(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175949
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20241212BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20241212BHJP
【FI】
G01R31/00
H01G13/00 361Z
H01G13/00 361A
H01G13/00 361D
H01G13/00 361F
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094077
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】591009705
【氏名又は名称】株式会社 東京ウエルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 駿輔
(72)【発明者】
【氏名】小森 太陽
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 嘉一
【テーマコード(参考)】
2G036
5E082
【Fターム(参考)】
2G036AA25
2G036AA27
2G036BB02
2G036CA06
5E082AB03
5E082AB09
5E082BC40
5E082FG26
5E082MM35
5E082MM38
(57)【要約】
【課題】コンデンサの異常を精度良く検出するのに有利な検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】検査装置は、コンデンサに電圧を印加して充電を行う電圧印加部と、充電中のコンデンサの電流を連続的に測定する電流測定部と、充電中の判定時間範囲における電流の測定値の対数と、電流の測定タイミングの対数とから導出される回帰直線Lrに基づいて、コンデンサの異常を検出する異常検出部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサに電圧を印加して充電を行う電圧印加部と、
前記充電中の前記コンデンサの電流を連続的に測定する電流測定部と、
前記充電中の判定時間範囲における前記電流の測定値の対数と、前記電流の測定タイミングの対数とから導出される回帰直線に基づいて、前記コンデンサの異常を検出する異常検出部と、
を備える検査装置。
【請求項2】
前記異常検出部は、前記回帰直線に対する前記電流の測定値の対数及び測定タイミングの対数の一致度に基づいて、前記コンデンサの異常を検出する請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記異常検出部は、前記判定時間範囲にわたって前記回帰直線を基準に定められる電流許容範囲の上限及び下限のうちの少なくともいずれか一方に対する、前記電流の測定値の対数の関係に基づいて、前記コンデンサの異常を検出する請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記異常検出部は、
前記充電中の第1判定時間範囲における前記電流の測定値の対数と、前記電流の測定タイミングの対数とから導出される第1回帰直線に基づいて、前記コンデンサの異常を検出し、
前記充電中の第2判定時間範囲における前記電流の測定値の対数と、前記電流の測定タイミングの対数とから導出される第2回帰直線に基づいて、前記コンデンサの異常を検出する請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項5】
前記電圧印加部は、
第1の極性で前記コンデンサに電圧を印加して第1極性充電を行い、
前記第1極性充電後に前記第1の極性とは逆の極性である第2の極性で前記コンデンサに電圧を印加して第2極性充電を行い、
前記電流測定部は、
前記第1極性充電中の前記コンデンサの電流である第1極性電流を測定し、
前記第2極性充電中の前記コンデンサの電流である第2極性電流を測定し、
前記異常検出部は、
前記第1極性充電中の第1判定時間範囲における前記第1極性電流の測定値の対数と、前記第1極性電流の測定タイミングの対数とから導出される第1極性回帰直線に基づいて、前記コンデンサの異常を検出し、
前記第2極性充電中の第2判定時間範囲における前記第2極性電流の測定値の対数と、前記第2極性電流の測定タイミングの対数とから導出される第2極性回帰直線に基づいて、前記コンデンサの異常を検出する請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項6】
コンデンサに電圧を印加して充電を行う工程と、
前記充電中の前記コンデンサの電流を連続的に測定する工程と、
前記充電中の判定時間範囲における前記電流の測定値の対数と、前記電流の測定タイミングの対数とから導出される回帰直線に基づいて、前記コンデンサの異常を検出する工程と、
を含む検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンデンサの異常を検出する検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MLCC(Multi-Layer Ceramic Capacitor:積層セラミックコンデンサ)などのコンデンサやコンデンサを具備する電子部品は、通常、不良品を検出するための検査を受けた後に出荷される。特に近年では、高度な能力及び安全性が要求される自動車や通信機器などの装置において数多くのMLCCが使われるようになってきており、大量のMLCCの信頼性を、より高いレベルで保証する検査の実施が望まれている。
【0003】
そのような検査に関し、例えば特許文献1は、積層セラミックコンデンサ内の異物混入やピンホールなどの内部欠陥の検出やスクリーニングを短時間に実行することを目的とした欠陥検出装置を開示する。また特許文献2は、コンデンサの良否を短時間に判別することを目的とした良否判別方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09-152455号公報
