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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175915
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】異常検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20241212BHJP
   G01R 19/165 20060101ALI20241212BHJP
   H02H 7/20 20060101ALI20241212BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20241212BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G01R31/52
G01R19/165 L
H02H7/20 B
H02M1/00 H
H02M3/155 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094013
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】安藤 敏晃
【テーマコード(参考)】
2G014
2G035
5G053
5H730
5H740
【Fターム(参考)】
2G014AA02
2G014AA03
2G014AB27
2G014AB29
2G014AB52
2G014AC18
2G035AA19
2G035AB02
2G035AC02
2G035AC14
2G035AD10
2G035AD23
2G035AD54
5G053AA01
5G053AA07
5G053AA16
5G053DA01
5G053EB02
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB57
5H730DD03
5H730DD04
5H730FD41
5H730FF09
5H730FG01
5H730XX02
5H730XX15
5H730XX22
5H730XX35
5H740BA11
5H740BA12
5H740BB01
5H740BC01
5H740BC02
5H740KK01
5H740MM12
(57)【要約】
【課題】複数のセンス抵抗を用いた複数系統のセンシング経路に基づいて異常を生じているか判定できるようにした異常検出装置を提供する。
【解決手段】 異常検出装置1は、負荷に流れる電流を検出するため直列接続された複数のセンス抵抗3、4の互いの端子間の電圧に応じた複数の差電圧ΔVを抽出する差電圧抽出回路6、7、8を備える。異常検出装置1は、差電圧抽出回路6、7、8により抽出された複数の差電圧に基づいて複数の抵抗の端子15、16、17に異常を生じているか判定する状態異常検出回路10を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に流れる電流を検出するため直列接続された複数の抵抗(3、4)の互いの端子間の電圧に応じた複数の差電圧(ΔV)を抽出する差電圧抽出部(6、7、8;406)と、
前記差電圧抽出部により抽出された複数の差電圧に基づいて前記複数の抵抗の端子に異常を生じているか判定する状態判定部(10)と、
を備える異常検出装置。
【請求項2】
前記状態判定部の判定結果に基づいて前記複数の差電圧を平均した平均電圧を出力するか又は前記差電圧抽出部の複数の差電圧を選択的に出力する電圧変換部(9)と、
前記電圧変換部の出力に基づいて過電流を検出する過電流検出部(11)と、
を備える請求項1記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記状態判定部によりショート異常と判定された場合、
前記電圧変換部は、ショート異常と判定された対象元となった前記差電圧を除き、それ以外の前記差電圧を選択出力し、
前記過電流検出部は、前記選択出力された前記差電圧を所定の過電流閾値と比較することで過電流を検出する請求項2記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記電圧変換部は、前記差電圧抽出部の抽出結果及び前記複数の抵抗の抵抗値の比率に応じて前記複数の差電圧の平均電圧を抽出する平均電圧抽出部(9a)を備え、
前記状態判定部によりショート異常と判定されなかった場合、前記過電流検出部(11)は前記平均電圧抽出部の抽出結果を所定の過電流閾値と比較することで過電流を検出する請求項2記載の異常検出装置。
【請求項5】
前記状態判定部は、前記差電圧抽出部により抽出される少なくとも三以上の前記差電圧のうち何れかの前記差電圧がゼロを含む第1所定範囲となり、他の前記差電圧の絶対値が通常電圧差を中心とした第2所定範囲となることを条件として端子間のショート異常と判定する請求項1記載の異常検出装置。
【請求項6】
前記状態判定部は、前記差電圧抽出部により抽出される二つの差電圧が第3所定電圧範囲に収まっていることを条件として端子のオープン異常と判定する請求項1記載の異常検出装置。
【請求項7】
前記状態判定部は、前記差電圧抽出部により抽出される少なくとも三以上の全ての差電圧が所定より低いことを条件として軽負荷と判定する請求項1記載の異常検出装置。
【請求項8】
前記状態判定部は、前記差電圧抽出部により抽出される少なくとも一つの差電圧が第4所定電圧より逸脱することを条件として抵抗の抵抗値の異常と判定する請求項1記載の異常検出装置。
【請求項9】
前記複数の抵抗の互いの端子間の電圧に応じた前記差電圧を切替えて複数の差電圧を時分割で切替出力するスイッチ部(62)を備え、
