複数の磁気ヘッド13として、磁気ヘッドIDの添え字が偶数(図4の例では、磁気ヘッドID=H0、H2、H4、……、H2n。但し、nは、0以上の整数)のn個の磁気ヘッド13Aと、磁気ヘッドIDの添え字が奇数(図4の例では、磁気ヘッドID=H1、H3、H5、……、H2n+1。但し、nは、0以上の整数)のn個の磁気ヘッド磁気ヘッド13Bと、を備えているものとする。
【0037】
上記構成において、磁気ヘッド13Aは、それぞれ対応するマイクロアクチュエータMA1により駆動されており、磁気ヘッド13Bは、それぞれ対応するマイクロアクチュエータMA2により駆動されている。
【0038】
さらに全てのマイクロアクチュエータMA1は、第1MAアンプ30Aにより電力が供給されて駆動される。
同様に全てのマイクロアクチュエータMA2は、第2MAアンプ30Bにより電力が供給されて駆動される。
【0039】
図5は、第1実施形態の磁気ヘッドチェンジ時の動作説明図である。
図5においても、マイクロアクチュエータ25(MA1あるいはMA2)をオン状態にする場合に第1MAアンプ30Aあるいは第2MAアンプ30Bからマイクロアクチュエータ25に印加される電圧を10Vとし、マイクロアクチュエータ25(MA1あるいはMA2)をオフ状態にする場合に第1MAアンプ30Aあるいは第2MAアンプ30Bからマイクロアクチュエータ25に印加される電圧を0Vとする。
【0040】
図5の例では、オフ状態にあるマイクロアクチュエータMA1をオン状態とし、オン状態にあるマイクロアクチュエータMA2をオフ状態とする場合、ヘッドチェンジタイミングに相当する時刻t1より前の時刻t0(t1-t0>t11-t10)に、第2スルーレートの絶対値(<第1スルーレートの絶対値)でMAアンプの出力電圧を変化させる。ここで、第1スルーレートは、信号立ち上がり時の信号の傾きであり、第2スルーレートは、信号立ち下がり時の信号の傾きである。
【0041】
より具体的には、第1MAアンプ30Aにより対応するオフ状態にあるマイクロアクチュエータMA1をオン状態とし、第2MAアンプ30Bにより対応するオン状態にあるマイクロアクチュエータMA2をオフ状態とする場合、第1MAアンプ30Aの出力電圧を0Vから10Vとなるように第1スルーレートで上昇させ、第2MAアンプ30Bの出力電圧を10Vから0Vとなるように第2スルーレートで下降させることとなる。
【0042】
そして、オン状態とするマイクロアクチュエータMA1に第1MAアンプ30Aにより印加される電圧VMA11を時刻t0から第1スルーレートで上昇させることにより、時刻t1において、電圧VMA11の電圧はオン状態に相当する10Vとなる。
【0043】
さらにその状態を維持し、磁気ヘッドを保持するサスペンションの振動が小さくなって安定する時刻t2に至ると、制御対象のマイクロアクチュエータをマイクロアクチュエータMA2からマイクロアクチュエータMA1に切り替えることとなる。
【0044】
この場合において、時刻t1から時刻t2に至るまでの時点では、マイクロアクチュエータMA1及びマイクロアクチュエータMA2のいずれもオン状態である。
そして、時刻t2に至ると、オフ状態とするマイクロアクチュエータMA2に第2MAアンプ30Bにより印加される電圧VMA12を第2スルーレートで徐々に低下させることにより、時刻t3において、電圧VMA12の電圧はオフ状態に相当する0Vとなる。
【0045】
以上の動作を行わせることにより、制御対象のマイクロアクチュエータの切替がなされるが、この場合においても、図4に示すように、第2MAアンプ30Bにより駆動される磁気ヘッド13Bを保持するサスペンションの振動は発生する。
しかしながら、実施形態によれば、図3に示した場合と比較して、振動が小さくなり、ヘッドチェンジ後の磁気ヘッド位置の目標位置PTGに対するずれが従来より小さくなり、位置決め精度を向上させることができることがわかる。
【0046】
次に第1実施形態の詳細動作について説明する。
図6は、第1実施形態で用いる制御用データテーブルの説明図である。
第1実施形態の制御用データテーブルTB1は、各磁気ヘッド12を特定するための磁気ヘッドIDデータ31と、磁気ヘッドIDデータ31で特定される磁気ヘッドに対応するマイクロアクチュエータを特定するための対応MAデータ32を備えている。
