(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175921
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】船舶用ステアリング装置及び船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 25/02 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B63H25/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094024
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 琢真
(57)【要約】
【課題】船舶用ステアリング装置の組立性を向上し、部品点数を削減する。
【解決手段】船舶用ステアリング装置14は、ヘルムシャフト43とともに回転し、ステアリングホイール31が取り付けられるハブ32と、ヘルムシャフト43の軸周りに回転しないインナーカバー38乃至ヘルム機構42へ直接的又は間接的に取り付けられるストッパ37と、を備え、ハブ32とストッパ37は互いに向き合い、ハブ32には突起部50が一体的に設けられ、ストッパ37には規制部47が一体的に設けられ、ヘルムシャフト43が軸周りに回転する際、ハブ32の突起部50がストッパ37の規制部47に当接することにより、ステアリングホイール31の回転角度が規制される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルムシャフトとともに回転し、ステアリングホイールが取り付けられるハブと、
前記ヘルムシャフトの軸周りに回転しない台座に取り付けられるストッパと、を備え、
前記ハブと前記ストッパは互いに向き合い、
前記ハブには突起部が一体的に設けられ、前記ストッパには規制部が一体的に設けられ、
前記ヘルムシャフトが軸周りに回転する際、前記ハブの突起部が前記ストッパの規制部に当接することにより、前記ステアリングホイールの回転角度が規制される、船舶用ステアリング装置。
【請求項2】
前記ストッパは少なくとも一部が円筒状に形成され、前記規制部は前記ストッパの中心軸へ向けて突出し、
前記ハブ及び前記ストッパを用いて前記船舶用ステアリング装置を組み立てる際、前記ハブの突起部は、前記ストッパにおける前記規制部が存在しない空間へ侵入する、請求項1に記載の船舶用ステアリング装置。
【請求項3】
前記ハブの突起部は船首側に向かって突出し、前記ストッパの規制部は船尾側に向かって突出する、請求項2に記載の船舶用ステアリング装置。
【請求項4】
前記ストッパは前記ステアリングホイールから取り回される配線のガイドを兼ねる、請求項1に記載の船舶用ステアリング装置。
【請求項5】
ヘルムシャフトとともに回転する第1の部品と、
前記ヘルムシャフトの軸周りに回転しない第2の部品を備え、
前記第1の部品には突起部が一体的に設けられ、前記第2の部品には規制部が一体的に設けられ、
前記ヘルムシャフトが軸周りに回転する際、前記第1の部品の突起部が前記第2の部品の規制部に当接することにより、前記ヘルムシャフトの回転角度が規制される、船舶用ステアリング装置。
【請求項6】
前記第2の部品は、船体において前記ヘルムシャフトの軸周りに回転しない台座に取り付けられる、請求項5に記載の船舶用ステアリング装置。
【請求項7】
船舶用ステアリング装置を備える船舶であって、
前記船舶用ステアリング装置は、
ヘルムシャフトとともに回転し、ステアリングホイールが取り付けられるハブと、
前記ヘルムシャフトの軸周りに回転しない台座に取り付けられるストッパと、を有し、
前記ハブと前記ストッパは互いに向き合い、
前記ハブには突起部が一体的に設けられ、前記ストッパには規制部が一体的に設けられ、
前記ヘルムシャフトが軸周りに回転する際、前記ハブの突起部が前記ストッパの規制部に当接することにより、前記ステアリングホイールの回転角度が規制される、船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールを備える船舶用ステアリング装置及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ステアリングホイールに各種スイッチやパドル状のスロットルレバーが設けられるようになり、これらへの操作入力を電気信号で伝えるための配線であるハーネスがステアリングホイールからECU(Electronic Control Unit)へ取り回しされる。このとき、ステアリングホイールの回転によってハーネスが断線するのを抑制するため、ステアリング装置ではステアリングホイールの回転角度が所定の範囲に規制されることがある。