前記状態判定部は、前記スイッチ部により切替出力され前記差電圧抽出部(406)により時分割で抽出された複数の差電圧に基づいて前記複数の抵抗の端子に異常を生じているか判定する請求項1又は2記載の異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の異常検出装置は、例えば外部に負荷を接続した端子の異常を検出するために設けられる(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の技術によれば、直列接続された複数の抵抗からなる抵抗回路と、複数の抵抗にそれぞれ接続される複数の接点と、複数の接点のうち一つの接点をGND電位に接続する可動端子と、抵抗回路に流れる電流値に応じ両端電圧が変動する検出抵抗と、検出抵抗の両端電圧を監視する電圧監視手段と、電圧監視手段の電圧情報により可動端子と接点との接続状態を判定する制御手段と、を備えている。そして、抵抗回路の一端、又は他端から可動端子のGND電位へ電流を流す第1、第2の経路を設けている。すなわち、複数の抵抗間の電圧値を検出することに基づいて可動端子と接点との接続状態、接点の短絡を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-056833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
出願人は、スイッチング素子を用いたスイッチング電源装置など負荷制御装置を開発している。発明者らは、この負荷制御装置にて複数のセンス抵抗を用いて複数系統のセンシング経路を使用して異常を生じているか信頼性良く判定することを検討している。しかしながら、特許文献1記載の技術を用いても信頼性良く判定できない。
【0005】
本開示の目的は、複数の抵抗を用いた複数系統のセンシング経路に基づいて異常を生じているか判定できるようにした異常検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、差電圧抽出部は、負荷に流れる電流を検出するため直列接続された複数の抵抗の互いの端子間の電圧に応じた複数の差電圧を抽出し、状態判定部は、差電圧抽出部により抽出された複数の差電圧に基づいて複数の抵抗の端子に異常を生じているか判定する。請求項1記載の発明によれば、複数の差電圧抽出部により抽出された複数の差電圧に基づいて異常を生じているか判定することで複数系統のセンシング経路に基づいて異常を生じているか判定できる。
【0007】
また、発明者らは異常を検出しても過電流保護機能を維持することを検討している。しかし、特許文献1記載の技術を適用しても、端子間のショート時、片方の端子のオープン時には、過電流保護機能を維持できない。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、電圧変換部は、状態判定部の判定結果に基づいて複数の差電圧を平均した平均電圧を出力するか又は複数の差電圧を選択的に出力し、過電流検出部は、電圧変換部の出力に基づいて過電流を検出するようにしている。このため、たとえショート異常を生じたとしても、オープン異常を生じたとしても、過電流検出を継続できる。また、差電圧を抽出し平均化することで電圧の検出誤差を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態を示す電気的構成図
図2】第1実施形態から第7実施形態の状態判定部による判定方法の説明図
図3】比較例を模式的に示す電気的構成図
図4】第2実施形態を示す電気的構成図
図5】第3実施形態を示す電気的構成図
図6】第4実施形態を示す電気的構成図
図7】第5実施形態を示す電気的構成図
図8】第6実施形態を示す電気的構成図
図9】第7実施形態を示す電気的構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、負荷制御装置に関する異常検出装置についての幾つかの実施形態を説明する。各実施形態の間で同一機能を奏する部分については同一符号を付して説明を省略することがある。
【0011】
(第1実施形態)
以下、第1の実施形態について図1から図3を参照して説明する。負荷制御装置をスイッチング電源装置100に適用した実施形態を説明する。図1に示すスイッチング電源装置100は、異常検出装置1としての機能を備える。まずスイッチング電源装置100の構成を説明し、その後、異常検出装置1の構成を説明する。
【0012】
<スイッチング電源装置100の構成>
スイッチング電源装置100は、スイッチング電源制御部5、スイッチング素子SW1、SW2、インダクタ101、及び、コンデンサ102を備える。また、スイッチング電源装置100は、異常検出装置1を接続して構成されている。
【0013】
スイッチング素子SW1、SW2は、それぞれ例えばnチャネル型のMOSFETにより構成され、スイッチング素子SW1は負荷として構成されている。スイッチング素子SW1のゲートは、端子18を通じてスイッチング電源制御部5に接続されている。スイッチング素子SW2のゲートは、端子19を通じてスイッチング電源制御部5に接続されている。
【0014】
複数のセンス抵抗3、4は、スイッチング素子SW1のドレイン電流を検出する。センス抵抗3、4は、抵抗値が互いに同一値に設定されている。ここでいう同一値とは、センス抵抗3、4のばらつきを考慮した範囲で所定の効果を得られる条件で値が同一であることを示しており完全に同一である必要はない。電源電圧VDDのノードとグランドノードとの間には、センス抵抗3及び4と、スイッチング素子SW1及びSW2のドレインソース間とが直列接続されている。センス抵抗3及び4は直列接続されているため、センス抵抗3、4には同一電流が流れ、正常動作していればセンス抵抗3、4の各端子間に同一電圧が生じることになる。
【0015】
スイッチング素子SW1とスイッチング素子SW2との間の共通接続点と出力端子OUTとの間にはインダクタ101が接続されている。出力端子OUTとグランドノードとの間にはコンデンサ102が接続されている。これにより、インダクタ101とコンデンサ102とが出力端子OUTのノードで接続されている。出力端子OUTの出力電圧は、端子20を通じてスイッチング電源制御部5にフィードバック電圧FBとして入力されている。
【0016】
