(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175912
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】温度センサの保持構造
(51)【国際特許分類】
G01K 1/14 20210101AFI20241212BHJP
H02K 11/25 20160101ALI20241212BHJP
【FI】
G01K1/14 L
H02K11/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094006
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000145242
【氏名又は名称】株式会社芝浦電子
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】梓沢 慶介
(72)【発明者】
【氏名】吉原 孝正
(72)【発明者】
【氏名】桐原 雅典
【テーマコード(参考)】
2F056
5H611
【Fターム(参考)】
2F056CL07
5H611AA01
5H611BB04
5H611PP02
5H611QQ04
5H611RR00
5H611UA02
(57)【要約】
【課題】巻線の外寸のばらつきによらず安定した測温性能を確保できる温度センサの保持構造を提供する。
【解決手段】巻線22を有する回転電機1に取り付けられ、巻線22の温度を検出する温度センサ50の保持構造は、巻線22が巻回されたインシュレータ40と、可撓性を有する線状に形成され、先端側53に巻線22の温度を検出する感温素子55を有する温度センサ50と、温度センサ50の基端側51を保持し、インシュレータ40に取り付けられるセンサホルダ60と、を備える。温度センサ50は、基端側51が巻線22の外面221に対して傾斜してセンサホルダ60により保持され、且つ、先端側53が巻線22の外面221に押し当てられる。センサホルダ60は、温度センサ50の先端側53の端部53aを巻線22の外面221に対して押し当て可能な押当部65を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線を有する電気機器に取り付けられ、前記巻線の温度を検出する温度センサの保持構造であって、
前記巻線が巻回された取付部材と、
可撓性を有する線状に形成され、先端側に前記巻線の温度を検出する感温素子を有する前記温度センサと、
前記温度センサの先端側とは反対側の基端側を保持し、前記取付部材に取り付けられるセンサ保持部材と、を備え、
前記温度センサは、基端側が前記取付部材の一面に沿って延びる前記巻線の外面に対して傾斜して前記センサ保持部材により保持され、且つ、先端側が前記巻線の該外面に押し当てられ、
前記センサ保持部材は、前記温度センサの先端側の端部を前記巻線の前記外面に対して押し当て可能な押当部を有する、
温度センサの保持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の温度センサの保持構造であって、
前記押当部は、対向する前記巻線の前記外面と略平行な押当面を有し、
前記巻線の前記外面と前記押当面との間隔は、前記取付部材の前記一面から前記巻線の前記外面までの高さが最大許容寸法である場合、前記温度センサの先端側の外径と略同一である、
温度センサの保持構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の温度センサの保持構造であって、
前記センサ保持部材は、前記取付部材に係止される第1係止部及び第2係止部を有し、
前記第1係止部は、前記温度センサに対して、前記温度センサが延びる方向と直交する方向の一方側に設けられ、
前記第2係止部は、前記温度センサに対して、前記温度センサが延びる方向と直交する方向の他方側に設けられる、
温度センサの保持構造。
【請求項4】
請求項3に記載の温度センサの保持構造であって、
前記取付部材は、前記第1係止部が挿通されて係止される係合穴を有し、
前記係合穴は、前記第2係止部が前記取付部材に係止されていない状態で、前記係合穴を支点として前記センサ保持部材を回動可能に支持する、
温度センサの保持構造。
【請求項5】
請求項4に記載の温度センサの保持構造であって、
前記センサ保持部材の前記第2係止部は、引掛爪を有し、
前記取付部材は、前記第2係止部の前記引掛爪を引掛けて係止させる引掛部を有する、
温度センサの保持構造。
【請求項6】
請求項4に記載の温度センサの保持構造であって、
前記係合穴は、前記第1係止部の挿入入口側に向かって開口が大きくなる、
温度センサの保持構造。
【請求項7】
請求項3に記載の温度センサの保持構造であって、
