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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175913
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】部分放電測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/16 20060101AFI20241212BHJP
   G01R 31/12 20200101ALI20241212BHJP
【FI】
G01R31/16
G01R31/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094007
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】高橋 潔
【テーマコード(参考)】
2G015
【Fターム(参考)】
2G015AA27
2G015BA01
2G015CA01
(57)【要約】
【課題】電力用導体や電力用ケーブルに、簡易に取り付けることが可能な部分放電測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】部分放電測定装置(1)は、高電圧機器の内部に発生する部分放電を測定する部分放電測定装置において、部分放電を検出する部分放電アンテナ(110)と、部分放電の測定値を無線で発信する回路基板(120)と、部分放電アンテナ及び回路基板を面接触させて収容する絶縁ケース(130)と、絶縁ケースに設けられた、固定具を取り付けるための取り付け部と、を有する。
【選択図】図4



【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧機器の内部に発生する部分放電を測定する部分放電測定装置において、
前記部分放電を検出する部分放電アンテナと、
前記部分放電の測定値を無線で発信する回路基板と、
前記部分放電アンテナ及び前記回路基板を面接触させて収容する絶縁ケースと、
前記絶縁ケースに設けられた、固定具を取り付けるための取り付け部と、を有する、部分放電測定装置。
【請求項2】
前記部分放電アンテナは、前記部分放電を面で検出する平面部と、前記平面部と一体にされ、前記回路基板と面接触して前記絶縁ケースに固定する複数の固定部と、を有する、請求項1に記載の部分放電測定装置。
【請求項3】
前記平面部の一部を立体的に折り曲げて、前記固定部が形成される、請求項2に記載の部分放電測定装置。
【請求項4】
前記絶縁ケースの内側底面には、突出する複数の突状部が設けられ、前記回路基板が、前記部分放電アンテナの固定部を介して、前記固定部とともに、前記突状部上に固定される、請求項3に記載の部分放電測定装置。
【請求項5】
前記回路基板に電力を供給する電池を更に有し、
前記絶縁ケースは、第1ケースと第2ケースを有し、
前記第1ケースは、前記電池を収容し、前記第2ケースと対向する側に開口が設けられ、
前記第2ケースは、前記部分放電アンテナおよび前記回路基板を収容し、前記第1ケースと係合して前記第1ケースの開口を塞ぐ、請求項1に記載の部分放電測定装置。
【請求項6】
前記第1ケースは、爪部が設けられ、
前記第2ケースは、前記爪部が係合する係合部が設けられ、
前記係合部は、前記第1ケースに対して遠位となる側に設けられ、
前記爪部は、前記遠位となる側に設けられた前記係合部と係合するように、前記第1ケースの壁部から前記第2ケース側に延びて形成された延出部の先端に設けられている、請求項5に記載の部分放電測定装置。
【請求項7】
前記第1ケースと前記第2ケースとの間にシール部材が嵌められている、請求項6に記載の部分放電測定装置。
【請求項8】
カバー部材を更に有し、
前記第2ケースは、前記部分放電アンテナおよび前記回路基板を含む収容物を前記第2ケース内に収容するための開口が設けられ、
前記カバー部材は、前記第2ケースと係合して前記第2ケースの開口を塞ぐことにより、前記第2ケースに収容された前記収容物が前記第2ケースの開口から前記第2ケースの外部に突出するのを押さえる、請求項5に記載の部分放電測定装置。
【請求項9】
前記部分放電測定装置は、前記高電圧機器の充電部に取り付けられ、前記部分放電アンテナは、前記充電部から一定距離だけ離れて配置される、請求項1に記載の部分放電測定装置。
【請求項10】
前記取り付け部は、前記充電部との対向面上に設けられている、請求項9に記載の部分放電測定装置。
【請求項11】
前記固定具は、結束バンドであり、
前記取り付け部は、孔部であり、
