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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017598
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】新設海底パイプライン挿入装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/12 20060101AFI20240201BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20240201BHJP
   F16L 1/028 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F16L1/12 E
F16L1/00 Q
F16L1/028 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120343
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】細田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】菅野 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】岸本 宏司
(72)【発明者】
【氏名】加賀美 暢一
(57)【要約】
【課題】パイプラインの塗覆装を傷つけることなく把持可能であり、更に挿入作業性を向上した新設海底パイプライン挿入装置を提供する。
【解決手段】新設海底パイプラインNPを、新設海底パイプラインNPの外径より内径が大きい既設海底パイプラインOPの内部に挿入する、新設海底パイプライン挿入装置100であって、新設海底パイプラインNPの内部に配置され、且つ、新設海底パイプラインNPの内側から外側に向けて新設海底パイプラインNPを押すことで、新設海底パイプラインNPを把持する把持手段10と、既設海底パイプラインOPの内部に向けて把持手段10を移動させることで、把持手段10により把持された新設海底パイプラインNPを、既設海底パイプラインOPの内部に挿入する挿入手段20と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新設海底パイプラインを、前記新設海底パイプラインの外径より内径が大きい既設海底パイプラインの内部に挿入する、新設海底パイプライン挿入装置であって、
前記新設海底パイプラインの内部に配置され、且つ、前記新設海底パイプラインの内側から外側に向けて前記新設海底パイプラインを押すことで、前記新設海底パイプラインを把持する把持手段と、
前記既設海底パイプラインの内部に向けて前記把持手段を移動させることで、前記把持手段により把持された前記新設海底パイプラインを、前記既設海底パイプラインの内部に挿入する挿入手段と、
を備えることを特徴とする新設海底パイプライン挿入装置。
【請求項2】
前記把持手段は、前記新設海底パイプラインの径方向外側に拡径する拡径部、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の新設海底パイプライン挿入装置。
【請求項3】
前記拡径部は、
前記挿入手段によって前記把持手段が移動させられる方向を前方とし、
前記新設海底パイプラインの内部に配置され、且つ、前記前方に向かうに連れて内径が縮径する、第1テーパー外周部と、
前記第1テーパー外周部の内部に配置され、且つ、前記前方に向かうに連れて外径が縮径する、第1テーパー芯部と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の新設海底パイプライン挿入装置。
【請求項4】
前記拡径部は、
前記新設海底パイプラインの内部に配置され、且つ、前記前方に向かうに連れて内径が縮径する、第2テーパー外周部と、
前記第2テーパー外周部の内部に配置され、前記前方に向かうに連れて外径が縮径する、第2テーパー芯部と、
を更に備え、
前記第1テーパー外周部と前記第2テーパー外周部とは、前記前方から、前記第1テーパー外周部、前記第2テーパー外周部、の順に接続され、
前記第1テーパー芯部と前記第2テーパー芯部とは、前記前方から、前記第1テーパー芯部、前記第2テーパー芯部、の順に接続される、
ことを特徴とする請求項3に記載の新設海底パイプライン挿入装置。
【請求項5】
前記拡径部は、前記新設海底パイプラインの内周面に当接する複数の当接面が設けられており、
前記複数の当接面は、前記新設海底パイプラインの周方向に等間隔で設けられている、
ことを特徴とする請求項4に記載の新設海底パイプライン挿入装置。
【請求項6】
把持用駆動源と、
前記把持用駆動源とは別体の挿入用駆動源と、
を備え、
前記把持手段は、前記把持用駆動源から伝達される駆動力により、前記新設海底パイプラインを把持し、
前記挿入手段は、前記挿入用駆動源から伝達される駆動力により、前記新設海底パイプラインを前記既設海底パイプラインの内部に挿入する、
ことを特徴とする請求項5に記載の新設海底パイプライン挿入装置。
【請求項7】
筒部と、底部と、を有し、断面が略U字状である有底筒、
を備え、
前記有底筒は、前記把持手段に当接し、
前記把持用駆動源は、前記有底筒の内部に配置され、