【特許文献2】特開2000-228337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は上述の事情に鑑みてなされたものであり、コンデンサの異常を精度良く検出するのに有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、コンデンサに電圧を印加して充電を行う電圧印加部と、充電中のコンデンサの電流を連続的に測定する電流測定部と、充電中の判定時間範囲における電流の測定値の対数と、電流の測定タイミングの対数とから導出される回帰直線に基づいて、コンデンサの異常を検出する異常検出部と、を備える検査装置に関する。
【0007】
異常検出部は、回帰直線に対する電流の測定値の対数及び測定タイミングの対数の一致度に基づいて、コンデンサの異常を検出してもよい。
【0008】
異常検出部は、判定時間範囲にわたって回帰直線を基準に定められる電流許容範囲の上限及び下限のうちの少なくともいずれか一方に対する、電流の測定値の対数の関係に基づいて、コンデンサの異常を検出してもよい。
【0009】
異常検出部は、充電中の第1判定時間範囲における電流の測定値の対数と、電流の測定タイミングの対数とから導出される第1回帰直線に基づいて、コンデンサの異常を検出してもよく、充電中の第2判定時間範囲における電流の測定値の対数と、電流の測定タイミングの対数とから導出される第2回帰直線に基づいて、コンデンサの異常を検出してもよい。
【0010】
電圧印加部は、第1の極性でコンデンサに電圧を印加して第1極性充電を行ってもよく、第1極性充電後に第1の極性とは逆の極性である第2の極性でコンデンサに電圧を印加して第2極性充電を行ってもよく、電流測定部は、第1極性充電中のコンデンサの電流である第1極性電流を測定してもよく、第2極性充電中のコンデンサの電流である第2極性電流を測定してもよく、異常検出部は、第1極性充電中の第1判定時間範囲における第1極性電流の測定値の対数と、第1極性電流の測定タイミングの対数とから導出される第1極性回帰直線に基づいて、コンデンサの異常を検出してもよく、第2極性充電中の第2判定時間範囲における第2極性電流の測定値の対数と、第2極性電流の測定タイミングの対数とから導出される第2極性回帰直線に基づいて、コンデンサの異常を検出してもよい。
【0011】
本開示の他の態様は、コンデンサに電圧を印加して充電を行う工程と、充電中のコンデンサの電流を連続的に測定する工程と、充電中の判定時間範囲における電流の測定値の対数と、電流の測定タイミングの対数とから導出される回帰直線に基づいて、コンデンサの異常を検出する工程と、を含む検査方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、コンデンサの異常を精度良く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、電子部品の検査システムの一例の概略を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、検査装置の一例の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、電子部品(コンデンサ)の漏れ電流の測定結果の一例を示すグラフ(真数グラフ)である。
【
図4】
図4は、電子部品(コンデンサ)の漏れ電流の測定結果の一例を示すグラフ(両対数グラフ)であり、第1の異常検出手法を説明するためのグラフである。
【
図5】
図5は、電子部品(コンデンサ)の漏れ電流の測定結果の一例を示すグラフ(両対数グラフ)であり、第2の異常検出手法を説明するためのグラフである。
【
図6】
図6は、コンデンサの一般的な電気特性の一例を示す「充電時間-測定電流」の両対数グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示の例示的な実施形態について説明する。
【0015】
以下の説明における検査対象の電子部品Wは、コンデンサ自体であってもよいし、コンデンサを構成部品として具備する電子部品であってもよい。また検査対象のコンデンサの具体的な種類も限定されず、MLCC、タンタルコンデンサ、或いは他の一般的なコンデンサに対しても下記技術を適用しうる。
【0016】
[検査システム]
図1Aは、電子部品の検査システム10の一例の概略を示す斜視図である。
図1Bは、
図1Aに示す検査システム10の正面図である。なお
図1Bでは、理解を容易にするため、
図1Aに示される構成要素の一部(例えば供給フィーダー18、電子部品供給部19及び制御部55)の図示が省略されている。
【0017】
図1A及び
図1Bに示す検査システム10は、構造体10A、構造体10Aの傾斜面10aに設けられるインデックステーブル11、検査装置13、電子部品排出部14、排出経路15及び回収装置16を備える。
【0018】
インデックステーブル11は、円盤形状を有し、回転軸11aを中心に間欠回転可能に設けられ、検査対象の電子部品を収容するための多数のポケット12を有する。多数のポケット12は、インデックステーブル11の半径方向に複数の列(例えば16列)を成し、各列において複数のポケット12がインデックステーブル11の円周方向に等角度間隔で配列される。
【0019】
インデックステーブル11は、表面側及び裏面側の双方からインデックステーブルカバー60により覆われている。表面側のインデックステーブルカバー60は、隙間を介して隣り合って配置される第1表側カバー61、第2表側カバー62及び第3表側カバー63を含む。検査対象の多数の電子部品は、供給フィーダー18から電子部品供給部19に供給され、電子部品供給部19からインデックステーブルカバー60(
図1A及び
図1Bに示す例では第1表側カバー61)を介してポケット12に供給される。
【0020】