前記第1係止部及び前記第2係止部は、前記温度センサが延びる方向において、前記温度センサの基端側が配置された位置に設けられる、
温度センサの保持構造。
【請求項8】
請求項7に記載の温度センサの保持構造であって、
前記センサ保持部材は、前記温度センサに対して、前記温度センサが延びる方向と直交する方向の前記一方側に設けられる第3係止部をさらに備え、
前記第3係止部は、前記温度センサが延びる方向において、前記温度センサの先端側が配置された位置に設けられる、
温度センサの保持構造。
【請求項9】
請求項3に記載の温度センサの保持構造であって、
前記取付部材は、
前記温度センサが延びる方向に前記巻線が巻回される筒部と、
前記温度センサが延びる方向と直交する方向の前記一方側に設けられる第1フランジ部と、
前記温度センサが延びる方向と直交する方向の前記他方側に設けられる第2フランジ部と、
前記第1フランジ部からさらに前記一方側に延設された延設部と、を有し、
前記第2フランジ部には、前記第1フランジ部に向かって傾斜する傾斜面により形成された厚肉部が設けられ、
前記第1係止部は、前記延設部に係止され、
前記第2係止部は、前記第2フランジ部の前記厚肉部に係止される、
温度センサの保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線を有する電気機器に取り付けられ、巻線の温度を検出する温度センサの保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、車両においてもCO2排出量の削減やエネルギー効率の改善のために、電動化技術に関する研究開発が行われている。電動化技術として、例えば電動自動車などに搭載される回転電機があるが、回転電機が備える巻線の温度を安定した測温性能で検出するために、温度センサの取り付けに関して様々な工夫が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ステータコアと、ステータコアに取り付けられるコイルと、コイルに接触してコイルの温度を検出する温度センサと、温度センサをコイルに向けて弾性的に押圧するように保持するセンサブラケットと、を備えた回転電機のステータが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、コイルが巻かれるインシュレータと、温度センサを保持するセンサホルダと、コイルエンドにセンサホルダを押圧するように付勢してセンサホルダを保持するステイと、を備えた温度センサの取付構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6824765号公報
【特許文献2】特許第6672395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
巻線の外寸にはばらつきが生じるので、温度センサと巻線との接触位置にはばらつきが生じる。接触位置のばらつきにより、温度センサの測温精度にもばらつきが生じ得るので、巻線の外寸のばらつきによらず安定した測温性能を確保できることが要望されていた。
【0007】
本発明は、巻線の外寸のばらつきによらず安定した測温性能を確保できる温度センサの保持構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
巻線を有する電気機器に取り付けられ、前記巻線の温度を検出する温度センサの保持構造であって、
前記巻線が巻回された取付部材と、
可撓性を有する線状に形成され、先端側に前記巻線の温度を検出する感温素子を有する前記温度センサと、
前記温度センサの先端側とは反対側の基端側を保持し、前記取付部材に取り付けられるセンサ保持部材と、を備え、
前記温度センサは、基端側が前記取付部材の一面に沿って延びる前記巻線の外面に対して傾斜して前記センサ保持部材により保持され、且つ、先端側が前記巻線の該外面に押し当てられ、
前記センサ保持部材は、前記温度センサの先端側の端部を前記巻線の前記外面に対して押し当て可能な押当部を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、巻線の外寸のばらつきによらず安定した測温性能を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の電気機器の一例である回転電機1の斜視図である。
【
図2】インシュレータ40に取り付けられる前の状態のセンサホルダ60の斜視図である。
【
図3】回転電機1の軸方向から見た、インシュレータ40に取り付けられた状態のセンサホルダ60の正面図である。
【
図6】インシュレータ40に対するセンサホルダ60の取り付け手順を説明する図である。