前記結束バンドは、前記孔部に通されることによって前記絶縁ケースに取り付けられる、請求項1に記載の部分放電測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分放電測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高電圧機器の内部に発生する部分放電を検出し絶縁劣化の有無を診断するものに好適な、部分放電診断システム及び部分放電診断方法に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6253775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
部分放電を受信する部分放電アンテナと、部分放電アンテナの信号を検出し処理する回路基板とが別体で設けられ、これらを有線で繋ぐ部分放電測定装置が知られている。かかる構成では、取り付け作業に手間がかかった。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑み、電力用導体や電力用ケーブルに、簡易に取り付けることが可能な部分放電測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る部分放電測定装置は、高電圧機器の内部に発生する部分放電を測定する部分放電測定装置において、前記部分放電を検出する部分放電アンテナと、前記部分放電の測定値を無線で発信する回路基板と、前記部分放電アンテナ及び前記回路基板を面接触させて収容する絶縁ケースと、前記絶縁ケースに設けられた、固定具を取り付けるための取り付け部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、電力用導体や電力用ケーブルに、簡易に取り付けることが可能な部分放電測定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係る部分放電測定装置をバスバーに取り付けた状態を示す図である。
図2】本実施の形態に係る部分放電測定装置を電力用ケーブルに取り付けた状態を示す図である。
図3】本実施の形態に係る部分放電測定装置の5面図である。
図4】本実施の形態に係る部分放電測定装置の分解斜視図である。
図5】本実施の形態に係る部分放電測定装置において、上ケースに電池を組み立て、下ケースに部分放電アンテナを組み立て、その他は分解した状態を示す部分分解斜視図である。
図6図5から回路基板を取り付けた状態を示す部分分解斜視図である。
図7図6からカバー部材を取り付けた状態を示す部分分解斜視図である。
図8】本実施の形態に係る部分放電測定装置を下方から見た斜視図である。
図9】本実施の形態に係る部分放電測定装置のうち、部分放電アンテナと下ケースとを拡大して示した拡大斜視図である。
図10】本実施の形態に係る部分放電測定装置の断面図である。
図11】本実施の形態に係る部分放電測定装置に束線バンドを取り付けた状態を示す図である。
図12】本実施の形態に係る部分放電測定装置を、束線バンドを用いてバスバーに固定した状態を示す図である。
図13】本実施の形態に係る部分放電測定装置を、束線バンドを用いて電力用ケーブルに固定した状態を示す図である。
図14】本実施の形態において高圧充電部に固定された部分放電測定装置の上ケースを取り外した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明は、本発明の一実施形態に係る部分放電測定装置に関する。
本発明の一実施形態に係る部分放電測定装置は、高電圧機器の内部に発生する部分放電を測定する装置であり、例えば、高電圧機器の充電部に取り付けられる。電気設備に絶縁不良が生じると、局所的に微弱な放電現象である部分放電が発生するが、本実施の形態における部分放電測定装置は、該部分放電を検出し、部分放電測定値を含む送信データをPC(Personal Computer)などの端末装置に無線で送信する。端末装置は、受信した送信データに基づいて絶縁性能を診断し、重大事故を未然に防ぐことができる。
【0010】
[本実施の形態の部分放電測定装置1の概要]
図1は、本実施の形態に係る部分放電測定装置1をバスバー2aに取り付けた状態を示す。バスバー2aは、大容量の電流を導電する導体であり、高電圧機器の高圧充電部2の一例である。バスバー2aは、ボルト3とナット(図面上不可視)を用いて、例えば、別のバスバーと接続される。
【0011】