スイッチング電源制御部5は、出力端子OUTの出力電圧をフィードバック電圧FBとして検出し、出力電圧を所定の目標電圧に制御する。スイッチング電源制御部5は、端子18、19を通じてスイッチング素子SW1、SW2にそれぞれパルス電圧をゲート電圧VGH、VGLとして相補的に出力し、デューティ比や周波数を制御することで出力電圧を所定の目標電圧に制御する。
【0017】
例えば、スイッチング電源制御部5は、スイッチング素子SW1のゲートソース間にゲート電圧VGHとしてオン制御電圧を印加する。また同時に、スイッチング電源制御部5は、スイッチング素子SW2のゲートソース間にゲート電圧VGLとしてオフ制御電圧を印加する。このとき、電源電圧VDDの印加ノードからセンス抵抗3、4、スイッチング素子SW1を通じてインダクタ101、コンデンサ102に電流が流れることで出力端子OUTの出力電圧を上昇させることができる。
【0018】
また、スイッチング電源制御部5は、スイッチング素子SW1のゲートソース間にゲート電圧VGHとしてオフ制御電圧を印加する。また同時に、スイッチング電源制御部5は、スイッチング素子SW2のゲートソース間にゲート電圧VGLとしてオン制御電圧を印加する。このとき、電源電圧VDDから流れる通電電流がスイッチング素子SW1により遮断されると共に、コンデンサ102からインダクタ101、スイッチング素子SW2を通じて電流を戻すことができ、出力端子OUTの出力電圧を低下させることができる。
【0019】
スイッチング電源制御部5は、出力端子OUTの出力電圧について端子20を通じてフィードバック電圧FBとして入力し、出力端子OUTの出力電圧が所定の目標電圧より高いか低いか判断する。スイッチング電源制御部5は、この判断結果に基づいてスイッチング素子SW1、SW2に印加するパルス幅又はパルス周波数を調整する。これにより、スイッチング素子SW1のオンオフ時間、スイッチング素子のSW2のオンオフ時間を調整でき、出力端子OUTの出力電圧を制御できる。
【0020】
<異常検出装置1の構成>
異常検出装置1は、センス抵抗3、4に基づく複数の差電圧ΔVを抽出することに基づいて過電流を検出するために設けられる。スイッチング素子SW1のショート/オープン異常の場合には、スイッチング電源制御部5が単独で異常の有無を判定できるが、過電流を判別できないため異常検出装置1を設けている。
【0021】
異常検出装置1は、センス抵抗3、4の他、第1差電圧抽出回路6、第2差電圧抽出回路7、第3差電圧抽出回路8、及び、状態判定部として状態異常検出回路10を備える。また、異常検出装置1は、電圧変換部9を備えると共に、過電流検出部として過電流検出回路11を備える。単に異常検出できればよいのであれば、電圧変換部9、過電流検出回路11は必要に応じて設ければよい。第1差電圧抽出回路6、第2差電圧抽出回路7、及び第3差電圧抽出回路8は、差電圧抽出部として構成されている。
【0022】
第1差電圧抽出回路6、第2差電圧抽出回路7、第3差電圧抽出回路8は、複数のセンス抵抗3、4の互いの端子の間(図1の端子15-端子16間、端子16-端子17間、端子17-端子15間相当)の電圧に応じた複数の差電圧ΔV(=図1のV1-V2、V2-V3、V3-V1相当)を抽出する。状態異常検出回路10は、第1差電圧抽出回路6、第2差電圧抽出回路7、第3差電圧抽出回路8による複数の差電圧ΔVに基づいて複数のセンス抵抗3、4の端子間(図1の端子15-端子16間、端子16-端子17間、端子17-端子15間相当)のショート異常を生じているか判定する。
【0023】
図1に具体例を示すように、端子15とグランドノードとの間には、抵抗51、52が直列接続されている。抵抗51、52は、端子15に生じる電圧Vaの分圧電圧を電圧V1として検出し、第1差電圧抽出回路6及び第3差電圧抽出回路8に出力する。
【0024】
端子16とグランドノードとの間には、抵抗53、54が直列接続されている。抵抗53、54は、端子16に生じる電圧Vbの分圧電圧を電圧V2として検出し、第1差電圧抽出回路6及び第2差電圧抽出回路7に出力する。
【0025】
端子17とグランドノードとの間には、抵抗55、56が直列接続されている。抵抗55、56は、端子17に生じる電圧Vcの分圧電圧を電圧V3として検出し、第2差電圧抽出回路7及び第3差電圧抽出回路8に出力する。抵抗51、52による分圧電圧の分圧比、抵抗53、54による分圧電圧の分圧比、抵抗55、56による分圧電圧の分圧比は、例えば互いに同一値に設定されている。ここでいう同一値とは、センス抵抗3、4のばらつきや抵抗51~56のばらつきを考慮した範囲で所定の効果を得られる条件で値が同一であることを示しており完全に同一である必要はない。
【0026】
第1差電圧抽出回路6は、電圧V1と電圧V2との差電圧ΔVを抽出し、抽出された差電圧ΔVを電圧変換部9及び状態異常検出回路10に出力する。第2差電圧抽出回路7は、電圧V2と電圧V3との差電圧ΔVを抽出し、抽出された差電圧ΔVを電圧変換部9及び状態異常検出回路10に出力する。第3差電圧抽出回路8は、電圧V3と電圧V1との差電圧ΔVを抽出し、抽出された差電圧ΔVを電圧変換部9及び状態異常検出回路10に出力する。
【0027】
電圧変換部9は、第1差電圧抽出回路6、第2差電圧抽出回路7、第3差電圧抽出回路8によりそれぞれ抽出された差電圧ΔVを入力する。入力される差電圧ΔVは、V1-V2、V2-V3、V3-V1となる。電圧変換部9は、平均電圧抽出部として平均電圧抽出回路9aを備えている。平均電圧抽出回路9aは、入力される複数の差電圧ΔVを平均化する。
【0028】
ここでセンス抵抗3、4の抵抗値が同一値であれば、正常状態では第1差電圧抽出回路6、第2差電圧抽出回路7、第3差電圧抽出回路8により抽出された複数の差電圧ΔVは同一値であるため平均化された差電圧ΔVも同一値である。
【0029】
また、センス抵抗3、4は同じ抵抗値である必要はない。抵抗値が異なる場合には抵抗値に比例した差電圧ΔVとなるため、複数のセンス抵抗3、4の抵抗値の比率に応じて差電圧ΔVの平均電圧を抽出するとよい。この場合、センス抵抗3、4の抵抗値の比率に応じて、後述する正常異常判断テーブルT(図2参照)における差電圧ΔVの設定値を設定すると良い。