検査装置13は、各ポケット12に収容されている電子部品の電気的検査を行う。本例の検査装置13は、常温(例えば5℃~35℃)の環境下で電子部品の検査を行うこともできるが、後述のように各電子部品に対して熱負荷(例えば100~170℃程度の熱負荷)を積極的に与えつつ電気的検査を行うことも可能である。検査装置13の具体的な構成例については後述する(
図2参照)。
【0021】
電子部品排出部14は、検査装置13による電気的検査を受けた後の電子部品を、例えば圧縮エアを利用し、排出経路15を介して回収装置16に排出する。回収装置16は、複数の回収ボックス(
図1A及び
図1Bに示す例では6つの回収ボックス)を有する。電子部品排出部14は、電気的検査の結果に応じて、各電子部品をポケット12(インデックステーブル11)から対応の回収ボックスに向けて送り出す。電気的検査の結果、正常と判定される電子部品と、異常を有すると判定される電子部品とが別々の回収ボックスに排出されるように、電子部品排出部14は制御部55の制御下で作動する。なお電子部品排出部14は、電子部品を、電気的検査の結果に基づく異常の種類や程度に応じて別々の回収ボックスに排出してもよいし、電気的検査の結果以外の条件に応じて別々の回収ボックスに排出してもよい。
【0022】
上述の検査システム10によれば、各ポケット12に検査対象の電子部品が収納されている状態でインデックステーブル11が
図1A及び
図1Bの時計回り方向に間欠回転されることで、各ポケット12内の電子部品Wが下流に向けて徐々に搬送される。各ポケット12内の電子部品Wは、搬送経路上の検査位置において検査装置13による電気的検査を受け、当該検査の結果に応じて電子部品排出部14、排出経路15及び回収装置16により分類回収される。
【0023】
なお上述の
図1A及び
図1Bに示す検査システム10は、既知の技術に基づいて実現可能であり、当該検査システム10の構成に関する更なる具体的な説明は省略される。なお本実施形態の検査システム10は、一例として、特開2023-5282号公報に開示の装置と同様に構成されてもよい。
【0024】
[検査装置]
図2は、検査装置13の一例の構成を示す図である。
図2において、一部要素(例えばプローブホルダー40及び電極ユニット35)は断面で示されている。また
図2ではインデックステーブル11(ポケット12を含む)等の図示が省略されているが、
図2に示す各電子部品Wは、対応ポケット12に収容されおり、インデックステーブル11による搬送の途中の検査位置で間欠的に停止している状態にある。
【0025】
図2に示す検査装置13は、複数のプローブユニット30、プローブホルダー40、及び電極ユニット35を備える。
【0026】
プローブユニット30の数は限定されないが、同時的に検査が行われる電子部品Wの数(例えばインデックステーブル11の半径方向に並べられるポケット12の数)に対応する数のプローブユニット30が設けられる。各プローブユニット30は、プローブ31、圧縮ばね32及びプローブベース33を有する。プローブ31、圧縮ばね32及びプローブベース33は、いずれも高い導電率を有する電気伝導体を含み、好ましくは高い熱伝導率を有する。プローブベース33は、電気回路50と電気的に接続される。圧縮ばね32は、プローブ31とプローブベース33との間に位置し、プローブ31及びプローブベース33の各々と電気的に接続される。プローブ31は、圧縮ばね32から弾性力を受けつつプローブホルダー40から進退可能に部分的に突出するように、プローブホルダー40によって支持される。
【0027】
各プローブユニット30を支持するプローブホルダー40は、ホルダー本体41a、41b、41c、41dと、シート材42a、42bと、プローブヒーター43とを含む積層構造を有する。ホルダー本体41aとホルダー本体41bとの間にシート材42aが設けられ、ホルダー本体41bとホルダー本体41cとの間にプローブヒーター43が設けられ、ホルダー本体41cとホルダー本体41dとの間にシート材42bが設けられる。
【0028】
ホルダー本体41a、41b、41c、41dは、熱伝導率及び導電率が相対的に低く、例えばホトベール材によって構成される。一方、シート材42a、42bは、熱伝導率及び導電率が相対的に高く、例えばグラファイト材料によって構成される。プローブヒーター43は、制御部55の制御下で発熱可能であり、例えばラバーヒーターにより構成される。プローブヒーター43からの熱は、シート材42a、42bを介し、各プローブユニット30(特にプローブ31)に効率的に伝えられる。
【0029】
電極ユニット35は、電極36、電極ベース37及び電極ヒーター38を含む積層構造を有する。電極36は、電気回路50と電気的に接続される。電極ベース37は電極36を支持する。電極ヒーター38は、表面側及び裏面側の双方において電極ベース37により覆われるように設けられ、制御部55の制御下で発熱可能であり、例えばラバーヒーターにより構成される。電極ヒーター38からの熱は、電極ベース37を介し、電極36に伝えられる。電極36を電極ヒーター38によって効率的に加熱する観点からは、電極ベース37(特に電極ヒーター38と電極36との間に位置する部分)は伝熱性に優れた部材により構成されることが好ましい。
【0030】
電気回路50は、各プローブユニット30(
図2に示す例ではプローブベース33)及び電極36に接続される。プローブ31が検査対象の電子部品Wから離れている間、プローブユニット30、電子部品W、電極ユニット35(特に電極36)及び電気回路50は、全体として開回路構成をとる。一方、プローブ31及び電極36によって検査対象の電子部品Wが挟まれて当該電子部品Wにプローブ31及び電極36が接触することで、プローブユニット30、電子部品W、電極ユニット35(特に電極36)及び電気回路50を含む閉回路が構成される。
【0031】
本例の電気回路50は、制御部55の制御下で、電子部品W(コンデンサ)に電圧を印加して充電を行う電圧印加部51として機能するとともに、充電中の電子部品W(コンデンサ)の電流を連続的に測定可能な電流測定部52として機能する。特に、検査システム10の一部として設けられる電気回路50(電圧印加部51)は、検査対象の電子部品Wに対し、比較的大きな電気的負荷を与えることができるように構成される。そのような電気的負荷の大きさは、制御部55が電気回路50(電圧印加部51)を制御することで変更可能であり、例えば電子部品Wの定格電圧の数倍程度(例えば2.5倍)の直流電圧が電子部品Wに付与されてもよい。
