(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175971
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】円筒ワークの外観検査装置及び円筒ワークの外観検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/952 20060101AFI20241212BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G01N21/952
G01N21/84 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094121
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】宮本 信行
(72)【発明者】
【氏名】沖野 振一郎
(72)【発明者】
【氏名】生田 正徳
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB02
2G051BA01
2G051BB01
2G051CA04
2G051CB01
2G051CB05
2G051DA08
(57)【要約】
【課題】検査時間の延長を抑制しながら、正反射光と拡散反射光とによる検査が可能な円筒ワークの外観検査装置及び円筒ワークの外観検査方法を提供する。
【解決手段】回転する円筒ワーク20の外周面に光を照射する照明装置14と、前記照明装置14によって光が照射された前記円筒ワーク20の検査領域30を撮像する撮像装置12と、を備えた円筒ワークの外観検査装置10において、前記照明装置14は、前記検査領域30の一部である第1の検査領域31に、正反射光用の光を照射する第1の照明装置15と、前記検査領域30の一部であって前記第1の検査領域31とは異なる第2の検査領域32に、拡散反射光用の光を照射する第2の照明装置16,17と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する円筒ワークの外周面に光を照射する照明装置と、
前記照明装置によって光が照射された前記円筒ワークの検査領域を撮像する撮像装置と、を備えた円筒ワークの外観検査装置において、
前記照明装置は、
前記検査領域の一部である第1の検査領域に、正反射光用の光を照射する第1の照明装置と、
前記検査領域の一部であって前記第1の検査領域とは異なる第2の検査領域に、拡散反射光用の光を照射する第2の照明装置と、
を備えたことを特徴とする円筒ワークの外観検査装置。
【請求項2】
前記第2の照明装置は、前記円筒ワークの外周面に形成される切削目の方向に対して略直交する方向から光を照射することを特徴とする請求項1に記載の円筒ワークの外観検査装置。
【請求項3】
前記第1の検査領域と前記第2の検査領域とは、前記円筒ワークの周方向に隣接していることを特徴とする請求項1又は2に記載の円筒ワークの外観検査装置。
【請求項4】
前記第2の照明装置は、前記円筒ワークの軸方向において、前記第1の照明装置を間に挟んで両側に配置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の円筒ワークの外観検査装置。
【請求項5】
照明装置によって回転する円筒ワークの外周面に光を照射し、光が照射された前記円筒ワークの検査領域を撮像装置によって撮像する円筒ワークの外観検査方法において、
前記照明装置は、第1の照明装置と第2の照明装置とを備え、
前記第1の照明装置によって、前記検査領域の一部である第1の検査領域に、正反射光用の光を照射するとともに、前記第2の照明装置によって、前記検査領域の一部であって前記第1の検査領域とは異なる第2の検査領域に、拡散反射光用の光を照射することを特徴とする円筒ワークの外観検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒ワークの外観検査装置及び円筒ワークの外観検査方法に関する。
【0002】
円筒形状に形成されたカムシャフト等の円筒ワークは、加工された後に、円筒ワーク表面の傷跡などの有無を検査する外観検査が行われている。従来、外観検査を実施するための装置として、円筒ワークの表面に光を照射し、その反射光を利用して表面欠陥の有無を検知する光学的手法を用いた外観検査装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、照射装置によって水平方向に延びる円筒ワークの上方側の周面全域に光を照射し、円筒ワークの真上に配置された撮像装置によって回転する円筒ワークの検査領域を撮像する外観検査装置が記載されている。この外観検査装置では、照明装置が照射する光を円筒ワークの表面が正反射する正反射光を利用して、撮像装置が撮像した画像から、円筒ワーク表面の傷後の有無を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
