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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175962
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】測距装置及び測距方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/18 20200101AFI20241212BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G01S17/18
G01C3/06 120Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094109
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】河野 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】松山 和憲
(72)【発明者】
【氏名】井辻 健明
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA05
2F112CA04
2F112CA05
2F112DA02
2F112DA04
2F112DA25
2F112DA26
2F112DA28
2F112EA05
2F112FA41
2F112GA01
5J084AA05
5J084AB01
5J084AB07
5J084AC02
5J084AC03
5J084AC04
5J084AC05
5J084AC07
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA07
5J084BA36
5J084BA40
5J084BB02
5J084BB04
5J084CA03
5J084CA20
5J084CA32
5J084EA05
(57)【要約】
【課題】距離情報の取得に要する時間を短縮しうる測距装置及び測距方法を提供する。
【解決手段】測距装置は、発光部から発せられ対象物によって反射された光を含む光信号を検出してパルス信号に変換する受光部と、発光部の発光のごとに、受光部を、光が射出されてから検出されるまでの時間に応じて定められた複数の階級に対応して設定された複数の露光期間のうちのいずれかに設定する露光期間制御部と、発光部の複数回の発光を含む所定のフレーム期間の間に受光部から出力される信号に基づいて、階級とパルス信号を検出した回数を示す度数との関係を表す情報を生成する情報生成部と、情報における度数のピークを判定するピーク判定部と、を有する。露光期間制御部は、第1フレーム期間に取得した情報に度数のピークが検出された場合は、次の第2フレーム期間において、ピークが検出された階級に対応する期間により近い期間から順に露光期間に設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部から発せられ測定対象領域にある対象物によって反射された光を含む光信号を検出してパルス信号に変換する受光部と、
前記発光部の発光のごとに、前記受光部を、前記光が射出されてから検出されるまでの時間に応じて定められた複数の階級に対応して設定された複数の露光期間のうちのいずれかに設定する露光期間制御部と、
前記発光部の複数回の発光を含む所定のフレーム期間の間に前記受光部から出力される信号に基づいて、前記階級と前記パルス信号を検出した回数を示す度数との関係を表す情報を生成する情報生成部と、
前記情報における度数のピークを判定するピーク判定部と、を有し、
前記露光期間制御部は、第1フレーム期間に取得した前記情報に度数のピークが検出された場合は、前記第1フレーム期間の次の第2フレーム期間において、前記ピークが検出された階級に対応する期間により近い期間から順に前記露光期間に設定する
ことを特徴とする測距装置。
【請求項2】
前記第2フレーム期間では、前記ピークに対応するピークが検出された階級で測定を停止し、以降の階級における測定を行わずに次のフレーム期間に移行する
ことを特徴とする請求項1記載の測距装置。
【請求項3】
前記露光期間制御部は、前記第1フレーム期間に取得した前記情報に度数のピークが検出されなかった場合は、前記第2フレーム期間において、前記複数の階級に対応する複数の期間を順に前記露光期間に設定する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の測距装置。
【請求項4】
前記ピーク判定部は、前記ピークが検出された前記階級に対応する時間情報に基づいて前記対象物までの距離情報を算出する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の測距装置。
【請求項5】
前記対象物に対する相対的な移動速度を示す速度情報を取得する速度情報取得部を更に有し、
前記露光期間制御部は、前記速度情報を考慮して、前記ピークが検出された階級に対応する期間を算出する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の測距装置。
【請求項6】
前記露光期間制御部は、前のフレーム期間に取得した前記情報に度数のピークが検出されたフレーム期間が所定フレーム数連続した場合は、次のフレーム期間において、前記複数の階級に対応する複数の期間を順に前記露光期間に設定する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の測距装置。
【請求項7】
前記受光部は、各々が複数の画素を含む複数の領域を有し、
前記露光期間制御部は、前記複数の領域の各々に独立して前記露光期間を設定し、
前記情報生成部は、前記複数の領域に対応する複数の前記情報を生成する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の測距装置。
【請求項8】
前記フレーム期間は、複数のサブフレームを含み、
前記複数のサブフレームの各々は、前記発光部の複数回の発光を含み、前記複数回の発光に対して同じ露光期間が設定されている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の測距装置。
【請求項9】
発光部から発せられ測定対象領域にある対象物によって反射された光を含む光信号を検出してパルス信号に変換する受光部と、
前記発光部の発光のごとに、前記受光部を、前記光が射出されてから検出されるまでの時間に応じて定められた複数の階級に対応して設定された複数の露光期間のうちのいずれかに設定する露光期間制御部と、
前記発光部の複数回の発光を含む所定のフレーム期間の間に前記受光部から出力される信号に基づいて、前記階級と前記パルス信号を検出した回数を示す度数との関係を表す情報を生成する情報生成部と、
前記対象物に関する距離情報を外部から取得する距離情報取得部と、を有し、
前記露光期間制御部は、前記距離情報取得部が取得した距離情報に対応する期間により近い期間から順に前記露光期間に設定する
ことを特徴とする測距装置。
【請求項10】
移動体であって、
請求項1又は9記載の距離情報取得装置と、
前記距離情報取得装置が取得した距離情報に基づいて前記移動体を制御する制御手段と
を有することを特徴とする移動体。
【請求項11】
発光部から発せられ測定対象領域にある対象物によって反射された光を含む光信号を検出し、検出した信号に基づいて前記対象物までの距離を算出する測距方法であって、
前記発光部の発光のごとに、受光部を、前記光が射出されてから検出されるまでの時間に応じて定められた複数の階級に対応して設定された複数の露光期間のうちのいずれかに設定し、前記受光部により検出した信号をパルス信号に変換し、
前記発光部の複数回の発光を含む所定のフレーム期間の間に前記受光部から出力される信号に基づいて、前記階級と前記パルス信号を検出した回数を示す度数との関係を表す情報を生成し、
第1フレーム期間に取得した前記情報に度数のピークが検出された場合は、前記第1フレーム期間の次の第2フレーム期間において、前記ピークが検出された階級に対応する期間により近い期間から順に前記露光期間に設定する