【0047】
例えば、磁気ヘッドID=“H1”で特定される磁気ヘッドを駆動する対応マイクロアクチュエータは、マイクロアクチュエータMA2であり、磁気ヘッドID=“H4”で特定される磁気ヘッドを駆動する対応マイクロアクチュエータは、マイクロアクチュエータMA1となっている。
換言すれば、図6において、第1MAアンプ30Aは、磁気ヘッドID=“H0”、“H2” 、“H4” 、“H6”、……で特定される複数の磁気ヘッド13Aを対応するマイクロアクチュエータMA1を介して駆動していることを示している。
同様に、第2MAアンプ30Bは、磁気ヘッドID=“H1”、“H3” 、“H5” 、“H7”、……で特定される複数の磁気ヘッド13Bを対応するマイクロアクチュエータMA2を介して駆動していることを示している。
【0048】
図7は、実施形態のマイクロアクチュエータの切替処理の処理フローチャートである。
このマイクロアクチュエータの切替処理については、SoC17のMPU17aがSVC18を制御することにより行われる。
SoC17は、磁気ヘッド割当処理において、図6に示した制御用データテーブルTB1を参照し(ステップS11)、制御用データテーブルの内容に基づいて、MAアンプの切替が必要であるか否かを判定する(ステップS12)。
ステップS12の判定において、MAアンプの切替が必要ではない場合には(ステップS11;No)、処理を終了する。
ステップS12の判定において、MAアンプの切替が必要である場合には(ステップS12;Yes)、ステップS11で参照した図5に示した制御用データテーブルTB1に基づいて、切替先のMAアンプを選択する(ステップS13)。
【0049】
図8は、第1実施形態のMAアンプの切替の一例の説明図である。
図8(A)は、従来のNCQ(Native Command Queuing)でシーク順序を並び替える場合のMAアンプの切替順番を示しており、図8(B)は、第1実施形態のMAアンプの切替順番を示している。
従来においては、例えば、図8(A)に示す様に、データアクセス順番が磁気ヘッドID=“H0”→磁気ヘッドID=“H3”→磁気ヘッドID=“H4”→磁気ヘッドID=“H1”→磁気ヘッドID=“H6”→磁気ヘッドID=“H5”となったとすると、磁気ヘッドを切り替える毎にオン状態にすべきマイクロアクチュエータが変更されることとなっていた。
この結果、図3で示した様に振動が発生し、位置決め精度が悪くなっていた。
そこで、本第1実施形態においては、NCQでシーク順序を並び替える場合のMAアンプの切替順番において、現在オン状態にあるマイクロアクチュエータと同一のマイクロアクチュエータにより駆動される磁気ヘッドを優先的に用いるようにSoC17は制御を行う。
【0050】
図8において、磁気ヘッドID=“H0”、“H4” 、“H6”で特定される複数の磁気ヘッド13Aは、第1MAアンプ30Aにより電力が供給されて対応するマイクロアクチュエータMA1によりそれぞれ駆動されることを示している。
同様に、磁気ヘッドID=“H1”、“H3” 、“H5”で特定される複数の磁気ヘッド13Bは、第2MAアンプ30Bにより電力が供給されて対応するマイクロアクチュエータMA2によりそれぞれ駆動されることを示している。
【0051】
すなわち、図8(A)に示す場合に対応する場合には、SoC17は、ステップS13で参照した制御用データテーブルTB1に基づいて、図8(B)に示す様に、まず、現在オン状態にあるマイクロアクチュエータがMA1である場合には、データアクセス順番をマイクロアクチュエータMA1に対応する磁気ヘッドID=“H0”→磁気ヘッドID=“H4”→磁気ヘッドID=“H6”とする。
したがって、この一連のデータアクセス中にマイクロアクチュエータMA1がオフ状態に移行されることはない。
【0052】
つづいて、SoC17は、切替先MAアンプとしてマイクロアクチュエータMA2を選択する(ステップS13)。
続いて、図8(B)に示す場合には、図5の場合と同様に、オフ状態にあるマイクロアクチュエータMA2をオン状態とする切替先MAアンプ立ち上げ処理を行う(ステップS14)。すなわち、第2MAアンプ30Bの立ち上げ処理を行う。
より具体的には、第2MAアンプの30Bの出力電圧を第1スルーレートで上昇させる。
【0053】
