(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175940
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】摘み取り装置
(51)【国際特許分類】
A01D 46/30 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
A01D46/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094054
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】川口 学
(72)【発明者】
【氏名】武居 直行
【テーマコード(参考)】
2B075
【Fターム(参考)】
2B075JD08
2B075JD19
2B075JD21
2B075JF05
2B075JF06
(57)【要約】
【課題】摘芯作業が可能な摘み取り装置を提供すること。
【解決手段】
植物の摘み取り対象部(6b)に対して接近または離間する第1の指部(31)と、第1の指部(31)と共に移動可能であって、摘み取り対象部(6b)に接近する方向に移動するにつれて第1の指部(31)との間隔が相対的に拡大する第2の指部(32)と、第1の指部(31)および第2の指部(32)の少なくとも一方に支持された把持補助部(33)であって、伸縮可能に構成され且つ縮むにつれて第2の方向に膨出する把持補助部(33)と、を備えた摘み取り装置(3)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の摘み取り対象部に対して接近または離間する第1の方向に沿って延び且つ前記第1の方向に沿って移動可能な第1の指部と、
前記第1の方向に沿って延び且つ前記第1の指部と共に前記第1の方向に沿って移動可能な第2の指部であって、前記第1の方向に沿って前記摘み取り対象部に接近する方向に移動するにつれて前記第1の指部との間隔が相対的に拡大する前記第2の指部と、
前記第1の指部および前記第2の指部の少なくとも一方に支持された把持補助部であって、前記第1の方向に対して伸縮可能に構成され且つ前記第1の方向に対して縮むにつれて前記第1の方向に交差する第2の方向に膨出する前記把持補助部と、
を備えたことを特徴とする摘み取り装置。
【請求項2】
前記第1の指部および前記第2の指部の少なくとも一方が内部を貫通する中空筒状に形成され、且つ、前記第1の方向および前記第2の方向に弾性変形可能なゴム材で構成された前記把持補助部、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の摘み取り装置。
【請求項3】
前記第1の指部および前記第2の指部の少なくとも一方が内部を貫通する中空の蛇腹で構成された前記把持補助部、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の摘み取り装置。
【請求項4】
前記第1の方向に対して前記摘み取り対象部から離間した位置に配置され、前記第1の指部と前記第2の指部で把持された前記摘み取り対象部を切断する切断部材、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の摘み取り装置。
【請求項5】
前記摘み取り対象部が収容可能な第1の収容部と、植物の摘み取り非対象部が収容可能な第2の収容部と、前記第1の収容部と前記第2の収容部とを仕切る仕切り部と、を有する仕切り部材、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の摘み取り装置。
【請求項6】
前記第2の方向に沿って、前記第1の指部と前記第2の指部の向きを変更可能な向き変更機構、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の摘み取り装置。
【請求項7】
植物の摘み取り対象部が収容可能な第1の収容部と、植物の摘み取り非対象部が収容可能な第2の収容部と、前記第1の収容部と前記第2の収容部とを仕切る仕切り部と、を有する仕切り部材と、
前記第1の収容部の摘み取り対象部を摘み取る摘み取り部と、
前記摘み取り部を作動させる摘み取り機構と、
を備えたことを特徴とする摘み取り装置。
【請求項8】
前記摘み取り対象部を切断する切断刃を有する前記摘み取り部と、
前記切断刃を前記摘み取り対象部から離間した離間位置と、前記摘み取り対象部を切断する切断位置との間で移動させる前記摘み取り機構と、
