(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175928
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】水系下塗塗料組成物及び複層塗膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
C09D 163/00 20060101AFI20241212BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20241212BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20241212BHJP
C09D 125/08 20060101ALI20241212BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20241212BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241212BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20241212BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D5/00 D
C09D133/00
C09D125/08
B32B27/38
B32B27/30 A
B05D1/36 Z
B05D7/24 302P
B05D7/24 302J
B05D7/24 302U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094033
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】行森 靖高
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AC57
4D075AE03
4D075BB02Z
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4D075EC54
4F100AK01B
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4F100AK25C
4F100AK53B
4F100AK53C
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4J038CG151
4J038CH031
4J038CH041
4J038CJ031
4J038DB061
4J038DB371
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4J038NA03
4J038NA09
4J038PA07
4J038PB05
4J038PB07
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】金属表面と、有機樹脂により被覆された表面のいずれにも優れた付着性を有し、かつ耐水性及び耐食性に優れた塗膜を形成可能な塗料組成物を提供する。
【解決手段】水、樹脂、及び顔料を含む水系下塗塗料組成物であって、前記樹脂に対する前記顔料の質量比が0.30~0.90であり、前記樹脂が、少なくともアクリル変性エポキシ樹脂(A)と、スチレンアクリル樹脂(B)とを含むことを特徴とする、水系下塗塗料組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、樹脂、及び顔料を含む水系下塗塗料組成物であって、
前記樹脂に対する前記顔料の質量比が0.30~0.90であり、
前記樹脂が、少なくともアクリル変性エポキシ樹脂(A)と、スチレンアクリル樹脂(B)とを含むことを特徴とする、水系下塗塗料組成物。
【請求項2】
前記アクリル変性エポキシ樹脂(A)と、前記スチレンアクリル樹脂(B)との質量比(A):(B)が、40:60~80:20であることを特徴とする、請求項1に記載の水系下塗塗料組成物。
【請求項3】
前記アクリル変性エポキシ樹脂(A)のガラス転移点(Tg)が、60~90℃であることを特徴とする、請求項1に記載の水系下塗塗料組成物。
【請求項4】
少なくとも基材上に、請求項1~3のいずれか一項に記載の水系下塗塗料組成物を塗装し、下塗層(I)を形成する工程と、
前記下塗層(I)上に上塗塗料組成物を塗装し、上塗層(II)を形成する工程と、を含む複層塗膜の形成方法。
【請求項5】
前記上塗塗料組成物が、アクリル変性エポキシ樹脂を含むことを特徴とする、請求項4に記載の複層塗膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系下塗塗料組成物及び該水系下塗塗料組成物を用いた複層塗膜の形成方法に関し、特には、金属表面と、有機樹脂により被覆された表面のいずれにも優れた付着性を有し、かつ耐水性及び耐食性に優れた塗膜を形成可能な塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車輛、主に鉄道車輛、建設機械、例えばショベルカー、産業機械、及び鋼製建具等(これらを纏めて車輛産機ともいう。)に使用される金属基材用下塗り塗料は、優れた耐水性及び耐食性を有する塗膜を形成することが必要である。また、近年では環境負荷低減や塗装の省工程化も考慮され、上記塗膜を形成することが可能な水系一液型塗料が求められている。
【0003】
特開2014-196426号公報(特許文献1)は、エポキシ樹脂分散液、アクリル樹脂乳濁液、及び防錆顔料を含有することを特徴とする水系下塗塗料組成物を記載し、かかる水系下塗塗料組成物を用いることによって、クロメート処理を採用しなくても亜鉛めっき鋼板等の金属板に優れた防錆性及び付着性を付与できることを記載している。
【0004】
特開2012-224771号公報(特許文献2)は、特定の水性脂肪酸変性アクリル樹脂(A)と特定のマレイン化脂肪酸エポキシエステル樹脂(B)の水分散体を固形分質量比で35/65~90/10の割合で含有し、さらに該両成分の固形分合計100質量部を基準にして、亜リン酸金属塩(C)を1~60質量部含有することを特徴とする水性塗料組成物を記載し、かかる水性塗料組成物を用いることによって、低温硬化性、仕上り性、塗膜硬度、耐水性及び防食性、特に無処理鋼板の防食性に優れた塗膜を形成できることを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-196426号公報
【特許文献2】特開2012-224771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2には、金属基材への付着性、耐水性及び耐食性に優れた塗膜を形成可能な水系一液型エポキシ樹脂塗料組成物が開示されている。一方、車輛産機の被塗装面には、凹凸が存在していたり、孔食部が発生していたりする場合もあり、そのような場合には、凹凸を平滑にしたり孔食部を埋めたりする目的でパテ等が使用される。ここで、パテには、通常、有機樹脂が使用されることから、車輛産機に使用される金属基材用下塗り塗料組成物は、金属基材への付着性のみならず、有機樹脂により被覆された表面に対しても付着性が求められることになる。しかしながら、特許文献1及び2に記載される水系一液型エポキシ樹脂塗料組成物は、有機樹脂により被覆された表面に対する付着性について課題が認められる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、金属表面と、有機樹脂により被覆された表面のいずれにも優れた付着性を有し、かつ耐水性及び耐食性に優れた塗膜を形成可能な塗料組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる塗料組成物を用いた複層塗膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、水系下塗塗料組成物において、樹脂に対する顔料の質量比を0.30~0.90に調整すると共に、樹脂としてアクリル変性エポキシ樹脂及びスチレンアクリル樹脂を用いることで、金属表面と、有機樹脂により被覆された表面のいずれにも優れた付着性を有し、かつ耐水性及び耐食性に優れた塗膜を形成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
従って、本発明の塗料組成物は、水、樹脂、及び顔料を含む水系下塗塗料組成物であって、
前記樹脂に対する前記顔料の質量比が0.30~0.90であり、
