(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175925
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20241212BHJP
E02F 9/16 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
E02F9/00 N
E02F9/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094029
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下村 遼平
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015CA03
2D015EB02
(57)【要約】
【課題】コンパクトな構造でボンネットの開放を十分に補助できる作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械100では、ボンネット302が、機体フレーム301に設置された原動機303を覆う。ボンネット302は、左右方向に延びる第1軸A1回りに回動可能である。作業機械100は、伸縮可能な付勢機構1と、連結部材2と、を備える。付勢機構1は、ボンネット302の回動に応じてボンネット302を付勢する。連結部材2は、ボンネット302に付勢機構1の一方端を連結する。付勢機構1の他方端は、機体フレーム301に対して左右方向に延びる第2軸A2回りに回動可能に連結される。ボンネット302及び連結部材2の第1連結部C1と付勢機構1及び連結部材2の第2連結部C2との間隔は、ボンネット302の回動に応じて可変である。
【選択図】
図6C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームに設置された原動機を覆うボンネットが左右方向に延びる第1軸回りに回動可能な作業機械であって、
前記ボンネットの回動に応じて前記ボンネットを付勢する伸縮可能な付勢機構と、
前記ボンネットに前記付勢機構の一方端を連結する連結部材と、
を備え、
前記付勢機構の他方端は、前記機体フレームに対して左右方向に延びる第2軸回りに回動可能に連結され、
前記ボンネット及び前記連結部材の第1連結部と前記付勢機構及び前記連結部材の第2連結部との間隔は、前記ボンネットの回動に応じて可変である、作業機械。
【請求項2】
前後方向において、前記第2軸は、前記原動機と前記第1軸との間に配置される、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記第1軸を基準とする周方向の前記機体フレームから離れる向きにおける前記ボンネットの回動量が最大になる際、前記間隔は最大となる、請求項1に記載の作業機械。
【請求項4】
前記ボンネットが前記原動機を覆う状態において、前記付勢機構は、前後方向において前記原動機と前記第1軸との間に位置する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項5】
前記第2軸は、前記第1軸よりも前方に配置される、請求項1に記載の作業機械。
【請求項6】
前記原動機の吸気口の手前で不純物を除去するエアクリーナをさらに備え、
前記第2軸は、前記エアクリーナよりも下方に配置される、請求項1に記載の作業機械。
【請求項7】
前記原動機の吸気口の手前で不純物を除去するエアクリーナと、
前記原動機よりも後方において左右方向における前記エアクリーナの隣に配置される発電機と、
をさらに備え、
前記ボンネットが前記原動機を覆う状態において、前記付勢機構は、前記エアクリーナと前記発電機との間に配置される、請求項1に記載の作業機械。
【請求項8】
前記ボンネットが前記原動機を覆う状態において、前記付勢機構は、前記第2軸から上方に向かうにつれて前方に延び、又は、前記第2軸から上方に向かって延びる、請求項1に記載の作業機械。
【請求項9】
前記連結部材は、
前記ボンネットに固定される固定部材と、
左右方向に延びる第3軸回りに回動可能に前記付勢機構の一方端を前記固定部材に接続する接続部材と、
を有し、
前記固定部材には、左右方向と垂直であって前記ボンネットから離れる離間方向に延びるスリットが配置され、