【0003】
例えば、騎乗型四輪車両であるATV(All Terrain Vehicle)のステアリング装置では、
図9(A)に示すように、ステアリングホイール(不図示)とともに回転するステアリングシャフト90の下端部にシャフト側ストッパ91が取り付けられる。そして、車体のフレーム(不図示)にフレーム側ストッパ92が取り付けられる。そして、
図9(B)に示すように、ステアリングシャフト90が回転する際に、シャフト側ストッパ91がフレーム側ストッパ92に当接することにより、ステアリングホイールの回転角度が所定の範囲に規制される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、ジェット推進艇であるスポーツボートのステアリング装置では、
図10(A)に示すように、ステアリングホイール(不図示)とともに回転するヘルムシャフト100へ当該ヘルムシャフト100と直交するようにピン101が差し込まれる。さらに、回転しないチルトカバー(不図示)に固定された略円筒状のストッパ102に、ストッパ102の中心軸へ向けて突出する規制部103が設けられる。そして、
図10(B)に示すように、ヘルムシャフト100が回転する際にピン101がストッパ102の規制部103に当接することにより、ステアリングホイールの回転角度が所定の範囲に規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したいずれのステアリング装置においても、ステアリングシャフト90やヘルムシャフト100とは別部品であるシャフト側ストッパ91やピン101が必要であり、組立性向上や部品点数削減の観点からは、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、船舶用ステアリング装置の組立性を向上し、部品点数を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一態様による船舶用ステアリング装置は、ステアリングシャフトとともに回転し、ステアリングホイールが取り付けられるハブと、前記ステアリングシャフトの軸周りに回転しない台座に取り付けられるストッパと、を備え、前記ハブと前記ストッパは互いに向き合い、前記ハブには突起部が一体的に設けられ、前記ストッパには規制部が一体的に設けられ、前記ステアリングシャフトが軸周りに回転する際、前記ハブの突起部が前記ストッパの規制部に当接することにより、前記ステアリングホイールの回転角度が規制される。
【0009】
この構成によれば、ステアリングホイールの回転角度を規制するハブの突起部とストッパの規制部は、それぞれハブやストッパと一体的に設けられるため、ハブやストッパと別部品であるピン等を用いる必要がない。したがって、船舶用ステアリング装置の組立性を向上し、部品点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、船舶用ステアリング装置の組立性を向上し、部品点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る船舶の平面図である。
【
図2】
図1の船舶用ステアリング装置の構成を概略的に示す外観斜視図である。
【
図3】
図1の船舶用ステアリング装置の構成を詳細に説明するための分解斜視図である。
【
図4】
図1の船舶用ステアリング装置のストッパとハブの構成を説明するための拡大斜視図である。
【
図5】
図1の船舶用ステアリング装置におけるステアリングホイールの回転角度の規制について説明するための図である
【
図6】ステアリングホイールの回転角度の規制機構の第1の変形例の構成を概略的に示す図である。
【
図7】ステアリングホイールの回転角度の規制機構の第2の変形例の構成を概略的に示す図である。
【
図8】ステアリングホイールの回転角度の規制機構の第3の変形例の構成を概略的に示す外観斜視図である。
【
図9】ATVのステアリング装置における従来のステアリングホイールの回転角度の規制機構を説明するための図である。
【
