(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175914
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241212BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 C
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094012
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】山田 卓司
【テーマコード(参考)】
5H730
5H740
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AA17
5H730AA20
5H730AS01
5H730BB43
5H730BB57
5H730DD04
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5H730EE07
5H730FD25
5H730FD41
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5H730XX04
5H730XX15
5H730XX25
5H730XX35
5H730XX43
5H740BA12
5H740BB01
5H740BB07
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH01
5H740MM12
(57)【要約】
【課題】スイッチの耐量を極力抑制しながら構成でき、通常時の出力電圧のリップルを抑制しながら、異常検出したときの保護動作を適切にできるようにしたスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】第1駆動部11は、ブートストラップ電源Vbstを用いて動作し制御部10による制御電圧をレベルシフトする高耐圧レベルシフト部21を備え、高耐圧レベルシフト部21を通じて第1スイッチSW1を駆動する。第2駆動部12は、制御部10による制御電圧を入力し高耐圧レベルシフト部21を用いることなく第2スイッチSW2を駆動する。制御部10は、第1駆動部11を用いて第1スイッチSW1を制御すると共に第2駆動部12を用いて第2スイッチSW2を制御する際に、レベルシフト部21の不要な第2スイッチSW2をトランス14の一次側の通電オフ用スイッチとして動作させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング電源装置(1;201;501;601)であって、
トランスの一次側にて高圧側に接続される第1スイッチ(SW1)と、
前記第1スイッチに直列で当該第1スイッチの低圧側に接続される第2スイッチ(SW2)と、
前記トランスの一次側に流れている電流を検出する検出部(13;613)と、
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチのオンオフタイミングを決定し制御電圧を出力する制御部(10)と、
ブートストラップ電源(Vbst)を用いて動作し前記制御部による前記制御電圧をレベルシフトするレベルシフト部(21)を備え、前記レベルシフト部を通じて前記第1スイッチを駆動する第1駆動部(11;211)と、
前記制御部による制御電圧を入力し前記レベルシフト部を用いることなく前記第2スイッチを駆動する第2駆動部(12;212)と、を備え、
前記制御部は、前記検出部の検出値に基づいて前記第1駆動部を用いて前記第1スイッチをオンオフ制御すると共に前記第2駆動部を用いて前記第2スイッチをオンオフ制御する際に、前記レベルシフト部を不要とする前記第2スイッチを前記トランスの一次側の通電オフ用スイッチとして動作させるスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記第1スイッチをオフ制御、前記第2スイッチをオン制御した状態で待機し、この間、前記ブートストラップ電源に電荷を供給する請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、
オン指令に応じて第1駆動部により第1スイッチをオン制御し、
前記検出部により検出値が制御閾値に達したことを検出すると前記第2スイッチをオフ制御し、
前記第2スイッチのオフを確認すると第1スイッチをオフ制御し、
前記第1スイッチのオフを確認すると前記第2スイッチをオン制御する、請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、
オン指令に応じて前記第1駆動部により第1スイッチをオン制御し、
前記検出部により検出値が制御閾値に達したことが検出されると前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを同時にオフ制御し、
前記第1スイッチのオフを確認すると前記第2スイッチをオン制御する、請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記制御部は、
オン指令に応じて前記第1駆動部を用いて前記第1スイッチをオン制御し、
前記検出部により検出値が制御閾値に達して前記第2スイッチをオフ制御した後に第1所定時間経過すると第1スイッチをオフ制御し、
前記第1スイッチをオフ制御した後に第2所定時間経過すると前記第2スイッチをオン制御する、請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記制御部は、
オン指令に応じて第1駆動部により前記第1スイッチをオン制御し、
前記検出部により検出値が制御閾値に達すると前記第1スイッチ及び前記第2スイッチをオフ制御し、
前記第1スイッチをオフ制御した後に第3所定時間経過すると前記第2スイッチをオン制御する、請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第1スイッチをオフ制御、且つ、前記第2スイッチをオン制御した待機状態中に、前記検出部による検出値が低下せずゼロを超える所定の短絡閾値に達すると、前記第1スイッチの短絡異常と判定する、請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1スイッチがオン状態で、且つ、前記第2スイッチをオフ制御した後に、前記検出部による検出値が低下せずゼロを超える所定の短絡閾値に達すると、前記第2スイッチの短絡異常と判定する、請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
前記検出部は、
