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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175969
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】振動測定装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20241212BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20241212BHJP
   B61B 13/06 20060101ALI20241212BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20241212BHJP
   G01M 17/007 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
B65G1/04 551A
G05D1/02 G
B61B13/06 H
G01H17/00 Z
G01M17/007 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094119
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小川 大介
(72)【発明者】
【氏名】橋口 健信
(72)【発明者】
【氏名】冨田 大地
【テーマコード(参考)】
2G064
3F022
5H301
【Fターム(参考)】
2G064AA14
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BA08
3F022EE05
3F022LL12
3F022MM61
3F022QQ00
5H301AA02
5H301AA09
5H301BB05
5H301EE02
5H301FF05
5H301FF11
5H301GG14
(57)【要約】
【課題】測定された振動の原因の分析を適切に行うための情報を出力することができる振動測定装置を提供する。
【解決手段】搬送車3に搭載される振動測定装置20が、搬送車3に搭載される振動測定装置20であって、振動を測定する振動測定部21と、搬送車3の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部22と、搬送車3の状態を示す搬送車状態情報を取得する状態情報取得部23と、振動測定部21による測定結果と搬送車状態情報と位置情報とを相互に関連付けて記録する記録部24と、記録部24に記録された情報を出力する出力部25とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送車に搭載される振動測定装置であって、
振動を測定する振動測定部と、
前記搬送車の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記搬送車の状態を示す搬送車状態情報を取得する状態情報取得部と、
前記振動測定部による測定結果と前記搬送車状態情報と前記位置情報とを相互に関連付けて記録する記録部と、
前記記録部に記録された情報を出力する出力部と、を備える、振動測定装置。
【請求項2】
前記搬送車状態情報は、前記搬送車の走行速度、前記搬送車の加速状態、前記搬送車が備える走行機構の動作状態、及び、前記搬送車が備えるセンサの検知状態、の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の振動測定装置。
【請求項3】
前記振動測定部は、前記搬送車が搬送する容器に収容されている、請求項1又は2に記載の振動測定装置。
【請求項4】
前記容器は、前記搬送車が当該容器に収容して搬送する物品としての板状部材が挿入されるスロットを複数備え、
互いに異なる前記スロットに挿入される第1支持部材及び第2支持部材を備え、
前記振動測定部は、振動センサ、及び、前記振動センサによる前記測定結果を送信する送信機を備えると共に、前記第1支持部材に支持され、
