(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175958
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】圧力検出装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20241212BHJP
G01L 1/20 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
G01L1/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094102
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】迫 和彦
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AB06
(57)【要約】
【課題】圧力が検出される範囲が細分化された圧力検出装置を提供する。
【解決手段】圧力検出装置は圧力センサを備える。圧力センサは、順に重ねられた基材、第1回路形成層、センサ層、及び第2回路形成層を備える。第1回路形成層は、第1面と複数の第1検出電極と複数の第1個別検出領域を有する。第2回路形成層は、第2面と複数の第2検出電極と複数の第2個別検出領域を有する。複数の第1検出電極は第1方向と第2方向とに配列し、複数の第2検出電極は第1方向と第2方向とに配列し、第1方向及び第2方向に交差する第3方向から視て、第1検出電極と第2検出電極は、互いに第1方向及び第2方向にずれて配置される。第3方向から視て、1つの第2個別検出領域は、複数の第1個別検出領域に跨って配置される。第3方向に互いに重なる第1個別検出領域の一部と第2個別検出領域の一部を合成個別検出領域とし、合成個別検出領域毎に荷重を算出する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重が入力される圧力センサを備え、
前記圧力センサは、順に重ねられた基材、第1回路形成層、センサ層、及び第2回路形成層を備え、
前記第1回路形成層は、
前記センサ層と対向する第1面と、
前記第1面に配置された複数の第1検出電極と、
複数の前記第1検出電極に対応して区分けされた複数の第1個別検出領域と、
を有し、
前記第2回路形成層は、
前記センサ層と対向する第2面と、
前記第2面と反対方向を向き、前記荷重が入力される検出面と、
前記第2面に配置された複数の第2検出電極と、
複数の前記第2検出電極に対応して区分けされた複数の第2個別検出領域と、
を有し、
複数の前記第1検出電極は、前記検出面と平行な第1方向と、前記検出面と平行でありかつ前記第1方向と交差する第2方向と、に配列し、
複数の前記第2検出電極は、前記第1方向と前記第2方向とに配列し、
前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向から視て、前記第1検出電極と前記第2検出電極は、互いに前記第1方向及び前記第2方向のそれぞれにずれて配置され、
前記第3方向から視て、1つの前記第2個別検出領域は、複数の前記第1個別検出領域に跨って配置され、
前記第3方向に互いに重なる前記第1個別検出領域の一部と前記第2個別検出領域の一部を合成個別検出領域とし、前記合成個別検出領域毎に荷重を算出する
圧力検出装置。
【請求項2】
複数の前記第2検出電極は、前記第1方向に隣り合う2つの前記第1検出電極の中間に配置され、かつ前記第2方向に隣り合う2つの前記第1検出電極の中間に配置される
請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項3】
前記第1回路形成層及び前記第2回路形成層のそれぞれの駆動を制御する駆動制御部を有し、
前記駆動制御部は、前記合成個別検出領域に重なる前記第1個別検出領域及び前記第2個別検出領域のそれぞれから検出された圧力値から、前記合成個別検出領域の圧力値を算出する
請求項1又は請求項2に記載の圧力検出装置。
【請求項4】
前記駆動制御部は、前記第1回路形成層に作用した圧力を検出するタイミングと、前記第1回路形成層に作用した圧力を検出するタイミングと、をずらしている