前記第2スイッチのオフ指令を出力するための制御閾値と、前記トランスの一次側が短絡したことを検知するための短絡閾値とを同一にして比較対象とした比較部(34)を用いて構成される、請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1スイッチをオン制御し且つ前記第2スイッチをオン制御した状態では、前記第2スイッチをオフ制御した後、所定の一定時間を経過した後に予め定められた所定の閾値を超えていれば前記第2スイッチの短絡異常と判定する、請求項9記載のスイッチング電源装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第2スイッチの短絡異常と判定する前に、前記検出部による検出値がゼロになると前記第1スイッチをオフ制御する請求項8記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチング電源装置は、各種の電子制御装置に用いられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の技術によれば、トランスの一次側に印加される直流電圧をスイッチングする主スイッチング素子を備え、トランスの二次側出力電圧を検出し、当該検出電圧に応じて主スイッチング素子のスイッチングパルス幅を制御している。特許文献1記載の技術によれば、平滑化コンデンサに生じるリップル電圧を検知し、トランスの一次側に接続された検出部が短絡電流を検出すると、「スイッチ素子」(引用文献1のSW1)を開くことで主スイッチング素子(引用文献1のQ1)を遮断している。
【0003】
引用文献1には、駆動回路の詳細用途は記載されていないが、仮に入力電圧が高電圧の場合、引用文献1の「スイッチ素子」を駆動するための昇圧電源(例えば、ブートストラップ回路を用いた電源など)を必要とする。制御装置が、スイッチ素子に印加する制御電圧を調整することで出力電圧を調整できる。しかし、制御電圧の値次第では電圧が低下してしまい、「スイッチ素子」がオフ、又は、動作不安定となる。このようなときに「スイッチ素子」の異常検出を設けていないと、異常を検出できず異常状態に陥ると正常に動作させることができない。
【0004】
また、スイッチ素子を駆動する駆動回路が毎回昇圧電源のオンオフ(立上り/立下り)を発生させてしまう。また、駆動指令を伝達するため高耐圧のレベルシフト部も必要となる。高耐圧のレベルシフト部を通じて制御電圧をスイッチ素子に印加することになるが、レベルシフト部の遅延時間が大きく、スイッチ素子を遮断するまでに多くの時間を要してしまう。
【0005】
高耐圧のレベルシフト部の遅延の影響が大きくなると、異常判定、保護動作が遅くなり、遮断直後にトランスの二次側出力電圧が過電圧となり部品に異常を生じさせる虞がある。また高耐圧のレベルシフト部は、遅延の影響により制御電流値が設定値よりも大きくなり、出力電圧のリップルが増加してしまう虞もある。またトランスが磁束飽和する虞がある。この場合、スイッチ素子に異常を生じさせないよう耐量が必要以上に大きいものを用いなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、スイッチの耐量を極力抑制しながら構成でき、通常時の出力電圧のリップルを抑制しながら、異常検出したときの保護動作を適切にできるようにしたスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のスイッチング電源装置は、第1スイッチと、第2スイッチと、検出部と、制御部と、第1駆動部と、第2駆動部と、を備える。第1スイッチ及び第2スイッチは背景技術欄記載のスイッチ素子相当を示す。第1スイッチは、トランスの一次側にて高圧側に接続される。第2スイッチは、第1スイッチに直列で低圧側に接続される。検出部は、トランスの一次側に流れている電流を検出する。
【0009】
制御部は、第1スイッチ及び第2スイッチのオンオフタイミングを決定する。第1駆動部は、昇圧電源を用いて動作し制御部による制御電圧をレベルシフトするレベルシフト部を備えレベルシフト部を通じて第1スイッチを駆動する。第2駆動部は、制御部による制御電圧を入力しレベルシフト部を用いることなく第2スイッチを駆動する。制御部は、検出部の検出値に基づいて第1駆動部を用いて第1スイッチを制御すると共に第2駆動部を用いて第2スイッチを制御する際に、レベルシフト部の不要な第2スイッチをトランスの一次側の通電オフ用スイッチとして動作させる。
【0010】
請求項1記載の発明によれば、制御部は、ブートストラップ電源及びレベルシフト部を用いて高圧側に接続される第1スイッチを制御しており、レベルシフト部を用いることなく第2スイッチを制御している。したがって、制御部が、レベルシフト部の不要な第2スイッチをトランスの一次側の通電オフ用スイッチとして動作させることで、トランスの一次側を速く通電オフできる。
【0011】
通常動作時には、制御閾値に達した瞬間にトランスの一次側の電流を低下させることができ、当該電流が制御閾値より大きくならない。このため、出力電圧のリップルを極力抑制できる。第2スイッチの耐量を極力抑制しながら構成できる。しかも、第2スイッチをトランスの一次側の通電オフ用スイッチとして動作させているため、異常検出したときにも、制御部が第2駆動部により第2スイッチをオフすることにより、トランスの一次側を速く通電オフでき、異常検出したときの保護動作を適切にできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態におけるスイッチング電源装置の電気的構成図
【
図2】第1実施形態における動作を概略的に示すフローチャート
【
図3】比較例その1について動作を模式的に示すタイムチャート
【
図4】比較例その2について動作を模式的に示すタイムチャート
【
図5】第1実施形態における動作を模式的に示すタイムチャート
【
図6】第2実施形態における動作を概略的に示すフローチャート
【
図7】第3実施形態における動作を概略的に示すフローチャート
【
図8】第3実施形態における動作を模式的に示すタイムチャート
【
図9】第4実施形態におけるスイッチング電源装置の電気的構成図
【
図10】第4実施形態における動作を概略的に示すフローチャート
【
図11】第4実施形態における動作を模式的に示すタイムチャート
【
図12】第5実施形態におけるスイッチング電源装置の電気的構成図
【
図13】第5実施形態における動作を概略的に示すフローチャート
【
図14】第6実施形態におけるスイッチング電源装置の電気的構成図
【
図15】第6実施形態における動作を模式的に示すタイムチャート
【
