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特開2024-175950多孔体の製造方法、多孔体、及び熱輸送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175950
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】多孔体の製造方法、多孔体、及び熱輸送装置
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/26 20060101AFI20241212BHJP
   F28D 15/04 20060101ALI20241212BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20241212BHJP
   G03F 7/38 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
C08J9/26
F28D15/04 E
F28D15/02 E
G03F7/38 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094079
(22)【出願日】2023-06-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2022年電気化学秋季大会講演要旨、令和4年9月1日(掲載日) 〔刊行物等〕 2022年電気化学秋季大会、令和4年9月8日~令和4年9月9日(開催日) 〔刊行物等〕 ICFPM2022講演要旨、令和4年10月16日(発行日) 〔刊行物等〕 ICFPM2022、令和4年10月16日~令和4年10月21日(開催日) 〔刊行物等〕 ICM&P2022、令和4年11月6日~令和4年11月10日(開催日) 〔刊行物等〕 ICM&P2022講演要旨、令和4年11月6日(掲載日) 〔刊行物等〕 2022年度磁性流体連合講演会講演論文集、令和4年12月7日(発行日) 〔刊行物等〕 2022年度磁性流体連合講演会、令和4年12月8日~令和4年12月9日(開催日) 〔刊行物等〕 第10回 応用物理学会 名古屋大学スチューデントチャプター 東海地区学術講演会、令和4年12月10日(開催日) 〔刊行物等〕 IEEE MAGNETICS LETTERS,Volume 14(2023)6100305、令和5年4月20日(発行日)
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】岡 智絵美
(72)【発明者】
【氏名】小林 京貴
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 淳平
(72)【発明者】
【氏名】秦 誠一
【テーマコード(参考)】
2H196
4F074
【Fターム(参考)】
2H196AA30
2H196DA10
4F074AA46
4F074CB04
4F074CB13
4F074CB16
4F074CB28
4F074CC50X
4F074DA03
4F074DA14
4F074DA59
(57)【要約】
【課題】優れた特性を有する一方向性多孔体を提供する。
【解決手段】多孔体の製造方法は、光を照射することにより重合させることが可能な高分子化合物の原料1と磁性を有する粒子2とを含む混合物3に磁場4を印加するステップと、磁場4に平行な方向とは異なる方向から混合物3に光5を照射するステップと、重合しなかった原料1を除去するステップと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射することにより重合させることが可能な高分子化合物の原料と磁性を有する粒子とを含む混合物に磁場を印加するステップと、
前記磁場に平行な方向とは異なる方向から前記混合物に光を照射するステップと、
重合しなかった原料を除去するステップと、
を備える多孔体の製造方法。
【請求項2】
前記粒子を除去するステップを備える
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記混合物に光を照射する方向と前記磁場に平行な方向とのなす角は5°以上である
請求項1から2のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項4】