前記接続部材は、前記スリットにガイドされて、前記離間方向に移動可能である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンを覆うボンネットの開閉を補助するばね機構を備える作業機械が知られている。たとえば、特許文献1の作業機では、ボンネットの開閉を補助するため、ねじりコイルばねがボンネットの回動軸に巻回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のばね機構では、ボンネットを開放開始時に大きな補助力を得るためには、大型のねじりコイルばねを配置する必要がある。そのため、コストが上昇する。また、小型の作業機では、ボンネットを開閉する際の支点の位置がエンジンに近くなるため、大型のねじりコイルばねの配置の設計に問題が生じ易い。
【0005】
本発明は、上記の状況に鑑みて、コンパクトな構造でボンネットの開放を十分に補助できる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の一の態様による作業機械では、ボンネットが、機体フレームに設置された原動機を覆う。前記ボンネットは、左右方向に延びる第1軸回りに回動可能である。前記作業機械は、伸縮可能な付勢機構と、連結部材と、を備える。前記付勢機構は、前記ボンネットの回動に応じて前記ボンネットを付勢する。前記連結部材は、前記ボンネットに前記付勢機構の一方端を連結する。前記付勢機構の他方端は、前記機体フレームに対して左右方向に延びる第2軸回りに回動可能に連結される。前記ボンネット及び前記連結部材の第1連結部と前記付勢機構及び前記連結部材の第2連結部との間隔は、前記ボンネットの回動に応じて可変である。
【0007】
本発明の更なる特徴や利点は、以下に示す実施形態によって一層明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、コンパクトな構造でボンネットの開放を十分に補助できる作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3A】ボンネットを閉じた状態における上部旋回体を右方側から見た断面図である。
【
図3B】ボンネットを開けた状態における上部旋回体を右方側から見た断面図である。
【
図4A】ボンネットを閉じた状態における上部旋回体を左方側から見た断面図である。
【
図4B】ボンネットを開けた状態における上部旋回体を左方側から見た断面図である。
【
図5】ボンネットを開けた状態における上部旋回体を斜め前方側から見た斜視図である。
【
図6A】ボンネットを閉じた状態における付勢機構及び連結部材の概略図である。
【
図6B】ボンネットを開けた状態における付勢機構及び連結部材の概略図である。
【
図6C】閾値以上の回動量でボンネットを開けた状態における付勢機構及び連結部材の概略図である。
【
図7】ボンネットを開放する際における付勢機構の付勢力の回動量に応じた変化例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
<1.油圧ショベル100>
図1は、油圧ショベル100の構成例を示す側面図である。なお、油圧ショベル100は、本発明の「作業機械」の一例である。
図1は、右方側から油圧ショベル100を見ている。
図1に示すように、油圧ショベル100は、下部走行体200と、上部旋回体300と、作業機400と、を備える。
【0012】
ここで、本明細書における方向を、以下のように定義する。まず、下部走行体200が直進する方向を前後方向とし、そのうちの一方側を「前方」とし、他方側を「後方」とする。また、前後方向に垂直な横方向を左右方向とする。本明細書では、後方から前方を向かって左となる側を「左方」とし、右となる側を「右方」とする。さらに、前後方向および左右方向に垂直な重力方向を上下方向とし、重力方向の上側を「上方」とし、下側を「下方」とする。なお、これらの方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定する意図はない。
【0013】
<1-1.下部走行体200>
下部走行体200は、油圧ショベル100の走行を可能にする。下部走行体200は、油圧モータである左右一対のクローラ201と、左右一対の走行用モータ202と、を有する。左右の走行用モータ202が左右のクローラ201をそれぞれ駆動することで、油圧ショベル100の前後進、左右旋回移動などが可能となる。
【0014】
<1-2.上部旋回体300>
次に、
図1~
図5を参照して、上部旋回体300の構成を説明する。
図2は、上方側から見た上部旋回体300の断面図である。
図3Aは、ボンネット302を閉じた状態における上部旋回体300を右方側から見た断面図である。
図3Bは、ボンネット302を開けた状態における上部旋回体300を右方側から見た断面図である。