ことを特徴とする測距方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置及び測距方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光を用いて対象物までの距離を測定する測距方式の一つとして、光飛行時間計測法(TOF(Time of Flight)方式)と呼ばれる測距手法が知られている。TOF方式は、対象物へ向けた光の射出から対象物により反射された光の検出までの時間に基づき対象物までの距離を計測する方法である。特許文献1には、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)素子を用いた光子検出センサにTOF方式を適用し、対象物までの距離を計測する測距装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の測距方法では、所定の周波数で繰り返し発光する短パルスレーザ光を物体に向けて照射し、レーザ光の照射とSPADセンサによる検出とを同期させて物体からの反射光の検出を行う。すなわち、SPADセンサにレーザ光の発光タイミングと関連付けて特定の露光期間(ゲーティング期間)を設定し、当該露光期間における光子検出を行う。そして、この露光期間を順次シフトしていき、複数の露光期間の各々に対応する信号を取得する。この結果をヒストグラムメモリへと記録していき、ヒストグラムピークから物体までの距離を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0052065号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、露光期間を順次シフトしながら測定を行うことで測距範囲の奥行き方向に沿ったヒストグラム情報を取得するため、ヒストグラム情報の生成に時間を要し、フレームレートが低下することがあった。
【0006】
本発明の目的は、露光期間を順次シフトしながら測定を行うことにより測距範囲の奥行き方向に沿った距離情報を取得する測距装置及び測距方法において、距離情報の取得に要する時間を短縮するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書の一開示によれば、発光部から発せられ測定対象領域にある対象物によって反射された光を含む光信号を検出してパルス信号に変換する受光部と、前記発光部の発光のごとに、前記受光部を、前記光が射出されてから検出されるまでの時間に応じて定められた複数の階級に対応して設定された複数の露光期間のうちのいずれかに設定する露光期間制御部と、前記発光部の複数回の発光を含む所定のフレーム期間の間に前記受光部から出力される信号に基づいて、前記階級と前記パルス信号を検出した回数を示す度数との関係を表す情報を生成する情報生成部と、前記情報における度数のピークを判定するピーク判定部と、を有し、前記露光期間制御部は、第1フレーム期間に取得した前記情報に度数のピークが検出された場合は、前記第1フレーム期間の次の第2フレーム期間において、前記ピークが検出された階級に対応する期間により近い期間から順に前記露光期間に設定する測距装置が提供される。
【0008】
また、本明細書の他の一開示によれば、発光部から発せられ測定対象領域にある対象物によって反射された光を含む光信号を検出してパルス信号に変換する受光部と、前記発光部の発光のごとに、前記受光部を、前記光が射出されてから検出されるまでの時間に応じて定められた複数の階級に対応して設定された複数の露光期間のうちのいずれかに設定する露光期間制御部と、前記発光部の複数回の発光を含む所定のフレーム期間の間に前記受光部から出力される信号に基づいて、前記階級と前記パルス信号を検出した回数を示す度数との関係を表す情報を生成する情報生成部と、前記対象物に関する距離情報を外部から取得する距離情報取得部と、を有し、前記露光期間制御部は、前記距離情報取得部が取得した距離情報に対応する期間により近い期間から順に前記露光期間に設定する測距装置が提供される。
【0009】
また、本明細書の更に他の一開示によれば、発光部から発せられ測定対象領域にある対象物によって反射された光を含む光信号を検出し、検出した信号に基づいて前記対象物までの距離を算出する測距方法であって、前記発光部の発光のごとに、受光部を、前記光が射出されてから検出されるまでの時間に応じて定められた複数の階級に対応して設定された複数の露光期間のうちのいずれかに設定し、前記受光部により検出した信号をパルス信号に変換し、前記発光部の複数回の発光を含む所定のフレーム期間の間に前記受光部から出力される信号に基づいて、前記階級と前記パルス信号を検出した回数を示す度数との関係を表す情報を生成し、第1フレーム期間に取得した前記情報に度数のピークが検出された場合は、前記第1フレーム期間の次の第2フレーム期間において、前記ピークが検出された階級に対応する期間により近い期間から順に前記露光期間に設定する測距方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、露光期間を順次シフトしながら測定を行うことにより測距範囲の奥行き方向に沿った距離情報を取得する測距装置及び測距方法において、距離情報の取得に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態による測距装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態による測距装置の基本動作を示すタイミング図である。
図3】本発明の第1実施形態による測距装置における距離情報の取得方法を説明する図である。
図4】本発明の第1実施形態による測距装置における第1測定モードを説明する図である。
図5】本発明の第1実施形態による測距装置における第2測定モードを説明する図である。
図6】本発明の第1実施形態による測距装置の動作を示すフローチャート(その1)である。
図7】本発明の第1実施形態による測距装置の動作を示すフローチャート(その2)である。
図8】本発明の第1実施形態による測距装置におけるピーク検出方法を示す図(その1)である。
図9】本発明の第1実施形態による測距装置におけるピーク検出方法を示す図(その2)である。
図10】本発明の第2実施形態による測距装置の概略構成を示すブロック図である。
図11】本発明の第2実施形態による測距装置の基本動作を示す図である。
図12】本発明の第3実施形態による測距装置の概略構成を示すブロック図である。
図13】本発明の第3実施形態による測距装置の動作を示すフローチャートである。
図14】本発明の第4実施形態による測距装置の概略構成を示すブロック図である。
図15】本発明の第5実施形態による移動体の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について、添付の図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に関る本発明を限定するものではなく、また、各実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0013】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による測距装置及び測距方法について、図1乃至図9を用いて説明する。図1は、本実施形態による測距装置の概略構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態による測距装置の基本動作を示すタイミング図である。図3は、本実施形態による測距装置における距離情報の取得方法を説明する図である。図4は、本実施形態による測距装置における第1測定モードを説明する図である。図5は、本実施形態による測距装置における第2測定モードを説明する図である。図6及び図7は、本実施形態による測距装置の動作を示すフローチャートである。図8及び図9は、本実施形態による測距装置におけるピーク検出方法を示す図である。
【0014】
はじめに、本実施形態による測距装置の概略構成について、図1を用いて説明する。本実施形態による測距装置100は、例えば図1に示すように、発光部10と、制御部20と、露光期間制御部30と、受光部40と、ヒストグラム情報生成部70と、ピーク判定部80と、出力部90と、により構成され得る。制御部20は、発光部10及び露光期間制御部30に接続されている。露光期間制御部30は、受光部40に接続されている。受光部40は、ヒストグラム情報生成部70に接続されている。ヒストグラム情報生成部70は、ピーク判定部80及び出力部90に接続されている。ピーク判定部80は、制御部20及び出力部90に接続されている。
【0015】
発光部10は、発光素子(図示せず)を有し、発光素子から発せられるレーザ光などのパルス光(照射光12)を測定対象領域に射出する役割を有する。発光素子としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)など、高速変調が可能な素子が好ましい。発光素子は、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)やこれをアレイ状に配した面発光素子であってもよい。発光部10は、測定対象領域に対して一様な光量の光を照射するように構成されていることが望ましく、発光素子から発せられた光を光学的に変換して測定対象領域に照射するための光学素子、例えばレンズなどを更に含んで構成され得る。
【0016】
