(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175980
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16D 1/02 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
F16D1/02 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094134
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣岡(額田) 神暖
(72)【発明者】
【氏名】桑本 祐紀
(57)【要約】
【課題】歯打ち音を抑制することができる動力伝達装置を提供すること。
【解決手段】動力伝達装置は、軸方向に延在するモータシャフトと、モータシャフトと同軸上に配置され、モータシャフトとスプライン嵌合するギヤシャフトと、モータシャフトとギヤシャフトとの間に配置される間座と、ギヤシャフトを支持するケースと、を備え、間座が、軸方向において、モータシャフトおよびギヤシャフトとそれぞれ接している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延在するモータシャフトと、
前記モータシャフトと同軸上に配置され、前記モータシャフトとスプライン嵌合するギヤシャフトと、
前記モータシャフトと前記ギヤシャフトとの間に配置される間座と、
前記ギヤシャフトを支持するケースと、
を備え、
前記間座は、軸方向において、前記モータシャフトおよび前記ギヤシャフトとそれぞれ接している動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータシャフトと、当該モータシャフトとスプライン嵌合するギヤシャフトと、モータシャフトおよびモータシャフトの間に設けられた弾性部材と、を備える動力伝達装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示された動力伝達装置では、環境温度が高くなると、ギヤシャフトの端面と当該ギヤシャフトを支持するケースとの間の隙間が拡大するため、それに伴い歯打ち音が悪化するおそれがある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、歯打ち音を抑制することができる動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る動力伝達装置は、軸方向に延在するモータシャフトと、前記モータシャフトと同軸上に配置され、前記モータシャフトとスプライン嵌合するギヤシャフトと、前記モータシャフトと前記ギヤシャフトとの間に配置される間座と、前記ギヤシャフトを支持するケースと、を備え、前記間座が、軸方向において、前記モータシャフトおよび前記ギヤシャフトとそれぞれ接している。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、モータシャフトおよびギヤシャフトと軸方向で接する間座を設けることにより、歯打ち音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る動力伝達装置の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態2に係る動力伝達装置の構成を示す概略図である。
【
図3】
図3は、実施形態3に係る動力伝達装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態に係る動力伝達装置について、図面を参照しながら説明する。なお、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
(実施形態1)
実施形態1に係る動力伝達装置1の構成について、
図1を参照しながら説明する。動力伝達装置は、例えばエンジンおよびモータを動力源として備えるハイブリッド車(HEV: Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)等に適用される。
【0011】
動力伝達装置1は、モータシャフト11と、ギヤシャフト12と、間座13と、ケース14と、軸受15,16,17と、を備えている。
【0012】
モータシャフト11は、例えば図示しないモータのロータ軸であり、軸方向に延在している。また、モータシャフト11は、軸受15によって回転可能に支持されている。
【0013】
ギヤシャフト12は、例えばリダクション軸であり、軸方向に延在している。また、ギヤシャフト12は、モータシャフト11と同軸上に配置されている。また、ギヤシャフト12は、モータシャフト11とスプライン嵌合している。また、ギヤシャフト12は、軸受16,17によって回転可能に支持されている。
【0014】
間座13は、軸方向および径方向において、モータシャフト11とギヤシャフト12との間に配置されている。また、間座13は、少なくとも軸方向において、モータシャフト11およびギヤシャフト12とそれぞれ接している。すなわち、間座13は、モータシャフト11およびギヤシャフト12と軸方向でそれぞれ接することにより、両者の軸方向における隙間を埋めている。また、間座13は、温度変化によって熱膨張/熱収縮を行う材料によって構成されている。
【0015】
また、間座13は、ケース14よりも熱膨張率が大きな材料によって構成されている。
例えばケース14がアルミ合金(ADT4)で構成される場合、熱膨張率は「21×10-6/K」となる。この場合、間座13の材料としては、例えばジュラルミン(熱膨張率:23.6×10-6/K)、ポリカーボネイト(熱膨張率:65×10-6/K)等が挙げられる。
【0016】
ケース14は、軸受17の周囲を覆うように配置されており、当該軸受17を支持している。これにより、ケース14は、軸受17を介してギヤシャフト12およびモータシャフト11を支持している。また、ケース14とギヤシャフト12の端面121との間には、隙間Spが形成されている。また、ケース14は、温度変化によって熱膨張/熱収縮を行う材料(例えばアルミ合金等)によって構成されている。
【0017】
ここで、例えば従来の動力伝達装置では、間座13の代わり弾性部材が設けられており、かつ弾性部材がモータシャフトおよびギヤシャフトと軸方向で接していない。そのため、例えば環境温度が高くなると、ケースとギヤシャフトとの線膨張差により、両者の隙間(
図1の隙間Spに相当)が拡大する。そして、このように隙間が拡大すると、ギヤシャフトが含まれるギヤ対の歯打ち音が悪化するおそれがある。
【0018】