図10】スポーツボートのステアリング装置における従来のステアリングホイールの回転角度の規制機構を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る船舶の平面図である。この船舶1に、本実施の形態に係る船舶用ステアリング装置が適用される。
図1では、船舶1の内部の構成の一部が示される。船舶1は、一例としてのジェット推進艇であり、ジェットボート又はスポーツボートと呼ばれるタイプの船である。なお、
図1では、船舶1の船体2の左舷側に配置される構成要素に符号の「L」を付し、船体2の右舷側に配置される構成要素に符号の「R」を付す。
【0013】
図1において、船舶1は、船体2と、エンジン3L,3Rと、船舶推進機4L,4Rとを有する。船体2は、デッキ11とハル12とを有する。ハル12はデッキ11の下方に配置される。デッキ11には操船席13が配置される。また、操船席13には、船舶1の進行方向を左右に変更するための船舶用ステアリング装置14と、船舶1の進行方向や船速を制御するためのリモコンユニット15とが配置される。船舶推進機4L,4Rは、それぞれエンジン3L,3Rによって駆動され、船体2を移動させる推進力を発生させる。なお、船舶1において、エンジンの数は2つに限らず、3つ以上であってもよく、また、船舶推進機の数は2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0014】
図2は、船舶用ステアリング装置14の構成を概略的に示す外観斜視図であり、
図3は、船舶用ステアリング装置14の構成を詳細に説明するための分解斜視図である。
【0015】
図2及び
図3において、船舶用ステアリング装置14は、スイッチ制御部30と、該スイッチ制御部30が取り付けられるステアリングホイール31と、該ステアリングホイール31が取り付けられるハブ32とを備える。また、船舶用ステアリング装置14は、ハブ32を覆うフロントカバー33及びリアカバー34と、ハブ32から左右に突出するように取り付けられるスロットルレバー35L,35Rと、ハブ32が取り付けられる略円筒状のアッシーケース36と、を備える。スイッチ制御部30乃至アッシーケース36は互いに組み付けられ、後述するヘルムシャフト43の軸周りに、ヘルムシャフト43とともに一体的に回転する。
【0016】
さらに、船舶用ステアリング装置14は、ストッパ37と、該ストッパ37が取り付けられるインナーカバー38と、該インナーカバー38を覆うアウターカバー39と、インナーカバー38が取り付けられるチルト機構40と、を備える。また、船舶用ステアリング装置14は、チルト機構40が取り付けられるベース41と、ベース41が取り付けられるヘルム機構42と、を備える。ストッパ37は、インナーカバー38乃至ヘルム機構42へ直接的又は間接的に取り付けられるため、インナーカバー38乃至ヘルム機構42はストッパ37の台座として機能する。また、ベース41やヘルム機構42が船体2に固定されるため、インナーカバー38乃至チルト機構40、引いては、ストッパ37もヘルムシャフト43の軸周りに回転することがない。
【0017】
一方、チルト機構40は円柱軸であるヘルムシャフト43を軸周りに回転可能に軸支し、ヘルム機構42はヘルムシャフト45を軸周りに回転可能に軸支する。ベース41にはヘルムシャフト45を貫通させるためのシャフト穴41aが設けられ、ベース41がヘルム機構42に取り付けられる際、ヘルムシャフト45はベース41からチルト機構40へ向けて突出する。
【0018】
また、インナーカバー38にはヘルムシャフト43を貫通させるためのシャフト穴38aが設けられ、インナーカバー38がチルト機構40に取り付けられる際、ヘルムシャフト43はインナーカバー38からストッパ37へ向けて突出する。さらに、ストッパ37にもヘルムシャフト43を貫通させるためのシャフト穴37aが設けられ、ストッパ37がインナーカバー38に取り付けられる際、ヘルムシャフト43はストッパ37から突出する。そして、ストッパ37から突出したヘルムシャフト43はアッシーケース36の内部を介してハブ32と結合する。
【0019】
また、ヘルムシャフト43とヘルムシャフト45はチルト機構40の内部においてユニバーサルジョイントによって接続される。したがって、ステアリングホイール31が操船者によって回転操作された際、ステアリングホイール31の回転とともに、ハブ32やヘルムシャフト43が軸周りに回転し、さらに、ヘルムシャフト45も軸周りに回転する。