【
図7】インシュレータ40の係合穴49a、及び係合穴49aに挿入されたセンサホルダ60の外側係止部67の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態である温度センサの保持構造を、添付図面に基づいて説明する。
【0012】
本発明の電気機器の一例である回転電機1は、例えば、電動車両などに搭載され、車両駆動や回生発電に用いられる。
図1に示すように、回転電機1は、ロータ10及びステータ20を備える。
【0013】
ロータ10は、ロータシャフト11を有し、ステータ20の内周側に回転自在に配置されている。以下では、ロータ10の回転軸方向(即ち、ロータシャフト11の延在方向)を、回転電機1の軸方向とも称す。
【0014】
ステータ20は、ロータ10の外周側に配置されている。ステータ20は、コイル21と、コイル21を実装した円環状のステータコア23と、ステータコア23を保持する略円筒状のステータホルダ25と、を有する。
【0015】
回転電機1は、例えば三相交流式の回転電機であり、コイル21は複数相(例えばU相、V相、W相)設けられている。各コイル21は、ステータコア23の後述する各分割コア片30に巻回された巻線22により構成される。巻線22は、断面が横長の略矩形形状を有する(
図5参照)。
【0016】
各相のコイル21の一端側21u、21v、21wは、相毎にまとめられて対応する相の給電端子3u、3v、3wに接続されている。図示は省略するが、給電端子3u、3v、3wは、外部の給電線を接続するためのコネクタに接続される。各相のコイル21の他端側21nは、中性点として全てが一箇所にまとめられて相互に電気的に接続されている。
【0017】
ステータコア23は、複数の分割コア片30が円環状に組付けられて構成される。本実施形態では、分割コア片30は、U相用、V相用、W相用のものがそれぞれ4個ずつ設けられ、即ち合計12個設けられている。分割コア片30は、回転電機1の周方向でU相、V相、W相の配列が繰り返されるように順に並んで配置されている。各分割コア片30には、それぞれ個別に巻線22が巻回されている。
【0018】
各分割コア片30は、鋼板を複数枚積層して構成されたコア本体31(
図4参照)と、コア本体31の周域に嵌合されてコア本体31を電気的に絶縁するインシュレータ40と、を有する。
【0019】
インシュレータ40は、筒部42と、内周側フランジ部44と、外周側フランジ部46と、巻線案内部48と、を有する。インシュレータ40の構成について、
図1から
図5を参照して説明する。
【0020】
図4に示すように、筒部42は、回転電機1の径方向に貫通した略角筒形状を有し、筒部42の外面420に囲まれた内側空間には、コア本体31が配置される。筒部42の軸方向は、回転電機1の径方向に一致する。
【0021】
筒部42の外面420には、巻線22が巻回される。
図4及び
図5に示すように、巻線22は、内周側フランジ部44と外周側フランジ部46との間において、筒部42の外面420に直交する方向(巻線22の高さ方向とも称す)に層を形成して筒部42に巻回される。
【0022】
内周側フランジ部44は、回転電機1の径方向において筒部42の内側に設けられ、筒部42と一体に形成される。内周側フランジ部44は、回転電機1の軸方向において、巻線22の外面220を越えて延出する。
【0023】
図2及び
図3に示すように、内周側フランジ部44には、外周側フランジ部46に向かって傾斜する傾斜面441が設けられている。より詳細には、傾斜面441は、回転電機1の周方向において、一方側から他方側に亘って、外周側フランジ部46に向かって傾斜する。巻線22は、傾斜面441に沿って巻回されることにより、巻線22が回転電機1の径方向外側に一巻き分ずれる。
【0024】
傾斜面441を形成することにより、内周側フランジ部44のうち回転電機1の周方向の他方側の部分が厚肉となり、内周側フランジ部44に厚肉部440が形成される。
【0025】
図1及び
図5に示すように、外周側フランジ部46は、回転電機1の径方向において筒部42の外側に設けられ、筒部42と一体に形成される。外周側フランジ部46は、回転電機1の軸方向において、巻線22の外面220を越えて延出する。
【0026】
巻線案内部48は、外周側フランジ部46に一体に形成されており、外周側フランジ部46よりもさらに径方向外側に延設されている。巻線案内部48は、各相のコイル21の巻線22の両端側をステータコア23の周方向に沿って円周上の所定の位置まで引き回す。
【0027】