図2は、本実施の形態に係る部分放電測定装置1を電力用ケーブル2bに取り付けた状態を示す。電力用ケーブル2bは、例えば、大容量の電流を導電する電線をもつ、例えば、CVケーブル(Cross-linked Polyethylene Insulated Vinyl Sheath Cable)であり、高圧充電部2の一例である。電力用ケーブル2bの先端には、圧着端子4が取り付けられている。
【0012】
以降の説明では、便宜上、部分放電測定装置1の上下方向をz方向とし、部分放電測定装置1の前後方向をx方向とし、部分放電測定装置1の左右方向をy方向とする。互いに直交するx方向、y方向およびz方向は、左手系をなす。
【0013】
また、z方向正側を上方向とし、z方向負側を下方向とし、x方向正側を前方向とし、x方向負側を後ろ方向とし、y方向正側を右方向とし、y方向負側を左方向とする。
なお、方向の呼称は、構成要素の相対的な位置関係を説明するために便宜上用いる呼称であり、絶対的な方向を示すものではない。
【0014】
図3は、部分放電測定装置1の5面図である。図4は、部分放電測定装置1の分解斜視図である。図5から図7は、部分放電測定装置1の一部を分解した状態の斜視図である。図8は、部分放電測定装置1を下方から見た斜視図である。
【0015】
図4に示すように、部分放電測定装置1は、部分放電を受信する部分放電アンテナ110と、部分放電アンテナ110により測定された測定値を無線で発信する回路基板120と、部分放電アンテナ110および回路基板120を収容する絶縁ケース130と、絶縁ケース130の下面134Aに設けられた、固定具を取り付けるための孔部134g(図8を参照)と、を備える。なお、孔部134gは、取り付け部の一例である。
【0016】
図4等に示すように、絶縁ケース130は、上ケース132(第1ケースの一例)、下ケース134(第2ケースの一例)およびカバー部材136を有する。上ケース132、下ケース134およびカバー部材136は、ポリカーボネートなどの絶縁性樹脂で形成される。
【0017】
箱状に形成された絶縁ケース130の内部は、略扁平な板状のカバー部材136により、上段側と下段側の2つの空間に分断される。上段側の空間は、上ケース132とカバー部材136によって規定されており、電池140が収容される。下段側の空間は、下ケース134とカバー部材136によって規定されており、部分放電アンテナ110および回路基板120が収容される。
【0018】
上ケース132は、略直方体の箱状に形成されており、図4に示されるように、下側(下ケース134と対向する側)が開口している。便宜上、この開口部を「開口部OP1」と記す。開口部OP1から上ケース132内に電池140が収容される。
【0019】
下ケース134は、略直方体の箱状に形成されており、図4に示されるように、上側(上ケース132と対向する側)が開口している。便宜上、この開口部を「開口部OP2」と記す。開口部OP2から下ケース134内に、部分放電アンテナ110および回路基板120を含む収容物が収容される。
【0020】
図5は、下ケース134に、部分放電アンテナ110を収容した状態を示し、図6は、さらに、回路基板120を収容した状態を示し、図7は、カバー部材136により、開口部OP2が塞がれた状態を示す。
【0021】
上ケース132には、電池140が保持されており、上ケース132が下ケース134に被せられることで、図3に示す構造の部分放電測定装置1が完成する。部分放電測定装置1を図1に示すバスバー2aや、図2に示す電力用ケーブル2bに取り付けるには、例えば、孔部134g(図8参照)に固定具を挿入し、該固定具を用いて取り付けることが必要であるが、固定具及び取り付け方法については後述する。
【0022】
[部分放電アンテナ110、及び、下ケース134の収容部について]
部分放電アンテナ110の構造について説明する。図9は、下ケース134と部分放電アンテナ110とを分離した状態を示す斜視図である。
【0023】
部分放電アンテナ110は、部分放電ノイズ117を面で検出する平面部111と、該平面部111に一体とされて、立体的に折り曲げられた複数の固定部112と、該平面部111の一部を垂直に折り曲げた側壁部113と、を具備する。
【0024】
図9に示すように、固定部112は、複数設けられ、例えば、平面部111の四隅に形成される。各固定部112は、平面部111に切れ込みを入れ、その端を略直角に折り曲げて形成される。これにより、固定部112は、直立部115と、回路基板120と面接触する平面状の接触部116とで構成される。図9に示すように、接触部116の中央には、ネジ止め可能な貫通穴116aが形成されている。
【0025】
図9に示すように、部分放電アンテナ110において、各固定部112の間の側壁部113は、垂直に折り曲げられており、部分放電アンテナ110を下ケース134に収容したときに側壁部113が下ケース134の内壁面に接触し保持される。