【0032】
制御部55は、電気回路50(電流測定部52)の測定結果に基づいて、各電子部品W(特にコンデンサ)の異常を検出する異常検出部として機能する。制御部55による各電子部品Wの異常検出の具体的な方法例については後述する。
【0033】
上述の検査装置13によれば、インデックステーブル11が間欠的に停止している間に、検査位置に位置する各ポケット12(
図1A参照)内の電子部品Wが、電極36と対応のプローブ31とによって挟まれる。なお電極36及びプローブ31によって電子部品Wを挟む際、電極36及びプローブ31が相対的に離れている状態から互いに近づけられるように、電極ユニット35及び/又は各プローブユニット30(ひいてはプローブホルダー40)が図示しない装置によって移動されてもよい。
【0034】
そして電極36及びプローブ31により挟まれている電子部品Wに、電圧印加部51として機能する電気回路50によって検査用電圧が印加され、当該電子部品Wに流れる微少電流(漏れ電流)が電流測定部52として機能する電気回路50によって測定される。このようにして充電中の電子部品Wの漏れ電流は連続的に測定され、当該測定の結果が電気回路50から制御部55に送られる。
【0035】
電子部品Wの漏れ電流の連続的な測定は任意の時間間隔で実行可能であるが、電子部品Wの異常の有無の判定精度を上げる観点からは、できるだけ短い時間間隔で、電子部品Wの漏れ電流の測定が連続的に行われることが好ましい。一般的な測定装置によれば、電子部品Wの漏れ電流の測定が10ms(ミリ秒)~100ms程度の時間間隔で行われるのが通常である。一方、本実施形態の検査システム10は、10msよりも短い時間間隔で電子部品Wの漏れ電流の連続測定を行うことも可能であり、例えば5ms以下(より好ましくは1ms以下)の時間間隔で電子部品Wの漏れ電流の測定を連続的に行うことによって、一般的な測定装置による通常測定では検出が難しい電子部品Wの異常も、精度良く検出することが可能である。
【0036】
なお、熱的な負荷がかけられた状態の電子部品Wの電気特性(漏れ電流特性)を測定する場合には、電極ヒーター38及び/又はプローブヒーター43が制御部55の制御下で所望温度に加熱される。これにより電極36及び/又はプローブ31が加熱され、電極36及びプローブ31が電子部品Wに接触している間に、電子部品Wに対する電圧印加及び漏れ電流測定とともに、電子部品Wの加熱(熱的負荷の適用)を行うことできる。
【0037】
制御部55は、電気回路50から提供される各電子部品Wの漏れ電流の測定結果に基づいて、各電子部品Wの異常の有無を判定する。
【0038】
[検査方法]
図3は、電子部品W(コンデンサ)の漏れ電流の測定結果の一例を示すグラフ(真数グラフ)である。
図3のX軸は測定開始(原点(O))からの経過時間である充電時間(ミリ秒(ms))を示し、Y軸は電子部品Wの漏れ電流の測定値(アンペア(A))を示す。
【0039】
図3には、電子部品W(コンデンサ)に一定の直流電圧を印加して充電を行った際の、異常を含まない正常な電子部品(すなわち「良品」)の漏れ電流の測定結果と、異常を有する電子部品(すなわち「不良品」)の漏れ電流の測定結果とが示されている。
【0040】
本件発明者は、充電時におけるコンデンサ(例えばMLCC)の電気特性(特に漏れ電流特性)の挙動について研究を重ねた結果、コンデンサが、充電中に一時的な異常挙動を示すことがある事実を新たに発見した(
図3の符号「Ab」参照)。
【0041】
このような異常挙動は、コンデンサの漏れ電流の測定値の変化によって把握可能であるが、必ずしも一定せず、また変化量も小さいことがある。また、異常挙動をある時間(例えば数十ミリ秒~数秒)示した後に正常な挙動に戻り、その後は良品のように振る舞うコンデンサが存在することを、本件発明者は新たに発見した。
【0042】
なお漏れ電流の測定ピーク値に基づいてコンデンサの異常を検出する従来の検査装置では、漏れ電流が突発的に増大する異常を検出するのには適しているが、漏れ電流が低減する異常を検出するのには必ずしも適していない。またコンデンサの絶縁性は劣化していないが、何らかの理由により漏れ電流が安定しない異常を有するコンデンサに対しても、従来の検査装置では必ずしも十分には対応できない。
【0043】
さらに近年ではMLCCの大容量化が進んでいるが、大容量化に伴ってMLCCのセラミック層が薄くなる傾向があり、スクリーニング検査のためにMLCCに高電圧を印加することが難しくなっている。そのため、MLCC(コンデンサ)に対する印加電圧を低く抑えつつ、信頼性の高いスクリーニング検査を実現する技術が求められている。
【0044】
例えば特許文献1の装置は、充電中のコンデンサに発生する急峻なパルス状の異常電流(漏れ電流)を検出する。このような特許文献1の装置は、充電中の漏れ電流が安定的な挙動を示す場合には有効だが、漏れ電流の単位時間当たり変化が比較的激しい場合には異常電流を信頼度良く検出することが難しい。また特許文献1の装置は、コンデンサの漏れ電流が低減する異常を検出することができない。
【0045】
また特許文献2の装置は、コンデンサの実測電流値及び規格選別電流値から定められる評価関数が、上及び下のいずれに関して凸の曲線を描くかに基づいて、コンデンサの良否を判定する。しかしながら特許文献2の装置は、特許文献2(段落0012参照)にも記載されているように、コンデンサの実測電流値の一時的な変化についてはノイズとして扱い、異常としては検出しない。また特許文献1の装置は、コンデンサの漏れ電流が低減する異常を検出することができない。
【0046】
