(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175966
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】バイポーラ電極積層体の製造方法、及びバイポーラ電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20241212BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241212BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M4/13
H01M4/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094115
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】近都 佑介
(72)【発明者】
【氏名】中野 隆彦
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ17
5H029CJ03
5H029CJ22
5H029HJ12
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA13
5H050EA11
5H050FA03
5H050GA03
5H050GA22
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】本開示は、正極活物質層及び負極活物質層をそれぞれ所望の密度とすることができ、かつ製造工程の少ないバイポーラ電極積層体の製造方法、及びそのようなバイポーラ電極積層体を製造することを含むバイポーラ電池の製造方法を提供する。
【解決手段】第1電極活物質層、集電体層、及び第2電極活物質層をこの順で有するバイポーラ電極積層体を製造する本開示の方法は、第1電極活物質、及び第1バインダーを含む第1電極合材、並びに第2電極活物質、第2バインダー、及び電解質成分を含む第2電極合材を提供すること、集電体層の第1の面に第1電極合材を成膜して、第1電極活物質層前駆体を形成し、かつ集電体層の第2の面に第2電極合材を成膜して、第2電極活物質層前駆体を形成すること、第1電極活物質層前駆体、集電体層、及び第2電極活物質層前駆体を含む積層体をプレスすること、及びプレス後に、第2電極活物質層中の電解質成分を溶媒で溶解して、電解液を生成すること、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極活物質層、集電体層、及び第2電極活物質層をこの順で有するバイポーラ電極積層体の製造方法であって、下記の工程を含む、方法:
第1電極活物質、及び第1バインダーを含む第1電極合材、並びに第2電極活物質、第2バインダー、及び電解質成分を含む第2電極合材を提供すること、
前記集電体層の第1の面に前記第1電極合材を成膜して、第1電極活物質層前駆体を形成し、かつ前記集電体層の第2の面に前記第2電極合材を成膜して、第2電極活物質層前駆体を形成すること、
前記第1電極活物質層前駆体、前記集電体層、及び前記第2電極活物質層前駆体を含む積層体をプレスすること、及び
前記プレス後に、前記第2電極活物質層中の前記電解質成分を溶媒で溶解して、電解液を生成すること。
【請求項2】
前記電解質成分がリチウム塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1電極活物質層が正極活物質層であり、かつ前記第2電極活物質層が負極活物質層である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法によって前記バイポーラ電極積層体を製造することを含む、バイポーラ電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイポーラ電極積層体の製造方法、及びバイポーラ電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集電体の一方の表面に正極活物質層を備え、他方の表面に負極活物質層を備えるバイポーラ電極が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1は、集電体の第1の表面の第1の範囲に第1の活物質層を形成する第1の電極合剤スラリーを塗布する工程と、該集電体の第2の表面の該第1の範囲の内周側の第2の範囲に第2の活物質層を形成する第2の電極合剤スラリーを塗布する工程と、該集電体の第2の表面の該第2の範囲の外周側の第2の範囲に接する第3の範囲に端部電気絶縁層を形成する電気絶縁剤スラリーを塗布する工程と、該第1の電極合剤スラリーと該第2の電極合剤スラリーと該電気絶縁剤スラリーとを乾燥させる工程と、乾燥後の該第1の電極合剤スラリーと該第2の電極合剤スラリーと該電気絶縁剤スラリーとを同時にプレスして該第1の活物質層と該第2の活物質層と該端部電気絶縁層とを形成する工程とを備えるバイポーラ電極の製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイポーラ電池では、高容量化のために正極活物質層は高密度であることが望まれる一方で、負極活物質の膨張収縮を吸収するために負極活物質層は低~中密度であることが望まれることがある。