【0026】
図9に示すように、下ケース134の内側底面134hには、四隅に、突状部135が形成されている。突状部135の高さは、部分放電アンテナ110の固定部112の直立部115と略同じ高さである。下ケース134に部分放電アンテナ110を収容したとき、各固定部112の接触部116は、各突状部135の上面に接触する。
【0027】
図9に示すように、各突状部135の中心にはネジ穴135aが形成されている。したがって、部分放電アンテナ110を下ケース134に収容すると、部分放電アンテナ110の四隅に位置する貫通穴116aとネジ穴135aとが高さ方向で一致する。これにより、後述するように、ネジを用いて、部分放電アンテナ110を下ケース134内に固定保持できる。
【0028】
部分放電アンテナ110の平面部111の大きさを限定するものではないが、平面部111は、内側底面134hの大きさから突状部135や、そのほかの凸部等を除く領域であることが好ましい。
【0029】
部分放電アンテナ110は、金属板であり、限定されるものではないが、真鍮や銅合金などの板材である。
【0030】
[回路基板120について]
図6に示すように、回路基板120は、プリント基板122を有する。プリント基板122上に、処理回路124が実装されている。処理回路124は、部分放電アンテナ110と電気的に接続される。処理回路124は、部分放電アンテナ110により測定された測定値を送信データに変換する。
【0031】
回路基板120の処理回路124では、部分放電アンテナ110で受信した部分放電ノイズのピーク値をアナログ回路で測定してデジタル化する。図6に示すように、プリント基板122上に、アンテナ126が取り付けられており、アンテナ126により、処理回路124で生成された送信データを無線で発信する。
【0032】
プリント基板122上に、電池接続コネクタ128が取り付けられている。電池接続コネクタ128は、電池接続ケーブル142(図4参照)と接続される。処理回路124及びアンテナ126は、電池接続ケーブル142および電池接続コネクタ128を介して供給される電池140からの電力で動作する。
【0033】
[部分放電アンテナ110及び回路基板120の組み立て、及び表皮効果について]
図9に示すように、下ケース134の内側底面134hには、複数の突状部135が形成されており、各突状部135の中心には、ネジ穴135aが設けられている。また、部分放電アンテナ110は、平面部111と、複数の固定部112とを有して構成されており、各固定部112は、立体的に折り曲げられている。固定部112のうち、平面部111よりも一段高い位置に、回路基板120と面接触可能な接触部116が形成され、接触部116には貫通穴116aが形成されている。
【0034】
図4に示すように、回路基板120の四隅には、貫通穴120aが形成されている。各貫通穴120aは、部分放電アンテナ110に設けられた貫通穴116aと同位置に形成される。そして、ネジ152により、部分放電アンテナ110及び回路基板120が下ケース134内に固定保持される。
【0035】
図10は、図1に示す部分放電測定装置1を、A-A線に沿って切断し、矢印方向から見た断面図である。
【0036】
図10に示すように、部分放電アンテナ110の固定部112の接触部116と、回路基板120とはネジ152により下ケース134に収納され、このとき、面接触した状態で、固定保持される。また、図10に示すように、部分放電アンテナ110の平面部111は、下ケース134の内側底面134hに接触している。
【0037】
図10に示すように、本実施の形態の部分放電測定装置1は、高圧充電部2に取り付けられる。このとき、高圧充電部2と部分放電アンテナ110の平面部111との間には、絶縁性の下ケース134が存在し、高圧充電部2と部分放電アンテナ110とは高さ方向(Z方向)に離れている。実際には、高圧充電部2と部分放電アンテナ110との間には、絶縁性の下ケース134と空間が設けられる。これにより、図10に示すように、部分放電アンテナ110と高圧充電部2が、静電容量Cで接合する。したがって、部分放電アンテナ110では、部分放電を静電容量Cにより検出できる。本実施の形態では、部分放電アンテナ110の平面部111でC結合されるので、図9に示すように、面で部分放電ノイズ117を検出できる。なお、図9に示す部分放電ノイズ117は概念図である。本実施の形態では、平面部111と一体の固定部112を備えているので、部分放電ノイズ117は固定部112に伝わる。そして、図10に示すように、固定部112と回路基板120とは面接触しており、表皮効果を利用して部分放電ノイズを良好に検出できる。例えば、部分放電アンテナと回路基板とを有線で繋ぐ構成に比べて、精度よく部分放電ノイズの検出ができる。