図16】第7実施形態における動作を模式的に示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、スイッチング電源装置の幾つかの実施形態について図面を参照しながら説明する。複数の実施形態について同一又は類似の構成部分には同一又は類似符号を付して説明を省略することがある。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態について
図1から
図5を参照しながら説明する。
図1に例示したように、スイッチング電源装置1は、制御部10、第1駆動部11、第2駆動部12、検出部13、トランス14、入力側平滑回路15、出力側平滑回路16、フィードバック部17、を主として備える。スイッチング電源装置1は絶縁フライバック型に構成されている。トランス14は、主巻線及び補助巻線からなる一次巻線と、二次巻線とを備える。
【0015】
トランス14の一次巻線の主巻線の一端には入力直流電圧Vinが印加されている。主巻線の他端には、その高圧側に第1スイッチSW1、低圧側に第2スイッチSW2が直列接続されている。第1スイッチSW1は、例えばNチャネル型のMOSFETにより構成されている。第2スイッチSW2もまた例えばNチャネル型のMOSFETにより構成されている。第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2はIGBTにより構成しても良い。IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistor の略を示す。
【0016】
主巻線の他端は、第1スイッチSW1のドレインソース間(通電端子間)、第2スイッチSW2のドレインソース間(通電端子間)、及び、電流検出抵抗Rsを通じてグランドまで直列接続されている。
【0017】
他方、トランス14の一次側の補助巻線には、入力側平滑回路15が接続されている。入力側平滑回路15は、ダイオードD2及び入力平滑コンデンサC2を図示のように組み合わせて構成され、トランス14の一次側の補助巻線に発生した電圧を整流、平滑し、その出力直流電圧をフィードバック部17に出力する。
【0018】
トランス14の二次巻線には出力側平滑回路16が接続されている。出力側平滑回路16は、ダイオードD3及び出力平滑コンデンサC3を図示のように組み合わせて構成され、トランス14の二次側に発生した電圧を整流、平滑し出力電圧Voutとして負荷18に出力する。
【0019】
第1駆動部11は、第1スイッチSW1を駆動するために設けられる。第2駆動部12は、第2スイッチSW2を駆動するために設けられる。第1駆動部11は、高耐圧レベルシフト部21、第1ゲート駆動部22、第1オンオフ判定部24、及び、高耐圧レベルシフト部23を備える。第2駆動部12は、第2ゲート駆動部31、及び第2オンオフ判定部32を備える。
【0020】
高耐圧レベルシフト部21には、電圧V1及びブートストラップ電源Vbstが個別に与えられている。ブートストラップ電源回路は、ダイオードD1及びコンデンサC1及び電圧V1を用いて制御用の電源としてブートストラップ電源Vbstを生成する。
【0021】
第1スイッチSW1の制御端子としてのゲートは、第1駆動部11に接続されている。
制御部10は、出力電圧Voutの目標電圧に応じた例えばPFM変調した制御電圧のパルスをオン指令として高耐圧レベルシフト部21に出力する。高耐圧レベルシフト部21は、入力した制御電圧のパルスを高圧側にレベルシフトし第1ゲート駆動部22に出力する。
【0022】
第1ゲート駆動部22には、ブートストラップ電源回路によるブートストラップ電源Vbstが与えられている。第1ゲート駆動部22は、このブートストラップ電源Vbstを用いて第1スイッチSW1のゲートを駆動する。第1スイッチSW1のゲートには、第1オンオフ判定部24が接続されている。第1オンオフ判定部24は、第1スイッチSW1のゲート電圧を検出する。第1オンオフ判定部24は、ゲート電圧を予め定められた所定の閾値電圧と比較することで第1スイッチSW1のオン状態/オフ状態を判定し、この判定結果を高耐圧レベルシフト部21に出力する。高耐圧レベルシフト部21は、第1オンオフ判定部24の判定信号を低圧側にレベルシフトし、制御部10に出力する。これにより、制御部10は、第1スイッチSW1のオン状態/オフ状態を検出しながら、第1スイッチSW1をオンオフ制御できる。
【0023】
第2スイッチSW2の制御端子としてのゲートは、第2駆動部12に接続されている。制御部10は、第2スイッチSW2をオン制御するときにオン制御電圧を第2ゲート駆動部31を通じて第2スイッチSW2のゲートに印加する。制御部10は、第2スイッチSW2をオフ制御するときにゼロ制御電圧を第2ゲート駆動部31を通じて第2スイッチSW2のゲートに印加する。これにより制御部10は、第2スイッチSW2をオンオフ制御できる。
【0024】
第2スイッチSW2のゲートには第2オンオフ判定部32が接続されている。第2オンオフ判定部32は、第2スイッチSW2のゲート電圧を検出し、ゲート電圧を所定の閾値電圧と比較することで第2スイッチSW2のオン/オフ状態を判定し判定結果を制御部10に出力する。これにより制御部10は、第2スイッチSW2のオン/オフ状態を検出しながら第2スイッチSW2をオンオフ制御できる。
【0025】
検出部13は、電流検出抵抗Rs、電流検出抵抗Rsにかかる検出電圧VRsを予め定められた短絡閾値と比較する第1コンパレータ33、及び、電流検出抵抗Rsにかかる電圧を予め定められた制御閾値と比較する第2コンパレータ34を備える。第1コンパレータ33及び第2コンパレータ34は、比較部として用いられる。短絡閾値は、制御閾値よりも高く予め定められている。
【0026】
制御閾値は、検出部13からオフ指令を出力するために予め定められたトランス14の一次側の電流I1の制御電流閾値(
図3参照)に対応した電圧を示す。制御閾値は、制御電流閾値との間で比例関係にある。またトランス14の一次側が短絡したときには当該トランス14の一次側の電流I1が増加し短絡電流が流れる。短絡閾値は、この短絡電流を検出するために予め定められた短絡電流閾値に対応した電圧を示す。短絡閾値は短絡電流閾値と比例関係にある。
【0027】
第1コンパレータ33は、電流検出抵抗Rsに短絡電流が流れると短絡電流を検知し短絡検知信号を制御部10に出力する。第2コンパレータ34は、電流検出抵抗Rsにオン時の制御電流値が流れると制御電流値を検知し、オフ指令信号を制御部10に出力する。制御部10は、これらの第1コンパレータ33の短絡検知信号及び第2コンパレータ34のオフ指令信号に基づいて第1スイッチSW1又は/及び第2スイッチSW2をオフ制御する。例えば制御部10は、第2コンパレータ34からオフ指令信号を入力すると第2スイッチSW2をオフ制御する。第2スイッチSW2のオンオフ制御の詳細タイミングは後述する。
【0028】