請求項3に記載の圧力検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力検出装置は、圧力が入力される圧力センサと、圧力センサの駆動を制御する駆動制御部と、を備えている。下記特許文献の圧力センサは、複数の検査電極が設けられた回路形成層と、検出電極に対向する共通電極と、検出電極と共通電極との間に挟まれたセンサ層と、を備えている。圧力センサに圧力が入力されていない状態で、センサ層は検出電極から離間している。圧力センサに圧力が入力されると、センサ層は、検出電極に向かって移動し、検出電極と接触する。これにより、共通電極から検出電極に電流が流れ、圧力の入力が検出される。このように圧力センサは、検出電極毎に圧力を検出することができる。言い換えると、圧力センサの検出領域は、検出電極と同数の個別検出領域に区分けされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、圧力の検出範囲(個別検出領域)を更に細分化した圧力検出装置の開発が望まれている。
【0005】
本発明は、圧力を検出する範囲(領域)が細分化された圧力検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る圧力検出装置は、荷重が入力される圧力センサを備える。前記圧力センサは、順に重ねられた基材、第1回路形成層、センサ層、及び第2回路形成層を備える。前記第1回路形成層は、前記センサ層と対向する第1面と、前記第1面に配置された複数の第1検出電極と、複数の前記第1検出電極に対応して区分けされた複数の第1個別検出領域と、を有する。前記第2回路形成層は、前記センサ層と対向する第2面と、前記第2面と反対方向を向き、前記荷重が入力される検出面と、前記第2面に配置された複数の第2検出電極と、複数の前記第2検出電極に対応して区分けされた複数の第2個別検出領域と、を有する。複数の前記第1検出電極は、前記検出面と平行な第1方向と、前記検出面と平行でありかつ前記第1方向と交差する第2方向と、に配列する。複数の前記第2検出電極は、前記第1方向と前記第2方向とに配列する。前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向から視て、前記第1検出電極と前記第2検出電極は、互いに前記第1方向及び前記第2方向のそれぞれにずれて配置される。前記第3方向から視て、1つの前記第2個別検出領域は、複数の前記第1個別検出領域に跨って配置される。前記第3方向に互いに重なる前記第1個別検出領域の一部と前記第2個別検出領域の一部を合成個別検出領域とし、前記合成個別検出領域毎に荷重を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る圧力検出装置を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、圧力センサの断面を模式的に示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態の第1回路形成層の回路構成を示す回路図である。
【
図4】
図4は、実施形態の圧力センサの検出面に荷重が入力された状態を示す模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る圧力検出装置の構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、第1検出領域の一部と第2検出領域の一部を抽出し、拡大した模式図である。
【
図7】
図7は、第1個別検出領域と第2個別検出領域のそれぞれで検出された圧力値と、算出された合成個別検出領域の圧力値と、を説明するための図面である。
【
図8】
図8は、実施形態における圧力検出装置の動作のタイムチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の圧力検出装置を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示の発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の構成要素には、同一の符号を付し、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