そして、オン状態とする複数のマイクロアクチュエータMA2に対し、第2MAアンプ30Bにより印加する電圧の第1スルーレートでの上昇を開始してから、第1所定時間が経過したか否か(図5の例では、時刻t2に至ったか否か)を判定する(ステップS15)。
ステップS15の判定において、第1所定時間が経過していない場合には(ステップS15;No)、待機状態となる。
【0054】
ステップS15の判定において、第1所定時間が経過した場合には、マイクロアクチュエータMA2に印加される電圧が所定のオン状態の電圧(上述の例の場合、10V)となり、かつ、振動も小さくなっているっているはずであるので、制御対象のマイクロアクチュエータをマイクロアクチュエータMA1からマイクロアクチュエータMA2に切り替える(ステップS16)。
【0055】
そして、現在オン状態にあるマイクロアクチュエータは、第2MAアンプ30Bにより駆動されているマイクロアクチュエータMA2であるので、データアクセス順番をマイクロアクチュエータMA2に対応する磁気ヘッドID=“H1”→磁気ヘッドID=“H3”→磁気ヘッドID=“H5”とする。
【0056】
これらの動作と並行して、切替元のMAアンプである第1MAアンプ30Aの立下げを開始する(ステップS17)。より具体的には、第1MAアンプ30Aの出力電圧の第2スルーレートでの下降を開始する。
そして、オフ状態とするマイクロアクチュエータMA1に第1MAアンプ30Aにより印加される電圧を第2スルーレートで下降させてから第2所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS18)。
【0057】
ステップS18の判定において、第2所定時間が経過していない場合には(ステップS18;No)、待機状態となる。
ステップS18の判定において、第2所定時間が経過した場合には(ステップS18;Yes)、マイクロアクチュエータMA1に対応する第1MAアンプ30Aを立下げて、オフ状態として処理を終了する。
【0058】
以上の様な構成によれば図8(A)に示す従来においては、マイクロアクチュエータの切替、ひいては、MAアンプの切替が5回必要であったのに対し、図8(B)に示す第1実施形態においては、マイクロアクチュエータの切替が1回ですみ、マイクロアクチュエータの切替、すなわち、MAアンプの切替に伴う影響を低減して、磁気ヘッドの位置決め精度の向上を図ることができる。
【0059】
以上の説明においては、図5で示した制御と、図8(B)に示した制御の双方を行っていたが、何れか一方のみの制御だけでもマイクロアクチュエータの切替に伴う影響を低減して、磁気ヘッドの位置決め精度の向上を図ることが可能である。
【0060】
[2]第2実施形態
次に第2実施形態について説明する。
図9は、第2実施形態のMAアンプの切替の一例の説明図である。
図9(A)は、従来のシーケンシャルアクセス時におけるMAアンプの切替順番を示しており、図9(B)は、第2実施形態のシーケンシャルアクセス時におけるMAアンプの切替順番を示している。
ここで、シーケンシャルアクセスとは、通常、LBA(ロジックブロックアドレス)の小さい順に領域にアクセスする処理をいう。
図9においても、第1MAアンプ30Aに電力を供給されている複数のマイクロアクチュエータMA1に対応する、磁気ヘッドID=“H0”、“H2”、…… 、“H18”で特定される複数の磁気ヘッド13Aを駆動していることを示している。
同様に、第2MAアンプ30Bに電力を供給されている複数のマイクロアクチュエータMA2に対応する、磁気ヘッドID=“H1”、“H3”、……、“H19”で特定される複数の磁気ヘッド13Bを駆動していることを示している。
【0061】
そこで、本第2実施形態においては、オン状態にある切替元のMAアンプからオフ状態にある切替先のMAアンプに切り替える場合に、シーケンシャルアクセス時に、切替元のMAアンプを用いる磁気ヘッドが先の順番となり、切替先のMAアンプを用いる磁気ヘッドを後の順番となるように予め論理アドレスの割当を行っている。