巻線案内部48は、ステータコア23の外周面に相当する面に、各相のコイル21の巻線22をそれぞれ案内する案内溝48u、48v、48w、48nを有する。案内溝48u、48v、48wはそれぞれ、U相、V相、W相のコイル21の巻線22の一端側21u、21v、21wを、ステータコア23の周方向に沿って円周上の所定の位置まで引き回す。案内溝48nは、各相のコイル21の巻線22の他端側21nを、ステータコア23の周方向に沿って円周上の所定の位置まで引き回す。案内溝48n、48u、48v、48wは、軸方向においてこの順に4段になって形成されている。なお、
図5では、案内溝48n、48u、48v、48wに引き回される巻線22の図示を省略している。
【0028】
図1に示すように、温度センサ50及びこれを保持するセンサホルダ60は、複数の分割コア片30のうち一つの分割コア片30のインシュレータ40に取り付けられている。なお、温度センサ50及びセンサホルダ60は、複数設けられてもよい。
【0029】
図4に示すように、温度センサ50及びセンサホルダ60は、インシュレータ40の筒部42の外面420のうち回転電機1の軸方向側の外面421に対向する。センサホルダ60は、温度センサ50が巻線22の外面220のうち筒部42の外面421に沿って延びる外面221に当接するようにして、インシュレータ40に取り付けられる。
【0030】
温度センサ50は、可撓性を有する線状に形成される。温度センサ50は、例えばサーミスタである。温度センサ50は、一端側である基端側51がセンサホルダ60により保持され、他端側である先端側53はセンサホルダ60に保持されない。温度センサ50は、巻線22の巻回方向、具体的には筒部42の外面421に沿った方向に延びて配置される。
【0031】
温度センサ50は、先端側53に設けられ、巻線22の温度を検出する感温素子55と、感温素子55に接続され、基端側51に向かって延びるリード線57と、を有する。感温素子55及びリード線57は、少なくとも一部が絶縁部材58に覆われている。また、リード線57は、巻線22の温度を測定する不図示の測定部に接続される。温度センサ50は、感温素子55が設けられた先端側53を巻線22の外面221に当接させることで、精度良く巻線22の温度を検出できる。
【0032】
センサホルダ60は、温度センサ50が延びる方向に延在する本体部61と、本体部61の一端側に設けられ、温度センサ50を保持する保持部63と、を有する。
【0033】
保持部63は、温度センサ50が挿入され、温度センサ50の基端側51を保持する孔64を有する。孔64は、巻線22の外面221に対して傾斜して設けられている。
【0034】
このようにして、温度センサ50は、基端側51が筒部42の外面421に沿って延びる巻線22の外面221に対して傾斜してセンサホルダ60により保持され、感温素子55が配置された先端側53は、巻線22の外面221に押し当てられるようにして配置される。
【0035】
ところで、前述のとおり、巻線22は筒部42の外面420に直交する方向に層を形成して筒部42に巻回されるが、同方向における巻線22の寸法(以下、巻線22の外寸とも称す)にはばらつきが生じる。巻線22の外寸のばらつきによっては、温度センサ50の先端側53は、巻線22の外面221に押し当てられた際に受ける反力によって巻線22から浮き上がることがある。例えば、巻線22の外寸が大きい場合には、外寸が小さい場合と比較して、温度センサ50と巻線22の外面221との当接箇所がより基端側51に近づくので、巻線22からの反力に対して温度センサ50の先端側53が浮き上がりやすくなる。このような場合、感温素子55が配置された温度センサ50の先端側53が巻線22の外面221に当接しなくなり、温度センサ50の測温性能が低下する。
【0036】
そこで、本実施形態では、センサホルダ60は、温度センサ50の先端側53の端部53aを巻線22の外面221に対して押し当て可能な押当部65をさらに有する。押当部65は、温度センサ50が延びる方向における保持部63とは反対側に設けられ、温度センサ50の先端側53の端部53aに対向する。
【0037】
押当部65を設けることにより、巻線22からの反力によって温度センサ50の先端側53が巻線22から浮き上がることが抑制され、温度センサ50の先端側53を巻線22の外面221に当接させることができる。よって、巻線22の外寸のばらつきによらず温度センサ50の測温性能が安定する。また、押当部65はセンサホルダ60に設けられているので、温度センサ50の先端側53を巻線22の外面221に押し当てる部材をセンサホルダ60とは別に設ける必要がなく、部品点数の削減、及びコストダウンを図ることができる。
【0038】
押当部65についてより詳しく説明する。押当部65は、対向する巻線22の外面221と略平行な押当面66を有する。
【0039】