前記記録部は、前記送信機から前記測定結果を受信する受信機、及び、前記受信機により受信した前記測定結果を記憶する記憶装置を備えると共に、前記第2支持部材に支持されている、請求項3に記載の振動測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車に搭載される振動測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような振動測定装置の一例が、下記の特許文献1(特開2008-181245号公報)に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における符号及び名称を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の振動測定装置(振動測定器21)は、走行経路(走行レール2)に沿って走行する搬送車(無人搬送車10)に搭載される。また、この搬送車(10)には、現在の走行位置を検出する走行位置検出センサー(22)も搭載され、搬送車(10)は、所定値以上の振動値が検出される走行位置を後続の搬送車(10)に通信する。そして、搬送車(10)は、先行の搬送車(10)から所定値以上の振動値が検出される走行位置の通信があった場合には、その位置を走行する時に走行速度を減速させる制御を行う。また、搬送車(10)は、自車の振動検出器(21)によって所定値以上の振動値が検出された場合にも、自車の走行速度を減速させる制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-181245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、搬送車(10)に振動測定装置(21)及び走行位置検出センサー(22)を搭載することで、例えば走行レールの損傷のように突発的な事態があったときでも、搬送車(10)1台が通過すればその異常が確認できるため、振動による被害の拡大を防ぐことができると記載されている。
【0006】
しかしながら、振動測定装置が搬送車に搭載されている場合、搬送車の加速及び減速などの搬送車の状態の影響を受けて搬送車の振動が大きくなっている場合もある。そのため、1台の搬送車で大きな振動が測定されたとしても、その振動が走行レールなどの走行経路の不具合によって発生しているとは断言できない。
【0007】
そこで、測定された振動の原因の分析を適切に行うことができるようにすることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に鑑みた、振動測定装置の特徴構成は、搬送車に搭載される振動測定装置であって、振動を測定する振動測定部と、前記搬送車の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、前記搬送車の状態を示す搬送車状態情報を取得する状態情報取得部と、前記振動測定部による測定結果と前記搬送車状態情報と前記位置情報とを相互に関連付けて記録する記録部と、前記記録部に記録された情報を出力する出力部とを備える点にある。
【0009】
本構成によれば、搬送車が走行した走行経路の各位置で測定した振動とその位置での搬送車の状態とを示す情報を取得できる。その結果、それらの情報の出力を受けたユーザは、振動が搬送車の走行経路のいずれの位置において大きくなるのか、及び、その際に搬送車がどのような状態であるのかといった情報を適切に把握できる。すなわち、本構成に係る振動測定装置によれば、測定された振動の原因の分析を適切に行うための情報を出力することができる。
【0010】
振動測定装置の更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下
の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】振動測定装置を用いた振動測定が行われる物品搬送設備の平面図
図2】振動測定装置を搭載する搬送車の側面図
図3】搬送車及び振動測定装置の構成を示す模式的ブロック図
図4】案内輪の動作状態の説明図
図5】案内輪の動作状態の説明図
図6】搬送車の物体検知センサの検知エリアの説明図
図7】搬送車の物体検知センサの検知エリアの説明図
図8】容器及び振動測定装置の構成を示す模式的ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
振動測定装置20の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態では、物品を搬送する搬送車3に振動測定装置20を搭載して、その振動測定装置20が振動測定を行う例を説明する。図1は、振動測定装置20を用いた振動測定が行われる物品搬送設備200の平面図である。図2は、振動測定装置20を搭載する搬送車3の側面図である。図3は、搬送車3及び振動測定装置20の構成を示す模式的ブロック図である。図4及び図5は、搬送車3が備える案内輪17の動作状態の説明図である。また、以下の説明では、走行経路1に沿った方向を走行方向Y、水平面に沿うと共に走行方向Yに直交する方向を幅方向Xとする。上下方向Zは、走行方向Y及び幅方向Xに直交する方向である。
【0013】