前記挿入手段は、前記底部を押すことにより、前記既設海底パイプラインの内部に向けて前記把持手段を移動させる、
ことを特徴とする請求項6に記載の新設海底パイプライン挿入装置。
【請求項8】
前記把持用駆動源、前記有底筒、及び、前記挿入用駆動源は、前記新設海底パイプラインの長手方向に沿って、前方から、前記把持用駆動源、前記有底筒、前記挿入用駆動源の順で並べられる、
ことを特徴とする請求項7に記載の新設海底パイプライン挿入装置。
【請求項9】
前記新設海底パイプラインは、前記前方の側の端部と、前記前方とは反対側の端部と、を有し、
前記反対側の端部には、開先が設けられ、
前記把持用駆動源、前記有底筒、及び、前記挿入用駆動源は、前記開先と離間させて配置されている、
ことを特徴とする請求項8に記載の新設海底パイプライン挿入装置。
【請求項10】
前記新設海底パイプラインの外周面に設けられるスペーサ、
を更に備え、
前記スペーサは、前記既設海底パイプラインの内部に挿入される前記新設海底パイプラインを、前記既設海底パイプラインと離間させる、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の新設海底パイプライン挿入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新設海底パイプライン挿入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化したパイプラインを更新する手段として、以下の方法が開示されている。例えば、特許文献1では、内部が液体で満たされた老朽管に、新しい内パイプの外周をクランプによって把持しながら挿入する方法が開示されている。特許文献2では、内部に加圧水を封入してプラグにより閉塞された新設管を、新設管の外側に配置された連結部材によって台車に固定し、台車を移動させることで老朽管に挿入する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-42873号公報
【特許文献2】特開平10-73183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
老朽化したパイプラインに挿入される新しいパイプラインに、塗覆装が施されている場合がある。このとき、新しいパイプラインを外側から把持すると、塗覆装を傷つける可能性がある。新しいパイプラインの内部に加圧水を封入してプラグにより閉塞する方法でパイプラインを把持すると、パイプラインの内部に加圧水を封入する工程が必要となり、作業性が低下する課題がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、パイプラインの塗覆装を傷つけることなく把持可能であり、更に挿入作業性を向上した新設海底パイプライン挿入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の態様1に係る新設海底パイプライン挿入装置は、新設海底パイプラインを、前記新設海底パイプラインの外径より内径が大きい既設海底パイプラインの内部に挿入する、新設海底パイプライン挿入装置であって、前記新設海底パイプラインの内部に配置され、且つ、前記新設海底パイプラインの内側から外側に向けて前記新設海底パイプラインを押すことで、前記新設海底パイプラインを把持する把持手段と、前記既設海底パイプラインの内部に向けて前記把持手段を移動させることで、前記把持手段により把持された前記新設海底パイプラインを、前記既設海底パイプラインの内部に挿入する挿入手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、把持手段は、新設海底パイプラインの内部に配置される。つまり、把持手段は、新設海底パイプラインを内側から把持する。このように、新設海底パイプラインを外側から把持しないようにすることで、新設海底パイプラインの外側に設けられた塗覆装を傷つけることを防ぐことができる。
また、把持手段は、新設海底パイプラインを内側から外側に向けて押すことで、新設海底パイプラインを把持する。これにより、新設海底パイプラインの内部を液体で満たし、プラグで閉塞することで把持する方式と比較して、パイプラインの内部に加圧水を封入する工程を不要とすることができる。よって、挿入時作業性を向上させることができる。
【0008】
<2>本発明の態様2に係る新設海底パイプライン挿入装置は、態様1に係る新設海底パイプライン挿入装置において、前記把持手段は、前記新設海底パイプラインの径方向外側に拡径する拡径部、を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、把持手段は、新設海底パイプラインの径方向外側に拡径する拡径部を備える。したがって、拡径部を拡径させ、新設海底パイプラインの内周面に当接させることで、新設海底パイプラインの内側から外側に向けて新設海底パイプラインを押すことができる。これにより、新設海底パイプラインを内側から確実に把持することができる。
【0010】