【0038】
[絶縁ケース130の詳細な説明]
本実施の形態では、図5図6図7図10等に示すように、絶縁ケース130により、部分放電アンテナ110および回路基板120と高圧充電部2との絶縁が保たれ、また、電池140と高圧充電部2との絶縁が保たれる。高圧充電部2との絶縁を確保したい部品を絶縁ケース130で囲うという安価な構成で確実な絶縁を保つことができる。
【0039】
また、図6図7に示すように、アンテナ126を囲うケースが絶縁性のあるケース(絶縁ケース130)で形成されるため、アンテナ126から絶縁ケース130を介して外部へ発信される際の、送信データの減衰が抑えられる。そのため、端末装置との通信が良好になる。
【0040】
図10の断面図に示されるように、上ケース132内に、一対のスナップ式のロック部132dが形成される。電池140を上ケース132内(z方向正側)へ押し込むと、電池140の両脇が一対のロック部132dで挟持されるとともに爪部132eに係る。これにより、電池140は、上ケース132内で保持される。
【0041】
なお、電池140は、例えば、リチウム電池である。電池140は、ボルタ電池やリチウムイオン電池など、他の形態の電池であってもよい。
【0042】
このように、電池140は、絶縁ケース130(上ケース132)内に収容される。すなわち、部分放電測定装置1は、電気的に独立した絶縁状態にある電力供給源で動作する構成となっている。
【0043】
また、図6に示すように、下ケース134の左右の側壁部134aのそれぞれに、2つの係合孔134aAが形成される。また、カバー部材136の左右の側面136aのそれぞれに、図6に示されるように、2つの係合突起136aAが形成される。
【0044】
図6図7に示すように、開口部OP2を塞ぐようにカバー部材136を下ケース134に嵌め込むと、カバー部材136の係合突起136aAが下ケース134の側壁部134aを押して、やや外方へ弾性変形させる。係合突起136aAが係合孔134aAに到達すると、係合突起136aAと係合孔134aAとが係合する。これにより、図7に示されるように、開口部OP2がカバー部材136で塞がれる。
【0045】
また、プリント基板122上に取り付けられたアンテナ126は、そのままでは一部が開口部OP2から下ケース134の外部に突出することがある。これを防ぐため、開口部OP2は、カバー部材136で塞がれる。すなわち、カバー部材136は、下ケース134と係合して開口部OP2を塞ぐことにより、下ケース134に収容された収容物(ここではアンテナ126)が開口部OP2から下ケース134の外部に突出するのを押さえる。
【0046】
図7に示すように、ケーブル通し孔136bがカバー部材136に形成されている。カバー部材136を下ケース134に係合させると、図7に示されるように、ケーブル通し孔136bから電池接続コネクタ128が露出する。
【0047】
ケーブル通し孔136bから露出した電池接続コネクタ128に電池接続ケーブル142(図4参照)を接続すると、部分放電アンテナ110が実装された回路基板120と電池140とが接続されて、回路基板120が動作可能となる。
【0048】
図7に示すように、上ケース132の左右の側壁部132aのそれぞれに、ロック部132b(延出部の一例)が形成される。ロック部132bは、側壁部134a上に設けられており、下ケース134側に延びて形成される。ロック部132bは、スナップ式のロック部であり、その先端に爪部132cが形成される。
【0049】
図7に示すように、下ケース134の左右の側壁部134aのそれぞれに、リブ134bが形成される。リブ134bは、側壁部134a上でx方向に延びて形成される。
【0050】
下ケース134の上から被せるように、上ケース132を下ケース134に嵌め込むと、爪部132cが下ケース134のリブ134bに乗り上げて、ロック部132bがやや外方へ弾性変形する。爪部132cがリブ134bを乗り越えると、爪部132cとリブ134bとが係合する。これにより、図8図10に示されるように、上ケース132が下ケース134およびカバー部材136を覆うとともに、上ケース132と下ケース134とが係合する。別の側面では、下ケース134は、上ケース132と係合して上ケース132の開口部OP1を塞ぐ。リブ134bは、爪部132cが係合する係合部の一例である。
【0051】