すなわち、上述の例の場合には、第1MAアンプ30Aに電力を供給されている複数のマイクロアクチュエータMA1に対応する、磁気ヘッドID=“H0”、“H2”、…… 、“H18”で特定される複数の磁気ヘッド13Aの順番の後に、第2MAアンプ30Bに電力を供給されている複数のマイクロアクチュエータMA2に対応する、磁気ヘッドID=“H1”、“H3”、……、“H19”で特定される複数の磁気ヘッド13Bの順番となるようにLBAが小さい側から大きい側となるように配置を行っている。
【0062】
以下においても再び図7の処理フローチャートを参照するものとする。
従来においては、例えば、図9(A)に示す様に、データアクセス順番が磁気ヘッドID=“H0”→磁気ヘッドID=“H2”→磁気ヘッドID=“H4”→……→磁気ヘッドID=“H16”→磁気ヘッドID=“H17”→磁気ヘッドID=“H18”となるようになっていたとする。
【0063】
この場合においても、第1実施形態と同様に、対応するマイクロアクチュエータの切替が頻繁におこり、図3で示した様に振動が発生し、位置決め精度が悪くなっていた。
【0064】
すなわち、図9(A)に示す場合に対応する場合には、図9(B)に示す様に、まず、現在オン状態にあるマイクロアクチュエータがMA1である場合、すなわち、現在電力を供給しているMAアンプが第1MAアンプ30Aである場合には、データアクセス順番をマイクロアクチュエータMA1に対応する磁気ヘッドID=“H0”→磁気ヘッドID=“H2”→磁気ヘッドID=“H4”→……→磁気ヘッドID=“H18”となるように予め論理アドレスの割当を行っている。
【0065】
つづいて、SoC17は、制御用データテーブルTB1を参照し(ステップS12)、マイクロアクチュエータMA1に対応する磁気ヘッドに対するアクセスが終了すると、シーケンシャルアクセスの順番に基づいて切替先MAアンプとして複数のマイクロアクチュエータMA2に対応する第2MAアンプ30Bを選択する(ステップS13)。
【0066】
続いて、図9(B)に示す場合には、図4の場合と同様に、オフ状態にあるマイクロアクチュエータMA2をオン状態とする切替先MAアンプ立ち上げ処理を行う(ステップS14)。すなわち、第2MAアンプ30Bの立ち上げ処理を行う。
より具体的には、第2MAアンプの30Bの出力電圧を第1スルーレートで上昇させる。
【0067】
そして、第2MAアンプの30Bの出力電圧を第1スルーレートで上昇を開始してから、第1所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS15)。
ステップS15の判定において、第1所定時間が経過していない場合には(ステップS15;No)、待機状態となる。
【0068】
ステップS15の判定において、第1所定時間が経過した場合には(ステップS15;Yes)、マイクロアクチュエータMA2に印加される電圧が所定のオン状態の電圧(上述の例の場合、10V)となり、かつ、振動も小さくなっているっているはずであるので、制御対象のマイクロアクチュエータをマイクロアクチュエータMA1からマイクロアクチュエータMA2に切り替える(ステップS16)。
【0069】
そして、現在オン状態にあるマイクロアクチュエータはマイクロアクチュエータMA2であるので、所定の論理アドレスに従ってデータアクセス順番がマイクロアクチュエータMA2に対応する磁気ヘッドID=“H19”→磁気ヘッドID=“H17”→……→磁気ヘッドID=“H1”となる。
【0070】
これらの動作と並行して、切替元のMAアンプである第1MAアンプ30Aの立下げを開始する(ステップS17)。より具体的には、第1MAアンプ30Aの出力電圧の第2スルーレートでの下降を開始する。
そして、オフ状態とするマイクロアクチュエータMA1に印加される電圧を第2スルーレートで下降させて、第2所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS18)。
ステップ18の判定において、第2所定時間が経過していない場合には(ステップS18;No)、待機状態となる。
ステップS18の判定において、第2所定時間が経過した場合には、マイクロアクチュエータMA1に対応する第1MAアンプ30Aをオフ状態として処理を終了する。
【0071】
以上の様な構成によれば、図9(A)に示す従来においては、マイクロアクチュエータの切替が複数回必要であったのに対し、図9(B)に示す第1実施形態においては、マイクロアクチュエータの切替が1回ですみ、シーケンシャルアクセス時であってもマイクロアクチュエータの切替に伴う影響を低減して、磁気ヘッドの位置決め精度の向上を図ることができる。