を備えたことを特徴とする請求項7に記載の摘み取り装置。
【請求項9】
前記切断刃の厚さ方向の側面に支持され、前記摘み取り対象部と前記摘み取り非対象部との隙間を大きくする切断補助部、
を備えたことを特徴とする請求項8に記載の摘み取り装置。
【請求項10】
前記切断刃と一体的に移動可能に支持され、前記離間位置と前記切断位置との間の押さえ位置において前記摘み取り対象部に接触して前記仕切り部材との間で前記摘み取り対象部を押さえる押さえ部材、
を備えたことを特徴とする請求項8または9に記載の摘み取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の不要な枝や芽、蕾等を摘み取るための摘み取り装置に関し、特に、農作業ロボットによって芽摘みや間引きを行う際に好適に使用可能な摘み取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業も機械化が進んでおり、農作業ロボットの研究、開発も進んでいる。農作業用のロボットとして、成長した野菜や果物等の摘み取り作業(収穫作業)を行う装置として、特許文献1,2が従来公知である。
【0003】
特許文献1(特許第6894586号公報)には、ピーマン等の農作物を収穫する装置において、外表面に歯型(凹凸)(10a)が形成された無端ベルト(10)が左右一対配置され、一対の無端ベルト(10)の間に丸刃(13)が配置されており、無端ベルト(10)の回転に伴って、無端ベルト(10)の間に挟まれた農作物(C)の果梗(FS)を丸刃(13)で切断する装置が記載されている。
【0004】
特許文献2(特開2022-63393号公報)には、アスパラガス等の柱状の収穫物を、左右一対の把持部材(11,12)の間で把持し、左右一対の刃部材(51,52)を回転、揺動させて把持された収穫物を切断する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6894586号公報(「0017」-「0037」(特に、「0023」、「0027」)、
図1-
図5)
【特許文献2】特開2022-63393号公報(「0012」-「0044」(特に、「0013」-「0014」、「0034」)、
図1-
図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(従来技術の問題点)
菊やバラ等の商品作物(植物、花き)の生産、栽培において、作物の収量と品質の最大化に向けて、栄養分を適切に分配させる目的で、主茎と側枝の間から延びる脇芽を摘み取る作業(摘芯作業)が行われている。
特許文献1のような棒状の果梗や特許文献2のようなアスパラガスのように、一本ずつ独立した棒状、柱状の部分の途中を切断する作業に対して、対象とする摘芯作業は、主茎と側枝の間から芽生える脇芽を根元から摘み取るため、摘み取り対象(脇芽)の近傍に非対象が存在する状態での作業になる。すなわち、摘芯作業を行う際には、摘み取り部(離断部ないしは切断部)を摘み取る作業空間が、摘み取り部が1本ずつ独立している特許文献1,2に比べて狭く、この狭い部位に指状の部分を差し込む必要がある。したがって、特許文献1,2に記載の技術で摘芯を行おうとすると、一対の無端ベルトや把持部材が大きすぎて、脇芽等の部分に先端部を差し込むことが困難であり、強引に差し込むと、摘み取り非対象の部分を傷つける問題がある。作物に限らず傷がつくと、病気を誘発させたり、成長を鈍化させる恐れもある。
【0007】
特に、特許文献1では、外表面が歯型の無端ベルトを使用しており、ベルトに砂が絡み機能しなくなるトラブルが発生する恐れがある。したがって、メンテナンスが面倒であると共に、水耕(栽培)や環境整備された施設内での生産への適用に限定される問題もある。
【0008】
本発明は、摘芯作業が可能な摘み取り装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の摘み取り装置は、
植物の摘み取り対象部に対して接近または離間する第1の方向に沿って延び且つ前記第1の方向に沿って移動可能な第1の指部と、
前記第1の方向に沿って延び且つ前記第1の指部と共に前記第1の方向に沿って移動可能な第2の指部であって、前記第1の方向に沿って前記摘み取り対象部に接近する方向に移動するにつれて前記第1の指部との間隔が相対的に拡大する前記第2の指部と、