【0006】
バイポーラ電池の製造において、正極活物質層を形成するための層(以下、本開示において正極活物質層前駆体)と、負極活物質層を形成するための層(以下、本開示において負極活物質層前駆体)とは、それぞれ異なる材料からなることがあり、その場合、これらの層はそれぞれ異なる柔軟性を備えている。このため、負極活物質層前駆体及び正極活物質層前駆体を乾燥させてプレスする際に、これらのうち柔らかい方が優先的に圧縮されることとなり、プレスによって形成された負極活物質層及び正極活物質層において、所望の密度が得られないことがある。
【0007】
この課題を解決するための方法として、正極集電体層の一方の表面に正極活物質層前駆体を成膜し、負極集電体層の一方の表面に負極活物質層前駆体を成膜した後、それぞれをプレスすることにより各電極活物質層を形成し、両集電体層における電極活物質層が形成されていない面同士を対向させて接着させることによりバイポーラ電極を製造する方法等が考えられる。しかし、この方法では、プレス工程を2回必要とし、製造工程が多くなる。
【0008】
本開示は、正極活物質層及び負極活物質層をそれぞれ所望の密度とすることができ、かつ製造工程の少ないバイポーラ電極積層体の製造方法、及びそのようなバイポーラ電極積層体を製造することを含むバイポーラ電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本件開示者等は、以下の手段により上記課題を解決することができることを見出した。
〈態様1〉
第1電極活物質層、集電体層、及び第2電極活物質層をこの順で有するバイポーラ電極積層体の製造方法であって、下記の工程を含む、方法:
第1電極活物質、及び第1バインダーを含む第1電極合材、並びに第2電極活物質、第2バインダー、及び電解質成分を含む第2電極合材を提供すること、
前記集電体層の第1の面に前記第1電極合材を成膜して、第1電極活物質層前駆体を形成し、かつ前記集電体層の第2の面に前記第2電極合材を成膜して、第2電極活物質層前駆体を形成すること、
前記第1電極活物質層前駆体、前記集電体層、及び前記第2電極活物質層前駆体を含む積層体をプレスすること、及び
前記プレス後に、前記第2電極活物質層中の前記電解質成分を溶媒で溶解して、電解液を生成すること。
〈態様2〉
前記電解質成分がリチウム塩である、態様1に記載の方法。
〈態様3〉
前記第1電極活物質層が正極活物質層であり、かつ前記第2電極活物質層が負極活物質層である、態様1又は2に記載の方法。
〈態様4〉
態様1~3のいずれか一項に記載の方法によって前記バイポーラ電極積層体を製造することを含む、バイポーラ電池の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、正極活物質層及び負極活物質層をそれぞれ所望の密度とすることができ、かつ製造工程の少ないバイポーラ電極積層体の製造方法、及びそのようなバイポーラ電極積層体を製造することを含むバイポーラ電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、電解質成分を溶媒で溶解する前の積層体を示す断面図である。
【
図2】
図2は、電解質成分を溶媒で溶解した後のバイポーラ電極積層体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。なお、本開示は、以下の実施の形態に限定されるのではなく、開示の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0013】
《バイポーラ電極積層体の製造方法》
第1電極活物質層、集電体層、及び第2電極活物質層をこの順で有するバイポーラ電極積層体を製造する本開示の方法は、第1電極活物質、及び第1バインダーを含む第1電極合材、並びに第2電極活物質、第2バインダー、及び電解質成分を含む第2電極合材を提供すること、集電体層の第1の面に第1電極合材を成膜して、第1電極活物質層前駆体を形成し、かつ集電体層の第2の面に第2電極合材を成膜して、第2電極活物質層前駆体を形成すること、第1電極活物質層前駆体、集電体層、及び第2電極活物質層前駆体を含む積層体をプレスすること、及びプレス後に、第2電極活物質層中の電解質成分を溶媒で溶解して、電解液を生成すること、を含む。
【0014】
本件開示者等は、集電体層の両面に電極活物質前駆体を成膜した積層体をプレスしてバイポーラ電極積層体を一括形成する場合において、密度を低くしたい方の電極活物質層前駆体に電解質成分を加えてプレスしたのちに、溶媒を加えて電解質成分を溶解することで、プレスによる電極活物質層の高密度化を抑制することができることを見出した。