【0072】
[3]第3実施形態
次に第3実施形態について説明する。
図10は、第3実施形態で用いる制御用データテーブルの説明図である。
第3実施形態の制御用データテーブルTB2は、各磁気ヘッドを特定するための磁気ヘッドIDデータ41と、磁気ヘッドIDデータ41で特定される磁気ヘッドに対応するマイクロアクチュエータを特定するための対応MAデータ42と、マイクロアクチュエータ駆動開始時の振動レベルを格納した振動ランクデータ43と、を備えている。
この場合において、振動レベルとは、磁気ヘッド13における振動量の大きさを複数の段階に区分したものである。
上記構成において、振動ランクデータは、予め測定により定められており、図9の例の場合には、最も振動量が少ないランクで有り、振動量が第1の所定振動量より少ない振動ランク=“S”、最も振動量が多いランクで有り、振動量が第1の所定振動量より多い第2の所定振動量よりもさらに多い振動ランク=“L”と、振動量が第1の所定振動量以上第2の振動量以下のランクである振動ランク=“M”の3つのランクとなっている。
【0073】
例えば、磁気ヘッドID=“H0”で特定される磁気ヘッドを駆動する対応マイクロアクチュエータは、マイクロアクチュエータMA1であり、対応する振動ランク=“S”とされている。また、磁気ヘッドID=“H3”で特定される磁気ヘッドを駆動する対応マイクロアクチュエータは、マイクロアクチュエータMA2であり、対応する振動ランク=“M”とされている。さらに磁気ヘッドID=“H18”で特定される磁気ヘッドを駆動する対応マイクロアクチュエータは、マイクロアクチュエータMA1であり、対応する振動ランク=“L”とされている。
【0074】
図11は、第3実施形態のMAアンプの切替の一例の説明図である。
図11(A)は、従来のシーケンシャルアクセス時におけるMAアンプの切替順番を示しており、図11(B)は、第3実施形態のシーケンシャルアクセス時におけるMAアンプの切替順番を示している。
以下においてもふたたび図7の処理フローチャートを参照するものとする。
従来においては、例えば、図11(A)に示す様に、データアクセス順番が、磁気ヘッドID=“H0”:MA1:振動ランク=“S”→磁気ヘッドID=“H1”:MA2:振動ランク=“S”→磁気ヘッドID=“H2”:MA1:振動ランク=“M”→磁気ヘッドID=“H3”:MA2:振動ランク=“M”→……→磁気ヘッドID=“H16”:MA1:振動ランク=“S”→磁気ヘッドID=“H17”:MA2:振動ランク=“S”→磁気ヘッドID=“H18:MA1:振動ランク=“L”→磁気ヘッドID=“H19”:MA2:振動ランク=“L”となっていたとする。
この場合においても、第1実施形態と同様に、対応するマイクロアクチュエータの切替が頻繁に起こるとともに、切替後に振動ランクの高いMAアンプの駆動がなされることにより、よりいっそう、図3で示した様に振動が発生し、位置決め精度が悪くなる時間が多くなる虞があった。
そこで、本第3実施形態においては、シーケンシャルアクセス時にシーク順序を並び替える場合のMAアンプの切替順番において、次にオン状態にするマイクロアクチュエータを切り替える場合には、選択可能なマイクロアクチュエータのうち、最も振動ランクの低いマイクロアクチュエータにより駆動される磁気ヘッドを用いるようにLBA割り当てを変更する。
【0075】
まず、SoC17は、磁気ヘッド割当処理において、図5に示した制御用データテーブルTB1を参照し(ステップS11)、制御用データテーブルの内容に基づいて、MAアンプの切替が必要であるか否かを判定する(ステップS12)。
ステップS12の判定において、MAアンプの切替が必要ではない場合には(ステップS12;No)、処理を終了する。
ステップS12の判定において、MAアンプの切替が必要である場合には(ステップS12;Yes)、再び図5に示した制御用データテーブルTB1を参照する(ステップS13)。