【0030】
平均電圧抽出回路9aが差電圧ΔVを平均化すると、原理的には端子15-16、16-17、17-15間に対応した前述の差電圧ΔV(=V1-V2、V2-V3、V3-V1)を平均化できる。この結果、センス抵抗3及び4の各端子にそれぞれ生じる電圧Va、Vb、Vcに基づく差電圧ΔVを平均化でき、センス抵抗3、4の各抵抗値の製造ばらつきの影響を抑制できる。
【0031】
他方、状態異常検出回路10は、第1差電圧抽出回路6、第2差電圧抽出回路7、第3差電圧抽出回路8から入力される複数の差電圧ΔVに基づいて状態異常を検出する。電圧変換部9は、状態異常検出回路10の判定結果に基づいて複数の差電圧ΔVを平均した平均電圧を出力するか、又は、第1差電圧抽出回路6、第2差電圧抽出回路7、第3差電圧抽出回路8の複数の差電圧ΔVを選択的に出力する。過電流検出回路11は、電圧変換部9の出力に基づいて過電流を検出する。
【0032】
例えば、状態異常検出回路10が、異常なし、すなわちショート異常と判定せず正常状態と判定したときには、平均電圧抽出回路9aにより平均化された差電圧ΔVの平均電圧を過電流検出回路11に出力する。過電流検出回路11は、正常状態のときには、入力される差電圧ΔVの平均電圧を予め設定された所定の過電流閾値と比較することで、過電流を検出する。この場合、差電圧ΔVの平均電圧から過電流を検出できるようになり検出電圧誤差を軽減できる。
【0033】
例えば、状態異常検出回路10が、端子15、16、17に異常ありと判定したときには、電圧変換部9は、異常と判定された対象元となった差電圧抽出回路(例えば6、7)の差電圧ΔVを除き、それ以外の差電圧抽出回路(例えば8)の差電圧ΔVを過電流検出回路11に出力する。過電流検出回路11は、入力される差電圧ΔVを予め設定された所定の過電流閾値と比較することで、過電流を検出する。この具体例は後述する。
【0034】
図2を参照しながら異常の判断方法を説明する。図2に示す正常異常判断テーブルTはスイッチング電源装置100に予め搭載されたメモリに記憶されている。メモリは、例えば半導体メモリにより構成され非遷移的実体的記録媒体として用いられる。過電流検出回路11及び状態異常検出回路10は、図2に示す正常異常判断テーブルTの内容を参照可能になっており、この正常異常判断テーブルTを参照し、正常であるか異常であるかを判断する。
【0035】
正常異常判断テーブルTは、電源電圧VDD、電圧V1~V3、及び、差電圧ΔVの標準値を標準差電圧ΔVrとしたとき、正常状態、軽負荷状態、オープン状態(開放状態)、隣ピン同士のショート状態(短絡状態)における各電圧V1、V2、V3の差電圧ΔV等の関係性を示している。
【0036】
正常状態とは、出力端子OUTから通常電力を消費している状態を示し、軽負荷状態とは、出力端子OUTに接続された負荷電力消費がゼロ又はゼロに近い所定の消費電力のときの状態を示している。前述したように、センス抵抗3、4の抵抗値が同一値で且つ、抵抗51、52、抵抗53、54、抵抗55、56の分圧比が同一値であるときについて説明する。
【0037】
<正常状態>
正常状態では、第1差電圧抽出回路6、第2差電圧抽出回路7の出力電圧は標準差電圧ΔVrとなる。ここでいう標準差電圧ΔVrは、センス抵抗3又は4の端子間電圧の標準値に対応した差電圧ΔVである。標準差電圧ΔVrは(センス抵抗3、4に流れる電流Iの標準値)×(センス抵抗3又は4にかかる電圧Vの標準値)で表すことができる。
【0038】
図2に示すように、正常状態では、電圧V3-電圧V1は、センス抵抗3又は4にかかる端子間電圧の-2倍となるため、第3差電圧抽出回路8は、差電圧ΔVを-2×ΔVrとして抽出することになる。
【0039】
センス抵抗3、4に誤差成分や、第1差電圧抽出回路6、第2差電圧抽出回路7の誤差成分により誤差電圧ΔVerrを生じる。平均電圧抽出回路9aは、差電圧ΔVを平均化すると共に誤差をも平均化するため、1/2×ΔVerrの誤差を差電圧ΔVの平均電圧に重畳することになる。
【0040】
<正常状態における過電流異常>
前述したように、正常状態において、電圧変換部9は平均電圧抽出回路9aによる差電圧ΔVの平均電圧を過電流検出回路11に出力する。過電流検出回路11は、標準電圧ΔVr+1/2×ΔVerrが過電流閾値に達すると、過電流検出信号を外部及びスイッチング電源制御部5に出力する。スイッチング電源制御部5は、過電流検出回路11から過電流検出信号を入力すると、スイッチング素子SW1のゲートにオフ制御電圧を出力する。
【0041】
スイッチング電源制御部5は、スイッチング素子SW1をオフさせることでコンデンサ102への充電を停止する。ここではコンデンサ102への充電を停止する形態を示しているが、スイッチング電源制御部5は、電源電圧VDDからのスイッチング素子SW1側への電源供給を停止させるようにしてもよい。
【0042】
<端子15と端子16がショート>
端子15と端子16とがショートした場合、図2に示すように、第1差電圧抽出回路6は差電圧ΔVをゼロとし、第2差電圧抽出回路7は差電圧ΔVを標準差電圧ΔVrとし、第3差電圧抽出回路8は差電圧ΔVを負の標準差電圧-ΔVrとして出力する。
【0043】
状態異常検出回路10は、図2の正常異常判断テーブルTを参照して前述の出力電圧と照合する。状態異常検出回路10は、第1差電圧抽出回路6の差電圧ΔVがゼロを含む第1所定範囲となり、他の第2差電圧抽出回路7、第3差電圧抽出回路8により抽出される差電圧ΔVの絶対値が通常電圧差|ΔVr|を中心とした第2所定範囲となると判定すると、端子15及び16間がショートしていることを検出できる。この場合、状態異常検出回路10はショート検出信号を電圧変換部9に出力する。状態異常検出回路10は、過電流検出回路11又は/及びスイッチング電源制御部5にショート検出信号を出力してもよい。
【0044】