本件発明者は、上述の知見を踏まえて研究を重ねた結果、従来装置では検出できないコンデンサ異常であっても、有効に精度良く検出することが可能な新たな技術を見出した。すなわち、電子部品W(コンデンサ)の充電中の判定時間範囲における電子部品Wの電流(漏れ電流)の測定値の対数と、当該電流の測定タイミングの対数とから導出される回帰直線に基づいて、コンデンサの異常を精度良く検出する新たな手法が見出された。当該手法によれば、異常を有するコンデンサが充電中に一時的に示す異常挙動を、精度良く検出することができる。特に異常挙動の変化量が小さくても、或いは、異常挙動が限られた時間(例えば数十ミリ秒~数秒)しか続かなくても、そのような異常挙動を精度良く検出することが可能である。
【0047】
そのような異常検出手法は様々なバリエーションが考えられるが、いずれの異常検出手法も回帰直線に基づいてコンデンサの異常挙動を検出することが可能である。以下に、そのような異常検出手法の典型例を示すが、下記の典型例とは異なる形態で回帰直線を利用する異常検出手法も本開示内容に含まれる。
【0048】
[第1の異常検出手法]
図4は、電子部品Wの漏れ電流の測定結果の一例を示すグラフ(両対数グラフ)であり、第1の異常検出手法を説明するためのグラフである。
図4のX軸及びY軸は対数目盛りに基づいており、
図4のX軸は測定開始(原点(O))からの経過時間である充電時間(ミリ秒)を対数で示し、Y軸は電子部品Wの漏れ電流の測定値(アンペア)を対数で示す。
【0049】
図4には、電子部品W(コンデンサ)に一定の直流電圧を印加して充電を行った際の、異常を含まない正常な電子部品(すなわち「良品」)の漏れ電流の測定結果と、異常を有する電子部品(すなわち「不良品」)の漏れ電流の測定結果とが示されている。また
図4には、良品及び不良品の測定結果から最小二乗法に基づいて得られる「回帰直線Lr」が示されている。
【0050】
第1の異常検出手法に基づく検査方法によれば、制御部55の制御下で、充電工程、電流測定工程、及び異常検出工程が行われる。
【0051】
充電工程において、電子部品W(コンデンサ)は、
図2に示すプローブ31及び電極36によって挟まれている状態で、電気回路50(電圧印加部51)により電圧が印加されて充電が行われる。電流測定工程では、充電中の電子部品Wの電流(コンデンサの漏れ電流)が、電気回路50(電流測定部52)によって連続的に測定される。このように電流測定工程及び充電工程は並行的に行われる。
【0052】
そして異常検出工程では、制御部55(異常検出部)によって、充電中の判定時間範囲Tvにおける漏れ電流の測定値の対数と、漏れ電流の測定タイミングの対数とから導出される回帰直線Lrに基づいて、電子部品W(コンデンサ)の異常が検出される。より具体的には、制御部55は、回帰直線Lrに対する漏れ電流の測定値の対数及び測定タイミングの対数の一致度に基づいて、電子部品Wの異常を検出する。
【0053】
ここで言う「判定時間範囲Tv」は、電子部品Wの異常の有無の判定を行うのに適した時間範囲であり、具体的には、回帰直線Lrに対する良品の測定結果の一致度が高い時間範囲に設定される。最適な判定時間範囲Tvは、電子部品Wの漏れ電流特性や電子部品Wに対する印加電圧の影響下で決められ、一例として充電開始(
図4の原点「O」参照)後の200ms~1500msの時間範囲に設定されてもよい。
【0054】
「回帰直線Lrに対する漏れ電流の測定値の対数及び測定タイミングの対数の一致度」は、典型的には、最小二乗法に基づく決定係数として算出される。決定係数の具体的な算出方法は限定されず、既知の演算式を使って決定係数を算出することが可能である。
【0055】
例えば、電子部品Wが良品の場合、「回帰直線Lrに対する漏れ電流の測定値の対数及び測定タイミングの対数の一致度」は相対的に高くなり、最小二乗法に基づく決定係数(寄与率)の値も相対的に大きくなる。漏れ電流の測定値の対数及び測定タイミングの対数が回帰直線Lrに完全に一致するケースの決定係数が「100%」で表される場合、良品の電子部品Wの決定係数は、例えば95.0%以上(一例として99.0%以上)を示すことができる。
【0056】
一方、電子部品Wが不良品の場合、「回帰直線Lrに対する漏れ電流の測定値の対数及び測定タイミングの対数の一致度」は相対的に低くなり、決定係数の値も相対的に小さくなり、例えば95.0%よりも小さい値(一例として99.0%よりも小さい値)を示すことができる。
【0057】
上述のように決定係数に基づいて検査対象の電子部品Wを良品又は不良品に分類できるが、良品及び不良品の分類基準となる決定係数の閾値は、実際の異常の許容度に応じて適宜設定される。すなわち当該閾値が「100%」に近い値になるほど、異常の有無の判定が厳しくなって些細な異常も許容されなくなり、その結果、電子部品Wが不良品と判定される割合が増える傾向となる。
【0058】
そのため電子部品Wの電気特性(漏れ電流特性)の正常さの信頼性に対する要求が高くなるほど、良品及び不良品の分類基準となる決定係数の閾値は「100%」に近い値に設定される。近年の先端技術において要求される高度な信頼性を満たすには、当該決定係数の閾値は、例えば「99.0%」或いはそれ以上の値に設定されることが求められることもある。
【0059】
このように「回帰直線Lrに対する漏れ電流の測定値の対数及び測定タイミングの対数の一致度」は、漏れ電流の測定値の対数及び測定タイミングの対数の直線性を表し、最小二乗法に基づく決定係数として表現可能である。ただし「充電時間-測定電流」の両対数グラフ上における直線性を直接的又は間接的に評価可能な他の任意の手法に基づいて、「回帰直線Lrに対する漏れ電流の測定値の対数及び測定タイミングの対数の一致度」が求められてもよい。
【0060】
例えば制御部55(異常検出部)は、回帰直線Lrに対する漏れ電流の測定値の対数及び測定タイミングの対数の「不一致度」を任意の手法で求め、当該不一致度に基づいて電子部品Wの異常を検出してもよい。また制御部55(異常検出部)は、充電時間中の一部の時間範囲(判定時間範囲Tv)に関してのみ、検査対象の電子部品Wの漏れ電流の測定値のデータを抜き取ってもよい。この場合、制御部55は、抜き取った漏れ電流の測定値の対数と、当該漏れ電流の測定タイミングの対数とから導出される回帰直線Lrに基づいて、電子部品Wの異常を検出してもよい。
【0061】