他方、入力側平滑回路15は、一次側の補助巻線に生じる電圧を整流、平滑化しフィードバック部17に出力する。フィードバック部17は、入力側平滑回路15の出力電圧に基づいてオン指令を制御部10に出力する。制御部10は、オン指令を受け付けるとオン指令に応じて第1スイッチSW1をオン制御する。第1スイッチSW1のオンオフ制御のタイミングは後述する。
【0029】
制御部10は、第1駆動部11を用いて第1スイッチSW1をオンオフ制御すると共に、第2駆動部12を用いて第2スイッチSW2をオンオフ制御することで、交流電圧をトランス14の一次巻線に発生させる。トランス14は、トランス14の一次巻線に発生した交流電圧を変換して二次巻線に発生させる。二次巻線には出力側平滑回路16が接続されている。出力側平滑回路16は交流電圧を整流、平滑し、出力電圧Voutを負荷18に供給する。これによりスイッチング電源装置1は直流の出力電圧Voutを負荷18に供給できる。
【0030】
次に、直流の出力電圧Voutを出力するための基本的動作と共に、第1スイッチSW1を監視する場合の処理について
図2のフローチャートを参照しながら説明する。以下の説明では、第1スイッチSW1のみ短絡異常であるか否かを監視する場合について説明する。
【0031】
初期の待機状態では、
図2のS101に示すように、制御部10は、第1スイッチSW1をオフに制御すると共に第2スイッチSW2をオンに制御することで待機状態とする。第1スイッチSW1がオフ状態となっているため、トランス14の一次側に電流I1は流れない。このとき制御部10はブートストラップ電源回路を充電しつつ待機する。初期には、制御部10が、S103においてPFM変調したオン指令のパルスを発生させることで当該オン指令に応じて第1駆動部11により第1スイッチSW1をオン制御する。
【0032】
S104に示すように第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2が共にオンになる。このため、トランス14の一次側に電流I1が流れ始める。電流検出抵抗Rsにも電流I1が流れ始める。第2コンパレータ34は、S105において電流検出抵抗Rsの検出電圧VRsを検出し制御閾値を上回るか否か判定する。検出電圧VRsが制御閾値に達すると、コンパレータ34はオフ指令を制御部10に出力する。制御部10は、オフ指令を受け付けると、S106において第2駆動部12により第2スイッチSW2をオフ制御することで電流I1を停止させる。この場合、第2スイッチSW2は高耐圧レベルシフトを必要としないため、遅延なく電流I1をオフ制御できる。
【0033】
その後、制御部10は、S107において第2スイッチSW2の状態がオフになったか判定する。このとき、第2スイッチSW2の状態がオフになったか否かは、第2オンオフ判定部32により第2スイッチSW2のゲート電圧が所定の閾値電圧よりも低下したか否かを検出するとよい。なお、その他の方法として、例えば、検出部13により電流検出抵抗Rsの両端電圧がゼロに至ったことを検出することでオフ状態になったか否かを判定するようにしてもよい。
【0034】
制御部10は、第2スイッチSW2の状態オフを確認すると、S108において第1スイッチSW1をオフ制御する。これにより、第2スイッチSW2及び第1スイッチSW1を順にオフ制御できる。
【0035】
その後、制御部10は、S109において第1スイッチSW1の状態がオフになったか否かを確認する。このとき、第1スイッチSW1の状態がオフになったか否かは、第1オンオフ判定部24によりゲート電圧が所定の閾値電圧よりも低下したか否かを検出するとよい。なお例えば、制御部10が、駆動部によりオフ駆動制御開始したタイミングから内蔵のタイマを起動させ、タイマの時間が所定の時間経過したことをトリガとして第1スイッチSW1がオフ状態になったと見做し判定するようにしてもよい。
【0036】
制御部10は、第1スイッチSW1の状態のオフを確認すると、S101において第2スイッチSW2をオン制御する。これにより、第1スイッチSW1のオフを確認した後に第2スイッチSW2をオンできる。この結果、第1スイッチSW1がオフ状態、第2スイッチSW2がオン状態となる。第2スイッチSW2がオフ状態からオンすることでブートストラップ電源Vbstの充電が開始される(後述する
図5に示すタイミングt3参照)。
図2のS102に示すように、電流検出抵抗Rsの検出電圧VRsが、電流I1の短絡電流閾値に対応して予め定められる所定の短絡閾値を下回ると共に、S103にてフィードバック部17からオン指令を受け付けない限り、制御部10は、S102、S103の判定処理を繰り返す。
【0037】
S101~S103の待機状態では、制御部10は、第1スイッチSW1をオフ制御、第2スイッチSW2をオン制御した状態で待機し、この間、コンデンサC2から昇圧電源としての電圧V1、ブートストラップ電源Vbstを第1駆動部11に供給し続けることができる。
【0038】
制御部10が、S101~S103の待機状態にて判定処理を繰り返している最中、フィードバック部17は、トランス14のコンデンサC2の電圧V1をモニタしてオンタイミングを決定する。そしてフィードバック部17は、決定したオンタイミングでトランス14の一次側の電流I1のオン指令を制御部10に出力する。
【0039】
フィードバック部17は、トランス14の一次側の電圧V1が所定の充電開始電圧より低下したことを検出するとオン指令を制御部10に出力する。電圧V1は、高耐圧レベルシフト部21、高耐圧レベルシフト部23、第1ゲート駆動部22、第2ゲート駆動部31が動作することで電力消費される。
【0040】
前述の所定の充電開始電圧は、この電圧V1が消費されることで低下し、使用不能になる閾値電圧にマージンを見込んで設定される。このため、高耐圧レベルシフト部21、高耐圧レベルシフト部23、第1ゲート駆動部22、第2ゲート駆動部31が動作することで電力消費され、電圧V1が所定の閾値電圧まで低下すると、フィードバック部17が、トランス14の一次側の電流I1のオン指令を制御部10に出力する。
【0041】
ここで、フィードバック部17は、トランス14の一次側の電圧V1をモニタしてオンタイミングを決定する形態を示したが、フィードバック部17がモニタする箇所は適宜変更してもよい。例えば、フィードバック部17は、トランス14の二次側の出力電圧Voutをモニタしてオンタイミングを決定するようにしてもよい。出力電圧Voutは、負荷18が電力消費することで徐々に低下する。このため、フィードバック部17は、出力電圧Voutが充電開始閾値まで低下したことを条件としてトランス14の一次側の電流I1のオン指令のタイミングを決定してもよい。この場合、絶縁素子を介して出力電圧Voutをフィードバック部17に入力させてもよい。すなわち、フィードバック部17は、トランス14の一次側の電圧V1又は出力側の出力電圧Voutのいずれの電圧又は双方の電圧に基づいてオン指令のタイミングを決定しても良い。