押当面66と巻線22の外面221との間隔は、筒部42の外面421に直交する方向における巻線22の外寸の公差に基づいて設定される。具体的に説明すると、筒部42の外面421から巻線22の外面221までの高さ(以下、巻線高さとも称す)が巻線22の外寸の公差を考慮して最大許容寸法である場合、
図4に示すように、押当面66と巻線22の外面221との間隔は、温度センサ50の先端側53の外径と略同一となることが好ましい。このような構成によると、押当面66と巻線22の外面221との間隔が温度センサ50の先端側53の外径よりも小さい場合と比較して、押当面66による温度センサ50から巻線22への押し当て圧力が過度に大きくなることを抑制でき、適切な押し当て圧力で温度センサ50の先端側53を巻線22の外面221に押し当てることができる。
【0040】
巻線高さが最大許容寸法未満である場合、押当面66と巻線22の外面221との間隔は、温度センサ50の先端側53の外径より大きくなるように設定される。巻線高さが小さくなるほど、温度センサ50と巻線22の外面221との当接箇所が基端側51から離れるので、温度センサ50の先端側53は巻線22から浮き上がることなく、巻線22の外面221に沿って当接して設けられる。
【0041】
このように、押当面66と巻線22の外面221との間隔は、巻線高さが最大許容寸法である場合、温度センサ50の先端側53の外径と略同一となるので、温度センサ50から巻線22への押し当て圧力は、押当面66に当接しない場合と押当面66に当接する場合とのいずれの場合においても、一定に保ちやすい。換言すると、巻線高さのばらつきによらず、温度センサ50から巻線22への押し当て圧力を一定に保ちやすいので、温度センサ50の測温性能がより安定する。
【0042】
続いて、インシュレータ40に対するセンサホルダ60の取り付けについて説明する。
図2、
図3、及び
図5に示すように、センサホルダ60は、インシュレータ40に係止される2つの外側係止部67、68と、内側係止部69と、を有する。
【0043】
外側係止部67、68は、センサホルダ60がインシュレータ40に取り付けられた状態において、温度センサ50よりも回転電機1の径方向外側に設けられ、本体部61から回転電機1の径方向に延設されている。温度センサ50が延びる方向において、外側係止部67は、温度センサ50の基端側51が配置された位置に設けられ、外側係止部68は、温度センサ50の先端側53が配置された位置に設けられている。
【0044】
インシュレータ40の巻線案内部48は、回転電機1の径方向に延設された面に係合穴49a、49bを有する。外側係止部67、68は、それぞれ係合穴49a、49bに挿通されて係止される。
【0045】
外側係止部67、68は先端部がクランク形状を有する。また、係合穴49a、49bには、係合爪49a1、49b1が設けられている。外側係止部67、68は、先端部が係合穴49a、49bに挿通されて係合爪49a1、49b1に係止される。
【0046】
内側係止部69は、センサホルダ60がインシュレータ40に係止された状態において、温度センサ50よりも回転電機1の径方向内側に設けられ、回転電機1の軸方向に延設される。温度センサ50が延びる方向において、内側係止部69は、温度センサ50の基端側51が配置された位置に設けられている。
【0047】
内側係止部69は、引掛爪69aを有し、インシュレータ40の内周側フランジ部44は、引掛爪69aを引掛けて係止させる引掛部45を有する。センサホルダ60がインシュレータ40に係止された状態において、引掛爪69aは、内周側フランジ部44よりも回転電機1の径方向内側に設けられ、引掛部45に引掛けられて係止される。
【0048】
引掛部45は、前述した内周側フランジ部44の厚肉部440に設けられており、即ち、引掛爪69aは厚肉部440に係止される。これにより、引掛爪69aと引掛部45との係止箇所の剛性を高めることができる。
【0049】
インシュレータ40に対するセンサホルダ60の取り付けについて、
図6を参照して説明する。前述した場合と同様に、ここでは係合穴49aに対する外側係止部67の係止についてのみ説明するが、係合穴49bに対する外側係止部68の係止についても同様である。
【0050】
図6の左図に示すように、先ず、センサホルダ60の外側係止部67をインシュレータ40の係合穴49aに挿通させる。
図7に示すように、係合穴49aは、外側係止部67の挿入入口側(
図7中の上側)に向かって開口が大きくなるように形成されており、換言すると、係合穴49aは外側係止部67の挿入を誘う形状を有する。よって、外側係止部67が係合穴49aに挿通しやすく構成されている。
【0051】