【0020】
スイッチ制御部30には、例えば、操船モードを決定するための各種スイッチが配置され、操船者による各種スイッチの操作に応じて電気信号を出力する。この電気信号は、スイッチ制御部30に接続された配線としてのハーネス46を介して船体2に設けられたBCU(Boat Control Unit)(不図示)へ送信される。
【0021】
フロントカバー33及びリアカバー34がハブ32を覆う際、スロットルレバー35L,35Rは左右に突出するが、操船者がスロットルレバー35Rを手前に引くと、スロットルレバー35Rは船舶1を前進させるための電気信号を出力する。また、操船者がスロットルレバー35Lを手前に引くと、スロットルレバー35Lは船舶1を後進させるための電気信号を出力する。これらの電気信号もハーネス46を介してBCUへ送信される。
【0022】
ストッパ37は少なくとも一部が円筒状に形成され、その側面にはハーネス46が弛みながら当該側面に沿うように這い回される。これにより、ストッパ37はハーネス46のガイドとして機能する。ステアリングホイール31が回転すると、スイッチ制御部30やスロットルレバー35L,35Rも回転するが、この回転により、スイッチ制御部30やスロットルレバー35L,35Rから取り回されるハーネス46が引きずられてハーネス46の取り回し形態が変化する。
【0023】
しかしながら、本実施の形態では、このときのハーネス46の取り回し形態の変化をストッパ37の側面におけるハーネス46の弛みが吸収するため、例えば、ステアリングホイール31の回転に伴ってハーネス46が無理に引き延ばされてハーネス46に張力が発生するのを抑制することができる。これにより、ハーネス46に生じた張力がステアリングホイール31の回転を阻害するのを抑制することができる。また、ハーネス46が無理に引き延ばされないため、ハーネス46の断線も抑制することができる。
【0024】
また、ヘルムシャフト43をハブ32と結合させる際、ストッパ37はアッシーケース36の内部へ挿嵌されるが、ハーネス46はストッパ37の側面に沿うように這い回されるため、ハーネス46がストッパ37の外方へ向かって飛び出すことがない。これにより、ハーネス46がアッシーケース36と接触して擦れるのを抑制するとともに、ハーネス46との接触を避けるためにアッシーケース36を大型化する必要を無くすことができ、引いては、船舶用ステアリング装置14の小型化に寄与することができる。
【0025】
チルト機構40には左右方向に延伸するチルト軸44が設けられ、ヘルムシャフト43は当該ヘルムシャフト43の軸支部とともにチルト軸44周りに回動する。これにより、ステアリングホイール31の上下方向の位置を変更することができる。
【0026】
また、ヘルム機構42は、ヘルムシャフト45の回転を電気信号に変換する変換部(不図示)を内蔵し、また、ヘルムシャフト45と変換部の接続・非接続を切り替えるクラッチ機構(不図示)を内蔵する。ステアリングホイール31が回転すると、ヘルムシャフト43に接続されるヘルムシャフト45も回転するため、ヘルム機構42は変換部からステアリングホイール31の回転を電気信号として出力する。この電気信号もBCUへ送信される。
【0027】
図4は、ストッパ37とハブ32の構成を説明するための拡大斜視図である。
図4(A)はストッパ37を操船者側から眺めた状態を示し、
図4(B)はハブ32を操船者とは反対側から眺めた状態を示す。また、
図4(A)では、ストッパ37の側面に這い回されるハーネス46の図示は省略される。
【0028】
図4(A)において、ストッパ37は、該ストッパ37の中心軸へ向けて突出する規制部47を有する。規制部47は円筒状の操船者側の端部において、円筒部の内側の空間の一部を占めるように存在する。見方を変えれば、規制部47は円筒部の底部から操船者側、すなわち、船尾側に向かって突出するとも言える。また、規制部47は、例えば、アルミニウムの鋳造により、ストッパ37と一体的に形成される。
【0029】
図4(B)において、ハブ32は、左右に設けられたレバー基部48L,48Rと、ハブ32の中央部から操船者とは反対側へ向けて突出する中空の円柱状のボス49と、ボス49からボス49の径方向に突出する板状の突起部50と、を有する。レバー基部48L,48Rにはそれぞれスロットルレバー35L,35Rが取り付けられる。また、突起部50は、例えば、アルミニウムの鋳造により、ボス49の軸方向に延在するようにハブ32と一体的に形成される。見方を変えれば、突起部50はボス49とともにハブ32の中央部から操船者とは反対側、すなわち、船首側に向かって突出するとも言える。