制御部55は、上述の一連の工程を含む検査の結果に基づいて電子部品排出部14を制御し、異常があると判定された電子部品Wと、異常があると判定されなかった電子部品Wとを、排出経路15を介して回収装置16の別々の回収ボックスに排出する。
【0062】
[第2の異常検出手法]
第2の異常検出手法に関する以下の説明において、上述の第1の異常検出手法(
図4参照)と同様の処理についてはその詳細な説明を省略する。
【0063】
図5は、電子部品Wの漏れ電流の測定結果の一例を示すグラフ(両対数グラフ)であり、第2の異常検出手法を説明するためのグラフである。
図5のX軸及びY軸は対数目盛りによって表されており、
図5のX軸は測定開始(原点(O))からの経過時間である充電時間(ミリ秒)を対数で示し、Y軸は電子部品Wの漏れ電流の測定値(アンペア)を対数で示す。
【0064】
図5には、良品である電子部品の測定結果と、不良品である電子部品の測定結果とが示されるとともに、良品及び不良品の測定結果に基づいて得られる回帰直線Lrが示されている。さらに
図5には、電流許容範囲の上限B1及び下限B2が示されている。
【0065】
第2の異常検出手法に基づく検査方法においても、充電工程、電流測定工程、及び異常検出工程が行われ、特に充電工程及び電流測定工程は、上述の第1の異常検出手法に基づく検査方法と同様に行われる。
【0066】
ただし第2の異常検出手法に基づく異常検出工程では、制御部55(異常検出部)によって、判定時間範囲Tvにおける電子部品Wの漏れ電流の測定値の対数が、回帰直線Lrを基準に定められる電流許容範囲に含まれるか否かが判定される。すなわち、判定時間範囲Tvにわたって回帰直線Lrを基準に定められる電流許容範囲の上限B1及び下限B2のうちの少なくともいずれか一方に対する、漏れ電流の測定値の対数の関係に基づいて、電子部品W(コンデンサ)の異常が検出される。
【0067】
図5の両対数グラフにおいて、符号「B1」で示されるライン(上限)と、符号「B2」で示されるライン(下限)との間の領域が電流許容範囲に相当し、判定時間範囲Tvにおいて回帰直線Lrは当該領域(電流許容範囲)に存在する。
【0068】
上述のように電流許容範囲(上限B1及び下限B2)に基づいて検査対象の電子部品Wを良品又は不良品に分類できるが、電流許容範囲を定める上限B1及び下限B2は、良品及び不良品の分類基準となる閾値に相当し、実際の異常の許容度に応じて適宜設定される。すなわち電流許容範囲の上限B1及び下限B2が回帰直線Lrに近い値になるほど、異常の有無の判定が厳しくなって些細な異常も許容されなくなり、電子部品Wが不良品と判定される割合が増える傾向となる。そのため電子部品Wの電気特性(漏れ電流特性)の正常さの信頼性に対する要求が高くなるほど、良品及び不良品の分類基準となる電流許容範囲の上限B1及び下限B2は回帰直線Lrに近い値に設定される。
【0069】
電流許容範囲の上限B1及び下限B2の具体的な決め方は限定されない。例えば、測定電流(
図5のY軸参照)に関する回帰直線Lrとの差が、電流許容範囲の上限B1と下限B2との間で互いに同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。また回帰直線Lrと、電流許容範囲の上限B1又は下限B2との間の測定電流に関する差は、判定時間範囲Tvの全体にわたって同じであってもよいし、同じでなくてもよい。したがって「充電時間-測定電流」の両対数グラフ(
図5参照)において、電流許容範囲の上限B1を示すライン及び下限B2を示すラインは、回帰直線Lrと平行であってもよいし、非平行であってもよい。
【0070】
また判定時間範囲Tvから選択される複数の離散的な時間タイミングにおける回帰直線Lrの値(測定電流に関するY軸の値)から、電流許容範囲の上限B1及び下限B2が決められてもよい。例えば、判定時間範囲Tvの「開始時間タイミング(始点)」及び「終了時間タイミング(終点)」の2点に関し、電流許容範囲の上限B1及び下限B2が回帰直線Lrに基づいて定められてもよい。この場合、「充電時間-測定電流」の両対数グラフ(
図5参照)において、電流許容範囲の上限B1に関するこれらの2点(始点及び終点)を通る直線によって、判定時間範囲Tvの全体にわたる電流許容範囲の上限B1が定められてもよい。同様に、「充電時間-測定電流」の両対数グラフにおいて、電流許容範囲の下限B2に関するこれらの2点(始点及び終点)を通る直線によって、判定時間範囲Tvの全体にわたる電流許容範囲の下限B2が定められてもよい。
【0071】
また制御部55(異常検出部)は、電流許容範囲の上限B1及び下限B2のうちの一方のみを回帰直線Lrとは異なる値に設定してもよい。この場合、電流許容範囲の上限B1及び下限B2のうちの他方は、回帰直線Lrと同じ値に設定されてもよい。
【0072】
制御部55は、上述の異常検出工程において、判定時間範囲Tvにおける電子部品Wの測定電流の全体が電流許容範囲内(例えば境界(上限B1及び下限B2)を含む)にある場合には、当該電子部品Wに異常はないと判定することができる。一方、判定時間範囲Tvにおける電子部品Wの測定電流の少なくとも一部が電流許容範囲外(例えば境界(上限B1及び下限B2)を含まない)にある場合には、当該電子部品Wが異常を有すると判定することができる。
【0073】
そして制御部55は、上述の一連の工程を含む検査の結果に基づいて電子部品排出部14を制御し、異常があると判定された電子部品Wと、異常があると判定されなかった電子部品Wとを、排出経路15を介して回収装置16の別々の回収ボックスに排出する。
【0074】
[異常検出手法の応用例]
上述の第1及び第2の異常検出手法(
図4及び
図5参照)或いは回帰直線Lrに基づく他の検出手法は、電子部品Wの検査方法に対して以下のように応用されることで、電子部品Wの異常を精度良く検出することが可能である。
【0075】
[応用例1]
図6は、コンデンサの一般的な電気特性の一例を示す「充電時間-測定電流」の両対数グラフである。
【0076】
コンデンサに一定の直流電圧を印加して充電を行った際のコンデンサの充電時間の対数と漏れ電流の対数との間の相関は、充電時間の全体にわたって必ずしも一定ではなく、固有の直線性(比例関係)を示す複数の段階(