図4Aは、ボンネット302を閉じた状態における上部旋回体300を左方側から見た断面図である。
図4Bは、ボンネット302を開けた状態における上部旋回体300を左方側から見た断面図である。
図5は、ボンネット302を開けた状態における上部旋回体300を斜め前方側から見た斜視図である。なお、
図2は、
図1の一点鎖線IIに沿う上下方向と垂直な平面で、閉じた状態のボンネット302及びその内部(機関室)を仮想的に切断した断面図である。また、
図3A及び
図3Bは、
図2の一点鎖線III-IIIに沿う上下方向と平行な平面で、ボンネット302及び機関室を仮想的に切断した断面図である。
図4A及び
図4Bは、
図2の一点鎖線IV-IVに沿う上下方向と平行な平面で、ボンネット302及び機関室を仮想的に切断した断面図である。
【0015】
上部旋回体300は、下部走行体200の上部に搭載され、旋回可能である。油圧ショベル100の上部旋回体300は、機体フレーム301と、ボンネット302と、エンジン303と、エアクリーナ304と、発電機305と、操縦席306と、作業操作レバー307と、レバースタンド308と、走行レバー309と、を有する。また、油圧ショベル100の上部旋回体300は、付勢機構1と、連結部材2と、をさらに有する。付勢機構1及び連結部材2は、後に説明する。
【0016】
機体フレーム301は、下部走行体200の上部に配置され、油圧モータである旋回モータ(図示省略)の駆動力によって下部走行体200に対し旋回ベアリング(図示省略)を介して旋回可能である。
【0017】
図2~
図5に示すように、ボンネット302は、機体フレーム301に設置されたエンジン303、エアクリーナ304、及び発電機305などを覆う。また、
図3A~
図5に示すように、ボンネット302は、操縦席306及び作業操作レバー307などとともに、第1軸A1回りに回動可能である。第1軸A1は、左右方向に延び、機体フレーム301とボンネット302との接続部分を通る。たとえば、右方側から見て、第1軸A1を基準とする反時計回りにボンネット302の回動させることで、ボンネット302を開くことができる。なお、ボンネット302を開く機構は、後に説明する。
【0018】
エンジン303は、複数の油圧ポンプを駆動する原動機である。各々の油圧ポンプは、走行用モータ202、旋回モータ、ブームシリンダ4011、アームシリンダ4021、及びバケットシリンダ4031などに作業油を供給する。エンジン303には、エアクリーナ304及び発電機305が装着される。エアクリーナ304は、濾過装置であり、エンジン303の吸気口の手前で不純物を除去する。エアクリーナ304は、エンジン303よりも後方に配置される。発電機305は、エンジン303の駆動力により発電し、油圧ショベル100に搭載される電装装置に電力を供給する。発電機305は、エンジン303よりも後方において、左右方向におけるエアクリーナ304の隣(
図2では左方側)に配置される。エンジン303、エアクリーナ304、及び発電機305は、ボンネット302内の機関室に収容される。
【0019】
また、ボンネット302には、操縦席306及び作業操作レバー307などが設置される。操縦席306は、操縦者が着座可能な座席である。操縦席306の左右には、作業機400を操作するための作業操作レバー307が配置される。操縦者は、作業操作レバー307を操作することにより、作業機400を駆動して掘削などの作業を実施できる。レバースタンド308は、操縦席306の前方に配置される。レバースタンド308には、走行レバー309が配置される。操縦者は、走行レバー309を操作することにより、油圧ショベル100の走行・旋回移動、上部旋回体300の旋回などを実施できる。
【0020】
<1-3.作業機400>
次に、
図1を参照して、作業機400の構成を説明する。作業機400は、上部旋回体300の前部において上下方向に揺動可能に取り付けられる。作業機400は、エンジン303からの動力を受けて駆動し、土砂等の掘削作業を行う。作業機400は、ブーム401、アーム402、及びバケット403を備え、これらを独立して駆動することによって掘削作業を可能としている。
【0021】
ブーム401は、基端部を上部旋回体300の前部に支持されて、伸縮自在に可動するブームシリンダ4011によって鉛直面内で揺動される。アーム402は、基端部をブーム401の先端部に支持されて、伸縮自在に可動するアームシリンダ4021によって鉛直面内で揺動される。バケット403は、基端部をアーム402の先端部に支持され、伸縮自在に可動するバケットシリンダ4031によって鉛直面内で揺動される。ここで、ブームシリンダ4011、アームシリンダ4021及びバケットシリンダ4031はそれぞれ、油圧アクチュエータである。