物品搬送設備200は、天井に吊り下げ支持されて走行経路1に沿って設置された走行レール2と、走行レール2に吊り下げ支持されて走行レール2上を走行経路1に沿って走行し、容器Wを搬送する搬送車3とを備えている。つまり、本実施形態で説明する搬送車3は、所謂、天井搬送車である。搬送車3は、例えば、半導体基板の材料とされるウェハなどの物品を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)等を容器Wとして搬送する。
【0014】
図1に示すように、走行経路1は、例えば1つの環状の主経路1Mと、複数の処理装置202を経由する環状の複数の副経路1Sと、後述するメンテナンス領域E2に設けられるメンテナンス経路1Cとを備えている。走行経路1は一方通行である。搬送車3は、走行経路1を走行方向Yの上流側から走行方向Yの下流側に向かって走行する。また、走行経路1には、容器Wを搬送する場合に通る領域である搬送領域E1と、搬送車3のメンテナンスを行う場合に通る領域であるメンテナンス領域E2とが含まれている。メンテナンス領域E2には、例えば、メンテナンスのために、走行レール2に吊り下げられた搬送車3を地上側に降ろすためのメンテナンスリフタ204が配置されている。図4及び図5に示すように、搬送車3は、一対の走行レール2に案内される。
【0015】
処理装置202は、例えば露光処理やエッチング処理などの各種の処理を行うための半導体処理装置等である。その場合、物品搬送設備200では上記FOUPが容器Wとして搬送される。尚、容器W及びその容器Wに収容する物品は他の物でもよい。例えば、搬送車3は、半導体基板の製造過程においてウェハの露光処理に用いられるレチクルを物品とし、そのレチクルを収容するレチクルポッドを容器Wとして搬送してもよい。各処理装置202には、載置台203が併設されている。
【0016】
図2に示すように、搬送車3は、走行経路1に沿って天井から吊り下げ支持されて配置された走行レール2に案内されて走行経路1に沿って走行する走行機構5と、走行レール2の下方に位置して走行機構5に吊り下げ支持された搬送車本体12とを備えている。また、搬送車3は、容器Wを吊り下げて保持する保持機構6と、保持機構6を昇降させる昇降機構7と備える。搬送車3は、図2に示すように、保持機構6を上昇させた状態で走行して容器Wを搬送する。
【0017】
図2図4及び図5に示すように、それぞれの走行機構5には、電動式の走行用アクチュエータ35にて回転駆動される一対の走行輪15が備えられている。走行用アクチュエータ35は、例えばモータ(走行用モータ)である。走行輪15は、走行レール2のそれぞれの上面にて形成される走行面を転動する。また、詳細な図示は行っていないが、走行機構5には、上下方向Zに沿う軸心周り(上下軸心周り)で自由回転する一対の走行補助輪16が、一対の走行レール2におけるそれぞれの内側面に接当する状態で備えられている。
【0018】
図4及び図5に示すように、走行経路1における分岐区間には、搬送車3の走行方向Yに沿った方向に延びる案内レール13が備えられている。尚、図示は省略するが、走行経路1における合流区間にも同様の案内レール13が備えられている。案内レール13は、一対の案内面14(第1案内面14a,第2案内面14b)を備える。一対の案内面14(第1案内面14a,第2案内面14b)は、走行方向Yに直交する幅方向Xにおける互いに反対側を向くと共にそれぞれが走行方向Yに沿って延在する第1案内面14a及び第2案内面14bである。また、搬送車3には、上下方向Zに沿う縦軸心周り(上下軸心周り)に回転する案内輪17が備えられている。案内輪17は、左右一対の走行レール2の間の中央部に配置された案内レール13よりも右方向及び左方向に位置変更可能に備えられ、案内レール13の右側の案内面14である第1案内面14a、或いは左側の案内面14である第2案内面14bに接触して回転する。
【0019】
搬送車3が備える車両制御部4は、以下に説明するように、走行機構5に対して、分岐区間及び合流区間において案内輪17を、一対の案内面14の何れかに選択的に当接させるのかを切り替える切替動作を行わせる。
【0020】
図4は、搬送車3を分岐区間において走行方向Yに向かって右側の経路へ進行させる(本例では直進させる)場合の例である。この場合、車両制御部4は、案内輪17を案内レール13の第1案内面14aの側(走行方向Yに向かって右側)に位置させる。これにより、搬送車3は、案内レール13の第1案内面14aと案内輪17とが当接する状態で走行する。図4に示すように、搬送車3が分岐区間において右側(幅方向第1側X1)の経路を通って直進する場合、一対の走行レール2の内、左右一方側(ここでは左側)の走行レール2が途切れ、左側の走行輪15及び走行補助輪16が脱輪した状態となる。尚、図4では走行補助輪16については簡略化のため記載を省略している。しかし、案内レール13が案内輪17を介して搬送車3の荷重を受止めて案内支持することで、搬送車3が走行レール2から脱落することが抑制され、搬送車3が分岐区間において直進走行できる。