【0030】
ハブ32やストッパ37を用いて船舶用ステアリング装置14を組み立てる際、ハブ32とストッパ37は互いに向かい合うように配置される。そして、ハブ32とストッパ37が互いに接近すると、ハブ32のボス49や突起部50が、ストッパ37の円筒部の内側の空間のうち、規制部47が存在しない部分へ収容されるように当該空間へ侵入する。なお、この規制部47が存在しない部分を以降、「収容空間」と称する。このとき、シャフト穴37aを貫通するヘルムシャフト43は、ボス49の中空部49aへ挿嵌される。これにより、ヘルムシャフト43がハブ32と結合する。
【0031】
図5は、船舶用ステアリング装置14におけるステアリングホイール31の回転角度の規制について説明するための図である。
図5は、ヘルムシャフト43がハブ32と結合した際にストッパ37を操船者側から眺めた状態を示し、ハブ32のボス49や突起部50が破線で示される。
【0032】
まず、
図5(A)に示すように、ステアリングホイール31が左右のどちらにも回転操作されず、いわゆる中立状態にある場合、収容空間に侵入した突起部50は、ストッパ37の中心軸に関して規制部47と反対側(規制部47から180°回転した位置)に所在する。この状態では、規制部47が突起部50と当接していないので、操船者は左右のいずれの方向にもステアリングホイール31を回転操作することができる。
【0033】
また、中立状態のステアリングホイール31が右方向に回転操作されてヘルムシャフト43が軸周りに右回転する場合、ハブ32の突起部50がストッパ37の規制部47へ近付く。そして、ステアリングホイール31が中立状態から、例えば、150°ほど右方向に回転操作されると、
図5(B)に示すように、ハブ32の突起部50がストッパ37の規制部47に当接し、ステアリングホイール31をさらに右方向へ回転操作することが不可能となる。これにより、ステアリングホイール31の中立状態から右方向への回転角度が150°に規制される。
【0034】
さらに、中立状態のステアリングホイール31が左方向に回転操作されてヘルムシャフト43が軸周りに左回転する場合も、ハブ32の突起部50がストッパ37の規制部47へ近付く。そして、ステアリングホイール31が中立状態から、例えば、150°ほど左方向に回転操作されると、
図5(C)に示すように、ハブ32の突起部50がストッパ37の規制部47に当接し、ステアリングホイール31をさらに左方向へ回転操作することが不可能となる。これにより、ステアリングホイール31の中立状態から左方向への回転角度が150°に規制される。
【0035】
本実施の形態によれば、ハブ32の突起部50とストッパ37の規制部47は、それぞれハブ32やストッパ37と一体的に形成されるため、ステアリングホイール31の回転角度を規制するためにハブ32やストッパ37とは別部品であるピン等を用いる必要がない。したがって、船舶用ステアリング装置14の組立性を向上し、船舶用ステアリング装置14の部品点数を削減することができる。
【0036】
また、突起部50はハブ32と鋳造によって一体的に形成され、規制部47はストッパ37と鋳造によって一体的に形成されるため、突起部50や規制部47の強度が向上し、操作入力に対する耐久性を向上することができる。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0038】
例えば、上述した実施の形態では、ステアリングホイール31の回転角度の規制をハブ32とストッパ37によって実現した。しかしながら、船舶用ステアリング装置14の他の構成要素によってステアリングホイール31の回転角度の規制を実現してもよい。
【0039】
具体的に、ヘルムシャフト43とともに回転する第1の構成要素(第1の部品)へ突起部を一体的に設けるとともに、船体2に固定されてヘルムシャフト43の軸周りに回転しない第2の構成要素(第2の部品)へ規制部を一体的に設けてもよい。この場合、ヘルムシャフト43が軸周りに回転する際、第1の構成要素の突起部を第2の構成要素の規制部に当接させることにより、ステアリングホイール31の回転角度の規制を実現する。
【0040】
図6は、ステアリングホイール31の回転角度の規制機構の第1の変形例の構成を概略的に示す図である。