図4図10に示すように、部分放電測定装置1は、環状のゴムパッキン150を有する。ゴムパッキン150は、下ケース134の外壁全周に亘って取り付けられる。上ケース132と下ケース134とを係合させると、図10に示されるように、下ケース134に取り付けられたゴムパッキン150が上ケース132との間で押しつぶされる。これにより、絶縁ケース130内の水密性が確保される。従って、部分放電測定装置1は、屋内だけでなく屋外でも使用することができる。
【0052】
ゴムパッキン150は、断面が円形に形成される。ゴムパッキン150の断面は、ゴムパッキン150を押しつぶす上ケース132および下ケース134の形状に合わせて変えてもよい。
このように、絶縁ケース130には、上ケース132と下ケース134との間に、シール部材の一例であるゴムパッキン150が嵌められている。
【0053】
図10中、符号CDで示される太実線は、絶縁ケース130(より詳細には、下ケース134)と直接接触する高圧充電部2との沿面距離を示す。
【0054】
下ケース134において、図8図10に示す、係合部の一例であるリブ134bは、下ケース134の下寄り(上ケース132に対して遠位となる側)に設けられる。また、爪部132cは、下ケース134の下寄りに設けられたリブ134bと係合するように、上ケース132の側壁部132aから下ケース134側に延びて形成されたロック部132b(延出部の一例)の先端に設けられる。
【0055】
上ケース132と下ケース134の係合部分である爪部132cとリブ134bを上記の位置関係とすることにより、絶縁ケース130は、上ケース132で下ケース134を覆う2重構造となる。そのため、高圧充電部2と回路基板120間の絶縁体の表面に沿った経路が、太実線CDで示されるように、下ケース134の側壁部134aを回り込む経路となる。このように、部分放電測定装置1は、絶縁ケース130と直接接触する高圧充電部2との沿面距離が確保されている。
【0056】
また、太実線CDで示されるように、高圧充電部2と回路基板120間の絶縁体の表面に沿った経路は、リブ134bを回り込む経路となっている。このように、係合部の一例であるリブ134b自体も、絶縁ケース130と直接接触する高圧充電部2との沿面距離を確保することに寄与している。
【0057】
また、下ケース134の下面134Aに、複数のリブが設けられる。具体的には、下面134Aの前側(x方向正側)領域に、T字状のリブ134dが形成される。また、下面134Aの後ろ側(x方向負側)領域に、上記のリブ134dと前後反転する向きで、T字状のリブ134dが形成される。また、下面134Aの中央辺りに、左右方向(y方向)に直線状に延びた一対のリブ134eが形成される。一対のリブ134eは、互いに平行となっている。また、下面134Aの左右方向の両端のそれぞれに、前後方向(x方向)に直線状に延びた、二重格子構造のリブ134fが形成される。
【0058】
下ケース134の下面134Aから下方に突出する、これらのリブにより、高圧充電部2と下面134Aとの間隔が確保される(図10参照)。
【0059】
[部分放電測定装置1の高圧充電部2への取り付けについて]
部分放電測定装置1は、安価な汎用部品を用いて、高圧充電部2に簡単かつ確実に取り付けられるようになっている。具体的には、部分放電測定装置1は、束線バンド160を用いて高圧充電部2に取り付けられるようになっている。なお、「束線バンド」は「結束バンド」と呼ばれることもある。
図11は、束線バンド160を部分放電測定装置1に取り付けた状態を示す。
【0060】
図8に示すように、左右一対のリブ134fのそれぞれのx方向中央に、孔部134gが設けられる。孔部134gは、束線バンド160を通すことができる大きさを有する。また、左右方向(y方向)に平行に延びた一対のリブ134eにより、下ケース134の下面134A上(充電部との対向面上)に、左右方向に延びる通路134eAが形成される。
【0061】
束線バンド160は、一方のリブ134fの孔部134gに通されて通路134eAを通され、更に、他方のリブ134fの孔部134gに通される。これにより、図11に示されるように、束線バンド160は、部分放電測定装置1に取り付けられた状態となる。
【0062】
このように、絶縁ケース30(より詳細には下ケース134)は、束線バンド160(固定具の一例)を取り付けるための孔部134g(取り付け部の一例)が、下ケース134の下面134Aに設けられている。束線バンド160は、孔部134gに通されることによって下ケース134に取り付けられる。
【0063】
図12は、束線バンド160を用いて部分放電測定装置1をバスバー2aに固定した状態を示す。図13は、束線バンド160を用いて部分放電測定装置1を電力用ケーブル2bに固定した状態を示す。
【0064】