【0042】
制御部10は、フィードバック部17からオン指令を受け付けるとS104において第1駆動部11により第1スイッチSW1をオンする。これにより、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2を共にオン制御できる。また制御部10は、S105において、検出部13により検出電流が制御電流閾値に達する、すなわち検出電圧VRsが制御閾値に達したことを検出すると、第2スイッチSW2をオフする。
【0043】
その後、制御部10は、S107において第2オンオフ判定部32を用いて第2スイッチSW2のオフを確認すると、S108において第1スイッチSW1をオフする。また、S109において第1スイッチSW1のオフを確認すると第2スイッチSW2をオンする。そしてS101の待機状態に戻る。通常、このような状態遷移を経てS101~S109の処理を繰り返すことができる。したがって、制御部10は、フィードバック部17から受け付けるオン指令、検出部13から受け付けるオフ指令、短絡検出信号に基づいて、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2のオン/オフを制御することになる。
【0044】
<第1スイッチSW1の短絡異常検出>
制御部10は、S102、S103の判定処理を繰り返している最中、検出部13が、第1コンパレータ33により電流検出抵抗Rsの検出電圧VRsが短絡閾値以上になったことを検出すると、制御部10に短絡検知信号を出力する。
【0045】
制御部10は、短絡検知信号を入力すると、第1スイッチSW1がオフ指令であるにも拘わらず検出電圧VRsが短絡閾値を超えているため短絡異常と判定する。この場合、制御部10は、S110において第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2を共にオフ状態に制御する。この場合、例えば所定のフェールセーフ処理を行う。
【0046】
<比較例その1の説明>
比較例の技術を適用した場合のタイミングチャートを
図3、
図4に例示している。
図3は、
図1に示したスイッチング電源回路と同様の電気的構成を用いるものの、仮に、第1スイッチSW1を保護用途に用いると共に、第2スイッチSW2をオン/オフ制御の制御用途に用いた場合のタイミングチャートを示している。
【0047】
第1スイッチSW1を保護用途に用いる場合、通常動作している間、制御部10は、常に第1スイッチSW1をオン制御し続ける。そして制御部10が、
図3のタイミングta2、ta4、ta6に示すように、第2スイッチSW2をオン/オフ制御することで、トランス14の一次側に交流電圧を発生させることになる。
【0048】
前述説明した回路構成では、第2スイッチSW2のオフ期間が長いためブートストラップ電源Vbstに電力が供給されずにブートストラップ電源Vbstが消費され続け、電圧が低下する。
【0049】
このため、タイミングta1、ta3、ta5に示すように、ブートストラップ電源Vbstが所定の閾値電圧Vtを下回る周期で、第1スイッチSW1がオフしオン状態を維持できなくなる。このタイミングta1、ta3、ta5において第1スイッチSW1がオフしたときには第2スイッチSW2もオフしている。このため、高耐圧レベルシフト部21及びゲート駆動部へのブートストラップ電源Vbstの供給が不安定となる。
【0050】
、
その後、仮に
図3に示すタイミングta2、ta4、ta6において、制御部10が第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2を共にオンした場合にはブートストラップ電源Vbstに電力が充電されブートストラップ電源Vbstが上昇する。しかし前述したように、ブートストラップ電源Vbstが所定の閾値電圧Vtを下回る周期で周期的に第1スイッチSW1がオンオフ動作を繰り返し不安定な動作状態となる。
【0051】
しかもその後、
図3のタイミングt20において仮に第1スイッチSW1が短絡故障すると、制御部10は、その後のタイミングt11において第1スイッチSW1をオフ制御する。第1スイッチSW1は、高耐圧レベルシフト部21により指令電圧を変換してオフ指令することが必要となる。
【0052】
このため、高耐圧レベルシフト部21のレベルシフト動作に遅延時間Tdlsを余分に生じることから、タイミングt11~t11aの遅延時間Tdlsに示すように、第1スイッチSW1のオフ制御時間もまた遅延してしまう。すると、本来の過電流用の短絡閾値に達したタイミングで瞬時に動作停止させることが困難となる。
図3のタイミングt11~t11a以降に示すように、スイッチング電源装置1の出力電圧Voutはその目標電圧から大幅に逸脱した過電圧を生じてしまい好ましくない。
【0053】
<比較例その2の説明>
また
図4は、
図1に示したスイッチング電源装置1と同様の電気的構成の回路を用いるものの、仮に、第1スイッチSW1をオン/オフ制御用途に用いると共に、第2スイッチSW2を保護用途に用いた場合のタイミングチャートを示している。
【0054】
第2スイッチSW2を保護用途に用いる場合、通常動作している間、制御部10は、常に第2スイッチSW2をオン制御し続ける。そして、制御部10が、第1スイッチSW1をオン/オフ制御することでトランス14の一次側に交流電圧を発生させることになる。
【0055】
制御部10が、第1スイッチSW1を介してオン/オフ制御することになると、高耐圧レベルシフト部21によりオン/オフ指令の電圧を変換してオン/オフ制御することになる。このため、高耐圧レベルシフト部21の動作に基づく遅延時間Tdlsを余分に生じることから、本来の目標の制御閾値に達した後も出力電圧Voutが大きく変動する。
図4の変動電圧ΔV2を参照。このことから、出力電圧Voutの詳細な制御が困難になる。出力電圧Voutに大きな電圧リップルを生じることとなり、出力電圧Voutを目標電圧に制御することが困難である。
【0056】
<本実施形態の技術的意義の説明>
これに対し、本実施形態の構成を採用した場合のタイミングチャート例を
図5に示している。
図5に示すように、第1スイッチSW1は、高耐圧レベルシフト部21の作用に遅延時間Tdlsを生じる。このため、第1スイッチSW1は、オン/オフ指令に遅れて実際にオン/オフする。他方、第2スイッチSW2は、高耐圧レベルシフト部21を必要としていないため、オン/オフ指令に極力遅れることなくオン/オフする。
【0057】
S101の待機状態では、第1スイッチSW1をオフに保持したまま第2スイッチSW2をオンしており、検出部13の検出電圧VRsが短絡閾値を下回っていれば、第2スイッチSW2はオフする。このことから、高耐圧レベルシフト部21によるレベルシフト作用の遅延時間Tdlsを生じることなく、即座に第2スイッチSW2をオフできる。これにより、電圧リップルを極力抑制できるようになり、スイッチング電源装置1の出力電圧Voutについて目標電圧を中心とした所定範囲に制御でき、出力電圧Voutに過電圧を生じることもなくなる。