正反射光を利用した外観検査では、円筒ワークの表面に存在する打痕傷を検知することができるが、例えば、円筒ワークの切削加工時に円筒ワークの表面に切粉が噛み込んだ噛み込み傷のような面角度の小さい傷に対しては、適切に検知することができない。このような噛み込み傷は、正反射光ではなく、円筒ワークからの拡散反射光を用いることで検知することができるが、正反射光による検査の後に、さらに拡散反射光による検査を行うと、検査時間がかかってしまう。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、検査時間の延長を抑制しながら、正反射光と拡散反射光とによる検査が可能な円筒ワークの外観検査装置及び円筒ワークの外観検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態は、回転する円筒ワークの外周面に光を照射する照明装置と、前記照明装置によって光が照射された前記円筒ワークの検査領域を撮像する撮像装置と、を備えた円筒ワークの外観検査装置において、前記照明装置は、前記検査領域の一部である第1の検査領域に、正反射光用の光を照射する第1の照明装置と、前記検査領域の一部であって前記第1の検査領域とは異なる第2の検査領域に、拡散反射光用の光を照射する第2の照明装置と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明の一実施形態は、照明装置によって回転する円筒ワークの外周面に光を照射し、光が照射された前記円筒ワークの検査領域を撮像装置によって撮像する円筒ワークの外観検査方法において、前記照明装置は、第1の照明装置と第2の照明装置とを備え、前記第1の照明装置によって、前記検査領域の一部である第1の検査領域に、正反射光用の光を照射するとともに、前記第2の照明装置によって、前記検査領域の一部であって前記第1の検査領域とは異なる第2の検査領域に、拡散反射光用の光を照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る円筒ワークの外観検査装置及び円筒ワークの外観検査方法によれば、検査時間の延長を抑制しながら、正反射光と拡散反射光とによる検査ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態である円筒ワークの外観検査装置を示す正面模式図である。
【
図4】第2の照明装置による光の照射方向を説明する説明図である。
【
図5】撮像装置によって撮像された画像の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態である円筒ワークの外観検査装置10を示す正面模式図であり、
図2は外観検査装置10の側面図、
図3は外観検査装置10を上方側から見た平面図である。本実施の形態の外観検査装置10は、円筒ワーク20から反射される反射光を利用して円筒ワーク20の表面の傷等の有無を検査するものである。外観検査装置10は、円筒ワーク20の中心軸21を回転中心として円筒ワーク20を回転自在に支持する回転駆動装置11と、撮像装置12と、画像処理装置13と、照明装置14と、制御装置18と、を備える。なお、
図2及び
図3では、回転駆動装置11、画像処理装置13及び制御装置18の記載を省略している。
【0012】
撮像装置12は、回転駆動装置11にセットされた円筒ワーク20の検査領域30を撮像する。撮像装置12は、例えば、静止画や動画を撮像可能なカメラとすることができる。本実施の形態では、撮像装置12として、モノクロ画像を撮像する1台のカメラを用いている。また、本実施の形態では、軸方向が水平方向に一致するように回転駆動装置11にセットされた円筒ワーク20の上方側の外周面が、1台のカメラによって撮像される検査領域30となっており、撮像装置12は検査領域30の鉛直方向上方に配置される。
【0013】
照明装置14は、回転駆動装置11によって回転する円筒ワーク20の外周面に光を照射する。照明装置14は、正反射光用の光を照射する第1の照明装置15と、拡散反射光用の光を照射する第2の照明装置16,17と、を備える。各照明装置15,16,17は、遮光カバー15b,16b,17bに取り付けられた白色光を出射する光源部15a,16a,17aを有する。
【0014】
図2及び
図3に示すように、第1の照明装置15は、円筒ワーク20の検査領域30の一部である第1の検査領域31に、正反射光用の光を照射する。第2の照明装置16,17は、円筒ワーク20の検査領域30の一部であって第1の検査領域31とは異なる第2の検査領域32に、拡散反射光用の光を照射する。ここで、異なる領域に光を照射するとは、光の照射を狙った領域が異なることをいい、他方の領域に僅かに光が届くことを許容する意味である。なお、円筒ワーク20の回転や撮像装置12による撮像を妨げることのないように、隣接する第1の検査領域31と第2の検査領域32の間に図示していない仕切板を配置して、他方の領域に光が届くことを抑制してもよい。本実施の形態において第1の検査領域31と第2の検査領域32とは、円筒ワーク20の周方向に隣接しており、検査領域30となる円筒ワーク20の上方側の外周面を周方向に二等分した領域が、それぞれ、第1の検査領域31及び第2の検査領域32となっている。
【0015】
なお、
図2の白抜き矢印及び
図3の紙面上下方向に延びる矢印は、第1の照明装置15による光の照射方向を示しており、
図1の白抜き矢印及び
図3の紙面左右方向に延びる矢印は、第2の照明装置16,17による光の照射方向を示している。また、
図1及び
図2の黒色太矢印は、第1の照明装置15による正反射光を示しており、
図1及び
図2の黒色細矢印は、第2の照明装置16,17による拡散反射光を示している。
【0016】
第1の照明装置15は、円筒ワーク20の軸方向において撮像装置12と重なる位置であって、撮像装置12であるカメラのレンズよりも下方側から、円筒ワーク20の第1の検査領域31に光を照射するように配置されている。第2の照明装置16,17は、円筒ワーク20の軸方向において、第1の照明装置15を間に挟んで両側に配置されており、具体的には、
図1に示す正面視で、撮像装置12の光軸に対して対称となる位置に配置されている。なお、外観検査装置10は、第2の照明装置16,17を少なくとも1つ備える構成であればよく、例えば、
図1に示す第2の照明装置16,17のうち、いずれか一方のみを備える構成であってもよい。本実施の形態のように、第2の照明装置16,17を2つ配置することで、拡散反射光用の光を照射する領域を広く確保することができる。
【0017】