また、本明細書及び特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0010】
図1は、実施形態に係る圧力検出装置を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、圧力検出装置100は、圧力センサ1と、圧力センサ1の動作(駆動)を制御する制御基板80と、を備えている。圧力センサ1の一面は、圧力を検出する検出面1aとなっている。圧力センサ1は、検出面1aと直交する方向の厚みが小さく、板状に形成されている。制御基板80には、制御回路81及び電源回路82が設けられている。制御基板80は、ホスト90と接続する。ホスト90は、圧力検出装置100を制御する上位の制御装置である。以下、各構成について説明する。
【0011】
図2は、圧力センサの断面を模式的に示す模式図である。
図2に示すように、圧力センサ1は、順に配置された基板6、第1回路形成層10、センサ層20、第2回路形成層30、及び保護層40を備えている。以下、基板6、第1回路形成層10、センサ層20、第2回路形成層30、及び保護層40が重ねられている方向を積層方向と称する。なお、積層方向を第3方向と称する場合がある。積層方向のうち、第1回路形成層10から視て第2回路形成層30が配置される方向を第1積層方向Z1と称する。第1積層方向Z1の反対方向を第2積層方向Z2と称する。第1積層方向Z1から視ることを平面視と称する。
【0012】
基板6は、第1回路形成層10を支持する基材であり、荷重が加えられても変形し難い材料により製造されている。また、基板6は、絶縁性を有している。例えば、基板6は、ガラス基板、樹脂基板等により形成される。
【0013】
第1回路形成層10は、基板6に積層され、基板6と一体化している。第1回路形成層10は、特に図示しないが、複数の絶縁層が積層した積層構造となっている。
図1に示すように、平面視した場合、第1回路形成層10は、圧力を検出する第1検出領域2Aと、圧力を検出しない第1周辺領域3Aと、に区分けされる。第1検出領域2Aは、第1回路形成層10の中央部に位置している。第1周辺領域3Aは、第1検出領域2Aの外側を囲む枠状となっている。
【0014】
第1検出領域2Aは、平面視で長方形に形成されている。第1検出領域2Aの外枠2Mは、一対の短辺2aと、一対の長辺2bと、を有している。以下、検出面1aと平行であり、かつ短辺2aと平行な方向を第1方向Xと称する。検出面1aと平行であり、かつ長辺2bと平行な方向、言い換えると第1方向Xと直交(交差)する方向を第2方向Yと称する。そのほか、上述した積層方向(第3方向)は、第1方向X及び第2方向Yに対し直交(交差)する方向である。
【0015】
図2に示すように、第1回路形成層10は、第1積層方向Z1を向く第1面11を有している。この第1面11には、複数の第1検出電極12と複数の第1共通電極18が設けられている。
【0016】
第1検出電極12は、圧力を検出するための電極であり、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの金属材料で製造されている。
図1に示すように、第1検出電極12は、平面視で矩形状に形成されている。複数の第1検出電極12は、第1検出領域2Aに配置されている。また、複数の第1検出電極12は、第1方向X及び第2方向Yに配列している。よって、第1回路形成層10では、第1検出領域2Aを第1方向Xと第2方向Yに区分けした各領域で圧力を検出することができる。この区分けされた領域を第1個別検出領域4Aと称する。よって、第1検出領域2Aは、第1方向X及び第2方向Yに配列する複数の第1個別検出領域4Aから構成されている。
【0017】
図2に示すように、第1回路形成層10の内部には、複数の第1駆動用トランジスタ13が設けられている。第1駆動用トランジスタ13は、1つの第1個別検出領域4Aに対し1つずつ設けられている。よって、複数の第1駆動用トランジスタ13は、第1個別検出領域4に対応して、第1方向X及び第2方向Yに配列している。
【0018】