図6の中央図に示すように、外側係止部67を係合穴49aに挿通させた後、係合穴49aを支点として、内側係止部69の引掛爪69aがインシュレータ40の引掛部45に引っ掛かる方向にセンサホルダ60を回動させる。このように、係合穴49aは、引掛爪69aがインシュレータ40の引掛部45に係止されていない状態で、係合穴49aを支点としてセンサホルダ60を回動可能に支持する。
【0052】
図6の右図に示すように、センサホルダ60の回動を進めると、内側係止部69の引掛爪69aがインシュレータ40の引掛部45に引っ掛かり係止される。このとき、外側係止部67が係合穴49aに設けられた係合爪49a1に係止される。このようにして、インシュレータ40に対するセンサホルダ60の取り付けが完了する。
【0053】
このように、センサホルダ60は、温度センサ50に対して、温度センサ50が延びる方向と直交する方向の両側に設けられているので、温度センサ50から巻線22への押し当て圧力を一定に保ちやすくなる。
【0054】
また、センサホルダ60の外側係止部67及び内側係止部69は、温度センサ50の延びる方向において、温度センサ50の基端側51が配置された位置に設けられているので、インシュレータ40に対してセンサホルダ60を取り付けた際、温度センサ50の基端側51の位置ずれを抑制できる。
【0055】
また、センサホルダ60は、温度センサ50の延びる方向において、温度センサ50の基端側51が配置された位置に外側係止部67及び内側係止部69を有し、温度センサ50の先端側53が配置された位置に外側係止部68を有するので、インシュレータ40に対してセンサホルダ60を安定に取り付けることができる。
【0056】
また、係合穴49a、49bを支点としてセンサホルダ60を回動させ、センサホルダ60の引掛爪69aをインシュレータ40の引掛部45に引掛けることにより、センサホルダ60をインシュレータ40に取り付けることができるので、簡易な構成で容易に組付けを行うことができる。
【0057】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0058】
例えば、前述した実施形態では、本発明の電気機器の一例として回転電機1を挙げて説明したが、これに限られない。本発明の電気機器としては、例えば巻線を有する変圧器であってもよく、即ち、本発明の温度センサの保持構造は巻線を有する変圧器に対しても適用することができる。
【0059】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0060】
(1) 巻線(巻線22)を有する電気機器(回転電機1)に取り付けられ、前記巻線の温度を検出する温度センサ(温度センサ50)の保持構造であって、
前記巻線が巻回された取付部材(インシュレータ40)と、
可撓性を有する線状に形成され、先端側(先端側53)に前記巻線の温度を検出する感温素子(感温素子55)を有する前記温度センサと、
前記温度センサの先端側とは反対側の基端側(基端側51)を保持し、前記取付部材に取り付けられるセンサ保持部材(センサホルダ60)と、を備え、
前記温度センサは、前記基端側が前記取付部材の一面(外面421)に沿って延びる前記巻線の外面(外面221)に対して傾斜して前記センサ保持部材により保持され、且つ、先端側が前記巻線の該外面に押し当てられ、
前記センサ保持部材は、前記温度センサの先端側の端部(端部53a)を前記巻線の前記外面に対して押し当て可能な押当部(押当部65)を有する、
温度センサの保持構造。
【0061】
(1)によれば、センサ保持部材の押当部が温度センサの先端側の端部を巻線の外面に対して押し当て可能に設けられるので、温度センサの先端側が巻線の外面に押し当てられる際に受ける反力によって巻線から浮き上がることを抑制できる。よって、巻線の外寸のばらつきによらず温度センサの測温性能が安定する。また、温度センサを巻線の外面に押し当てる部材をセンサ保持部材とは別に設ける必要がないので、コストダウンを図ることができる。
【0062】
(2) (1)に記載の温度センサの保持構造であって、
前記押当部は、対向する前記巻線の前記外面と略平行な押当面(押当面66)を有し、
前記巻線の前記外面と前記押当面との間隔は、前記取付部材の前記一面から前記巻線の前記外面までの高さが最大許容寸法である場合、前記温度センサの先端側の外径と略同一である、
温度センサの保持構造。
【0063】
(2)によれば、温度センサの先端側が押当面に当接する場合と当接しない場合とのいずれの場合においても、温度センサから巻線への押し当て圧力を一定に保ちやすい。よって、測温性能がより安定する。
【0064】
(3) (1)又は(2)に記載の温度センサの保持構造であって、
前記センサ保持部材は、前記取付部材に係止される第1係止部(外側係止部67)及び第2係止部(内側係止部69)を有し、