前記第1の指部および前記第2の指部の少なくとも一方に支持された把持補助部であって、前記第1の方向に対して伸縮可能に構成され且つ前記第1の方向に対して縮むにつれて前記第1の方向に交差する第2の方向に膨出する前記把持補助部と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の摘み取り装置において、
前記第1の指部および前記第2の指部の少なくとも一方が内部を貫通する中空筒状に形成され、且つ、前記第1の方向および前記第2の方向に弾性変形可能なゴム材で構成された前記把持補助部、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の摘み取り装置において、
前記第1の指部および前記第2の指部の少なくとも一方が内部を貫通する中空の蛇腹で構成された前記把持補助部、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の摘み取り装置において、
前記第1の方向に対して前記摘み取り対象部から離間した位置に配置され、前記第1の指部と前記第2の指部で把持された前記摘み取り対象部を切断する切断部材、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の摘み取り装置において、
前記摘み取り対象部が収容可能な第1の収容部と、植物の摘み取り非対象部が収容可能な第2の収容部と、前記第1の収容部と前記第2の収容部とを仕切る仕切り部と、を有する仕切り部材、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の摘み取り装置において、
前記第2の方向に沿って、前記第1の指部と前記第2の指部の向きを変更可能な向き変更機構、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
前記技術的課題を解決するために、請求項7に記載の発明の摘み取り装置は、
植物の摘み取り対象部が収容可能な第1の収容部と、植物の摘み取り非対象部が収容可能な第2の収容部と、前記第1の収容部と前記第2の収容部とを仕切る仕切り部と、を有する仕切り部材と、
前記第1の収容部の摘み取り対象部を摘み取る摘み取り部と、
前記摘み取り部を作動させる摘み取り機構と、
を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の摘み取り装置において、
前記摘み取り対象部を切断する切断刃を有する前記摘み取り部と、
前記切断刃を前記摘み取り対象部から離間した離間位置と、前記摘み取り対象部を切断する切断位置との間で移動させる前記摘み取り機構と、
を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の摘み取り装置において、
前記切断刃の厚さ方向の側面に支持され、前記摘み取り対象部と前記摘み取り非対象部との隙間を大きくする切断補助部、
を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項8または9に記載の摘み取り装置において、
前記切断刃と一体的に移動可能に支持され、前記離間位置と前記切断位置との間の押さえ位置において前記摘み取り対象部に接触して前記仕切り部材との間で前記摘み取り対象部を押さえる押さえ部材、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1,7に記載の発明によれば、摘芯作業が可能な摘み取り装置を提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、弾性変形可能なゴム材で構成された把持補助部で摘み取り対象部を安定して把持できる。
請求項3に記載の発明によれば、蛇腹で構成された把持補助部で摘み取り対象部を安定して把持できる。
請求項4に記載の発明によれば、2つの指部で把持された摘み取り対象部を切断部材で切断することで、摘み取り対象部を摘み取って、摘芯作業を行うことができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、仕切り部材を有しない場合に比べて、摘み取り非対象部に指部が誤って接触することが低減され、摘み取り非対象部の傷を抑制できる。
請求項6に記載の発明によれば、向き変更機構で指部の向きを変更できない場合に比べて、様々な位置や向きの摘み取り対象部に対応しやすくなる。
請求項8に記載の発明によれば、摘み取りにくい場合は、切断刃で切断することで、摘み取り対象部を摘み取って、摘芯作業を行うことができる。