図6の「P1」~「P3」参照)が存在する。
図6に示す例では、コンデンサの漏れ電流がほぼ一定である第1段階P1と、漏れ電流が急激に低減する第2段階P2と、漏れ電流が第1段階P1よりも急激且つ第2段階P2よりも緩やかに低減する第3段階P3とが存在する。
図6に示す両対数グラフにおいて、第1段階P1~第3段階P3のいずれにおいても「充電時間-測定電流」は比例的な相関を示すが、「充電時間-測定電流」の比例的相関の割合(すなわち直線性の傾き)が第1段階P1~第3段階P3の相互間で異なる。
【0077】
制御部55(異常検出部)は、段階毎に判定時間範囲Tv及び回帰直線Lrを設定することで、電子部品W(コンデンサ)の異常を段階毎に検出することができる。
【0078】
すなわち制御部55は、充電中の第1判定時間範囲における電子部品Wの漏れ電流の測定値の対数と、当該漏れ電流の測定タイミングの対数とから導出される第1回帰直線に基づいて、第1判定時間範囲における電子部品Wの異常を検出することができる。その一方で、制御部55は、充電中の第2判定時間範囲における電子部品Wの漏れ電流の測定値の対数と、当該漏れ電流の測定タイミングの対数とから導出される第2回帰直線に基づいて、第2判定時間範囲における電子部品Wの異常を検出することができる。
【0079】
ここでの「第1判定時間範囲」及び「第2判定時間範囲」をお互いに異なる段階(
図6の第1段階P1、第2段階P2及び第3段階P3参照)に設定することで、複数の段階の各々における電子部品Wの異常を検出できる。なおコンデンサの充電時間と漏れ電流との間の相関に3つ以上の段階が存在する場合には、3つ以上の判定時間範囲がそれぞれの段階に割り当てられるように設定されてもよい。
【0080】
例えば
図6に示す例において、第1段階P1に「第1判定時間範囲Tv1」を設定し、第2段階P2に「第2判定時間範囲Tv2」を設定し、第3段階P3に「第3判定時間範囲Tv3」を設定してもよい。この場合、第1判定時間範囲Tv1における漏れ電流の測定結果に基づいて第1回帰直線Lr1が決められ、第2判定時間範囲Tv2における漏れ電流の測定結果に基づいて第2回帰直線Lr2が決められ、第3判定時間範囲Tv3における漏れ電流の測定結果に基づいて第3回帰直線Lr3が決められる。そして上述の異常検出手法(
図4及び
図5参照)を使って、第1回帰直線Lr1に基づいて第1判定時間範囲Tv1における電子部品Wの異常を検出でき、第2回帰直線Lr2に基づいて第2判定時間範囲Tv2における電子部品Wの異常を検出でき、第3回帰直線Lr3に基づいて第3判定時間範囲Tv3における電子部品Wの異常を検出できる。
【0081】
なお「第1判定時間範囲」及び「第2判定時間範囲」は共通の段階に設定されてもよい。例えば比較的長い時間範囲を占めるある1つの段階(
図6の第3段階P3参照)において、「第1判定時間範囲」及び「第2判定時間範囲」(及び第3以降の判定時間範囲)が設定されてもよい。
【0082】
[応用例2]
検査装置13は、各電子部品Wに対して複数回の電気的検査を行ってもよい。そのような複数回の電気的検査は、各電子部品Wに検査用電圧を印加する際の電流(直流電流)の極性(プラス極及びマイナス極の向き)が互いに異なる2回の電気的検査を含んでもよい。
【0083】
すなわち電気回路50(電圧印加部51;
図2参照)は、第1の極性で電子部品W(コンデンサ)に電圧を印加して第1極性充電を行い、第1極性充電後に第1の極性とは逆の極性である第2の極性で当該電子部品Wに電圧を印加して第2極性充電を行ってもよい。この場合、電気回路50(電流測定部52)は、第1極性充電中の電子部品Wの漏れ電流である第1極性電流を測定し、第2極性充電中の電子部品Wの漏れ電流である第2極性電流を測定する。そして制御部55(異常検出部)は、第1極性充電中の第1判定時間範囲における第1極性電流の測定値の対数と、第1極性電流の測定タイミングの対数とから導出される第1極性回帰直線に基づいて、電子部品W(コンデンサ)の異常を検出することができる。同様に、制御部55は、第2極性充電中の第2判定時間範囲における第2極性電流の測定値の対数と、第2極性電流の測定タイミングの対数とから導出される第2極性回帰直線に基づいて、電子部品W(コンデンサ)の異常を検出することができる。なお電子部品Wに負の電圧を印加した場合(例えば第2極性充電の場合)には電子部品Wの漏れ電流(例えば第2極性電流)の測定値も負の値になるため、回帰直線は、漏れ電流の測定値の絶対値の対数から導出されてもよい。
【0084】
電子部品Wのコンデンサは、印加電流の極性に応じて特有の電気的特性を示すことがあり、第1の極性の電圧印加を受けた場合及び第2の極性の電圧印加を受けた場合の一方のみにおいて、漏れ電流の異常挙動を示すことがある。検査対象の電子部品Wがそのような極性を持っていても、本応用例のように第1の極性及び第2の極性の各々に関して電気的検査を行うことで、電子部品Wの異常を確実に検出することができる。
【0085】
以上説明したように上述の検査装置13及び検査方法によれば、充電中の判定時間範囲Tvにおける電子部品Wの漏れ電流の測定値の対数と、当該漏れ電流の測定タイミングの対数とから導出される回帰直線Lrに基づいて、電子部品W(コンデンサ)の異常を検出できる。
【0086】
特に、異常を有する電子部品Wが充電中に一時的にのみ異常挙動を示す場合であっても、上述の検査装置13及び検査方法によれば、そのような電子部品Wの異常を適切に検出できる。また電子部品Wの漏れ電流の挙動が一定せず、当該漏れ電流の変化量が小さい場合であっても、上述の検査装置13及び検査方法によれば、そのような電子部品Wの異常を適切に検出できる。
【0087】
また上述の検査装置13及び検査方法によれば、電子部品Wの漏れ電流が増大する異常だけではなく、当該漏れ電流が低減する異常も検出できる。また検査対象の電子部品Wに印加される検査用電圧が低くても、電子部品Wの異常を信頼性良く検出することができる。
【0088】
また正常な状態であっても単位時間当たりの漏れ電流が比較的激しく変動する電子部品Wが検査対象とされることがあるが、上述の第2の異常検出手法(