前記第1係止部は、前記温度センサに対して、前記温度センサが延びる方向と直交する方向の一方側(径方向外側)に設けられ、
前記第2係止部は、前記温度センサに対して、前記温度センサが延びる方向と直交する方向の他方側(径方向内側)に設けられる、
温度センサの保持構造。
【0065】
(3)によれば、温度センサが第1係止部及び第2係止部の間に配置されるように設けられるので、温度センサから巻線への押し当て圧力を一定に保ちやすくなる。
【0066】
(4) (3)に記載の温度センサの保持構造であって、
前記取付部材は、前記第1係止部が挿通されて係止される係合穴(係合穴49a)を有し、
前記係合穴は、前記第2係止部が前記取付部材に係止されていない状態で、前記係合穴を支点として前記センサ保持部材を回動可能に支持する、
温度センサの保持構造。
【0067】
(4)によれば、センサ保持部材の第1係止部を取付部材の係合穴に挿通し、係合穴を支点としてセンサ保持部材を回動させて第2係止部を取付部材に係止させることができる。よって、簡易な構成でセンサ保持部材を取付部材に容易に取り付けることができる。
【0068】
(5) (4)に記載の温度センサの保持構造であって、
前記センサ保持部材の前記第2係止部は、引掛爪(引掛爪69a)を有し、
前記取付部材は、前記第2係止部の前記引掛爪を引掛けて係止させる引掛部(引掛部45)を有する、
温度センサの保持構造。
【0069】
(5)によれば、係合穴を支点としてセンサ保持部材を回動させ、センサ保持部材の引掛爪を取付部材の引掛部に引掛けることにより、センサ保持部材を取付部材に容易に取り付けることができる。
【0070】
(6) (4)又は(5)に記載の温度センサの保持構造であって、
前記係合穴は、前記第1係止部の挿入入口側に向かって開口が大きくなる、
温度センサの保持構造。
【0071】
(6)によれば、係合穴は第1係止部の挿入を誘う形状を有するので、第1係止部が挿通しやすくなる。
【0072】
(7) (3)から(6)のいずれかに記載の温度センサの保持構造であって、
前記第1係止部及び前記第2係止部は、前記温度センサが延びる方向において、前記温度センサの基端側が配置された位置に設けられる、
温度センサの保持構造。
【0073】
(7)によれば、センサ保持部材のうち温度センサを保持する部分の近傍に第1係止部及び第2係止部が設けられるので、温度センサの基端側の位置ずれを抑制できる。
【0074】
(8) (7)に記載の温度センサの保持構造であって、
前記センサ保持部材は、前記温度センサに対して、前記温度センサが延びる方向と直交する方向の前記一方側に設けられる第3係止部(外側係止部68)をさらに備え、
前記第3係止部は、前記温度センサが延びる方向において、前記温度センサの先端側が配置された位置に設けられる、
温度センサの保持構造。
【0075】
(8)によれば、温度センサが延びる方向において、温度センサの基端側及び先端側が配置された位置に第1係止部、第2係止部、及び第3係止部を設けるので、取付部材に対してセンサ保持部材を安定に取り付けることができる。
【0076】
(9) (3)から(8)のいずれかに記載の温度センサの保持構造であって、
前記取付部材は、
前記温度センサが延びる方向に前記巻線が巻回される筒部(筒部42)と、
前記温度センサが延びる方向と直交する方向の前記一方側に設けられる第1フランジ部(外周側フランジ部46)と、
前記温度センサが延びる方向と直交する方向の前記他方側に設けられる第2フランジ部(内周側フランジ部44)と、
前記第1フランジ部からさらに前記一方側に延設された延設部(巻線案内部48)と、を有し、
前記第2フランジ部には、前記第1フランジ部に向かって傾斜する傾斜面(傾斜面441)により形成された厚肉部(厚肉部440)が設けられ、
前記第1係止部は、前記延設部に係止され、
前記第2係止部は、前記第2フランジ部の前記厚肉部に係止される、
温度センサの保持構造。
【0077】
(9)によれば、取付部材のうちセンサ保持部材が係止される箇所が厚肉部であるので、係止箇所の剛性を高めることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 回転電機(電気機器)
22 巻線
221 外面
40 インシュレータ(取付部材)
42 筒部
421 外面(一面)
44 内周側フランジ部(第2フランジ部)
440 厚肉部
441 傾斜面
45 引掛部
46 外周側フランジ部(第1フランジ部)
48 巻線案内部(延設部)
49a 係合穴
50 温度センサ
51 基端側
53 先端側
53a 端部
55 感温素子
60 センサホルダ(センサ保持部材)
65 押当部
66 押当面
67 外側係止部(第1係止部)
68 外側係止部(第3係止部)
69 内側係止部(第2係止部)
69a 引掛爪