【0021】
図5は、搬送車3を分岐区間において走行方向Yに向かって左側の経路へ進行させる(本例ではカーブ経路に沿って分岐させる)の例である。この場合、車両制御部4は、案内輪17を案内レール13の第2案内面14bの側(走行方向Yに向かって左側)に位置させる。これにより、搬送車3は、案内レール13の第2案内面14bと案内輪17とが当接する状態で案内される。図5に示すように、搬送車3が分岐区間において左側(幅方向第2側X2)の経路を通って分岐する場合、一対の走行レール2の内、左右一方側(ここでは右側)の走行レール2が途切れ、右側の走行輪15及び走行補助輪16が脱輪した状態となる。しかし、案内レール13が案内輪17を介して搬送車3の荷重を受止めて案内支持することで、搬送車3が走行レール2から脱落することが抑制され、搬送車3が分岐区間において分岐走行できる。
【0022】
図3に示すように、搬送車3は、上述した以外にも、位置検知センサ8と、速度センサ9と、物体検知センサ10と、通信部11とを備える。
【0023】
車両制御部4は、搬送車3の動作を制御する。例えば、車両制御部4は、物品搬送設備200の全体を管理する設備制御部Hとの間で通信部11を介してワイヤレス通信によって情報通信できる。そして、車両制御部4は、設備制御部Hからの搬送指令に基づいて、自律制御により搬送車3を走行させ、容器Wを異なる載置台203の間で搬送し、指定された載置台203の上方で停止して、保持機構6を昇降させることによって容器Wを移載する。
【0024】
位置検知センサ8は、搬送車3がどの位置にあるのかを検出するために用いられる。例えば、図3に示すように、走行経路1には、走行経路1における位置を示す位置指標Bが走行経路1に沿って配置されている。位置指標Bは、例えば一次元又は二次元バーコード等や、数字や文字が記載されたマーカーとすることができる。位置検知センサ8は、バーコードリーダや画像認識装置、数字や文字を認識する文字認識装置とすることができる。また、位置検知センサ8は、走行輪15の車軸(図示せず)の回転角度を検出するセンサ等を用いて、搬送車3の走行距離を導出できる。そして、位置検知センサ8は、位置指標Bを検出してからの搬送車3の走行距離に基づいて、走行経路1における搬送車3の現在の位置を検出できる。位置検知センサ8によって検出された位置情報は、車両制御部4に伝達される。このようにして、搬送車3は、複数の位置指標Bを利用して、走行経路1における位置を検出できる。また、搬送車3は、検出された位置情報を設備制御部Hに逐次送信し、設備制御部Hは、その位置情報に基づいて生成した搬送指令を搬送車3に送信できる。
【0025】
速度センサ9は、搬送車3の走行速度を検出するために用いられる。速度センサ9は、例えば、走行輪15の車軸(図示せず)の回転角度を検出するセンサ等を用いて実現できる。その場合、速度センサ9が、走行輪15の車軸(図示せず)の回転角度に基づいて車軸の回転速度を導出し、その回転速度に基づいて搬送車3の走行速度を導出できる。そして、速度センサ9が、その導出した走行速度を車両制御部4に伝達すればよい。或いは、速度センサ9が、測定した走行輪15の車軸(図示せず)の回転角度を車両制御部4に逐次伝達し、車両制御部4がその回転角度の値に基づいて搬送車3の走行速度を導出してもよい。
【0026】
物体検知センサ10は、走行する搬送車3にとっての障害物となる物体を検知するために用いられる。例えば、走行経路1には、複数の搬送車3が存在し、同時に走行している。そのため、他の搬送車3との衝突を防止するために、搬送車3には、走行方向Yの前方における設定領域内に存在する物体を検出する物体検知センサ10が設けられている。
【0027】
図6及び図7は、搬送車3の物体検知センサ10の検知エリア18を説明する図である。図6に示すように、搬送車3は、走行方向Yの前方が直線区間の場合、搬送車3の走行方向Yの前方に設定される検知エリア18を、幅方向Xよりも、走行方向Yに沿って長く延びた形状にする。それに対して、図7に示すように、搬送車3は、搬送車3の走行方向Yの前方が曲線区間の場合、搬送車3の走行方向Yの前方に設定される検知エリア18を、走行方向Yよりも、曲線形状の走行経路1に応じて幅方向Xに沿って長く延びた形状にする。
【0028】