受光部40は、受光素子(図示せず)を有し、測定対象領域から入射する光を検出する役割を有する。受光部40に入射する光には、測定対象領域における環境光(太陽光などの外光)のほか、照射光12のうち測定対象領域にある測距対象物110によって反射された光(反射光14)が含まれる。受光素子は、入射した光(光信号)を電気信号(パルス信号)に変換し、生成したパルス信号を計数し、計数結果を保持する。受光部40は、2次元アレイ状に配された複数の受光素子(画素)を含んで構成され得る。受光素子としては、例えば、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)センサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどを適用可能である。また、受光部40は、反射光14を効率的に受光素子42に導くための光学素子、例えばレンズなどを更に含んで構成され得る。
【0017】
露光期間制御部30は、受光部40の駆動タイミングを制御する制御信号を出力する制御回路である。具体的には、露光期間制御部30は、制御部20からの設定信号に応じて、受光部40における露光期間の開始と終了のタイミングを制御する制御信号を生成し、生成した制御信号を受光部40に出力する役割を有する。
【0018】
制御部20は、測距装置100の全体の動作を司る制御回路である。図1には、制御部20が備える機能のうち、発光部10及び受光部40の制御に関連する部分を抜き出して示している。すなわち、制御部20は、発光部10に対し、発光素子の発光タイミングを制御する制御信号を出力する。また、制御部20は、露光期間制御部30に対し、受光部40における露光期間を設定するための設定信号を出力する。
【0019】
ヒストグラム情報生成部70は、受光部40から出力される情報を蓄積してヒストグラム情報を生成し、これを保持する役割を有する。ここで、ヒストグラム情報とは、発光部10においてパルス光が射出されてから受光部40で検出されるまでの時間に応じて定められた複数の階級(ビン)と各階級においてパルス光が検出された回数を示す度数との関係を表す情報である。
【0020】
ピーク判定部80は、ヒストグラム情報生成部70が保持するヒストグラム情報を参照し、光子検出数(度数)が最も多い階級に対応する時間情報に基づいて測距対象物110までの距離を算出する。また、ピーク判定部80は、次フレームにおける露光期間の初期設定を決定し、制御部20に出力する。なお、本明細書において「フレーム」とは、距離計測の開始から距離情報の算出までの単位期間を表すものとする。1つのフレーム期間には、受光部40を構成する画素(受光素子)ごとに1つの距離情報が出力される。露光期間の初期設定については後述する。
【0021】
出力部90は、ヒストグラム情報生成部70及びピーク判定部80が保持する情報を測距装置100の外部に出力する役割を有する。具体的には、出力部90は、ヒストグラム情報生成部70が保持するヒストグラム情報と、ピーク判定部80で算出した測距対象物110までの距離に関する情報と、を出力する。
【0022】
図2は、本実施形態による測距装置における基本的な動作を示すタイミング図である。本実施形態の測距装置における測距期間中には、所定の長さのフレームFが複数回、順次実施される。図2では、測距期間中に、フレームF1、フレームF2、…、フレームFNを含むN回のフレームFを実施する場合を想定している。
【0023】
各々のフレームFには、複数のサブフレームSFと、ピーク判定期間PPと、が実行される。図2では、1フレームF中に、サブフレームSF1、サブフレームSF2、…、サブフレームSFMを含むM回のサブフレームSFと、ピーク判定期間PPと、を実施する場合を想定している。なお、本明細書において「サブフレーム」とは、所定の距離範囲に対して行う測定の単位期間を表すものとする。ピーク判定期間PPにおける処理については後述する。
【0024】
各々のサブフレームSFには、複数のマイクロフレームMFが実行される。図2では、1サブフレームSF中に、マイクロフレームMF1、マイクロフレームMF2、…、マイクロフレームMFLを含むL回のマイクロフレームMFを実施する場合を想定している。各々のマイクロフレームMFには、発光部10による1回のパルス光の発光と、受光部40において入射光を検出する露光期間と、が実行される。
【0025】
各マイクロフレームMFにおいて、パルス光の発光開始のタイミングから露光期間の開始のタイミングまでの間隔Tは、サブフレームSFごとに定められる距離範囲に対応している。例えば、サブフレームSF1のマイクロフレームMF1~MFLにおいて間隔Tは間隔T1に設定され、サブフレームSF2のマイクロフレームMF1~MFLにおいて間隔Tは間隔T1とは異なる間隔T2(図示せず)に設定される。各マイクロフレームMFには、受光部40から露光期間の間の入射光に応じた信号(受光データ)が出力される。なお、本明細書において「マイクロフレーム」とは、受光部40が受光データを出力する単位期間を表すものとする。
【0026】
サブフレームSFごとに定められる距離範囲について、図3を用いてより具体的に説明する。ここで、図3に示すように、発光部10から発せられる光(照射光12)の照射領域である測定対象領域120の中に、発光部10及び受光部40からの距離がLで奥行き方向の厚さがLXである領域Xを想定するものとする。この場合、発光部10から発せられ、領域Xの発光部10及び受光部40の側の面の位置で反射されて受光部40に到達する反射光14(図中、実線)の光路長は2Lとなる。一方、発光部10から発せられ、領域Xの発光部10及び受光部40とは反対側の面の位置で反射されて受光部40に到達する反射光14(図中、破線)の光路長は2(L+LX)となる。この光路長の違いにより、領域Xの発光部10及び受光部40の側の位置で反射された光が受光部40に到達するタイミングと領域Xの発光部10及び受光部40とは反対側の位置で反射された光が受光部40に到達するタイミングとの間に時間差が生じる。この時間差は、光速をcとすると、2LX/cと表すことができる。
【0027】
この時間差に対応する期間の間だけ受光部40を露光期間に設定することで、測定対象領域120のうち、領域Xに位置する測距対象物の情報を選択的に取得することができる。つまり、図2のタイミング図において、パルス光の発光開始のタイミングから露光期間の開始のタイミングまでの間隔Tを2Lの距離に対応する時間に設定し、露光期間の長さを2LXの距離に対応する時間に設定する。このように受光部40の露光期間を設定することで、領域Xに位置する測距対象物の情報を取得することができる。そして、測定対象領域120を奥行き方向に沿って複数の領域に分割し、各々の領域に対応して露光期間を設定したマイクロフレームMFをそれぞれ実施することで、測定対象領域120の全体に渡って測距対象物の情報を取得することができる。
【0028】
各サブフレームSFでは、パルス光の発光開始のタイミングから露光期間の開始のタイミングまでの間隔Tを固定して複数回(L回)のマイクロフレームMFを実施する。例えば、図2のサブフレームSF1では、間隔Tを間隔T1に設定したL回のマイクロフレームMF1~MFLを実施する。そして、L回のマイクロフレームMF1~MFLの間に受光部40が光子を検出した回数をカウントする。間隔Tを変更しながら複数のサブフレームSFを実施することで、各サブフレームSFに対応する距離範囲(階級)と、当該階級における光子検出数(度数)とを紐付けた情報(ヒストグラム情報)を取得することができる。
【0029】
本実施形態による測距装置は、動作モードとして、測定対象の距離範囲を変更しながら測定対象領域の全体に渡って測定を行う第1測定モードと、直前に取得した距離情報に対応する距離範囲の近傍を優先して測定を行う第2測定モードと、を含む。いずれの測定モードにおいても、距離範囲の変更は、制御部20からの設定信号に応じて、露光期間制御部30により受光部40をアクティブにする期間(露光期間)を制御することにより行われる。
【0030】
まず、第1測定モードについて、図4を用いて説明する。図4の上段には、ある1フレームFnを構成するサブフレームSF1,…,SFm,…,SFMの各々に設定される距離範囲を示している。各ブロックに付した1,…,m,…,Mは、サブフレームSFの番号であり、各サブフレームSFが実施される順番でもある。横軸は間隔Tであり、図において右側のサブフレームSFの距離範囲ほど測距装置から離間していることを示している。図4の中段には、サブフレームSF1、サブフレームSF2、…、サブフレームSFMがこの順序で実行されることを模式的に示している。図4の下段には、当該1フレームFnにおいて取得された情報に基づくヒストグラムの例を示している。
【0031】