<3>本発明の態様3に係る新設海底パイプライン挿入装置は、態様2に係る新設海底パイプライン挿入装置において、前記拡径部は、前記挿入手段によって前記把持手段が移動させられる方向を前方とし、前記新設海底パイプラインの内部に配置され、且つ、前記前方に向かうに連れて内径が縮径する、第1テーパー外周部と、前記第1テーパー外周部の内部に配置され、且つ、前記前方に向かうに連れて外径が縮径する、第1テーパー芯部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、前方に向かうに連れて内径が縮径する第1テーパー外周部と、第1テーパー外周部の内部に配置され、且つ、前方に向かうに連れて外径が縮径する、第1テーパー芯部と、を備える。このような構造を備える拡径部において、第1テーパー外周部を前方に移動させずに第1テーパー芯部を前方に移動させると、第1テーパー芯部によって、第1テーパー外周部が外側に押し広げられる。すると、第1テーパー外周部が、新設海底パイプラインの内周面に当接する。これにより、把持手段によって新設海底パイプラインを把持することができる。
【0012】
<4>本発明の態様4に係る新設海底パイプライン挿入装置は、態様3に係る新設海底パイプライン挿入装置において、前記拡径部は、前記新設海底パイプラインの内部に配置され、且つ、前記前方に向かうに連れて内径が縮径する、第2テーパー外周部と、前記第2テーパー外周部の内部に配置され、前記前方に向かうに連れて外径が縮径する、第2テーパー芯部と、を更に備え、前記第1テーパー外周部と前記第2テーパー外周部とは、前記前方から、前記第1テーパー外周部、前記第2テーパー外周部、の順に接続され、前記第1テーパー芯部と前記第2テーパー芯部とは、前記前方から、前記第1テーパー芯部、前記第2テーパー芯部、の順に接続されることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、第1テーパー外周部と第2テーパー外周部とは、前方から、第1テーパー外周部、第2テーパー外周部、の順に接続され、第1テーパー芯部と第2テーパー芯部とは、前方から、第1テーパー芯部、第2テーパー芯部、の順に接続される。つまり、新設海底パイプラインの内周面に当接する外周部と、外周部を外側に押し広げる芯部と、を二列備える。これにより、拡径部において新設海底パイプラインの内周面に当接する面をより大きくすることができる。したがって、拡径部によって新設海底パイプラインを把持する力(把持力)を大きくすることができる。よって、例えば、新設海底パイプラインの許容内圧が小さい場合であっても、十分な把持力を得ることができる。また、把持力を大きくすることで、新設海底パイプラインと把持手段との当接部を滑らせることなく新設海底パイプラインを押す力、すなわち新設海底パイプラインの最大推進力を向上することができる。
【0014】
<5>本発明の態様5に係る新設海底パイプライン挿入装置は、態様2から態様4のいずれか1つに係る新設海底パイプライン挿入装置において、前記拡径部は、前記新設海底パイプラインの内周面に当接する複数の当接面が設けられており、前記複数の当接面は、前記新設海底パイプラインの周方向に等間隔で設けられていることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、複数の当接面は、新設海底パイプラインの周方向に等間隔で設けられている。これにより、新設海底パイプラインの内周面に、均等に把持力を付加することができる。よって、新設海底パイプラインの許容内圧が小さい場合であっても、十分な把持力を得ることができる。また、把持力を大きくすることで、新設海底パイプラインの最大推進力を向上することができる。
【0016】
<6>本発明の態様6に係る新設海底パイプライン挿入装置は、態様1から態様5のいずれか1つに係る新設海底パイプライン挿入装置において、把持用駆動源と、前記把持用駆動源とは別体の挿入用駆動源と、を備え、前記把持手段は、前記把持用駆動源から伝達される駆動力により、前記新設海底パイプラインを把持し、前記挿入手段は、前記挿入用駆動源から伝達される駆動力により、前記新設海底パイプラインを前記既設海底パイプラインの内部に挿入することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、把持手段は、把持用駆動源から伝達される駆動力により、新設海底パイプラインを把持する。挿入手段は、挿入用駆動源から伝達される駆動力により、新設海底パイプラインを既設海底パイプラインの内部に挿入する。このように、新設海底パイプラインを把持する力(把持力)と、新設海底パイプラインを既設海底パイプラインの内部に挿入する力(推進力)と、をそれぞれ別の駆動源によって得ることによって、把持力が推進力の影響を受けて大きくなることを防ぐことができる。よって、許容内圧が小さな新設海底パイプラインであっても、十分な推進力を得ることができる。
【0018】
<7>本発明の態様7に係る新設海底パイプライン挿入装置は、態様6に係る新設海底パイプライン挿入装置において、筒部と、底部と、を有し、断面が略U字状である有底筒、を備え、前記有底筒は、前記把持手段に当接し、前記把持用駆動源は、前記有底筒の内部に配置され、前記挿入手段は、前記底部を押すことにより、前記既設海底パイプラインの内部に向けて前記把持手段を移動させることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、有底筒は、把持手段に当接し、把持用駆動源は、有底筒の内部に配置される。これにより、挿入手段の推進力を、把持用駆動源が直接受けることを防ぐことができる。また、挿入手段は、底部を押すことにより、既設海底パイプラインの内部に向けて把持手段を移動させる。したがって、有底筒によって、挿入手段の推進力を、把持用駆動源を介さずに直接把持手段に伝えることができる。よって、把持力が推進力の影響を受けて大きくなることを確実に防ぐことができる。