次に、搬送車3に搭載される振動測定装置20について説明する。図3に示すように、振動測定装置20は、振動を測定する振動測定部21と、搬送車3の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部22と、搬送車3の状態を示す搬送車状態情報を取得する状態情報取得部23と、振動測定部21による測定結果と搬送車状態情報と位置情報とを相互に関連付けて記録する記録部24と、記録部24に記録された情報を出力する出力部25とを備える。尚、振動測定装置20は、情報の通信機能、情報の演算処理機能、情報の記憶機能などを備えており、後述するようにそれらの機能の少なくとも一部を利用して、振動測定部21、位置情報取得部22、状態情報取得部23、記録部24及び出力部25の機能を実現してもよい。また、振動測定装置20は、それらの機能が搭載された単一の装置によって実現されてもよく、或いは、それらの機能が搭載された複数の装置によって実現されてもよい。
【0029】
振動測定部21は、振動の振幅、周波数、加速度等の振動を表す物理量を測定できるセンサを用いて実現できる。また、振動測定部21は、例えば、X方向、Y方向及びZ方向の互いに直交する3方向の振動を測定可能な構成であってもよい。或いは、振動測定部21は、X方向、Y方向及びZ方向のうちの2方向又は1方向の振動を測定可能な構成であってもよい。振動測定部21は、振動の測定結果と共にその測定結果が取得された時刻についての時刻情報を取得してもよい。
【0030】
位置情報取得部22は、搬送車3の位置を示す位置情報を取得する。例えば、位置情報取得部22は、振動測定装置20が備える情報通信機能を利用して、搬送車3の位置検知センサ8で検知された搬送車3の位置を示す位置情報を取得する。位置情報取得部22は、位置情報と共にその位置情報が検知された時刻についての時刻情報を取得してもよい。
【0031】
状態情報取得部23は、搬送車3の状態を示す搬送車状態情報を取得する。例えば、状態情報取得部23は、振動測定装置20が備える情報の通信機能を利用して、搬送車3で測定された搬送車状態情報を取得する。状態情報取得部23は、搬送車状態情報と共にその搬送車状態情報が得られた時刻についての時刻情報を取得してもよい。
【0032】
搬送車状態情報は、搬送車3の走行速度、搬送車3の加速状態、搬送車3が備える動作機構の動作状態、及び、搬送車3が備えるセンサ(例えば物体検知センサ10など)の検知状態、の少なくとも1つを含む。
【0033】
搬送車3の走行速度は、搬送車3の速度センサ9で測定された値である。搬送車3の加速状態(すなわち、加速している状態、減速している状態、等速状態などを示す加速度)は、搬送車3の速度センサ9で測定された走行速度の変化を演算して決定できる。搬送車3の車両制御部4が搬送車3の加速状態の演算を行って、その演算された加速状態を振動測定装置20の状態情報取得部23が取得してもよい。或いは、振動測定装置20の状態情報取得部23が、取得した搬送車3の走行速度から、振動測定装置20の演算処理機能を利用して加速状態を演算してもよい。例えば、搬送車3が加速している場合及び減速している場合には搬送車3の振動は比較的大きくなり、搬送車3が等速で走行している場合には搬送車3の振動は比較的小さくなると考えられる。
【0034】
搬送車3が備える動作機構の動作状態は、搬送車3の走行機構5、保持機構6及び昇降機構7などの動作機構の動作状態についての情報である。例えば、搬送車3は、走行機構5の一部として、図4及び図5に示した案内輪17を備えており、その動作は車両制御部4によって制御される。そして、状態情報取得部23は、案内輪17が走行方向Yに向かって右側及び左側の何れに位置しているのかを示す情報を搬送車3の車両制御部4から取得できる。尚、動作状態は、案内輪17(すなわち、走行機構5)の状態に限定されない。例えば、昇降機構7の動作状態、保持機構6の動作状態などでもよい。例えば、走行機構5の案内輪17が動作した場合(すなわち、案内輪17の位置が左右で切り替わった場合)には搬送車3の振動は比較的大きくなると考えられる。
【0035】
搬送車3が備える物体検知センサ10の検知状態は、例えば、図6及び図7に示した物体検知センサ10の検知エリア18の形状についての情報や、物体を検知しているか否かの情報などである。搬送車3の物体検知センサ10の検知エリア18をどのような状態にするのかは車両制御部4によって制御される。また、物体検知センサ10が物体を検知しているか否かの情報は車両制御部4に伝達される。そして、状態情報取得部23は、搬送車3の物体検知センサ10の検知状態についての情報を搬送車3の車両制御部4から取得できる。例えば、物体検知センサ10が物体を検知した場合には、搬送車3が減速する等の理由により搬送車3の振動は比較的大きくなると考えられる。
【0036】
以上のように、状態情報取得部23は、搬送車状態情報として、振動測定部21が測定する振動に影響する可能性がある搬送車3の挙動を示す情報を取得できる。従って、ユーザは、そのような搬送車状態情報を参照することで、振動が搬送車3の状態の影響を強く受けているか否かの分析が容易になる。
【0037】