電圧変換部9は、状態異常検出回路10から端子15及び16がショートしていることを示すショート検出信号を入力すると、センス抵抗3の端子間電圧を使用不能と判定する。しかし、センス抵抗4の端子間電圧を使用可能であることから、電圧変換部9は、第2差電圧抽出回路7の差電圧ΔVを過電流検出回路11に選択出力する。
【0045】
過電流検出回路11は、第2差電圧抽出回路7の差電圧ΔVのみを用いて過電流検出処理を続ける。過電流検出回路11は、第2差電圧抽出回路7の差電圧ΔVが所定の過電流閾値に達すると過電流検出信号を外部に出力する。過電流検出回路11は、ショート異常を生じたとしても第2差電圧抽出回路7の電圧のみを用いて継続して過電流検出を続けることが可能となる。
【0046】
<端子16と端子17がショート>
端子16と端子17がショートした場合、差電圧抽出回路6の電圧は差電圧ΔVを標準差電圧ΔVrとし、第2差電圧抽出回路7は差電圧ΔVをゼロとし、差電圧抽出回路8は差電圧ΔVを負の標準差電圧-ΔVrとして出力する。
【0047】
状態異常検出回路10は、図2の正常異常判断テーブルTを参照し前述の電圧と照合する。状態異常検出回路10は、第2差電圧抽出回路7の差電圧ΔVがゼロを含む第1所定範囲となり、他の第1差電圧抽出回路6、第3差電圧抽出回路8により抽出される差電圧ΔVの絶対値が通常電圧差|ΔVr|を中心とした第2所定範囲となると判定し、端子16及び17間がショートしていることを検出できる。この場合、状態異常検出回路10はショート検出信号を電圧変換部9に出力する。状態異常検出回路10は、過電流検出回路11又は/及びスイッチング電源制御部5にショート検出信号を出力してもよい。
【0048】
電圧変換部9は、状態異常検出回路10から端子16及び17間がショートしていることを示すショート検出信号を入力すると、センス抵抗4の端子間電圧を使用不能と判定する。しかし、センス抵抗3の端子間電圧は使用可能であることから、電圧変換部9は、第1差電圧抽出回路6の差電圧ΔVを過電流検出回路11に選択出力する。
【0049】
過電流検出回路11は、第1差電圧抽出回路6の差電圧ΔVのみを用いて過電流検出処理を続ける。過電流検出回路11は、第1差電圧抽出回路6の差電圧ΔVが所定の過電流閾値に達すると過電流検出信号を外部に出力する。過電流検出回路11は、ショート異常を生じたとしても第1差電圧抽出回路6の電圧のみを用いて継続して過電流検出を続けることができる。
【0050】
<本実施形態のまとめ>
以上説明したように、本実施形態によれば、複数の差電圧抽出回路6、7、8が、スイッチング素子SW1に流れる電流を検出するため直列接続された複数のセンス抵抗3、4の互いの端子15-16、16-17、17-15間の電圧に応じた三つの差電圧ΔVを抽出し、状態異常検出回路10は、複数の差電圧抽出回路6、7、8により抽出された三つの差電圧ΔVに基づいて複数のセンス抵抗3、4の端子間がショート異常を生じているか判定するようにしている。これにより、複数のセンス抵抗3、4を用いた複数系統のセンシング経路に基づいて例えばショートにかかる異常を生じているか判定できる。
【0051】
<比較例の説明>
また比較例の電気的構成例を図3に示す。図3のスイッチング電源装置100aは、状態異常検出回路10や電圧変換部9を設けておらず、センス抵抗3を1系統のみ設けて過電流検出するようにしている。この場合、第1差電圧抽出回路6が差電圧ΔV=V1-V2を抽出し、この差電圧ΔVが所定の過電流閾値に達しているか否か判定することで過電流を検出する。この場合、端子15及び16がショートしてしまうと、センス抵抗3に過電流を生じているか検出し続けることができない。
【0052】
<本実施形態のまとめその2>
これに対し、本実施形態によれば、電圧変換部9は、状態異常検出回路10の結果に基づいて差電圧ΔVを平均した平均電圧を出力するか又は複数の差電圧抽出回路6、7、8の差電圧ΔVを選択的に出力し、過電流検出回路11は、電圧変換部9の出力に基づいて過電流を検出するようにしている。このため、たとえショート異常を生じたとしても過電流検出を継続できる。
【0053】
例えば、状態異常検出回路10によりショート異常と判定された場合、電圧変換部9は、ショート異常と判定された対象元となった差電圧抽出回路(例えば6、8)の差電圧ΔVを除き、それ以外の差電圧抽出回路(例えば7)の差電圧ΔVを選択出力する。そして、過電流検出回路11は、選択出力された差電圧抽出回路(例えば7)の差電圧ΔVを所定の過電流閾値と比較することで過電流を検出するようにしている。これにより、たとえショート異常があったとしても過電流であるかを継続して検出できる。
【0054】
電圧変換部9は、平均電圧抽出回路9aにより複数の差電圧抽出回路6、7、8の抽出結果及び複数のセンス抵抗3、4の抵抗値の比率に応じて差電圧ΔVの平均電圧を抽出して過電流検出回路11に出力する。状態異常検出回路10によりショート異常と判定されなかった場合、過電流検出回路11は平均電圧抽出回路9aの抽出結果を所定の過電流閾値と比較することで過電流を検出するようにしている。これにより、差電圧ΔVの平均電圧を過電流閾値と比較しているため、ノイズの影響を除外でき信頼性高く過電流を検出できる。
【0055】
状態異常検出回路10は、複数の差電圧抽出回路6、7、8により抽出される何れかの差電圧抽出回路(例えば7)の差電圧ΔVがゼロを含む所定範囲となり、他の差電圧抽出回路(例えば6、8)により抽出される差電圧ΔVの絶対値が通常電圧差|ΔVr|を中心とした所定範囲となることを条件として端子間のショート異常と判定することでショート異常であることを判別できる。なお、抵抗51、53、55はなくても良く必要に応じて設ければよい。また2系統のセンシング経路を備えているため、複数の差電圧抽出回路6、7、8の差電圧ΔVに基づいて正常状態と軽負荷状態とショート状態とを判別できる。機能安全冗長性が必要な構成に使用するとよい。
【0056】
(第2実施形態)
以下、第2の実施形態について図4と共に前述の図2を参照しながら説明する。図4はスイッチング電源装置200を概略的に示す。スイッチング電源装置200は、異常検出装置201を接続して構成されている。本実施形態では、何らかの影響で端子15、16、17の何れかがオープン(開放)してしまった場合について説明する。