第1測定モードでは、前述のように、サブフレームSFごとに距離範囲(露光期間)を変更しながら測距範囲の全体に渡って測定を行う。測定対象領域がM個の距離範囲に分割される場合、例えば図4に示すように、間隔Tが最短のサブフレームSF1に対応する距離範囲から間隔Tが最長のサブフレームSFMに対応する距離範囲へと順番に測定を行う。なお、サブフレームSF1~SFMを実行する順序は、特に限定されるものではない。
【0032】
受光部40は、マイクロフレームMFにおいて光子を検出すると、光子を検出したことを示す信号を画素ごとにヒストグラム情報生成部70に出力する。ヒストグラム情報生成部70は、各サブフレームSFにおいて、検出した光子の数を画素ごとに計数する。すなわち、各サブフレームSFで取得される情報は、当該サブフレームSFに属する複数のマイクロフレームMFにおいて検出された光子数を積算した結果であり、所定の距離範囲において検出された光子数の合計を示している。このように計数される値が、各サブフレームSFにおける光子検出数である。
【0033】
サブフレームSF1からサブフレームSFMまでの測定を行うことで、各サブフレームSFに対応する距離範囲(階級)と、当該距離範囲における光子検出数(度数)とを紐付けた情報を取得することができる。ヒストグラム情報生成部70は、このようにして取得した情報を保持する。本明細書では、この情報を、階級と度数との関係を表すヒストグラム(図4の下段を参照)に見立て、ヒストグラム情報と呼ぶものとする。
【0034】
フレームFnの最後のピーク判定期間PPでは、ピーク判定部80において、ヒストグラム情報生成部70が保持するヒストグラム情報の中から、光子検出数が最も多い距離範囲を抽出する。例えば図4の例では、サブフレームSFmに対応する距離範囲の光子検出数が最も多いため、当該サブフレームSFmに設定された間隔Tmに基づいて、測距対象物110までの距離を算出する。
【0035】
次に、第2測定モードについて、図5を用いて説明する。図5の上段には、ある1フレームFnの直前のフレームF(n-1)において取得された情報に基づくヒストグラムの例を示している。図5の中段には、フレームFnを構成するサブフレームSF1,…,SFm,…,SFMの各々に設定される距離範囲を示している。各ブロックに付した1,…,m,…,Mは、サブフレームSFの番号であり、各サブフレームSFが実施される順番でもある。横軸は間隔Tであり、図において右側のサブフレームSFの距離範囲ほど測距装置から離間していることを示している。図5の下段には、サブフレームSF1、サブフレームSF2、…、サブフレームSFMがこの順序で実行されることを模式的に示している。
【0036】
第2測定モードでは、前述のように、直前に取得した距離情報に対応する距離範囲の近傍を優先して測定を行う。直前に取得した距離情報は、ヒストグラム情報生成部70が保持している直前のフレームのヒストグラム情報に基づいて算出される距離情報であってもよいし、直前に外部から取得した距離情報であってもよい。画素ごとに異なる制御を行う場合や領域ごとに制御を行う場合には、他の画素で取得したヒストグラム情報のピークに基づいて距離情報を取得してもよい。また、距離情報の取得にあたり、ヒストグラム情報のピーク距離範囲における光子検出数に加え、ピーク周辺の距離範囲における光子検出数を更に考慮してもよい。外部から距離情報を取得する場合、その距離情報は、例えば、超音波センサ、レーダー、可視像カメラ、赤外線センサ或いは他のLiDARシステムを用いて取得することができる。この場合、測距装置は、外部から距離情報を取得するための距離情報取得部を更に備え得る。
【0037】
ここでは、直前に取得した距離情報として、直前のフレームF(n-1)のヒストグラム情報に基づいて算出された距離情報を想定する。直前のフレームF(n-1)として図4の測定例におけるフレームFnを想定すると、図4のサブフレームSFmに対応する距離範囲が、直前に算出した距離情報となる。この場合、第2測定モードでは、図4のサブフレームSFmに対応する距離範囲を、基準距離範囲として設定する。そして、基準距離範囲として設定された距離範囲を最初に実行するサブフレームSFに設定し、基準距離範囲により近い未測定の距離範囲を優先して次に実行するサブフレームSFに設定する。
【0038】
図5の例の場合、露光期間制御部30は、まず、図4のサブフレームSFmに対応する距離範囲を最初に実行するサブフレームSF1に設定し、サブフレームSF1を実行する。ピーク判定部80は、サブフレームSF1の測定により取得した情報を参照し、当該情報が直前のフレームFで取得したピークと同等のピークを有するか否かを判定する。なお、ピークの判定方法についての詳細は後述する。
【0039】
サブフレームSF1にピークが存在しない場合、露光期間制御部30は、基準距離範囲の次に優先度の高い距離範囲を次に実行するサブフレームSF2に設定し、サブフレームSF2を実行する。図5の例では、基準距離範囲に隣接する距離範囲であって、基準距離範囲よりも測距装置100の側に位置する距離範囲を、サブフレームSF2に設定している。ピーク判定部80は、サブフレームSF2の測定により取得した情報を参照し、当該情報が直前のフレームFで取得したピークと同等のピークを有するか否かを判定する。
【0040】
サブフレームSF2にもピークが存在しない場合、露光期間制御部30は、基準距離範囲の次に優先度の高い距離範囲を次に実行するサブフレームSF3に設定し、サブフレームSF3を実行する。図5の例では、基準距離範囲に隣接する距離範囲であって、基準距離範囲に対して測距装置100とは反対の側に位置する距離範囲を、サブフレームSF3に設定している。ピーク判定部80は、サブフレームSF3の測定により取得した情報を参照し、当該情報が直前のフレームFで取得したピークと同等のピークを有するか否かを判定する。以降、取得した情報においてピークが検出されるまで、優先度の高い距離範囲から順にサブフレームSFに設定し、当該サブフレームSFを実施する。
【0041】
取得した情報が直前のフレームF(n-1)で取得したピークと同等のピークを有する場合、以後のサブフレームSFの取得を停止し、ピークが検出されたサブフレームSFに対応する距離範囲を、新たな基準距離範囲として設定する。
【0042】
直前のフレームF(n-1)からフレームFnまでの時間は短いため、測距対象物が同じであれば連続するフレームFにおいてピークが検出される距離範囲は近いことが予想される。したがって、第2測定モードによれば、1フレームF中に実施するサブフレームSFの数を減らし、高速に測距対象物の距離情報を取得することが可能となる。
【0043】
次に、本実施形態による測距装置の具体的な動作について、図6及び図7を用いて説明する。図6及び図7のフローチャートは、直前のフレームF(n-1)で取得したヒストグラム情報にピークが存在した場合に、そのピークから基準距離範囲を算出し、算出した基準距離範囲の近傍から優先的に測定を実施する動作例を示している。この動作例では、測距対象物の位置が特定できた段階でフレームFnの以降のサブフレームSFの取得を中断し、次のフレームF(n+1)の測距動作へと移行する。
【0044】
まず、ステップS101において、フレームFの番号を表す変数nを1に設定する。なお、ここでは測距動作として所定数(N)のフレームを連続して実行する場合を想定するが、実行するフレーム数を予め定めずに、例えば外部からの信号等に応じて測距動作を停止するように構成してもよい。この場合、ステップS101は不要である。
【0045】
次いで、ステップS102において、サブフレームSFの順番を表す変数m及び測定対象の距離範囲の番号を表す変数kを1に設定する。ここでは、1フレームの間に実行される最大のサブフレーム数をMとする。距離範囲の番号kは、例えば、ヒストグラム情報の階級に対応する距離範囲を測距装置に近い側から1,2,3,…,K-2,K-1,Kの連続番号で表したものである。Kは、測距範囲内に含まれる距離範囲のうち測距装置から最も遠い距離範囲の番号を表す。
【0046】
次いで、ステップS103において、ピーク判定部80に基準距離範囲が設定されているか否かの判定を行う。判定の結果、ピーク判定部80に基準距離範囲が設定されていない場合(ステップS103の「YES」)には、ステップS106ヘと移行する。判定の結果、ピーク判定部80に基準距離範囲が設定されている場合(ステップS103の「NO」)には、ステップS104ヘと移行し、変数kを基準距離範囲の番号ksに設定する。これにより、測定モードは第2測定モードへと移行する。ステップS104の後は、ステップS106ヘと移行する。
【0047】
次いで、ステップS106において、マイクロフレームMFを実行する。ステップS106では、図7に示すステップS201からステップS203までの一連の処理を1マイクロフレームMFとし、図2に示すようにL回繰り返し実行するものとする。図7中に記載の変数Aは、マイクロフレームMFの実行回数を表す変数である。「A=1,L,1」は、マイクロフレームMF1からマイクロフレームMFLまで、Aを1ずつ増加しながら繰り返し実行することを表す。