記録部24は、振動測定部21による測定結果(振動情報)と搬送車状態情報と位置情報とを相互に関連付けて記録する。記録部24は、振動測定装置20が備える情報の記憶機能を利用して実現できる。例えば、上述したように振動測定部21による測定結果と搬送車状態情報と位置情報とが何れも時刻情報に関連付けられている場合、記録部24は、同じ時刻又は所定の時刻範囲内の振動測定部21による測定結果と搬送車状態情報と位置情報とを相互に関連付けて記録できる。尚、それらの情報が時刻情報に関連付けられていない場合、記録部24は、同時又は所定時間内に記録した振動測定部21による測定結果と搬送車状態情報と位置情報とを一つのデータセットとして相互に関連付けて記録すればよい。
【0038】
尚、振動情報は、振動測定部21が測定した振動の振幅、周波数、加速度等の振動を表す物理量であってもよいし、それらに対して演算を行った値であってもよい。例えば、振動情報は、振動波形から演算される実効値(RMS:root mean square)などであってもよい。
【0039】
このように、記録部24は、少なくとも搬送車3の位置を示す位置情報と搬送車3で測定された振動を示す振動情報とが関連付けられた搬送車走行データ、或いは、少なくとも搬送車3の位置を示す位置情報と搬送車3で測定された振動を示す振動情報と搬送車3の状態を示す搬送車状態情報とが関連付けられたデータである搬送車走行データを記録できる。搬送車走行データに含まれる位置情報、振動情報及び搬送車状態情報には、時刻情報が関連付けられていてもよい。また、記録部24は、搬送車3が走行途中に通過した位置の情報を、搬送車3が走行した走行経路1のマップのデータである経路マップデータとして記録できる。搬送車3が走行途中に通過した位置の情報には、時刻情報が関連付けられていてもよい。
【0040】
出力部25は、記録部24に記録された情報を出力する。例えば、出力部25は、振動測定装置20が備える情報の通信機能を利用して、振動測定装置20と通信可能な他の装置に対して、記録部24に記録された情報を出力できる。尚、出力部25は、情報を他の装置へ送信する態様で出力するだけでなく、表示装置41への情報の表示出力や、紙への印字出力、可搬型の記憶装置への情報出力などを行ってもよい。
【0041】
以上のように、本実施形態の振動測定装置20を用いれば、搬送車3が走行した走行経路1の各位置で測定した振動とその位置での搬送車3の状態とを示す情報を取得できる。その結果、それらの情報の出力を受けたユーザは、振動が搬送車3の走行経路1のいずれの位置において大きくなるのか、及び、その際に搬送車3がどのような状態であるのかといった情報を適切に把握できる。すなわち、本実施形態に係る振動測定装置20によれば、測定された振動の原因の分析を適切に行うための情報を出力することができる。
【0042】
次に、容器Wへの振動測定装置20の設置例について説明する。図8は、容器W及び振動測定装置20の構成を示す模式的ブロック図である。振動測定装置20は、搬送車3が搬送する容器Wに収容されている。そして、搬送車3がこの容器Wを搬送しながら(すなわち、走行しながら)、振動測定装置20が振動測定を行う。つまり、振動測定装置20の振動測定部21は、搬送車3が容器Wに物品を収容して走行している間にその物品に伝わる振動に近い振動を測定できる。
【0043】
図示するように、容器Wは縦断面が矩形又はそれに近い形状をした箱型になっている。容器Wの側面の一つはドア(図示せず)によって開閉可能になっており、そのドアが開かれた状態で容器Wの内部への物品の収容及び内部からの物品の取り出しが可能になっている。図8に示す容器Wに収容されている物品としての板状部材30は、例えば実際のウェハ又はそれを模した部材などである。このように、図8に示すように、容器Wの内部に振動測定装置20だけを収容した状態、或いは、容器Wに振動測定装置20を収容すると共に容器Wに板状部材30を収容した状態で、搬送車3を走行させてもよい。
【0044】
容器Wは、その内部に、搬送車3が当該容器Wに収容して搬送する物品としての板状部材30などを挿入できるスロット19を複数備える。具体的には、容器Wの内面には、複数の仕切部27が上下方向に並んで設けられている。そして、それらの仕切部27同士の間がスロット19となる。
【0045】
図8に示す振動測定装置20は、そのような既存の容器Wの内部構造を変更することなく、容器Wの内部に設置できるように構成されている。具体的には、振動測定装置20は、2つの装置に、位置情報取得部22、状態情報取得部23、記録部24及び出力部25の機能を分けて搭載している。一方の装置は振動測定部21を備え、他方の装置は情報処理装置Cを備える。情報処理装置Cは、情報の通信機能、情報の記憶機能、情報の演算処理機能などを備える持ち運び可能なコンピュータ装置やタブレット端末などを用いて実現できる。
【0046】