前記混合物において鎖状に整列した前記粒子の影が、鎖状に整列した別の前記粒子にかかるように、又はかからないように、前記混合物に光を照射する方向が調整される
請求項1から2のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
異なる複数の方向から前記混合物に光を照射する
請求項1から2のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記混合物は、前記粒子を凝集させるための凝集剤、又は前記粒子を分散させるための分散剤を含む
請求項1から2のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
光を照射することにより重合させることが可能な高分子化合物の母材と、
前記母材の表面から裏面に貫通する細孔と、
前記細孔の側面に存在し、磁性を有する粒子と、
を備える多孔体。
【請求項8】
光を照射することにより重合させることが可能な高分子化合物の母材と、
前記母材の表面から裏面に貫通し、平均細孔径が5μm以上である細孔と、
を備える多孔体。
【請求項9】
前記母材の厚さが1mm以上である
請求項7から8のいずれか1項に記載の多孔体。
【請求項10】
熱媒体と、
外部から受熱した熱により液体の前記熱媒体を蒸発させる蒸発器と、
気体の前記熱媒体を凝縮させる凝縮器と、
気体の前記熱媒体を前記蒸発器から前記凝縮器に輸送する蒸気管と、
液体の前記熱媒体を前記凝縮器から前記蒸発器に輸送する液管と、
を備え、
前記蒸発器は、
外部から熱を受熱する受熱部と、
前記液管と前記受熱部の間に設けられた、請求項1から2のいずれか1項に記載の製造方法により製造された多孔体、又は、請求項7から8のいずれか1項に記載の多孔体と、
を備える
熱輸送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多孔体の製造方法、多孔体、及び熱輸送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一方向に延伸した気孔を多数有する一方向性多孔体が様々な分野において応用されている。例えば、アルミナやチタニアなどの一方向性多孔体は、陽極酸化法により作製される。鉄や銅などの一方向性多孔体は、鋳型鋳造法により作製される。湿潤ゲルの一方向性多孔体は、氷晶テンプレート法により作製される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J. Appl. Phys. 40, L1217 (2001)
【非特許文献2】Chem. Commun.7, 874-875 (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、より広い分野で一方向性多孔体を利用するために、特性の優れた一方向性多孔体を製造する技術を開発する必要があることを課題として認識した。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、優れた特性を有する一方向性多孔体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の多孔体の製造方法は、光を照射することにより重合させることが可能な高分子化合物の原料と磁性を有する粒子とを含む混合物に磁場を印加するステップと、磁場に平行な方向とは異なる方向から混合物に光を照射するステップと、重合しなかった原料を除去するステップと、を備える。
【0007】
本開示の別の態様は、多孔体である。この多孔体は、光を照射することにより重合させることが可能な高分子化合物の母材と、母材の表面から裏面に貫通する細孔と、細孔の側面に存在し、磁性を有する粒子と、を備える。
【0008】
本開示のさらに別の態様もまた、多孔体である。この多孔体は、光を照射することにより重合させることが可能な高分子化合物の母材と、母材の表面から裏面に貫通し、平均細孔径が5μm以上である細孔と、を備える。
【0009】
