(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175951
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】集塵システム、集塵方法、水漏れ又は腐食の予測システム及び水漏れ及び腐食の予測方法
(51)【国際特許分類】
F27D 17/00 20060101AFI20241212BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F27D17/00 105G
F27D21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094081
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】森本 高徳
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 誠司
(72)【発明者】
【氏名】河崎 秀夫
【テーマコード(参考)】
4K056
【Fターム(参考)】
4K056DA02
4K056DA22
4K056DB05
4K056DB11
4K056FA11
4K056FA13
4K056FA15
4K056FA27
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、炉から集塵機までの排煙通気部における予測対象物の水漏れ又は腐食を予測する手段を備え、減肉からの破損等に至ることにより水漏れが発生する前に、事前にこれを検知し水漏れ予測対象物の破損を予測することができ、設備の予知保全に資する集塵システム、集塵方法、水漏れ又は腐食の予測システム及び水漏れ及び腐食の予測方法を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、集塵システムは、炉から集塵機までの排煙通気部の水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測するための予測システムを備えることを特徴とする。この発明によれば、予測対象物の水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測することができ、炉から集塵機までの排煙通気部における水漏れの発生や、ろ布に損傷を与えるような事態になる前に、計画的に設備の保全処置を講ずることのできる集塵システムを提供できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉から集塵機までの排煙通気部の水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測するための予測システムを備えることを特徴とする、集塵システム。
【請求項2】
前記予測システムの予測結果を管理者又は保全者に通知する通知部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の集塵システム。
【請求項3】
炉から集塵機までの排煙通気部の水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測することを特徴とする、水漏れ又は腐食の予測システム。
【請求項4】
炉から集塵機までの排煙通気部の水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測するための予測ステップを備えることを特徴とする、集塵方法。
【請求項5】
炉から集塵機までの排煙通気部の水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測するための予測ステップを備えることを特徴とする、水漏れ又は腐食の予測方法。
【請求項6】
前記煤煙通気部は、設置状態又煤煙通気部の種類を識別するための識別部を有することを特徴とする、請求項1に記載の集塵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集塵システム、集塵方法、水漏れ又は腐食の予測システム及び水漏れ及び腐食の予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼電炉・廃棄物炉などから排出される排ガスは、排煙通気部材である排煙ダクトを通じて集塵機に送られ、集塵機において排ガスに含まれる飛灰等を回収し、大気開放されている。排ガスは高温であるため、金属製外筒と金属製内筒とからなる二重筒型の水冷式排煙通気部材で、内筒の内側を排ガス流路とし、外筒と内筒の間を冷却水流路とすることで排ガスを冷却して下流に送られる構造のものがある。
【0003】
特許文献1では、水冷排煙ダクトの構造、材質を代えることなく、水冷排煙ダクトの腐食損耗を効果的に抑制することのできる、水冷排煙ダクトの操業方法が記載されている。
この操業方法では、外筒と内筒の間を冷却水流路とする二重筒型の水冷排煙ダクトの操業方法において、排ガス流路となる内筒内面の表面温度を250℃以上に5分以上保持する腐食性付着灰改質操作を、排ガス流路の一部または全部に対し、30日の間に少なくとも1回以上、行うことを特徴としている。