図12図13に示されるように、部分放電測定装置1に取り付けられた束線バンド160を締め付けるだけで、部分放電測定装置1をバスバー2aや電力用ケーブル2b等の高圧充電部2に固定することができる。
【0065】
[本実施の形態の部分放電測定装置1の効果について]
従来より、部分放電を受信する部分放電アンテナと、部分放電アンテナの信号を検出する回路基板とが別体で設けられ、これらを有線で繋ぐ部分放電測定装置が知られている。しかしながら、かかる構成では、取り付け作業に手間がかかった。さらに、有線で繋いでいるため、安全面や部分放電の検出精度でも、問題があった。
【0066】
これに対し、本実施の形態では、絶縁ケース130に、部分放電アンテナ110と回路基板120とを一部で面接触するように収納して一体型にし、絶縁ケース130に設けられた固定具を取り付けるための取り付け部を用いて、高圧充電部2に部分放電測定装置1を簡単かつ確実に固定することができる。具体的には、取り付け部に束線バンド160を通して、部分放電測定装置1を高圧充電部2に固定できる。このため、従来と比べて、部分放電測定装置1を高圧充電部2に取り付けるための構成が簡素化され、また、取り付け上の制約が少ない。
【0067】
本実施の形態では、絶縁ケース130の内部に、部分放電アンテナ110及び回路基板120を面接触させた状態で収納するため、絶縁性を確保しながら、表皮効果を利用して部分放電ノイズを良好に検出できる。
【0068】
また、本実施の形態の部分放電測定装置1では、絶縁ケース内に、部分放電アンテナ及び回路基板を収納することで、コンパクトなサイズに形成でき、かつ部品点数を減らすことができ、構造部材のコストを大幅に削減できる。
【0069】
本実施の形態では、無線で発信する回路基板を絶縁ケースに内蔵しているため、部分放電測定装置1は、無線通信を可能とする。このため、部分放電測定装置1の設置の自由度が高く、作業性を向上できる。
【0070】
本実施の形態の部分放電測定装置1は、電池駆動を可能とする。このため部分放電測定装置1をコンセントにつなげる必要がなく、配線の引き回しが不要で、部分放電測定装置1の設置の自由度が高く、作業性を向上できる。
【0071】
また以下に説明するように、電池交換を簡単に行うことができる。図14は、高圧充電部2に固定された部分放電測定装置1の上ケース132を取り外した状態を示す。
【0072】
上ケース132に設けられたスナップ式のロック部132bにより、下ケース134から上ケース132を簡単に取り外すことができる。また、束線バンド160は、下ケース134に取り付けられているものの、上ケース132に取り付けられていない。そのため、下ケース134を束線バンド160で高圧充電部2に固定したまま、上ケース132を簡単に取り外すことができる。
【0073】
これにより、作業者は、次の手順で電池交換を行うことができる。すなわち、作業者は、下ケース134から上ケース132を取り外し、電池接続コネクタ128から電池接続ケーブル142を抜いて、上ケース132から電池140を取り外す。作業者は、次いで、新たな電池140を上ケース132に取り付けて、電池接続ケーブル142を電池接続コネクタ128に接続し、上ケース132を下ケース134に取り付ける。
【0074】
このように、作業者は、下ケース134を束線バンド160で高圧充電部2に固定したまま、電池交換を行うことができる。作業者は、電池交換を、メンテナンス時等に簡単に行うことができる。
【0075】
電池交換時、下ケース134の内部は、カバー部材136で隠されている。カバー部材136により、電池交換時における回路基板120等の露出が避けられる。
【0076】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1 :部分放電測定装置
2 :高圧充電部
2a :バスバー
2b :電力用ケーブル
30 :絶縁ケース
110 :部分放電アンテナ
111 :平面部
112 :固定部
113 :側壁部
115 :直立部
116 :接触部
116a :貫通穴
117 :部分放電ノイズ
120 :回路基板
120a :貫通穴
122 :プリント基板
124 :処理回路
126 :アンテナ
128 :電池接続コネクタ
130 :絶縁ケース
132 :上ケース
134 :下ケース
134A :下面
134g :孔部
134h :内側底面
135 :突状部
135a :ネジ穴
136 :カバー部材
136b :ケーブル通し孔
140 :電池
142 :電池接続ケーブル
150 :ゴムパッキン
152 :ネジ
160 :束線バンド
C :静電容量
OP1 :開口部
OP2 :開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14