また、第1回路形成層10は、第1駆動用トランジスタ13を駆動するための各種構成を含んでいる。具体的に、第1回路形成層10は、第1接続部7(
図1参照)、第1ゲート線駆動回路8(
図1参照)、第1信号線選択回路9(
図1参照)、第1ゲート線14(
図3参照)、及び第1信号線15(
図3参照)を有している。
【0019】
図1に示すように、第1接続部7、第1ゲート線駆動回路8、及び第1信号線選択回路9は、第1周辺領域3Aに配置されている。第1接続部7は、制御基板80と接続するためのものであり、例えばフレキシブルプリント基板やリジット基板が挙げられる。
【0020】
第1ゲート線駆動回路8は、制御回路81から供給される各種制御信号に基づき複数の第1ゲート線14(
図3参照)を駆動する回路である。第1ゲート線駆動回路8は、複数の第1ゲート線14を順次に選択し、選択された第1ゲート線14にゲート駆動信号を供給する。第1信号線選択回路9は、複数の第1信号線15(
図3参照)を順次又は同時に選択するスイッチ回路である。第1信号線選択回路9は、例えばマルチプレクサである。第1信号線選択回路9は、制御回路81から供給される選択信号に基づき、選択された第1信号線15と制御回路81とを接続する。
【0021】
図3は、実施形態の第1回路形成層の回路構成を示す回路図である。
図3に示すように、第1ゲート線14は、第1検出領域2A内を第1方向Xに延在している。また、複数の第1ゲート線14が第2方向Yに配列している。第1信号線15は、第1検出領域2A内を第2方向Yに延在している。また、複数の第1信号線15が第1方向Xに配列している。
【0022】
そのほか、特に図示しないが、第1回路形成層10の第1周辺領域3Aには、第1共通配線が設けられている。第1共通配線は、第1共通電極18に電流を供給するための配線である。第1共通配線は、第1接続部7を介して制御基板80に接続し、制御回路81から一定量の電流が供給されている。
【0023】
図2に示すように、第1駆動用トランジスタ13は、半導体層13aと、ゲート絶縁膜13bと、ゲート電極13cと、ドレイン電極13dと、ソース電極13eと、を備えている。ソース電極13eは、第1検出電極12と接続している。ゲート電極13cは、第1ゲート線14(
図3参照)と接続している。ドレイン電極13dは、第1信号線15(
図3参照)と接続している。第1ゲート線14を走査すると、第1駆動用トランジスタ13が閉じる(オン状態となる)。これにより、第1検出電極12に入力された電気信号(電流)は、第1駆動用トランジスタ13を介して、第1信号線15に出力される。そして、電気信号(電流)は、第1信号線15から制御回路81に送られる。
【0024】
第1共通電極18は、1つの第1個別検出領域4Aに対し1つずつ設けられている。また、第1共通電極18は、第1検出電極12と離隔している。第1共通電極18は、第1回路形成層10の第1面11よりも第2積層方向Z2に埋設する図示しない配線により、第1共通配線(不図示)と接続し、一定量の電流が供給されている。
【0025】
センサ層20は、板状に形成され、第1方向X及び第2方向Yに延在している。センサ層20は、第1積層方向Z1を向く第1センサ面21と、第2積層方向Z2を向く第2センサ面22と、を有している。第2センサ面22は、第1回路形成層10を第1積層方向Z1から覆い、第1検出電極12と第1共通電極18のそれぞれに接触している。
【0026】
センサ層20は、絶縁性が高い樹脂層の内部に導電性の微粒子が含まれた材料で製造されている。導電性の微粒子は、樹脂層の内部で分散し、互いに離隔している。このため、樹脂層が変形していない状態でセンサ層20の抵抗値が高い。よって、センサ層20は、第1検出電極12と第1共通電極18のそれぞれに接触しているものの、第1検出電極12と第1共通電極18は電気的に接続していない。一方、樹脂層が変形すると微粒子が接触又は近接し、センサ層20の抵抗値が小さくなる。また、樹脂層の変形量が大きくなると、微粒子同士の接触する量が増加し、センサ層20の抵抗値が大きく低減する。よって、センサ層20が変形すると、第1検出電極12と第1共通電極18が電気的に接続する。
【0027】
次に、第2回路形成層30について説明するが、第2回路形成層30は、第1回路形成層10と共通する技術的要素を有している。よって、第2回路形成層30の説明では共通する技術的要素の説明を簡単とする。