これにより、水冷排煙ダクトの寿命延長、水漏れによる操業停止頻度の低減などの効果は得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炉の操業が停止した際、例えば二重筒型の水冷排煙ダクトの場合、内筒の内側の排ガス流路内に滞留している排ガスの結露により、内筒の腐食が進行し、肉厚が次第に薄くなり減肉を起こすことがある。炉の操業時にこの内筒の減肉から破損が起こった場合、その破損個所から水漏れが発生し、下流に位置する集塵機のろ布に水分が付着し、さらにダストが固着する等によりろ布の圧力損失が上昇し、ろ布が破損するという問題がある。また同じく下流に位置する送風機等もこの水分により損傷するという問題がある。
【0006】
設備のダウンタイムを回避して、生産性を向上させるためには、先行技術文献1に記載の発明に開示されたような、水漏れによる操業停止頻度の低減にとどまらず、破損の予兆を検知し、問題が発生する前に保全ができることが望ましい。例えば、予知保全のように、連続的に機器の状態を監視し、設備の劣化状態を把握、予知して部品を交換、修理する保全方法が考えられる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、炉から集塵機までの排煙通気部における予測対象物の水漏れ又は腐食を予測する手段を備え、減肉からの破損等に至ることにより水漏れが発生する前に、事前にこれを検知し水漏れ又は腐食予測対象物の破損を予測することができ、設備の予知保全に資する集塵システム、集塵方法、水漏れ又は腐食の予測システム及び水漏れ及び腐食の予測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、炉から集塵機までの排煙通気部の水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測するための予測システムを備えることを特徴とし、設備の予想保全が可能な集塵システムが得られることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下を特徴とする集塵システム、集塵方法、水漏れ又は腐食の予測システム及び水漏れ及び腐食の予測方法である。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の集塵システムは、炉から集塵機までの排煙通気部の水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測するための予測システムを備えることを特徴とする。
本発明の集塵システムによれば、予測対象物の水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測することができ、炉から集塵機までの排煙通気部における水漏れの発生や、ろ布に損傷を与えるような事態になる前に、計画的に設備の保全処置を講ずることのできる集塵システムを提供できる。
【0010】
また、本発明の集塵システムの一実施態様としては、予測システムの予測結果を管理者に通知する通知部を備えることを特徴とする。
本態様によれば、予測システムの予測結果を設備の管理者に通知することができ、管理者の判断で計画的に設備の保全を実施する機会を確保することのできる集塵システムを提供できる。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の水漏れ又は腐食の予測システムは、炉から集塵機までの排煙通気部の水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測することを特徴とする。
本発明の水漏れ又は腐食の予測システムによれば、炉から集塵機までの排煙通気部の水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測するための予測手段を備えているため、炉から集塵機までの排煙通気部における水漏れの発生や、ろ布に損傷を与えるような事態になる前に、生産計画に影響するような設備の停止を回避する予知保全に資する、水漏れ又は腐食の予測システムを提供できる。また、本予測システムを既設の集塵システムに適用することにより、既設の集塵システムについても本発明の効果を得ることができる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の集塵方法は、炉から集塵機までの排煙通気部の水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測するための予測ステップを備えることを特徴とする。
本態様によれば、予め水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測するための予測ステップを備え、水漏れが発生する前に、生産計画に影響するような設備の停止を回避する設備の予知保全に資する集塵方法を提供できる。
【0013】
上記課題を解決するための本発明の水漏れ又は腐食の予測方法は、炉から集塵機までの排煙通気部の水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測するための予測ステップを備えることを特徴とする。