【0020】
<8>本発明の態様8に係る新設海底パイプライン挿入装置は、態様6又は態様7に係る新設海底パイプライン挿入装置において、前記把持用駆動源、前記有底筒、及び、前記挿入用駆動源は、前記新設海底パイプラインの長手方向に沿って、前方から、前記把持用駆動源、前記有底筒、前記挿入用駆動源の順で並べられることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、新設海底パイプライン挿入装置の各構成は、新設海底パイプラインの長手方向に沿って、前方から、把持用駆動源、有底筒、挿入用駆動源の順で並べられる。上記構成のうち、新設海底パイプラインに最も近い位置に把持用駆動源が位置することで、駆動力のロスを少なくし、新設海底パイプラインを効率的に把持することができる。その次に、有底筒、挿入用駆動源の順で並べられることで、有底筒を介して把持用駆動源の反対側に挿入用駆動源を配置することができる。有底筒を介さず、把持用駆動源に挿入用駆動源が直接接するように配置した場合、挿入用駆動源による推進力を把持用駆動源が直接受けることとなる。よって、把持力が推進力の影響を受け、把持力が増加する原因となる。把持用駆動源と挿入用駆動源との間に有底筒が配置されることで、上述の問題が発生することを防ぐことができる。よって、新設海底パイプラインに推進力を効率的に伝えることができる。
【0022】
<9>本発明の態様9に係る新設海底パイプライン挿入装置は、態様1から態様8のいずれか1つに係る新設海底パイプライン挿入装置において、前記新設海底パイプラインは、前記前方の側の端部と、前記前方とは反対側の端部と、を有し、前記反対側の端部には、開先が設けられ、前記把持用駆動源、前記有底筒、及び、前記挿入用駆動源は、前記開先と離間させて配置されていることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、新設海底パイプラインの反対側の端部には開先が設けられる。これにより、新設海底パイプラインを複数連続して配置する際に、新設海底パイプラインの端部同士の溶接をしやすくすることができる。また、把持用駆動源、有底筒、及び、挿入用駆動源は、開先と離間させて配置されている。これにより、前記各構成によって開先が傷つけられることを防ぐことができる。よって、新設海底パイプライン同士の溶接部の品質を担保することができる。
【0024】
<10>本発明の態様10に係る新設海底パイプライン挿入装置は、態様1から態様9のいずれか1つに係る新設海底パイプライン挿入装置において、前記新設海底パイプラインの外周面に設けられるスペーサ、を更に備え、前記スペーサは、前記既設海底パイプラインの内部に挿入される前記新設海底パイプラインを、前記既設海底パイプラインと離間させることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、スペーサは、既設海底パイプラインの内部に挿入される新設海底パイプラインを、既設海底パイプラインと離間させる。これにより、既設海底パイプラインと新設海底パイプラインとが干渉することを確実に防ぐことができる。よって、既設海底パイプラインに対して新設海底パイプラインを効率的に挿入することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、パイプラインの塗覆装を傷つけることなく把持可能であり、更に挿入作業性を向上した新設海底パイプライン挿入装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る新設海底パイプライン挿入装置が、新設海底パイプラインの内部に配置された状態を示す模式図である。
図2】新設海底パイプラインの反対側の端部に開先が設けられた例である。
図3】新設海底パイプラインの前方の側の端部及び反対側の端部にそれぞれ開先が設けられた例である。
図4】新設海底パイプライン挿入装置の模式図である。
図5図4に示すV-V方向の断面図である。
図6図4の示すVI方向から見た、外周部と筒部との係合部である。
図7】第2新設海底パイプライン挿入装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る新設海底パイプライン挿入装置100を説明する。新設海底パイプライン挿入装置100は、例えば、老朽化した既設配管を更新する際に用いられる。具体的には、既設海底パイプラインOPの更新は、既設海底パイプラインOPより小径の新設海底パイプラインNPを、既設海底パイプラインOPの内部に設置することにより行われる。
既設海底パイプラインOPは、石油備蓄基地や、海上の油・ガス受け入れ施設に使用される海底配管である。既設海底パイプラインOPは、例えば、石油を、シーバースに停泊される石油タンカーから、陸上の精製工場やタンクへ輸送するための配管である。既設海底パイプラインOPは、例えば、海底に埋没配置されている。
【0029】
図1に示す新設海底パイプライン挿入装置100は、新設海底パイプラインNPを、新設海底パイプラインNPの外径より内径が大きい既設海底パイプラインOPの内部に挿入する装置である。新設海底パイプライン挿入装置100は、例えば、長期間の使用により劣化した既設海底パイプラインOPを、新設海底パイプラインNPによって更新するために用いられる。
【0030】