【0028】
図1に示すように、平面視した場合、第2回路形成層30は、圧力を検出する第2検出領域2Bと、圧力を検出しない第2周辺領域3Bと、に区分けされる。第2検出領域2Bは、第2回路形成層30の中央部に位置している。
【0029】
第2検出領域2Bは、第1検出領域2Aと同じ長方形に形成され、第1検出領域2Aと同じ大きさとなっている。ただし、第2検出領域2Bは、第1検出領域2Aに対し、第1方向X及び第2方向Yに僅かにずれて配置されている。つまり、平面視した場合、第1検出領域2Aの外枠2Mと第2検出領域2Bの外枠2Nが一致していない。この第1検出領域2Aと第2検出領域2Bとの位置関係については後述する。第2周辺領域3Bは、第2検出領域2Bを囲む枠状となっている。
【0030】
図2に示すように、第2回路形成層30は、第2積層方向Z2を向く第2面31を有している。この第2面31には、複数の第2検出電極32と複数の第2共通電極38が設けられている。
図1に示すように、第2検出電極32は、平面視で矩形状に形成され、第1検出電極12と同じ大きさとなっている。複数の第2検出電極32は、第2検出領域2B内に配置されている。また、複数の第2検出電極32は、第1方向X及び第2方向Yに配列している。よって、第2検出領域2Bは、第1方向X及び第2方向Yに配列した複数の第2個別検出領域4Bから構成される。
【0031】
図2に示すように、第2回路形成層30の内部には、複数の第2駆動用トランジスタ33が設けられている。第2駆動用トランジスタ33は、1つの第2個別検出領域4Bに対し1つずつ設けられている。また、第2回路形成層30は、特に図示しないが、第2駆動用トランジスタ33を駆動するための、第2接続部、第2ゲート線駆動回路、第2信号線選択回路、第2ゲート線、及び第2信号線を有している。
【0032】
第2共通電極38は、1つの第2個別検出領域4Bに対し1つずつ設けられている。第2共通電極38は、第2検出電極32と離隔している。第2共通電極38は、第2回路形成層30に埋設された図示しない配線により、第2共通配線(不図示)と接続している。なお、第2共通配線は、第2回路形成層30の第2周辺領域3Bに設けられている。第2共通配線は、第2接続部を介して制御基板80に接続し、制御回路81から一定量の電流が供給されている。よって、第2共通電極38には、一定量の電流が供給されている。また、センサ層20の第1センサ面21は、第2積層方向Z2から第2回路形成層30を覆い、第2検出電極32及び第2共通電極38のそれぞれに接触している。
【0033】
保護層40は、例えばゴム、樹脂など、弾性変形可能であり、絶縁性を有する材料で形成されている。また、保護層40の第1積層方向Z1を向く面が検出面1aとなっている。なお、本開示において、保護層40は必須の構成ではない。つまり、第2回路形成層30の第1積層方向Z1を向く面が検出面1aを構成してもよい。
【0034】
図4は、実施形態の圧力センサの検出面に荷重が入力された状態を示す模式図である。なお、
図4で示す破線1aは、圧力入力前の検出面1aの位置を示している。次に、圧力センサ1に荷重が入力された場合について説明する。
図4に示すように、検出面1aに圧力(第2積層方向Z2の荷重、
図4の矢印A1を参照)が入力すると、保護層40及び第2回路形成層30を介して、センサ層20に荷重が伝達する。センサ層20の第1センサ面21が第2積層方向Z2に窪み、センサ層20の積層方向の厚みが小さくなる。
【0035】
これにより、センサ層20の抵抗値が小さくなり、第1検出電極12と第1共通電極18とが電気的に接続する。そして、第1共通電極18から第1検出電極12に電流が流れる(矢印A2参照)。第1検出電極12に流れた電流は、第1信号線15を介して制御回路81に送られる。また、第2検出電極32と第2共通電極38も電気的に接続し、第2共通電極38から第2検出電極32に電流が流れる(矢印A3参照)。第2検出電極32に流れた電流は、第2信号線(不図示)を介して制御回路81に送られる。
【0036】