本開示のさらに別の態様は、熱輸送装置である。この熱輸送装置は、熱媒体と、外部から受熱した熱により液体の熱媒体を蒸発させる蒸発器と、気体の熱媒体を凝縮させる凝縮器と、気体の熱媒体を蒸発器から凝縮器に輸送する蒸気管と、液体の熱媒体を凝縮器から蒸発器に輸送する液管と、を備え、蒸発器は、外部から熱を受熱する受熱部と、液管と受熱部の間に設けられた、上記の製造方法により製造された多孔体、又は、上記の多孔体と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、優れた特性を有する一方向性多孔体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態に係る一方向性多孔体の製造方法の手順を模式的に示す図である。
図2】本開示の実施の形態に係る熱輸送装置の構成を概略的に示す図である。
図3】本開示の実施例に係る一方向性多孔体樹脂を製造するための製造装置の構成例を示す図である。
図4】磁性ナノ粒子を除去する前の試料の上面のSEM像を示す図である。
図5】磁性ナノ粒子を除去する前の試料の断面のSEM像を示す図である。
図6】磁性ナノ粒子を除去する前後の実施例の試料の上面及び断面のSEM像を示す図である。
図7】磁性ナノ粒子を除去する前後の実施例の試料の上面のSEM像の拡大図である。
図8】試料表面に水滴を滴下する実験の結果を示す図である。
図9】θを30°、45°、60°とした場合の実施例の試料の上面のSEM像を示す図である。
図10】それぞれのSEM像から算出した細孔の楕円率を示す図である。
図11】対向する2つの方向から試料に光を照射した場合の試料の上面のSEM像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本開示の実施の形態に係る一方向性多孔体の製造方法の手順を模式的に示す。光を照射することにより重合させることが可能な高分子化合物の原料1に、磁性を有する磁性ナノ粒子2を分散する(ステップS1)。この混合物3に磁場4を印加することにより磁性ナノ粒子2を磁場方向に整列させ、磁場4に平行な方向とは異なる方向から光5を照射する(ステップS2)。光5が照射された部分の原料1は重合して硬化するが、磁性ナノ粒子2の影になって光5が照射されなかった部分の原料1は重合しない。残った原料1を除去すると、磁性ナノ粒子2を含有する一方向性多孔体樹脂6が得られる(ステップS3)。この一方向性多孔体樹脂6は、表面から裏面まで貫通する一方向性の細孔7を多数有し、それぞれの細孔7の側面に磁性ナノ粒子2を含有する。一方向性多孔体樹脂6から磁性ナノ粒子2を除去すると、一方向性多孔体樹脂8が得られる(ステップS4)。この一方向性多孔体樹脂8は、ステップS2において鎖状に整列した磁性ナノ粒子2とその影の部分の双方を、表面から裏面まで貫通する一方向性の細孔9として有する。
【0013】
光を照射することにより重合可能な高分子化合物は、例えば、光硬化樹脂を含んでもよい。光硬化樹脂は、例えば、不飽和二重結合のラジカル重合を用いるアクリル樹脂などであってもよいし、カチオン重合を用いるエポキシ樹脂などであってもよい。高分子化合物の種類は、一方向性多孔体樹脂6や一方向性多孔体樹脂8の用途などに応じて選択されてもよい。
【0014】
原料1は、高分子化合物のモノマーやオリゴマーを含んでもよい。オリゴマーに含まれるモノマーの数は、重合反応の反応速度などに応じて調整されてもよい。オリゴマーに含まれるモノマーの数は、例えば、2~10の範囲から選択されてもよい。
【0015】
磁性ナノ粒子2は、強磁性を有する鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ガドリニウム(Gd)などの単体又は化合物を含んでもよい。磁性ナノ粒子2は、例えば、マグネタイト(Fe)やマグへマイト(γ-Fe)などの酸化鉄を含んでもよい。磁性ナノ粒子2の種類は、一方向性多孔体樹脂6の用途、一方向性多孔体樹脂6における細孔7や一方向性多孔体樹脂8における細孔9の径、形状、数、密度などに応じて選択されてもよい。磁性ナノ粒子2は、表面が樹脂などによって被覆されていてもよい。磁性ナノ粒子2は、表面が官能化されていてもよい。磁性ナノ粒子2の表面の官能基は、水酸基、アミノ基、カルボキシル基などを含んでもよい。
【0016】
磁性ナノ粒子2の粒径は、一方向性多孔体樹脂6や一方向性多孔体樹脂8の用途などに応じて調整されてもよい。磁性ナノ粒子2の粒径は、例えば、数nm~数十μmの範囲から選択されてもよい。粒径の大きい磁性ナノ粒子2を用いることにより、一方向性多孔体樹脂6における細孔7や一方向性多孔体樹脂8における細孔9の径を大きくすることができる。また、粒径の小さい磁性ナノ粒子2を用いることにより、一方向性多孔体樹脂6における細孔7や一方向性多孔体樹脂8における細孔9の径を小さくすることが出来る。磁性ナノ粒子2の粒径は、一方向性多孔体樹脂6における細孔7や一方向性多孔体樹脂8における細孔9の径、形状、数、密度などに応じて調整されてもよい。