以下、本実施形態において、新設海底パイプラインNPの方向を示す際は、後述する挿入手段20によって把持手段10が移動させられる方向を前方と呼称する。言い換えれば、前方とは、新設海底パイプラインNPを既設海底パイプラインOPに挿入する際の、新設海底パイプラインNPの進行方向である。また、前方とは反対の側を、反対側と呼称する。また、新設海底パイプラインNPの周方向を、単に周方向と呼称する。
【0031】
本実施形態において、新設海底パイプラインNPは、前方の側の端部(前端E1)と、前方とは反対側の端部(後端E2)と、を有する。ここで、新設海底パイプラインNPは、長手方向に沿って複数並べられるように配置される。また、長手方向に隣り合う新設海底パイプラインNPの両端部は溶接される。このため、図2に示すように、新設海底パイプラインNPの後端E2には、開先Gが設けられることが好ましい。図2に示す開先Gは、例えば、レ型開先である。開先Gは、図3に示すように、新設海底パイプラインNPの前端E1に設けられてもよい。図3に示す開先Gは、例えば、V型開先である。
【0032】
新設海底パイプライン挿入装置100は、図1に示すように、把持手段10と、挿入手段20と、スペーサ30と、を備える。
把持手段10は、新設海底パイプラインNPの内部に配置される。且つ、把持手段10は、新設海底パイプラインNPの内側から外側に向けて新設海底パイプラインNPを押す。これにより、把持手段10は、新設海底パイプラインNPを把持する。
【0033】
把持手段10は、拡径部11と、把持用駆動源12と、を備える。
拡径部11は、新設海底パイプラインNPの内周面に当接する部位である。すなわち、拡径部11は、新設海底パイプラインNPの内側から外側に向けて新設海底パイプラインNPを押す部位である。拡径部11は、新設海底パイプラインNPの内部に、後端E2から挿入するように配置される。この状態で、拡径部11は、新設海底パイプラインNPの径方向外側に拡径する。これにより、拡径部11は新設海底パイプラインNPを把持する。
【0034】
拡径部11は、図4に示すように、外周部11aと、芯部11bと、当接面11cと、を備える。
外周部11aは、第1テーパー外周部11a1と、第2テーパー外周部11a2と、を備える。第1テーパー外周部11a1と第2テーパー外周部11a2とは、前方から、第1テーパー外周部11a1、第2テーパー外周部11a2、の順に接続される。以下、これらを区別しない場合に、外周部11aと呼称する。外周部11aは、図5に示すように、周方向に複数設けられる。本実施形態において、外周部11aは、周方向において等間隔に4つ設けられる。第1テーパー外周部11a1及び第2テーパー外周部11a2は、それぞれ周方向において等間隔に4つ設けられる。
第1テーパー外周部11a1及び第2テーパー外周部11a2は、新設海底パイプラインNPの内部に配置される。且つ、第1テーパー外周部11a1及び第2テーパー外周部11a2は、前方に向かうに連れて内径が縮径する。
【0035】
芯部11bは、第1テーパー芯部11b1と、第2テーパー芯部11b2と、を備える。第1テーパー芯部11b1と第2テーパー芯部11b2とは、前方から、第1テーパー芯部11b1、第2テーパー芯部11b2、の順に接続される。以下、これらを区別しない場合に、芯部11bと呼称する。
第1テーパー芯部11b1は、周方向に複数設けられた第1テーパー外周部11a1の内部に配置される。図5に示すように、第1テーパー芯部11b1は、外側に突出する第1突出部11b1pを備える。第1突出部11b1pは、周方向に間隔をあけて複数設けられる。第2テーパー芯部11b2は、周方向に複数設けられた第2テーパー外周部11a2の内部に配置される。第1テーパー芯部11b1と同様に、第2テーパー芯部11b2は、外側に突出する第2突出部11b2pを備える。第2突出部11b2pは、周方向に間隔をあけて複数設けられる。図4に示すように、第1テーパー芯部11b1の第1突出部11b1p及び第2テーパー芯部11b2の第2突出部11b2pは、前方に向かうに連れて外径が縮径する。
【0036】
外周部11aと芯部11bとがそれぞれ上述した構造を備えることで、外周部11aの位置を変えずに芯部11bを前方に移動させると、芯部11bによって、外周部11aが外側に押し広げられる。すると、外周部11aが、新設海底パイプラインNPの内周面に当接する。これにより、把持手段10の拡径部11は、新設海底パイプラインNPを把持する。
【0037】
ここで、上述した第1テーパー外周部11a1及び第2テーパー外周部11a2の内径と、第1テーパー芯部11b1及び第2テーパー芯部11b2の外径との縮径は、次のような関係であることが好ましい。すなわち、上述したそれぞれの縮径は、同一の傾斜によってなされることが好ましい。ここで、また、拡径部11による新設海底パイプラインNPの把持の効率を確保するため、上述したそれぞれにおける縮径部の軸方向の長さと、縮径しろとの比は、5:1~8:1の範囲にあることが好ましく、7:1であることが特に好ましい。
【0038】
当接面11cは、新設海底パイプラインNPの内周面に当接する。当接面11cは、外周部11aの外周面に設けられる。つまり、外周部11aが新設海底パイプラインNPの内周面に当接するとは、当接面11cが新設海底パイプラインNPの内周面に当接することを意味する。上述したように、外周部11aは、周方向において等間隔に複数設けられる。すなわち、当接面11cは複数設けられ、複数の当接面11cは、新設海底パイプラインNPの周方向に等間隔で設けられている。