【0015】
また、本開示の方法によれば、電池ケース内にて電解質の溶解を実施することで、得られた溶液をそのまま電池の電解液として利用することができる。
【0016】
図面を参照して、バイポーラ電極積層体を製造する本開示の方法を説明する。
図1は、電解質成分を溶媒で溶解する前の積層体を示す断面図である。
図1に示されるように、第2電極活物質層は第2電極活物質31、及び電解質成分32を含む。
図2は、電解質成分32を溶媒で溶解した後のバイポーラ電極積層体を示す断面図である。
図2に示されるように、溶媒によって電解質成分32が溶解され、電解液40が生成されている。これにより、プレスによる第2電極活物質層の高密度化を抑制することができる。なお、図面において、第1バインダー、及び第2バインダーは省略されている。
【0017】
〈電極合材の提供〉
本開示の方法は、第1電極活物質、及び第1バインダーを含む第1電極合材、並びに第2電極活物質、第2バインダー、及び電解質成分を含む第2電極合材を提供することを含む。
【0018】
(第1電極合材)
第1電極合材は、第1電極活物質、及び第1バインダーを含む。また、第1電極合材は、随意に第1増粘剤、及び第1導電助剤を含む。これらの材料を混合することによって、第1電極合材を提供することができる。
【0019】
第1電極活物質は、正極活物質又は負極活物質である。公知の活物質のうち、所定のイオンを吸蔵放出する電位(充放電電位)の異なる2つの物質を選択し、貴な電位を示す物質を正極活物質とし、卑な電位を示す物質を後述の負極活物質として、それぞれ用いることができる。
【0020】
正極活物質としては公知の活物質を用いればよい。例えば、リチウムイオン電池を構成する場合は、正極活物質としてコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、マンガン酸リチウム、スピネル系リチウム化合物等の各種のリチウム含有複合酸化物を用いることができる。また、オリビン型の正極活物質としてリン酸鉄リチウム(LFP)を用いることができる。正極活物質は、例えば、粒子状であってもよく、その大きさは特に限定されるものではない。
【0021】
負極活物質としては公知の活物質を用いればよい。例えば、リチウムイオン電池を構成する場合は、負極活物質としてシリコンやシリコン合金や酸化ケイ素等のシリコン系活物質;黒鉛やハードカーボン等の炭素系活物質;チタン酸リチウム等の各種酸化物系活物質;金属リチウムやリチウム合金等を用いることができる。負極活物質は、例えば、粒子状であってもよく、その大きさは特に限定されるものではない。
【0022】
第1バインダーとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)系バインダー、ブチレンゴム(IIR)系バインダー、スチレンブタジエンゴム(SBR)系バインダー、アクリレートブタジエンゴム(ABR)系バインダー、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)系バインダー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系バインダー等が挙げられる。
【0023】
第1導電助剤としてはアセチレンブラックやケッチェンブラック、及びカーボンナノチューブ等の炭素材料やニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料が挙げられる。導電助剤は、例えば、粒子状又は繊維状であってもよく、その大きさは特に限定されるものではない。
【0024】
第1増粘剤としてはカルボキシメチルセルロース等が挙げられるが、これに限定されない。
【0025】
(第2電極合材)
第2電極合材は、第2電極活物質、第2バインダー、及び電解質成分を含む。また、第2電極合材は、随意に第2増粘剤、及び第2導電助剤を含む。これらの材料を混合することによって、第2電極合材を提供することができる。
【0026】
第2電極活物質は、正極活物質及び負極活物質のうち、第1電極活物質とは異なる電極活物質層を形成する材料である。すなわち、第1電極活物質が正極活物質であれば第2電極活物質は負極活物質であり、第1電極活物質が負極活物質であれば第2電極活物質は正極活物質である。
【0027】
第2電極活物質については、本開示の第1電極活物質に関する上記の記載を参照できる。
【0028】
第2バインダーについては、本開示の第1バインダーに関する上記の記載を参照できる。
【0029】
電解質成分は、バイポーラ電池の電解質として機能し得る物質をいずれも採用可能である。例えば、リチウムイオン電池を構成する場合、電解質成分はリチウム塩であってよい。リチウム塩としては、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiOTF)等が例示される。