前記樹脂が、少なくともアクリル変性エポキシ樹脂(A)と、スチレンアクリル樹脂(B)とを含むことを特徴とする、水系下塗塗料組成物である。
【0010】
本発明の塗料組成物の好適例においては、前記アクリル変性エポキシ樹脂(A)と、前記スチレンアクリル樹脂(B)との質量比(A):(B)が、40:60~80:20である。
【0011】
本発明の塗料組成物の他の好適例においては、前記アクリル変性エポキシ樹脂(A)のガラス転移点(Tg)が、60~90℃である。
【0012】
また、本発明の複層塗膜の形成方法は、少なくとも基材上に、上述の本発明の水系下塗塗料組成物を塗装し、下塗層(I)を形成する工程と、
前記下塗層(I)上に上塗塗料組成物を塗装し、上塗層(II)を形成する工程と、を含む複層塗膜の形成方法である。
【0013】
本発明の複層塗膜の形成方法の好適例においては、前記上塗塗料組成物が、アクリル変性エポキシ樹脂を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の塗料組成物によれば、金属表面と、有機樹脂により被覆された表面のいずれにも優れた付着性を有し、かつ耐水性及び耐食性に優れた塗膜を形成可能な塗料組成物を提供することができる。また、本発明の複層塗膜の形成方法によれば、かかる塗料組成物を用いた複層塗膜の形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明は、水系下塗塗料組成物及び該水系下塗塗料組成物を用いた複層塗膜の形成方法に関する。
【0016】
本発明の塗料組成物は、水、樹脂、及び顔料を含む水系下塗塗料組成物である。
【0017】
ここで、水系塗料組成物とは、主溶媒として水を含有する塗料組成物である。本発明の塗料組成物に用いる水は、特に制限されるものではないが、水道水やイオン交換水、蒸留水等の純水等が好適に挙げられる。また、塗料組成物を長期保存する場合には、カビやバクテリアの発生を防止するため、紫外線照射等により滅菌処理した水を用いてもよい。本発明の塗料組成物中において、水の量は、20~80質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましい。
【0018】
また、本発明の塗料組成物中において、固形分の量は、20~70質量%であることが好ましく、35~55質量%であることがより好ましい。本発明において、固形分とは、溶媒等の揮発する成分を除いた成分を指し、最終的に塗膜を形成することになる成分である。本発明においては、塗料組成物を110℃のオーブンで3時間乾燥させた際に残存する成分を固形分として取り扱う。なお、固形分は、不揮発分や塗膜形成成分と称される場合がある。
【0019】
また、下塗塗料組成物は、塗料を塗り重ねて塗装を行うときの下塗りに用いる塗料を意味する。なお、下塗塗料は、プライマー塗料や下地塗料、アンダーコートと称される場合がある。
【0020】
本発明の塗料組成物は、樹脂に対する顔料の質量比が0.30~0.90であり、0.40~0.85であることが好ましく、0.45~0.70であることが更に好ましい。本発明の塗料組成物によれば、樹脂にアクリル変性エポキシ樹脂及びスチレンアクリル樹脂を用いることで耐水性及び耐食性に加えて金属表面に対する付着性に優れた塗膜を形成することが可能であるところ、更に樹脂に対する顔料の質量比(即ち顔料/樹脂の質量比)を0.90以下に調整することで、金属表面に対する付着性のみならず、有機樹脂により被覆された表面にも良好な付着性を有する塗膜を形成することができる。また、本発明の塗料組成物によれば、樹脂に対する顔料の質量比(顔料/樹脂の質量比)を0.30以上に調整することで、塗膜強度が向上し、耐水性や耐食性に優れた塗膜を形成することができる。
【0021】
本発明の塗料組成物において、樹脂は、少なくともアクリル変性エポキシ樹脂と、スチレンアクリル樹脂とを含む。アクリル変性エポキシ樹脂は、塗膜の付着性、耐食性及び硬度を向上させることができる。また、スチレンアクリル樹脂は、塗膜の速乾性及び耐水性を向上させることができる。
【0022】
本明細書では、本発明の塗料組成物に含まれる「アクリル変性エポキシ樹脂」を「アクリル変性エポキシ樹脂(A)」又は「(A)成分」と称し、「スチレンアクリル樹脂」を「スチレンアクリル樹脂(B)」又は「(B)成分」と称する場合がある。
【0023】
本発明の塗料組成物において、アクリル変性エポキシ樹脂(A)と、スチレンアクリル樹脂(B)との質量比(A):(B)は、有機樹脂により被覆された表面に対する付着性、耐水性及び耐食性の観点から、40:60~80:20であることが好ましく、50:50~70:30であることが更に好ましい。
【0024】
アクリル変性エポキシ樹脂は、アクリレート系モノマーで変性されたエポキシ樹脂であり、例えば、エポキシ樹脂、グリシジル基含有重合性不飽和モノマー及びアミン類を反応させてなる変性エポキシ樹脂の存在下に、アクリレート系モノマー及びカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含む不飽和モノマーを重合反応させて得ることができる。
【0025】
アクリル変性エポキシ樹脂の製造に用いるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルアミン型樹脂、複素環式エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。アクリル変性エポキシ樹脂の製造に用いるエポキシ樹脂は単独でまたは併用して使用することができる。具体的には、ビスフェノール類とエピハロヒドリン(エピクロロヒドリン等)とから合成されるエポキシ樹脂、ビスフェノール類と2価フェノール類及びエピハロヒドリンから誘導されるエポキシ樹脂とビスフェノール類との伸長反応により得られるエポキシ樹脂等が好ましい。
【0026】
エポキシ樹脂の製造に用いるビスフェノール類としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン[ビスフェノールB]、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-イソブタン、ビス(4-ヒドロキシ-tert-ブチル-フェニル)-2,2-プロパン、p-(4-ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4-ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4-ヒドロキシフェニル)、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2-ヒドロキシナフチル)メタン等を挙げることができ、なかでもビスフェノールAが好適に使用される。ビスフェノール類は、単独でまたは併用して使用することができる。
【0027】
アクリル変性エポキシ樹脂の製造に用いるエポキシ樹脂の数平均分子量は2,000~35,000が好ましく、4,000~30,000が更に好ましく、また、エポキシ当量は、1,000~12,000が好ましく、3,000~10,000が更に好ましい。
【0028】
本発明において、数平均分子量及び重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用される。
【0029】
また、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236:2001「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」に従って求めることができる。
【0030】
アクリル変性エポキシ樹脂の製造に用いるグリシジル基含有重合性不飽和モノマーは、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0031】
アクリル変性エポキシ樹脂の製造に用いるアミン類は、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン等のモノ-若しくはジ-アルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2-ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2-ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノール、モノエチルアミノエタノール等のアルカノールアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアルキレンポリアミン;エチレンイミン、プロピレンイミン等のアルキレンイミン;ピペラジン、モルホリン、ピラジン等の環状アミン等が挙げられる。