【0022】
また、バケット403は、作業機400の先端に取り付けられ、掘削作業を行うためのツメを備えた容器状の部材である。バケット403は、アーム402先端に取り付けられたピン404を介して揺動可能に取り付けられる。さらに、バケット403は、リンク機構405を介してバケットシリンダ4031と連結される。
【0023】
<1-4.ボンネット302を開く機構>
次に、
図2~
図7を参照して、油圧ショベル100のボンネット302を開く機構を説明する。
図6Aは、ボンネット302を閉じた状態における付勢機構1及び連結部材2の概略図である。
図6Bは、ボンネット302を開けた状態における付勢機構1及び連結部材2の概略図である。
図6Cは、閾値θs以上の回動量θでボンネット302を開けた状態における付勢機構1及び連結部材2の概略図である。
図7は、ボンネット302を開放する際における付勢機構1の付勢力の回動量θに応じた変化例を示すグラフである。なお、
図6A~
図6Cは、左方側から付勢機構1及び連結部材2を見ている。
【0024】
また、回動量θは、
図6Aのボンネット302が閉じた状態を基準(つまりθ=0)として、右方側から見て第1軸A1を基準とする反時計回りにおけるボンネット302の回動角度を示す。言い換えると、回動量θは、第1軸A1を基準とする周方向の機体フレーム301から離れる向きにおけるボンネット302の回動角度である。また、閾値θsは、ボンネット302の回動(開放)に要する第1軸A1回りのモーメントが0[N・mm]となる回動量θである。たとえば、ボンネット302の回動量θが閾値θsになると、ボンネット302(及びボンネット302への搭載品:たとえば操縦席306及び作業操作レバー307など)の重心は、第1軸A1の直上に位置する。回動量θが閾値θsよりも大きくなると、上述の重心が第1軸A1よりも後方に位置するため、ボンネット302及びボンネット302への搭載品の自重でボンネット302を開放することができる。
【0025】
図6A~
図6Cに示すように、ボンネット302の回動(つまり開放)は、付勢機構1及び連結部材2により補助される。
【0026】
付勢機構1は、伸縮可能であって、ボンネット302が開く方向にボンネット302を付勢する。たとえば、付勢機構1は、ボンネット302が開放される際、回動量θが所定量θeに達するまで、ボンネット302を付勢する。なお、所定量θeは、付勢機構1の伸張長さが上限に達した時のボンネット302の回動量θである。本実施形態では、所定量θeは、閾値θs未満であり、好ましくは閾値θsに近い回動量θとされる。
【0027】
但し、本実施形態の例示に限定されず、所定量θeは、閾値θs以上であってもよい。こうすれば、ボンネット302(及びボンネット302への搭載品)の自重でボンネット302を開放できるまで、付勢機構1は、開く方向にボンネット302を付勢できる。付勢機構1は、ボンネット302の開放を補助し続けることができる。
【0028】
また、付勢機構1は、本実施形態ではガススプリングである。但し、この例示は、付勢機構1がガススプリング以外である構成を排除しない。
【0029】
連結部材2は、ボンネット302に付勢機構1の一方端を連結する。なお、付勢機構1の他方端は、機体フレーム301に対して、第2軸A2回りに回動可能に連結される。第2軸A2は、左右方向に延び、付勢機構1の他方端と機体フレーム301との接続部分を通る。ボンネット302及び連結部材2の第1連結部C1と、付勢機構1及び連結部材2の第2連結部C2との間隔は、ボンネット302の回動に応じて可変である。
【0030】
また、連結部材2は、固定部材21と、接続部材22と、を有する。固定部材21は、ボンネット302の天面3021の内面に固定され、天面3021の内面から突出する。固定部材21には、スリット211が配置される。スリット211は、固定部材21の左右方向両端面に開口する長孔であって、離間方向(言い換えると接近方向)に延びる。なお、離間方向は、左右方向と垂直であって、天面3021から離れる向きである。接近方向は、左右方向と垂直であって、天面3021に近付く向きである。
【0031】