【0017】
混合物3は、磁性ナノ粒子2を凝集させるための凝集剤や磁性ナノ粒子2を分散させるための分散剤を含んでもよい。磁性ナノ粒子2を凝集させてから磁場方向に整列させることにより、一方向性多孔体樹脂6における細孔7や一方向性多孔体樹脂8における細孔9の径を大きくすることができる。また、磁性ナノ粒子2を分散させてから磁場方向に整列させることにより、一方向性多孔体樹脂6における細孔7や一方向性多孔体樹脂8における細孔9の径を小さくすることが出来る。凝集剤や分散剤の種類、量、濃度などは、一方向性多孔体樹脂6における細孔7や一方向性多孔体樹脂8における細孔9の径、形状、数、密度などに応じて調整されてもよい。
【0018】
混合物3は、光重合開始剤を含んでもよい。光重合開始剤は、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合剤、カチオン系光重合開始剤などを含んでもよい。光重合開始剤の種類は、原料1の種類などに応じて選択されてもよい。
【0019】
混合物3は、添加剤を含んでもよい。添加剤は、一方向性多孔体樹脂6や一方向性多孔体樹脂8に要求される物理的、化学的、機械的な特性に応じて選択されてもよい。
【0020】
混合物3における原料1や磁性ナノ粒子2などの組成は、一方向性多孔体樹脂6や一方向性多孔体樹脂8の用途などに応じて調整されてもよい。
【0021】
ステップS2において混合物3に印加する磁場4の強度は、一方向性多孔体樹脂6における細孔7や一方向性多孔体樹脂8における細孔9の径、形状、数、密度などに応じて調整されてもよい。
【0022】
ステップS2において混合物3に照射する光5の波長や強度などは、原料1の特性、一方向性多孔体樹脂6や一方向性多孔体樹脂8に要求される物理的、化学的、機械的な特性に応じて調整されてもよい。
【0023】
ステップS2において混合物3に照射する光5の照射角度は、磁場4に平行な方向から所定角度傾けてもよい。所定角度は、一方向性多孔体樹脂6における細孔7や一方向性多孔体樹脂8における細孔9の径、形状、数、密度などに応じて調整されてもよい。細孔7や細孔9の径が大きいほど、所定角度を大きくしてもよい。所定角度は、例えば、1°以上、2°以上、3°以上、4°以上、5°以上、6°以上、7°以上、8°以上、9°以上、10°以上、15°以上、20°以上、25°以上、30°以上、35°以上、40°以上、45°以上、50°以上、55°以上、60°以上、65°以上、70°以上、75°以上、80°以上、85°以上であってもよい。所定角度は、85°以下、80°以下、75°以下、70°以下、65°以下、60°以下、55°以下、50°以下、45°以下、40°以下、35°以下、30°以下、25°以下、20°以下、15°以下、10°以下、9°以下、8°以下、7°以下、6°以下、5°以下、4°以下、3°以下、2°以下であってもよい。
【0024】
鎖状に整列した磁性ナノ粒子2の影が、別の磁性ナノ粒子2の鎖にかかるように、光5の照射角度が調整されてもよい。これにより、複数の磁性ナノ粒子2の鎖の束を細孔7や細孔9とすることができるので、細孔7や細孔9の径を大きくすることができる。逆に、鎖状に整列した磁性ナノ粒子2の影が、別の磁性ナノ粒子2の鎖にかからないように、光5の照射角度が調整されてもよい。
【0025】
ステップS2において、異なる複数の方向から混合物3に光5を照射してもよい。例えば、対向する2つの方向から混合物3に光5を照射してもよい。これにより、磁性ナノ粒子2の影を小さくすることができるので、細孔7や細孔9の径を小さくすることができる。光5の数、照射方向、それぞれの光5の波長、強度などは、一方向性多孔体樹脂6における細孔7や一方向性多孔体樹脂8における細孔9の径、形状、数、密度などに応じて調整されてもよい。
【0026】
ステップS3において、原料1が可溶な溶媒で原料1を洗浄することにより未反応の原料1を除去してもよい。この溶媒は、エタノールやメタノールなどであってもよい。
【0027】