【0032】
好ましいアミン類としては、ジアルカノールアミン及び鎖状脂肪族モノアミンが挙げられ、これらを併用することが更に好ましい。
【0033】
ジアルカノールアミンは、2つのアルカノール基を有するアミンである。その種類は特に限定されないが、N-H結合を有するジアルカノールアミン(第2級ジアルカノールアミン)が好ましい。N-H結合を有するジアルカノールアミン(第2級ジアルカノールアミン)としては、例えば、ジエタノールアミン、ジn-プロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ビス(2-ヒドロキシブチル)アミン、ビス(2-ヒドロキシペンチル)アミン、ビス(2-ヒドロキシヘキシル)アミン等が挙げられ、ジエタノールアミン、ジn-プロパノールアミン、ジイソプロパノールアミンが好ましい。ジアルカノールアミンは単独でも2種以上を組み合わせてもよい。
【0034】
アクリル変性エポキシ樹脂の製造に用いるアミン類の総量に対してジアルカノールアミンの使用量は、5~40重量%であることが好ましく、7~30重量%であることがより好ましい。
【0035】
鎖状脂肪族モノアミンは、分子内に1つ以上の非環状炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アルキニル基)を有するモノアミンであり、N-H結合を1つ又は2つ有する鎖状脂肪族アミン、すなわち、モノアルキルアミン、モノアルケニルアミン、ジアルキルアミン、ジアルケニルアミンであることが好ましい。鎖状脂肪族モノアミンは単独でも2種以上を組み合わせてもよい。
【0036】
モノアルキルアミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、s-ブチルアミン、t-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、イソペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、イソオクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-ノニルアミン、n-デシルアミン、イソデシルアミン、n-ウンデシルアミン、n-ドデシルアミン(n-ラウリルアミン)、n-トリアデシルアミン、n-テトラデシルアミン(n-ミリスチルアミン)、n-ペンタデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン(n-パルミチルアミン)、n-ヘプタデシルアミン、n-オクタデシルアミン(n-ステアリルアミン)、イソオクタデシルアミン(イソステアリルアミン)等が挙げられる。
【0037】
モノアルケニルアミンとしては、ビニルアミン、アリルアミン、ブテニルアミン、ペンテニルアミン、ヘキセニルアミン、ヘプテニルアミン、オクテニルアミン、ノネニルアミン、デセニルアミン、ウンデセニルアミン、ドデセニルアミン、トリデセニルアミン、テトラデセニルアミン、ペンタデセニルアミン、ヘキサデセニルアミン、ヘプタデセニルアミン、オクタデセニルアミン(オレイルアミン等)、ノナデセニルアミン、イコセニルアミン、ドデセニルアミン等が挙げられる。また、これらのモノアルケニルアミンの炭素-炭素二重結合の位置については特に限定されず、その構造異性体も自由に使用できる。
【0038】
ジアルキルアミンとしては、ジメチルアミン、N-エチルメチルアミン、ジエチルアミン、N-エチル-N-(n-プロピル)アミン、ジn-プロピルアミン、n-プロピルイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジs-ブチルアミン、ジt-ブチルアミン、N-n-ブチルエチルアミン、N-s-ブチルエチルアミン、N-t-ブチルエチルアミン、N-n-ブチルプロピルアミン、N-s-ブチルプロピルアミン、N-t-ブチルプロピルアミン、N-t-ブチルイソプロピルアミン、ジペンチルアミン(ジアミルアミン)、ジイソペンチルアミン(ジイソアミルアミン)、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン(ジラウリルアミン)、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン(ジミリスチルアミン)、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン(ジパルミチルアミン)、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン(ジステアリルアミン)等が挙げられる。
【0039】
ジアルケニルアミンとしては、ジビニルアミン、ジアリルアミン、ジブテニルアミン、ジペンテニルアミン、ジヘキセニルアミン、ジヘプテニルアミン、ジオクテニルアミン、ジノネニルアミン、ジデセニルアミン、ジウンデセニルアミン、ジドデセニルアミン、ジトリデセニルアミン、ジテトラデセニルアミン、ジペンタデセニルアミン、ジヘキサデセニルアミン、ジヘプタデセニルアミン、ジオクタデセニルアミン、ジノナデセニルアミン、ジイコセニルアミン、ジドデセニルアミン等が挙げられる。また、これらのジアルケニルアミンの炭素-炭素二重結合の位置については特に限定されず、その構造異性体も自由に使用できる。
【0040】
これらの鎖状脂肪族モノアミンの中でも、モノアルキルアミン、モノアルケニルアミン、ジアルキルアミンがより好ましい。
【0041】
アクリル変性エポキシ樹脂の製造に用いるアミン類の総量に対して鎖状脂肪族モノアミンの使用量は、50~95重量%が好ましく、60~92重量%がより好ましい。
【0042】
エポキシ樹脂、グリシジル基含有重合性不飽和モノマー及びアミン類の反応により変性エポキシ樹脂を製造する際には、必要に応じて、水分散性や防食性の向上を目的として、1~3価の有機酸、1~4価のアルコール、イソシアネート化合物等を用いることができる。
【0043】
1価~3価の有機酸は、脂肪族、脂環族または芳香族の各種公知のカルボン酸が使用でき、例えばダイマー酸、トリメリット酸等が挙げられる。1価~4価のアルコールとしては、脂肪族、脂環族または芳香族の各種公知のアルコールが使用でき、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。イソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知のポリイソシアネートが使用でき、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。これらの1価~3価の有機酸、1価~4価のアルコール、イソシアネート化合物等は、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて使用できる。
【0044】
変性エポキシ樹脂は、有機溶剤の存在下に、エポキシ樹脂、グリシジル基含有重合性不飽和モノマー及びアミン類等の上述した成分を加熱することにより容易に製造できる。反応温度は、通常60~200℃、好ましくは90~150℃の温度であり、反応時間は、通常1~10時間、好ましくは1~5時間である。
【0045】
変性エポキシ樹脂の製造において、エポキシ樹脂、グリシジル基含有重合性不飽和モノマー及びアミン類の使用比率としては、エポキシ基数/アミノ基の活性水素数が100/120~100/80程度、好ましくは100/110~100/90程度、より好ましくは100/105~100/95程度である。
【0046】
有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、2-エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセチルアセトン等のケトン系溶剤;エチレングルコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;これらの混合物が挙げられる。
【0047】
上記のようにして得られた変性エポキシ樹脂の存在下に、アクリレート系モノマー及びカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー並びに必要に応じて、その他の重合性不飽和モノマーを重合させることにより、アクリル変性エポキシ樹脂を製造することができる。
【0048】