以上から、検出面1aに圧力が入力すると、第1回路形成層10と第2回路形成層30のそれぞれで圧力が検出される。また、圧力(矢印A1参照)が大きくなると、センサ層20の変形量が大きくなり、センサ層20の抵抗値の低減量が大きくなる。よって、第1検出電極12及び第2検出電極32に流れた電流値を測定することで、入力された圧力の大きさを検出できる。
【0037】
図1に示すように、制御基板80に設けられた制御回路81は、制御IC(Control Integrated Circuit)である。電源回路82は、制御回路81に電力に供給する。これにより制御回路81は、圧力センサ1に供給する信号を生成することができる。
【0038】
図5は、実施形態に係る圧力検出装置の構成例を示すブロック図である。制御回路81及び電源回路82は、駆動制御部83を構成する。また、駆動制御部83は、タイミング制御部84と、第1駆動制御部85と、第2駆動制御部86と、データ合成部87と、を有している。
【0039】
タイミング制御部84は、ホスト90から圧力検出指令を受け、第1駆動制御部85及び第2駆動制御部86に対しセンシングを指令する。また、タイミング制御部84は、第1駆動制御部85へのセンシング指令のタイミングと、第2駆動制御部86へのセンシング指令のタイミングと、をずらしている。
【0040】
第1駆動制御部85は、センシング指令を受け、第1ゲート線駆動回路8及び第1信号線選択回路9に駆動信号を供給する。これにより、第1回路形成層10は、第1個別検出領域4Aに入力した圧力を検出する。第1駆動制御部85は、第1回路形成層10による検出結果(第1個別検出領域4A毎の圧力値(電流値))を受け取り、データ合成部87に渡す。
【0041】
第2駆動制御部86は、センシング指令を受けた場合、第2ゲート駆動回路(不図示)及び第2信号線選択回路(不図示)に駆動信号を供給する。これにより、第2回路形成層30は、第2個別検出領域4Bに入力した圧力を検出する。また、第2駆動制御部86は、第2回路形成層30による検出結果(第2個別検出領域4B毎の圧力値(電流値))を受け取り、データ合成部87に渡す。
【0042】
データ合成部87は、第1個別検出領域4Aの圧力値と、第2個別検出領域4Bの圧力値と、を合成している。データ合成部87による合成方法は後述する。そして、データ合成部87は、合成結果をホスト90に供給する。なお、合成結果とは、後述する合成個別検出領域5毎の圧力値である。
【0043】
次に、第1検出領域2Aと第2検出領域2Bの位置関係の詳細を説明する。
図6は、第1検出領域の一部と第2検出領域の一部を抽出し、拡大した模式図である。
図6及び
図7では、第1検出電極12と第2検出電極32を区別し易くするため、第2検出電極32の方にドットを付している。
図6に示すように、第1検出電極12と第2検出電極32は、平面視で互いに第1方向X及び第2方向Yにずれている。
【0044】
より具体的には、第1方向X及び第2方向Yに隣り合う第1検出電極12の中心O12間の距離はL11となっている。なお、第2検出電極32の中心O32間の距離L12も距離L11と同じである。中心O12と中心O32の第1方向Xの距離L13は、距離L11の半分となっている。よって、第2検出電極32は、第1方向Xに隣り合う2つの第1検出電極12の中間に配置されている。また、中心O12と中心O32の第2方向Yの距離L14は、距離L13と同じであり、距離L11の半分となっている。よって、第2検出電極32は、第2方向Yに隣り合う2つの第1検出電極12の中間に配置されている。
【0045】
平面視した場合、1つの第2個別検出領域4Bは、4つ(複数)の第1個別検出領域4Aに跨っている。言い換えると、第1個別検出領域4Aを四分割した一部と第2個別検出領域4Bを四分割した一部とが互いに重なっている。以下、第1個別検出領域4Aを四分割した一部と第2個別検出領域4Bを四分割した一部とが互いに重なっている領域を合成個別検出領域5(
図6の斜線が付された領域を参照)と称する。
【0046】
以上から、第1検出領域2Aと第2検出領域2Bとは、合成個別検出領域5の1つ分だけ、第1方向X及び第2方向Yに互いにずれた配置となっている。次に、データ合成部87による合成方法(合成個別検出領域5の圧力値の算出方法)の一例について説明する。
【0047】
図7は、第1個別検出領域と第2個別検出領域のそれぞれで検出された圧力値と、算出された合成個別検出領域の圧力値と、を説明するための図面である。