すなわち、図11(A)に示す場合に対応する場合には、SoC17は制御用データテーブルTB2を参照し、図11(B)に示す様に、まず、現在オン状態にあるマイクロアクチュエータがMA1である場合には、データアクセス順番をマイクロアクチュエータMA1に対応する磁気ヘッドID=“H0”:MA1:振動ランク=“S”→磁気ヘッドID=“H2”:MA1:振動ランク=“S”→……→磁気ヘッドID=“H18”:MA1:振動ランク=“L”→磁気ヘッドID=“H16”:MA1:振動ランク=“S”とする。
【0076】
つづいて、SoC17は、マイクロアクチュエータMA1に対応する磁気ヘッドに対するアクセスが終了すると、切替先MAアンプとしてマイクロアクチュエータMA2を選択する(ステップS13)。
続いて、図11(B)に示す場合には、図5の場合と同様に、オフ状態にあるマイクロアクチュエータMA2をオン状態とする切替先MAアンプ立ち上げ処理を行う(ステップS14)。
【0077】
そして、オン状態とするマイクロアクチュエータMA2に印加される電圧を第1スルーレートで上昇させ、第1所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS15)。
ステップS15の判定において、第1所定時間が経過した場合には、マイクロアクチュエータMA2に印加される電圧が所定のオン状態の電圧(上述の例の場合、10V)となり、かつ、振動も小さくなっているっているはずであるので、制御対象のマイクロアクチュエータをマイクロアクチュエータMA1からマイクロアクチュエータMA2に切り替える(ステップS16)。
【0078】
そして、現在オン状態にあるマイクロアクチュエータはマイクロアクチュエータMA2であるので、データアクセス順番をマイクロアクチュエータMA2に対応する磁気ヘッドID=“H17” :MA2:振動ランク=“S”→磁気ヘッドID=“H19” :MA2:振動ランク=“L”→……→磁気ヘッドID=“H1” :MA2:振動ランク=“S”とする。
したがって、上述の例の場合には、マイクロアクチュエータの切替時には、振動ランク=“S”に対応する磁気ヘッドが切替対象となるので、マイクロアクチュエータの切替時間を短縮でき、位置決め精度の向上が図れる。
【0079】
これらの動作と並行して、切替元のMAアンプを立下げて(ステップS17)、オフ状態とするマイクロアクチュエータMA1に印加される電圧を第2スルーレートで下降させて、第2所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS18)。
ステップS18の判定において、第2所定時間が経過していない場合には(ステップS19;No)、待機状態となる。
ステップS18の判定において、第2所定時間が経過した場合には、マイクロアクチュエータMA1に対応するMAアンプを立下げて、オフ状態として処理を終了する。
【0080】
以上の様な構成によれば、図11(A)に示す従来においては、マイクロアクチュエータの切替が複数回必要であったのに対し、図11(B)に示す第3実施形態においては、マイクロアクチュエータの切替が1回ですみ、シーケンシャルアクセス時であってもマイクロアクチュエータの切替に伴う影響を低減して、磁気ヘッドの位置決め精度の向上を図ることができる。
【0081】
[4]第4実施形態
以上においては、各マイクロアクチュエータと当該マイクロアクチュエータに対応するMAアンプについて説明したが、図1に示す様に、図1中、最上部のアクチュエータアーム22及び最下部のアクチュエータアーム22以外のアクチュエータアーム22には、上下方向にそれぞれ磁気ディスク12が対向しているため、磁気ディスク12のそれぞれのそれぞれに磁気ヘッド13が設けられている。
そして本第4実施形態においては、上下一対の磁気ヘッド13に対応するマイクロアクチュエータ25は独立に制御可能とされ、排他的にオン状態とされる。
【0082】
ここで、上下一対とは、一つのアクチュエータアーム22の第1の面(例えば、図1におけるアクチュエータアーム22の上面)と、第1の面に対し、磁気ディスク12の記録面に交差する方向であって前記第1の面とは反対の第2の面(上述の例の場合、図1におけるアクチュエータアーム22の下面)とに、それぞれ磁気ヘッド13が設けられていることをいう。
より詳細には、第1の面には、磁気ヘッド13Bが設けられ、第2の面には磁気ヘッド13Aが設けられている。
【0083】