アクリレート系モノマーは、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO-)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO-)を1つ以上有するエステルモノマーであり、アクリル変性エポキシ樹脂の製造に用いるアクリレート系モノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-,i-又はt-ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-,i-又はt-ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1~18のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸のC2~C8ヒドロキシアルキルエステル等のモノマーが挙げられる。アクリレート系モノマーは単独若しくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0049】
アクリレート系モノマーの使用量は、変性エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1~40重量部程度が好ましく、1~20重量部程度がより好ましい。
【0050】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーは、アクリル変性エポキシ樹脂の水性化(水分散又は溶解)のために使用され、例として、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のα,β-不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸、シトラコン酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸;これらカルボン酸の無水物;これらカルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーは単独若しくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0051】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの使用量は、変性エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1~20重量部程度が好ましく、1~10重量部程度がより好ましい。
【0052】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーは、必要に応じて、カルボジイミドと併用されてもよい。
【0053】
カルボジイミドとしては、例えば、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(1,6-ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(1,4-テトラメチレンカルボジイミド)、ポリ(1,3-シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’-メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1-メチル-3,5-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(イソプロピルフェニレンカルボジイミド)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド・塩酸塩等が挙げられる。カルボジイミドは単独でも2種以上を組み合わせてもよい。
【0054】
アクリル変性エポキシ樹脂の製造には、上述のアクリレート系モノマーやカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーに該当しない重合性不飽和モノマーを使用することもできる。その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、2-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、クロルスチレン等の芳香族系ビニルモノマー;N-メチロールアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミド等のN-置換アクリルアミド系又はN-置換メタクリルアミド系モノマー等が挙げられ、これらは単独若しくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0055】
変性エポキシ樹脂とアクリレート系モノマー及びカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー並びに必要に応じて使用されるその他の重合性不飽和モノマーとの共重合反応には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオクトエイト、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等の公知各種の有機過酸化物やアゾ化合物を用いることができる。
【0056】
当該共重合反応の重合様式は、特に限定されないが、溶液重合法であることが好ましい。例えば、上述のような重合開始剤の存在下で60~150℃の反応温度で重合できる。有機溶剤については、変性エポキシ樹脂の製造において説明したものを同様に使用することができる。
【0057】
アクリル変性エポキシ樹脂は、ガラス転移点(Tg)が、付着性と耐水性のバランスの観点から、60~90℃であることが好ましく、65~85℃であることが更に好ましい。一方、アクリル変性エポキシ樹脂のガラス転移点が低すぎると、耐水性が低下する場合がある。なお、ガラス転移点は、ガラス転移温度と称される場合もある。
【0058】
本発明において、ガラス転移点は、JIS K 7121-1987に準じ、示差走査熱量計(DSC)によって測定することができる。例えば、試料(例えば樹脂片又は塗膜片)約10mgを測定用アルミパンに採取し、下記の測定条件でDSC測定を行う。
(測定温度条件)
1st昇温:-80℃~220℃(20℃/min)
降温条件:220℃~-80℃(50℃/min)
2nd昇温:-80℃~220℃(10℃/min)
【0059】
アクリル変性エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、モデピクス301、モデピクス302、モデピクス303、モデピクス304、モデピクス305、モデピクス307(以上、荒川化学株式会社製)等が挙げられる。
【0060】
本発明の塗料組成物において、固形分中のアクリル変性エポキシ樹脂の量は、20~50質量%であることが好ましく、30~40質量%であることが更に好ましい。アクリル変性エポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。アクリル変性エポキシ樹脂の量が20質量%未満であると、塗膜の付着性、耐食性及び塗膜硬度が低下する場合があり、アクリル変性エポキシ樹脂の量が50質量%を超えると、耐水性及び耐食性が低下する場合がある。
【0061】
スチレンアクリル樹脂は、スチレン系モノマー由来の構造単位とアクリル系モノマー由来の構造単位とを含む樹脂である。スチレン系モノマー由来の構造単位の割合は、スチレンアクリル樹脂中0.1~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることが更に好ましい。アクリル系モノマー由来の構造単位の割合は、スチレンアクリル樹脂中50~99.9質量%であることが好ましく、60~90質量%であることが更に好ましい。
【0062】
スチレンアクリル樹脂は、スチレン系モノマーと、アクリル系モノマーとを共重合させることで得ることができる。また、必要に応じて、スチレン系モノマー及びアクリル系モノマーに加えて、これらに該当しない重合性不飽和モノマーを重合させることができる。このようにして得られるスチレンアクリル樹脂は、スチレン系モノマー由来の構造単位と、アクリル系モノマー由来の構造単位と、さらなる重合性不飽和モノマー由来の構造単位とを含む樹脂である。さらなる重合性不飽和モノマー由来の構造単位の割合は、スチレンアクリル樹脂中10質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0063】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。スチレン系モノマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0064】