図5参照)によれば、そのような電子部品Wの異常も精度良く検出することが可能である。すなわち、電子部品Wの正常状態の漏れ電流の変動の大きさを考慮して電流許容範囲の上限B1及び/又は下限B2を決めることによって、正常状態の漏れ電流の変動が「異常」として検出されるのを防ぎつつ、電子部品Wの真の「異常」を検出することが可能である。また、そのような第2の異常検出手法によれば、「電子部品W(コンデンサ)の絶縁性は劣化していないが、何らかの理由により漏れ電流が安定しない異常」も検出することが可能である。
【0089】
本明細書で開示されている実施形態及び変形例はすべての点で例示に過ぎず限定的には解釈されないことに留意されるべきである。上述の実施形態及び変形例は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態での省略、置換及び変更が可能である。例えば上述の実施形態及び変形例が全体的に又は部分的に組み合わされてもよく、また上述以外の実施形態が上述の実施形態又は変形例と組み合わされてもよい。また、本明細書に記載された本開示の効果は例示に過ぎず、その他の効果がもたらされてもよい。
【0090】
上述の技術的思想を具現化する技術的カテゴリーは限定されない。例えば上述の装置を製造する方法或いは使用する方法に含まれる1又は複数の手順(ステップ)をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムによって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。またそのようなコンピュータプログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な非一時的(non-transitory)な記録媒体によって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10 検査システム、10A 構造体、10a 傾斜面、11 インデックステーブル、11a 回転軸、12 ポケット、13 検査装置、14 電子部品排出部、15 排出経路、16 回収装置、18 供給フィーダー、19 電子部品供給部、30 プローブユニット、31 プローブ、32 圧縮ばね、33 プローブベース、35 電極ユニット、36 電極、37 電極ベース、38 電極ヒーター、40 プローブホルダー、41a ホルダー本体、41b ホルダー本体、41c ホルダー本体、41d ホルダー本体、42a シート材、42b シート材、43 プローブヒーター、50 電気回路、51 電圧印加部、52 電流測定部、55 制御部、60 インデックステーブルカバー、61 第1表側カバー、62 第2表側カバー、63 第3表側カバー、B1 上限、B2 下限、Lr 回帰直線、Lr1 第1回帰直線、Lr2 第2回帰直線、Lr3 第3回帰直線、P1 第1段階、P2 第2段階、P3 第3段階、Tv 判定時間範囲、Tv1 第1判定時間範囲、Tv2 第2判定時間範囲、Tv3 第3判定時間範囲、W 電子部品
【手続補正書】
【提出日】2024-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサに電圧を印加して充電を行う電圧印加部と、
前記充電中の前記コンデンサの電流を連続的に測定する電流測定部と、
前記充電中の判定時間範囲における前記電流の測定値の対数と、前記電流の測定タイミングの対数とから導出される回帰直線に基づいて、前記コンデンサの異常を検出する異常検出部と、
を備える検査装置。
【請求項2】
前記異常検出部は、前記回帰直線に対する前記電流の測定値の対数及び測定タイミングの対数の一致度に基づいて、前記コンデンサの異常を検出する請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記異常検出部は、前記判定時間範囲にわたって前記回帰直線を基準に定められる電流許容範囲の上限及び下限のうちの少なくともいずれか一方に対する、前記電流の測定値の対数の関係に基づいて、前記コンデンサの異常を検出する請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記異常検出部は、
前記充電中の第1判定時間範囲における前記電流の測定値の対数と、前記電流の測定タイミングの対数とから導出される第1回帰直線に基づいて、前記コンデンサの異常を検出し、
前記充電中の第2判定時間範囲における前記電流の測定値の対数と、前記電流の測定タイミングの対数とから導出される第2回帰直線に基づいて、前記コンデンサの異常を検出する請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項5】
前記電圧印加部は、
第1の極性で前記コンデンサに電圧を印加して第1極性充電を行い、
前記第1極性充電後に前記第1の極性とは逆の極性である第2の極性で前記コンデンサに電圧を印加して第2極性充電を行い、
前記電流測定部は、
前記第1極性充電中の前記コンデンサの電流である第1極性電流を測定し、
前記第2極性充電中の前記コンデンサの電流である第2極性電流を測定し、
前記異常検出部は、
前記第1極性充電中の第1判定時間範囲における前記第1極性電流の測定値の対数と、前記第1極性電流の測定タイミングの対数とから導出される第1極性回帰直線に基づいて、前記コンデンサの異常を検出し、
前記第2極性充電中の第2判定時間範囲における前記第2極性電流の測定値の対数と、前記第2極性電流の測定タイミングの対数とから導出される第2極性回帰直線に基づいて、前記コンデンサの異常を検出する請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項6】
コンデンサに電圧を印加して充電を行う工程と、
前記充電中の前記コンデンサの電流を連続的に測定する工程と、
前記充電中の判定時間範囲における前記電流の測定値の対数と、前記電流の測定タイミングの対数とから導出される回帰直線に基づいて、前記コンデンサの異常を検出する工程と、
を含む検査方法。