【0058】
<本実施形態の効果>
制御部10は、電圧V1及び高耐圧レベルシフト部21を用いて高圧側に接続される第1スイッチSW1を制御しており、高耐圧レベルシフト部21を用いることなく第2スイッチSW2を制御している。したがって、制御部10が、高耐圧レベルシフト部21の不要な第2スイッチSW2をトランス14の一次側の通電オフ用スイッチとして動作させることで、トランス14の一次側を速く通電オフできる。
【0059】
通常動作時には、検出電圧VRsが制御閾値に達した瞬間に低下させることができ、電流I1が制御電流閾値より大きくならない。また比較例その1に示したようなブートストラップ電源Vbstの立上り/立下りを発生させることがなくなり意図しないタイミングでの第1スイッチSW1のオンオフがなくなる。しかも、出力電圧Voutのリップルを極力抑制でき、第2スイッチSW2の耐量を極力抑制しながら構成できる。狙い通りの目標電流値で出力電圧Voutを制御可能となり、素早く待機状態に戻すことができる。
【0060】
また、第2スイッチSW2をトランス14の一次側の通電オフ用スイッチとして動作させているため、異常検出したときにも、制御部10が、第2駆動部12により第2スイッチSW2をオフすることでトランス14の一次側を素早く通電オフでき、異常検出したときの保護動作を適切にできる。
【0061】
(第2実施形態)
第2実施形態について
図6を参照して説明する。第1実施形態では、制御部10が、第2スイッチSW2及び第1スイッチSW1を段階的にオフする形態を示したが、第1スイッチSW1をオフする際には、第2スイッチSW2をオフした後、第1所定時間Td1を経過した後に第1スイッチSW1をオフするようにしてもよい。また、第1スイッチSW1をオフした後、第2所定時間Td2経過した後に第1所定時間Td1経過すると第2スイッチSW2をオンするようにしてもよい。ここでは第1所定時間Td1と第2所定時間Td2とは、同一時間であっても互いに異なる時間であっても良い。
【0062】
例えば、
図6に示すように、制御部10が、S104において第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2を共にオン制御した後、S105において検出電圧VRsが制御閾値を上回ったか否かを判定するが、制御閾値を上回れば、制御部10は、S106において第1スイッチSW1をオンに保持したまま第2スイッチSW2をオフ制御する。
【0063】
制御部10は、この第2スイッチSW2をオフ指令したタイミングからタイマを起動し、S107aにおいて第1所定時間Td1を経過したと判定すると、第1スイッチSW1をオフ指令する。また、制御部10は、第1スイッチSW1をオフ指令したタイミングからタイマを再起動し、S109aにおいて第2所定時間Td2を経過したと判定すると、制御部10は、S101に処理を戻して第2スイッチSW2をオン制御する。これにより、S101の待機状態に遷移させることができる。これにより、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0064】
(第3実施形態)
第3実施形態について
図7及び
図8を参照して説明する。第1実施形態では、第2スイッチSW2及び第1スイッチSW1を段階的に異なるタイミングでオフする形態を示したが、
図2のS106、S107の処理を省き、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2を同時にオフするようにしてもよい。
【0065】
図7に示すように、制御部10が、S104において第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2を共にオン制御した後、S105において制御閾値を上回ったか否かを判定するが、制御閾値を上回れば、制御部10は、S108において第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2を同時にオフ制御してもよい。
【0066】
図8に示すように、制御部10は、タイミングt1において第1スイッチSW1をオン制御する。その後、検出部13により検出電圧VRsが制御閾値に達したことが検出されると、制御部10は、
図7のS108、
図8のタイミングt2bにおいて同時に第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2を共にオフ制御する。制御部10は、第1スイッチSW1の状態のオフを確認すると、第2スイッチSW2をオン制御する。第1スイッチSW1の状態のオフを確認した後、制御部10は即座に第2スイッチSW2をオン制御するようにしてもよい。
【0067】
また、第1スイッチSW1の状態のオフを確認後、制御部10はタイマを起動し第3所定時間Td3が経過したか否かを判定し、第3所定時間Td3の経過後に第2スイッチSW2をオンするようにしてもよい。制御部10は、第3所定時間Td3の経過後、タイミングt3において第2スイッチSW2をオン制御しなおす。これにより、第1スイッチSW1の状態のオフが確認された後、第3所定時間Td3の経過後に、S101において第2スイッチSW2をオン制御することができる。
【0068】
これにより、S101の待機状態に遷移させることができる。これにより、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。第1所定時間Td1~第3所定時間Td3は共に同一時間としてもよいし、何れか2つを同一時間とし他の一つを異なる時間としてもよいし、全て互いに異なる時間であってもよい。
【0069】
(第4実施形態)
第4実施形態について
図9から
図11を参照して説明する。前述実施形態のスイッチング電源装置1では、第2駆動部12が、第2スイッチSW2のゲート電圧を検出する第2オンオフ判定部32を設けた形態を説明したが、第2スイッチSW2の状態を検出する方法はこの方法に限られるものではない。
【0070】
例えば、
図9のスイッチング電源装置201に示すように、電流オフ検出用の第3コンパレータ35を検出部213に設けても良い。検出部213は、第1コンパレータ33、第2コンパレータ34、及び、第3コンパレータ35を備える。第2駆動部12に代わる第2駆動部212は、第2ゲート駆動部31を備えるものの、第1実施形態で説明した第2オンオフ判定部32を備えていない。
【0071】