本態様によれば、炉から集塵機までの排煙通気部の水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測する予測ステップを備え、水漏れが発生する前に、生産計画に影響するような設備の停止を回避する設備の予知保全に資する水漏れ又は腐食の予測方法を提供できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、排煙通気部の予知保全に資する集塵システム、集塵方法、水漏れ又は腐食の予測システム及び水漏れ及び腐食の予測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施態様における集塵システムの全体的な配置構成を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施態様における排煙通気部の一実施態様である二重筒型の排煙ダクトを示す概略説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施態様における識別部を有する排煙通気部の概略説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施態様における予測システムの全体構成を示す概略説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施態様における予測システムの予測支援部のハードウェア構成を示す概略説明図である。
【
図6】本発明の一実施態様の予測情報演算部で得られた予測値が温度分布値である場合の表示例の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る集塵システム、集塵方法、水漏れ又は腐食の予測システム及び水漏れ及び腐食の予測方法の実施態様を詳細に説明する。なお、集塵方法や、水漏れ及び腐食の予測方法の説明は、集塵システムや、水漏れ又は腐食の予測システムの特徴、動作の説明に置き換えることができる。
また、実施態様に記載する集塵システム、集塵方法、水漏れ又は腐食の予測システム及び予測方法については、本発明に係る集塵システム、集塵方法、水漏れ又は腐食の予測システム及び水漏れ及び腐食の予測方法を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0017】
〔実施態様〕
[集塵システム]
図1は、本発明の第1の実施態様における集塵システム100の全体的な配置構成を示す概略説明図である。
集塵システム100は、炉101と、燃焼塔102と、排ガス冷却塔103と、集塵機104と、予測システム3と、を備える。炉101から排出される排ガスは通気部を通じて燃焼塔102へと流れ、排煙通気部10を通ってから排ガス冷却塔103へと送られ、集塵機104へと流れる。排ガス冷却塔103で冷却された排ガスは、集塵機104において排ガス中のダストがろ布により補足され、ダストが除去された排ガスが大気に開放される。
排煙通気部10は、炉101から燃焼塔102、排ガス冷却塔103、そして集塵機104へと排ガスを導く機能を有する。
予測システム3は、排煙通気部10の水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測する機能を有する。
【0018】
炉101は電気炉であってもよいし、燃焼炉、ガス化炉、焼却炉のような他の形式の工業炉であってもよい。
本明細書において、排煙通気部とは、排ガスの流路となり得る中空部を有する気密性のある部材をいうがこれに限定せず、排ガスと接触する箇所であればよく、例えば燃焼塔や冷却塔の内部および集塵機の排ガスが濾過される箇所までの内部も含まれる。具体的には、ダクトであってもよいし、所定の口径の鋼管のような配管材であってもよいし、燃焼塔や冷却塔および集塵機の内部の鋼板等であってもよい。排煙通気部の材料は、本明細書においては金属を想定しているが、気密性を保持できる材料であれば、プラスティックであってもよい。
【0019】
[排煙通気部]
燃焼塔102と排ガス冷却塔103を排ガスの流路としてつなぐ排煙通気部10の一実施態様としては、
図2に示す、二重筒型の排煙ダクト11がある。二重筒型の排煙ダクト11は、外筒11a及び内筒11bから構成される二重筒構造である。内筒11bの内側は排ガス流路となり、外筒11aと内筒11bの間を冷却水流路とする。
【0020】
外筒11a及び内筒11bの両端は、内筒11bの内径と同じ径の中空部を有するフランジ部材11cにより外筒11aと内筒11bの間の冷却水流路が閉塞されている。
外筒11aの両端のフランジ部材11cの近傍には、外筒11aの外側方向に突き出るように、冷却水ノズル11d及び11eが設けられている。冷却水ノズル11d及び11eのうち、一方から冷却水が供給され、他方から冷却水が排出される。内筒11bの内側を流れる排ガスは、内筒11bの内面で冷却水との熱交換が行われることで冷却される。
【0021】
水冷式の冷却構造を有する二重筒型の排煙ダクト11は、特に内筒11bに水漏れが発生した場合において、下流に位置する集塵機のろ布に水分が付着し、さらにダストが固着する等によりろ布の圧力損失が上昇し、ろ布が破損するという問題が起きやすい。その一方で外観からは内筒11bの水漏れの原因となる腐食の進行による減肉については把握することが困難である。減肉による損傷に伴う問題が発生してから保全を行うとしても、既にダウンタイムが発生していれば生産計画には大きな影響を与えている。