ステップS4において、磁性ナノ粒子2を溶解、分解、化学反応させることが可能な物質で処理することにより磁性ナノ粒子2を除去してもよい。この物質は、塩酸などの酸であってもよい。
【0028】
本開示の実施の形態に係る多孔体は、光を照射することにより重合させることが可能な高分子化合物の母材と、母材の表面から裏面に貫通する細孔と、細孔の側面に存在し、磁性を有する粒子と、を備える。この多孔体は、例えば、上記の一方向性多孔体樹脂6である。
【0029】
本開示の実施の形態に係る多孔体は、光を照射することにより重合させることが可能な高分子化合物の母材と、母材の表面から裏面に貫通し、平均細孔径が5μm以上である細孔と、を備える。この多孔体は、例えば、上記の一方向性多孔体樹脂6又は一方向性多孔体樹脂8である。平均細孔径は、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、11μm以上、12μm以上、13μm以上、14μm以上、15μm以上、16μm以上、17μm以上、18μm以上、19μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上、40μm以上、45μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上、90μm以上、100μm以上であってもよい。
【0030】
母材の厚さは、1mm以上であってもよい。母材の厚さは、2mm以上、3mm以上、4mm以上、5mm以上、6mm以上、7mm以上、8mm以上、9mm以上、10mm以上、15mm以上、20mm以上、25mm以上、30mm以上、35mm以上、40mm以上、45mm以上、50mm以上、60mm以上、70mm以上、80mm以上、90mm以上、100mm以上であってもよい。
【0031】
本開示の一方向性多孔体樹脂6及び一方向性多孔体樹脂8は、熱輸送、熱交換、フィルターなどに利用することができる。とくに、一方向性多孔体樹脂6は、磁性ナノ粒子2を含有するので、磁場によって一方向性多孔体樹脂6の位置を制御したり、回収したりすることができる。また、本開示の一方向性多孔体樹脂6及び一方向性多孔体樹脂8は、細胞足場材料や生体材料など、バイオテクノロジーや医療などの分野において利用することができる。また、本開示の一方向性多孔体樹脂6及び一方向性多孔体樹脂8は、油中水分センサなどのセンサ技術に利用することができる。
【0032】
図2は、本開示の実施の形態に係る熱輸送装置の構成を概略的に示す。熱輸送装置10は、熱媒体11、蒸発器12、凝縮器13、蒸気管14、液管15を備える。熱媒体11は、蒸発器12において発熱体16から発せられる熱により蒸発し、凝縮器13において放熱により凝縮する。すなわち、熱媒体11は、発熱体16から発せられる熱を受熱した蒸発器12の温度よりも沸点が低く、凝縮器13の温度(例えば室温)よりも融点が高いような物質を含む。蒸発器12は、発熱体16から発せられる熱を受熱して熱媒体11を蒸発させる。凝縮器13は、熱媒体11により輸送された熱を放熱して熱媒体11を凝縮させる。蒸気管14は、蒸発器12において蒸発した気体の熱媒体11を凝縮器13に輸送する。液管15は、凝縮器13において凝縮した液体の熱媒体11を蒸発器12に輸送する。
【0033】
蒸発器12は、発熱体16から発せられる熱を受熱する受熱部17と、液管15と受熱部17の間に設けられた一方向性多孔体樹脂18を備える。この一方向性多孔体樹脂18は、上記の一方向性多孔体樹脂6を含んでもよいし、一方向性多孔体樹脂8を含んでもよい。液管15から蒸発器12の内部に供給された液体の熱媒体11は、毛細管現象により一方向性多孔体樹脂18の細孔から受熱部17に供給され、受熱部17で受熱された熱により蒸発する。このとき、受熱部17が受熱した熱が液管15側に伝導すると、液管15側でも熱媒体11の蒸発が起こり、気体の熱媒体11が液管15を逆流してしまう。本実施の形態の熱輸送装置10によれば、熱伝導率の低い樹脂により形成された一方向性多孔体を用いるので、受熱部17から液管15側に熱が伝導するのを抑えることができる。また、一方向性多孔体を用いるので、熱輸送装置10における圧力損失を抑えることができる。これにより、熱輸送装置10における熱輸送効率を向上させることができる。
【0034】
[実施例]