接続部材22は、第3軸A3回りに回動可能に、付勢機構1の一方端を固定部材21に接続する。第3軸A3は、左右方向に延び、付勢機構1の一方端と固定部材21との接続部分(たとえば、後述する第2連結部C2)を通る。本実施形態では、接続部材22は、ボルトなどの螺合部材と、該螺合部材に螺合されるナットと、を含む。螺合部材は、付勢機構1の一方端に配置された貫通孔とスリット211に挿通され、付勢機構1及び固定部材21を挟んでナットと螺合される。螺合部材は、スリット211が延びる方向(離間方向又は接近方向)に移動可能である。これにより、接続部材22は、スリット211にガイドされて、スリット211が延びる方向(離間方向又は接近方向)に移動可能である。
【0032】
たとえば、ボンネット302を開く際、ボンネット302が閉じた状態からの回動量θが所定の閾値θs未満であれば、ボンネット302の回動(開放)には、第1軸A1回りの所定の大きさのモーメントを必要とする。この際、回動量θが所定量θeに達するまで付勢機構1は伸張し、
図6A及び
図6Bに示すように接続部材22はスリット211の天面3021側の端部に位置する。これらにより、付勢機構1の伸張による接近方向の付勢力は、そのまま固定部材21に伝達される。従って、ボンネット302は、付勢機構1の伸張により開く方向に付勢される。
【0033】
また、ボンネット302の回動量θが所定の閾値θsよりも大きくなると、該重心が第1軸A1よりも後方に位置する。そのため、ボンネット302(及びボンネット302への搭載品)の自重によって、ボンネット302は、第1軸A1回りの所定の大きさのモーメントを要することなく、開く方向に回動する。従って、ボンネット302を開く者は、強い開放力及び付勢機構1の付勢力を要することなく、ボンネット302を回動させることができる。
【0034】
このように、ボンネット302の回動に応じて付勢機構1がボンネット302を付勢することにより、エンジン303を覆うボンネット302の回動をコンパクト且つ簡易な構成で補助することができる。
【0035】
なお、ボンネット302の回動量θが所定量θeに達すると、付勢機構1の伸張長さは、その上限に達する。一方、回動量θが閾値θsに近くなると、ボンネット302の開放に要する第1軸A1回りのモーメントの鉛直方向成分は小さくなる。そのため、ボンネット302(及びボンネット302への搭載品)がその自重で開放される前に付勢機構1の伸張長さが上限に達しても(つまり、θe<θs)、ボンネット302を開く者は、強い開放力を要することなく、ボンネット302を開くことができる。
【0036】
また、ボンネット302の回動量θが所定量θeに達すると、
図6Cに示すように、接続部材22は、スリット211にガイドされつつ、ボンネット302の回動量θに応じて離間方向に移動する。
【0037】
このように、上述の第1連結部C1及び第2連結部C2の間隔がボンネット302の回動に応じて可変であり、接続部材22がスリット211にガイドされて離間方向に移動可能である。これにより、油圧ショベル100は、付勢機構1を大型化させなくても、コンパクトな構造でボンネット302の回動を十分に補助しつつ、ボンネット302をより大きく回動(開放)させることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、接続部材22(の螺合部材)がスリット211の離間方向における端部に達する前に、ボンネット302の回動は、その回動量θを制限するストッパ部(図示省略)にって止められる。つまり、この時、スリット211に沿って離間方向に移動していた接続部材22(の螺合部材)は移動を止める。また、ボンネット302の回動量θは最大値θmとなる。ストッパ部は、たとえば、ボンネット302及び機体フレーム301間を繋ぐリンク部材である。リンク部材の一端はボンネット302に接続され、他端は機体フレーム301に接続される。但し、本実施形態の例示は、接続部材22(の螺合部材)がスリット211の離間方向における端部に接することでボンネット302の回動が止まる構成を排除しない。
【0039】
また、ボンネット302の回動量θが最大になる際、上述の第1連結部C1及び第2連結部C2の間隔は最大となる。この際、第1連結部C1と第2軸A2との間隔は、付勢機構1の伸張長さの上限を超えることができる。従って、ボンネット302をより大きく開くことができるので、ボンネット302の内部に収容される装置のメンテナンスの作業性を向上できる。
【0040】
次に、好ましくは、
図3A~
図6Cに示すように、前後方向において、第2軸A2は、エンジン303と第1軸A1との間に配置される。
【0041】
たとえば、付勢機構1の他方端と機体フレーム301との接続部分は、エンジン303よりも後方に配置される。従って、エンジン303の後方に付勢機構1を配置できるとともに、エンジン303よりも後方で伸張により付勢機構1を第2軸A2回りに回動させることができる。