アクリル系モノマーは、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO-)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO-)を1つ以上有するエステルモノマーである。アクリル系モノマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0065】
スチレンアクリル樹脂の製造に用いるアクリル系モノマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1~18のアルキルエステルが好ましい。アクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1~18のアルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1~18のアルキルエステル由来の構造単位の割合は、スチレンアクリル樹脂中50~99.9質量%であることが好ましく、60~90質量%であることが更に好ましい。
【0066】
スチレン系モノマー又はアクリル系モノマーに該当しない重合性不飽和モノマー(さらなる重合性不飽和モノマー)としては、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、オレフィン(プロピレン等)等が挙げられる。さらなる重合性不飽和モノマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0067】
スチレンアクリル樹脂の製造には、アクリル系モノマー、スチレン系モノマー又はさらなる重合性不飽和モノマーのいずれかに該当するモノマーとして、ヒドロキシ基含有重合性不飽和モノマーを使用することができる。ヒドロキシ基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのラクトン付加物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートへのエチレンオキシドの開環付加物又はプロピレンオキシドの開環付加物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの2量体又は3量体等が挙げられる。ヒドロキシ基含有重合性不飽和モノマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0068】
スチレンアクリル樹脂は、ガラス転移点(Tg)が、-5~80℃であることが好ましく、0~50℃であることが更に好ましい。
【0069】
スチレンアクリル樹脂の市販品としては、例えば、ポリゾール AP-1330、AP-3150、AP-5085N、AP-6750(以上、レゾナック社製)、Acronal YJ-1070、YJ-1100、YJ-2720、YJ-2716、295DN(以上、BASF社製)、ボンコート 4001、5454、EC-740EF(以上、DIC社製)、アロン NW-7060(東亜合成社製)、モビニールDM60、749E、LDM6740(以上、ジャパンコーティングレジン社製)、VIACRYL VSC 6254W/40WA、6265W/40WA、6279W/45WA、6286W/45WA、6295W/45WA、SC 6828W/45WA(ダイセル・オルネクス社製)等が挙げられる。
【0070】
本発明の塗料組成物において、固形分中のスチレンアクリル樹脂の量は、10~40質量%であることが好ましく、20~30質量%であることが更に好ましい。スチレンアクリル樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。スチレンアクリル樹脂の量が10質量%未満であると、塗膜の速乾性及び耐水性が低下する場合があり、スチレンアクリル樹脂の量が40質量%を超えると、塗膜の付着性、耐食性及び耐水性は低下する場合がある。
【0071】
本発明の塗料組成物は、アクリル変性エポキシ樹脂及びスチレンアクリル樹脂に加えて、さらなる樹脂を含むこともできる。本発明の塗料組成物に使用できる樹脂としては、塗料業界において通常使用されている樹脂を例示することができる。例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ふっ素樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキド樹脂、ウレタンアルキド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂、アミン樹脂、ケチミン樹脂等が挙げられる。さらなる樹脂は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
本発明の塗料組成物において、固形分中の樹脂の総量は、45~70質量%であることが好ましく、55~65質量%であることが更に好ましい。樹脂の総量が45質量%未満であると、塗膜の付着性が低下する場合があり、樹脂の総量が70質量%を超えると、耐食性が低下する場合がある。
【0073】
本発明の塗料組成物に用いる顔料は、特に制限されるものではなく、体質顔料、着色顔料、防錆顔料、光輝顔料等の、塗料業界において通常使用されている顔料を使用することができる。顔料は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本明細書では、本発明の塗料組成物に含まれる「顔料」を「顔料(C)」又は「(C)成分」と称する場合がある。
【0074】
体質顔料は、通常、白色ないし無色の顔料である。屈折率が低いため、展色剤に混和しても隠蔽性にほとんど影響を与えないことから、増量剤として絵具・塗料・化粧品などのコストダウン、着色力や光沢、強度、使用感などの調整に使われる。体質顔料は、公知の材料が使用でき、例えば、沈降性硫酸バリウム、シリカ、クリストバライト、炭酸カルシウム、アルミナ、ミョウバン、白土、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。また、体質顔料は、箔のような薄く平らな形状をした顔料(鱗片状顔料)であってもよく、その具体例として、ガラスフレーク、タルク、マイカ、カオリンクレー等がある。本発明の塗料組成物において、固形分中の体質顔料の量は、例えば5.0~30質量%である。
【0075】
着色顔料は、一般に、その組成から無機顔料と有機顔料に大別される。無機顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、黄色酸化鉄、カーボンブラック等が挙げられ、有機顔料としては、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ナフトールレッド、キナクリドンレッド、ベンズイミダゾロンイエロー、ハンザイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。本発明の塗料組成物において、固形分中の着色顔料の量は、例えば0.1~20質量%である。
【0076】
防錆顔料は、公知の材料が使用でき、例えば、亜鉛粉末、酸化亜鉛、メタホウ酸バリウム、珪酸カルシウム、リン酸アルミニウム、縮合リン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸亜鉛アルミニウム、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、バナジン酸/リン酸混合顔料等が挙げられる。本発明の塗料組成物において、固形分中の防錆顔料の量は、例えば1.0~20質量%である。
【0077】
光輝顔料は、公知の材料が使用でき、例えば、亜鉛、ニッケル、クロム、錫、銅、銀、白金、金、アルミニウム等の金属を箔のような薄く平らな形状をした鱗片状金属顔料や、タルク又はマイカを酸化チタン等の金属酸化物で表面処理したパール顔料が挙げられる。なお、鱗片状金属顔料には、ステンレス等の合金の顔料も含まれる。本発明の塗料組成物において、固形分中の光輝顔料の量は、例えば0.1~10質量%である。
【0078】
本発明の塗料組成物において、固形分中の顔料の総量は、20~45質量%であることが好ましく、30~40質量%であることが更に好ましい。
【0079】
本発明の塗料組成物には、その他の成分として、可撓性付与剤、表面調整剤、湿潤剤、顔料分散剤、乳化剤、粘性調整剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、消泡剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、成膜助剤、中和剤、帯電性滑剤、帯電防止剤及び導電性付与剤等を目的に応じて適宜配合することができる。