【0048】
マイクロフレームMFにおける測定モードは、ピーク判定部80に基準距離範囲が設定されているか否に応じて定められる。すなわち、ピーク判定部80に基準距離範囲が設定されていない場合には第1測定モードが実行され、ピーク判定部80に基準距離範囲が設定されている場合には第2測定モードが実行される。
【0049】
ステップS201では、制御部20により発光部10及び露光期間制御部30を制御し、発光部10によるパルス光の発光開始のタイミングから露光期間の開始のタイミングまでの間隔Tを間隔Tkに設定し、測定を行う。間隔Tkは、例えば第1測定モードのマイクロフレームMF1であれば測距装置に最も近い距離範囲に対応する間隔T1に設定され、第2測定モードのマイクロフレームMF1であれば基準距離範囲に対応する間隔Tksに設定される。受光部40を構成する各々の画素は、露光期間の間に光子を検出した場合には検出した光子数を表す受光データを生成し、内部に保持する。
【0050】
続くステップS202において、ヒストグラム情報生成部70は、受光部40を構成する複数の画素に対して読み出し走査を行い、所定領域の画素が保持する受光データを順次読み出す。
【0051】
続くステップS203において、ヒストグラム情報生成部70は、読み出した受光データが示す光子数を画素ごとに積算する。
【0052】
このようにしてマイクロフレームMFをL回実行し、画素ごとに検出した光子数を積算することで、サブフレームSFmのデータとして、間隔Tkに対応する距離範囲(階級)における光子検出数(度数)を取得することができる。
【0053】
次いで、ステップS107において、ピーク判定部80に基準距離範囲が設定されているか否かの判定を行う。判定の結果、ピーク判定部80に基準距離範囲が設定されていない場合(ステップS107の「YES」)には、ステップS108ヘと移行する。判定の結果、ピーク判定部80に基準距離範囲が設定されている場合(ステップS107の「NO」)には、ステップS116ヘと移行する。
【0054】
ステップS108では、実行中のサブフレームSFmがフレームFnを構成する最後のサブフレームSFMであるか否かの判定を行う。判定の結果、実行中のサブフレームSFmがフレームFを構成する最後のサブフレームSFMの場合(m=M、ステップS108の「YES」)には、ステップS110ヘと移行する。判定の結果、実行中のサブフレームSFmがフレームFnを構成する最後のサブフレームSFMでない場合(m≠M、ステップS108の「NO」)には、ステップS109ヘと移行する。ステップS109では、サブフレームSFの番号を表す変数m及び距離範囲の番号を表す変数kを1増加する。ステップS109の後は、ステップS106ヘと戻り、次のサブフレームSF(m+1)のマイクロフレームMFを実行する。
【0055】
ピーク判定部80に基準距離範囲が設定されていない場合、上述したステップS106からステップS109までの一連の処理が測定対象の距離範囲を順番に変えながらM回、繰り返し実行される。すなわち、第1測定モードが実行され、全測距範囲に渡るヒストグラム情報が取得される。
【0056】
ステップS110では、ピーク判定部80において、第1測距モードにより取得したヒストグラム情報にピークが検出されたか否かの判定を行う。判定の結果、ピークが検出されなかった場合(ステップS110の「NO」)は、ステップS113ヘと移行する。判定の結果、ピークが検出された場合(ステップS110の「YES」)は、ステップS111ヘと移行する。なお、ピークの判定方法についての詳細は後述する。
【0057】
ステップS111において、ピーク判定部80は、ピークが検出された距離範囲の番号を基準距離範囲の番号ksとして設定するとともに、ピークが検出された距離範囲に基づいて測距対象物までの距離情報を算出する。
【0058】
続くステップS112において、出力部108は、ピーク判定部107が算出した距離情報を外部に出力する。
【0059】
ステップS113では、実行中のフレームFnが最後のフレームFNであるか否かの判定を行う。判定の結果、実行中のフレームFnが最後のフレームFNの場合(n=N、ステップS113の「YES」)には、一連の測距処理を終了する。判定の結果、実行中のフレームFnが最後のフレームFNでない場合(n≠N、ステップS113の「NO」)には、ステップS121ヘと移行し、フレームFの番号を表す変数nを1増加する。ステップS121の後は、ステップS102ヘと戻り、次のフレームF(n+1)を実行する。
【0060】
ステップS116では、ピーク判定部80において、サブフレームSFmにピークが検出されたか否かの判定を行う。判定の結果、ピークが検出された場合(ステップS116「YES」)には、制御部20によりフレームFnの以降のサブフレームSFの処理を停止し、ステップS111ヘと移行する。ピークが検出されなかった場合(ステップS116の「NO」)には、ステップS117ヘと移行する。なお、ピークの判定方法についての詳細は後述する。
【0061】
ステップS117では、測定対象の距離範囲が、測距範囲のうち測距装置に最も近い距離範囲(k=1)又は測距装置から最も遠い距離範囲(k=K)であるか否かの判定を行う。
【0062】
ステップS117における判定の結果、変数kが1又はKではない場合(ステップS117の「NO」)には、ステップS118ヘと移行する。ステップS118では、サブフレームSFの番号を表す変数mを1増加する。続くステップS119では、次のサブフレームSF(m+1)における測定対象の距離範囲を、基準距離範囲により近い未測定の距離範囲の中から選択する。例えば、サブフレームSFmにおける測定対象の距離範囲の番号kは、基準距離範囲の番号をks、サブフレームSFの番号をmとして、(ks-INT(m/2)×(-1))に設定することができる。なお、INTは、小数点以下を切り捨てる関数である。測定対象の距離範囲の番号kをこのように設定することで、サブフレームSF1,SF2,SF3,SF4,SF5,SF6,…における距離範囲は、距離範囲ks,ks-1,ks+1,ks-2,ks+2,ks-3,…の順番で割り当てられる。これにより、基準距離範囲により近い未測定の距離範囲から順に優先してサブフレームSFに割り当てることができる。ステップS119の後は、ステップS106ヘと戻り、フレームFnの次のサブフレームSF(m+1)を実行する。
【0063】
ステップS117における判定の結果、変数kが1又はKである場合(ステップS117の「YES」)には、ステップS120ヘと移行し、登録されている基準距離範囲を削除する。すなわち、変数kが1又はKに達していることは、第2測定モードにおいてピークが検出されなかったことを意味しており、次のフレームF(n+1)を第1測定モードで実行するために登録されている基準距離範囲を削除する。ステップS120の後は、ステップS121ヘと移行し、フレームFの番号を表す変数nを1増加する。ステップS121の後は、ステップS102ヘと戻り、次のフレームF(n+1)を実行する。
【0064】
次に、ステップS110及びステップS116におけるピークの検出方法について、図8及び図9を用いて説明する。図8(a)及び図9(a)は、第1測定モードで測定を行ったフレームFnにおけるヒストグラムの例を示している。図8(b)は、図8(a)のヒストグラムをもとに基準距離範囲を設定して第2測定モードで測定を行った次フレームF(n+1)におけるヒストグラムの例を示している。図9(b)は、図9(a)のヒストグラムをもとに基準距離範囲を設定して第2測定モードで測定を行った次フレームF(n+1)におけるヒストグラムの例を示している。
【0065】
図8は、第1測定モードで測定を行ったフレームFnのヒストグラムに明瞭なピークが1つだけ検出された場合の例を示している。フレームFnでは、第1測定モードにより、測定対象の距離範囲を測距装置の側から遠ざかる方向に順に変更しながら全測距範囲に対応するサブフレームSF1~SFMの測定を行っている(図8(a)参照)。このフレームFnの場合、サブフレームSFmに光子検出数のピークが存在するため、サブフレームSFmに対応する距離範囲の階級の番号mを、基準距離範囲の番号ksとして設定する。本ケースのように、全測距範囲を測定することにより取得したヒストグラムにおいて明瞭なピークが1つだけ検出できた場合、ピークが検出されたサブフレームSFmに対応する距離範囲を、次フレームF(n+1)における基準距離範囲として設定する。
【0066】
フレームF(n+1)では、第2測定モードにより、フレームFnで設定した基準距離範囲を中心として基準距離範囲により近い未測定の距離範囲を順に選択し、ピークを検出するまで測定を継続する。図8(b)の例では、階級m,m-1,m+1,m-2,…に対応する距離範囲を順に選択し、サブフレームSFを実行する。そして、フレームFnで検出したピークに対応するピークを検出した段階で、以降のフレームの実行を停止する。例えば、フレームF(n+1)の階級(m-2)においてフレームFnのピークに対応するピークが検出されたとすると、階級(m+2)以降に対応するサブフレームSFは実行せず、フレームF(n+2)ヘと移行する。