請求項9に記載の発明によれば、摘み取り対象部と摘み取り非対象部との隙間が狭い場合でも、切断補助部で隙間を広げて切断できる。
請求項10に記載の発明によれば、押さえ部材で摘み取り対象部を押さえない場合に比べて、摘み取り対象部を安定して切断できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は本発明の実施例1のロボットの概略説明図である。
【
図2】
図2は実施例1の摘み取り装置の説明図である。
【
図3】
図3は実施例1の摘み取り装置の先端部の説明図であり、
図3Aは向き変更機構が中央の収容部に向いた状態の説明図、
図3Bは向き変更機構が右側の収容部に向いた状態の説明図、
図3Cは
図3Bの状態から指部が進出位置に移動した状態の説明図である。
【
図4】
図4は実施例1の指部の説明図であり、
図4Aは進出位置に移動した状態の説明図、
図4Bは引込位置に移動した状態の説明図である。
【
図5】
図5は実施例1の変形例1の説明図であり、
図5Aは指部が進出位置に移動した状態の説明図、
図5Bは指部が引込位置に移動した状態の説明図である。
【
図6】
図6は実施例1の変形例2の説明図であり、
図6Aは指部が進出位置に移動した状態の説明図、
図6Bは
図6Aの状態から指部が引込位置に向けて移動する途中の説明図、
図6Cは
図6Bの状態から指部が引込位置に向けてさらに移動した状態の説明図である。
【
図7】
図7は実施例2の摘み取り装置の説明図であり、実施例1の
図2に対応する図である。
【
図8】
図8は実施例2の摘み取り装置の刃部の要部説明図である。
【
図9】
図9は実施例2の摘み取り装置の作用説明図であり、
図9Aは摘み取り対象部を櫛部に挿入した状態で切断する場合の説明図、
図9Bは摘み取り対象部を櫛部に挿入しない状態で切断する場合の説明図である。
【
図10】
図10は実施例2の変形例1の摘み取り装置の説明図であり、実施例2の
図7に対応する図である。
【
図11】
図11は実施例2の変形例1の摘み取り装置の作用説明図であり、
図11Aは摘み取り部が離間位置に移動した状態の説明図、
図11Bは摘み取り部が
図11Aの状態から押さえ位置に移動した状態の説明図、
図11Cは摘み取り部が
図11Bの状態から切断位置に移動した状態の説明図、
図11Dは摘み取り部が
図11Cの状態から押さえ位置に移動した状態の説明図である。
【
図12】
図12は実施例2の変形例2の摘み取り装置の説明図であり、実施例2の
図7に対応する図である。
【
図13】
図13は実施例1の
図3に対応する実施例3の摘み取り装置の説明図であり、
図13Aは押さえ部が摘み取り対象に接触前の状態の説明図、
図13Bは押さえ部が摘み取り対象に接触した状態の説明図、
図13Cは
図13Bの状態から首振りアームの向きが調整された状態の説明図、
図13Dは
図13Cの状態から触覚指が前進して開いた状態の説明図である。
【
図14】
図14は実施例1の
図3に対応する実施例4の摘み取り装置の説明図であり、
図14Aは摘み取り対象に対して摘み取り装置が対向した状態の説明図、
図14Bは首振りアームの向きが調整された状態の説明図、
図14Cは
図14Bの状態から触覚指が前進した状態の説明図、
図14Dは
図14Cの状態から触覚指が摘み取り対象を押さえた後に後退し始めた状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例(以下、実施例と記載する)を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例0023】
図1は本発明の実施例1のロボットの概略説明図である。
図1において、本発明のロボットの一例としての実施例1の摘み取り作業システムSは、カメラ1と、メインアーム2と、メインアーム2の先端に支持された摘み取り装置3と、制御装置(コントローラ)4と、を有する。
カメラ1は、作物(植物)の一例としての菊6を撮像して、制御装置4に信号を入力する。
制御装置4は、カメラ1で撮影された画像を解析し、非摘み取り対象の主茎6aや摘み取り対象の蕾6bの位置を解析する。
制御装置4のディスプレイ4aに表示された画像を確認した作業者が、マウス4bやキーボード4c等で摘み取る蕾6bが指定された場合、メインアーム2や摘み取り装置3に制御信号を送信する。
メインアーム2は多関節のアームにより構成されており、関節部分にモータ(図示せず)が組み込まれている。メインアーム2は、制御装置4からの制御信号に応じてモータが回転して、先端の摘み取り装置3の位置を摘み取り対象の蕾6bの位置に移動させる。