【0042】
また、付勢機構1の他方端と機体フレーム301との接続部分は、第1軸A1よりも前方に配置される。従って、左右方向においてエンジン303の隣に付勢機構1が占めるスペースを確保しなくてもよい。また、第2軸A2が第1軸A1よりも前方に配置されることで、ボンネット302を閉じた状態において、付勢機構1をボンネット302で覆うことができる。また、付勢機構1の他端部がボンネット302の支軸(つまり、第1軸A1)よりも後方に配置されない。よって、コンパクトな構成で付勢機構1を配置でき、(特に前後方向における)ボンネット302の大型化を防止できる。
【0043】
但し、この例示は、前後方向において第2軸A2がエンジン303と第1軸A1との間に配置されない構成を排除しない。たとえば、上述の例示は、第2軸A2がエンジン303を通る構成を排除しないし、付勢機構1の他方端と機体フレーム301との接続部分がエンジン303の左方及び右方の少なくともどちらかに配置される構成を排除しない。
【0044】
また、好ましくは
図6Aなどに示すように、ボンネット302がエンジン303を覆う状態において、付勢機構1は、前後方向においてエンジン303と第1軸A1との間に位置する。つまり、ボンネット302が閉じた状態において、付勢機構1の全体が、エンジン303よりも後方且つ第1軸A1よりも前方に配置される。こうすれば、付勢機構1の他方端は、ボンネット302の開閉に関わらず、エンジン303よりも後方に位置する。従って、付勢機構1が占めるスペースは、エンジン303の後方に確保すればよい。よって、コンパクトな構成で付勢機構1を配置でき、ボンネット302の大型化を防止できる。但し、この例示は、ボンネット302が閉じた状態において、付勢機構1の少なくとも一部が前後方向においてエンジン303と第1軸A1との間に位置しない構成を排除しない。
【0045】
また、好ましくは
図6A~
図6Cなどに示すように、第2軸A2は、エアクリーナ304よりも下方に配置される。つまり、左右方向から見て、付勢機構1の他方端は、エアクリーナ304よりも下方において、機体フレーム301に対して回動可能に接続される。こうすれば、ボンネット302を開けた状態において、付勢機構1の一部が左右方向におけるエアクリーナ304の隣に位置することを防止できる。従って、エアクリーナ304のメンテナンスの作業性を向上できる。但し、この例示は、第2軸A2がエアクリーナ304よりも下方に配置されない構成を排除しない。
【0046】
また、好ましくは
図2に示すように、左右方向において、付勢機構1は、エアクリーナ304と発電機305との間に配置される。たとえば、ボンネット302がエンジン303を覆う状態において、付勢機構1は、エアクリーナ304と発電機305との間に配置される。なお、ボンネット302が回動した状態において、付勢機構1は、エアクリーナ304と発電機305との間に配置されてもよいし配置されなくてもよい。こうすれば、エアクリーナ304及び発電機305間の隙間に有効活用して、付勢機構1をコンパクトに配置することができる。また、ボンネット302の左右方向中央側に付勢機構1を配置できるので、ボンネット302の左右方向中央側に付勢力を作用させることができる。従って、付勢機構1は、単数であっても、ボンネット302の回動をスムーズに補助できる。但し、この例示は、左右方向において付勢機構1がエアクリーナ304と発電機305との間に配置されない構成を排除しない。たとえば、付勢機構1は、ボンネット302の左方側及び右方側の少なくともどちらかに配置されてもよい。
【0047】
また、好ましくは
図6Aなどに示すように、ボンネット302がエンジン303などを覆う状態(つまりボンネット302が閉じた状態)において、付勢機構1は、第2軸A2から上方に向かうにつれて前方に延びる。或いは、上述の状態において、付勢機構1は、第2軸A2から上方に向かって延びてもよい。つまり、連結部材2は、ボンネット302が閉じた状態において、第2軸A2よりも前方、又は、直上に配置される。
【0048】
こうすれば、付勢機構1の伸縮可能な長さをより長くできる。従って、付勢機構1は、ボンネット302の広い回動範囲において、ボンネット302の回動を補助できる。
【0049】
また、ボンネット302が閉じた状態において付勢機構1が第2軸A2から上方に向かうにつれて後方に延びる構成と比べて、より前方で、連結部材2は、付勢機構1の一方端をボンネット302に連結できる。従って、この連結部分と第1軸A1との間隔をより広くできるので、梃子の原理に基づいて付勢機構1の付勢力は、ボンネット302に対してより有効に作用する。よって、付勢機構1によってボンネット302の開放を補助する効果を高めることができる。