【0057】
スイッチング電源装置200の異常検出装置201は、状態異常検出回路10に代えて状態異常検出回路210を状態判定部として備える。状態異常検出回路210は、第1実施形態で説明したショート検出/ショート判定機能の他、端子15、16、17のオープン異常を検出するためのオープン検出/オープン判定機能を備える。ショート検出/ショート判定機能の説明は前述実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0058】
<オープン異常>
状態異常検出回路210は、端子15、16、17のオープン異常を検出する。端子15、16、17の何れかがオープン異常を生じた場合、電圧V1、V2、V3のうち端子がオープンとされた対象電圧は、抵抗52、54又は56によってプルダウンされることでゼロVとなる。例えば、端子15がオープン異常となる場合、図2に示すように、第2差電圧抽出回路7の出力は標準差電圧ΔVrとなるが、差電圧抽出回路6、8の差電圧ΔVの絶対値はVDDで同じ電位となる。
【0059】
状態異常検出回路10は、複数の差電圧抽出回路6、7、8により抽出される二つの差電圧抽出回路6、8の差電圧ΔVが第3所定電圧範囲(この場合、電源電圧VDDを中心とした所定電圧範囲)に収まっていることを条件として端子のオープン異常と判定する。これにより、オープン異常であることを判定できる。
【0060】
状態異常検出回路10は、端子15がオープン異常であることを示すオープン検出信号を電圧変換部9に出力する。すると、電圧変換部9は、第2差電圧抽出回路7の差電圧ΔVのみを選択的に過電流検出回路11に出力する。過電流検出回路11は、第2差電圧抽出回路7の差電圧ΔVのみを用いて過電流検出を続けることができる。
【0061】
その他、端子16、17がオープン異常となった場合も同様である。例えば、端子16がオープン異常となった場合には、電圧変換部9は、第3差電圧抽出回路8の差電圧ΔVを選択的に過電流検出回路11に出力し、過電流検出回路11は、第3差電圧抽出回路8の差電圧ΔV(標準差電圧=-2×ΔVr)のみを用いて過電流検出を継続できる。
【0062】
また例えば、端子17がオープン異常となった場合には、電圧変換部9は、第1差電圧抽出回路6の差電圧ΔVを選択的に過電流検出回路11に出力し、過電流検出回路11は、第1差電圧抽出回路6の差電圧ΔV(標準差電圧=ΔVr)のみを用いて過電流検出を継続できる。
【0063】
第1実施形態と同様に、抵抗51、53、55は無くても良い。また、センス抵抗3、4は同じ抵抗値である必要は無く、その場合は抵抗値に比例した電圧差分を適用するとよい。これにより、前述実施形態と同様の作用効果を得られると共に、オープン異常であることを判定でき、オープン異常を生じたとしても過電流検出を継続できる。
【0064】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について図5及び図2を参照して説明する。図5はスイッチング電源装置300を示す。スイッチング電源装置300は、異常検出装置301を接続して構成されている。スイッチング電源装置300の異常検出装置301は、状態異常検出回路10に代えて状態異常検出回路310を状態判定部として備える。状態異常検出回路310は、第2実施形態で説明したショート検出/ショート判定機能、オープン検出/オープン判定機能の他、軽負荷状態を判定する機能やその他の異常状態を判定する機能を備える。ショート検出/ショート判定機能、オープン検出/オープン判定機能の説明は前述実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0065】
<軽負荷状態>
状態異常検出回路310は、軽負荷状態を判定する。負荷の電力消費が少ないと、出力端子OUTの出力電圧が低下しないことから、スイッチング電源制御部5はスイッチング素子SW1、SW2をオンオフ制御することがない。軽負荷の場合は複数の差電圧抽出回路6、7、8の差電圧ΔVがそれぞれゼロを含む微小となる。状態異常検出回路10はスイッチング電源装置300の負荷が軽負荷である旨を示す軽負荷検出信号を出力する。
【0066】
負荷が軽負荷のときには正常異常判断テーブルTにはゼロ又は微小値と記憶されている。軽負荷状態のときには、第1差電圧抽出回路6、第2差電圧抽出回路7、第3差電圧抽出回路8は共に差電圧ΔVを概ねゼロに近い値を出力する。
【0067】
状態異常検出回路310は、正常異常判断テーブルTを参照し第1差電圧抽出回路6、第2差電圧抽出回路7、第3差電圧抽出回路8の差電圧ΔVと照合する。状態異常検出回路10は、第1差電圧抽出回路6、第2差電圧抽出回路7、第3差電圧抽出回路8の全ての差電圧ΔVが所定より低いことを条件として軽負荷状態と判定する。
【0068】
このとき状態異常検出回路10は、軽負荷状態である旨を示す軽負荷検出信号を電圧変換部9に出力する。これにより、状態異常検出回路10は軽負荷状態であることを判別できる。電圧変換部9は、平均電圧抽出回路9aにより抽出された差電圧ΔVの平均電圧を出力すると、過電流検出回路11は、この平均電圧を所定の過電流閾値と比較することで過電流検出できる。
【0069】
<その他異常状態について>
通常、センス抵抗3、4の抵抗値が同一値に設定されている場合、センス抵抗3、4の抵抗値が何らかの影響(例えば経年劣化など)で大きく異なってしまった場合、差電圧抽出回路6、7の電圧が正常時の抵抗比より大きく異なることになる。このため状態異常検出回路10は、複数の差電圧抽出回路6、7、8のうち少なくとも一つの差電圧ΔVが第4所定電圧より逸脱することを条件として抵抗の抵抗値の異常と判定するようにするとよい。この場合、状態異常検出回路10が、その他異常状態を示す状態異常検出信号を電圧変換部9に出力する。これにより抵抗異常を判定できる。電圧変換部9が、その他異常状態と入力した場合、必要に応じて処理を停止する。
【0070】