当接面11cは、把持手段10が新設海底パイプラインNPを把持する力(把持力)を十分に発揮するために、新設海底パイプラインNPの内周面に対して十分な摩擦力を有することが好ましい。このため、当接面11cには、例えば、硬質ゴム等が好適に用いられる。また、当接面11cの表面は、鋼管内面の曲率に合わせた形状であることが好ましい。
【0039】
把持用駆動源12は、把持手段10の駆動源である。把持用駆動源12には、例えば、推力100tonのジャッキが好適に用いられる。把持用駆動源12の推力は、後述する挿入用駆動源22よりも小さいことが好ましい。拡径部11は、把持用駆動源12から伝達される駆動力によって拡径される。
【0040】
挿入手段20は、既設海底パイプラインOPの内部に向けて把持手段10を移動させる。これにより、挿入手段20は、把持手段10により把持された新設海底パイプラインNPを、既設海底パイプラインOPの内部に挿入する。
挿入手段20は、有底筒21と、挿入用駆動源22と、を有する。図4に示すように、把持用駆動源12、有底筒21、及び、上述した挿入用駆動源22は、新設海底パイプラインNPの長手方向に沿って、前方から、把持用駆動源12、有底筒21、挿入用駆動源22の順で並べられる。ここで、上述の順番は、各構成の反対側の端部を基準とした順番である。例えば、把持用駆動源12は有底筒21の内部に配置されているが、有底筒21の反対側の端部は把持用駆動源12よりも反対側に位置している。このため、把持用駆動源12の隣に有底筒21が配置されているものとして説明する。また、図1に示すように、把持用駆動源12、有底筒21、及び、挿入用駆動源22は、開先Gと離間させて配置されることが好ましい。
【0041】
有底筒21は、軸方向が前方から反対側に向けて延びる筒状の部位である筒部21aと、筒部21aの反対側の端部を閉塞する底部21bと、を有する。筒部21aと底部21bとは、例えば、一体に成形されることが好ましい。筒部21aと底部21bとは、それぞれ個別に形成され、後から溶接等によって接合されてもよい。図4に示すように、有底筒21は、断面が略U字状である。略U字状とは、一対に配置された形状の一端が別の形状により連結され、他端が連結されていない形状をいうものとする。連結されていない他端を、開口と呼称する。本実施形態では、有底筒21は、図4に示すように、開口が前方に向いて配置される。
【0042】
図6に示すように、筒部21aの、底部21bが位置しない側の端部と、外周部11aの、筒部21aに当接する部位とは、それぞれ係合部11aT、21aTを備え、これらが係合している。係合部11aT、21aTは、外周部11aと有底筒21とを、前方及び反対側に相対移動不可としつつ、外周部11aが拡径及び縮径する方向には相対移動可能となるように係合する。
【0043】
このような構造とすることで、例えば、挿入手段20が把持手段10を押す力は、有底筒21を介して外周部11aに直接付加される。これにより、挿入手段20が把持手段10を押す力が、拡径部11を拡径させる方向に作用しないようにする。このことで、新設海底パイプラインNPを把持する力が、新設海底パイプラインNPを既設海底パイプラインOPの内部に挿入する力(推進力)の影響を受けないようにする。また、把持用駆動源12が芯部11bを前方に移動させた際に、外周部11aが芯部11bに伴って前方に移動することを防ぐ。これにより、把持用駆動源12によって確実に外周部11aを拡径させるようにする。
【0044】
ここで、新設海底パイプラインNPの挿入作業時に、外周部11aと芯部11bとが新設海底パイプラインNPの進行方向に相対変位すると、把持力が減少する原因となる。この相対変位を抑えるために、有底筒21の底と、把持用駆動源12との間には、油圧作動油が充填されていることが好ましい。
【0045】
挿入用駆動源22は、挿入手段20の駆動源である。挿入用駆動源22は、把持用駆動源12とは別体に設けられた駆動源である。挿入用駆動源22には、例えば、推力400tonのジャッキが好適に用いられる。把持用駆動源12は、有底筒21の内部に配置される。有底筒21は、挿入用駆動源22から伝達される駆動力によって前方に移動する。言い換えれば、挿入手段20は、挿入用駆動源22によって底部21bを押すことにより、既設海底パイプラインOPの内部に向けて把持手段10を移動させる。これにより、新設海底パイプラインNPを既設海底パイプラインOPの内部に挿入する。
【0046】
スペーサ30は、新設海底パイプラインNPの外周面に設けられる。スペーサ30は、既設海底パイプラインOPの内部に挿入される新設海底パイプラインNPを、既設海底パイプラインOPと離間させる。言い換えれば、スペーサ30は、新設海底パイプラインNPと既設海底パイプラインOPとの間に隙間を形成する。スペーサ30は、例えば、新設海底パイプラインNPの周方向に間隔をあけて複数設けられる。スペーサ30は、新設海底パイプラインNPが既設海底パイプラインOPの内周面に干渉することを防ぎ、新設海底パイプラインNPの円滑な挿入を担保する役割を有する。スペーサ30には、例えば、ポリプロピレンなどが好適に用いられる。
【0047】
(パイプラインの更新について)
次に、上述した新設海底パイプライン挿入装置100によるパイプラインの更新について説明する。まず、図1に示すように、新設海底パイプラインNPの前端E1の付近にスペーサ30を配置する。このとき、スペーサ30は、新設海底パイプラインの長手方向に沿って間隔を空けて複数配置してもよい。