図6(A)は、ヘルム機構42のヘルムシャフト45の軸方向に沿う断面図であり、
図6(B)はヘルム機構42を操船者とは反対側(船首側)から眺めた図である。
図6(A)及び
図6(B)において、ステアリングホイール31の回転角度の規制に関連しない構成要素の図示は省略される。
【0041】
第1の変形例では、ヘルム機構42の内部機構を収容する円筒状のケース42aの内周壁からケース42aの中心軸へ向けて突出する規制部51を設ける一方、ヘルムシャフト45からヘルムシャフト45の径方向に突出する板状の突起部52を設ける。規制部51はケース42aと一体的に形成され、突起部52はヘルムシャフト45と一体的に形成される。
【0042】
第1の変形例において、ステアリングホイール31が中立状態から右方向又は左方向に回転操作された際、ヘルムシャフト45の回転に伴って突起部52が規制部51へ近づく。そして、突起部52が規制部51に当接することにより、ステアリングホイール31の回転角度が規制される。
【0043】
図7は、ステアリングホイール31の回転角度の規制機構の第2の変形例の構成を概略的に示す図である。
図7(A)は、ヘルム機構42のヘルムシャフト45の軸方向に沿う断面図であり、
図7(B)はヘルム機構42を船首側から眺めた図である。
図7(A)及び
図7(B)においても、ステアリングホイール31の回転角度の規制に関連しない構成要素の図示は省略される。
【0044】
第2の変形例では、ヘルムシャフト45の船首側の端部に、直径が他の部分の直径よりも小さく設定される細軸部45aが形成され、当該細軸部45aから径方向へ突出する突起部53が設けられる。また、ヘルム機構42のケース42aの内周壁からケース42aの中心軸へ向けて突出する板状の規制部54が設けられる。規制部54は、第1の変形例の規制部51よりもケース42aの中心軸へ近付くように延伸し、その先端がヘルムシャフト45の細軸部45aとそれ以外の部分によって形成される段差状の空間に侵入する。また、規制部54はケース42aと一体的に形成され、突起部53はヘルムシャフト45と一体的に形成される。
【0045】
第2の変形例において、ステアリングホイール31が中立状態から右方向又は左方向に回転操作された際、ヘルムシャフト45の回転に伴って突起部53が規制部54へ近づく。そして、突起部53が規制部54に当接することにより、ステアリングホイール31の回転角度が規制される。
【0046】
図8は、ステアリングホイール31の回転角度の規制機構の第3の変形例の構成を概略的に示す外観斜視図である。
【0047】
第3の変形例では、リアカバー34の船首側から船首方向に突出する板状の突起部55を設ける一方、アウターカバー39から左右下方に向けてそれぞれ突出する板状の規制部56を設ける。突起部55はリアカバー34と一体的に形成され、規制部56はアウターカバー39と一体的に形成される。
【0048】
第3の変形例において、ステアリングホイール31が中立状態から右方向又は左方向に回転操作された際、ステアリングホイール31と一体的回転するリアカバー34の回転に伴って突起部55が規制部56へ近づく。そして、突起部55が規制部56に当接することにより、ステアリングホイール31の回転角度が規制される。
【0049】
また、本実施の形態では、ステアリングホイール31とハブ32が別体で構成されたが、ステアリングホイール31とハブ32は一体的に構成されてもよい。これにより、船舶用ステアリング装置14の組立性をさらに向上し、船舶用ステアリング装置14の部品点数をさらに削減することができる。
【0050】
さらに、本実施の形態では、船舶用ステアリング装置14がステアリングホイール31を備えるが、船舶用ステアリング装置14はステアリングホイール31の代わりに舵輪や操縦輪を備えていてもよい。また、本実施の形態では、船舶用ステアリング装置14がジェット推進艇に適用されたが、船舶用ステアリング装置14は他の船種にも適用することができ、例えば、船外機を備える船舶や船内外機を備える船舶に船舶用ステアリング装置14を適用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 船舶、14 船舶用ステアリング装置、31 ステアリングホイール、32 ハブ、37 ストッパ、38 インナーカバー、39 アウターカバー、40 チルト機構、41 ベース、42 ヘルム機構、47,51,54,56 規制部、50,52,53,55 突起部