振動測定装置20は、互いに異なるスロット19に挿入される第1支持部材31及び第2支持部材32を備える。そして、振動測定部21は、振動センサ21a、及び、振動センサ21aによる測定結果を送信する送信機21bを備えると共に、第1支持部材31に支持される。例えば、振動センサ21aは、上述したような加速度センサを用いて実現できる。
【0047】
第2支持部材32には、情報処理装置Cが支持される。情報処理装置Cは、位置情報取得部22と、状態情報取得部23と、記録部24と、出力部25とを備える。記録部24は、送信機21bから測定結果を受信する受信機24a、及び、受信機24aにより受信した測定結果を記憶するフラッシュメモリ等の記録装置24bを備えると共に、第2支持部材32に支持される。この場合、送信機21bと受信機24aとの間の通信は、有線でもよいし、或いは、無線でもよい。
【0048】
第1支持部材31に支持される振動測定部21の送信機21bと、第2支持部材32に支持される記録部24の受信機24aとの間は、例えばBluetooth(登録商標)等の各種の通信規格に則った通信を行うように構成されている。そして、振動センサ21aの測定結果が記録装置24bに逐次記録される。
【0049】
図8に示す例では、振動測定装置20が備える振動測定部21、位置情報取得部22、状態情報取得部23、記録部24及び出力部25の機能のうち、振動測定部21の機能を第1支持部材31に搭載し、位置情報取得部22、状態情報取得部23、記録部24及び出力部25の機能を第2支持部材32に搭載し、第1支持部材31と第2支持部材32とを別々のスロット19に挿入している。このような構成を採用することで、容器Wの内部に、振動測定装置20が備える振動測定部21、位置情報取得部22、状態情報取得部23、記録部24及び出力部25を容易に設置できる。
【0050】
第1支持部材31及び第2支持部材32をどのスロット19に挿入するのかは適宜変更可能である。例えば、振動測定部21を支持する第1支持部材31を、最も振動が大きくなると考えられるスロット19に挿入してもよい。
【0051】
以上のように、容器Wが備える複数のスロット19には、搬送対象である物品としての板状部材30を挿入することもできるし、振動測定部21が備える振動センサ21aを支持する第1支持部材31を挿入することもできる。つまり、容器Wの内部で、搬送対象である物品としての板状部材30と同じ環境に振動センサ21aを配置できる。そのため、振動センサ21aを支持する第1支持部材31がスロット19に挿入された状態で容器Wが搬送車3に搬送された場合、振動測定部21は、搬送対象である物品としての板状部材30に作用する振動に近い振動を測定できる。更に、特別な振動測定用の搬送車3を用意しなくても、任意の搬送車3で振動測定を行うことができる振動測定装置20を実現できる。また、本実施形態によれば、振動センサ21aを支持する第1支持部材31と、受信機24a及び記録装置24bを支持する第2支持部材32とが、互いに別部材であって且つ異なるスロット19に挿入されているため、振動センサ21aによる振動の測定に受信機24a及び記録装置24bが与える影響を少なく抑えることができ、振動測定の精度を高め易いという利点がある。
【0052】
〔その他の実施形態〕
次に、振動測定装置20のその他の実施形態について説明する。
【0053】
(1)上記の実施形態では、搬送車3が天井搬送車である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、搬送車3は、AGV(Automatic Guided Vehicle)、STV(ソーティング・トランスファー・ビークル)、スタッカクレーン、自律走行搬送ロボットAMR(Autonomous Mobile Robot)でもよい。
【0054】
(2)上記実施形態では、位置検知センサ8が、走行経路1における位置を示す位置指標Bに基づいて搬送車3の位置を検出する例を説明したが、位置検知センサ8が他の手段によって搬送車3の位置を検出してもよい。例えば、位置検知センサ8は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構築するGNSS衛星からの信号を受信して、搬送車3の位置を検出してもよい。
【0055】
(3)上記実施形態において、搬送車状態情報の内容は適宜変更可能である。例えば、搬送車3が備える各種のセンサの検知状態についての情報を含んでもよい。搬送車3が備える各種のセンサの例としては、容器Wを保持する保持機構6の動作状態を検出するセンサ、保持機構6を昇降させる昇降機構7の動作状態を検出するセンサなどがある。
【0056】
(4)上記実施形態では、容器Wに実際のウェハ又はそれを模した基板などである板状部材30を収容した状態で搬送車3を走行させる例を説明したが、容器Wに収容する板状部材30の数は適宜変更可能である。例えば、容器Wに板状部材30を収容しなくてもよい。或いは、搬送車3が実際にウェハを物品として搬送する場合の容器Wの重量と近くなるように、板状部材30の収容枚数を調節してもよい。