スペーサ30が配置された新設海底パイプラインNPの後端E2から、把持手段10の拡径部11を挿入する。次に、把持用駆動源12によって芯部11bを前進させ、外周部11aを新設海底パイプラインNPの内周面に当接させる。これにより、把持手段10によって新設海底パイプラインNPを把持する。次に、図1に示すように、新設海底パイプラインNPが把持手段10によって把持された状態で、新設海底パイプラインNPの前端を既設海底パイプラインOPの反対側の端部に配置する。このとき、新設海底パイプラインNPの長手方向の中間部を、支持ローラRによって支持してもよい。
【0048】
次に、挿入手段20によって把持手段10を前方に押すことで、新設海底パイプラインNPを既設海底パイプラインOPの内部に挿入する。上述したように、新設海底パイプラインNPは長手方向に沿って複数設けられる。このため、1つの新設海底パイプラインNPを十分に挿入した後は、まず、把持手段10を新設海底パイプラインNPから取り外す。このとき、前記1つの新設海底パイプラインNPの前端E1は既設海底パイプラインOPの内部に配置され、かつ、前記1つの新設海底パイプラインNPの後端E2は、既設海底パイプラインOPの外に突出している。次に、前記1つの新設海底パイプラインNPの後端E2に、次の新設海底パイプラインNPの前端を溶接する。そして、新たに溶接された新設海底パイプラインNPの後端E2を把持手段10によって把持して、挿入手段20によって挿入する。これを繰り返すことによって、新設海底パイプラインNPによって既設海底パイプラインOPを更新する。新設海底パイプラインNPの数が多くなり、新設海底パイプラインNPの全長が長くなるほど、新設海底パイプライン挿入装置100による推進力が必要となる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る新設海底パイプライン挿入装置100によれば、把持手段10は、新設海底パイプラインNPの内部に配置される。つまり、把持手段10は、新設海底パイプラインNPを内側から把持する。このように、新設海底パイプラインNPを外側から把持しないようにすることで、新設海底パイプラインNPの外側に設けられた塗覆装を傷つけることを防ぐことができる。
また、把持手段10は、新設海底パイプラインNPを内側から外側に向けて押すことで、新設海底パイプラインNPを把持する。これにより、新設海底パイプラインNPの内部を液体で満たし、プラグで閉塞することで把持する方式と比較して、パイプラインの内部に加圧水を封入する工程を不要とすることができる。よって、挿入時作業性を向上させることができる。
【0050】
また、把持手段10は、新設海底パイプラインNPの径方向外側に拡径する拡径部11を備える。したがって、拡径部11を拡径させ、新設海底パイプラインNPの内周面に当接させることで、新設海底パイプラインNPの内側から外側に向けて新設海底パイプラインNPを押すことができる。これにより、新設海底パイプラインNPを内側から確実に把持することができる。
【0051】
また、前方に向かうに連れて内径が縮径する第1テーパー外周部11a1と、第1テーパー外周部11a1の内部に配置され、且つ、前方に向かうに連れて外径が縮径する、第1テーパー芯部11b1と、を備える。このような構造を備える拡径部11において、第1テーパー外周部11a1を前方に移動させずに第1テーパー芯部11b1を前方に移動させると、第1テーパー芯部11b1によって、第1テーパー外周部11a1が外側に押し広げられる。すると、第1テーパー外周部11a1が、新設海底パイプラインNPの内周面に当接する。これにより、把持手段10によって新設海底パイプラインNPを把持することができる。
【0052】
また、第1テーパー外周部11a1と第2テーパー外周部11a2とは、前方から、第1テーパー外周部11a1、第2テーパー外周部11a2、の順に接続され、第1テーパー芯部11b1と第2テーパー芯部11b2とは、前方から、第1テーパー芯部11b1、第2テーパー芯部11b2、の順に接続される。つまり、新設海底パイプラインNPの内周面に当接する外周部11aと、外周部11aを外側に押し広げる芯部11bと、を二列備える。これにより、拡径部11において新設海底パイプラインNPの内周面に当接する面をより大きくすることができる。したがって、拡径部11によって新設海底パイプラインNPを把持する力(把持力)を大きくすることができる。よって、例えば、新設海底パイプラインNPの許容内圧が小さい場合であっても、十分な把持力を得ることができる。また、把持力を大きくすることで、新設海底パイプラインNPと把持手段10との当接部を滑らせることなく新設海底パイプラインNPを押す力、すなわち新設海底パイプラインNPの最大推進力を向上することができる。
【0053】
また、複数の当接面11cは、新設海底パイプラインNPの周方向に等間隔で設けられている。これにより、新設海底パイプラインNPの内周面に、均等に把持力を付加することができる。よって、新設海底パイプラインNPの許容内圧が小さい場合であっても、十分な把持力を得ることができる。また、把持力を大きくすることで、新設海底パイプラインNPの最大推進力を向上することができる。
【0054】