【0067】
フレームFnのピークに対応するピークの検出は、例えば、基準距離範囲として設定されたフレームFnの階級における光子検出数と、着目している距離範囲の階級における光子検出数とを比較することにより行うことができる。例えば、基準距離範囲として設定されたフレームFnの階級における光子検出数に所定の誤差率を掛け合わせ、誤差範囲を含んだ値としてメモリに保持する。そして、フレームF(n+1)に取得した階級における光子検出数とメモリに保持されている値とを比較する。フレームF(n+1)に取得した階級における光子検出数がメモリに保持されている値よりも大きい場合に、その光子検出数をピークと判定することができる。また、ピークの大きさを判定するための閾値を予め設定しておき、フレームF(n+1)に取得したピークの大きさを当該しきい値と比較することで判定を行ってもよい。なお、フレームFnのピークに対応するピークを検出する方法は、ピークの大きさを特定できる方法であればこれらに限定されるものではない。
【0068】
図9は、第1測定モードで測定を行ったフレームFnのヒストグラムに、光子検出数が最大の階級と同等の光子検出数を示す複数の階級が検出された場合の例を示している。本測定例においても図8の例と同様、フレームFnでは、第1測定モードにより、測定対象の距離範囲を測距装置の側から遠ざかる方向に順に変更しながら全測距範囲に対応するサブフレームSF1~SFMの測定を行っている(図9(a)参照)。光子検出数が最大の階級と同等の光子検出数を示す階級が複数検出された場合には、測距装置の使用目的等に応じて基準距離範囲を設定することができる。例えば、測距装置を車載センサに適用する場合、より近くにある測距対象物の検出感度を向上する等の観点から、光子検出数が最大の階級と同等の光子検出数を示す複数の階級のうち、測距装置からの距離が最も近い階級を基準距離範囲に設定することができる。図9(a)の例の場合、階級mに対応する距離範囲を、基準距離範囲に設定することができる。
【0069】
フレームF(n+1)では、第2測定モードにより、フレームFnで設定した基準距離範囲を中心として基準距離範囲により近い未測定の距離範囲を順に選択し、ピークを検出するまで測定を継続する。図9(b)の例では、階級m,m-1,m+1,m-2,…に対応する距離範囲を順に選択し、サブフレームSFを実行する。そして、フレームFnで検出したピークに対応するピークを検出した段階で、以降のフレームの実行を停止する。例えば、フレームF(n+1)の階級(m+1)においてフレームFnのピークに対応するピークが検出されたとすると、階級(m-2)以降に対応するサブフレームSFは実行せず、フレームF(n+2)ヘと移行する。ピークの検出方法は、図8の場合と同様であり得る。
【0070】
なお、光子検出数が最大の階級と同等の光子検出数を示す複数の階級が検出された場合に基準距離範囲として選択する階級は、必ずしも測距装置からの距離が最も近い階級である必要はない。例えば、光子検出数が最大の階級と同等の光子検出数を示す複数の階級のうち測距装置からの距離が最も遠い階級に設定してもよいし、光子検出数が最大の階級と同等の光子検出数を示す複数の階級のうちの中間の階級に設定してもよい。また、着目している階級の光子検出数と周辺の階級の光子検出数との積算値を用い、基準距離範囲とする階級を選択してもよい。ヒストグラム情報において光子検出数が最大となる階級は、必ずしもピーク判定部80が算出する測距対象物までの距離情報や基準距離範囲に対応する階級と一致していなくてもよい。
【0071】
このように本実施形態では、あるフレームにおいて第1測定モードによる測定でヒストグラム情報にピークが検出された場合、次のフレームは第2測定モードで測定を行い、ピークが検出された距離範囲に近い距離範囲を優先的に測定する。そして、前のフレームのピークに対応するピークが検出された段階で当該フレームの測定を停止する。したがって、総てのフレームにおいて全測距範囲に渡るヒストグラム情報を取得してからピークの有無を判定する場合と比較して、測距対象物までの距離判定を高速に実施することが可能となる。また、距離判定後にサブフレームの取得を停止して次のフレームに移行することで、フレームレートを向上することが可能となる。
【0072】
なお、上記実施形態では、各サブフレームSFにおいてL回のマイクロフレームMFを実行するように構成しているが、あるマイクロフレームMFにおいて反射光14を検出した場合、そのサブフレームSFの以降のマイクロフレームMFは取得しなくてもよい。このように構成することで、フレームレートを一定に保ちつつ、消費電力の低減を図ることが可能である。
【0073】
このように、本実施形態によれば、露光期間を順次シフトしながら測定を行うことにより測距範囲の奥行き方向に沿った距離情報を取得する測距装置及び測距方法において、距離情報の取得に要する時間を短縮することができる。
【0074】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による測距装置及び測距方法について、図10及び図11を用いて説明する。第1実施形態による測距装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。図10は、本実施形態による測距装置の概略構成を示すブロック図である。図11は、測距装置又は測距対象物が移動している場合のこれらの位置関係を模式的に示した図である。
【0075】
本実施形態では、測距装置又は測距対象物が移動している場合における測距対象物までの距離算出に好適な測距装置の構成及び測距方法について説明する。
【0076】
はじめに、本実施形態による測距装置の概略構成について、図10を用いて説明する。本実施形態による測距装置100は、図10に示すように、速度情報取得部50を更に有するほかは、第1実施形態による測距装置と同様である。速度情報取得部50は、制御部20に接続されている。速度情報取得部50は、測距装置と測距対象物との間の相対的な移動速度を計測し、計測した速度情報を制御部20に供給する役割を有する機能ブロックである。速度情報取得部50は、それ自体が測距装置100の移動速度を計測する機能を備えていてもよいし、測距装置100とは別の速度計測装置が取得した速度情報を取得するように構成されていてもよい。
【0077】
図11は、測距装置100の適用例として車載センサを想定し、測距装置100と測距対象物110との位置関係を模式的に示したものである。図11では、測距装置100と測距対象物110が互いに近づく方向に同じ速度(30m/s)で移動している場合を想定している。
【0078】
図11中、X5,X10,X50は、ヒストグラム情報の階級に用いられる距離範囲を単位とした距離を表している。例えば、フレームFnにおいて測距装置100と測距対象物110とは距離X50だけ離間しているが、これは測距装置100と測距対象物110とが測距装置100の側から50番目の距離範囲(k=50)に対応する距離だけ離れていることを表している。別の言い方をすると、フレームFnのヒストグラム情報を取得した場合、50番目の距離範囲(k=50)に対応するサブフレームSFにおいて明瞭なピークが検出されることを表している。
【0079】
所定のフレームレートで測距装置100を駆動した場合に、フレームFnの次のフレームF(n+1)において測距装置100と測距対象物110との距離が距離X’40に接近したとする。なお、距離X’は、フレームF(n+1)に遷移した後の測距装置100の位置を基準とした距離を表している。X’の後の数値は、距離Xの場合と同様、ヒストグラム情報の階級に用いられる距離範囲を単位とした距離を表している。
【0080】
図11中、丸記号(〇)は、フレームFnのヒストグラム情報から算出した次フレームF(n+1)における露光開始位置(基準距離範囲)を、速度情報取得部50により取得した速度情報を用いて補正した露光開始位置(基準距離範囲)を表している。フレームFnの測定から得られた基準距離範囲を速度情報取得部50で取得した測距装置100の速度情報を用いて補正することで、より測距対象物110に近い位置から測定を開始することが可能となる。以下に、例を挙げてこれを説明する。
【0081】
速度情報を使用しない場合、フレームF(n+1)に対して設定される露光開始位置(基準距離範囲)は、フレームF(n+1)における測距装置100の位置から距離X50離れた位置、すなわち図11における距離X’50の位置となる。一方、速度情報取得部50の速度情報を用いた場合、フレームF(n+1)における測距装置100の位置が測距対象物110の方向に距離X5だけ移動することを知ることができる。これにより、フレームF(n+1)に対して設定される露光開始位置(基準距離範囲)を、フレームF(n+1)における測距装置100の位置から距離X’45の位置に補正することができる。そして、ピークの検出が見込まれる距離範囲に露光開始位置が近づくことで、第2測定モードにおいて実施するサブフレームを削減することが可能となり、フレームレートを向上することができる。