その他は前述実施形態と同一であるため説明を省略する。本実施形態においても前述実施形態と同様の作用効果を得られると共に、軽負荷状態、その他異常状態を検出できる。
【0071】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について図6及び図2を参照して説明する。図6はスイッチング電源装置400を示す。スイッチング電源装置400は、異常検出装置401を接続して構成されている。スイッチング電源装置400の異常検出装置401は、第3実施形態のスイッチング電源装置300に設けられる第1差電圧抽出回路6、第2差電圧抽出回路7、第3差電圧抽出回路8に代えて、差電圧抽出回路406を備えると共に、切替信号生成回路61、スイッチ部としての端子切替スイッチ回路62、及び時分割データ合成回路63を備える。
【0072】
端子切替スイッチ回路62は、複数のセンス抵抗3、4の互いの端子間の電圧Va-Vb、Vb-Vc、Vc-Vaに応じた差電圧ΔV(=V1-V2、V2-V3、V3-V1)を切替えて複数の差電圧ΔVを時分割で出力する。具体例としては、端子切替スイッチ回路62は、抵抗51~56によりそれぞれ分圧された電圧V1、V2、V3を入力し、当該電圧V1、V2、V3のうちの2つの電圧を選択し差電圧抽出回路6に出力する。このとき端子切替スイッチ回路62は、切替信号生成回路61から入力される切替信号に基づいて、電圧V1及びV2、電圧V2及びV3、電圧V3及びV1を時分割で切替えて順次繰り返し出力する。
【0073】
差電圧抽出回路6は、入力される2つの電圧の差電圧ΔVを抽出して時分割データ合成回路63に出力する。このため、差電圧抽出回路6は、複数の差電圧ΔV(=V1-V2、V2-V3、V3-V1)を順次繰り返し抽出して時分割データ合成回路63に出力する。
【0074】
時分割データ合成回路63は、切替信号生成回路61から入力される切替信号に基づいて、時分割されてシリアル入力される複数の差電圧ΔVを合成して出力する。具体的には、時分割データ合成回路63は、入力される複数の差電圧ΔVをシリアル-パラレルデータ変換して電圧変換部9及び状態異常検出回路310に出力する。
【0075】
状態異常検出回路310は、端子切替スイッチ回路62により切替出力され差電圧抽出回路406により時分割で抽出された複数の差電圧ΔVに基づいて複数のセンス抵抗3、4の端子に異常を生じているか判定する。状態異常検出回路310は、入力される複数の差電圧ΔVに基づいて、正常状態、ショート状態、オープン状態、軽負荷状態、その他異常状態、を判別し、この状態を示す検出信号を電圧変換部9及び外部に出力する。
【0076】
電圧変換部9は、時分割データ合成回路63から複数の差電圧ΔVをパラレル入力する。入力される差電圧ΔVは、V1-V2、V2-V3、V3-V1となる。電圧変換部9は、平均電圧抽出部として平均電圧抽出回路9aを備えている。平均電圧抽出回路9aは、前述実施形態と同様に入力される差電圧ΔVを平均化する。
【0077】
電圧変換部9は、状態異常検出回路310から入力される状態の検出信号に基づいて、平均電圧抽出回路9aの平均電圧を出力するか又は差電圧ΔVを選択出力する。正常状態、軽負荷状態と判定すると、電圧変換部9は、平均電圧抽出回路9aの平均電圧を出力する。過電流検出回路11は、この平均電圧から過電流を検出できる。これにより、センス抵抗3、4の各抵抗値の製造ばらつきの影響を極力抑制できる。
【0078】
他方、電圧変換部9は、端子15、16、17のうち端子間のショート状態、ある端子のオープン状態、その他異常状態であるときには、正常異常判断テーブルTを参照し、必要な差電圧ΔVを選択出力する。この選択出力方法は、これまで前述した各実施形態で示した方法と同様であるため説明を省略する。このように、差電圧ΔVを時分割で取得しても前述実施形態と同様の作用効果を得られる。
【0079】
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について図7を参照して説明する。図7は負荷制御装置としてスイッチング素子SW1の制御装置500を示す。制御装置500は、スイッチング制御部505を備えている。スイッチング制御部505は、端子18を通じてゲート電圧VGをスイッチング素子SW1のゲートソース間に印加してスイッチング素子SW1を駆動制御する。この制御装置500には、センス抵抗3、4を備えた異常検出装置301が接続されている。
【0080】
図7に示すセンスMOS_SWsは、nチャネル型のMOSトランジスタにより構成され、そのサイズがスイッチング素子SW1のサイズに比べて小さい。センスMOS_SWsは、スイッチング素子SW1に近接した位置に配置されている。
【0081】
スイッチング素子SW1のドレインソース間にはセンスMOS_SWsのドレインソース間、センス抵抗3及び4の直列接続回路が並列接続されている。したがって、センスMOS_SWs及びセンス抵抗3、4には、スイッチング素子SW1のドレイン電流に比例した微小電流が流れる。センス抵抗3、4には、スイッチング素子SW1のドレイン電流に比例した微小電流が流れることから、スイッチング素子SW1のドレインソース間に流れる電流のセンス素子として機能する。
【0082】
第3実施形態で説明したように、異常検出装置301は、状態異常検出回路310を備えている。詳細説明は前述実施形態で説明したため説明を省略するが、状態異常検出回路310は、センス抵抗3、4が接続される端子15、16、17の状態、正常状態、端子間のショート異常、端子のオープン異常、軽負荷状態、その他異常状態、を判別できる。このため、本実施形態のように、スイッチング素子SW1の制御方法を変更したとしても、前述実施形態と同様の作用効果を得られる。
【0083】
(第6実施形態)
以下、第6実施形態について図8を参照して説明する。図8に示すように、負荷としてスイッチング素子SW1に代えてIGBT素子SW1aを適用してもよい。IGBTとは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略を示す。