【0080】
本発明の塗料組成物は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製できる。本発明の塗料組成物は、各種成分を予め混合されたものを塗装時にそのまま使用する一液型の塗料組成物として好適である。
【0081】
本発明の塗料組成物は、せん断速度0.1(1/s)における粘度が1~1000(Pa・s、23℃)であり、せん断速度1000(1/s)における粘度が0.05~10(Pa・s、23℃)であることが好ましい。本発明において、粘度は、レオメーター(例えば、TAインスツルメンツ社製レオメーターARES)を用い、液温を23℃に調整した後に測定される。
【0082】
本発明の塗料組成物の塗装手段は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、ディッピング法、スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ブレードコート法及びエアーナイフコート法等が利用できる。
【0083】
本発明の塗料組成物の乾燥手段は、特に限定されず、周囲温度での自然乾燥や乾燥機等を用いた強制乾燥のいずれであってもよい。
【0084】
本発明の塗料組成物により塗装される基材は、様々な形状のものがあり、例えば、フィルム状、シート状、板状等の二次元形状基材や複雑形状の立体物である三次元形状基材等がある。基材の表面は、平滑であってもよいし、凹凸を有していてもよい。
【0085】
本発明の塗料組成物により塗装される基材は、例えば、エポキシ樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリオレフィン、例えばポリプロピレン(PP)等のプラスチック基材、鉄鋼、亜鉛めっき鋼、錫めっき鋼、ステンレス鋼、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金等の金属基材、セメント、モルタル、コンクリート、スレート、石膏、ケイ酸カルシウム、ガラス、セラミック、炭酸カルシウム、大理石、人工大理石等の金属以外の無機質基材、木材等の木質基材、紙基材、これら基材の2種以上の材料を組み合わせたような複合基材等が挙げられる。また、複合基材としては、例えば、木繊維補強セメント板、繊維補強セメント板、繊維補強セメント・珪酸カルシウム板等の複合基材、各種表面処理、例えば酸化処理が施された金属基材、その表面が無機物で被覆されているようなプラスチック基材(例えば、ガラス質で被覆されたプラスチック基材)等が挙げられる。
【0086】
本発明の塗料組成物は、付着性に優れ、好ましくは防食性にも優れる塗膜を形成することが可能であることから、塗装対象は金属基材や金属と他の材料からなる複合基材であることが好ましい。
【0087】
基材は、様々な形状のものがあり、例えば、フィルム状、シート状、板状等の二次元形状基材や複雑形状の立体物である三次元形状基材等がある。基材の表面は、平滑であってもよいし、凹凸を有していてもよい。
【0088】
基材は、その表面に、脱脂処理、化成処理、研磨等の前処理や、シーラー、プライマー、パテやジンクリッチペイント等の塗装、めっきや金属溶射等が施されていてもよい。
【0089】
基材は、その表面に、旧塗膜を有していてもよい。旧塗膜は、基材の表面の一部または全部を被覆している場合がある。本発明において、旧塗膜とは、本発明の塗料組成物による塗装を行う際に既に基材上に存在している塗膜を意味する。
【0090】
本発明の塗料組成物により塗装される基材は、車輛、主に鉄道車輛、建設機械、例えばショベルカー、産業機械、及び鋼製建具等の車輛産機に使用される金属基材であることが特に好ましい。
【0091】
次に、本発明の複層塗膜の形成方法について説明する。
【0092】
本発明の複層塗膜の形成方法は、少なくとも基材上に、上述の本発明の塗料組成物を塗装し、下塗層を形成する工程と、
前記下塗層上に上塗塗料組成物を塗装し、上塗層を形成する工程と、を含む複層塗膜の形成方法である。
【0093】
本明細書では、下塗層を「下塗層(I)」と称し、上塗層を「上塗層(II)」と称する場合がある。
【0094】
本発明の複層塗膜の形成方法において、基材及び本発明の塗料組成物は、本発明の塗料組成物の説明において記載したとおりである。
【0095】
下塗層は、一層であってもよいし、二層以上であってもよい。下塗層は、厚さが20~150μmであることが好ましく、25~100μmであることが更に好ましい。下塗層が複数層からなる場合、ここに記載される数値範囲は、下塗層の合計の厚さを指す。
【0096】
下塗層を形成する工程では、本発明の塗料組成物は、少なくとも基材上に下塗塗料として塗装される。ここで、基材の表面にくぼみ等の欠陥が存在する場合には、欠陥を埋めるためにパテが使用されることが多い。パテは、塗装系の平滑さを向上させるために用いる肉盛り用の塗料であり、通常、ポリエステル等の有機樹脂が使用されている。この場合、本発明の塗料組成物は、基材に加えて、有機樹脂により被覆された表面上にも塗装されることになる。
【0097】
本発明の複層塗膜の形成方法の一実施形態において、下塗層を形成する工程は、基材及びパテ層上に、本発明の塗料組成物を塗装し、下塗層を形成する工程である。例えば、基材表面に存在するくぼみ等の欠陥にパテを埋めてパテ層を形成し、基材及びパテ層上に本発明の塗料組成物を塗装し、下塗層を形成したり、あるいは、基材上に本発明の塗料組成物を塗装して第1の下塗層を形成し、次いで基材表面に存在するくぼみ等の欠陥にパテを埋めてパテ層を形成し(ここで、基材表面とパテ層の間には第1の下塗層が存在している)、次いで第1の下塗層及びパテ層上に本発明の塗料組成物を塗装して第2の下塗層を形成したりすることができる。なお、第2の下塗層を形成するために本発明の塗料組成物を塗装する前に被塗装面に研磨処理を行うことが好ましい。本発明の塗料組成物は、金属表面と、有機樹脂により被覆された表面のいずれにも優れた付着性を有し、かつ耐水性及び耐食性に優れた塗膜を形成可能な塗料組成物であることから、このような実施形態で使用される下塗塗料として好適である。
【0098】
上塗塗料組成物は、塗料を塗り重ねて塗装を行うときの上塗りに用いる塗料を意味する。なお、上塗塗料は、仕上げ塗料やオーバーコートと称される場合がある。
【0099】
本発明の複層塗膜の形成方法に用いる上塗塗料組成物は、本発明の塗料組成物と同様に、水系塗料組成物であることが好ましい。上塗塗料組成物には、樹脂、顔料、溶媒、艶消し剤、可撓性付与剤、表面調整剤、湿潤剤、顔料分散剤、乳化剤、粘性調整剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、消泡剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、成膜助剤、中和剤、防カビ剤、抗菌剤、殺虫剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、帯電性滑剤、帯電防止剤及び導電性付与剤等を目的に応じて適宜配合することができる。
【0100】
本発明の複層塗膜の形成方法において、上塗塗料組成物は、アクリル変性エポキシ樹脂を含むことが好ましい。これによって、下塗層と上塗層の付着性を向上させることができる。ここで、アクリル変性エポキシ樹脂は、本発明の塗料組成物の説明において記載したとおりである。
【0101】
また、上塗塗料組成物における固形分中のアクリル変性エポキシ樹脂の量は、下塗塗料としての本発明の塗料組成物における固形分中のアクリル変性エポキシ樹脂の量よりも少ないことが好ましい。上塗塗料組成物において、固形分中のアクリル変性エポキシ樹脂の量は、5.0~30質量%であることが好ましく、10~20質量%であることが更に好ましい。
【0102】
上塗塗料組成物は、アクリルシリコーン樹脂及びウレタン樹脂から選択される少なくとも一つの樹脂を含むことが好ましく、アクリル変性エポキシ樹脂、アクリルシリコーン樹脂及びウレタン樹脂を含むことが更に好ましい。アクリルシリコーン樹脂及びウレタン樹脂を含むことで、耐候性に優れた塗膜を形成することができる。
【0103】
上塗塗料組成物において、固形分中の樹脂の総量は、60~100質量%であることが好ましく、70~95質量%であることが更に好ましい。
【0104】
上塗塗料組成物は、顔料を含まない、又は、固形分中の顔料の総量が20質量%以下であることが好ましい。特に、上塗塗料組成物は防錆顔料を含まないことが一般的である。