【0030】
第2増粘剤、及び第2導電助剤については、本開示の第1増粘剤、及び第1導電助剤に関する上記の記載を参照できる。
【0031】
〈電極活物質層前駆体の形成〉
本開示の方法は、集電体層の第1の面に第1電極合材を成膜して、第1電極活物質層前駆体を形成し、かつ集電体層の第2の面に第2電極合材を成膜して、第2電極活物質層前駆体を形成することを含む。なお、本開示において「電極活物質前駆体」とは、プレスにより電極活物質層を形成することができる層を意味する。
【0032】
(集電体層)
本開示において、「集電体層」は、バイポーラ集電体層、すなわちその一方の面に正極活物質層が形成され、かつその他方の面に負極活物質層が形成される集電体層を意味している。
【0033】
集電体層は、箔状、板状、メッシュ状、パンチングメタル状、及び、発泡体等であってよい。集電体層は、金属箔又は金属メッシュによって構成されていてもよい。特に、金属箔が取扱い性等に優れる。集電体層は、複数枚の箔からなっていてもよい。また、集電体層が複数枚の金属箔からなる場合、当該複数枚の金属箔間に何らかの層を有していてもよい。
【0034】
集電体層が金属からなる場合、集電体層を構成する金属としては、Cu、Ni、Cr、Au、Pt、Ag、Al、Fe、Ti、Zn、Co、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0035】
集電体層が複数の金属箔からなる場合、例えば、金属箔を接着剤によって貼り合わせることによって集電体層を形成することができる。
【0036】
集電体層の厚みは特に限定されるものではない。例えば、0.1μm以上、又は1μm以上であってもよく、1mm以下、又は100μm以下であってもよい。
【0037】
集電体層の表面に電極合材を成膜する方法としては、ペースト状の電極合材を塗布して乾燥する方法が例示されるが、これに限定されない。
【0038】
〈積層体のプレス〉
本開示の方法は、第1電極活物質層前駆体、集電体層、及び第2電極活物質層前駆体を含む積層体をプレスすることを含む。例えば、ロールプレス機を用いてプレスすることができる。
【0039】
積層体をプレスする圧力としては、1kN/cm以上、3kN/cm以上、5kN/cm以上、6kN/cm以上、7kN/cm以上であってよく、15kN/cm以下、13kN/cm以下、11kN/cm以下、10kN/cm以下、9kN/cm以下であってよい。
【0040】
〈電解質成分の溶解〉
本開示の方法は、プレス後に、第2電極活物質層中の電解質成分を溶媒で溶解して、電解液を生成することを含む。
【0041】
溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等を用いることができる。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、エチレングリコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0042】
本開示の方法によって製造されるバイポーラ電極積層体は、第1電極活物質層、集電体層、及び第2電極活物質層をこの順で有する。
【0043】
〈第1電極活物質層〉
本開示の方法において、第1電極活物質層は正極活物質層であっても負極活物質であってもよいが、正極活物質層であることが好ましい。この場合、第1電極活物質、及び第1電極合材は、それぞれ正極活物質、及び正極合材であってよい。
【0044】
第1電極活物質層の密度は、2.00g/cc以上、2.05g/cc以上、又は2.10g/cc以上であってよく、2.25g/cc以下、2.20g/cc以下、又は2.15g/cc以下であってよい。
【0045】
第1電極活物質層の密度と、第1電極活物質層前駆体の密度との差は、0.20g/cc以上、0.25g/cc以上、又は0.30g/cc以上であってよく、0.45g/cc以下、0.40g/cc以下、0.35g/cc以下であってよい。
【0046】
密度は、活物質の目付け量とその厚みの実測値から算出された値を採用することができる。
【0047】
第1電極活物質層における各成分の含有量は従来と同様とすればよい。
【0048】
第1電極活物質層の形状も従来と同様とすればよい。電池をより容易に構成できる観点から、シート状の第1電極活物質層であってもよい。
【0049】
第1電極活物質層の厚みは、特に限定されるものではない。例えば、0.1μm以上2mm以下であってもよい。下限は1μm以上であってもよく、上限は1mm以下であってもよい。
【0050】
〈集電体層〉
集電体層については、本開示の集電体層に関する上記の記載を参照できる。
【0051】
〈第2電極活物質層〉
本開示の方法において、第2電極活物質層は正極活物質層であっても負極活物質層であってもよいが、負極活物質層であることが好ましい。この場合、第2電極活物質、及び第2電極合材は、それぞれ負極活物質、及び負極合材であってよい。