【0024】
(摘み取り装置3の説明)
図2は実施例1の摘み取り装置の説明図である。
摘み取り装置3は、筐体部の一例としてのハウジング11を有する。ハウジング11の基端部11aはメインアーム2の先端に接続されている。基端部11aの前方には、第1の駆動源の一例としての進退モータ12が支持されている。進退モータ12は、正逆回転可能なモータで構成されており、制御装置4からの制御信号が入力されて、正回転、逆回転、停止が制御される。進退モータ12の出力軸には、第1の伝達部材の一例としての第1の出力ギア13が支持されている。
【0025】
第1の出力ギア13の下方には、第1の作動部材の一例としての進退スライダ14が配置されている。進退スライダ14は、ハウジング11に対して長手方向(菊6に接近または離間する方向)に沿って移動可能に支持されている。進退スライダ14の上面には、第1の被伝達部材の一例としてのラック歯14aが形成されている。ラック歯14aは第1の出力ギア13に噛み合っている。したがって、進退モータ12の正逆回転に伴って、第1の出力ギア13とラック歯14aを介して、進退スライダ14が菊6に接近または離間する方向に移動する。
前記進退モータ12や第1の出力ギア13、進退スライダ14、ラック歯14a等により、摘み取り部(後述する触覚指31,32)を作動させる実施例の摘み取り機構が構成されている。
進退スライダ14には、指部の一例としてのワイヤ16が支持されている。ワイヤ16については後述する。
【0026】
図2において、第1の出力ギア13の前方には、第2の駆動源の一例としての首振りモータ17が配置されている。首振りモータ17は、正逆回転可能なモータで構成されており、制御装置4からの信号が入力されて正回転、逆回転、停止が制御される。なお、進退モータ12や首振りモータ17と制御装置4との接続は、有線で行うことも可能であるし、無線で行うことも可能である。
首振りモータ17の出力軸には、第2の伝達部材の一例としての第2の出力ギア18が支持されている。実施例1の第2の出力ギア18は、いわゆる、傘歯車(ベベルギア)で構成されている。
【0027】
図3は実施例1の摘み取り装置の先端部の説明図であり、
図3Aは向き変更機構が中央の収容部に向いた状態の説明図、
図3Bは向き変更機構が右側の収容部に向いた状態の説明図、
図3Cは
図3Bの状態から指部が進出位置に移動した状態の説明図である。
図2、
図3において、首振りモータ17の前方には、揺動体の一例としての首振りアーム21を有する。首振りアーム21は、基端部21aを中心に回転可能に支持されている。首振りアーム21の基端部21aの上面には、第2の被伝達部材の一例としての首振りギア22が支持されている。首振りギア22には、第2の出力ギア18が噛み合っている。したがって、首振りモータ17の正逆回転に伴って、第2の出力ギア18と首振りギア22を介して、首振りギア22が基端部21aを中心として回転する。
【0028】
図2において、首振りアーム21は、前方に延びる中空の筒状に形成されており、内部を前記ワイヤ16が貫通している。首振りアーム21が基端部21aを中心に回転する際に、ワイヤ16は首振りアーム21と共に弾性変形して、前端部の向きが変化する。
前記首振りモータ17や第2の出力ギア18、首振りアーム21、首振りギア22等により、実施例1の向き変更機構20が構成されている。
首振りアーム21の先端部には、ワイヤ16の下方に近接して、切断部材の一例としてのカッター23が支持されている。実施例1のカッター23は円板状に形成されており、円板の外周部に刃が形成されている。
【0029】
図3において、ハウジング11の前端部には、首振りアーム21の下方に、仕切り部材の一例としての櫛部26が支持されている。櫛部26は、3つの収容部27a,27b,27cが幅方向に並んで配置されており、3つの収容部27a~27cは、仕切り部の一例としての櫛歯部28a,28b,28c,28dで仕切られている。
なお、各収容部27a~27cは、首振りアーム21の回転時に、カッター23の外周部が収容部27a~27cの凹みの底の部分よりも外側に位置するように、すなわち、ワイヤー16で引き込まれる蕾6bがカッターに接触するように、収容部27a~27cの凹みの大きさ(凹みの深さ)が設定されている。