第2スイッチSW2は、トランス14の一次側の通電オフ用に設けられている。制御部10が、第2ゲート駆動部31により第2スイッチSW2のゲートをオフ駆動するとトランス14の一次側の電流I1が通電オフされる。このため、電流検出抵抗Rsに流れていた電流I1が遮断される。検出部213の第3コンパレータ35は、
図10のS102aにおいて電流検出抵抗Rsの検出電圧VRsが所定の短絡閾値を下回り、さらにS102bにおいて検出電圧VRsがゼロVになると、第2スイッチSW2のオフ検出信号を制御部10に出力する。
【0072】
制御部10は、第3コンパレータ35から第2スイッチSW2のオフ検出信号を入力すると第2スイッチSW2がオフしたと判定する。これにより、第2オンオフ判定部32を設けなくても第2スイッチSW2がオフしたことを確認できる。その後、制御部10は、S108において第1スイッチSW1をオフ制御する。すなわち、制御部10は、S102a→S110において第2スイッチSW2の短絡異常と判定する前に、S102bにおいて電流検出抵抗Rsの検出電圧VRsがゼロになると第1スイッチSW1をオフ制御するようにしている。これにより、短絡異常を生じているか否か正確に判定できる。その後の処理内容は、前述実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0073】
第1スイッチSW1がオフ状態で且つ、第2スイッチSW2がオン状態の待機状態のとき、
図11のタイミングt20において第2スイッチSW2が短絡した場合の動作を説明する。制御部10は、タイミングt20の後のタイミングt21では第1スイッチSW1のオン指令を発生させる。第1スイッチSW1は、第1駆動部11の遅延時間Tdlsの影響でタイミングt21から遅れたタイミングt21dにてオン制御される。
【0074】
S105において検出電圧VRsが制御閾値に達すると、制御部10は、タイミングt22にて第2スイッチSW2をオフ制御する。第1スイッチSW1がオン制御されていると共に第2スイッチSW2が短絡しているため、電流I1が流れ続けることで検出電圧VRsも上昇し続ける。制御部10は、S102aにおいて検出電圧VRsが短絡閾値に達することで第2スイッチSW2の短絡異常と判定する。
【0075】
これにより、制御部10は、S102にて第1スイッチSW1の短絡異常を判定できると共に、S102aにて第2スイッチSW2の短絡異常を判定でき、これらの第1スイッチSW1、第2スイッチSW2の異常を個別に判別できる。制御部10は、短絡異常を判定すると
図11のタイミングt11にて第2スイッチSW2をオフ制御する。これにより回路を保護できる。この際、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2を共に、耐量が同一特性の素子を用いることができる。本実施形態の回路構成においても、前述実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0076】
(第5実施形態)
第5実施形態について
図12及び
図13を参照して説明する。
図12は第1実施形態の
図1に代えて示すスイッチング電源装置501の電気的構成図であり、
図13は第3実施形態の
図7に代えて示すフローチャートである。それぞれの実施形態と異なる部分について説明する。スイッチング電源装置501は、スイッチング電源装置1の構成の他、第1駆動部11に代えて第1駆動部211を備え、第2駆動部12に代えて第2駆動部212を備える。
【0077】
図12に示すように、第1駆動部211は、高耐圧レベルシフト部21、第1ゲート駆動部22、コンデンサC1、及びダイオードD1を備えるものの、第1実施形態で説明した第1駆動部11の第1オンオフ判定部24、及び高耐圧レベルシフト部23を備えていない。また、第2駆動部212は、第2ゲート駆動部31を備えるものの、第1実施形態で説明した第2オンオフ判定部32を備えていない。
【0078】
図13に示すように、制御部10が、S108において第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2を共にオフ制御した後、S109aにてタイマを用いて所定時間を経過したか否かを判定する。そして制御部10は、所定時間を経過したことを条件として第1スイッチSW1をオン制御して継続する。このように処理を繰り返すことで、第1オンオフ判定部24、第2オンオフ判定部32を設けることなく構成できるようになり、回路面積を削減でき回路規模を小さくできる。
【0079】
(第6実施形態)
第6実施形態について
図14及び
図15を参照して説明する。
図14は第1実施形態の
図1、第5実施形態の
図12に代えて示すスイッチング電源装置601の電気的構成図であり、
図15は第1実施形態の
図3に代えて示すフローチャートである。それぞれの実施形態と異なる部分について説明する。スイッチング電源装置601は、スイッチング電源装置1の構成の他、第1駆動部11に代えて第1駆動部211を備え、第2駆動部12に代えて第2駆動部212を備える。スイッチング電源装置601は、検出部13に代えて検出部613を備える。
【0080】
図14に示すように、第1駆動部211は第1オンオフ判定部24を備えていない。第2駆動部212は、第2オンオフ判定部32を備えていない。このため、第5実施形態と同様に回路面積を削減でき回路規模を小さくできる。検出部613は、第2コンパレータ34を備えているものの前述実施形態で説明した第1コンパレータ33及び第3コンパレータ35を備えていない。このため、これらの実施形態に比較して回路面積を削減でき回路規模を小さくできる。
【0081】
スイッチング電源装置601は、検出部613の第2コンパレータ34を制御用と短絡用で共通としていることが前述実施形態のスイッチング電源装置1、501と異なっている。制御部10は、制御閾値を前述実施形態と同じ制御閾値に設定し、
図15に示すように第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2のオンオフ制御を繰り返す。
【0082】
図15に示すように、通常動作時、第1スイッチSW1がオフ状態で、且つ、第2スイッチSW2がオン状態となっている待機状態では、制御部10は、タイミングt1において第1スイッチSW1をオン制御することでトランス14の一次側の電流I1を上昇させることができる。その後、検出電圧VRsが電流I1の制御電流閾値に対応した制御閾値に達すると、検出部613は制御閾値に達したことを示す検出信号を制御部10に出力する。
【0083】
制御部10は、検出信号を入力するとタイミングt2において第2スイッチSW2をオフ制御する。制御部10は、タイマによる所定時間の経過後にタイミングt2aにおいて第1スイッチSW1をオフ制御する。その後、制御部10は、タイミングt3において第1スイッチSW1のオフを確認すると、その後、第2スイッチSW2をオン制御し待機状態に戻る。