【0052】
第2電極活物質層の密度は、1.00g/cc以上、1.05g/cc以上、又は1.10g/cc以上であってよく、1.25g/cc以下、1.20g/cc以下、又は1.15g/cc以下であってよい。
【0053】
第2電極活物質層の密度と、第2電極活物質層前駆体の密度との差は、0.01g/cc以上、0.05g/cc以上、又は0.08g/cc以上であってよく、0.20g/cc以下、0.15g/cc以下、0.12g/cc以下であってよい。
【0054】
第2電極活物質層前駆体の密度から第2電極活物質の密度への増加率は、0.1%以上、1.0%以上、3.0%以上、5.0%以上、7.0%以上、8.0%以上、9.0%以上、又は9.5%以上であってよく、29.0%以下、25.0%以下、20.0%以下、17.0%以下、15.0%以下、14.0%以下、13.0%以下、12.0%以下、11.0%以下、又は10.0%以下であってよい。
【0055】
第2電極活物質層における各成分の含有量は従来と同様とすればよい。
【0056】
第2電極活物質層の形状も従来と同様とすればよい。電池をより容易に構成できる観点から、シート状の第2電極活物質層であってもよい。
【0057】
第2電極活物質層の厚みは、特に限定されるものではない。例えば、0.1μm以上2mm以下であってもよい。下限は1μm以上であってもよく、上限は1mm以下であってもよい。
【0058】
《バイポーラ電池の製造方法》
バイポーラ電池を製造する本開示の方法は、バイポーラ電極積層体を製造することを含む。
【0059】
〈バイポーラ電極積層体の製造〉
バイポーラ電極積層体を製造する方法については、バイポーラ電極積層体を製造する本開示の方法に関する上記の記載を参照できる。
【0060】
〈電池ケースへの収容等〉
バイポーラ電極積層体とセパレータ層とを交互に積層し、そして電池ケースに収容し、電解液を含浸することによって、バイポーラ電池を得ることができる。具体的には、バイポーラ電極積層体及びセパレータ層を電池ケースに収容するとともに、電池ケース内に第2電極活物質層中の電解質成分を溶解する溶媒を充填して電解液を生成し、バイポーラ電極積層体及びセパレータ層を電解液に浸漬するようにして、電池ケース内にバイポーラ電極積層体及びセパレータ層、並びに電解液を密封することで、本開示のバイポーラ電池を得ることができる。
【0061】
セパレータ層は、電気絶縁性の不織布又は多孔質フィルムであってもよい。多孔質フィルムとして、例えば、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等の樹脂からなるフィルムが挙げられる。
【実施例0062】
《バイポーラ電極積層体の作製》
〈集電体層の形成〉
(実施例1)
アルミニウム箔と銅箔とを接着剤(主剤:オレフィン系樹脂、硬化剤:イソシアネート系)によって貼り合わせ、接着剤を硬化反応させて集電体層を形成した。
【0063】
〈正極活物質層前駆体及び負極活物質層前駆体の形成〉
正極活物質としてのリン酸鉄リチウム(LFP)、バインダーとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)、導電助剤としてのカーボンナノチューブ(CNT)、及び溶媒としての水を混合して、正極合材ペーストを得た。得られた正極合材ペーストを、上記集電体層のアルミニウム箔面に塗布して、正極活物質層前駆体を形成した。また、負極活物質としての黒鉛、バインダーとしてのSBR、増粘剤としてのCMC、導電助剤としてのCNT、電解質成分としてのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)(日本触媒製、イオネル)、及び溶媒としての水を混合して負極合材ペーストを得た。得られた負極合材ペーストを、上記集電体層の銅箔面に塗布して、負極活物質層前駆体を形成した。集電体層上に形成した正極活物質層前駆体、及び負極活物質層前駆体を乾燥させて、積層体を得た。
【0064】
〈積層体のプレス〉
得られた積層体を8kN/cmの線圧でプレスした。
【0065】
〈電解質成分の溶解〉
プレスされた積層体を水で洗い、LiFSIを溶解除去した。これによって、バイポーラ電極積層体を作製した。
【0066】
(比較例1)
負極活物質層前駆体の形成において電解質成分を使用しなかったこと、及び電解質成分の溶解を実施しなかったこと以外は実施例1と同様にして、バイポーラ電極積層体を作製した。
【0067】
《評価》
〈密度〉
正極活物質層前駆体及び正極活物質層、並びに負極活物質層前駆体及び負極活物質層の密度を測定した。密度は、活物質の目付け量とその厚みの実測値から算出された値を採用した。
【0068】
《結果》
密度の算出結果を表1に示す。
【0069】
【0070】
表1に示されるように、本開示の方法では、プレスによる負極活物質層の密度の上昇を抑えることができ、正極活物質層を選択的に高密度化することができた。