各櫛歯部28a~28dの先端部には、収容部27a~27cの内側に向けて膨出するように、揺れ抑制部材の一例としての弾性体板29が支持されている。弾性体板29は、一例として厚さ0.3mm程度の薄い板状、フィルム状の部材で構成可能である。弾性体板29は設けることが望ましいが、設けない構成とすることも可能である。
【0030】
なお、3つの収容部27a~27cの内、いずれか1つの収容部に蕾6bを収容し、残りの収容部の中の1つに主茎6aを収容することで、摘み取り対象部である蕾6bと摘み取り非対象部である主茎6aとを、櫛部26で仕切ることが可能である。実施例1では、中央の収容部(第2の収容部の一例)27bに主茎6aを収容し、蕾6bの主茎6aに対する位置に応じて、左右のいずれかの収容部(第1の収容部の一例)27a,27cに蕾6bを収容するように、制御装置4でメインアーム2が制御される。実施例1では、中央の収容部27bに摘み取り非対象部である主茎6aを収容する場合を例示したが、これに限定されず、中央の収容部27bに摘み取り対象部である蕾6bを収容し、左右の収容部27a,27cに摘み取り非対象部である主茎6a(や残す蕾)を収容する形態とすることも可能である。また、収容部27a~27cは3つ設ける構成を例示したが、これに限定されず、1つまたは2つまたは4つ以上とすることも可能である。すなわち、櫛歯部28a~28dの数も4つに限定されず、3つ以下または5つ以上とすることも可能であり、後述する実施例3のように櫛歯部28a~28dに相当する部位を、後述する実施例4のように1つとしたり、全く設けない構成とすることも可能である。
【0031】
図4は実施例1の指部の説明図であり、
図4Aは進出位置に移動した状態の説明図、
図4Bは引込位置に移動した状態の説明図である。
図2~
図4において、実施例1のワイヤ16は、第1の指部の一例としての第1の触覚指31と、第2の指部の一例としての第2の触覚指32とを有する。第1の触覚指31と第2の触覚指32とは、対向して左右一対配置されている。左右一対の触覚指31,32により、実施例1の摘み取り部が構成されている。
また、第1の触覚指31と第2の触覚指32の先端部には、爪部31a,32aが形成されており、爪部31a,32aは、互いに内向きに折れ曲がった形状に形成されている。
【0032】
実施例1では、第1の触覚指31には、把持補助部の一例としてのゴムチューブ33が支持されている。実施例1のゴムチューブ33は、内部を第1の触覚指31が貫通する中空筒状のゴム材で構成されている。したがって、ゴムチューブ33は、第1の触覚指31の長手方向(第1の方向の一例、進退方向)に沿って弾性変形、伸縮可能に構成されている。したがって、ゴムチューブ33は、長手方向に縮むと、径方向(第2の方向の一例)に膨出するように弾性変形したり、蛇腹状(アコーディオン状)に弾性変形することとなる。なお、蛇腹状に変形した場合も、外径は、変形前よりも大きくなる(すなわち、膨出した状態となる)。
実施例1では、第1の触覚指31のみにゴムチューブ33を設ける構成を例示したが、これに限定されず、両方の触覚指31,32に設けることも可能であるし、第2の触覚指32のみにゴムチューブ33を設ける構成とすることも可能である。
【0033】
図4Aにおいて、実施例1の第1の触覚指31と第2の触覚指32とは、進退スライダ14が前方に移動した状態では、首振りアーム21の先端21bから触覚指31,32が突出した進出位置に移動する。実施例1の触覚指31,32は形状記憶合金で構成されており、進出位置において互いの間隔が広がるように、形状記憶がされている。なお、形状記憶合金での構成に限定されず、触覚指31,32の間に触覚指31,32どうしを開く方向に付勢するバネを介在させたり、触覚指31,32をワイヤでなく板状の部材で構成して板バネの弾性力で触覚指31,32どうしの間隔が広がるように構成することも可能である。
なお、
図4Aに示す進出位置では、ゴムチューブ33は、
図4Aに示すように弾性復元で自然長の状態となり、第1の触覚指31の長手方向の大部分を覆った状態となる。
【0034】
図4Bにおいて、進退スライダ14が後方に移動すると、首振りアーム21に触覚指31,32のほとんどが収容され、爪部31a,32aどうしの内側に摘み取り対象を囲い込む形で把持する引込位置に移動する。
図4Bにおいて、引込位置では、爪部31a,32aは、カッター23の位置まで移動するように設定されており、引き込まれた蕾6bをカッター23で切断可能となるように設定されている。
図4Bに示す引込位置では、ゴムチューブ33は、第1の触覚指31の爪部31aと首振りアーム21の先端21bとの間で長手方向から圧縮され、縮んだ状態となる。したがって、