【0022】
本実施態様における、水漏れ又は腐食の予測システム及び水漏れ及び腐食の予測方法は、二重筒型の排煙ダクト11の例のように、外観から水漏れの原因となる腐食による減肉の進行が把握できない排煙通気部を有する集塵システムにおいて特に効果がある。
【0023】
[水漏れ及び腐食の予測システム]
本実施態様における水漏れ及び腐食の予測システムの構成を
図4に示す。
図4は、水漏れ及び腐食の予測システム全体を示す概略図である。なお、実施態様に記載する水漏れ及び腐食の予測システムについては、予測システムを説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
本予測システムにおいて、予測情報とは、予測対象となる排煙通気部10の、部材の電気抵抗値、温度分布値、排ガスの成分値、冷却水の水量の変化値、電極間で測定されるインピーダンス、部材の分極抵抗、その他の排煙通気部10から直接検知できる情報をいう。また、本予測システムにおいて、予測値とは、予測情報に基づいて予測情報演算部303での計算により得られる、水漏れ及び腐食の予測に用いられる数値をいう。
【0024】
図4に示すように、水漏れ及び腐食の予測システム3は、予測対象となる排煙通気部10と、予測支援部30と、表示部(管理者)31と、表示部(保全者)32とを備える。
排煙通気部10は、水漏れ及び腐食の予測の対象である。予測支援部30は、排煙通気部10から取得する水漏れ及び腐食の予測情報を、計算により予知保全のための予測値とする。予測支援部30で得られた予測値は、表示部(管理者)31及び表示部(保全者)32へと通知される。
図4で示すのは、表示部(保全者)32は集塵システムの存する場所にあり、表示部(保全者)32は遠隔にあるため、インターネットを通じて通知される場合の例である。
【0025】
図5は、水漏れ及び腐食の予測支援部のハードウェアの構成図である。
図5に示すように、予測支援部30は、予測情報検知部301と、予測情報集積部302と、予測情報演算部303と、予測情報通知部304とで構成される。
予測情報検知部301は排煙通気部10における水漏れ及び腐食の予測情報を検知する。予測情報検知部301で取得された水漏れ及び腐食の予測情報は、予測情報集積部302に集積される。予測情報集積部302に集積された予測情報は、予測情報演算部303へ送られる。予測情報演算部303では、予測情報集積部302から送られた予測情報に基づき、水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測するための予測値を計算する。予測情報演算部303で計算された、水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測するための予測値は、予測情報集積部302へ返される。予測情報集積部302へ返された水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測するための予測値は、予測情報通知部304へと送られる。
【0026】
予測情報通知部304に送られた、水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測するための予測値は、表示部(管理者)31及び表示部(保全者)32へと送られることにより、管理者及び保全者に通知される。管理者とは、本実施形態に係る集塵システムの運転の管理者のことである。また保全者とは、集塵システムから遠隔の場所に控える集塵システムの保全に係る者である。水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測するための予測値は、ネットワーク等により、遠隔で保全者にも通知され、管理者と保全者は協同で設備監視をすることができる。
【0027】
排煙通気部10は、排煙通気部の種類を識別するための識別部12を有する。識別部12から排煙通気部10の種類に関する情報を読み取り、排煙通気部10の種類を認識する。これにより、排煙通気部10に適用する、水漏れ及び腐食の少なくとも一方を予測するための予測システム3を正常に稼働することが可能となる。また、排煙通気部10の種類に応じた予測システム3を管理することができる。
【0028】
識別部12により識別する排煙通気部10の種類に関する情報とは、例えば、正規品であること、製造者、型番、製造ロット、製造年月日などの情報である。識別部12により、本発明の水漏れ又は腐食の予測システムに適合する排煙通気部と、適合しない排煙通気部を区別することができる。
識別部12の排煙通気部10の種類に関する情報は、例えば、ICタグや、バーコードなどが挙げられる。その他、鍵と鍵穴のように、物理的形状により充填材の種類を識別するものでもよい。
識別部12の位置は
図13のように排煙通気部10の右上に配置されるほか、排煙通気部10又は中央に配置されても良い。
【0029】
識別部12の排煙通気部10の種類に関する情報は、その識別手段に応じて、自動又は手動で予測支援部30の予測情報集積部302にインプットされる。予測情報演算部303は、予測情報集積部302から識別部12の情報を取り込み、排煙通気部10の種類に基づいた予測値の演算モジュールを呼び出して計算がなされるようにあらかじめプログラムされている。排煙通気部10の種類に基づいた予測値の演算モジュールは、予め予測情報演算部303の記憶領域に収められていてもよいし、識別部12に収められた演算モジュールが、自動的に予測情報演算部303にロードされる形式でもよい。