【0082】
なお、本実施形態では測距装置100の速度情報を用いて露光開始位置(基準距離範囲)を補正したが、測距対象物110の速度情報を用いて露光開始位置(基準距離範囲)を補正してもよい。例えば、別の測定機器を用いて取得した測距対象物110の速度情報を用いてヒストグラム情報のピークから算出した基準露光範囲の情報を補正し、次フレームで測定を開始する基準距離範囲を設定することができる。
【0083】
また、測距装置100の速度情報と測距対象物110の速度情報とを用いて次フレームの露光開始位置(基準距離範囲)を補正することで、フレームレート向上の効果を更に高めることも可能である。すなわち、基準距離範囲の情報と測距装置100の速度情報を用いて露光開始位置(基準距離範囲)を設定した場合、露光開始位置は測距装置100から距離X’45の位置となる。これに対し、測距対象物110の速度情報を更に考慮することで、露光開始位置を測距装置100から距離X’40の位置に設定することが可能となる。測距対象物110の移動方向が逆向きであれば、露光開始位置を測距装置100から距離X’50の位置に設定することも可能である。
【0084】
このように、本実施形態によれば、露光期間を順次シフトしながら測定を行うことにより測距範囲の奥行き方向に沿った距離情報を取得する測距装置及び測距方法において、距離情報の取得に要する時間を短縮することができる。
【0085】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による測距装置及び測距方法について、図12及び図13を用いて説明する。第1又は第2実施形態による測距装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。図12は、本実施形態による測距装置の概略構成を示すブロック図である。図13は、本実施形態による測距装置の動作を示すフローチャートである。
【0086】
はじめに、本実施形態による測距装置の概略構成について、図12を用いて説明する。本実施形態による測距装置100は、図12に示すように、モード制御部60を更に有するほかは、第1実施形態による測距装置と同様である。モード制御部60は、制御部20に接続されている。モード制御部60は、第1測定モードと第2測定モードとを切り替えるための制御信号を生成し、生成した制御信号を制御部20に供給する役割を有する機能ブロックである。例えば、モード制御部60は、測定を実施したフレーム数をカウントする2進カウンタを備え、例えば4フレームに1回、第1測定モードを実行するように構成することができる。或いは、モード制御部60は、基準距離範囲の設定から実施したフレーム数をカウントする2進カウンタを備え、第2測定モードによる測定が所定フレーム数連続した場合に第1測定モードを実行するように構成することができる。なお、図12に示す構成例ではモード制御部60を測距装置100の構成要素の一部としているが、測距装置100とは別の装置としてモード制御部を用意し、当該モード制御部が測定モードの切り替えを行う構成としてもよい。
【0087】
次に、本実施形態による測距装置の具体的な動作について、図13を用いて説明する。図13のフローチャートは、ステップS105,S114,S115を更に有するほかは、図6に示す第1実施形態のフローチャートと同様である。変数jは、第2測定モードによるフレームFが連続した回数をカウントするための変数である。Jは、第2測定モードによる連続の測定が許容されるフレーム数の上限値として予め規定される値である。
【0088】
測定が開始されると、ステップS101において変数jが0に初期化される。ピーク判定部80に基準距離範囲が登録されると、第2測定モードに移行し、次のフレームFのサブフレームSFの開始前のステップS105において変数jの値が1増加される。フレームFの処理が終了すると、ステップS114において変数jの値がJに達しているか否かの判定を行う。判定の結果、変数jがJに達していない場合(ステップS114の「NO」)には、ステップS121ヘと移行する。判定の結果、変数jがJに達している場合(ステップS114の「YES」)には、ステップS115に移行し、変数jを0に初期化する。ステップS115の後は、ステップS120に移行し、ピーク判定部80に登録されている基準距離範囲を削除する。これにより、次に実行されるフレームの測定モードは第1測定モードとなる。
【0089】
このようにして測距動作を実行することにより、第2測定モードで行われるフレームFが継続する回数は、最大でJ回となる。したがって、仮に、第1測定モードの測距範囲には含まれるが実行されている第2測定モードの測距範囲に含まれない距離範囲に測距対象物が発生した場合にも、測距対象物の検出が可能となる。
【0090】
このように、本実施形態によれば、露光期間を順次シフトしながら測定を行うことにより測距範囲の奥行き方向に沿った距離情報を取得する測距装置及び測距方法において、距離情報の取得に要する時間を短縮することができる。
【0091】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による測距装置及び測距方法について、図14を用いて説明する。第1乃至第3実施形態による測距装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。図14は、本実施形態による測距装置の概略構成を示すブロック図である。
【0092】
本実施形態による測距装置100は、図14に示すように、受光部40の画素領域が複数の領域(受光部40a,40b)に分割されている。そして、受光部40のこれら複数の領域の各々に対応して、露光期間制御部30、ヒストグラム情報生成部70、ピーク判定部80がそれぞれ設けられている。すなわち、本実施形態による測距装置100は、受光部40aと、これに対応する露光期間制御部30a、ヒストグラム情報生成部70a及びピーク判定部80aを有する。また、本実施形態による測距装置100は、受光部40aと、これに対応する露光期間制御部30b、ヒストグラム情報生成部70b及びピーク判定部80bを有する。
【0093】
制御部20は、露光期間制御部30a,30bの各々に対して、対応する受光部40a,40bを駆動するための設定信号を送信する。その他の各構成部の動作は、対象とする受光部の領域(受光部40a,40b)が異なるのみで、第1実施形態と同様であるためここでの説明は省略する。測距装置100は、受光部40a,40bごとにヒストグラム情報を作成し、測距対象物110までの距離及び基準距離範囲を算出する。
【0094】
複数に分割した受光部40a,40bごとに独立して露光期間を制御することで、受光部40a,40bごとに測距対象物110を検出することができる。仮に、図14に示すように測定対象領域に複数の測距対象物110a,110bが存在したとしても、受光部40a,40bごとに露光条件を変更することが可能である。したがって、受光部40の画素領域の全体に対して同じ露光条件を使用して測距を行う場合と比較して、より正確に測距対象物110a,110bまでの距離を算出することができる。
【0095】
なお、本実施形態では、受光部40の分割数と同数の露光期間制御部30、ヒストグラム情報生成部70及びピーク判定部80を設けた例を示したが、これらは必ずしも同数である必要はない。すなわち、分割した受光部40の複数の領域の各々を独立して制御できる構成であれば、露光期間制御部30、ヒストグラム情報生成部70及びピーク判定部80は、必ずしも受光部40の分割した領域と同数である必要はない。また、受光部40の分割数は、必ずしも2つである必要はなく、3つ以上であってもよい。
【0096】
このように、本実施形態によれば、露光期間を順次シフトしながら測定を行うことにより測距範囲の奥行き方向に沿った距離情報を取得する測距装置及び測距方法において、距離情報の取得に要する時間を短縮することができる。
【0097】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態による移動体について、図15を用いて説明する。図15は、本実施形態による移動体の構成例を示す図である。
【0098】
図15(a)は、車載カメラとして車両に搭載される機器の構成例を示している。機器300は、測距対象物までの距離を計測する距離計測部303と、距離計測部303により計測された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部304と、を有する。距離計測部303は、上記第1乃至第4実施形態のいずれかにおいて説明した測距装置100により構成される。ここで、距離計測部303は、測距対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、測距対象物までの距離等に関する情報である。