【0105】
上塗塗料組成物は、樹脂に対する顔料の質量比が0.50以下であることが好ましく、0.10~0.30であることが更に好ましい。また、上塗塗料組成物における樹脂に対する顔料の質量比は、下塗塗料組成物における樹脂に対する顔料の質量比よりも低いことが好ましく、下塗塗料組成物における樹脂に対する顔料の質量比の0.1~0.5倍であることが更に好ましい。上塗塗料組成物の樹脂に対する顔料の質量比が上記特定した範囲内であれば、耐候性や外観の優れた塗膜が得られやすい。
【0106】
上塗層は、一層であってもよいし、二層以上であってもよい。上塗層は、厚さが10~100μmであることが好ましく、20~60μmであることが更に好ましい。上塗層が複数層からなる場合、ここに記載される数値範囲は、上塗層の合計の厚さを指す。
【実施例0107】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0108】
表1及び表2に示す配合処方に従う塗料組成物(下塗塗料組成物)の調製のため、以下の材料を用いた。スチレンアクリル樹脂1は、上塗塗料組成物の調製にも用いた。
(1)アクリル変性エポキシ樹脂(A)
・アクリル変性エポキシ樹脂1(商品名:モデピクス301、荒川化学工業株式会社製、当該製品はアクリル変性エポキシ樹脂の水分散液である、ガラス転移温度:70℃、不揮発分:33質量%)
・アクリル変性エポキシ樹脂2(商品名:モデピクス303、荒川化学工業株式会社製、当該製品はアクリル変性エポキシ樹脂の水分散液である、ガラス転移温度:70℃、不揮発分:33質量%)
・アクリル変性エポキシ樹脂3(商品名:モデピクス305、荒川化学工業株式会社製、当該製品はアクリル変性エポキシ樹脂の水分散液である、ガラス転移温度:58℃、不揮発分:39質量%)
(2)スチレンアクリル樹脂(B)
・スチレンアクリル樹脂1(スチレンアクリル樹脂エマルションであり、その調製例は後述する、ガラス転移温度:20℃、不揮発分:48質量%)
・スチレンアクリル樹脂2(スチレンアクリル樹脂エマルションであり、その調製例は後述する、ガラス転移温度:32℃、不揮発分:46質量%)
(3)その他樹脂
・エポキシエステル樹脂1(当該製品はエポキシエステル樹脂の水分散液である、商品名:ウォーターゾールEFD-5580、DIC株式会社製、不揮発分:40質量%)
(4)顔料(C)
・着色顔料(商品名:TITONS R-5N、堺化学工業株式会社製、酸化チタン)
・体質顔料1(商品名:沈降性硫酸バリウム#100、堺化学工業株式会社製、沈降性硫酸バリウム)
・体質顔料2(商品名:タルクDN-2、富士タルク株式会社製、タルク)
・防錆顔料1(商品名:酸化亜鉛2種、堺化学工業株式会社製、酸化亜鉛系防錆顔料)
・防錆顔料2(商品名:K-WHITE #140W、堺化学工業株式会社製、リン酸亜鉛系防錆顔料)
(5)添加剤
・顔料分散剤(高分子系顔料分散剤、不揮発分:100質量%)
・たれ止め剤(アクリル系増粘剤、不揮発分:30質量%)
・消泡剤(鉱物油系消泡剤、不揮発分:100質量%)
・成膜助剤(ジプロピレングリコールnブチルエーテル)
【0109】
<スチレンアクリル樹脂1の調製例>
撹拌装置、温度計、還流冷却管、滴下装置および窒素導入管を備えた反応器中に、イオン交換水25.92質量部、及びポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)オルキルエーテル硫酸アンモニウム(第一工業製薬株式会社製;アクアロンKH-10)0.3質量部を仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら、80℃まで昇温した後、過硫酸カリウム(重合開始剤)0.13質量部を加えた。続いて、予め別容器にて攪拌混合しておいた、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン(日油株式会社性;ノフマーMSD)0.15質量部、スチレン14.0質量部、メチルメタクリレート14.0質量部、n-ブチルアクリレート19.2質量部、メタクリル酸0.5質量部、イオン交換水25質量部、及びポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)オルキルエーテル硫酸アンモニウム(第一工業製薬株式会社製;アクアロンKH-10)0.5質量部の混合物を、3時間かけて滴下した。滴下終了後、これをさらに2時間80℃に保持した後、40℃に降温し、不揮発分48質量%、pH9.0に調整し、スチレンアクリル樹脂エマルション(スチレンアクリル樹脂1)を得た。前記で得られたスチレンアクリル樹脂1に含まれる樹脂のガラス転移温度は20℃であった。
【0110】
<スチレンアクリル樹脂2の調製例>
攪拌機、還流冷却管、温度計、滴下装置および窒素導入管を備えたフラスコに、イオン交換水31.0質量部、α-スルホナト-ω-(1-(アリルオキシメチル)-アルキルオキシポリオキシエチレン)アンモニウム塩(第一工業製薬(株)製;アクアロンKH10)0.5質量部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(第一工業製薬株式会社製;ノイゲンET-170)0.2質量部仕込み、フラスコ内を窒素で置換しながら、80℃まで昇温した後、過硫酸アンモニウム0.2質量部を加え、スチレン9.0質量部、メチルメタクリレート10.5質量部、ブチルアクリレート2.0質量部、アクリル酸80%水溶液0.5質量部、イオン交換水11.0質量部、α-スルホナト-ω-(1-(アリルオキシメチル)-アルキルオキシポリオキシエチレン)アンモニウム塩(第一工業製薬株式会社製;アクアロンKH10)0.5質量部、の単量体からなる滴下用プレエマルションを調製し、120分にわたり均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて、フラスコ内の温度を80℃に維持したまま、スチレン6.0質量部、ブチルアクリレート12.5質量部、メチルメタクリレート2.5質量部、アクリル酸80質量%水溶液0.5質量部、ダイアセトンアクリルアミド1.0質量部、イオン交換水11.0質量部、α-スルホナト-ω-(1-(アリルオキシメチル)-アルキルオキシポリオキシエチレン)アンモニウム塩(第一工業製薬株式会社製;アクアロンKH10)0.5質量部の単量体からなる滴下用プレエマルションを調製し、120分にわたり均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、さらに撹拌を続けながら120分間熟成した。室温まで冷却し、不揮発分46質量%、pH9.0に調整し、酸価が7.7mg/KOHのコアシェル型のスチレンアクリル樹脂エマルション(スチレンアクリル樹脂2)を得た。前記で得られたスチレンアクリル樹脂2に含まれる樹脂のガラス転移温度は31.5℃であった。
【0111】
<測定・評価方法>
(1)塗板作製方法
(1-1)試験板(金属面)の作製方法
キシレンにより脱脂した磨き軟鋼板(SPCC-SB、150×70×0.8mm)に、塗料組成物を乾燥膜厚が45μmとなるようスプレー塗装し、乾燥し、塗膜を形成した。塗膜を室温で1週間乾燥し、目的とする試験板を得た。金属面に塗膜を備える試験板であったことから、以下では試験板(金属面)と称する。得られた試験板(金属面)を金属基材への付着性の評価に供した。また、同様に塗膜を形成し、得られた試験板(金属面)の裏面を同じ塗料でシールし、室温で1週間乾燥させた後、得られた試験板(金属面)を耐水性試験、及び耐食性試験に供した。
(1-2)試験板(パテ面)の作製方法
キシレンにより脱脂した磨き軟鋼板(SPCC-SB、150×70×0.8mm)に、ポリエステルパテ(商品名:ポリベストパテ#20AF#1、大日本塗料株式会社製)を刷毛塗装し、30μmとなるよう表面を研磨し、乾燥させた後、塗料組成物を乾燥膜厚が45μmとなるようスプレー塗装し、乾燥し、塗膜を形成した。塗膜を室温で1週間乾燥し、目的とする試験板を得た。パテ面に塗膜を備える試験板であったことから、以下では試験板(パテ面)と称する。得られた試験板(パテ面)をパテ面への付着性の評価に供した。
(2)金属基材への付着性
前記塗板作製方法により得られた試験板(金属面)の表面にカッターで切り込みを入れて、1mm角の碁盤目を100マス作り、その上に粘着テープ(セロハンテープ)を貼り付けた後、強制的に剥離する試験を行い、次の基準で評価した。
◎:塗膜の剥離は全く認められない。
○:碁盤目の淵部分に剥離が見られるが、付着性に問題はない。
×:基材部分から塗膜の剥離が認められる。
(3)パテ面への付着性