図4Bに示すように、ゴムチューブ33の径方向の大きさが、
図4Aに示す状態に比べて、大きくなる(膨出した状態となる)。
図4A、
図4Bにおいて、触覚指31,32の進退時に首振りアーム21と接触、摺擦される箇所には、ベアリングやプーリ、滑車等の摺擦を低減する部材を設置したり、首振りアーム21の接触面をフッ素樹脂等の低摩擦材料でコーティング(被膜形成)したりすることが好ましい。
【0035】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の摘み取り作業システムSでは、菊6の不要な蕾6bを摘み取る作業が行われる場合、櫛部26の中央の収容部27bに菊6の主茎6a(または残す蕾(摘み取らない蕾))が収容され且つ左右の収容部27a,27cのいずれかに蕾6bが収容された状態となるように、メインアーム2が制御装置4で制御される。収容部27a,27cに蕾6bが収容された状態となると、首振りモータ17が作動して首振りアーム21が回転し、ワイヤ16の先端が蕾6bに向く位置で首振りアーム21が停止する。次に、進退モータ12が正回転して進退スライダ14が前方に移動し、ワイヤ16の触覚指31,32が開きながら蕾6bに接近していく。この時、縮んでいたゴムチューブ33も伸長していく。ワイヤ16が限界まで進出すると、触覚指31,32の間に蕾6bが挟まれた状態となる。
【0036】
そして、進退モータ12が逆回転して進退スライダ14が後方に移動すると、ワイヤ16が後退し、触覚指31,32が首振りアーム21に収容されていき、開いていた触覚指31,32が閉じていく。したがって、ワイヤ16を後退させることで、ワイヤ16の移動方向に対して法線方向に触覚指31,32を移動させる力を作用させ、蕾6bを把持する力を作用させる。したがって、実施例1では、引き込み方向に対する法線方向に蕾6bを把持する力は、形状記憶されたワイヤ16の弾性力で形成され、引き込み力とは独立している。よって、蕾6の把持力を作用させる専用の部材や機構を設けることなく、蕾6bを把持する力を作用させることが可能である。
さらにワイヤ16が後退すると、爪部31a,32aで蕾6bが把持された状態で引き込まれ、カッター23で切断されることで、蕾6bが摘み取られる(摘芯される)。
【0037】
ここで、蕾6bが引き込まれる際に、ゴムチューブ33は蕾6bに接触する。したがって、ワイヤ16のみの場合に比べて、蕾6bとゴムチューブ33との接触で接触面積が増大すると共に、ゴムチューブ33と蕾6bとの間の摩擦力も増大する。ここで、ゴムチューブ33が弾性変形する際に樽型形状に変形する場合や蛇腹状(アコーディオン状)に変形する場合がある。樽型に変形する場合は、蕾6bとゴムチューブ33との密着力が強くなりやすく、摩擦力が増大しやすい。また、アコーディオン状の場合でも、軸方向に対して複数の凹凸が存在する形となり、蕾6bに引っ掛かる形で把持が強く、安定しやすくなる。したがって、ゴムチューブ33を設けない場合に比べて、蕾6bがより確実に引き込まれやすくなる。よって、摘芯作業を安定して行うことが可能である。
また、蕾6bが引き込まれる際に、ゴムチューブ33は、軸方向に圧縮されていき、圧縮に伴い径方向に膨出していく。したがって、ゴムチューブ33が蕾6bに接触する力、すなわち、蕾6bをワイヤ16で保持、把持する力が大きくなる。よって、ゴムチューブ33を有しない場合に比べて、蕾6bがより確実に把持され、引き込まれる。
【0038】
さらに、実施例1では、櫛部26で摘み取り対象部である蕾6bと摘み取り非対象部である主茎6aとが仕切られた状態で摘み取られる。したがって、摘み取り非対象部が誤って摘み取られたり、摘み取り非対象部に傷が付いたりすることが抑制される。また、櫛部26の収容部27a~27cに蕾6bが収容されることで、蕾6bの揺れが櫛歯部28a~28dで規制される。したがって、櫛歯部28a~28dを有しない場合に比べて、蕾6bの揺れが抑制され、触覚指31,32で把持しやすくなる。特に、実施例1では、弾性体板29が設けられており、収容部27a~27cに進入した蕾6bに弾性体板29が接触して、蕾6bの揺れがさらに抑えられる。よって、触覚指31,32で蕾6bがさらに把持されやすくなる。
【0039】