この場合において、アクチュエータアーム22の上面側に設けられた磁気ヘッド13Bに対応するマイクロアクチュエータ25(=マイクロアクチュエータMA2)を駆動する第2MAアンプ30Bと、アクチュエータアーム22の下面側に設けられた磁気ヘッド13Aに対応するマイクロアクチュエータ25(=マイクロアクチュエータMA1)を駆動する第1MAアンプ30Aと、のうち、オン状態にある一方のMAアンプを切替元のMAアンプとし、他方を切替先のMAアンプとする。
【0084】
そして、切替元のMAアンプからオフ状態にある切替先のMAアンプへの切替を行わせるに際しては、オフ状態にあるMAアンプをオン状態に切り替える場合の電圧スルーレート(立ち上がり時のスルーレート)及びオン状態にあるMAアンプをオフ状態に切り替える場合の電圧スルーレート(立ち下がり時のスルーレート)を、対応するマイクロアクチュエータの共振周波数を避けた値に設定することが望まれる。
【0085】
これにより、MAアンプの切替に伴う、マイクロアクチュエータの振動を抑制することが可能となり、ひいては、アクセス性能の低下を招かないようにするためである。
この結果、本第4実施形態においても、マイクロアクチュエータの切替に伴う振動の影響を低減して、磁気ヘッドの位置決め精度の向上を図ることができる。
さらにマイクロアクチュエータの切替に伴なうアクセス時間の増加を抑制して、高速なアクセスが行える磁気ディスク装置を提供することができる。
【0086】
以上の説明のように、各実施形態によれば、マイクロアクチュエータの切替に伴う振動の影響を低減して、磁気ヘッドの位置決め精度の向上を図ることができる。
さらにマイクロアクチュエータの切替に伴なうアクセス時間の増加を抑制して、高速なアクセスが行える磁気ディスク装置を提供することができる。
【0087】
なお、本実施形態のSoCで実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。
【0088】
本実施形態の磁気ディスク装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでUSBメモリ、SSD(Solid State drive)等の半導体メモリ装置、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0089】
さらに、本実施形態の磁気ディスク装置で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の磁気ディスク装置で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0091】
例えば、マイクロアクチュエータの切替を長距離シークが発生した場合のみに限定することでマイクロアクチュエータの切替の頻度を減らすことが可能である。
また、以上の説明では、異なる二つのMAアンプにより駆動されている二つのマイクロアクチュエータ(MA1、MA2)を切り替える場合について説明したが異なる三つ以上のMAアンプにより駆動されている三つ以上(3系統以上)のマイクロアクチュエータを切り替えるようにすることも可能である。
【0092】
また、MAアンプの立ち上げ、立下げは一定の傾きだけではなく、図5に破細線Lstpとして示したように、出力電圧が階段状となるように立ち上げあるいは立下げてもよい。この場合において、ステップ数(段数)及び一段の高さについては、振動を抑制する観点から適宜設定することが可能である。
【符号の説明】
【0093】
10 磁気ディスク装置
11 スピンドルモータ
12 磁気ディスク
13 磁気ヘッド
14 アクチュエータユニット
15 ランプロード機構
16 ヘッドアンプ
17 SoC
17a MPU
18 SVC
19 回転軸
21 サスペンション
22 アクチュエータアーム
23 回転軸
24 ボイスコイルモータ
25 マイクロアクチュエータ
30A 第1MAアンプ
30B 第2MAアンプ
31 磁気ヘッドIDデータ
32 対応MAデータ
41 磁気ヘッドIDデータ
42 対応MAデータ
43 振動ランクデータ
MA1 マイクロアクチュエータ
MA2 マイクロアクチュエータ
TB1、TB2 制御用データテーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11