前記塗板作製方法により得られた試験板(パテ面)の表面にカッターで切り込みを入れて、1mm角の碁盤目を100マス作り、その上に粘着テープ(セロハンテープ)を貼り付けた後、強制的に剥離する試験を行い、次の基準で評価した。
◎:塗膜の剥離が全く認められない、又は碁盤目の淵部分にのみわずかな剥離が見られる。
○:碁盤目の淵部分に剥離が見られるが、付着性に問題はない。
×:基材部分から塗膜の剥離が認められる。
(4)耐水性
前記塗板作製方法により得られた試験板(金属面)を23℃の水に120時間浸漬した後、表面の水滴をふき取った直後の塗膜外観および付着性を評価した。ここでの付着性の評価は、上記(2)金属基材への付着性に従って行った。
◎:塗膜に膨れがなく、付着性の評価にも塗膜の剥離は全く認められない。
○:塗膜に膨れがなく、碁盤目の淵部分に剥離は認められるが、付着性に問題はない。
×:塗膜に膨れがある、または付着性の評価において基材部分から塗膜の剥離が認められる。
(5)耐食性
前記塗板作製方法により得られた試験板(金属面)をJIS K5600-7-1:1999の耐中性塩水噴霧性に準じて、試験板を塩水噴霧に240時間さらし、該試験板に生じたサビ、フクレ等の発生程度を下記の基準に従って評価した。
◎:塗膜表面に異常がなく、塗膜外観が優れている。
○:塗膜表面の一部にさび及び膨れ等の異常が認められる。
×:塗膜表面の全体にさび及び膨れ等の異常が認められる。
【0112】
<実施例及び比較例>
表1及び表2に示す配合処方に従い、塗料組成物を調製し、塗膜性能を評価した。結果を表1及び表2に示す。なお、表に示す配合処方における各成分の数値は「質量部」で表される。
【0113】
【0114】
【0115】
表1及び表2中、「塗料中の固形分の量(質量%)」には、塗料組成物中に含まれる固形分の量(質量%)を示す。
「(A)成分/(B)成分の質量比」には、塗料組成物中に含まれるアクリル変性エポキシ樹脂(A)とスチレンアクリル樹脂(B)の質量比(A/B)を示す。
「顔料/樹脂の質量比」には、塗料組成物中に含まれる樹脂に対する顔料の質量比を示す。
【0116】
次いで、複層膜における塗膜性能の評価を行った。複層膜は、塗料組成物3、7又は8より形成された下塗塗膜と、下塗塗膜上に、後述の上塗塗料組成物1又は2より形成された上塗塗膜を備える複層膜であった。
【0117】
<上塗塗料組成物1の調製>
容器に、アクリル変性エポキシ樹脂4(商品名:モデピクス307、荒川化学工業株式会社製、当該製品はアクリル変性エポキシ樹脂の水分散液である、不揮発分:33質量%)20質量部、スチレンアクリル樹脂1(不揮発分:48質量%)38質量部、アクリルシリコーン樹脂1(商品名:ポリデュレックス G613、旭化成ケミカルズ株式会社製、当該製品はアクリルシリコーン樹脂エマルションである、不揮発分:41.5質量%)25質量部、ウレタン樹脂1(商品名:ラックコート WU-412、セイコー化成株式会社製、当該製品はウレタン樹脂エマルションである、不揮発分:33質量%)2.0質量部、酸化チタン5.0質量部、無機黄色顔料1.0質量部、沈降防止剤1.0質量部、消泡剤0.5質量部、表面調整剤0.5質量部、成膜助剤2.0質量部、水5.0質量部を順次仕込み、公知の製造方法により、上塗塗料組成物1(不揮発分:42.5質量%)を調製した。
【0118】
<上塗塗料組成物2の調製>
アクリル変性エポキシ樹脂4を使用せず、スチレンアクリル樹脂1を51.75質量部、水を11.25質量部に変更した以外は、上塗塗料組成物1と同様の製造方法により、上塗塗料組成物2(不揮発分:42.5質量%)を調製した。
【0119】
<複層膜における測定・評価方法>
(1)塗板作製方法
(1-1)試験板(金属面)の作製方法
キシレンにより脱脂した磨き軟鋼板(SPCC-SB、150×70×0.8mm)に、下塗塗料組成物を乾燥膜厚が45μmとなるようスプレー塗装し、乾燥し、下塗塗膜を形成した。下塗塗膜を形成した試験板に、前記方法で調整した上塗塗料組成物を乾燥膜厚が35μmとなるようにスプレー塗装し、上塗塗膜を形成した。得られた2層の塗膜を室温で1週間乾燥し、目的とする試験板を得た。金属面に塗膜を備える試験板であったことから、以下では試験板(金属面)と称する。得られた試験板(金属面)を金属基材への付着性の評価に供した。また、同様に2層の塗膜を形成し、得られた試験板(金属面)の裏面を下塗塗料として用いた塗料と同じ塗料でシールし、室温で1週間乾燥させた後、得られた試験板(金属面)を耐水性試験、耐食性、及び耐候性試験に供した。
(1-2)試験板(パテ面)の作製方法
キシレンにより脱脂した磨き軟鋼板(SPCC-SB、150×70×0.8mm)に、ポリエステルパテ(商品名:ポリベストパテ#20AF#1、大日本塗料株式会社製)を刷毛塗装し、30μmとなるよう表面を研磨し、乾燥させた後、下塗塗料組成物を乾燥膜厚が45μmとなるようスプレー塗装し、乾燥し、下塗塗膜を形成した。下塗塗膜を形成した試験板に、前記方法で調整した上塗塗料組成物を乾燥膜厚が35μmとなるようにスプレー塗装し、上塗塗膜を形成した。得られた2層の塗膜を室温で1週間乾燥し、目的とする試験板を得た。パテ面に塗膜を備える試験板であったことから、以下では試験板(パテ面)と称する。得られた試験板(パテ面)をパテ面への付着性の評価に供した。
(2)金属基材への付着性
前記塗板作製方法により得られた試験板(金属面)の表面にカッターで切り込みを入れて、2mm角の碁盤目を100マス作り、その上に粘着テープ(セロハンテープ)を貼り付けた後、強制的に剥離する試験を行い、次の基準で評価した。
◎:塗膜の剥離は全く認められない。
○:碁盤目の淵部分に剥離が見られるが、付着性に問題はない。
×:基材部分から塗膜の剥離が認められる。
(3)パテ面への付着性
前記塗板作製方法により得られた試験板(パテ面)の表面にカッターで切り込みを入れて、2mm角の碁盤目を100マス作り、その上に粘着テープ(セロハンテープ)を貼り付けた後、強制的に剥離する試験を行い、次の基準で評価した。
◎:塗膜の剥離が全く認められない、又は碁盤目の淵部分にのみわずかな剥離が見られる。
○:碁盤目の淵部分に剥離が見られるが、付着性に問題はない。
×:基材部分から塗膜の剥離が認められる。
(4)耐水性
前記塗板作製方法により得られた試験板(金属面)を23℃の水に120時間浸漬した後、表面の水滴をふき取った直後の塗膜外観および付着性を評価した。
◎:塗膜に膨れがなく、付着性の評価にも塗膜の剥離は全く認められない。
○:塗膜に膨れがなく、碁盤目の淵部分に剥離は認められるが、付着性に問題はない。
×:塗膜に膨れがある、または基材部分から塗膜の剥離が認められる。
(5)耐食性
前記塗板作製方法により得られた試験板(金属面)をJIS K5600-7-1:1999の耐中性塩水噴霧性に準じて、試験板を塩水噴霧に240時間さらし、該試験板に生じたサビ、フクレ等の発生程度を下記の基準に従って評価した。
◎:塗膜表面に異常がなく、塗膜外観が優れている。
○:塗膜表面の一部にさび及び膨れ等の異常が認められる。
×:塗膜表面の全体にさび及び膨れ等の異常が認められる。
(6)耐候性
前記塗板作製方法により得られた試験板(金属面)をJIS K 5600-7-7の塗膜の長期耐久性、促進耐候性及び促進耐光性(キセノンランプ法)のサイクルAに準じて試験した後の塗膜の光沢保持率及び塗膜の外観を目視で判定した。なお、光沢保持率は、BYKガードナー社製の光沢計(BYKガードナー・マイクロ-グロス)によって試験前後の塗膜の60°鏡面光沢度を測定し、以下の式によって算出した。
※光沢保持率(%)= 試験後の塗膜の鏡面光沢度(60°)/試験前の塗膜の鏡面光沢度(60°)×100
◎:試験時間2000時間での光沢保持率が80%以上であった。
○:試験時間500時間での光沢保持率が80%以上、試験時間2000時間での光沢保持率が80%未満であった。
×:試験時間500時間での光沢保持率が80%未満であった。
【0120】
<実施例及び比較例>
表3に示す塗料の組み合わせに従い、下塗塗料組成物と上塗塗料組成物を用いて複層膜を形成し、複層膜について塗膜性能を評価した。結果を表3に示す。
【0121】
【0122】
表3中、下塗塗料について、「(A)成分/(B)成分の質量比」には、下塗塗料組成物中に含まれるアクリル変性エポキシ樹脂(A)とスチレンアクリル樹脂(B)の質量比(A/B)を示し、「顔料/樹脂の質量比」には、下塗塗料組成物中に含まれる樹脂に対する顔料の質量比を示す。
また、上塗塗料について、「アクリル変性エポキシ樹脂の含有量(質量%)」には、上塗塗料組成物の固形分中に含まれるアクリル変性エポキシ樹脂の量(質量%)を示し、「顔料/樹脂の質量比」には、上塗塗料組成物中に含まれる樹脂に対する顔料の質量比を示す。