また、実施例1では、触覚指31,32がワイヤで構成されており、細いため、狭い場所にも進入可能である。したがって、従来構成に比べて、狭い空間にある摘み取り対象部や小さい摘み取り対象部でも摘み取ることが可能であり、周囲の摘み取り非対象部を傷つける可能性も低くなっている。なお、実施例1では、蕾6bの根元から摘み取る場合、すなわち、櫛部26や触覚指31,32を蕾6bの根元部分まで差し込んで摘芯作業を行う場合を例示したが、これに限定されない。蕾の根元ではなく先端の部分を摘み取る(折り取る)作業を行うことも可能である。
【0040】
(実施例1の変形例1)
図5は実施例1の変形例1の説明図であり、
図5Aは指部が進出位置に移動した状態の説明図、
図5Bは指部が引込位置に移動した状態の説明図である。
図4に示した把持補助部の一例としてのゴムチューブ33に替えて、
図5に示すように、内部を第1の触覚指31が貫通する中空の蛇腹41とすることが可能である。
実施例1の変形例1の蛇腹41は、一例として樹脂材で構成されており、
図5Aに示す自然長状態と、
図5Bに示す圧縮状態との間で弾性変形可能に構成されている。したがって、変形例の蛇腹41でも、ゴムチューブ33と同様に、自然長状態では、第1触覚指31を覆った状態になると共に、圧縮状態では、径方向に膨出して蕾6bの把持を補助することが可能である。
なお、蛇腹41自体は弾性変形不能で、内部にコイルバネ等を内蔵して伸縮可能な構成とすることも可能である。
【0041】
(実施例1の変形例2)
図6は実施例1の変形例2の説明図であり、
図6Aは指部が進出位置に移動した状態の説明図、
図6Bは
図6Aの状態から指部が引込位置に向けて移動する途中の説明図、
図6Cは
図6Bの状態から指部が引込位置に向けてさらに移動した状態の説明図である。
実施例1の平行に延びる第1の触覚指31と第2の触覚指32に替えて、
図6に示すように実施例1の変形例2では、摘み取り部の一例としての第1の触覚指46と第2の触覚指47とが、首振りアーム21の出口の部分で交差するように配置されている。すなわち、第1の触覚指46の前端部には、第2の触覚指47側に曲げられた第1の交差曲げ部46aと、第1の交差曲げ部46aよりも前端側且つ第1の交差曲げ部46aとは反対向きに曲げられた第1の先端曲げ部46bとを有する。第2の触覚指47は、第1の触覚指46とは左右対称の第2の交差曲げ部47aと第2の先端曲げ部47bとを有する。
【0042】
したがって、進退スライダ14が前方に移動すると、
図6Aに示すように、進出位置では、各触覚指46,47は、形状記憶により前方が開いた状態となる。したがって、触覚指46,47の間に蕾6bが収容可能である。また、この時、ゴムチューブ33も自然長の状態となる。
次に、進退スライダ14が後方に移動を開始すると、
図6Bに示すように、先端曲げ部46b,47bが首振りアーム21の出口に接触して内側に押されるように弾性変形する。したがって、触覚指46,47の前端が閉じ、蕾6bが挟まれた状態となる。
そして、進退スライダ14がさらに後方に移動して触覚指46,47がさらに後方に引き込まれると、
図6Cに示すように、先端曲げ部46b,47bよりも先端側は内側に閉じる方向に自然に向く。よって、蕾6bを把持する力がさらに向上する。また、このとき、ゴムチューブ33も縮むと共に径方向に膨出するように変形し、蕾6bを拘束する力(把持する力)が増大する。
【0043】
したがって、実施例1の変形例2では、実施例1よりもさらに、安定して蕾6bを引き込むことが可能であり、安定した摘芯作業が可能である。特に、実施例1の変形例2では、触覚指46,47を交差させた形状とすることで、形状記憶した形状を維持しやすい。
また、触覚指46,47を交差させることで、進出位置において、触覚指46,47どうしの開閉時の開き角を、実施例1に比べて大きく取りやすくでき、進出量(触覚指46,47の前方への移動量、ストローク)が少なくても、蕾6bを内側に収容、把持しやすくなっている。すなわち、少ないストロークで蕾6bを把持可能である。
従って、実施例2の摘み取り装置3′でも、蕾6bを摘み取る摘芯作業が可能である。なお、蕾6bの切断に限定されず、側枝の切断(いわゆる、枝打ちないしは剪定)も可能である。
また、実施例2では、切断補助部57が配置されており、刃部56(刃先)が進入する際に、切断補助部57が主茎6aと蕾6bとの隙間を広げる(押しのける)ように機能する。したがって、主茎6aと蕾6bとの成す角が小さい場所でも、角度を大きくした状態において刃部56で切断可能であり、蕾6bを確実に摘み取りやすくなる。
さらに、実施例2の切断補助部57は、弾性体で構成されており、主茎6aとの接触時に緩衝(クッション)となる。したがって、摘み取り非対象部である主茎6aに傷をつけることが抑制される。