そこで、動力伝達装置1では、
図1に示すように、モータシャフト11およびギヤシャフト12と軸方向で接する間座13を設けた。これにより、例えば環境温度が高くなった際に、ケース14とともに間座13が熱膨張する。すなわち、ケース14が熱膨張した際に、間座13も熱膨張することにより、ギヤシャフト12を軸方向に押し出す。これにより、ギヤシャフト12の端面121がケース14側に接近するため、隙間Spの拡大が抑制される。すなわち、ケース14の熱膨張による隙間Spの増加分を、間座13の熱膨張によって補うことができる。
【0019】
このように、実施形態1に係る動力伝達装置1によれば、モータシャフト11およびギヤシャフト12と軸方向で接する間座13を設けることにより、ケース14の熱膨張によって拡大した隙間Spを確実に詰めることができる。従って、歯打ち音を抑制することができる。
【0020】
(実施形態2)
実施形態2に係る動力伝達装置1Aの構成について、
図2を参照しながら説明する。同図において、前記した動力伝達装置1と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0021】
動力伝達装置1Aは、モータシャフト11と、ギヤシャフト12と、間座13Aと、ケース14と、軸受15,16と、弾性部材18と、を備えている。なお、
図2では、ケース14および軸受17の図示を省略している。
【0022】
間座13Aは、軸方向において、モータシャフト11と弾性部材18との間に配置されている。また、間座13Aは、軸方向において、モータシャフト11とおよび弾性部材18とそれぞれ接している。
【0023】
弾性部材18は、軸方向において、間座13Aとギヤシャフト12との間に配置されている。また、弾性部材18は、径方向において、モータシャフト11とギヤシャフト12との間に配置されている。また、弾性部材18は、ギヤシャフト12側には固定(拘束)されており、モータシャフト11側には固定(拘束)されていない。
【0024】
ここで、本実施形態では、モータシャフト11のことを「被拘束軸」と定義し、間座13Aが接しているモータシャフト11の面のことを「被拘束軸側軸方向面」と定義する。また、ギヤシャフト12のことを「拘束軸」と定義し、間座13Aが接している弾性部材18の面のことを「拘束軸側軸方向面」と定義する。
【0025】
前記したように、弾性部材18は、ギヤシャフト12側には固定(拘束)されており、モータシャフト11側には固定(拘束)されていない。そのため、間座13Aが熱膨張した場合、当該間座13Aが弾性部材18を押圧することにより、ギヤシャフト12が軸方向に押し出されることになる。
【0026】
このような構成を備える動力伝達装置1Aでは、例えば環境温度が高くなった際に、ケース14とともに間座13Aが熱膨張する。すなわち、ケース14が熱膨張した際に、間座13Aも熱膨張することにより、弾性部材18を介してギヤシャフト12を軸方向に押し出す。これにより、ギヤシャフト12の端面121がケース14側に接近するため、隙間Spの拡大が抑制される。すなわち、ケース14の熱膨張による隙間Spの増加分を、間座13Aの熱膨張によって補うことができる。
【0027】
このように、実施形態2に係る動力伝達装置1Aによれば、弾性部材18を備える場合においても、間座13Aを設けることにより、ケース14の熱膨張によって拡大した隙間Spを確実に詰めることができる。従って、歯打ち音を抑制することができる。
【0028】
(実施形態3)
実施形態3に係る動力伝達装置1Bの構成について、
図3を参照しながら説明する。同図において、前記した動力伝達装置1,1Aと同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0029】
動力伝達装置1Bは、モータシャフト11と、ギヤシャフト12と、間座13Bと、ケース14と、軸受15,16と、弾性部材18Aと、芯材19と、を備えている。なお、
図3では、ケース14および軸受17の図示を省略している。
【0030】
間座13Bは、軸方向において、モータシャフト11と芯材19との間に配置されている。また、間座13Bは、軸方向において、モータシャフト11とおよび芯材19とそれぞれ接している。
【0031】
弾性部材18Aは、径方向において、モータシャフト11と芯材19との間に配置されている。また、弾性部材18Aは、モータシャフト11側に固定(拘束)されていない。また、弾性部材18Aは、芯材19と固定されている。
【0032】
芯材19は、径方向において、弾性部材18Aとギヤシャフト12との間に配置されている。また、芯材19は、ギヤシャフト12側に固定(拘束)されている。
【0033】
ここで、本実施形態では、モータシャフト11のことを「被拘束軸」と定義し、間座13Bが接しているモータシャフト11の面のことを「被拘束軸側軸方向面」と定義する。また、ギヤシャフト12のことを「拘束軸」と定義し、間座13Bが接している芯材19の面のことを「拘束軸側軸方向面」と定義する。
【0034】
前記したように、芯材19は、ギヤシャフト12側に固定(拘束)されており、弾性部材18Aは、モータシャフト11側に固定(拘束)されていない。そのため、間座13Bが熱膨張した場合、当該間座13Bが芯材19を押圧することにより、ギヤシャフト12が軸方向に押し出されることになる。
【0035】
このような構成を備える動力伝達装置1Bでは、例えば環境温度が高くなった際に、ケース14とともに間座13Bが熱膨張する。すなわち、ケース14が熱膨張した際に、間座13Bも熱膨張することにより、芯材19を介してギヤシャフト12を軸方向に押し出す。これにより、ギヤシャフト12の端面121がケース14側に接近するため、隙間Spの拡大が抑制される。すなわち、ケース14の熱膨張による隙間Spの増加分を、間座13Bの熱膨張によって補うことができる。
【0036】
このように、実施形態2に係る動力伝達装置1Bによれば、弾性部材18Aが芯材19を備え、かつ当該芯材19が拘束されている場合においても、間座13Bを設けることにより、ケース14の熱膨張によって拡大した隙間Spを確実に詰めることができる。従って、歯打ち音を抑制することができる。
【0037】
更なる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表わし、かつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1,1A,1B 動力伝達装置
11 モータシャフト(電動機軸)
12 ギヤシャフト(歯車軸)
121 端面
13,13A,13B 間座
14 ケース
15,16,17 軸受
18,18A 弾性部材
19 芯材
Sp 隙間