【0084】
このため基本的に、第1スイッチSW1がオフ状態で且つ第2スイッチSW2がオン状態の待機状態では、トランス14の一次側の電流I1は上昇することはない。待機状態において、第1スイッチSW1が何らかの影響で短絡してしまうと、
図15のタイミングt10に示すように、トランス14の一次側の電流I1が上昇し始める。この検出電圧VRsが制御閾値に達することで、制御部10は、制御閾値に達したことを示す検出信号を入力すると第2スイッチSW2をオフ制御する。
【0085】
第1スイッチSW1が短絡していることから、制御部10は第2スイッチSW2をオフ制御することで電流I1を停止させる。これにより、保護停止時に出力電圧Voutの上昇を抑制できる。前述実施形態で説明した短絡閾値が、制御閾値と同一値に設定されていることと同等の保護制御を実施できる。短絡保護時の短絡閾値を通常動作中の制御閾値と同一値に設定できるため、前述実施形態に比較しても出力電圧Voutの大幅な上昇を抑制できる。
【0086】
本実施形態においても前述実施形態と同様の作用効果を奏する。しかも、制御閾値と短絡閾値と同一とすることで回路を共通化できる。
【0087】
(第7実施形態)
第7実施形態について
図16を参照して説明する。第6実施形態と同一部分について説明を省略し、第6実施形態と異なる部分について説明する。
制御部10は、第2スイッチSW2をオン状態、第1スイッチSW1をオフ状態とした待機状態から、
図16のタイミングt1において第1スイッチSW1をオン制御する。第1スイッチSW1は、遅延時間Tdlsを経過したタイミングt1dにてオン状態となる。この後、制御部10は、検出電圧VRsが制御閾値に達すると、第1スイッチSW1をオン状態に維持したまま、タイミングt2にて第2スイッチSW2をオフ制御する。
【0088】
制御部10は、第2スイッチSW2をオフ制御したタイミングt2から時間を計測し、所定時間経過した後に、検出電圧VRsが制御閾値に達しているか否かを判定する。制御部10は、検出電圧VRsが制御閾値に達していなければタイミングt30にて第1スイッチSW1をオフ制御する。その後、制御部10は、タイミングt3において第2スイッチSW2をオン制御することで待機状態に戻す。制御部10は、この一連の制御動作を繰り返す。
【0089】
その後、例えば、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2が共にオフ状態となっているときに、第2スイッチSW2がタイミングt20にて短絡したと仮定する。タイミングt20の後、制御部10が、第2スイッチSW2をオン制御することで、第1スイッチSW1がオフ状態、第2スイッチSW2がオン状態となった場合には、第2スイッチSW2の短絡異常を検出できない。なぜなら電流I1が流れないためである。
【0090】
しかしその後、制御部10は、第1スイッチSW1をオン制御すると電流I1が流れ始める。その後、制御部10は、検出電圧VRsが制御閾値に達したタイミングt32にて第2スイッチSW2をオフ制御する。しかし第2スイッチSW2が短絡しているため、トランス14の一次側の電流I1は流れ続ける。したがって電流検出抵抗Rsの検出電圧が制御閾値に達した後も、電流I1は上昇し続ける。
【0091】
第2スイッチSW2をオフした所定の一定時間後のタイミングt32においても、第2コンパレータ34は、検出電圧VRsが制御閾値よりも高いため制御閾値より高い旨を示す検出信号を制御部10に出力し続ける。このため、制御部10は第2スイッチSW2が短絡していると判定できる。すると制御部10は、そのタイミングt32にて第1スイッチSW1をオフ制御することで電流I1を停止させる。その後、タイミングt32から遅延時間Tdlsの経過後に第1スイッチSW1がオフすることで電流I1を停止できる。
【0092】
本実施形態によれば、制御部10は、第1スイッチSW1をオン制御で且つ第2スイッチSW2をオン制御した状態では、第2スイッチSW2をオフ制御した後、所定の一定時間を経過した後に予め定められた所定の制御閾値を超えていれば第2スイッチSW2の短絡と判定するようにしている。これにより、前述実施形態と同様の作用効果を奏する。また、短絡閾値と制御閾値とを同一値とすることで回路を共通化できる。
【0093】
(他の実施形態)
本開示は、前述実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形又は拡張が可能である。
【0094】
第1スイッチSW1は、MOSFETにより構成した形態を示したが、これに限定されるものではない。例えばIGBTなど一般的に知られた如何なる種類のスイッチをも第1スイッチSW1として用いることが可能である。
【0095】
なお、扱う電圧が、特に補機バッテリの電圧(12Vバッテリなど)の低電圧入力の場合には、Pチャネル型MOSFETを適用してもよいし、Nチャネル型のMOSFETを適用してもよい。扱う電圧が、電気自動車の駆動用バッテリ(例えば600V、800V程度)の高電圧の場合には、Nチャネル型のMOSFETを用いることが望ましい。扱う電圧が、低電圧であっても、耐圧を低くできオン抵抗も低くなることから、Nチャネル型のMOSFETを用いることがなお好ましい。
【0096】
第1スイッチSW1をNチャネル型のMOSFETとすると、ブートストラップ回路を使用した昇圧電源を必要とする。第1スイッチSW1をPチャネル型のMOSFETとした場合にはスイッチの上位基準で高電圧の電源を必要とする。このため、Nチャネル型、Pチャネル型のMOSFETの何れを用いても前述の課題を生じ、前述実施形態のように構成することで同様の効果を得ることが可能となる。
【0097】
例えば、前述で例示したように二値の制御信号を用いる場合には、Lレベルの信号を受信する場合に第1スイッチSW1を閉じ、Hレベルの信号を受信する場合は第1スイッチSW1を開く構成であればよい。このため、一般的に知られた、いかなるスイッチを第1スイッチSW1として用いることが可能である。
【0098】
本開示に記載の手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0099】
本開示は、前述の実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や実施形態に記載された構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0100】
図面中、1、201、501、601はスイッチング電源装置、SW1は第1スイッチ、SW2は第2スイッチ、10は制御部、11、211は第1駆動部、12、212は第2駆動部、13、613は検出部、14はトランス、21はレベルシフト部、Vbstはブートストラップ電源を示す。