【0030】
予測情報演算部303は、識別部12の情報に基づく演算モジュールと、以下の予測情報の検知手段に応じた演算モジュールとを組み合わせて、水漏れ及び腐食の予測値を計算する。識別部12に含まれる情報の中に、排煙通気部10の種類に関する情報の他に、指定の予測情報の検知手段の情報を含めてもよい。これにより、識別部12の情報を読み込んだら、自動的に指定の演算モジュールが呼び出され、予測情報演算部303において予測値の計算ができるようになる。
指定の予測情報の検知手段の対応する演算モジュールについても、予め予測情報演算部303の記憶領域に収められていてもよいし、識別部12に収められた演算モジュールが、自動的に予測情報演算部303にロードされる形式でもよい。
【0031】
なお、識別部12を有しない排煙通気部を集塵システムに取り付けてもよいが、この場合には、予測支援部30が機能しない、あるいは、予測精度を低下することで、非正規品の利用を防止し、適切な保全を担保することができる。予測精度を低下するとは、例えば、製品寿命の設定値を短縮するなど、安全サイドで管理することであり、これにより適切な保全を担保することができる。
【0032】
[予測情報の検知手段]
排煙通気部10において検知する水漏れ及び腐食の予測情報の例としては、排煙通気部10を構成する部材の電気的抵抗値を予測情報とすることができる。排煙通気部10の長手方向で見た場合の、少なくとも両端に電極を設け、通電した場合の抵抗値の変化を予測対象物の減肉として捉える方法である。抵抗値は、予測支援部30の予測情報検知部301で検知され、予測情報集積部302で集積され、予測情報演算部303での計算により減肉についての予測値へと変換される。変換された予測情報は、予測情報集積部302へ返された後、予測情報通知部304を通じて、表示部(管理者)31及び表示部(保全者)32へ送られ通知される。抵抗値は板の断面積が減ることで、抵抗値が上がる。この抵抗値が上がる変化量で減肉を予測することができる。
【0033】
排煙通気部10において検知する水漏れ及び腐食の予測情報の例としては、排煙通気部10の温度分布値を予測情報とすることができる(
図6)。予測対象物の長手方向に沿って2以上の温度計を設置する。予測対象物内部を流れる排ガスの温度は、上流から下流にかけて徐々に低下するのが常態であるため、予測対象物の表面温度も同様に上流から下流にかけて徐々に低下する。この予測対象物の表面温度が変化する勾配が緩くなる、又は急になる等の変化を予測対象物の減肉と関係づけて捉える方法である。温度値は、予測支援部30の予測情報検知部301で検知され、予測情報集積部302で集積され、予測情報演算部303での計算により減肉についての予測値へと変換される。変換された予測値は、予測情報集積部302へ返された後、予測情報通知部304を通じて、表示部(管理者)31及び表示部(保全者)32へ送られ通知される。
【0034】
排煙通気部10において検知する水漏れ及び腐食の予測情報の例としては、排ガスの成分値を予測情報とすることができる。例えば、排ガス成分である硫黄酸化物濃度を計測するSOx分析計、塩化水素濃度を計測するHCL分析計及び水分濃度を計測する水分計、のうち少なくとも1つを備え、硫黄酸化物濃度、塩化水素濃度及び水分濃度のうち少なくとも1つの計測の結果に応じて、腐食速度を予測する。
腐食速度を推定する際には、計測された、硫黄酸化物濃度、塩化水素濃度及び水分濃度のうち少なくとも1つを考慮し、積算された排ガス濃度と腐食速度の関係から、予測される腐食深度を外挿により取得する方法がある。濃度が高ければ、腐食速度は高いという事が予測される。また、濃度と積算時間とが分かれば、腐食又は水漏れの予測がより正確に判断できる。
【0035】
排煙通気部10において検知する水漏れ及び腐食の予測情報の例としては、冷却水の水量の変化値を予測情報とすることができる。二重筒型の排煙通気部材は外筒と内筒から構成され、内筒の内側を排ガス流路とし、外筒と内筒の間を冷却水流路とし、排ガスと冷却水との熱交換させることで排ガスを冷却する。冷却水の流入量と流出量に差があれば、その差分は水漏れであると捉える方法である。冷却水の流入量と流出量の値は、予測支援部30の予測情報検知部301で検知され、予測情報集積部302で集積され、予測情報演算部303での計算により減肉についての予測情報へと変換される。変換された予測情報は、予測情報集積部302へ返された後、予測情報通知部304を通じて、表示部(管理者)31及び表示部(保全者)32へ送られ通知される。
【符号の説明】
【0036】
3…予測システム、10…排煙通気部、11…二重筒型排煙ダクト、11a…外筒、11b…内筒、11c…フランジ、11d…冷却水ノズル、11e…冷却水ノズル、12…識別部、30…予測支援部、31…表示部(管理者)、32…表示部(保全者)、100…集塵システム、101…炉、102…燃焼塔、103…冷却塔、104…集塵機、301…予測情報検知部、302…予測情報集積部、303…予測情報演算部、304…予測情報通知部、311…排煙通気部の温度分布例