また、把持手段10は、把持用駆動源12から伝達される駆動力により、新設海底パイプラインNPを把持する。挿入手段20は、挿入用駆動源22から伝達される駆動力により、新設海底パイプラインNPを既設海底パイプラインOPの内部に挿入する。このように、新設海底パイプラインNPを把持する力(把持力)と、新設海底パイプラインNPを既設海底パイプラインOPの内部に挿入する力(推進力)と、をそれぞれ別の駆動源によって得ることによって、把持力が推進力の影響を受けて大きくなることを防ぐことができる。よって、許容内圧が小さな新設海底パイプラインNPであっても、十分な推進力を得ることができる。
【0055】
また、有底筒は、把持手段に当接し、把持用駆動源12は、有底筒21の内部に配置される。これにより、挿入手段20の推進力を、把持用駆動源12が直接受けることを防ぐことができる。また、挿入手段20は、底部21bを押すことにより、既設海底パイプラインOPの内部に向けて把持手段10を移動させる。したがって、有底筒21によって、挿入手段20の推進力を、把持用駆動源12を介さずに直接把持手段10に伝えることができる。よって、把持力が推進力の影響を受けて大きくなることを確実に防ぐことができる。
【0056】
また、新設海底パイプライン挿入装置100の各構成は、新設海底パイプラインNPの長手方向に沿って、前方から、把持用駆動源12、有底筒21、挿入用駆動源22の順で並べられる。上記構成のうち、新設海底パイプラインNPに最も近い位置に把持用駆動源12が位置することで、駆動力のロスを少なくし、新設海底パイプラインNPを効率的に把持することができる。その次に、有底筒21、挿入用駆動源22の順で並べられることで、有底筒21を介して把持用駆動源12の反対側に挿入用駆動源22を配置することができる。有底筒21を介さず、把持用駆動源12に挿入用駆動源22が直接接するように配置した場合、挿入用駆動源22による推進力を把持用駆動源12が直接受けることとなる。よって、把持力が推進力の影響を受け、把持力が増加する原因となる。把持用駆動源12と挿入用駆動源22との間に有底筒21が配置されることで、上述の問題が発生することを防ぐことができる。よって、新設海底パイプラインNPに推進力を効率的に伝えることができる。
【0057】
また、新設海底パイプラインNPの反対側の端部には開先Gが設けられる。これにより、新設海底パイプラインNPを複数連続して配置する際に、新設海底パイプラインNPの端部同士の溶接をしやすくすることができる。また、把持用駆動源12、有底筒21、及び、挿入用駆動源22は、開先Gと離間させて配置されている。これにより、前記各構成によって開先Gが傷つけられることを防ぐことができる。よって、新設海底パイプラインNP同士の溶接部の品質を担保することができる。
【0058】
また、スペーサ30は、既設海底パイプラインOPの内部に挿入される新設海底パイプラインNPを、既設海底パイプラインOPと離間させる。これにより、既設海底パイプラインOPと新設海底パイプラインNPとが干渉することを確実に防ぐことができる。よって、既設海底パイプラインOPに対して新設海底パイプラインNPを効率的に挿入することができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の第2新設海底パイプライン挿入装置200を、図7を参照して説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0060】
第2新設海底パイプライン挿入装置200は、把持挿入手段210と、挿入用駆動源22と、を備える。第2新設海底パイプライン挿入装置200は、把持挿入手段210によって、新設海底パイプラインNPの把持及び挿入の機能を兼ねることで、新設海底パイプライン挿入装置100と相違する。
把持挿入手段210は、第2外周部211aと、第2芯部211bと、当接面11cと、グリース漏出防止カバー212と、を備える。
第2外周部211a及び第2芯部211bの基本的な構造は、外周部11a及び芯部11bと同じである。
グリース漏出防止カバー212は、第2外周部211aと第2芯部211bとの間に封入されるグリースが、第2新設海底パイプライン挿入装置200の前方の側の端部から漏れ出すことを防止する機能を有する。
【0061】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、外周部11aは第1テーパー外周部11a1と第2テーパー外周部11a2とを備え、芯部11bは第1テーパー芯部11b1と第2テーパー芯部11b2とを備えるものとして説明した。すなわち、同様の形状が2列設けられるとして説明した。これに限らず、例えば、外周部11aと芯部11bとは、新設海底パイプラインの許容内圧に応じて、上述の形状が1列のみ設けられてもよいし、3列以上設けられてもよい。
【0062】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 把持手段
11 拡径部
11a 外周部
11a1 第1テーパー外周部
11a2 第2テーパー外周部
11b 芯部
11b1 第1テーパー芯部
11b2 第2テーパー芯部
11c 当接面
12 把持用駆動源
20 挿入手段
21 有底筒
21a 筒部
21b 底部
22 挿入用駆動源
30 スペーサ
100 新設海底パイプライン挿入装置
G 開先
NP 新設海底パイプライン
OP 既設海底パイプライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7