【0084】
図8は負荷制御装置としてのIGBT素子SW1aの制御装置600を示す。制御装置600は、スイッチング制御部505を備えている。スイッチング制御部505は、端子18を通じてゲート電圧VGをIGBT素子SW1aのゲートエミッタ間に印加してIGBT素子SW1aを駆動制御する。この制御装置600には、センス抵抗3、4を備えた異常検出装置301が接続されている。
【0085】
IGBT素子SW1aには大電流を流すエミッタ端子Eと共に微小センス電流を出力するセンスエミッタ端子SEが設けられている。センスエミッタ端子SEに流れる電流はエミッタ端子Eに流れる電流に依存して変化する。センスエミッタ端子SEの出力電流はセンス抵抗3、4に流れるように接続されている。センス抵抗3、4には、IGBT素子SW1aのエミッタ端子Eの電流に依存した電流が流れることから、IGBT素子SW1aのエミッタ電流のセンス素子として機能する。
【0086】
第3実施形態で説明したように、異常検出装置301は、状態異常検出回路310を備えている。詳細説明は前述実施形態で説明したため説明を省略するが、状態異常検出回路310は、センス抵抗3、4が接続される端子15、16、17の状態、正常状態、端子間のショート異常、端子のオープン異常、軽負荷状態、その他異常状態、を判別できる。このため、本実施形態のように、IGBT素子SW1aの制御に適用したとしても、前述実施形態と同様の作用効果を得られる。
【0087】
(第7実施形態)
以下、第7実施形態について図9を参照して説明する。図9にスイッチング電源集積回路IC300の構成を示す。スイッチング電源集積回路IC300は、第3実施形態で説明したスイッチング電源装置300及び異常検出装置301の構成を備えている。
【0088】
またスイッチング電源集積回路IC300はIC制御部103の構成も備える。IC制御部103は、ハードウェアロジック回路により構成されており、スイッチング電源集積回路IC300のコントローラとして構成される。IC制御部103は、外部のマイコン105に接続されている。
【0089】
マイコン105は、マイクロコンピュータ又はマイクロコントローラであり、異常検出装置301の過電流検出回路11から過電流検出信号を入力可能に接続されている。またマイコン105は、異常検出装置301の状態異常検出回路310から端子間がショートしたことを示すショート検出信号、端子がオープンしたことを示すオープン検出信号、軽負荷状態であることを示す軽負荷検出信号、その他異常状態であることを示すその他異常検出信号、を入力可能に接続されている。
【0090】
マイコン105は、スイッチング電源集積回路IC300から過電流検出信号、ショート検出信号、オープン検出信号、軽負荷検出信号、又は/及び、その他異常検出信号を入力すると、これらの状態に応じて動作を停止させるか状態遷移するか決定し、この決定状況に合わせた電源制御信号をIC制御部103に出力する。
【0091】
例えば、マイコン105は、ショート検出信号を入力した場合であっても過電流検出信号を入力していなければ状態遷移することを決定し、IC制御部103に状態遷移するための電源制御信号を出力する。IC制御部103は、スイッチング電源制御部5にショート検出信号を入力した状態遷移信号を出力することで警戒を促す。スイッチング電源制御部5は、この状態遷移に合わせた制御を継続することができる。また、スイッチング電源制御部5は、過電流検出回路11から過電流検出信号を入力したときにはスイッチング素子SW1及びSW2をオフすることで即座に動作停止させることもできる。
【0092】
例えば、マイコン105は、スイッチング電源集積回路IC300からショート検出信号と共に過電流検出信号を入力したときには、スイッチング電源集積回路IC300の電源出力を停止すべきと判断し、IC制御部103に電源制御信号として動作停止指令を出力する。この場合、IC制御部103は、スイッチング電源制御部5に動作停止指令を出力してスイッチング素子SW1、SW2を共にオフすることで動作を停止させるか、又は、電源電圧VDDを遮断するように制御する。これにより安全性を確保できる。
【0093】
(他の実施形態)
前述実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形又は拡張が可能である。前述実施形態では、三つの差電圧ΔVを抽出して異常を生じているか判定する形態を示したが、二つの差電圧ΔVを抽出して異常を生じているか判定してもよいし、四つ以上の差電圧ΔVを抽出して異常を生じているか判定してもよい。
センス抵抗3、4を2つ直列接続した形態を説明したが、これに限られず3つ以上直列接続した形態を適用してもよい。センス抵抗3、4を3つ以上直列接続されていれば、それらの端子間の電圧に応じた差電圧ΔVの情報量も2つの場合に比較して多くなることからより詳細な異常の状態の判断をすることができる。
【0094】
本開示に記載の手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0095】
本開示は、前述の実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や実施形態に記載された構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0096】
図面中、1、201、301、401は異常検出装置、3、4はセンス抵抗(抵抗)、6~8、406は差電圧抽出回路(差電圧抽出部)、10は状態異常検出回路(状態判定部)、11は過電流検出回路(過電流検出部)、15、16、17は端子、62は端子切替スイッチ回路(スイッチ部)、100、200、300、400はスイッチング電源装置(負荷制御装置)、500はスイッチング素子の制御装置(負荷制御装置)、600はIGBT素子の制御装置(負荷制御装置)、SW1はスイッチング素子(負荷)、SW1aはIGBT素子(負荷)、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9