【0057】
(5)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0058】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した振動測定装置の概要について説明する。
【0059】
振動測定装置は、搬送車に搭載される振動測定装置であって、振動を測定する振動測定部と、前記搬送車の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、前記搬送車の状態を示す搬送車状態情報を取得する状態情報取得部と、前記振動測定部による測定結果と前記搬送車状態情報と前記位置情報とを相互に関連付けて記録する記録部と、前記記録部に記録された情報を出力する出力部とを備える。
【0060】
本構成によれば、搬送車が走行した走行経路の各位置で測定した振動とその位置での搬送車の状態とを示す情報を取得できる。その結果、それらの情報の出力を受けたユーザは、振動が搬送車の走行経路のいずれの位置において大きくなるのか、及び、その際に搬送車がどのような状態であるのかといった情報を適切に把握できる。すなわち、本構成に係る振動測定装置によれば、測定された振動の原因の分析を適切に行うための情報を出力することができる。
【0061】
ここで、前記搬送車状態情報は、前記搬送車の走行速度、前記搬送車の加速状態、前記搬送車が備える走行機構の動作状態、及び、前記搬送車が備えるセンサの検知状態、の少なくとも1つを含むと好適である。
【0062】
本構成によれば、振動測定部が測定する振動に影響する可能性がある搬送車の挙動を示す情報を、搬送車状態情報として取得できる。従って、ユーザは、そのような搬送車状態情報を参照することで、振動が搬送車の状態の影響を強く受けているか否かの分析が容易になる。
【0063】
また、前記振動測定部は、前記搬送車が搬送する容器に収容されていると好適である。
【0064】
本構成によれば、振動測定部は、搬送中の容器の内部での振動を測定できる。つまり、振動測定部は、搬送車が容器に物品を収容して走行している間にその物品に伝わる振動に近い振動を測定できる。
【0065】
また、前記容器は、前記搬送車が当該容器に収容して搬送する物品としての板状部材が挿入されるスロットを複数備え、互いに異なる前記スロットに挿入される第1支持部材及び第2支持部材を備え、前記振動測定部は、振動センサ、及び、前記振動センサによる前記測定結果を送信する送信機を備えると共に、前記第1支持部材に支持され、前記記録部は、前記送信機から前記測定結果を受信する受信機、及び、前記受信機により受信した前記測定結果を記憶する記憶装置を備えると共に、前記第2支持部材に支持されていると好適である。
【0066】
本構成によれば、第1支持部材及び第2支持部材をスロットに挿入することで、容器内に振動測定部及び記録部を容易に設置できる。
また本構成によれば、容器が備える複数のスロットには、搬送対象である物品としての板状部材を挿入することもできるし、振動測定部が備える振動センサを支持する第1支持部材を挿入することもできる。つまり、容器の内部で、搬送対象である物品としての板状部材と同じ環境に振動センサを配置できる。そのため、振動センサを支持する第1支持部材がスロットに挿入された状態で容器が搬送車に搬送された場合、振動測定部は、搬送対象である物品としての板状部材に作用する振動に近い振動を測定できる。更に、特別な振動測定用の搬送車を用意しなくても、任意の搬送車で振動測定を行うことができる振動測定装置を実現できる。
また、本構成によれば、振動センサを支持する第1支持部材と、受信機及び記憶装置を支持する第2支持部材とが、互いに別部材であって且つ異なるスロットに挿入されているため、振動センサによる振動の測定に受信機及び記憶装置が与える影響を少なく抑えることができ、振動測定の精度を高め易いという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、測定された振動の原因の分析を適切に行うための情報を出力することができる振動測定装置に利用できる。
【符号の説明】
【0068】
3 :搬送車
5 :走行機構
19 :スロット
20 :振動測定装置
21 :振動測定部
21a :振動センサ
21b :送信機
22 :位置情報取得部
23 :状態情報取得部
24 :記録部
24a :受信機
25 :出力部
30 :板状部材
31 :第1支持部材
32 :第2支持部材
W :容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8