【0050】
但し、上述の例示は、ボンネット302がエンジン303などを覆う状態において付勢機構1が第2軸A2から上方に向かうにつれて後方に延びる構成を排除しない。
【0051】
<3.備考>
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、上述の実施形態は例示であり、その各構成要素及び各処理の組み合わせに色々な変形が可能であり、本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0052】
<4.総括>
以下では、これまでに説明してきた実施形態について総括的に述べる。
【0053】
たとえば、本明細書中に開示されている作業機械100は、
機体フレーム301に設置された原動機303を覆うボンネット302が左右方向に延びる第1軸A1回りに回動可能な作業機械100であって、
前記ボンネット302の回動に応じて前記ボンネット302を付勢する伸縮可能な付勢機構1と、
前記ボンネット302に前記付勢機構1の一方端を連結する連結部材2と、
を備え、
前記付勢機構1の他方端は、前記機体フレーム301に対して左右方向に延びる第2軸A2回りに回動可能に連結され、
前記ボンネット302及び前記連結部材2の第1連結部C1と前記付勢機構1及び前記連結部材2の第2連結部C2との間隔は、前記ボンネット302の回動に応じて可変である構成(第1の構成)とされる。
【0054】
上記第1の構成の作業機械100は、
前後方向において、前記第2軸A2は、前記原動機303と前記第1軸A1との間に配置される構成(第2の構成)であってもよい。
【0055】
また、上記第1又は第2の構成の作業機械100は、
前記第1軸A1を基準とする周方向の前記機体フレーム301から離れる向きにおける前記ボンネット302の回動量が最大になる際、前記間隔は最大となる構成(第3の構成)であってもよい。
【0056】
また、上記第1から第3のいずれかの構成の作業機械100は、
前記ボンネット302が前記原動機303を覆う状態において、前記付勢機構1は、前後方向において前記原動機303と前記第1軸A1との間に位置する構成(第4の構成)であってもよい。
【0057】
また、上記第1から第4のいずれかの構成の作業機械100は、
前記第2軸A2は、前記第1軸A1よりも前方に配置される構成(第5の構成)であってもよい。
【0058】
また、上記第1から第5のいずれかの構成の作業機械100は、
前記原動機303の吸気口の手前で不純物を除去するエアクリーナ304をさらに備え、
前記第2軸A2は、前記エアクリーナ304よりも下方に配置される構成(第6の構成)であってもよい。
【0059】
また、上記第1から第6のいずれかの構成の作業機械100は、
前記原動機303の吸気口の手前で不純物を除去するエアクリーナ304と、
前記原動機303よりも後方において左右方向における前記エアクリーナ304の隣に配置される発電機305と、
をさらに備え、
前記ボンネット302が前記原動機303を覆う状態において、前記付勢機構1は、前記エアクリーナ304と前記発電機305との間に配置される構成(第7の構成)であってもよい。
【0060】
また、上記第1から第7のいずれかの構成の作業機械100は、
前記ボンネット302が前記原動機303を覆う状態において、前記付勢機構1は、前記第2軸A2から上方に向かうにつれて前方に延び、又は、前記第2軸A2から上方に向かって延びる構成(第8の構成)であってもよい。
【0061】
また、上記第1から第8のいずれかの構成の作業機械100は、
前記連結部材2は、
前記ボンネット302に固定される固定部材21と、
左右方向に延びる第3軸A3回りに回動可能に前記付勢機構1の一方端を前記固定部材21に接続する接続部材22と、
を有し、
前記固定部材21には、左右方向と垂直であって前記ボンネット302から離れる離間方向に延びるスリット211が配置され、
前記接続部材22は、前記スリット211にガイドされて、前記離間方向に移動可能である構成(第9の構成)であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
100 油圧ショベル
301 機体フレーム
302 ボンネット
303 エンジン
304 エアクリーナ
1 付勢機構
2 連結部材
21 固定部材
211 スリット
22 接続部材
305 発電機
A1 第1軸
A2 第2軸
A3 第3軸
C1 第1連結部
C2 第2連結部
θ 回動量
θs 閾値