図4は、第2の照明装置16による光の照射方向を説明する説明図であり、円筒ワーク20の第2の検査領域32の表層部を拡大した断面であって、円筒ワーク20を軸方向に平行な鉛直面で切断した断面を示している。
図4における左右方向は、円筒ワーク20の軸方向と一致している。本実施の形態において、円筒ワーク20の外周面には、円筒ワーク20表面の切削加工により、周方向に沿って延びる多数の切削目24(
図5において符号24で示す切削による加工筋)が形成されている。図示例のように、第2の照明装置16は、円筒ワーク20の外周面に形成される切削目24の方向に対して略直交する方向(すなわち、円筒ワーク20の軸方向に近似する方向)から光が照射されるように配置される。
【0018】
このように、第2の照明装置16によって切削目24と直交する方向の光を照射することで、切削目24の断面山型の表面において、光が当たる面28aと、光が当たらない面28bとが生じ、撮像画像において、切削目24を示す光の明暗が明瞭に表れることとなる。なお、
図4では、2つの第2の照明装置16,17のうち、一方の照明装置16による光の照射方向を示しているが、これと対称に配置される照明装置17も同様に、切削目24の表面傾斜方向に対して略直交する方向から光を照射するように配置される。すなわち、他方の第2の照明装置17による光の照射領域では、
図2に示す切削目24の断面山型の表面において、光が当たる面が面28bとなり、光が当たらない面が面28aとなる。
【0019】
画像処理装置13は、例えばコンピュータで構成され、撮像装置12によって得られた撮像画像に基づいて、円筒ワーク20の欠陥の有無を検知する。また、画像処理装置13は、欠陥の有無の検知結果に基づいて円筒ワーク20が良品であるか不良品であるかを判定する。円筒ワーク20の欠陥の有無の判定や、良品であるか否かの判定は、例えば、予め設定された判定の基準となる基準データとの比較による判定や、人工知能(AI)を用いた事前の学習データに基づく判定等によって実施することができる。判定結果は、画像処理装置13に備えられたディスプレイ等の表示部に表示することができる。
【0020】
制御装置18は、外観検査装置10の各構成部の機能を実現するためのプログラム等を記憶したメモリと、メモリ内のプログラムを実行するCPU等の演算処理部を備えて構成されている。制御装置18は、回転駆動装置11、撮像装置12、画像処理装置13及び照明装置14の電気信号の入出力を制御し、これらの動作を制御する。
【0021】
次に、上述した外観検査装置10を用いた円筒ワーク20の外観検査方法について説明する。まず、回転駆動装置11に検査対象となる円筒ワーク20をセットする。その後、第1及び第2の照明装置15,16,17によって回転する円筒ワーク20の外周面に光を照射し、光が照射された円筒ワーク20の検査領域30を撮像装置12によって撮像する。この際、第1の照明装置15は第1の検査領域31に正反射光用の光を照射し、第2の照明装置16,17は、第2の検査領域32に拡散反射光用の光を照射する。
【0022】
画像処理装置13は、撮像装置12によって撮像された画像データに基づいて、円筒ワーク20の欠陥の有無を検知し、検知結果から円筒ワーク20が良品であるか不良品であるかを判定する。
【0023】
図5は、撮像装置12によって撮像された円筒ワーク20の検査領域30の画像の写真であり、
図5の下方側が第1の検査領域31、上方側が第2の検査領域32を示している。正反射光を利用した第1の検査領域31の外観検査では、円筒ワーク20の表面に存在する打痕傷等を精度よく検知することができる。第2の検査領域32では、円筒ワーク20の表面に周方向に延びる多数の切削目24が第1の検査領域31よりも明瞭に表れている。拡散反射光を利用した外観検査では、円筒ワーク20の切削加工時に円筒ワーク20の表面に切粉が噛み込んだ切粉跡部のような、面角度の小さい傷を精度よく検知することができる。
【0024】
上述した外観検査装置10では、1台の撮像装置12によって撮像される検査領域30内に、正反射光用の第1の検査領域31と、拡散反射光用の第2の検査領域32とを設けているため、円筒ワーク20を1回転させる間に、正反射光による外観検査と拡散反射光による外観検査とを円筒ワーク20の全周に亘って同時に実施することができる。これにより、本実施の形態の外観検査装置10は、正反射光と拡散反射光とによる外観検査を個別に行うものに比べて、検査時間を約半分の時間にすることができるので、検査時間の延長を抑制しつつ正反射光と拡散反射光とによる高精度の外観検査が可能である。
【0025】
また、本実施の形態の外観検査装置10では、第2の照明装置16,17が、円筒ワーク20の表面の切削目24と直交する光から照射するように設定されているため、撮像画像において、切削目24を明瞭に映すことができる。外観検査の前に実施される円筒ワーク20の切削加工において、切削時に発生した切粉が円筒ワーク20の表面に噛み込むと、円筒ワーク20の表面に切粉跡部が残る。円筒ワーク20において切削目24がある表面に切粉跡部があると、切粉跡部では表面が平滑になって第2の検査領域32の撮像画像において暗く映ることとなる。このように、第2の検査領域32にて、切粉跡部と切削目24との差が明瞭に映し出されるので、拡散反射光による検査精度が向上する。
【0026】
また、上述した外観検査装置10では、撮像装置12としてモノクロカメラを用いているため、カラーカメラを使用するものよりもコストを低減することができ、カラー画像を使用するものに比べて画像処理を簡易化することができる。
【0027】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0028】
10 円筒ワークの外観検査装置
12 撮像装置
14 照明装置
15 第1の照明装置
16,17 第2の照明装置
20 円筒ワーク
24 切削目
30 検査領域
31 第1の検査領域
32 第2の検査領域