図7に示された数値は、圧力値である。また、合成個別検出領域5の圧力値については数値に下線を引いている。実施形態のデータ合成部87は、合成個別検出領域5に重なる第1個別検出領域4Aと第2個別検出領域4Bのそれぞれで検出された圧力値を足し合わせて、合成個別検出領域5で検出された圧力値としている。
【0048】
例えば、第1個別検出領域4Aで検出された圧力値が「30」とする(
図7の紙面上で左上に位置する第1個別検出領域4Aを参照)。第2個別検出領域4Bで検出された圧力値が「40」とする(
図7の紙面上で左上に位置する第2個別検出領域4Bを参照)とする。この場合、データ合成部87は、圧力値「30」と圧力値「40」を足し合わせた値「70」を合成個別検出領域5で検出された圧力値としている。このような方法により各合成個別検出領域5の圧力値を算出している。
【0049】
また、本実施形態のタイミング制御部84は、第1駆動制御部85へのセンシング指令のタイミングと、第2駆動制御部86へのセンシング指令のタイミングと、をずらしている。次に、この効果について説明する。
【0050】
図8は、実施形態における圧力検出装置の動作のタイムチャート図である。なお、本実施形態の第1回路形成層の10は、第1ゲート線14の第2方向Yに配列する本数がN本とする。また、第2回路形成層30は、第2ゲート線(不図示)の第2方向Yに配列する本数がK本とする。また、第1ゲート線14の本数Nと第2ゲート線の本数Kは同数である(N=K)。
【0051】
また、センシング時、第1回路形成層の10の第1ゲート線駆動回路8は、第2方向Yの一端に配置される1行目の第1ゲート線14から、第2方向Yの他端に配置されるN行目の第1ゲート線14に向かって順に選択される。同様に、第2回路形成層の30の第2ゲート線駆動回路(不図示)は、第2方向Yの一端に配置される1行目の第2ゲート線(不図示)から、第2方向Yの他端に配置されるK行目の第2ゲート線(不図示)に向かって順に選択される。
【0052】
図8に示すように、タイミング制御部84が第1駆動制御部85にセンシング指令を行う時刻Tは、時刻T1、時刻T3、時刻T5である。一方で、タイミング制御部84が第2駆動制御部86にセンシング指令する時刻Tは、時刻T2、時刻T4、時刻T6となっており、時刻Tがずれている。
【0053】
なお、本実施形態において、タイミング制御部84が第1駆動制御部85及び第2駆動制御部86に対し、第1センシング指令と第2センシング指令と第3センシング指令の合計3回のセンシング指令をした例を挙げている。これによれば、圧力の経時的変化を検出することができる。ただし、本開示は、複数回、センシングすることは必須ではない。
【0054】
ここで、第2駆動制御部86への第1センシング指令は、時刻T2に行われている。この時刻T2は、第1回路形成層10の第1センシングにかかる時間の半分が経過した時刻である。つまり、時刻T2の時点で、第2回路形成層30は1行目の第2ゲート線(不図示)を走査しているが、第1回路形成層10はN/2行目の第1ゲート線14を走査している。よって、第1回路形成層10と第2回路形成層30とでは、走査している箇所が第2方向Yにずれている。
【0055】
同様に、時刻T3の時点で、第2センシング指令により第1回路形成層10は、1行目の第1ゲート線14を走査しているが、第2回路層30は、K/2行目の第2ゲート線(不図示)を走査している。よって、第1回路形成層10と第2回路形成層30とでは、走査している箇所が第2方向Yにずれている。
【0056】
以上から、第1回路形成層10の第1共通電極18から第2回路形成層30の第2検出電極32に電流が流れたり、若しくは、第2回路形成層30の第2共通電極38から第1回路形成層10の第1検出電極12に電流が流れたりすることが抑制される。つまり、センシングの結果に対する信頼性が向上する。
【0057】
以上、実施形態によれば、合成個別検出領域5毎に作用した圧力値を算出することができる。この合成個別検出領域5の大きさは、従来の個別検出領域(第1個別検出領域及び第2個別検出領域)の四分の一である。よって、実施形態の圧力検出装置100によれば、圧力を検出する範囲(領域)の細分化が達成される。また、従来は、検出電極と検出範囲(個別検出領域)が同数となっているが、本実施形態の合成個別検出領域5の数は、検出電極(第1検出電極12及び第2検出電極32)の数よりも多い。よって、検出電極数の低減を図れる。