【0099】
機器300は、車両情報取得装置310と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、機器300には、衝突判定部304での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU320が接続されている。また、機器300は、衝突判定部304での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置330とも接続されている。例えば、衝突判定部304の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU320はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置330は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステム等の画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。機器300のこれらの装置は上述のように車両を制御する動作の制御を行う移動体制御部として機能する。
【0100】
本実施形態では車両の周囲、例えば前方又は後方を機器300で測距する。図15(b)は、車両前方(測距範囲350)を測距する場合の機器を示している。測距制御手段としての車両情報取得装置310が、測距動作を行うように機器300又は距離計測部303に指示を送る。このような構成により、測距の精度をより向上させることができる。
【0101】
上述では、他の車両と衝突しないように制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御、車線からはみ出さないように自動運転する制御等にも適用可能である。更に、機器は、自動車等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機、人工衛星、産業用ロボット及び民生用ロボット等の移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)、監視システム等、広く物体認識又は生体認識を利用する機器に適用することができる。
【0102】
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0103】
例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態である。
【0104】
また、上記実施形態では、発光部10及び受光部40を測距装置100の構成要素の一部として説明したが、発光部10及び受光部40のうちの少なくとも一方は必ずしも測距装置100の構成の一部である必要はない。
【0105】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0106】
なお、上記実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0107】
上記実施形態の開示は、以下の構成及び方法を含む。
(構成1)
発光部から発せられ測定対象領域にある対象物によって反射された光を含む光信号を検出してパルス信号に変換する受光部と、
前記発光部の発光のごとに、前記受光部を、前記光が射出されてから検出されるまでの時間に応じて定められた複数の階級に対応して設定された複数の露光期間のうちのいずれかに設定する露光期間制御部と、
前記発光部の複数回の発光を含む所定のフレーム期間の間に前記受光部から出力される信号に基づいて、前記階級と前記パルス信号を検出した回数を示す度数との関係を表す情報を生成する情報生成部と、
前記情報における度数のピークを判定するピーク判定部と、を有し、
前記露光期間制御部は、第1フレーム期間に取得した前記情報に度数のピークが検出された場合は、前記第1フレーム期間の次の第2フレーム期間において、前記ピークが検出された階級に対応する期間により近い期間から順に前記露光期間に設定する
ことを特徴とする測距装置。
(構成2)
前記第2フレーム期間では、前記ピークに対応するピークが検出された階級で測定を停止し、以降の階級における測定を行わずに次のフレーム期間に移行する
ことを特徴とする構成1記載の測距装置。
(構成3)
前記露光期間制御部は、前記第1フレーム期間に取得した前記情報に度数のピークが検出されなかった場合は、前記第2フレーム期間において、前記複数の階級に対応する複数の期間を順に前記露光期間に設定する
ことを特徴とする構成1又は2記載の測距装置。
(構成4)
前記ピーク判定部は、前記ピークが検出された前記階級に対応する時間情報に基づいて前記対象物までの距離情報を算出する
ことを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の測距装置。
(構成5)
前記対象物に対する相対的な移動速度を示す速度情報を取得する速度情報取得部を更に有し、
前記露光期間制御部は、前記速度情報を考慮して、前記ピークが検出された階級に対応する期間を算出する
ことを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の測距装置。
(構成6)
前記露光期間制御部は、前のフレーム期間に取得した前記情報に度数のピークが検出されたフレーム期間が所定フレーム数連続した場合は、次のフレーム期間において、前記複数の階級に対応する複数の期間を順に前記露光期間に設定する
ことを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載の測距装置。
(構成7)
前記受光部は、各々が複数の画素を含む複数の領域を有し、
前記露光期間制御部は、前記複数の領域の各々に独立して前記露光期間を設定し、
前記情報生成部は、前記複数の領域に対応する複数の前記情報を生成する
ことを特徴とする構成1乃至6のいずれかに記載の測距装置。
(構成8)
前記フレーム期間は、複数のサブフレームを含み、
前記複数のサブフレームの各々は、前記発光部の複数回の発光を含み、前記複数回の発光に対して同じ露光期間が設定されている
ことを特徴とする構成1乃至7のいずれかに記載の測距装置。
(構成9)
発光部から発せられ測定対象領域にある対象物によって反射された光を含む光信号を検出してパルス信号に変換する受光部と、
前記発光部の発光のごとに、前記受光部を、前記光が射出されてから検出されるまでの時間に応じて定められた複数の階級に対応して設定された複数の露光期間のうちのいずれかに設定する露光期間制御部と、
前記発光部の複数回の発光を含む所定のフレーム期間の間に前記受光部から出力される信号に基づいて、前記階級と前記パルス信号を検出した回数を示す度数との関係を表す情報を生成する情報生成部と、
前記対象物に関する距離情報を外部から取得する距離情報取得部と、を有し、
前記露光期間制御部は、前記距離情報取得部が取得した距離情報に対応する期間により近い期間から順に前記露光期間に設定する
ことを特徴とする測距装置。
(構成10)
移動体であって、
構成1乃至9のいずれかに記載の距離情報取得装置と、
前記距離情報取得装置が取得した距離情報に基づいて前記移動体を制御する制御手段と
を有することを特徴とする移動体。
(方法1)
発光部から発せられ測定対象領域にある対象物によって反射された光を含む光信号を検出し、検出した信号に基づいて前記対象物までの距離を算出する測距方法であって、
前記発光部の発光のごとに、受光部を、前記光が射出されてから検出されるまでの時間に応じて定められた複数の階級に対応して設定された複数の露光期間のうちのいずれかに設定し、前記受光部により検出した信号をパルス信号に変換し、
前記発光部の複数回の発光を含む所定のフレーム期間の間に前記受光部から出力される信号に基づいて、前記階級と前記パルス信号を検出した回数を示す度数との関係を表す情報を生成し、
第1フレーム期間に取得した前記情報に度数のピークが検出された場合は、前記第1フレーム期間の次の第2フレーム期間において、前記ピークが検出された階級に対応する期間により近い期間から順に前記露光期間に設定する
ことを特徴とする測距方法。
【符号の説明】
【0108】
10…発光部
20…制御部
30…露光期間制御部
40,40a,40b…受光部
50…速度情報取得部
60…モード制御部
70,70a,70b…ヒストグラム情報生成部
80,80a,80b…ピーク判定部
90…出力部
100…測距装置
図1
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