図3は、本開示の実施例に係る一方向性多孔体樹脂を製造するための製造装置の構成例を示す。製造装置20は、スペーサー21、磁石22、ヨーク23、UV光源24を備える。スペーサー21は、上下の磁石22の間に試料25を載置するための載置台として機能する。磁石22は、試料25の上下に設けられ、試料25に鉛直方向の磁場を印加する。ヨーク23は、軟鉄などにより構成され、磁石22の磁力を増幅する。UV光源24は、試料25に紫外線を照射する。UV光源24は、磁石22の磁場方向から角度θだけ傾いた方向から試料25に紫外線を照射するように設置される。
【0035】
図3に示した製造装置20を用いて、実施例に係る一方向性多孔体樹脂を製造した。原料1として、東洋合成工業社製のアクリル系UVナノインプリント用樹脂PAK-01-CLを使用した。磁性ナノ粒子2として、粒径が70~250nmのFe粒子を使用した。磁性ナノ粒子2を5重量%添加した試料25に10分間磁場を印加して磁性ナノ粒子2を整列させた。つづいて、UV光源24から紫外線を10秒間照射した。未反応の原料1をエタノールで洗浄して除去した。その後、試料を塩酸で処理して磁性ナノ粒子2を除去した。比較実施例1として、磁性ナノ粒子2を5重量%添加した試料25に、磁場を印加せずに紫外線を照射した試料を作製した。比較実施例2として、磁性ナノ粒子2を添加しない試料25に、磁場を印加しながら紫外線を照射した試料を作製した。
【0036】
図4は、磁性ナノ粒子2を除去する前の試料の上面のSEM像を示す。図5は、磁性ナノ粒子2を除去する前の試料の断面のSEM像を示す。実施例の試料では、磁性ナノ粒子2の影になった部分に、細孔径が3~11μmである貫通孔が多数生じていることが示された。比較実施例1及び比較実施例2の試料では、そのような細孔は生じていなかった。
【0037】
図6は、磁性ナノ粒子2を除去する前後の実施例の試料の上面及び断面のSEM像を示す。磁性ナノ粒子2を除去した後の実施例の試料では、細孔径が4~14μmである貫通孔が多数生じていることが示された。塩酸処理によって磁性ナノ粒子2を除去することにより、平均細孔径が5.3μmから7.7μmに増加したが、形状は保持されていることが確認された。
【0038】
図7は、磁性ナノ粒子2を除去する前後の実施例の試料の上面のSEM像の拡大図である。この試料は、θ=30°の角度で図の右側から紫外線を照射したものである。磁性ナノ粒子2を除去する前の試料では、磁性ナノ粒子2の左側に、磁性ナノ粒子2の影に起因する細孔7が生じている。磁性ナノ粒子2を除去した後の試料では、磁性ナノ粒子2が存在していた部分も細孔9となっている。
【0039】
磁性ナノ粒子2を除去する前後の実施例の試料、磁性ナノ粒子2を除去した後の比較実施例1の試料を、吸水すると赤色を呈する紙の上に置き、上面に10μLの水滴をそれぞれ滴下した。図8は、実験結果を示す。実施例の試料では、15秒で水滴が下面に到達して紙が赤色を呈した。比較実施例1の試料では、5分間経過後も水滴に変化は見られなかった。実施例の試料では、磁性ナノ粒子2を除去する前と後の双方で、つまり一方向性多孔体樹脂6及び一方向性多孔体樹脂8の双方で、上面から下面に貫通する細孔が存在することが示された。
【0040】
図9は、θを30°、45°、60°とした場合の実施例の試料の上面のSEM像を示す。図10は、それぞれのSEM像から算出した細孔7及び細孔9の楕円率を示す。θが大きいほど、磁性ナノ粒子2の影が長く伸びて細孔7及び細孔9の楕円率が大きくなることが示された。
【0041】
図11は、対向する2つの方向から試料25に紫外線を照射した場合の試料の上面のSEM像を示す。両方向から紫外線を照射することにより、磁性ナノ粒子2の影を小さくすることができるので、磁性ナノ粒子2の内側に細孔を有する一方向性多孔体樹脂を製造することができた。
【0042】
以上、本開示を、実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0043】
1 原料、2 磁性ナノ粒子、3 混合物、4 磁場、5 光、6 一方向性多孔体樹脂、7 細孔、8 一方向性多孔体樹脂、9 細孔、10 熱輸送装置、11 熱媒体、12 蒸発器、13 凝縮器、14 蒸気管、15 液管、16 発熱体、17 受熱部、18 一方向性多孔体樹脂、20 製造装置、21 スペーサー、22 磁石、23 ヨーク、24 UV光源、25 試料。
図1
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図11