【0058】
また、実施形態の圧力センサ1は、1つのセンサ層20を第1回路形成層10と第2回路形成層30とで共有している。よって、第1回路形成層10の第1共通電極18から第2回路形成層30の第2検出電極32に電流が流れたり、若しくは、第2回路形成層30の第2共通電極38から第1回路形成層10の第1検出電極12に電流が流れたりする可能性がある。しかしながら、本実施形態では、第1回路形成層10と第2回路形成層30へのセンシング指令のタイミングがずれている。このため、第1回路形成層10の第1共通電極18から第2回路形成層30の第2検出電極32に電流が流れたり、若しくは、第2回路形成層30の第2共通電極38から第1回路形成層10の第1検出電極12に電流が流れたりする、ということが生じない。
【0059】
以上、実施形態の圧力検出装置100について説明したが、本開示は実施形態で示した例に限定されない。例えば、実施形態のデータ合成部87は、第1個別検出領域4Aで検出された圧力値と、第2個別検出領域4Bで検出された圧力値と、を単に足し合わせて合成個別検出領域5の圧力値としているが、本開示は、この合成方法に限定されない。本開示は、第1個別検出領域4Aで検出された圧力値と、第2個別検出領域4Bで検出された圧力値との平均値を合成個別検出領域5としてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、第2回路形成層30のセンシング指令を、第1回路形成層10の第1センシングにかかる時間の半分が経過した後(時刻T2、T4、T6)に行っているが、本開示はこれに限定されない。
【0061】
また、第1共通電極18と第2検出電極32との距離や、第2共通電極38と第1検出電極12の距離が比較的大きい場合、言い換えると、第1共通電極18から第2検出電極32に、又は第2共通電極38から第1検出電極12に電流が流れる可能性が低い場合、第1回路形成層10のセンシングと第2回路形成層30のセンシングを同時に行ってもよい。また、上記実施形態においては、第1回路形成層10と第2回路形成層30は実質的に検出領域の大きさが同じものを採用しているが、いずれか一方の検出領域が他方の検出領域よりも小さい構成も採用可能である。より具体的には、第1回路形成層10により形成される第1検出領域2Aを第2回路形成層30により形成される第2検出領域2Bよりも少し小さく形成し、平面視で第1出領域2Aが第2検出領域2B内に収まる構成も採用可能である。なお、この場合、いずれの回路形成層の検出電極も同じ大きさを有しており、第1回路形成層10のゲート線、信号線及び検出電極の数が第2回路形成層30よりも少なくなる。また、第1回路形成層10について、第2回路形成層30よりもゲート線と信号線のいずれか一方の本数のみを減らすまたは増やすことで、第1検出領域2Aと第2検出領域2Bの大きさを異ならせる構成も採用可能である。
【0062】
また、実施形態のセンサ層20は、樹脂層の内部に導電性の微粒子が含まれた材料により製造されているが、本開示はこれに限定されない。例えば、センサ層を導電性樹脂で形成し、検出電極及び共通電極との接触面積の増加により、検出電極と共通電極が電気的に接続するように構成してもよい。
【0063】
また、実施形態の第2検出電極32は、第1検出電極12の中間に配置されているが、本開示は、第2検出電極32が第1検出電極12の中間からずれてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 圧力センサ
2A 第1検出領域
2B 第2検出領域
3A 第1周辺領域
3B 第2周辺領域
4A 第1個別検出領域
4B 第2個別検出領域
5 合成個別検出領域
6 基板
10 第1回路形成層
11 第1面
12 第1検出電極
18 共通電極
20 センサ層
30 第2回路形成層
31 第2面
32 第2検出電極
38 第2共通電極
80 制御基板
81 制御回路
82 電源回路
83 駆動制御部
84 タイミング制御部
85 第1駆動制御部
86 第2駆動制御部
87 データ合成部
100 圧力検出装置